説明

熱ヒュスゲン反応による架橋方法,架橋可能な発色性ポリマー及び安定な電気光学特性を有する架橋ポリマー材料

本発明は,熱ヒュスゲン反応による発色団を含有するポリマーの架橋方法、少なくとも1個のアジド官能基及び/又は1個のアルキン官能基を含有する熱重合可能な発色性ポリマー及び良好な発色団の配向安定性を有する架橋した重合材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,発色性ポリマーの熱ヒュスゲン反応による新規な架橋方法、架橋可能な発色性ポリマー及び高度な発色団のアラインメント安定性を示す非線形光学特性を有する架橋ポリマー材料に関する。かかる材料は電気光学変調器の活性材料を構築できる。
【背景技術】
【0002】
電気光学変調器は,ブロードバンド通信システムやデータ処理に広く使用されているデバイスである。現在,市販の電気光学変調器における活性材料は一般にニオブ酸リチウム(LiNbO3)であるが,その特性により100MHzを超えるスループットには適さない(参照文献1)。さらに,その制御電圧が3〜6Vの範囲であり,電気信号の周波数変調により増大する。このため,特に形成の大幅な容易さ,バンド幅の増加,制御電圧及び製造コストの低減という多くの利点を有する電気光学特性の有機ポリマーと置換する試みがなされている。現時点において,最上の有機材料は約300pm/Vの電気光学係数を有し,1V未満の半波電圧(Vπ)を有するマッハ・ツェンダー変調器の製造を可能にする(参照文献2〜5)。Daltonチームによる研究から生じたこれらの最近の結果は,この分野におけるポリマー材料の非常な関心を示す(参照文献3〜6)。世界中の多数のチームによる数年間の研究の後,電気光学ポリマーの主な限界の一つが,一般に発色団と呼ぶ活性分子の配向の経時的な不安定性に関するものであるといまや広く認識されている(参照文献6,7)。実際に,このタイプの材料の工業的開発を容易にするため,非中心対称性分子秩序の保持を改善する必要がある。ポリマーマトリックス内で希釈された発色団の混合物よりなるドープされたポリマーは,80℃よりずっと低温で約百時間後に緩和に達することから,配向安定性が非常に劣っていることを示す(参照文献6,7)。発色団をポリマーマトリックスにグラフトする場合,より大きな安定性が得られるが,商業的用途には不十分のままである(参照文献6,7)。発色団の緩和を妨げる二つの最も効果的な戦略は,第一にガラス転移点(Tg)が高いポリマーマトリックスの使用,第二に架橋可能なポリマーの使用である。後者のアプローチは,反応性官能基をポリマー又は発色団のいずれかに,或いはまた配向工程(ポーリング)後熱的(Tg以上の加熱)又は光化学的(通常UVスペクトルの光照射)に一緒に反応する関連する化合物(ドーパント)上に導入することからなる。実際、この架橋方法は,発色団の配向後その配向の長期設定を付与し得るが,このアプローチに適する化学系は非常に少ない。架橋官能基が調和の困難な二つの特性を満たさねばならないことから問題が生じる。第一点は重合及び貯蔵工程中に不活性のまま(ポリマーの早期架橋を回避するため)であり,そして第二点はTg近傍で高い反応性を提供する(高い架橋収率を有するため)ことである。電気光学特性を有するポリマーの架橋のための主な四タイプの系がある。それらはディールス・アルダー反応により付加体を形成するために反応するマレイミド/アントラセン対(参照文献3,8),トリフルオロエチレン(参照文献9)又はベンゾシクロブタノン(参照文献10,11)種のホモ縮合反応,及び最後にBoscら(参照文献12)によって開発されたエポキシド官能基をカルボン酸基で開環することからなる系である。これらは発色団のアラインメントを安定化するのに効果的である(参照文献11,13)が,これらアプローチの各々はそれ自身限界を有する。例えば,Boscらのポリマー(PIII)は室温での安定性が低く,貯蔵に限界がある。更に,厚い膜(>1μm)を製造するのが難しく,また架橋した膜が形成したアルコール官能基のために1.5μmで相当な吸収を示す場合がある。ディールス・アルダー反応に基づく系は,しばしば発色団の二重結合と反応し,後者の分解をもたらす(参照文献4)。最後に,ベンゾシクロブタノンのケテンへの熱分解が非常に高温(200℃)で起こるので,この温度で不安定な多くの発色団には適合できない。これらの各アプローチにおいて,ポリマーの膜成形性が普通は議論されないが,この特性は本発明の意図する用途において必要不可欠である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明者らは,熱ヒュスゲン反応を用いることからなる新しい架橋モードを使用することによりこれらの問題を克服できることを見出した。
【0004】
このヒュスゲン反応は化学の多様な分野で広範に使用されており(参照文献16〜20),銅(I)塩がこの反応を触媒するというSharplessら(参照文献14)及びMeldalら(参照文献15)による同時発見が続いたのだが,試薬が熱活性化により反応する非触媒反応はあまり大きな注目を浴びなかった。1981年に,イーストマン・コダック社の研究所は,多種のアルキンとの加熱によるヒュスゲン1,3−付加環化反応に従うアジド官能基を側鎖基として含有するポリマーの官能化を報告した(参照文献21)。しかしながら,出願人らの知る限り,熱活性化によるヒュスゲン反応は,特に非線形光学特性を有する材料分野で,ポリマーの架橋を誘導するために使用されたことがない。
【0005】
従って,本発明の一つの主題は発色団を含有するポリマーの熱ヒュスゲン反応による架橋方法である。
【0006】
この新しい架橋方法は,その容易さ及び得られる架橋ポリマーの優れた特性,特に発色団のアラインメント安定性とその膜成形性ゆえに非常に有効であることがわかる。
【0007】
この新規な方法は,周囲の基の性質に応じて室温以上の温度で一緒に反応して下記反応式:
【化1】

