説明

熱交換器およびこれを備えた温水装置

【課題】部品総数が少なく、製造コストを従来よりも低減することが可能な熱交換器を提供する。
【解決手段】ケースCは、伝熱管T1,T2の上下前後の全周囲を取り囲む複数の壁部50a〜50dを有する角筒状のケース本体部5を有し、かつこのケース本体部5には、伝熱管T1,T2を加熱するための加熱用気体の給気口51a,51bと排気口52とが設けられている、熱交換器HEであって、ケース本体部5は、複数の壁部50a〜50dに相当する領域を有する1枚のプレート材5’を角筒状に折り曲げることにより形成されており、ケース本体部5の複数の壁部50a〜50dのうち、いずれか1つの壁部には、一部の領域がその周辺領域よりも外方に突出した形態をもつ突出部56が一体的に形成され、かつこの突出部56の先端面領域に、排気口52が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース内に伝熱管が収容された構成を有する熱交換器、およびこの熱交換器を備えた給湯装置などの温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給湯装置用の熱交換器の具体例として、特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された熱交換器は、伝熱管を収容するケースが角筒状(矩形筒状)の本体部を有しており、この本体部は所定構造に形成された2つの部材を接合することにより構成されている。このような構成によれば、ケースの構成部品の総数を少なくし、熱交換器の製造コストを低減することが可能である。
【0003】
しかしながら、熱交換器の製造コストをより低減することが強く望まれる場合が多い。これに対し、前記従来技術においては、ケースの本体部を2つの部材で構成し、これらを接合しているために、前記2つの部材を別々に製作してこれらを組み立てる製造工程が比較的多くなり、製造コストを低減する上で、未だ改善の余地がある。また、給湯装置の熱交換器は、給湯装置を構成するバーナなどと一緒に外装ケース内に収容されるのが一般的である。従来では、このような場合において、熱交換器によって熱回収を終えた排ガスを外装ケースの外部に排出させるための手段として、熱交換器の排気口に排ガスガイド用の部材(排気トップ)を別途取り付けていたのが通例である。したがって、熱交換器とは別個にそのような排気トップを製作して熱交換器に取り付ける作業も煩雑となり、その分だけ製造コストがさらに高くなる不具合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−180398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、部品総数が少なく、製造コストを従来よりも低減することが可能な熱交換器、およびこれを備えた温水装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本発明の第1の側面により提供される熱交換器は、伝熱管を内部に収容するケースを備え、このケースは、前記伝熱管の上下前後の全周囲を取り囲む複数の壁部を有する角筒状のケース本体部を備え、かつこのケース本体部には、前記伝熱管を加熱するための加熱用気体の給気口と排気口とが設けられている、熱交換器であって、前記ケース本体部は、前記複数の壁部に相当する領域を有する1枚のプレート材を角筒状に折り曲げることにより形成されており、前記ケース本体部の複数の壁部のうち、いずれか1つの壁部には、一部の領域がその周辺領域よりも外方に突出した形態をもつ突出部が一体的に形成され、かつこの突出部の先端面領域に、前記排気口が設けられていることを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、伝熱管を収容するケースのケース本体部は、1枚のプレート材を角筒状に折り曲げて形成されているために、ケースの構成部材の総数を従来よりも少なくし、ケースの製造作業が簡素化される。また、排気口は、ケース本体部のいずれかの
壁部に一体的に形成された突出部の先端面領域に設けられているために、この突出部を、従来の排気トップとして、または排気トップの一部として役立たせることが可能となる。したがって、熱交換器とは別個に排気トップを製作して熱交換器に取り付ける必要を無くしたり、あるいは排気トップの小型化を図ることができる。このようなことから、本発明によれば、熱交換器全体の製造コストを従来と比較して大幅に低減することができる利点が得られる。
【0009】
本発明において、好ましくは、前記角筒状に折り曲げられたプレート材の両端縁部どうしの接合箇所は、前記給気口および排気口よりも高い位置に設けられている。
