説明

熱交換器の解体方法及び解体装置

【課題】熱交換パイプの間隔に左右されず、簡易かつ確実に、熱交換パイプに対する放熱板の結合を解除する熱交換器の解体方法を提供する。
【解決手段】熱交換パイプ41の配列方向を水平方向に揃えた横倒し姿勢にある熱交換器4を移動台1に載せて送り方向に移動させる移送手段と、前記移送手段の移動台1の軌道に交差して配置される切断手段とからなり、切断手段は実効長さが熱交換パイプ41の配列方向を水平方向に揃えた横倒し姿勢にある熱交換器4の少なくとも幅又は長さより長く、熱交換パイプ41の厚みの範囲で前記熱交換パイプ41の配列方向に揃えて、移動手段の移動台の1送り方向上流側に向けたバンドソーブレード27を有し、移送手段の移動台1に載せた横倒し姿勢の熱交換器4が前記切断手段のバンドソーブレード27を通過する際に、前記バンドソーブレード27により熱交換パイプ41及び放熱板42が同時に切断される熱交換4器の解体装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれが直交する配列方向を有する放熱板及び熱交換パイプからなる熱交換器の解体方法及び解体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空調装置(エアーコンディショナー、以下「エアコン」と略する)について、平成13年4月、家電リサイクル法(正式名:特定家庭用機器再商品化法)の施行により、60%以上のリサイクル率が製造会社に義務づけられている。ここで、エアコンについて前記高いリサイクル率を達成するには、熱交換器のリサイクルが不可欠となる。熱交換器は、それぞれが直交する配列方向を有する放熱板及び熱交換パイプからなり、放熱板に熱交換パイプを貫通させて両者を一体にした構成である。この熱交換器は、熱交換パイプが放熱板の貫通孔に噛み込んでいることから、特許文献1及び特許文献2に見られるように、放熱板及び熱交換パイプを切断して解体される。
【0003】
特許文献1は、多数の熱交換パイプ(金属管)を通る平面に略垂直な方向から各交換パイプに向けて砥粒を含む高圧水を噴射し、少なくとも放熱板(放熱薄板)を熱交換パイプの外周部に至るまで切断することにより、放熱板を塑性変形させて熱交換パイプ及び放熱板を分離する熱交換器の解体方法を提案している。この解体方法は、ウォータジェット加工を用いることにより、切断時において発熱を伴わない利点があり、熱交換パイプ及び放熱板の溶着を防止し、また前記切断時の粉塵の発生も抑え、熱交換パイプ及び放熱板を安全かつ容易に、しかも低コストで分離、解体できるとしている。
【0004】
特許文献2は、回転体と、前記回転体の主面の法線方向に設置された支軸に回動可能に取り付けられた少なくとも1つ以上の打撃体とを有し、前記打撃体が前記支軸と所定の嵌合隙間を有して、かつ前記打撃体の外周の一部が前記回転体の外周より外方に位置して取り付けられた切断装置を用い、前記回転体を高速回転させ前記打撃体を臨界衝撃速度以上の速度で熱交換器に衝突させて切断分離する熱交換器の解体方法を提案している。この特許文献2では、熱交換パイプ及び放熱板を一体に切断するため、切断能力の高い物理的な切断装置を用いている。
【0005】
【特許文献1】特開平07-171723号公報(請求項1ほか、[発明の効果])
【特許文献2】特開2002-071156号公報(請求項1ほか、[0124]及び[0143])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱交換器を解体するには、熱交換パイプ及び放熱板の強固な一体化を解除しなければならず、そのためには特許文献1及び特許文献2に見られるように、放熱板、更には熱交換パイプを切断することが最も簡易かつ確実である。ここで、特許文献1は多数のウォータジェットを並列し、熱交換パイプの延在方向に沿って各放熱板を個別に切断することにより、放熱板から熱交換パイプを取り外す。これは、特許文献2もほぼ同様である。このように、従来の熱交換器の解体方法は、放熱板を複数に切断する必要から、切断手段の実際に切断に寄与する部分、すなわち切断刃が複数必要であった。