によってトリアゾールを形成することができるアジド及びアルキン(エチニルとしても既知)官能基の使用に基づく。従って,本発明の方法によれば,少なくとも1個のアジド官能基及び少なくとも1個のアルキン官能基が,ポリマー又はその前駆体のうち少なくとも1つの上に存在する。
【0008】
一つの有利な実施態様によれば,本発明に係る方法において,アジド官能基及び/又はアルキン官能基が発色団及び/又はポリマー鎖上,或いはまた関連するドーパント上に存在する。
【0009】
本発明において,「発色団」という用語はゼロでない二次超分極率の少なくとも一つの自由原子価を有する分子を意味し,「プッシュ・プル」型の化合物であり,より好適にはD−π−A構造を有し,ここでDは電子ドナー,Aは電子アクセプター,πはドナーをアクセプターに共役するπブリッジである。「ドナー」(「D」で表わす)とは,ドナーがアクセプターとπブリッジを介して共役した場合,電子密度がドナーからアクセプターへ移動するようなアクセプターに対して低い電子親和力を有する原子又は原子団である。
【0010】
「アクセプター」(「A」で表わす)とは,アクセプターがドナーとπブリッジを介して共役した場合,電子密度がドナーからアクセプターへ移動するようなドナー対して高い電子親和力を有する原子又は原子団である。
【0011】
「πブリッジ」は、電子をドナーからアクセプターへブリッジの原子の軌道を介して非局在化できる原子又は原子団からなる。好ましくは、軌道が多重結合した炭素原子,例えば,アルケン,アルキン,中性又は荷電した芳香族環もしくはヘテロ原子を含む環系のp軌道である。
【0012】
列挙し得る発色団の例としては,ディスパースレッド1(DR1),CLD,FTC,RHSC,PCTCN,TMC及びTMがある。
【化2】

【0013】
「ポリマー」という用語は,モノマーを一緒に共有結合して形成したあらゆる分子を意味する。モノマーは,任意に置換され,上記ポリマーの「前駆体」と称する。本発明では,この「ポリマー」という用語は,どれを好適とする訳ではないが,ホモポリマー,コポリマー及びデンドリマーを指す。列挙し得る構成モノマーの例としては,ビニル,アクリル系及びメタクリル系モノマーがある。言うまでもなく,ポリマーは置換できる。発色団で置換した場合,これらポリマーは発色性ポリマーとして既知である。モノマー及び置換モノマーはポリマーの前駆体である。発色性基で置換したモノマーは,「発色グループ」又は「発色団」として既知である。
【0014】
本発明の方法における一つの有利な実施態様によれば,ポリマーはアクリル系,メタクリル系及びビニルモノマー,ならびにそれらの混合物を含む群から選択されたモノマーに基づく主鎖を有する。
【0015】
発色団はアジド官能基又はアルキン官能基を含有できる。しかし,他の実施態様によれば,これらの官能基の少なくとも一個をポリマー又はその前駆体によって保持することができる。
【0016】
従って,本発明に係る方法は多種の下記反応スキーム:
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

を使用することができる。
ここで
【化7】

はゼロでない二次超分極率を有する発色団を表わし,
,Z2及びZ3は,互いに独立してH,C1〜C4アルキル又はフェニルを表わし,
Gは架橋に対して中立な基であり
【化8】

はいずれかの化学種であり,
nは1より大きい整数であり,
【化9】

はコネクターを表わし,
【化10】

はポリマーの繰返し単位を表わし,
x,y,z,x’,y’及びz’は,互いに独立して0〜100,好適には2〜50,より好適には3〜10の整数を表わし,各反応スキームにおいて,x,y,zのうちの二個及びx’,y’及びz’のうちの二個がゼロでないことが分かり,
W及びYは,YがN3を表わす場合,Wが
【化11】