【0010】
このような構成によれば、本発明に係る熱交換器が、たとえば潜熱回収用途に用いられて、この潜熱回収に伴って強酸性のドレイン(凝縮水)が熱交換器内に発生する場合であっても、前記の接合箇所に多くのドレインが接触しないようにすることが可能となる。すなわち、接合箇所が給気口や排気口よりも低い高さに設けられていると、多くのドレインが接合箇所に接触する虞があるが、前記構成によれば、そのような虞を少なくすることができる。接合箇所が、たとえば溶接部である場合、この部分に強酸性のドレインが接触することは腐食防止などの観点から好ましいものではないが、前記構成によれば、そのようなことを好適に回避することが可能である。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記ケース本体部は、下壁部の前後両端縁から前壁部および後壁部が上向きに屈曲し、かつ前記後壁部または前壁部の上端縁から上壁部が略水平に屈曲した形態を有し、前記上壁部の先端縁には、上向きに屈曲した屈曲片部がさらに形成され、この屈曲片部は、前記前壁部または後壁部の上端縁に重ね合わされて接合されている。
【0012】
このような構成によれば、ケース本体部の製造に際し、原材料となる1枚のプレート材に施される曲げ加工数を少なくしつつ、プレート材の両端縁どうしを的確に接合することが可能であり、ケース本体部の製造をより容易化することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記ケースは、前記ケース本体部の端部開口を塞ぐための側板を備え、前記伝熱管は、入水側および出湯側の両端寄り管体部が前記側板の内側から外側に貫通し、かつこの貫通部分において前記側板と固定されており、
前記側板が前記ケース本体部の端部に固定して組み付けられていることにより、前記ケース本体部に対する前記伝熱管の固定が図られている。
【0014】
このような構成によれば、ケースの側板を利用して伝熱管の固定が図られているために、伝熱管を固定させるための構造が簡素化され、熱交換器の組み立て作業性がさらに良好となる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記ケース本体部の端部開口の周縁には、内向きに突出した1または複数の凸部が形成されており、前記側板は、前記端部開口に嵌入して前記凸部に当接していることにより、前記ケース本体部との位置決めが図られている。
【0016】
このような構成によれば、ケース本体部に対する側板の取り付けが作業の容易化ならびに的確化が図られる。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記ケース本体部の下壁部には、上向きの凸状部が前記側板から離間した配置に設けられ、かつこの凸状部上には、前記伝熱管のうち、前記側板とは反対側の端部が載せられて支持されており、前記凸状部よりも前記側板寄りの領域においては、前記伝熱管の下部と前記ケース本体部の下壁部との間に、前記加熱用気体を通
過させるための隙間が形成されている。
【0018】
このような構成によれば、前記凸状部の存在に基づき、伝熱管の取り付け固定状態がより安定化する効果が得られる。また、伝熱管の下部とケース本体部の下壁部との間に形成された隙間に加熱用気体を通過させることができるために、伝熱管の下部が加熱用気体からの熱回収用途に効率良く利用され、熱交換効率を良好にする上でも好ましいものとなる。
【0019】
本発明において、好ましくは、前記ケース本体部の下壁部には、前記隙間を小さくするための上向きの段部が形成され、かつこの段部上に前記凸状部が設けられており、前記ケース本体部の下壁部のうち、前記段部よりも加熱用気体流れ方向下流側の位置には、ドレイン排出口が設けられているとともに、前記段部よりも加熱用気体流れ方向上流側および下流側には、前記下壁部の左右幅方向に延びる第1および第2の凹部が形成され、かつ前記下壁部の左右幅方向一端側には、前記第1および第2の凹部の一端部どうしを繋ぐ第3の凹部が形成されており、前記伝熱管から前記下壁部上に流れ落ちたドレインは、前記第1ないし第3の凹部内のいずれかを流れて前記ドレイン排出口に導かれるように構成されている。
【0020】
このような構成によれば、前記段部が設けられていることによって、伝熱管の下部とケース本体部の下壁部との隙間を小さくすることができるために、伝熱管の下部に加熱用気体を作用し難くし、熱交換効率を高める上でより好ましいものとなる。一方、熱回収に伴って発生するドレインについては、第1ないし第3の凹部を利用してドレイン排出口に導いてからケース外部に的確に排出することが可能であり、前記段部の存在によってドレインの排出が困難になるといった不具合を生じないようにすることができる。