【0007】
複数の切断刃を要する切断手段を用いる場合、次のような問題が生ずる。まず、切断刃相互は、熱交換パイプの間隔に合わせて並ばなければならなくなる。熱交換器の熱交換パイプは、必ずしも同じ間隔で放熱板を貫通しているわけではなく、製造会社や製造機種によっても間隔が異なることも少なくない。熱交換パイプの間隔があまり違わないのであれば、例えば熱交換パイプの幅の範囲に切断刃が当たればよいとして、多くの熱交換器における熱交換パイプの間隔に対応した切断刃の間隔を決定できなくもないが、熱交換パイプが不等間隔であると、やはり対応できない。
【0008】
また、切断刃を複数用いる場合、各切断刃のいずれかが欠損するだけで、熱交換器の解体が不完全となり、欠損した切断刃一つのために解体装置を停止させなければならなくなる。加えて、前記欠損した切断刃が他の切断刃に挟まれていた場合、その切断刃の交換のために他の切断刃をも取り外さなければならず、解体装置の停止時間を延ばすばかりか、切断刃の交換に要する手間及び時間がかかる問題を招いていた。そこで、熱交換パイプの間隔に左右されず、簡易かつ確実に、熱交換パイプに対する放熱板の結合を解除する熱交換器の解体方法及び解体装置を開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
検討の結果、それぞれが直交する配列方向を有する放熱板及び熱交換パイプからなり、放熱板に熱交換パイプを貫通させて両者を一体にした熱交換器を解体するに際し、実効長さが熱交換器の少なくとも幅又は長さより長い切断刃を、熱交換パイプの厚みの範囲で、前記熱交換パイプの配列方向に揃えて、熱交換パイプ及び放熱板が同時に切断される熱交換器の解体方法を開発した。ここで、切断刃の実効長さとは、熱交換パイプの厚みの範囲で、前記熱交換パイプの配列方向に揃えた切断刃が、熱交換パイプ及び放熱板を同時に切断できる切断刃の実効的な長さを意味する。例えば熱交換パイプの配列方向を水平方向に揃えた横倒し姿勢にある熱交換器に対し、切断刃が熱交換器の幅方向に平行であれば、切断刃の実際長さはほぼ実効長さに等しくなるが、切断刃が熱交換器の幅方向方向に対して30度傾いていれば、切断刃の実際長さ×cos30度が実効長さとなる。
【0010】
本発明の解体方法は、熱交換器の熱交換パイプが真っすぐであることを前提とするが、熱交換器の種類によっては、熱交換パイプが配列方向以外に湾曲している場合もある。こうした熱交換器を解体する場合、切断刃による切断の前に、熱交換パイプが配列方向以外に湾曲した熱交換器の前記熱交換パイプを予め整形し、配列方向を含む面内にすべての熱交換パイプを揃えるとよい。また、熱交換パイプは、熱交換器の端部の放熱板より外側で折り返された端部を有することから、切断刃による切断の前に、熱交換パイプの折り返された端部を予め切除するとよい。
【0011】
切断刃は、往復動する鋸刃より、実効長さが熱交換器の少なくとも幅又は長さより長いバンドソーブレード、厳密にはバンドソーブレードの往路又は復路とすることが好ましい。バンドソーブレードは周回させているため、熱交換パイプを切断する際にかかる負荷が分散され、熱交換パイプを切断するために切断距離の長い本発明の解体方法に適した切断手段である。このバンドソーブレードは、例えば周回する往路が熱交換パイプ及び放熱板の切断に寄与し、周回する復路は熱交換パイプの配列方向に平行に熱交換器の外を移動する。前記熱交換器の外を移動する復路は、熱交換器の切断により加熱された往路の熱を放出する部分で、放熱板又は熱交換パイプとブレードとの溶着を防ぐと共に、ブレードの耐久性を高める働きを有する。ここで、バンドソーブレードに冷風を送る送風手段を前記バンドソーブレードの周回端に設けると、バンドソーブレードの冷却が促進されて好ましい。
【0012】