を表わし,WがN3を表わす場合,Yが
【化12】

を表わし,RがH,任意にO,S及びNなどのヘテロ原子を含み,また任意にOCH3,N(アルキル)2などの電子供与性基又はCN,CO2アルキル,NO2などの電子吸引性基で置換された芳香族単位を含有する直鎖状,分岐状又は環状で飽和又は不飽和の炭化水素系鎖を含む群から選択され,Rはエチリン(ethylyne)官能基の保護基をも表わす。エチリン官能基の保護基として,アルキルシリル,アリールシリル又はアルキルアリールシリル,好適には,トリメチルシリル,トリイソプロピルシリル,ジメチル−tert−ブチルシリル,ジフェニル−tert−ブチルシリル及びテルフェニルシリルが挙げられる。
【0017】
本発明において,「アルキル」という用語は,エチル,メチル,i−プロピル,n−プロピル,i−ブチル,tert−ブチル又はn−ブチルなどの1〜20個の炭素原子,より好適には1〜8個の炭素原子,さらに好適には1〜4個の炭素原子を含むあらゆる直鎖状,分岐状又は環状カルボニル鎖を意味する。アルキルを置換することができる。
【0018】
架橋反応に関与しないあらゆる原子又は化学基、例えば水素又は不飽和アルキル基,特にメチル基を中立基Gとして使用できる。
【0019】
【化13】

はn個のWで官能化できるあらゆる化学種を表わすことができる。かかる化学種の例として,フェニル,トリメチルフェニル及びテトラフェニルメチルが挙げられる。
【0020】
従って,ドーパントとしても呼ばれる
【化14】

は,例えば,
【化15】

【化16】

を表わし,v及びwは1以上の整数を表わす。
【0021】
アジド官能基及び同様にアルキン官能基を,発色団,ポリマー又はポリマー前駆体上へカップリング反応を介して導入できる。例えば,発色団,ポリマー又はその前駆体の酸官能基をアジドアニリンでカップリングすることによりアジド官能基を導入できる。発色団,ポリマー又はそれらの前駆体の酸官能基をトリメチルシリルプロパルギルアルコールでカップリングすることによりエチリン官能基を導入できる。
【0022】
コネクターは,連結する基に応じた可変構造の二価の基である。コネクターは剛直な構造であることが好ましい。特に,ヘテロ原子を含みうる直鎖状又は環状脂肪族鎖及びヘテロ原子を含みうる芳香族鎖を含む群からコネクターを選択できる。列挙し得る例として,C1〜C4、好ましくはC2〜C4飽和アルキル鎖,ベンゼン核,アダマンチル,チオフェン,ピリジン,ピロール,ノルボルニル,糖残基などが挙げられる。
【0023】
一つの有利な実施態様によれば,一方で標準的なカップリング方法を用いて発色性基をモノマーへ結合することができ,他方でアジド官能基又はエチリン基を他のモノマーへ,例えば,コネクターを介して結合することができる。次いで、かかる種々のモノマーを重合する。ポリマーを形成する場合,熱ヒュスゲン反応を行う。
【0024】
他の有利な実施態様によれば,一方で標準的なカップリング方法を用いて発色性基をモノマーへ結合し,その後アジド官能基(又はエチリン基)を発色性基でカップリングすることができ,他方でエチリン基(又はアジド官能基)を他のモノマーへ,例えば,コネクターを介して結合することができる。次いで、かかる二種のモノマーを共重合する。ポリマーを形成する場合,熱ヒュスゲン反応を行う。
【0025】
標準的な方法(参照文献24,有機溶媒中でのアゾビスイソブチロニトリル−AIBN−の熱分解)に従って、又は可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合技術によるリビング重合(参照文献22,25)もしくは原子移動ラジカル重合(ATRP)(参照文献23,26)によってモノマーを重合する。
【0026】
本発明に係る方法において,ヒュスゲン反応による架橋はほぼポリマーのガラス転移温度程度の温度で行われる。かかる温度は,通常120〜200℃,好適には130〜170℃,より好適には約150℃である。かかる架橋は触媒なしで行われる。架橋すべきポリマーは,完全な架橋に必要な時間中ずっと架橋温度に保持される。架橋終了の決定は当業者の能力の範囲内であり,あらゆる分析方法によって行うことができる。特に,アジドに特有な振動である約2100cm-1での振動があることをIRで観測することが挙げられる。
【0027】
一般に、架橋時間は30分間〜2時間,好適には45分間〜1時間30分間,より好適には約1時間であると言える。
【0028】
また,本発明は下記一般式(I)〜(IV):
【化17】

