説明

熱伝導性シリコーングリース組成物

【課題】 耐熱性が優れ、オイルブリードが少ない熱伝導性シリコーングリース組成物を提供する。
【解決手段】 (A)一般式:
【化1】


{式中、Rは同種または異種の一価炭化水素基であり、Xは同種または異種の一価炭化水素基もしくは一般式:
−R−SiR(OR)(3−a)
(式中、Rは前記と同じであり、Rは酸素原子またはアルキレン基であり、Rはアルキル基であり、aは0〜2の整数である。)
で表されるアルコキシシリル含有基であり、m、nはそれぞれ0以上の整数である。}
で表されるオルガノポリシロキサン、(B)熱伝導性充填剤、および(C)アルミニウム系またはチタン系カップリング剤から少なくともなる熱伝導性シリコーングリース組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性シリコーングリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トランジスター、IC、メモリー素子等の電子部品を登載したプリント回路基板やハイブリッドICの高密度・高集積化にともなって、電子部品から発生する熱を効率よく放熱するために、オルガノポリシロキサン、および酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末等の熱伝導性充填剤からなる熱伝導性シリコーングリース組成物が使用されている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
しかし、このような熱伝導性シリコーングリース組成物は、オイル成分の一部がブリードアウトして、電子部品の信頼性を低下させるという問題がある。
【0004】
一方、熱伝導性シリコーングリース組成物中に熱伝導性充填剤を高充填するため、オルガノポリシロキサン、熱伝導性充填剤、および一分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンからなる熱伝導性シリコーングリース組成物が提案されている(特許文献4参照)。
【0005】
しかし、このような熱伝導性シリコーングリース組成物は、耐熱性、すなわち、厚く塗布したり、垂直面に塗布した場合、加熱により流動性を示すという問題があり、さらに、オイルブリードを生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭50−105573号公報
【特許文献2】特開昭51−55870号公報
【特許文献3】特開昭61−157587号公報
【特許文献4】特開平4−202496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、耐熱性が優れ、オイルブリードが少ない熱伝導性シリコーングリース組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は、
(A)一般式:
【化1】

{式中、Rは同種または異種の一価炭化水素基であり、Xは同種または異種の一価炭化水素基もしくは一般式:
−R−SiR(OR)(3−a)
(式中、Rは前記と同じであり、Rは酸素原子またはアルキレン基であり、Rはアルキル基であり、aは0〜2の整数である。)
で表されるアルコキシシリル含有基であり、m、nはそれぞれ0以上の整数である。}
で表されるオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)熱伝導性充填剤 500〜4,500質量部、および
(C)アルミニウム系またはチタン系カップリング剤 1〜100質量部
から少なくともなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は、耐熱性が優れ、オイルブリードが少ないという特徴がある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは本組成物の主剤であり、一般式:
【化2】