上記解体方法を用いる熱交換器の解体装置は、それぞれが直交する配列方向を有する放熱板及び熱交換パイプからなり、放熱板に熱交換パイプを貫通させて両者を一体にした熱交換器の解体装置であって、熱交換パイプの配列方向を水平方向に揃えた横倒し姿勢にある熱交換器を移動台に載せて送り方向に移動させる移送手段と、前記移送手段の移動台の軌道に交差して配置される切断手段とからなり、切断手段は実効長さが熱交換器の幅又は長さより長く、熱交換パイプの厚みの範囲で前記熱交換パイプの配列方向に揃えて、移動手段の移動台の送り方向上流側に向けた切断刃を有し、移送手段の移動台に載せた横倒し姿勢の熱交換器が前記切断手段の切断刃を通過する際に、前記切断刃により熱交換パイプ及び放熱板が同時に切断される熱交換器の解体装置である。
【0013】
本発明の解体装置は、熱交換パイプが真っすぐであることを前提とする。これから、既述したように、熱交換パイプが配列方向以外に湾曲している場合、予備処理装置を用いて、熱交換パイプが配列方向以外に湾曲した熱交換器の前記熱交換パイプを予め整形し、配列方向を含む面内にすべての熱交換パイプを揃えるとよい。また、熱交換パイプが熱交換器の端部の放熱板より外側で折り返された端部を有する熱交換器を切断する場合、同様に予備処理装置を用いて、切断刃による切断の前に、熱交換パイプの折り返された端部を予め切除するとよい。
【0014】
切断手段は、上述同様、実効長さが熱交換器の少なくとも幅又は長さより長いバンドソーブレードとすることが好ましい。ここで、熱交換パイプがすべて同一面上に揃えた熱交換器は、放熱板に倣った面の1/2の高さで前記熱交換パイプを放熱板に貫通させ、また熱交換パイプが上下2段の面それぞれへ千鳥状に揃えた熱交換器は、放熱板に倣った面の1/4及び3/4の高さで前記熱交換パイプを放熱板に貫通させている場合が通例である。これから、切断手段は、移送手段の移動台に載せられた横倒し姿勢の熱交換器の放熱板に倣った面の高さを計測する厚み計測手段と、前記厚み計測手段により得られた熱交換器の放熱板に倣った面の高さを基準として前記放熱板に貫通させた熱交換パイプの高さを算出する切断刃制御手段と、前記切断刃制御手段が算出した熱交換パイプの高さに合わせて切断刃を昇降させて前記切断刃の高さを位置決めする切断刃高さ調整手段とを備える構成にするとよい。
【0015】
厚み計測手段は、横倒し姿勢の熱交換器全体外形の上面となる放熱板の倣い面が移動手段の移動台の上面からどれくらいの高さを有するかを計測できれば構成を問わず、接触式センサ又は非接触式センサのいずれも利用できる。切断刃制御手段は、熱交換パイプがすべて同一面上に揃えた熱交換器か、熱交換パイプが上下2段の面それぞれへ千鳥状に揃えた熱交換器かの違いに基づき、前記厚み計測手段で得られた放熱板の倣い面の高さを1/4、1/2又は3/4として、熱交換パイプの高さを算出する。そして、切断刃調整手段は、例えばバンドソーブレードにより構成される切断手段を一体に、移動台に対して昇降させることができれば構成を問わず、例えばバンドソーブレードを支持する昇降フレームを伸縮シリンダで支持したり、前記昇降フレームに設けた昇降方向のラックにモータ駆動のピニオンを噛み合わせる構成を挙げることができる。
【0016】
ここで、既述したように、熱交換パイプが配列方向以外に湾曲している場合、予備処理装置を用いて、熱交換パイプが配列方向以外に湾曲した熱交換器の前記熱交換パイプを予め整形し、配列方向を含む面内にすべての熱交換パイプを揃えることが望ましいが、現実には完全に熱交換パイプを同一面内に揃えることは難しく、元の湾曲状態が残る。すなわち、熱交換パイプが一方向に僅かに曲がって起伏を有する状態になりがちである。そこで、切断手段は、移送手段の移動台に載せられた横倒し姿勢の熱交換器の放熱板に倣った面の起伏を計測する起伏計測手段と、前記起伏計測手段により得られた熱交換器の放熱板に倣った面の起伏を基準として前記放熱板に貫通させた熱交換パイプの起伏を算出する切断刃制御手段と、前記切断刃制御手段が算出した熱交換パイプの起伏に合わせて切断刃を昇降又は揺動させて前記切断刃の姿勢を逐次調整する切断刃姿勢調整手段とを備えた構成にするとよい。
【0017】
