説明

熱ループフローセンサ

フローセンサは、管などの流体素子、熱源、上流温度センサ、および下流温度センサを含む。流体素子は、流路の中間点よりも互いに近く配置された流入末端および流出末端を有する流路を形成する。熱源ならびに上流および下流温度センサは、流路中の液体と熱的に連絡するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により全内容が本明細書に組み込まれる、2008年1月18日出願の米国仮出願番号61/021,950の優先権および恩典を主張する。
【0002】
本発明は主に、液体流量測定のための装置および方法に関する。より具体的には、本発明は、比較的高圧および比較的低流量で動作するクロマトグラフィ装置における流量測定に関する。
【背景技術】
【0003】
多くのプロセスは、少量の液体の流量の測定および制御を必要とする。このようなプロセスは、生命科学、化学分析(液体クロマトグラフィなど)、生命工学、化学合成、およびナノテクノロジーを含む。
【0004】
いくつかの液体フローセンサは、管材の一部分を通る液体の熱挙動を利用して流量を判定する。たとえば、いくつかのナノフローセンサは、熱伝達率を判定することによって液体の速度を測定する。このようなセンサは通常、管に沿って流量に関連する液体温度の変動を観察する。
【0005】
あるタイプの市販の低流量熱流量センサは2つの能動素子を使用し、それらは各々がヒータおよび温度センサの両方の役割を果たす。2つの素子の間の温度差は、流量の測定値を提供する。図1は、そのようなフローセンサ100のブロック図である。センサ100は、流管110、および管に接触して互いに対して上流および下流に配置された2つの能動素子120、130を含む。低流量クロマトグラフィ用途では、管100は通常、ステンレス鋼、ポリマ、又は溶融石英で形成されている。対象とする流量範囲に応じて、内径はおよそ25μmから250μmの範囲であり、内容量はおよそ20nlから2μlの範囲である。
【0006】
能動素子120、130は、管110の周りに巻かれた針金コイルである。素子120、130は両方とも熱源および温度センサである。素子120、130は、電流がコイルを通るときに、熱を管110の中の液体に伝達する、コイルの抵抗を監視することによってそれらの温度が測定されるが、これは温度の変化に伴って変化する。
【0007】
フローセンサ100は通常、およそ100μl/min未満の流量では定電力モードで、より多い流量では定温モードで操作される。定電力モードでは、素子120、130に対して等しい電力が供給され、流量を判定するためにそれらの温度値が使用される。
【0008】
定温モードでは、上流素子120はヒータの役割を果たし、下流素子130は温度センサの役割のみを果たす。上流素子120と下流素子130との間の一定の温度差ΔTを維持するために、十分な電力が上流ヒータ120に供給される。供給された電力は流量を測定する。
【0009】
フローセンサ100は、ホイートストンブリッジ構成に基づく電子回路を利用する。回路は、ΔT又は電力に関連する出力信号を管110内の液体の質量流量との一次関係を有する出力電圧に変換する。
【0010】
各素子120、130における温度は、周囲環境、電流、コイル抵抗、管材における熱伝導、管110の中の液体における熱伝導、管110の中の液体における対流(通常は流量によって支配される)、および、おそらく程度は低いが、管110の表面とその周囲との間の熱伝達に依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
センサ100は、とりわけ液体および管110に沿った熱伝達によって周囲と連絡する。金属管材の使用によって、実質的に管110に沿った熱伝導ができるようになる。周囲温度変動によって素子120、130の間の温度に差が生じる場合には、たとえ流量がゼロであっても温度差が観察される。この問題は、周囲温度の空間分布が時間を追って変化し、素子120、130の間の温度オフセットの時間的変動を生じる場合に悪化する。この問題を軽減するために、いくつかのフローセンサは、内部に流管100が設けられているアルミニウム容器を含む。
【0012】