【0021】
本発明の第2の側面により提供される温水装置は、本発明の第1の側面により提供される熱交換器を備えていることを特徴としている。
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される熱交換器について述べたのと同様な効果が得られる。
【0022】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る温水装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】図1に示す温水装置に具備された熱交換器(本発明に係る熱交換器の一例に相当)の斜視図である。
【図5】図4に示す熱交換器の分解斜視図である。
【図6】図4に示す熱交換器の平面断面図である。
【図7】図4に示す熱交換器のケースの下壁部の構成を示す概略平面断面である。
【図8】図4に示す熱交換器の分解断面図である。
【図9】本発明に係る熱交換器の他の例を示す平面断面図である。
【図10】本発明に係る熱交換器の他の例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
図1に示す温水装置WHは、2系統の給湯動作が可能な給湯装置として構成されており
、燃料ガスなどの燃料を個別に燃焼させることが可能なバーナ3a,3b、これらバーナ3a,3bに燃焼用空気を供給するファン31、バーナ3a,3bによって発生された燃焼ガスから顕熱を回収するための1次熱交換器1a,1b、および前記燃焼ガスから潜熱を回収するための2次熱交換器HEを具備している。2次熱交換器HEは、本発明に係る熱交換器の一例に相当し、1次熱交換器1a,1bは、本発明に係る熱交換器の具体例には相当しない。本実施形態における2次熱交換器HEは、1つのケースC内に2系統の伝熱管T1,T2が収容された1缶2回路方式とされ、図4に示すような外観形態を有する。ただし、その詳細については、後述する。
【0026】
1次熱交換器1a,1bは、たとえば多数枚のフィン12を備えた伝熱管11a,11bが缶体30内に配され、かつ仕切壁32によって仕切られた構成である。1次熱交換器1a,1bを通過した燃焼ガスは、ガイド部材39を利用して2次熱交換器HEに供給される。図2および図3に示すように、1次熱交換器1a,1bを上向きに通過した燃焼ガスは、ガイド部材39内を通過して2次熱交換器HEの給気口51a,51bからケースC内に流入して伝熱管T1,T2に個別に作用し、その後は共通の排気口52から外部に排ガスとして排出される。もちろん、排気口52については、給気口51a,51bと同様に2つ設けた構成としてもよい。
【0027】
図1において、2次熱交換器HEの伝熱管T1,T2の両端には、入水用のヘッダ80a,80b、および出湯用のヘッダ81a,81bが連結されている。入水用のヘッダ80aに供給された湯水は、伝熱管T1内を通過して加熱された後に、出湯用のヘッダ81aおよび配管部82を介して1次熱交換器1aに送られてさらに加熱され、出湯口14aから出湯する。この湯水は、たとえば一般給湯に用いられ、台所や洗面所などに供給される。一方、入水用のヘッダ80bに供給された湯水は、伝熱管T2内を通過して加熱された後に、出湯用のヘッダ81bおよび配管部83を介して1次熱交換器1bに送られてさらに加熱され、出湯口14bから出湯する。この湯水は、たとえば暖房あるいは風呂給湯用途に用いられる。不凍液も前記湯水の概念に含まれる。
【0028】
次に、2次熱交換器HEの構成について、より詳細に説明する。
【0029】
2次熱交換器HEのケースCは、略直方体状であり、左右両端部が開口した角筒状(矩形筒状)のケース本体部5と、端部開口53a,53bを塞ぐ側板6a,6bとを有している。ケース本体部5は、図2および図3に示すように、伝熱管T1,T2の上下前後の全周を囲む複数の壁部として、上壁部50a、下壁部50b、前壁部50c、および後壁部50dを有している。給気口51a,51bは、後壁部50dに設けられ、排気口52は、前壁部50cに設けられている。ケース本体部5は、図5に示すように、複数の壁部50a〜50dのそれぞれに対応する領域(壁部50a〜50dと同一符号を付している)を有する1枚のプレート材5’を、角筒状に折り曲げることにより形成されている。このプレート材5’は、たとえばステンレス製の金属板に、前記した給気口51a,51bや排気口52を形成し、さらには後述する所定の部分についても適宜プレス加工により形成したものである。
【0030】