起伏計測手段は、上述した厚さ計測手段を用いてもよいが、移動手段により進行する熱交換器の放熱板の倣い面の高さを逐次計測し、前記高さの増減を起伏として計測する点が異なる。また、熱交換器全体外形の画像データを撮影し、従来公知の各種画像処理により、前記画像データにおける放熱板の倣い面を一度に取得させてもよい。この場合、切断刃制御手段が前記画像処理を担い、前記放熱板の倣い面の起伏の取得に続けて熱交換パイプの起伏を算出するとよい。切断刃姿勢調整手段は、上記切断刃高さ調整手段と切断刃傾き調整手段とを個別又は組み合せて構成できる。切断刃傾き調整手段は、例えばバンドソーブレードを支持する昇降フレームを前記ハンドソーブレードの周回方向に延びる回転軸で支持し、前記回転軸に従って昇降フレームを揺動させるモータにより構成できる。熱交換パイプの起伏が小さい場合は切断刃高さ調整手段又は切断刃傾き調整手段のいずれか一方だけでも、熱交換パイプの起伏に応じて切断刃の姿勢を調整できる。しかし、前記起伏が大きい場合は切断刃高さ調整手段及び切断刃傾き調整手段を組み合せ、切断刃の高さ及び傾きを共に増減させることにより、熱交換パイプの起伏に応じて切断刃の姿勢を調整できる。
【0018】
また、切断手段により切断を終えた熱交換器は、ストッカ等に回収して、次工程となる再生処理に回される。本発明の解体装置は、切断手段による切断のため、熱交換パイプの配列方向を水平方向に揃えた横倒し姿勢にある熱交換器を移動台に載せることから、移動台は水平であり、そのままではストッカ等に回収しにくい。そこで、移送手段は、移動台を送り方向下流側に向けて傾斜させる排出手段を備える構成にするとよい。排出手段による移動台の傾斜は、移動台の送り方向上流側を軸として移動台の送り方向下流側を下げてもよいし、移動台の送り方向下流側を軸として移動台の送り方向上流側を上げてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、熱交換パイプの間隔に左右されず、簡易かつ確実に、熱交換パイプに対する放熱板の結合を解除するため、熱交換パイプ及び放熱板が同時に切断される熱交換器の解体方法及び解体装置が提供できるようになる。特に、本発明によれば、熱交換パイプの間隔に左右されず、どのような熱交換器でも解体できるようになり、熱交換器のリサイクル率、ひいてはエアコンのリサイクル率を高める効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明に基づく一例である解体装置の正面図、図2は本例の解体装置の平面図、図3は解体装置の左側面図、そして図4は切断を終えた熱交換器4を表わす正面図である。本例の解体装置は、図1中、左端から熱交換器4(図1及び図2参照、図3中図示略)を右方向へ搬送し、右端から切断後の熱交換器4をストッカ31へ排出する構成である。作業者は、解体装置の図1中左端に立って操作盤32を操作し、移動台1を図1中右方向(送り方向)に移動させることから、本例の解体装置は前記図1中左端を正面と見ることもできるが、図示の便宜上、図1に見られる側を正面、図3に見られる側(前記図1中左端側)を左側面としている。これに対し、図4では放熱板42の直交方向から見る側を熱交換器4の正面としている。
【0021】
本例の解体装置は、図1〜図3に見られるように、アングル材を組み付けた装置フレーム3に対し、熱交換パイプ41の配列方向を水平方向に揃えた横倒し姿勢にある熱交換器4を移動台1に載せて送り方向に移動させる移送手段と、前記移送手段の移動台1の移送レール(軌道)11に交差して配置される切断手段とを備える。装置フレーム3は、移送手段及び切断手段の各駆動源、移送手段の移送レール11や昇降手段の昇降レール21を設けている。本例では、切断手段による熱交換器4の切断に際して発生する切粉や小さな端材等を受ける切粉回収シュート33を設けている。切粉回収シュート33は、一方向(本例では移動台1の送り方向、図1中右方向)に下り勾配で傾斜した板面からなり、落下した切粉や小さな端材等を下端に立てた堰き止め板に寄せて堆積させ、まとめて回収できるようにしている。
【0022】