フローセンサは、周囲温度の影響を補正するのを助けるために、異なる温度で較正されてもよい。入手可能なセンサはまた、通常はいくつかのタイプのクロマトグラフィで使用される異なる溶媒など、異なる液体において異なる出力を有する。この影響を補正するために、補正係数を適用することができる。しかしながら、補正係数は、特定の液体には利用できない場合もあり、または異なる液体の混合物の使用によってこの問題を複雑化する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のいくつかの実施形態は、管の上流および下流位置で共通の周囲環境を提供することによって、管による質量流量センサにおける周囲温度の影響を軽減することができるという見解に基づいている。たとえば、共通の周囲は、少なくとも部分的には、管の末端など、管の上流および下流区画の部分が共通の周囲温度を有するように管を構成することによって達成可能である。
【0014】
共通温度は、たとえば、末端の温度がつり合う傾向となるように、管の末端の間に十分な熱連絡を提供することによって得られる。十分な熱連絡は、本発明のいくつかの実施形態では、管の末端を互いに隣接して配置することによって提供される。これらの実施形態のうちのいくつかでは、管はループ形状である。管の隣接する末端に随意的に配置された1つの温度センサが、管の上流末端および下流末端の両方に共通の温度測定を提供する。これらの実施形態はこのように、たとえば、異なる温度を有する追加管材に接続された管材末端の影響を軽減する。
【0015】
本発明の原理の実行を通じて、いくつかの従来のフローセンサに見られる、管に沿った熱伝導の不均衡な影響が、軽減される。場合によっては、周囲温度の空間的および時間的変動の悪影響のために軽減する。本発明の原理は、たとえ周囲温度が変動しても、管末端に実質的に同じ温度を持たせて維持させる際に随意的に利用される。
【0016】
本発明はまた、部分的に、管の上流および下流末端用の共通のヒートシンクの提供が、上記の利点を随意的に提供するという見解を元にしている。このように、本発明のいくつかの実施形態は、その空間的不均一性およびその時間的変化を含む、周囲温度の変わりやすさなど、いくつかの市販の低流量センサに関する問題を軽減する。本発明のいくつかの実施形態は、周囲温度の変動を修正する必要性および異なる熱挙動を有する異なる液体を修正する必要性を削減または排除する。
【0017】
さらに、本発明のいくつかの実施形態は、典型的なコイルベースヒータよりも小型のポイントソースヒータを利用する。同様に、いくつかの実施形態は、管の長さに対して小さい面積および/または短い長さを有する温度センサを利用する。
【0018】
従って、本発明の一実施形態は、流体素子、熱源、ならびに上流および下流温度センサを含み、これらのうちの1つが随意的に熱源との共有素子であるフローセンサを特徴とする。流体素子は、流路の中間点よりも互いに近くなるように配置されている流入末端および流出末端を有する流路を形成する。熱源は、上流および下流温度センサと同様に、流路の液体と熱的に連絡するように配置されている。下流温度センサは、上流温度センサの下流の位置に設けられている。
【0019】
本発明の別の実施形態は、少なくとも2つの温度センサおよび少なくとも1つの熱源を含むフローセンサを使用してフローを検出する方法を特徴とする。方法は、温度のうち少なくとも1つに対する温度差の比率に関連する流量パラメータの値を決定するステップを含む。パラメータは、少なくとも1つの熱源の出力とは実質的に無関係である。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態は、少なくとも2つの温度センサおよび少なくとも1つの熱源を含むフローセンサを使用してフローを検出する方法を特徴とする。方法は、空流路状態に関する値に対する温度差の比率に関連する流量パラメータの値を決定するステップを含む。パラメータは、管などの流体素子が無限大の熱抵抗を有するかのように、フローセンサの挙動に倣う。パラメータは、液体のタイプとは実質的に無関係である。
【0021】
本発明の多くの実施形態は、いくつかの従来の流量センサに対して、費用、複雑さ、およびサイズを削減する。このように、いくつかの実施形態は、空間的および/または時間的周囲温度変動を減らすために温度制御室を使用する必要性を排除する。また、いくつかの実施形態は、異なる溶媒の間の熱挙動の差を較正する必要性も削減または排除する。このような実施形態は、たとえば、感度の改善、異なる溶媒の自動補正、最低1nl/min以下の流量判定、5秒以下の応答時間、および/またはセンサ構造の費用削減を提供する。