の熱架橋可能な発色性ポリマーに関し,ここで種々の構成要素が上記反応スキームとの関連で挙げたものと同じ意味を有する。
【0029】
モノマー構造を変性することによって,屈折率などのポリマーの機能的特性を細かく調整できる。
【0030】
一つの好適な実施態様によれば,式(I)のポリマーは下記:
【化18】

を含む群から選択される。
【0031】
多様なラジカルは上記と同じ意味である。
【0032】
モノマーがメタクリル系タイプで,発色団がディスパースレッド1(DR1)誘導体である本発明に係るポリマーの例は,下記式(I’a)及び(I’b):
【化19】

(ここで、x,y及びzが互いに独立して0〜7の整数を表わし,x,y及びzのうち一つだけが0を表わすことができ,好ましくはx,y及びzの組み合わせがx=3,y=3及びz=4とx=3,y=0及びz=7を含む群から選択される)を有する。
【0033】
列挙し得る式(III)のポリマーの例は下記式:
【化20】

を有するポリマーである。
【0034】
このポリマーは,下記生成物(ドーパント):
【化21】

のうちの一つ以上を使用した上記スキーム6に従う熱ヒュスゲン反応によって架橋できる。
【0035】
列挙し得る式(IV)のポリマーの例は下記式:
【化22】

を有するポリマーである。
【0036】
このポリマーは,下記生成物(ドーパント):
【化23】

のうちの一つ以上使用した上記スキーム7に従う熱ヒュスゲン反応によって架橋できる。
【0037】
反応スキーム5に従う架橋の実施の例としては,下記二種類の生成物:
【化24】

を反応することにある。
【0038】
本発明の架橋可能なポリマーは、著しく可溶で,膜形成性で,基板によく接着する。その理由は、一マイクロメートルより厚い単層膜が遠心塗布による単一工程でガラス又はシリコン担体上に得られるからである。
【0039】
電気光学材料として使用するために,架橋前にこれらポリマーを配向させなければならない。
【0040】
従って,本発明に係る方法の一つの有利な実施態様によれば,電気光学材料の場合,ポリマー膜の形成及び発色団の配向後にヒュスゲン反応による重合を行う。
【0041】
かかる方法は,ポリマーを下記の連続した工程:
・膜の形成工程,
・発色団の配向工程,
・架橋工程に施すことを特徴とする。
【0042】
この方法で用いるポリマーは,上記式(I)〜(IV)の一つを有するポリマーである。
【0043】
スキーム5〜7の一つによる方法を用いる実施態様において,膜を調製する工程の直前に共通の溶媒中で組合せる二種類の異なる生成物の混合物から上記材料を形成する。かかる二種類の生成物の相対比率はかなり広い範囲にわたることができ,Y/Wが1以上であるように量を調整することが好ましい。スキーム5〜7に示したアプローチは,架橋する官能基(Y及びW)を互いに分離して保持する利点があり,そのため,膜の調製前の材料の貯蔵安定性を増大する利点がある。
【0044】
従来,ポリマー膜の形成は、担体,好ましくはガラス又はシリコン担体上での遠心塗布(スピンコーティング)によって行われた。一般に,本工程の後にアニーリング工程が続く。
【0045】
パルスフィールドを用いるか、又は膜に置かれて電圧をかける導線を用いて,発色団の配向(ポーリング)を行う。
【0046】
発色団の配向及び架橋の工程は以下の段階:
1.膜を温度T1まで加熱し,
2.温度を値T1で保持しながら,電圧Vを膜と該膜上に距離dで置いた導線間に時間D1で印加し,
3.電圧を保持しながら,膜を温度T2で時間D2で加熱、保持し,
4.電圧を保持しながら,室温に冷却することを含み、
ここでT1はポリマーのガラス転移温度(Tg)あたりであり,
Vは10V〜8kV,好適には2kV〜4kV,さらにより好適には約3.5kVであり,
dは1〜15mm,好適には2〜10mm,さらにより好適には約5mmであり,
T2は120〜200℃,好適には130〜170℃,さらにより好適には約150℃であり,
時間D1及びD2は,互いに独立して,30分間〜2時間,好適には45分間〜1時間30分間,さらにより好適には約1時間である。
【0047】
「T1がポリマーのガラス転移温度(Tg)あたりである」という表現は,Tgよりも約25℃高い又は低い,好適にはTgよりも約20℃高い又は低い,さらにより好適にはTgよりも約10℃高い又は低い温度を意味する。
【0048】
膜を形成する工程は,ハロゲン化溶媒,好適には塩素化溶媒,さらにより好適にはトリクロロエタン又はオルトジクロロベンゼン,N−メチルピロリドン,THFならびにそれらの混合物を含む群から選択した溶媒中のポリマー溶液で行う。
【0049】
アニーリングは,40〜80℃,好適には50〜70℃,さらにより好適には約60℃の範囲の温度で,30分間〜2時間,好適には45分間〜1時間30分間,さらにより好適には約1時間行う。
【0050】
架橋温度は,アルキン基上の置換基を変性することによって明らかに大幅に調整可能である。例えば,トリメチルシリル基をメチル基で置換することにより架橋温度を極めて大幅に上げることができ,一方水素で置換することにより下げることができる。
【0051】
本発明はまた、上記方法によって架橋した重合材料に関し,該材料は85℃の温度で1000時間保持した後に非線形光学特性の低下が5%未満であるという発色団の配向安定性を有する。
【0052】
架橋材料のガラス転移温度Tgは,架橋材料の原料ポリマーのものより少なくとも10℃,好適には少なくとも20℃,さらにより好適には少なくとも25℃高い。これら材料は,THF又はハロゲン化溶媒などの標準的溶媒,特にオルトジクロロベンゼンなどの塩素化溶媒に不溶である。
【0053】
本発明の方法に係る重合架橋材料の膜は,0.1〜5μm,好適には0.5〜3μm,より好適には1〜2μmの厚さ(e)を有する。これらは厚いのだが,良好な光学品質を有する。これら膜の第二次高調波発生測定から,これらポリマーがその発色団の濃度により付与された比較的高い電気光学係数(r33)を有効的に有することが分かる。
【0054】
本発明に係る架橋した重合材料の電気光学係数r33は,全く有利なことに,その厚さ(e)に依存しない。配向効率が一般に厚さにより低減することから,この特性は比較的まれである。ここで,配向工程の収率が膜厚でわずかに変わるため,配向方法に関して,発色団が相互協調的な方法で配向する。過剰なエネルギー損失が発生しないようにするために光ファイバーをポリマー導波路へカップリングするのにかなりの厚さが要求されるため,この点は重要である。
【0055】
安価な市販の前駆体から出発する調製の容易さ,架橋前のポリマーの高い膜成形性、架橋により得た発色団の良好な配向安定性を考えると,本発明に係る架橋した重合材料は光通信及び光信号処理での用途に完全に適する。
【0056】
本発明を以下の実施例の助けによってより詳細に記載するが,実施例は純粋に説明として記載したものであり,それらに範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】式(Ia)の二種類のポリマー(AS470及びAS472と名付けた)と、式(Ib)の二種類のポリマー(AS475及びAS473と名付けた)の式である。
【図2】2225〜2025cm-1でのポリマーAS475のIRスペクトル図である。
【図3】例3で調製したポリマーAS475を示差走査熱量測定(DSC)分析結果図である。
【図4】40から120℃まで2℃/分の速度で昇温中の各ポリマーに対するr33の相対値である。
【実施例】
【0058】
例1:下記式:
【化25】