図2および図3に示すように、ケース本体部5は、下壁部50bの前後両端縁から前壁部50cおよび後壁部50dが上向きに起立して屈曲し、かつ後壁部50dの上端縁から上壁部50aが略水平に屈曲した形態を有している。上壁部50aの先端縁には、上向きに屈曲した屈曲片部50eが一体的に形成されている。この屈曲片部50eと前壁部50cの上端縁とは、互いに重ね合わされ、かつこの重ね合わされた部分は、たとえば溶接が施された接合部J1とされている。この接合部J1は、本発明でいう「プレート材の両端縁部どうしの接合箇所」の一例に相当する。プレート材5’に溶接を施した場合、この溶接部分の耐食性が低下する虞があるが、本実施形態では接合部J1がケース本体部5の最
上部またはそれに近い高さに位置している。このような構成によれば、燃焼ガスからの潜熱回収に伴って発生する強酸性のドレインが接合部J1に接触し難くなり、接合部J1の腐食を防止する上で好ましいものとなる。前壁部50cの上端縁近傍には、ケースCの内側に向けて突出した凸部55aが一体的に形成されており、上壁部50aの先端縁はこの凸部55aの上面部に当接することにより上下高さ方向の位置決めが可能とされている。好ましくは、凸部55aは、ケース本体部5の幅方向に間隔を隔てて左右一対に設けられており、上壁部50aに当接する面は平面状とされ、かつそれらの高さは同一に揃えられている。このことにより、前壁部50cと上壁部50aの屈曲片部50eの端面どうしを正確に揃わせることができる。
【0031】
ケース本体部5の前壁部50cには、一部の領域がその周辺部よりも前方に張り出した形態をもつ突出部56が一体的に形成されており、この突出部56の先端面領域に排気口52および補助開口部54が設けられている。突出部56は、図4および図5に示すように、前壁部50cの左右幅方向に延びた形態を有し、排気口52もそれと同様に左右幅方向に延びた細長状である。突出部56は、排気トップとしての役割を果たすものであり、図2および図3に示すように、温水装置WHの各部を囲む外装ケース90の外部に排ガスを導くのに役立つ。
【0032】
補助開口部54は、潜熱回収に伴って発生するドレインが何らかのトラブルによりドレイン用の排出口22からケースCの外部に排出されない事態が発生し、ケースC内に溜まったドレインの水位が異常上昇した場合に、このドレインをケースCの外部に排出させるための部分である。この補助開口部54は、排気口52よりも低い位置に設けられているが、さらには給気口51a,51bの下縁部よりも低い高さに設けられている。このことにより、ケースC内にドレインが不当に溜まった場合には、このドレインが給気口51a,51bに流れ込まないようにすることが可能である。
【0033】
ケースC内の前部には、消音材7a,7bやシール材7cがブラケット70,71に支持されて設けられている。これらの構成要素は、図4〜図7においては省略するが、少なくとも消音材7a,7bやシール材7cは、ケースCの左右幅方向に一連に延びた形態に設けられている。ブラケット70,71は、ステンレス板を屈曲するなどして形成されており、たとえばスポット溶接によってケースCに固定されている。消音材7a,7bは、燃焼ガスの排気音を低減するためのものであるが、接合部J1の近傍に位置する消音材7aやブラケット70は、ドレインが接合部J1に飛散することを防止する役割も果たす。シール材7cは、燃焼ガスが補助開口部54に向けて進行することを規制する役割を果たし、このことにより補助開口部54から多くの排ガスが外部に排出されないようにすることができる。また、消音材7a,7bやシール材7cは、伝熱管T1,T2よりも前方に配置されているために、温水装置WHの運転停止時において外気温が低下した場合に、熱交換器HEの前方から吹き込む冷気などに起因して、伝熱管T1,T2の前部が冷却されて凍結するといった不具合を抑制する効果も得られる。
【0034】
伝熱管T1,T2は、ともに平面視長円状の複数の螺旋状管体が略同心の重ね巻き状に配された構成を有している。伝熱管T1の下端寄りおよび上端寄り部分は、略水平に延びる直管部20a,20bとされ、これら直管部20a,20bの外端寄り部分はケースCの側板6aを貫通している。この貫通部分において、伝熱管T1と側板6aとは接合され、互いに固定されている。伝熱管T2と側板6bとの関係も、前記と同様であり、伝熱管T2の下端寄りおよび上端寄り部分の略水平に延びる直管部21a,21bは、ケースCの側板6bを貫通し、かつこの貫通部分において伝熱管T2と側板6bとは互いに接合されて固定されている。
【0035】
側板6a,6bは、ケース本体部5の両端部開口53a,53bに嵌入され、かつこの