で表される。
【0011】
式中、Rは同種または異種の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、ターシャリーブチル基、イソブチル基、2−メチルウンデシル基、1−ヘキシルヘプチル基等の分岐鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等の環状アルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、2−(2,4,6−トリメチルフェニル)プロピル基等のアラルキル基;3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられ、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基であり、特に好ましくは、メチル基、ビニル基、フェニル基である。
【0012】
また、式中、Xは同種または異種の一価炭化水素基もしくは一般式:
−R−SiR(OR)(3−a)
で表されるアルコキシシリル含有基である。Xの一価炭化水素基としては、前記Rと同様の基が例示され、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基であり、特に好ましくは、メチル基、ビニル基、フェニル基である。また、上記アルコキシシリル含有基において、Rは前記と同じであり、好ましくは、アルキル基であり、特に好ましくは、メチル基である。Rは酸素原子またはアルキレン基である。Rのアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルエチレン基が例示され、好ましくは、エチレン基、プロピレン基である。Rはアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が例示され、好ましくは、メチル基、エチル基である。また、aは0〜2の整数であり、好ましくは0である。
【0013】
また、式中、m、nはそれぞれ0以上の整数である。このような(A)成分の25℃における粘度は限定されないが、好ましくは、5〜100,000mPa・sの範囲内であり、特に好ましくは、5〜50,000mPa・sの範囲内である。これは、25℃における粘度が上記範囲の下限以上であると、得られる組成物の貯蔵中に(B)成分の沈降分離を抑制することができ、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる組成物の取扱作業性が良好となるからである。このため、式中、mとnの合計は、(A)成分の25℃における粘度が上記範囲になるような値であることが好ましい。
【0014】
このような(A)成分としては、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルフェニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルフェニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端メチルジメトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリエトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメトキシシリルエチル基封鎖ジメチルポリシロキサン、一方の分子鎖末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、他の分子鎖末端がトリメトキシシリルエチル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、一方の分子鎖末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され、他の分子鎖末端がトリメトキシシリルエチル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端メチルジメトキシシリルエチル基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端メチルジメトキシシリルエチル基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0015】
特に、(A)成分として、アルコキシシリル含有基を有するオルガノポリシロキサンを用いる場合には、これが(B)成分の表面処理剤として作用する。このため、(B)成分を高充填しても、得られる組成物の取扱作業性を悪化させないという効果がある。
【0016】
(B)成分は本組成物に熱伝導性を付与するための熱伝導性充填剤である。このような(B)成分としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、真鍮、形状記憶合金、半田等の金属系粉末;セラミック、ガラス、石英、有機樹脂等の粉末表面に、金、銀、ニッケル、銅等の金属を蒸着またはメッキした粉末;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化クロム、酸化亜鉛、酸化チタン、結晶性シリカ等の金属酸化物系粉末;窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の金属窒化物系粉末;炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ケイ素等の金属炭化物系粉末;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物系粉末;カーボンナノチューブ、カーボンマイクロファイバー、ダイヤモンド、グラファイト等の炭素系粉末;およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。特に、(B)成分は、金属系粉末、金属酸化物系粉末、または金属窒化物系粉末であることが好ましく、具体的には、銀粉末、アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、または窒化アルミニウム粉末であることが好ましい。なお、本組成物に電気絶縁性が求められる場合には、金属酸化物系粉末、または金属窒化物系粉末であることが好ましく、特に、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、または窒化アルミニウム粉末であることが好ましい。
【0017】
(B)成分の形状は特に限定されないが、例えば、球状、針状、円盤状、棒状、不定形状が挙げられ、好ましくは、球状、不定形状である。また、(B)成分の平均粒子径は限定されないが、好ましくは、0.01〜100μmの範囲内であり、さらに好ましくは、0.01〜50μmの範囲内である。
【0018】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、500〜4,500質量部の範囲内であり、好ましくは、500〜4,000質量部の範囲内であり、特に好ましくは、500〜3,500質量部の範囲内である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる組成物の熱伝導性が良好となり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる組成物の著しい粘度の上昇が抑制され、その取扱作業性が良好となるからである。
【0019】