のDR1−PhN3の調製
N−メチルモルホリン(V=0.77ml,7.04ミリモル,3当量)と、次に(4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチル−モルホリン)クロリド(779mg,2.81ミリモル,1.2当量)を,4’−[N−(2−メタクリルオキシエチル)−N−エチル]アミノ−2−ニトロ−4−カルボキシアゾベンゼン(1g,2.346ミリモル,1当量)及び4−アジドアニリン(440mg,2.58ミリモル,1.1当量)のTHF溶液(V=5ml)に添加する。生成した溶液を光から保護して室温で12時間撹拌する。その後,溶媒を減圧下留去して粗製生成物を得,ジクロロメタンを溶出液としたシリカゲル上のクロマトグラフィーで精製して所望の生成物1.35g(100%)を得た。
1H NMR(300MHz,CDCl3),δ(ppm): 8.32(d,1H,J=1.8Hz); 8.10(dd,1H,J=8.4Hz,J=2.1Hz); 7.87(d,2H,J=9.3Hz); 7.83(d,2H,J=8.4Hz); 7.67(d,2H,J=9Hz); 7.06(d,2H,J=9Hz); 6.80(d,2H,J=9.3Hz); 6.10(s,1H); 5.59(s,1H); 4.37(t,2H,J=6.6Hz); 3.73(t,2H,J=6Hz); 3.53(q,4H,J=6.9Hz); 1.94(s,3H); 1.26(t,3H,J=7.2Hz).
13C NMR(75MHz,CDCl3),δ(ppm): 164.68; 151.80; 146.88; 143.39; 136.62; 135.83; 134.39; 134.27; 131.28; 126.98; 126.33; 122.70; 121.94; 119.69; 119.27; 113.97; 111.55; 61.65; 48.80; 21.76; 18.33; 12.28.
EI-MS: m/z th = 542.2; m/z exp = 543.1(MH+; 100%); 515.1(23%); 382.2(27%).
UV-Vis: λmax(CH2Cl2)(ε(mol-1 L cm-1)) = 480(28 200).
FT-IR(KBr,cm-1): 2967(νst(CH2)); 2114(νst(N3)); 1717(νst(C=O)); 1676,1598(νst(C=C)).
【0059】
例2:下記式:
【化26】