移送手段は、装置フレーム3の中段に送り方向へ延在して設けられた移送レール11と、前記移送レール11に載せられた移動台1と、前記移動台1を移送レール11に沿って送り方向に移動させるボールネジ機構とから構成される。移動台1は、台フレーム12の前縁に設けられた傾倒軸に傾倒自在な載置板13を軸着した構成で、台フレーム12に支持された傾倒用シリンダ14によって、台フレーム12に対して載置板13のみを押し上げ、傾倒させることができる。これにより、切断を終えた熱交換器4は、傾倒した載置板13に沿って排出され、例えば装置フレーム3に寄せて待機させたストッカ31に前記切断を終えた熱交換器4を投入し、回収できる。ボールネジ機構は、移送手段の駆動源となる移送用モータ15と、移送レール11と平行に配された自転自在なボールネジ16と、前記移送用モータ15及びボールネジ16を結ぶ移送動力伝達ベルト17と、そして前記ボールネジ16に螺合する移送ブロック18とから構成される。移動台1は、台フレーム12に前記移送ブロック18が固定されており、ボールネジ16の自転に従って前進(送り方向への移動)又は後進(送り方向とは逆方向に移動)する。
【0023】
本例は、切断を終えた熱交換器4が、傾倒させた載置板13の左右方向(図1紙面直交方向、図2中上下方向)に散らないように、移動台1の移動終端に載置板13を挟む左右の側板と、移動面板の送り方向端に沿って前記側板を結ぶ延長板とからなる排出ガイド34を設けている。排出ガイド34は、前記載置板13に連動して傾倒し、滑り落ちる切断された熱交換器4が排出ガイド34の側板に規制されて左右方向に散らないようにしている。排出ガイド34は、装置フレーム3に軸着されており、移動台1が移動終端に達すると、載置板13の移動終端側が延長板の上方に至る位置関係に設けられている。これにより、傾倒した載置板13が前記延長板を上方から押し込み、載置板13及び排出ガイド34が連動して傾倒する。
【0024】
切断手段は、装置フレーム3に立てた昇降レール21に従って昇降する昇降フレーム22と、前記昇降フレーム22に取り付けたバンドソー2と、前記昇降フレーム22を昇降させる昇降用シリンダ23とから構成される。本例の切断手段は、後述するように、前記昇降用シリンダ23を制御する切断刃制御手段(図示略)を有している。昇降用シリンダ23は、装置フレーム3に取り付けられ、昇降フレーム22を装置フレーム3に対して吊り下げて支持し、ロッドの伸縮に従って装置フレーム3を昇降させる。バンドソー2は、昇降フレーム22の解体装置背面側に設けたバンドソー用モータ24が有する駆動プーリ25と、前記昇降フレーム22の解体装置正面側に支持された従動プーリ26との間にバンドソーブレード27を架け回して構成される。本例では、移動台1の送り方向に直交して周回するバンドソーブレード27の刃面が水平となる下段の往路が切断刃となる。前記バンドソーブレード27の上段の復路は、熱交換器4の切断により加熱されたバンドソーブレード27を冷却する区間である。このほか、駆動プーリ25又は従動プーリ26近傍に送風手段を配し、バンドソーブレード27を強制空冷してもよい。
【0025】
本例の切断手段は、熱交換パイプ41の高さ及び起伏に合わせて昇降フレーム22を昇降させるため、厚み計測手段、起伏計測手段、切断刃制御手段、切断刃高さ調整手段及び切断刃姿勢調整手段を備える。本例の切断刃高さ調整手段及び切断刃姿勢調整手段は、上記昇降フレーム22の昇降用シリンダ23を兼用していることから、切断刃制御手段が昇降用シリンダ23を制御してバンドソーブレード27の高さ、厳密には前記バンドソーブレード27の往路の高さを調整する。これから、昇降フレーム22を昇降させる昇降用シリンダ23を制御する切断刃制御手段は、厚み計測手段又は起伏計測手段が取得した測定値を基に、熱交換器4の放熱板42に倣った面の厚さや前記面の起伏から熱交換パイプ41の高さや起伏を算出し、切断刃高さ調整手段及び切断刃姿勢調整手段である昇降用シリンダ23のロッドを伸縮させる。
【0026】
