説明

熱交換器温度制御システム、空調機、外調機及び熱交換器温度制御方法

【課題】熱交換媒体の圧力変動に影響されることなく、熱交換媒体の流量制御を大負荷から低負荷まで確実かつ良好に行うことのできる熱交換器温度制御システムを提供する。
【解決手段】内部に熱交換媒体12を通過させて熱交換を行う熱交換器16と、熱交換器16に対する熱交換媒体12の流量を制御する第1の制御弁24と、第1の制御弁24の開度を制御する制御手段30とを有する熱交換器温度制御システムにおいて、第1の制御弁24の入り側及び出側の圧力差を検出する差圧検出手段28と、第1の制御弁24と直列に接続され、第1の制御弁24に対する熱交換媒体12の流量を制御する第2の制御弁26とを有し、制御手段30は、差圧検出手段28の検出結果に基づいて、第2の制御弁26の開度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換媒体の圧力変動に影響されることなく良好な温度制御を可能とする熱交換器温度制御システム、空調機、外調機及び熱交換器温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空調機や外調機等において空気温度を制御する場合、熱交換器に対して一つの制御弁を用いて熱交換媒体の流量を制御するようにしている。
【0003】
しかし、特に、外調機特有の一日における負荷変動が大きいと、制御機器が対応できずにいるケースがある。
【0004】
例えば、低負荷時に圧力が高いと流量制御が困難となり、ON−OFFを繰り返すため温度差がつかなくなったり、また、外調機の制御弁絞りにより他の系統への圧力変動を招き、系全体の流量制御に悪影響を及ぼす等の問題があった。
【0005】
このため、例えば、特許文献1に示すように、大きな制御弁と小さな制御弁とを並列に設置し、大流量から小流量まで制御可能にするような提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−68685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示されるような技術にあっては、小弁による低開度でのハンチング域を小さくすることができるものの、熱交換媒体の圧力が高くなると流量を絞りきれなくなるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、熱交換媒体の圧力変動に影響されることなく、熱交換媒体の流量制御を大負荷から低負荷まで確実かつ良好に行うことのできる熱交換器温度制御システム、空調機、外調機及び熱交換器温度制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)前記目的を達成するため、本発明の熱交換器温度制御システムは、
内部に熱交換媒体を通過させて熱交換を行う熱交換器と、
前記熱交換器に対する前記熱交換媒体の流量を制御する第1の制御弁と、
前記第1の制御弁の開度を制御する制御手段とを有する熱交換器温度制御システムにおいて、
前記第1の制御弁の入り側及び出側の圧力差を検出する差圧検出手段と、
前記第1の制御弁と直列に接続され、前記第1の制御弁に対する前記熱交換媒体の流量を制御する第2の制御弁とを有し、
前記制御手段は、前記差圧検出手段の検出結果に基づいて、前記第2の制御弁の開度を制御することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、第1の制御弁の入り側及び出側の圧力差を差圧検出手段により検出し、その検出結果に基づいて制御手段により第2の制御弁の開度を制御することで、常に差圧の発生を抑制し、一定の圧力条件の下で第1の制御弁の開度を制御することにより、熱交換媒体の圧力変動に影響されることなく、熱交換媒体の流量制御を大負荷から低負荷まで確実かつ良好に安定して行うことができる。
【0011】
すなわち、第1の制御弁の前後差圧を一定にすることにより、イコールパーセント特性を生かした流量制御が可能となり、また、制御弁への適切な開度指示により温度差も考慮した流量制御が大負荷から低負荷までレンジアビリティの範囲で可能となる。
【0012】
(2)本発明においては、(1)において、前記第2の制御弁は、前記第1の制御弁の上流側に接続されるようにすることができる。
【0013】
このような構成とすることにより、第1の制御弁の上流側において確実に第1の制御弁側の差圧を一定にすることができる。
【0014】
(3)本発明においては、(1)において、前記第2の制御弁は、前記第1の制御弁の下流側に接続されるようにすることができる。
【0015】
このような構成とすることにより、第1の制御弁の下流側において確実に第1の制御弁側の差圧を一定にすることができる。
【0016】
(4)本発明においては、(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記第1の制御弁及び第2の制御弁は、前記熱交換器の下流側に配設されるようにすることができる。
【0017】
このような構成とすることにより、熱交換器に供給される熱交換媒体の高い圧力の影響を受けることなく熱交換媒体の流量を制御することができる。
【0018】
(5)本発明の空調機は、(1)〜(4)のいずれかに記載の熱交換器温度制御システムを用いたことを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、空調機において、前述の熱交換器温度制御システムを用いることにより、熱交換媒体の圧力変動に影響されることなく、熱交換媒体の流量制御を大負荷から低負荷まで確実かつ良好に安定して行うことができ、良好な空気温度調節が可能となる。