【0022】
図面では、異なる図面にわたって同じ参照記号は全体として同じ部品を示す。また、図面は必ずしも縮尺通りではなく、むしろ全体として本発明の原理を図解する上で強調されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来技術によるフローセンサのブロック図である。
【図2a】本発明の一実施形態による、フローセンサの断面側面図である。
【図2b】図2aのフローセンサの基板の上面図である。
【図3】図2aのフローセンサに関連して簡素化された等価熱回路の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書の「ナノフロー」という用語は、およそ100μL/min未満、または、好ましくは、10μL/min未満の流体流量を示す。ナノフロー流量は、たとえば1,000psi以上の圧力、および5,000から10,000psi以上などのさらに高い圧力で実行される、液体クロマトグラフィのいくつかの用途で有用である。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態は、クロマトグラフィおよび質量分光分析の要素を包含する装置に関する。これらの実施形態のいくつかでは、クロマトグラフィ要素は、エレクトロスプレーイオン化インターフェースなど、適切なインターフェースの使用を通じて質量分光分析要素と流体連通するように配置されている。
【0026】
図2aは、本発明の一実施形態による、フローセンサ200の断面側面図である。フローセンサ200は、ループ形状を有する管210、管210と流体連通している基板220、ヒータ250、上流および下流温度センサ240A、240B、および管末端温度センサ240Cを含む。温度センサ240A、240B、240Cは、管210内の液体と熱的に連絡している。センサ200は、基板220に直接的または間接的に取り付けられている絶縁カバー230も含む。
【0027】
図2bは、フローセンサ200の基板220の上面図である。基板220は流入導管221を提供し、これは、たとえば、その流量が測定されるべき液体を運ぶクロマトグラフィ装置の追加管材と結合する。液体クロマトグラフィシステムの場合、液体は随意的に溶媒である。流入導管221は、管210の流入末端と結合するポートIを有する。導管221および管210は、たとえばクロマトグラフィ技術において知られている液体コネクタの使用を含む、任意の適切な液密方式で取り付けられている。同様に、基板220は流出導管222を有し、これは管210の流出末端と結合するポートOを有する。流出導管222は、たとえば溶媒をクロマトグラフィカラムに送達するために、追加管材と接続している。
【0028】
基板220は、管210の末端を物理的に支持し、管210の末端の間の熱的連絡を提供する。熱的連絡を促進するために、基板220、またはその一部は随意的に、アルミニウムなどの比較的高い熱伝導率を有する物質で形成されている。基板220は随意的に熱質量の役割も果たし、管210の末端における周囲温度の時間的変動を減少させる傾向がある。基板220は随意的に、2つ以上の物質および/または要素で形成されている。
【0029】
基板220と共にカバー230は、管210を絶縁する。カバー230は随意的に、真空または熱的絶縁材料を包み込む。管210の表面を通じての熱の伝導、対流、および放射損失および/または吸収は、このようにして最小限に抑えられる。
【0030】
ヒータ250は、知られている要素を含む、管210内の液体を加熱するのに適したいずれかの要素(複数可)である。たとえば、ヒータ250は随意的に、電流に反応して温度が上昇する、金属線またはその他の物質を含む。熱源250は、たとえば、エレクトロニクス用途に使用されるような、表面実装抵抗器である。
【0031】
フローセンサ200のいくつかの実現において、熱源250は、いくつかの先行技術によるフローセンサに見られる典型的なコイルのサイズよりも小さいサイズを有する。たとえば、望ましい抵抗器ベースの熱源は、たとえば、およそ1平方mm以下の専有面積を有する。