厚み計測手段は、ハンドソーブレード27に対して移動台1の送り方向上流側に張り出した支持フレームに取り付けた厚みセンサ(非接触式センサ)28からなる。厚みセンサ28は、例えば一定範囲に照射した光(赤外線)の反射波の強度を測定値とする。切断刃制御手段は、前記厚みセンサ28から予め取得しておいた熱交換器4を移動台1に載せない場合の測定値と、熱交換器4を移動台1に載せた場合の測定値とを比較し、前記各測定値の差分を熱交換器4の放熱板42に倣った面の厚さとし、例えば前記厚さの1/2を熱交換パイプ41の高さとする。ここで、「熱交換パイプ41の高さ」とは、熱交換パイプ41の断面中心の高さが最も好ましいが、バンドソーブレード27の往路が熱交換パイプ41を通過すれば、例えば前記断面中心から少しずれても構わない。そして、前記切断刃制御手段が昇降用シリンダ23を駆動して昇降フレーム22を昇降させ、バンドソーブレード27の往路の高さを前記熱交換パイプ41の高さに調整する。
【0027】
起伏計測手段は、バンドソーブレード27に対して移動台1の送り方向上流側で、移送レール11に沿って取り付けた画像センサ(非接触式センサ)29からなる。画像センサ29は、例えば逐次撮影する熱交換器4の側面画像を測定値とする。切断刃制御手段は、前記画像センサ29から取得した側面画像から、放熱板42に倣った面の変化を算出して前記面の起伏とし、例えば前記起伏の1/2を熱交換パイプ41の起伏とする。ここで、「熱交換パイプ41の起伏」とは、好ましくは熱交換パイプ41の断面中心の高さの起伏であり、上記熱交換パイプ41の高さに対する起伏である。そして、前記切断刃制御手段が昇降用シリンダ23を駆動して昇降フレーム22を昇降させ、バンドソーブレード27の往路の高さを前記熱交換パイプ41の起伏に合わせて調整する。厚み計測手段によるバンドソーブレード27の往路の高さは、熱交換パイプ41の起伏に合わせて調整されるバンドソーブレード27の往路の高さの基準値であり、熱交換器4の熱交換パイプ41が同一平面に揃わない場合のみ、前記基準値からの起伏に合わせてバンドソーブレード27を昇降させ、往路の高さを調整することになる。
【0028】
このほか、本例では、前記バンドソーブレード27による熱交換器4の切断に際し、熱交換器4を安定して押さえ付けておくため、バンドソーブレード27に対して移動台1の送り方向上流側に押えローラ35を設けている。本例の押えローラ35は、移動台1の送り方向に並ぶ4基の長尺なローラ群からなり、昇降フレーム22に軸着されて揺動自在な押えアームに前記ローラ群を取り付け、押えアームと昇降フレーム22との間にコイルスプリングを架け渡して前記ローラ群を弾支している。これにより、押えローラ35は、熱交換器4の放熱板42の厚さに関係なく、昇降フレーム22の下降に従って前記放熱板42に倣った面に圧接し、熱交換器4を移動台1の載置板13に押さえ付けることができる。
【0029】
本発明の解体装置は、移送手段の移動台1に載せた横倒し姿勢の熱交換器4が切断手段のバンドソーブレード27の往路を通過する際に、前記バンドソーブレード27の往路により熱交換パイプ41及び放熱板42を同時に切断する。これから、熱交換パイプ41が配列方向以外に湾曲している場合、予備処理装置を用いて、前記熱交換器4の熱交換パイプ41を予め整形し、配列方向を含む面内にすべての熱交換パイプ41を揃える。ここで、本例の解体装置は、熱交換器4の起伏を計測して、前記起伏に応じてバンドソーブレード27を昇降させることができるため、熱交パイプの予備整形はそれほど厳密でなくてもよい。これから、熱交換パイプ41を予備整形する予備処理装置は、熱交換パイプ41を大まかに解消できる程度でよく、例えば従来公知の各種プレス装置を利用できる。
【0030】
また、熱交換パイプ41が熱交換器4の端部の放熱板42より外側で折り返された端部を有する熱交換器4を切断する場合、別の予備処理装置を用いて、バンドソーブレード27による切断の前に、熱交換パイプ41の折り返された端部を予め切除する。熱交換パイプ41は、上述の予備処理装置で予備整形すれば、すべての熱交換パイプ41が配列方向を揃えることができるため、バンドソーブレード27による同時切断が可能になる。しかし、折り返された熱交換パイプ41の端部は、バンドソーブレード27が引っかかり、確実に切断できなくなる場合も少なくない。これから、従来公知の各種切断装置を別の予備処理装置とし、熱交換パイプ41の折り返された端部を予め切除することが好ましい。