両端部開口53a,53bの周縁部に接合されている。このことにより、ケース本体部5に対する側板6a,6bの固定が図られ、さらには伝熱管T1,T2の固定も図られている。図8によく表われているように、ケース本体部5の両端部開口53a,53bの周縁には、内向き状に突出した複数の凸部55bがケース本体部5に一体形成されている。側板6a,6bを両端部開口53a,53bに嵌入させる際には、これら凸部55bに側板6a,6bを当接させることにより、側板6a,6bの位置決めを図ることが可能である。好ましくは、これら複数の凸部55bのうち、側板6a,6bと当接する部分は平面状とされて、側板6a,6bとの面接触により好適な位置決めが図られるように構成されている。なお、ケースC内のうち、伝熱管T1,T2どうしの間には、仕切板68が介装される。
【0036】
図2および図3に示すように、ケースCの上壁部50aには、伝熱管T1,T2の上部と上壁部50aとの隙間c1を小さくするための下向き状の段部50a’が設けられている。同様に、ケースCの下壁部50bには、伝熱管T1,T2の下部と下壁部50bとの隙間c2を小さくするための上向きの段部50b’が設けられている。このように隙間c1,c2を小さくすると、給気口51a,51bからケースC内に流入した燃焼ガスが、それらの隙間c1,c2を通過する際に、この燃焼ガスを伝熱管T1,T2の上部および下部に効率良く作用させることが可能である。
【0037】
下壁部50bの段部50b’には、伝熱管T1を支持するための上向きの凸状部57がさらに設けられている。この凸状部57は、隙間c2の全長域を塞がないように側板6a,6bから離間した適当なサイズに形成されており、伝熱管T1のうち、側板6aとは反対側の端部は、この凸状部57上に載せられて支持されている。このことにより、伝熱管T1のより安定的な支持が図られる。なお、本実施形態では、他方の伝熱管T2の配置箇所には、凸状部57に相当する手段は設けられていない。その理由は、伝熱管T2が比較的小サイズであって、軽量であるために、凸状部57に相当する手段を設けなくても、安定的な支持を図ることが可能だからである。ただし、本実施形態とは異なり、伝熱管T2を支持するための凸状部を下壁部50bに設けてもよい。
【0038】
ケースCの下壁部50bには、ドレイン排出口22に向けてドレインを積極的に導くための手段が講じられている。すなわち、図7に示すように、ドレイン排出口22は、ケースCの前壁部50c寄りの位置であって、ケースCの幅方向の一端側(本実施形態では、側板部6b側)に設けられている。これに対し、段部50b’よりも後壁部50d側の位置および前壁部50c側の位置には、第1および第2の凹部23a,23b(幅Sa,Sbの部分)がケースCの左右幅方向に延びて形成されている。また、ケースCの幅方向一端側には、第1および第2の凹部23a,23bの一端部どうしを繋ぐ第3の凹部23c(幅Scの部分)が設けられている。これら第1ないし第3の凹部23a〜23cは、平面視コ字状に繋がっており、ドレインを図7の矢印N1で示す方向に流れるようにガイドし、ドレイン排出口22に導く役割を果たす。好ましくは、第1ないし第3の凹部23a〜23cの底面部は、前記の矢印N1方向に進むほどその高さが低くなるように傾斜した構成とされている。下壁部50bの段部50b’は、伝熱管T1,T2からその上面部にドレインが流れ落ちてきたときには、このドレインを第1ないし第3の凹部23a〜23c内に円滑に流れ込ませることが可能な形態である。
【0039】
次に、前記した温水装置WHの作用について説明する。
【0040】
まず、2次熱交換器HEのケースCは、そのケース本体部5が1枚のプレート材5’を角筒状に折り曲げて形成されたものであるために、ケースCの構成部材の総数を少なくすることができる。とくに、本実施形態では、プレート材5’の両端縁を接合するための手段として、上壁部50aの先端縁に形成された屈曲片部50eと前壁部50cの上端縁と
を重ね合わせているために、これらの部分から外部への燃焼ガス漏れを生じないように、これらの部分をシール性が良好な状態に的確に接合することが可能である。また、接合部J1がケースCの上部に配置されて、この接合部J1にドレインが接触し難くなる効果が得られることは既に述べたとおりである。
【0041】
ケースCの前壁部50cに設けられた突出部56は、図2および図3を参照して説明したように、外装ケースCの外部に排ガスを導くための排気トップとして機能するが、この突出部56は、前壁部50cに一体的に形成されたものである。したがって、排気トップを別途準備してケースCに組み付ける場合と比較すると、2次熱交換器HEの製造作業はかなり簡略化される。伝熱管T1,T2は、側板6a,6bに接合されており、側板6a,6bをケース本体部5に組み付けると同時にこれら伝熱管T1,T2についてのケースCへの組み込み、およびその固定も行なわれる。とくに、伝熱管T1については、下壁部50bに一体形成された凸状部57を利用して安定的に支持することが可能である。このようなことから、2次熱交換器HEの製造がより容易化され、2次熱交換器HEの製造コスト、ひいては温水装置WHの全体の製造コストを低減することができる。