のDR1−TMSの調製
N−メチルモルホリン(V=0.77ml,7.04ミリモル,3当量)と、次に(4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチル−モルホリン)クロリド(779mg,2.81ミリモル,1.2当量)を4’−[N−(2−メタクリルオキシエチル)−N−エチル)]アミノ−2−ニトロ−4−カルボキシアゾベンゼン(1g,2.346ミリモル,1当量)及びトリメチルシリルプロパルギルアルコール(0.38ml,2.58ミリモル,1.1当量)のTHF溶液(V=5ml)に添加する。生成した溶液を光から保護して室温で12時間撹拌する。その後,溶媒を減圧下留去して粗製生成物を得,ジクロロメタン/石油エーテル混合液(8/2)を溶出液としたシリカゲル上のクロマトグラフィーで精製して所望の生成物1.64g(95%)を得た。
1H NMR(300MHz,CDCl3),δ(ppm): 8.51(d,1H,J=1.5Hz); 8.26(dd,1H,J=8.7Hz,J=1.5Hz); 7.87(d,2H,J=9.3Hz); 7.77(d,1H,J=8.7Hz); 6.80(d,2H,J=9.3Hz); 6.10(s,1H); 5.59(s,1H); 4.97(s,2H); 4.49(t,2H,J=5.4Hz); 4.37(t,2H,J=6.3Hz); 3.73(t,2H,J=6Hz); 3.55(q,2H,J=7.2Hz); 1.93(s,3H); 1.25(t,3H,J=6.9Hz).
13C NMR(75MHz,CDCl3),δ(ppm): 151.96; 148.81; 144.34; 135.97; 133.83; 129.46; 129.00; 127.14; 126.47; 125.68; 118.89; 111.69; 98.44; 94.78; 93.16; 65.93; 61.79; 54.06; 48.94; 45.84; 18.49; 12.42; -0.18.
EI-MS: m/z th = 536.2; m/z exp = 537.3(MH+).
UV-Vis: λmax(CH2Cl2)(ε(mol-1 L cm-1)) = 482(31 600).
FT-IR(KBr,cm-1): 2968(νst(CH2));

; 1717(νst(C=O)); 1676,1598(νst(C=C)).
【0060】
例3:ポリマーの調製:
式(Ia)の二種類のポリマー(AS470及びAS472と名付けた)と、式(Ib)の二種類のポリマー(AS475及びAS473と名付けた)とを下記プロトコールに従って調製した。それぞれの式を図1に示す。
【0061】
種々の試薬(表1にその性質と量を示したモノマー)及びラジカル開始剤AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)(0.03当量)を室温でシュレンク管内にアルゴン雰囲気下導入し,真空下予備乾燥し,混合物を凍結/真空/融解の連続サイクルによって脱気して痕跡量の酸素すべてを除去し,その後混合物をアルゴン雰囲気下に置く。反応混合物を光から保護して70℃の温度で18時間撹拌し続けた。室温に冷却後,生成物をメタノール(10容積当量)から沈殿させ,その後,ポリマーを洗浄し,遠心分離で単離する。
【0062】
下記収率:
AS470に対し75%,AS472に対し50%,AS473に対し52%及びAS475に対し79%が得られた。
【0063】
数平均分子量及び多分散度指数を,ポリスチレンを標品として用いる立体排除クロマトグラフィーによって決定し,以下:
AS470に対しMn=7600,Ip=1.8
AS472に対しMn=7100,Ip=1.9
AS473に対しMn=18600,Ip=1.4
AS475に対しMn=13400,Ip=1.4を得た。
【0064】
これらの各ポリマーについてガラス転移温度をDSCによって測定し,その結果を下記表1に示す。
【0065】
比較のために,既知の架橋系の特性も調べた。これはエポキシドとカルボン酸基との反応に基づくBoscらによって開発されたポリマーPIIIである。(参考文献12)。
【0066】
本発明のポリマーについて測定したものと同一のパラメーターをポリマーPIIIについても測定した。結果を表1に示す。
【0067】
例4:膜の調製及び架橋
5種類の異なる膜を、同一のプロトコールを用いて例3で調製したポリマーでそれぞれ別々に調製した。
【0068】
CaH2上で予備蒸留したポリマー250g/Lを含有するオルトジクロロベンゼン溶液を調製した。0.2μmの細孔径を有するPVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜でのろ過後,上記溶液を清浄で乾燥したガラス基板上に置く。遠心塗布、続いて60℃で1時間のアニーリングにより均質な膜を得た。その後,これら膜を四工程で配向及び架橋した。第一に,これらを90℃(Tgより10℃上)に加熱し,次にこの温度に達した際に膜と膜の上方5mmに置いたタングステン線との間に3.5kVの電圧を印加する。この電圧を90℃で1時間保持し,次に第三工程で膜を更に150℃で1時間加熱してポリマーの完全な架橋を行う。最後に,発色団の配向を固定するため,電場を保持しながら膜を室温に冷却する。
【0069】
例5:
例4で得た各膜について,膜厚さ,発熱ピークの最大値でのDSCによる架橋温度及び1064nmでの電気光学係数r33を求めた。さまざまな結果を下記表1に照合する。
【0070】
【表1】