【0031】
こうして熱交換パイプ41について予備処理を終えた熱交換器4は、例えば作業者により移動台1に載せる。このとき、前記熱交換器4はバンドソーブレード27が熱交換パイプ41及び放熱板42が同時に切断できればよく、例えば熱交換パイプ41の配列方向がどちらを向いても構わない。しかし熱交換パイプ41の配列方向とバンドソーブレード27の周回方向とが平行、すなわち熱交換パイプ41の延在方向とバンドソーブレード27の周回方向とが直交する方が、熱交換パイプ41の切断にかかるバンドソーブレード27の負担が小さくなる。また、本例の解体装置は、移動する熱交換器4の側面画像を測定し、熱交換パイプ41の起伏を求めることから、熱交換パイプ41の配列方向を載置板13の左右方向(図1紙面直交方向、図2中上下方向)に揃える、すなわち熱交換パイプ41の延在方向を移動台1の送り方向に揃えて、熱交換器4を移動台1に載せることが好ましい。
【0032】
熱交換パイプ41の配列方向を載置板13の左右方向(図1紙面直交方向、図2中上下方向)に揃えて移動台1に載せた熱交換器4は、前記移動台1の移動に従ってバンドソーブレード27に向かっていく。このとき、熱交換器4がバンドソーブレード27に達する前に、熱交換器4の放熱板42に倣った面の厚さが厚みセンサ28により測定されており、前記厚さに従ってバンドソーブレード27の往路の高さが調整されている。そして、熱交換器4の放熱板42に上方から押えローラ35が押し付けられた熱交換器4が周回するバンドソーブレード27に至ると、熱交換パイプ41及び放熱板42が同時に切断されていく。ここで、熱交換器4の起伏は画像センサ29により逐次測定されており、熱交換パイプ41の起伏が測定された場合は、逐次バンドソーブレード27の往路の高さが調整される。
【0033】
こうして、周回するバンドソーブレード27を熱交換器4が通過していくことで、熱交換パイプ41及び放熱板42が同時に切断される。切断を終えた熱交換器4は、前記バンドソーブレード27を通過後して移動台1が移動終端に至ると、傾倒用シリンダ14のロッドが伸びて載置板13が押し上げられ、傾斜した載置板13に従ってストッカ31に落とし込まれる。バンドソーブレード27は、往路が熱交換器4を横断して周回しているため、図4に見られるように、多数の熱交換パイプ41それぞれの中心を通過する切断線を境界として、熱交換パイプ41及び放熱板42は確実に切断され、上下に分離する。しかし、例えば切断された上の熱交換パイプ41が同じく上の放熱板42に噛みついて分離しない場合もある。こうした噛み合った熱交換パイプ41及び放熱板42は、載置板13からストッカ31に落とし込まれる際、落下に伴う衝撃によって、切断を終えた熱交換器4の熱交換パイプ41及び放熱板42すべては完全に分離する(図4中丸枠内参照)。
【0034】
ここで、熱交換パイプが上下2段の面それぞれへ千鳥状に揃えた熱交換器を切断する場合、例えば最初にバンドソーブレード27を放熱板に倣った面の3/4の高さに揃えて1度目の切断を実施し、上段の熱交換パイプ及び放熱板のみを切断し、切断を終えた上段の熱交換パイプ及び放熱板の上側のみをストッカ31に落して、移動台1を移動始端に復帰させる。このとき、バンドソーブレード27は上昇して待避させておくとよい。そして、次はバンドソーブレード27を放熱板に倣った面の1/4の高さに揃えて2度目の切断を実施し、下段の熱交換パイプ及び放熱板を切断し、切断を終えた下段の熱交換パイプ及び放熱板をストッカ31に落して回収する。熱交換器の放熱板に倣った面の厚さは1度目の切断に際して測定しているので、2度目の切断に際して再測定は必要ない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に基づく一例である解体装置の正面図である。
【図2】本例の解体装置の平面図である。
【図3】解体装置の右側面図である。