【0020】
(6)本発明の外調機は、(1)〜(4)のいずれかに記載の熱交換器温度制御システムを用いたことを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、外調機において、前述の熱交換器温度制御システムを用いることにより、熱交換媒体の圧力変動に影響されることなく、熱交換媒体の流量制御を大負荷から低負荷まで確実かつ良好に安定して行うことができ、良好な外気温調節が可能となる。
【0022】
(7)本発明の熱交換器温度制御方法は、内部に熱交換媒体を通過させて熱交換を行う熱交換器に対する前記熱交換媒体の流量を制御する第1の制御弁の開度を制御手段により制御する熱交換器温度制御方法において、
前記第1の制御弁の入り側及び出側の圧力差を差圧検出手段にて検出する工程と、
前記差圧検出手段の検出結果に基づいて、前記制御手段が前記第1の制御弁と直列に接続された第2の制御弁の開度を制御することで、前記第1の制御弁に対する前記熱交換媒体の流量を制御する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、第1の制御弁の入り側及び出側の圧力差を差圧検出手段により検出し、その検出結果に基づいて制御手段により第2の制御弁の開度を制御することで、常に差圧の発生を抑制し、一定の圧力条件の下で第1の制御弁の開度を制御することにより、熱交換媒体の圧力変動に影響されることなく、熱交換媒体の流量制御を大負荷から低負荷まで確実かつ良好に安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる熱交換器の温度制御システムを用いた外調機を示すブロック図である。
【図2】図1の第1の制御手段による温度制御を行うフロー図である。
【図3】図1の第2の制御手段による差圧一定制御を行うフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施の形態にかかる熱交換器の温度制御システムを用いた外調機のブロック図である。
【0027】
この外調機10は、図示せぬポンプにより圧送される熱交換媒体12、例えば冷水や温水を供給する媒体経路14の途中位置に熱交換媒体12を通過させる熱交換器16を有し、この熱交換器16にファン18にて送られた外気20を接触させて熱交換により外気を冷却あるいは加温するようにしている。
【0028】
熱交換器16は、熱交換器の温度制御システム22により温度制御がなされるようになっている。
【0029】
第1の制御弁24と、第2の制御弁26と、差圧検出手段28と、制御手段30とを有している。
【0030】
第1の制御弁24は、二方弁からなり、熱交換器16の下流側に設置されて、熱交換器16に対する熱交換媒体12の流量を制御するようになっている。
【0031】
第2の制御弁26は、二方弁からなり、熱交換器16の下流側で、第1の制御弁24と直列に接続され、第1の制御弁24に対する熱交換媒体12の流量を制御するようになっている。
【0032】
また、この第2の制御弁26は、第1の制御弁24の下流側に設置されるようになっている。
【0033】
なお、この第2の制御弁26は、第1の制御弁24の上流側に設置されるようにしてもよい。
【0034】
これら第1の制御弁24及び第2の制御弁26は、熱交換器16の下流側に設置されてポンプによる熱交換媒体12の高い圧力の影響を受けないようにされているが、設計条件によっては熱交換器16の上流側に設置するようにすることも可能である。
【0035】
差圧検出手段28は、第1の制御弁24の入り側及び出側の圧力差を検出するもので、第1の制御弁24の入り側に設置された圧力センサ32と、出側に設置された圧力センサ34と、これらの圧力センサ32、34の圧力を検出する圧力検出器36とを有している。
【0036】
制御手段30は、第1の制御弁24の開度を制御するとともに、差圧検出手段28の圧力検出結果に基づいて、第2の制御弁26の開度を制御するもので、第1の制御手段38と、第2の制御手段40とを有している。
【0037】
第1の制御手段38は、温度センサ42に接続され、この温度センサ42の温度データに基づいて第1の制御弁24の開度(流量)を制御し、温度制御を行うようにしている。
第2の制御手段40は、差圧検出手段28の圧力検出結果に基づいて、第2の制御弁26の開度を制御し、差圧一定制御を行うようになっている。
【0038】
次に、このような熱交換器の温度制御システム22を用いた熱交換器の温度制御方法について、図2及び図3も参照しつつ説明する。
【0039】
まず、媒体経路14の内部に熱交換媒体12を供給して熱交換器16を通過させ、ファン18により供給された外気20と熱交換を行う。
【0040】
この場合、第1の制御手段38により、温度センサ42の検出温度に基づき第1の制御弁24の開度を制御して熱交換器16に対する熱交換媒体12の流量を制御し、温度制御を行う。
【0041】
この第1の制御手段38による温度制御は、図2に示すように、まず、流量−弁開度特性より第1の制御弁24の最大開度を第1の制御手段38にて設定し(S1)、温度センサ42からの温度データを取り込む(S2)。
【0042】
次に、給気温度と設定値との偏差があるか否か判断する(S3)。
【0043】
給気温度と設定値との偏差がない場合は、第1の制御弁24はそのままの開度で熱交換を行う。
【0044】