【0042】
その他、本実施形態によれば、既述したように、2次熱交換器HEにおいて発生したドレインについては、第1ないし第3の凹部23a〜23cを利用してドレイン排出口22に円滑に導くことが可能である。ドレインが凸状部57や段部50b’によって塞き止められてその排出が困難になるといった不具合も適切に回避することが可能である。
【0043】
図9および図10は、本発明の他の実施形態を示している。同図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0044】
図9に示す実施形態においては、2次熱交換器HEがケースC内に伝熱管T1のみが収容され、前記した伝熱管T2に相当する伝熱管は収容されていない。このため、側板6bは、伝熱管との接合が図られた構成にはされておらず、単に端部開口53bを閉塞する部材として構成されている。本実施形態から理解されるように、本発明に係る熱交換器は、1缶複数回路方式のものに代えて、1缶1回路方式とすることもできる。なお、1缶1回路方式の熱交換器を2つ用いて、それらに対応するバーナを2つ用いる場合、燃焼用空気供給用のファンについては、各バーナに対応させて1つずつ設けた構成とすることができる。
【0045】
図10に示す実施形態においては、ケースCの側板6aは、外周縁に形成されているフランジ部60がケース本体部5の端部に外嵌した状態に取り付けられている。このような構成によっても、側板6aをケース本体部5の端部に対して的確に位置決めして取り付けることが可能である。
【0046】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る熱交換器、および温水装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0047】
上述の実施形態では、ケースCの前壁部50cと上壁部50aとは、それらの端縁部どうしが直接的には繋がっておらず、これらの箇所が接合箇所(接合部J1)とされているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、上壁部50aと後壁部50dとの端縁部どうしが直接繋がっていない構成とした上で(この場合、上壁部50aと前壁部50cとは屈曲した状態で直接繋がっている)、これら上壁部50aと後壁部50dとの端縁部どうしを接合させてもよい。この場合においても、接合箇所をケースCの最上部またはそれに近い高さに配置させてドレインを接触し難くすることができる。もちろん、本発明では、前記以外の箇所を接合箇所とすることができる。
【0048】
本発明に係る熱交換器のケース本体部は、角筒状とされるが、本発明でいう角筒状とは、円筒状や楕円筒状のように角部を有しない筒状形状については除外する趣旨であり、正確な矩形断面形状を有する筒状である必要はない。また、本発明に係る熱交換器においては、給気口および排気口の形成箇所も適宜変更可能である。たとえば、上述した実施形態とは反対に、給気口をケースの前壁部に設け、排気口をケースの後壁部に設けた構成とすることもできる。この場合、排気トップとしての役割を果たす突出部は、ケースの後壁部に形成されることは言うまでもない。給気口をケースの底壁部に設けることによって、その下方に位置する1次熱交換器を通過した燃焼ガスを給気口に直接流入させるといった構成を採用することもできる。突出部は、細長状に突出した形態以外として、円筒状や角筒状などに形成してもよいことは勿論である。
【0049】
伝熱管は、螺旋状管体を用いたものに限らず、たとえばU字管や蛇行状のフレキシブル管などを用いた構成とすることもできる。本発明でいう加熱用気体としては、燃焼ガス以外の気体を用いることもできる。たとえば、コージェネレーションシステムの燃料電池あるいはガスエンジンなどから排出される排ガスなども利用することができる。本発明に係る熱交換器は、潜熱回収用に限らず、顕熱回収用にも用いることが可能であり、その種別は問わない。本発明でいう温水装置とは、湯を生成する機能を備えた装置の意であり、一般給湯用、風呂給湯用、暖房用、あるいは融雪用などの各種の給湯装置、および給湯以外に用いられる湯を生成する装置を広く含む。
【符号の説明】
【0050】
WH 温水装置
HE 2次熱交換器(本発明に係る熱交換器)
C ケース
J1 接合部