【0032】
ヒータ250は随意的に、抵抗半導体物質を含む。たとえば、サーミスタが随意的にヒータ250として使用される。一般的に理解されているように、サーミスタは、温度と共に抵抗が変化する抵抗器を含む、温度検出器である。したがって、サーミスタは随意的に熱を供給するために使用され、および/または随意的に温度を検出するために使用される。たとえば、ヒータ250は随意的に温度センサとしても機能する。
【0033】
温度センサ240A、240B、240Cは、熱電対またはサーミスタベースの温度センサなど、知られているセンサを含む、いずれかの適切な温度センサを含む。いくつかの適切な熱電対およびサーミスタは、およそ1平方mm以下の専有面積を有する。典型的なコイルベースの温度センサと比較して、サーミスタは、温度変化単位当たりで比較的大きい抵抗変化を提供するという利点を有する。このように、サーミスタは潜在的にその出力信号の増幅が小さくてもよいかまたは不要であり、潜在的にその他のいくつかの温度センサよりも小さい雑音を発生する。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態は、点熱源および/または点温度センサに近づけるのに十分小さいサイズを有するヒータおよび/または温度センサを含む。本明細書の目的のため、点源/センサは、フローセンサ200の管210などのセンサ管の長さのおよそ1/40以下の長さ寸法を有すると理解される。
【0035】
点熱源は、たとえば、与えられた熱出力で、ピークに達した温度をクリッピング傾向のある比較的分散された熱源よりも高い温度プロファイルを提供するという利点を有する。さらに、クリッピングされた温度ピークは、点熱源で随意的に達成されるような比較的鋭角のピークを提供するよりもむしろ、管の長さ部分にわたって分布する傾向がある。
【0036】
関連する方式で、点温度センサは、空間的に分布された温度センサと比較して、点温度センサを越えて流れる液体のより正確な温度測定値を提供する傾向がある。後者は、たとえば、事実上流管の比較的長い部分に関連する平均温度を測定することによって、迅速に変化する温度変動を有する液体の温度プロファイルのピークをクリッピング傾向がある。
【0037】
知られている管材および材料を含む、いずれの適切な管材および管用材料も、管210の製造に随意的に使用される。たとえば、ステンレス鋼管材は、他の多くの金属と比較して、比較的低い熱伝導率を提供し、多くの用途に適した化学的および物理的挙動を有する。いくつかの実施形態にとって、理想的には、材料は無限大の熱抵抗を有する。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態は、液体クロマトグラフィ用途用のフローセンサを伴い、nL/min、μl/min、および/またはmL/minの範囲での流量の測定を支援する。たとえば、1つの事例的なナノフロー流量クロマトグラフィに基づく実現では、管210は、ステンレス鋼で形成され、0.0508cmの外径と、0.0254cmの内径と、4.0cmのループ長とを有する。流体は、水および/またはアセトニトリルなどの溶剤などの液体である。
【0039】
本発明のいくつかのさらなる実施形態は、流入口および流出口温度センサからの出力信号を受信する制御装置を含み、フローセンサおよび/またはセンサを含む装置の流量データおよび/または動作を提供するために信号を処理するように構成されている。たとえば、制御装置は、温度センサの非線形性および温度センサ間の挙動不一致を適合させるように構成されている。
【0040】
たとえば、制御装置は随意的に、温度センサ(複数可)から受信した信号を流量測定値に変換し、および/またはヒータ(複数可)の出力を制御する。さらに、制御装置は随意的に温度センサの非線形性を適合させるように構成されている。たとえば、サーミスタの線形化出力信号勾配は随意的に測定および保存される。一致した勾配サーミスタ出力はその後、周囲温度と無関係なフローセンサの出力を計算するために、随意的に使用される。
【0041】