給気温度と設定値との偏差がある場合は、給気温度偏差−弁開度マップを取り込み(S4)、開度補正量を演算し(S5)、弁開度を補正して(S6)、弁開度を演算する(S7)。
【0045】
この場合、第1の制御弁の開度が最大開度以下か否かを判断し(S8)、最大開度以下でなければ最大開度を出力し(S9)、熱交換を行う。
また、最大開度以下である場合には、弁開度を補正して(S10)熱交換を行うようにしている。
【0046】
ところで、この温度制御とともに、第1の制御弁24の入り側及び出側の圧力差を圧力センサ32、34及び圧力検出器36からなる差圧検出手段28にて検出する。
【0047】
そして、差圧検出手段28の検出結果に基づいて、第2の制御手段40が第2の制御弁26の開度を制御することで差圧一定制御を行い、第1の制御弁24に対する熱交換媒体12の流量を制御する。
【0048】
この第2の制御手段40による差圧一定制御は、図3に示すように、まず、第2の制御手段40にて差圧を設定し(S11)、差圧検出手段28により検出した第1の制御弁24の入り側、出側の差圧データを取り込む(S12)。
【0049】
次に、差圧と目標値との偏差があるか否かを判断する(S13)。
【0050】
差圧と目標値との偏差がない場合は、第2の制御弁26の開度をそのままにする。
【0051】
差圧と目標値との偏差がある場合は、マップを取り込み(S14)、開度補正を演算し(S15)、第2の制御弁26の開度を補正する(S16)。
【0052】
このように、第1の制御弁24の入り側及び出側の圧力差を差圧検出手段28により検出し、その検出結果に基づいて第2の制御手段40により第2の制御弁26の開度を制御することで、常に差圧の発生を抑制し、一定の圧力条件の下で第1の制御弁24の開度を制御することにより、熱交換媒体12の圧力変動に影響されることなく、熱交換媒体12の流量制御を大負荷から低負荷まで確実かつ良好に安定して行うことができる。
【0053】
したがって、第1の制御弁24の前後差圧を一定にすることにより、イコールパーセント特性を生かした流量制御が可能となり、また、第1の制御弁24への適切な開度指示により温度差も考慮した流量制御が大負荷から低負荷までレンジアビリティの範囲で可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の形態に変形可能である。
【0055】
例えば、前記実施の形態においては、熱交換器の温度制御システムを用いた外調機について説明したが、この例に限らず、熱交換器の温度制御システムそのものとして用いることも、あるいは、熱交換器の温度制御システムを用いた空調機とすることも可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 外調機
12 熱交換媒体
14 媒体経路
16 熱交換器
18 ファン
20 外気
22 熱交換器の温度制御システム
24 第1の制御弁
26 第2の制御弁
28 差圧検出手段
30 制御手段
32、34 圧力センサ
36 圧力検出器
38 第1の制御手段
40 第2の制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に熱交換媒体を通過させて熱交換を行う熱交換器と、
前記熱交換器に対する前記熱交換媒体の流量を制御する第1の制御弁と、
前記第1の制御弁の開度を制御する制御手段とを有する熱交換器温度制御システムにおいて、
前記第1の制御弁の入り側及び出側の圧力差を検出する差圧検出手段と、
前記第1の制御弁と直列に接続され、前記第1の制御弁に対する前記熱交換媒体の流量を制御する第2の制御弁とを有し、
前記制御手段は、前記差圧検出手段の検出結果に基づいて、前記第2の制御弁の開度を制御することを特徴とする熱交換器温度制御システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2の制御弁は、前記第1の制御弁の上流側に接続されることを特徴とする熱交換器温度制御システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記第2の制御弁は、前記第1の制御弁の下流側に接続されることを特徴とする熱交換器温度制御システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記第1の制御弁及び第2の制御弁は、前記熱交換器の下流側に配設されることを特徴とする熱交換器温度制御システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の熱交換器温度制御システムを用いたことを特徴とする空調機。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の熱交換器温度制御システムを用いたことを特徴とする外調機。
【請求項7】
内部に熱交換媒体を通過させて熱交換を行う熱交換器に対する前記熱交換媒体の流量を制御する第1の制御弁の開度を制御手段により制御する熱交換器温度制御方法において、
前記第1の制御弁の入り側及び出側の圧力差を差圧検出手段にて検出する工程と、
前記差圧検出手段の検出結果に基づいて、前記制御手段が前記第1の制御弁と直列に接続された第2の制御弁の開度を制御することで、前記第1の制御弁に対する前記熱交換媒体の流量を制御する工程と、
を含むことを特徴とする熱交換器温度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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