【0071】
例6:架橋の確認
例3で調製したポリマーAS475をスピンコーティングにより膜として塗布した。この膜はTHF及びオルトジクロロベンゼンに可溶であった。
【0072】
160℃で加熱する間,約2100cm-1に位置するN3振動のIRバンドの強度を観測した。結果を図2に示す。
【0073】
その後,架橋膜をTHF及びオルトジクロロベンゼン中に溶解しようと試みたが,この膜はこれらの溶媒に溶解しなかった。
【0074】
図2は,2225〜2025cm-1でのポリマーAS475のIRスペクトル図である。「初期曲線」は,時間t0での,すなわち,室温でのIRスペクトルを表わし,「終期曲線」は,時間tf(tf=36分間)での,すなわち,温度が160℃に達したときのIRスペクトルを表わす。その他の曲線は中間の温度で得られたIRスペクトルである。
【0075】
加熱につれN3振動のIRバンドが消滅し,従って,ポリマーAS475の架橋を示すことがこの図から見て取れる。
【0076】
例7:
例3で調製したポリマーAS475を示差走査熱量測定(DSC)分析にかけ,図3に示した。この分析は、120℃以上での発熱処理の介入,最高温度が160℃であることを示す。この現象はヒュスゲン1,3−付加環化反応に対応する。この反応の特徴は、溶液中のモデル化合物を加熱することによる化学的変換の生成物の同定によって確認した(結果を示さず)。
【0077】
さらに,最初通常の有機溶媒(とりわけ,THF又はオルトジクロロベンゼン)に可溶なポリマーAS472が,架橋後は不溶性になる。
【0078】
例8:
ポリマーAS472の配向するが非架橋である膜,例4で得たポリマーAS472の配向し架橋した膜及び配向し架橋したポリマーPIIIの温度の関数としての第二次高調波発生の信号を計測した。
【0079】
40から120℃まで2℃/分の速度で昇温中の各ポリマーに対するr33の相対値を示す。結果を図4に示す。
【0080】
架橋膜AS472の信号は120℃の温度までまったく損失がない一方,同一の非架橋ポリマーのものは同じ発色団の濃度に対し100℃以上で低下することが図4から見て取れる。比較例ポリマー(PIII)の電気光学応答は100℃以上の温度で著しく低下を開始する(参考文献12)。
【0081】
従って,架橋ポリマーは非常に良好な発色団の配向安定性を示す。
【0082】
(参照文献)
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒のない熱ヒュスゲン反応による発色団を含有するポリマーの架橋方法。
【請求項2】
少なくとも1個のアジド官能基及び少なくとも1個のアルキン官能基が,前記ポリマー又はその前駆体のうちの少なくとも1つ上に存在することを特徴とする請求項1に記載の架橋方法。
【請求項3】
前記アジド官能基及び/又は前記アルキン官能基が前記発色団上に存在することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーがアクリル系,メタクリル系及びビニルモノマー,ならびにその混合物を含む群から選択されたモノマーの主鎖を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記発色団が,非線形二次超分極率を有する発色団であり,好適には「プッシュ・プル」型,より好適には一般構造D−π−Aを有し,ここでDは電子ドナー,Aは電子アクセプター,πはπブリッジであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記架橋を下記:
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

(式中,
【化5】

はゼロでない二次超分極率を有する発色団を表わし,
,Z2及びZ3は,互いに独立してH,C1〜C4アルキル又はフェニルを表わし,
Gは架橋に対して中立な基であり
【化6】

はいずれかの化学種であり,
nは1より大きい整数であり,
【化7】

はコネクターを表わし,
【化8】

はポリマーの繰返し単位を表わし,
x,y,z, x’,y’及びz’は,互いに独立して0〜100,好適には2〜50,より好適には3〜10の整数を表わし,ただし各反応スキームにおけるx,y及びzのうちの二個及びx’,y’及びz’のうちの二個がゼロでなく,
W及びYは,YがN3を表わす場合,Wが
【化9】