制御装置は、様々な事例的実施形態において、ソフトウェア、ファームウェアおよび/またはハードウェア(たとえば、特定用途向け集積回路など)において実行され、望ましければ、ユーザインターフェースを含む。制御装置は、記憶部品を含み、および/または記憶部品と通信する。制御装置の適切な実現は、たとえば、マイクロプロセッサなどの1つ以上の集積回路を含む。単一の集積回路またはマイクロプロセッサは、いくつかの代替実施形態において、制御装置およびクロマトグラフィ装置のその他の電子部を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のマイクロプロセッサは、制御装置の機能を可能にするソフトウェアを実行する。いくつかの実施形態において、ソフトウェアは、汎用器機および/または本明細書に記載される機能性に特化された専用プロセッサ上で実行されるように設計されている。
【0042】
フローセンサ200は随意的に、簡素化された方式で、図3を参照して次に述べられるように、特徴付けられている。以下の記述は、本発明のいずれの実施形態の理論的解析または構成を限定する意図はなく、フローセンサ200の挙動のいくつかの可能な解釈を説明するために提示される、これらの解釈のいくつかは、流量と、ヒータ250および温度センサ240A、240B、240Cの出力信号から判断される計算されたパラメータとの間の便利な相関関係を提供する。たとえば、適切な出力パラメータの選択は随意的に、溶媒のタイプとは無関係またはほぼ無関係な値の決定を提供する。
【0043】
図3は、フローセンサ200に関連する簡素化された等価熱回路300の模式図である。回路300は、温度センサ240A、240B、240C、およびヒータ250の位置によって画定される、管210の4つの区画に対応する、4つのループ熱抵抗R、R、R、R、ヒータ250の出力Q、ヒータ250の位置における温度T、管210の末端において温度センサ240Cによって測定される基準温度T、流入口温度センサ240Aによって測定される流入側温度T、および流出口温度センサ240Bによって測定される流出側温度Tを含む。
【0044】
抵抗R、R、R、Rはそれぞれ、本明細書において記号Rと共に称される管材関連抵抗と、本明細書において記号Rと共に称される液体関連抵抗との組合せである。液体関連抵抗Rは、管材関連抵抗Rが一定であれば、管の中の液体の流量に応じて変化する。
【0045】
以下に示される、回路300の解析のため、温度センサ240A、240B、およびヒータ250は、抵抗R、R、R、Rがすべて流量ゼロで等しくなるように配置されると考えられる。これは通常、管末端温度センサ240Cおよびヒータ250から等距離の位置に温度センサ240A、240Bを配置することによって達成され、したがってループは左右対称に構成される。さらに、管210の一部とその部分を流れる液体との間で放射状に流れる熱はないと考えられ、したがって各抵抗R、R、R、Rは、その管材抵抗Rと液体抵抗Rとの並列組合せである。さらなる簡素化のため、各抵抗R、R、R、Rは、本明細書においてαと称される定数を有する、本明細書においてFと称される流量に対して、直線的に変化すると考えられている。式1aおよび1bは、抵抗値と流量との間の関係を提供する。
【数1】

【数2】

【0046】
これらの考察から、上記で定義された回路要素の間の様々な関係を導き出すことができる。たとえば、式1c、1d、および1eは、温度測定値と抵抗値と出力値との間の関係を提供する。
【数3】

【数4】

【数5】

【0047】
温度測定値T、T、T、Tは、流量Fと相互関連する計算可能なパラメータを提供するために様々な方法で使用することができる。一旦適切なパラメータが選択されると、流量Fの値は、温度測定によって取得可能である。たとえば、式2に示されるパラメータPは、そのようなある流量との相関関係を提供する。
【数6】

【0048】
式中、示されているように、Pは、温度測定から計算することが可能であり、熱源250の熱出力Qとは無関係である。なお、無関係性は、ループ形状の管の使用に依存するものではないことは、留意すべきである。直線管に基づくセンサも随意的に、熱出力とは無関係な測定値を取得するために、Pなどのパラメータの使用からの恩恵を受ける。
【0049】