【図4】切断を終えた熱交換器を表わす正面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 移動台
2 バンドソー
27 バンドソーブレード
28 厚みセンサ
29 画像センサ
3 装置フレーム
35 押えローラ
4 熱交換器
41 熱交換パイプ
42 放熱板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが直交する配列方向を有する放熱板及び熱交換パイプからなり、放熱板に熱交換パイプを貫通させて両者を一体にした熱交換器を解体するに際し、実効長さが熱交換器の少なくとも幅又は長さより長い切断刃を、熱交換パイプの厚みの範囲で、前記熱交換パイプの配列方向に揃えて、熱交換パイプ及び放熱板が同時に切断される熱交換器の解体方法。
【請求項2】
切断刃による切断の前に、熱交換パイプが配列方向以外に湾曲した熱交換器の前記熱交換パイプを予め整形し、配列方向を含む面内にすべての熱交換パイプを揃える請求項1記載の熱交換器の解体方法。
【請求項3】
切断刃による切断の前に、熱交換パイプの折り返された端部を予め切除する請求項1又は2いずれか記載の熱交換器の解体方法。
【請求項4】
切断刃は、実効長さが熱交換器の少なくとも幅又は長さより長いバンドソーブレードである請求項1〜3いずれか記載の熱交換器の解体方法。
【請求項5】
それぞれが直交する配列方向を有する放熱板及び熱交換パイプからなり、放熱板に熱交換パイプを貫通させて両者を一体にした熱交換器の解体装置であって、熱交換パイプの配列方向を水平方向に揃えた横倒し姿勢にある熱交換器を移動台に載せて送り方向に移動させる移送手段と、前記移送手段の移動台の軌道に交差して配置される切断手段とからなり、切断手段は実効長さが熱交換パイプの配列方向を水平方向に揃えた横倒し姿勢にある熱交換器の少なくとも幅又は長さより長く、熱交換パイプの厚みの範囲で前記熱交換パイプの配列方向に揃えて、移動手段の移動台の送り方向上流側に向けた切断刃を有し、移送手段の移動台に載せた横倒し姿勢の熱交換器が前記切断手段の切断刃を通過する際に、前記切断刃により熱交換パイプ及び放熱板が同時に切断される熱交換器の解体装置。
【請求項6】
切断手段は、実効長さが熱交換パイプの配列方向を水平方向に揃えた横倒し姿勢にある熱交換器の少なくとも幅又は長さより長いバンドソーブレードを切断刃とする請求項5記載の熱交換器の解体装置。
【請求項7】
切断手段は、移送手段の移動台に載せられた横倒し姿勢の熱交換器の放熱板に倣った面の高さを計測する厚み計測手段と、前記厚み計測手段により得られた熱交換器の放熱板に倣った面の高さを基準として前記放熱板に貫通させた熱交換パイプの高さを算出する切断刃制御手段と、前記切断刃制御手段が算出した熱交換パイプの高さに合わせて切断刃を昇降させて前記切断刃の高さを位置決めする切断刃高さ調整手段とを備えた請求項5又は6いずれか記載の熱交換器の解体装置。
【請求項8】
切断手段は、移送手段の移動台に載せられた横倒し姿勢の熱交換器の放熱板に倣った面の起伏を計測する起伏計測手段と、前記起伏計測手段により得られた熱交換器の放熱板に倣った面の起伏を基準として前記放熱板に貫通させた熱交換パイプの起伏を算出する切断刃制御手段と、前記切断刃制御手段が算出した熱交換パイプの起伏に合わせて切断刃を昇降又は揺動させて前記切断刃の姿勢を逐次調整する切断刃姿勢調整手段とを備えた請求項5〜7いずれか記載の熱交換器の解体装置。
【請求項9】
移送手段は、移動台を送り方向下流側に向けて傾斜させる排出手段を備えた請求項5〜8いずれか記載の熱交換器の解体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−23615(P2008−23615A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195940(P2006−195940)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(505424826)株式会社光システムズ (2)
【Fターム(参考)】