を表わし,WがN3を表わす場合,Yが
【化10】

を表わし,RがH,任意にO,S及びNなどのヘテロ原子を含み,また任意にOCH3,N(アルキル)2などの電子供与性基又はCN,CO2アルキル,NO2などの電子吸引性基で置換された芳香族単位を含有する直鎖状,分岐状又は環状で飽和又は不飽和の炭化水素系鎖を含む群から選択され,Rはエチリン官能基の保護基をも表わす。エチリン官能基の保護基として,アルキルシリル,アリールシリル又はアルキルアリールシリル,好適には,トリメチルシリル,トリイソプロピルシリル,ジメチル−tert−ブチルシリル,ジフェニル−tert−ブチルシリル及びテルフェニルシリルを表わす)を含む群から選択した反応スキームに従って行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒュスゲン反応による架橋をほぼポリマーのガラス転移温度程度の温度で行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ヒュスゲン反応による架橋温度が,120〜200℃,好適には130〜170℃,より好適には約150℃の範囲であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法を介して熱架橋でき、下記一般式(I)〜(IV):
【化11】


(ここで種々の構成要素が請求項6に定義するとおりである)を有する発色性ポリマー。
【請求項10】
下記:
【化12】

を含む群から選択される請求項9に記載のように架橋できる発色性ポリマー。
【請求項11】
前記モノマーがメタクリル系タイプであり,前記発色団がディスパースレッド1(DR1)誘導体であり,下記式(I’a)及び(I’b):
【化13】

(式中のx,y及びzが,互いに独立して0〜7の整数を表わし,x,y及びzのうち一つだけが0であることができ,x=3,y=3及びz=4とx=3,y=0及びz=7を含む群から選択されるx,y及びzの組み合わせが好ましい)のポリマーを含む群から選択される請求項9又は10に記載のポリマー。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一項に記載のポリマーに下記の連続した工程:
・膜の形成工程,
・発色団の配向工程,
・架橋工程を施すことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記発色団の配向と架橋との工程が下記の段階:
1.膜を温度T1まで加熱し,
2.温度を値T1で保持しながら,電圧Vを膜と該膜の上方に距離dで置いた導線間に時間D1で印加し,
3.電圧を保持しながら,膜を温度T2で時間D2加熱、保持し,
4.電圧を保持しながら,室温に冷却することを含み、
ここでT1がTgよりも約25℃高い又は低い,好適にはTgよりも約20℃高い又は低い,さらにより好適にはTgよりも約10℃高い又は低い温度であり,
Vが10V〜8kV,好適には2kV〜4kV,さらにより好適には約3.5kVであり,
dが1〜15mm,好適には2〜10mm,さらにより好適には約5mmであり,
T2が120〜200℃,好適には130〜170℃,さらにより好適には約150℃であり,
時間D1及びD2は,互いに独立して30分間〜2時間,好適には45分間〜1時間30分間,さらにより好適には約1時間であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記膜形成工程を,ハロゲン化溶媒,好適には塩素化溶媒,さらにより好適にはトリクロロエタン又はオルトジクロロベンゼン,N−メチルピロリドン,THFならびにそれらの混合物を含む群から選択した溶媒中のポリマー溶液での遠心塗布によって行うことを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
【請求項15】
前記遠心塗布に続くアニーリングを,40〜80℃,好適には50〜70℃,さらにより好適には約60℃の温度範囲で,30分間〜2時間,好適には45分間〜1時間30分間,さらにより好適には約1時間行うことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
温度85℃で1000時間保持した後の非線形光学特性の低下が5%未満のような発色団の配向安定性を有する請求項1〜8及び11〜15のいずれか一項に記載の方法で重合架橋した材料。
【請求項17】
原料ポリマーのものよりも少なくとも10℃,好適には少なくとも20℃,さらにより好適には少なくとも25℃より高温のTgを有する請求項1〜8及び11〜15のいずれか一項に記載の方法で重合架橋した材料。
【請求項18】
THF及びハロゲン化溶媒,特にオルトジクロロベンゼンなどの塩素化溶媒に不溶である請求項1〜8及び11〜15のいずれか一項に記載の方法で重合架橋した材料。
【請求項19】
0.1〜5μm,好適には0.5〜3μm,より好適には1〜2μmの範囲の厚さ(e)を有する膜の形状である請求項1〜8及び11〜15のいずれか一項に記載の方法で架橋した重合材料。
【請求項20】
電気光学係数r33が厚さ(e)に依存しないことを特徴とする請求項1〜8及び11〜15のいずれか一項に記載の方法で架橋した重合材料。
【請求項21】
光通信及び光信号処理における用途のための請求項1〜8及び11〜15のいずれか一項に記載の方法で架橋した重合材料の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−518242(P2011−518242A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504517(P2011−504517)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【国際出願番号】PCT/FR2009/050720
【国際公開番号】WO2009/138643
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(506214909)セントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック (9)
【Fターム(参考)】