は、流量Fに対して二次関係を有する。さらに、この関係は、たとえば、非常に薄い壁を有し、および/または管210の中の液体に対して高い熱抵抗を有する材料で形成される、管210を使用することによって得られるように、R>>Rの場合、実質的に一次的である。このように、P用の測定値は、たとえば式2を使用することによって流量に対する理論的な相関関係から、またはある関係を実験的に確立することによって、流量の値を提供する。
【0050】
式3は、流量Fに対する相関関係を与える別のパラメータPの一例を提供する。
【数7】

【0051】
およびPのいずれも、最大で1/αのおよそ1/10までのパラメータ値に対して、流量Fに対する実質的に直線的な関係を提供する。これらのパラメータ値は、与えられた流量Fに対して、溶媒抵抗Rによる、溶媒のタイプに応じても変化する。溶媒タイプ依存は、管材の並列熱抵抗および管材を流れる液体の並列熱抵抗に起因する。理論的には、式2および3の両方のモデルにおいて、無限大管材抵抗Rの提供は、パラメータPの溶剤依存を解消する。
【0052】
ナノフロー流量クロマトグラフィシステム向けに構成されたフローセンサの上記の具体例を拡大適用すると、管は、0.0508cmの外径と、0.0254cmの内径と、4.0cmの長さとを有するステンレス鋼管で形成され、液体は水および/またはアセトニトリルであって、αは1/(100μl/min)であって、Qは0.1Wである。PまたはPを使用する、流量センサ出力は、このように、およそ10μl/minに対して実質的に線形であり、すなわち低流量で実質的に線形である。
【0053】
注記したように、上記のパラメータ、すなわちPおよびPは、熱源250の熱出力Qの大きさとは無関係である。より一般的には、熱の大きさに対する独立性を提供するパラメータは、たとえば2つの温度センサから、または1つの温度センサから、または熱源からのたった2つの温度測定値を使用することによって、得られる。
【0054】
先に述べたようないくつかの実施形態において、熱量独立パラメータは、分子および熱依存が約分するかまたは実質的に約分する分母を有する、分数の一般的な形式を有する。たとえば、ある代替実施形態では、分子はΔT(2カ所での分子温度測定値の間の温度差)であって、分母は温度測定値の1つである。より一般的には、多くの実施形態において、熱出力独立パラメータは、1つの温度センサおよび/または別の温度センサからの少なくとも1つの温度測定値に対する、2つの温度センサの間の温度差の比率に関連する。
【0055】
熱源の大きさと無関係であることには、多くの利点がある。たとえば、本発明のいくつかの実現は、熱源の出力を注意深く制御する必要がなく、および/またはいくつかの既存のフローセンサよりも低コストの熱源を利用する。
【0056】
代替パラメータは随意的に利用され、そのうちのいくつかは、溶媒タイプとは無関係または実質的に無関係である。たとえば、次に記載するように、PおよびPの変形版の2つのこのようなパラメータは、本明細書においてTemptyと称される用語の使用を通じて、管210の熱伝導率を説明することによって、溶媒タイプからの独立を提供する。式4および5で下に示される、これら2つの例において、Temptyは、管210の中に液体が存在しない場合のパラメータPの分母またはパラメータPの分母の二倍に等しい。Temptyを計算するためのいずれの方法も、実質的に溶媒タイプと無関係なパラメータを得るための式4または5のいずれかにおいて、分母として随意的に使用される。Temptyという用語の使用、または類似の変形例は、管が無限大の熱抵抗を有する場合に得られる挙動に倣うパラメータを提供する。
【0057】
「空の」管状態で、管210に沿った熱伝導は、実質的に管自体に起因する。Temptyの値は、たとえば、管210がガスで満たされているかまたは真空であるときに温度測定を実行することによって、理論的または実験的に得られる。
【0058】
式4は、変更されたパラメータPを示すが、これは、一実施形態において、溶媒タイプの変化の影響を実質的に減らしながら、流量Fを提供するために測定される。
【数8】

【0059】
式5は、第二の代替の変更されたパラメータPを示すが、これは溶媒タイプとは無関係な計算値を提供する。
【数9】

【0060】
式4および5に示されるような、いくつかのパラメータは、流体素子が無限大の熱抵抗を有するかのように、流量検出素子の挙動に倣う。このように、PおよびPは、空流路状態に関する値に対する温度差の比率と関連がある。