T1,T2 伝熱管
c1,c2 隙間
5 ケース本体部
5’ プレート材
6a,6b 側板
22 ドレイン用の排出口
23a〜23c 第1ないし第3の凹部
50a 上壁部
50b 下壁部
50b’ 段部
50c 前壁部
50d 後壁部
50e 屈曲片部
51a,51b 給気口
52 排気口
53a,53b 端部開口(ケース本体部の)
55b 凸部
57 凸状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱管を内部に収容するケースを備え、
このケースは、前記伝熱管の上下前後の全周囲を取り囲む複数の壁部を有する角筒状のケース本体部を備え、かつこのケース本体部には、前記伝熱管を加熱するための加熱用気体の給気口と排気口とが設けられている、熱交換器であって、
前記ケース本体部は、前記複数の壁部に相当する領域を有する1枚のプレート材を角筒状に折り曲げることにより形成されており、
前記ケース本体部の複数の壁部のうち、いずれか1つの壁部には、一部の領域がその周辺領域よりも外方に突出した形態をもつ突出部が一体的に形成され、かつこの突出部の先端面領域に、前記排気口が設けられていることを特徴とする、熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記角筒状に折り曲げられたプレート材の両端縁部どうしの接合箇所は、前記給気口および排気口よりも高い位置に設けられている、熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱交換器であって、
前記ケース本体部は、下壁部の前後両端縁から前壁部および後壁部が上向きに屈曲し、かつ前記後壁部または前壁部の上端縁から上壁部が略水平に屈曲した形態を有し、
前記上壁部の先端縁には、上向きに屈曲した屈曲片部がさらに形成され、この屈曲片部は、前記前壁部または後壁部の上端縁に重ね合わされて接合されている、請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の熱交換器であって、
前記ケースは、前記ケース本体部の端部開口を塞ぐための側板を備え、
前記伝熱管は、入水側および出湯側の両端寄り管体部が前記側板の内側から外側に貫通し、かつこの貫通部分において前記側板と固定されており、
前記側板が前記ケース本体部の端部に固定して組み付けられていることにより、前記ケース本体部に対する前記伝熱管の固定が図られている、熱交換器。
【請求項5】
請求項4に記載の熱交換器であって、
前記ケース本体部の端部開口の周縁には、内向きに突出した1または複数の凸部が形成されており、
前記側板は、前記端部開口に嵌入して前記凸部に当接していることにより、前記ケース本体部との位置決めが図られている、熱交換器。
【請求項6】
請求項4または5に記載の熱交換器であって、
前記ケース本体部の下壁部には、上向きの凸状部が前記側板から離間した配置に設けられ、かつこの凸状部上には、前記伝熱管のうち、前記側板とは反対側の端部が載せられて支持されており、前記凸状部よりも前記側板寄りの領域においては、前記伝熱管の下部と前記ケース本体部の下壁部との間に、前記加熱用気体を通過させるための隙間が形成されている、熱交換器。
【請求項7】
請求項6に記載の熱交換器であって、
前記ケース本体部の下壁部には、前記隙間を小さくするための上向きの段部が形成され、かつこの段部上に前記凸状部が設けられており、
前記ケース本体部の下壁部のうち、前記段部よりも加熱用気体流れ方向下流側の位置には、ドレイン排出口が設けられているとともに、前記段部よりも加熱用気体流れ方向上流側および下流側には、前記下壁部の左右幅方向に延びる第1および第2の凹部が形成され、かつ前記下壁部の左右幅方向一端側には、前記第1および第2の凹部の一端部どうしを
繋ぐ第3の凹部が形成されており、
前記伝熱管から前記下壁部上に流れ落ちたドレインは、前記第1ないし第3の凹部内のいずれかを流れて前記ドレイン排出口に導かれるように構成されている、熱交換器。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の熱交換器を備えていることを特徴とする、温水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−47575(P2013−47575A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185365(P2011−185365)
【出願日】平成23年8月27日(2011.8.27)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】