【0061】
いくつかの溶媒と無関係なパラメータは、管材が無限大の熱抵抗を有するかのようなフロー測定値を得るために、溶媒抵抗の値の逆算から随意的に導かれる。溶媒タイプからの独立性を有する上述のパラメータが、ループ形状管の使用に依存していないことは、留意すべきである。溶媒タイプとは無関係な測定値を得るために、直線管に基づくセンサも随意的に、誘導においてPおよびPと類似のパラメータの使用からの恩恵を受ける。
【0062】
変更されたパラメータの測定値であるPおよびPは、熱出力への依存を有する。熱出力の大きさおよび溶媒タイプの両方の選択とは無関係な測定値を有するパラメータを提供するために、ある意味において、たとえば上述のような、さらなる変更が随意的に施される。
【0063】
およびPを利用するような、いくつかの実施形態は、周囲温度および溶媒タイプからの実質的または完全な独立、比較的高い感度、比較的低い雑音、および線形応答を提供する。
【0064】
フローセンサのいくつかの実施形態は、測定可能な流量の複数の範囲を提供する。測定可能な流量範囲は、たとえば、温度センサの位置決めに関連して選択可能である。たとえば、式2のパラメータPの使用と組み合わせて、温度センサ240A、240Bの等距離の配置は、流量値の最低範囲をカバーする流量範囲を提供する。つまり、範囲内の最小および最大の値の両方が最小限となる。この実現はまた、フローセンサ200に流量測定の最高の感度を提供する。あるいは、温度センサ240A、240Bは、フローセンサ200に異なる測定可能流量範囲を提供するために、異なる位置に配置される。
【0065】
たとえば、ここでもPの使用と組み合わせて、温度センサ240A、240Bを管末端温度センサ240Cよりもヒータ250に近く、またはその逆になるように位置決めすることで、上述の等距離構成でのそれらの値と比較して、最大および最小の両方の測定可能流量が増加する。つまり、上流および下流温度センサ240A、240Bがヒータ250または管末端温度センサ240Cに近い位置に配置されるほど、高い流量範囲が得られる。したがって、これらの非等距離構成は、流量感度は低いが、流量範囲は高くなる。
【0066】
具体的な一例として、ヒータ250からよりも管末端センサ240Cからの方が3倍遠くなるようにセンサ240Aおよび240Bを配置することで、最大および最小の測定可能流量を33%増加させる。
【0067】
いくつかの実施形態は、追加の上流および/または下流温度センサを含むことによって、2つ以上の流量範囲を支援する。たとえば、あるフローセンサは随意的に、等距離位置にある1対のセンサ、第一の対と熱源との間の途中にある第二の対、および第二の対と熱源との間の途中にある第三の対を含む。
【0068】
本発明は、当業者が本明細書に提供された記述を考慮してこのような実施形態に変更および修正を施すことができるという理解の下、いくつかの例示的な実施形態に関して記述されてきた。たとえば、本発明の代替実施形態は、記載されたいずれかの実施形態と同じ、またはすべての特徴を含む必要はない。たとえば、フローセンサの代替実施形態は、2つ以上のヒータおよび/または3つより少ないもしくは多い温度センサを含み、および/または、たとえば直列および/または並列に配置された2つ以上の管を含む。ヒータ源(複数可)および/または温度センサ(複数可)は、左右対称および/または非対称の位置に設けられる。さらに、流路は、管以外の様々な流体素子に設けられてもよい。したがって、本発明は、明細書において先に述べられた詳細の通りに限定されるべきではなく、以下の請求項の対象およびその等価物の内容を包含すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路の中間点よりも相互に近く配置された流入末端および流出末端を有する流路を形成する流体素子と、
流路中の液体と熱的に連絡するように配置された熱源と、
流路中の液体と熱的に連絡するように配置された上流温度センサと、
上流温度センサの下流の位置で流路内の液体と熱的に連絡するように配置された下流温度センサとを含む、フローセンサ。
【請求項2】
流体素子が管を含む、請求項1に記載のフローセンサ。
【請求項3】
管がループの形状である、請求項2に記載のフローセンサ。
【請求項4】
液体が流路の中間点を流れるときに液体を加熱するために、熱源が流路の中間点に隣接して配置されている、請求項1に記載のフローセンサ。
【請求項5】
熱源が、上流温度センサと下流温度センサとの間の流路に沿って配置されている、請求項1に記載のフローセンサ。
【請求項6】
上流および下流温度センサが、熱源と、流路の流入末端および流出末端とから、それぞれ実質的に等距離にある、請求項5に記載のフローセンサ。
【請求項7】
流路の流入末端および流出末端と熱的に連絡し、流路の流入末端および流出末端に共通の周囲温度を提供する基板をさらに含む、請求項1に記載のフローセンサ。
【請求項8】
基板が、流路の流入末端および流出末端とそれぞれ結合する、流入路および流出路を形成する、請求項7に記載のフローセンサ。
【請求項9】
流体素子を少なくとも部分的に囲み、基板と物理的に連絡するように配置された、絶縁カバーをさらに含む、請求項7に記載のフローセンサ。
【請求項10】
流路の流入末端および流出末端と熱的に連絡するように配置された末端温度センサをさらに含む、請求項1に記載のフローセンサ。
【請求項11】
温度センサのうち少なくとも1つが点温度センサを含む、請求項1に記載のフローセンサ。
【請求項12】
熱源が点熱源を含む、請求項1に記載のフローセンサ。
【請求項13】
上流および下流温度センサによって支援される流量範囲とは異なる流量範囲の測定を支援するための位置で、流路中の液体とそれぞれ熱的に連絡する、第二上流温度センサおよび第二下流温度センサをさらに含む、請求項1に記載のフローセンサ。
【請求項14】
第二上流および第二下流温度センサが、上流および下流温度センサよりも熱源からの方が近くまたは遠くなるようにそれぞれ配置された、請求項13に記載のフローセンサ。
【請求項15】
上流および下流温度センサから出力信号を受信し、温度センサの非線形性および温度センサ間の挙動不一致を適合させるために信号を処理するように構成された、制御装置をさらに含む、請求項1に記載のフローセンサ。
【請求項16】
流体素子が、液体の熱抵抗よりも遙かに大きい熱抵抗を有する、請求項1に記載のフローセンサ。
【請求項17】
熱源が、温度センサのうちの1つと共に配列され、または同じ装置である、請求項1に記載のフローセンサ。
【請求項18】
流路が、ナノフロー流量を測定するように構成された、請求項1に記載のフローセンサ。
【請求項19】
流路を形成する流体素子と、
流路中の液体に熱を伝達するように配置された熱源と、
流路中の液体と熱的に連絡するように配置された上流温度センサと、
液体と熱的に連絡するように配置され、少なくとも液体が流れている場合に温度差を有する、下流温度センサとを含むフロー検出素子を提供するステップと、
伝達される熱の大きさと実質的に無関係な流量パラメータの値を決定するステップであって、パラメータが温度のうちの少なくとも1つに対する温度差の比率と関連があるステップとを含む、フローを検出する方法。
【請求項20】
流路を形成する流体素子と、
流路中の液体に熱を伝達するように配置された熱源と、
流路中の液体と熱的に連絡するように配置された上流温度センサと、
液体と熱的に連絡するように配置され、少なくとも液体が流れている場合に温度差を有する、下流温度センサと含むフロー検出素子を提供するステップと、
液体のタイプと実質的に無関係な流量パラメータの値を決定するステップであって、パラメータが流体素子が無限大の熱抵抗を有する場合のフロー検出素子の挙動に倣い、パラメータが空流路状態に関する値に対する温度差の比率と関連があるステップとを含む、フローを検出する方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−510298(P2011−510298A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543178(P2010−543178)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/030791
【国際公開番号】WO2009/091703
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(509131764)ウオーターズ・テクノロジーズ・コーポレイシヨン (46)
【Fターム(参考)】