(C)成分のアルミニム系またはチタン系カップリング剤は、本組成物の耐熱性を向上させ、オイルブリードを抑制するための成分である。このような(C)成分のアルミニウム系またはチタン系カップリング剤としては種々のものが市販されている。アルミニウム系またはチタン系カップリング剤は、加水分解されやすい少なくとも1つの親水性基と、加水分解されやすい少なくとも1つの疎水性基がアルミニウムまたはチタンに結合してなる化合物である。
【0020】
このような(C)成分のアルミニウム系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルアルミニウムジイソプロピレートが例示され、市販品としては、味の素株式会社の製品名プレンアクト(登録商標)AL−Mが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
また、(C)成分のチタン系カップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリn−ステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスファイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、トリス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、イソプロピルジイソステアロイルクミルフェニルチタネート、イソプロピルジステアロイルメタクリルチタネート、イソプロピルジイソステアロイルアクリルチタネート、イソプロピル4−アミノベンゼンスルホニルジ(ドデシルベンゼンスルホニル)チタネート、イソプロピルトリメタクリルチタネート、イソプロピルジ(4−アミノベンゾイル)イソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリアクリルチタネート、イソプロピルトリ(N,N−ジメチルエチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリアントラニルチタネート、イソプロピルオクチル,ブチルパイロホスフェートチタネート、イソプロピルジ(ブチル,メチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルジ(ジラウロイルホスファイト)チタネート、ジイソプロピルオキシアセテートチタネート、イソステアロイルメタクリルオキシアセテートチタネート、イソステアロイルアクリルオキシアセテートチタネート、ジ(ジオクチルホスフェート)オキシアセテートチタネート、4−アミノベンゼンスルホニルドデシルベンゼンスルホニルオキシアセテートチタネート、ジメタクリルオキシアセテートチタネート、ジクミルフェノレートオキシアセテートチタネート、4−アミノベンゾイルイソステアロイルオキシアセテートチタネート、ジアクリルオキシアセテートチタネート、ジ(オクチル,ブチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソステアロイルメタクリルエチレンチタネート、ジ(ジオクチルホスフェート)エチレンチタネート、4−アミノベンゼンスルホニルドデシルベンゼンスルホニルエチレンチタネート、ジメタクリルエチレンチタネート、4−アミノベンゾイルイソステアロイルエチレンチタネート、ジアクリルエチレンチタネート、ジアントラニルエチレンチタネート、ジ(ブチル,メチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、チタンアリルアセトアセテートトリイソプロポキサイド、チタンビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイド、チタンジ−n−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタンメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリイソプロポキサイド、チタンメチルフェノキサイド、チタンオキシドビス(ペンタンジオネート)が例示され、市販品としては、味の素株式会社の商品名プレンアクト(登録商標)KR TTS、KR 46B、KR 55、KR 41B、KR 138S、KR 238S、338X、KR 44、KR 9SAが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、1〜100質量部の範囲内であり、好ましくは、1〜50質量部の範囲内であり、特に好ましくは、1〜20質量部の範囲内である。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる組成物の耐熱性が良好となり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる組成物の粘度の経時変化を抑制できるからである。
【0023】
本組成物には、さらに(D)シリカ系充填剤を含有してもよい。この(D)成分のシリカ系充填剤は、本組成物を塗布後、垂直に放置してもずれ落ち難くするための成分である。(D)成分としては、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ等のシリカ微粉末;これらのシリカ微粉末の表面を、アルコキシシラン、クロロシラン、シラザン等の有機ケイ素化合物により疎水化処理したシリカ微粉末が例示される。(D)成分の粒子径は特に限定されないが、そのBET比表面積が50m/g以上であることが好ましく、特には、100m/g以上であることが好ましい。
【0024】
(D)成分の含有量は限定されないが、(A)成分100質量部に対して、好ましくは、0.1〜100質量部の範囲内であり、特に好ましくは、0.5〜50質量部の範囲内である。これは、(D)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる組成物を塗布後、垂直に放置した場合、そのずれ落ち難さをさらに向上でき、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる組成物の取扱作業性が良好となるからである。
【0025】
本組成物は、さらに、(E)シランカップリング剤を含有してもよい。この(E)成分のシランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、ブテニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランが例示される。
【0026】
(E)成分の含有量は限定されないが、(A)成分100質量部に対して、好ましくは、1〜150質量部の範囲内であり、さらに好ましくは、1〜100質量部の範囲内であり、より好ましくは、1〜50質量部の範囲内であり、特に好ましくは、1〜30質量部の範囲内である。これは、(E)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、(B)成分を多量に含有した場合でも、得られる組成物の取扱作業性が良好となり、得られる組成物の貯蔵中に(B)成分の沈降分離を抑制できるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、(B)成分の表面処理に寄与しない成分を少なくすることができるからである。
【0027】
さらに、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、例えば、ヒュームド酸化チタン等の充填材、この充填材の表面を有機ケイ素化合物により疎水化処理した充填材;その他、顔料、染料、蛍光染料、耐熱添加剤、トリアゾール系化合物以外の難燃性付与剤、可塑剤、接着付与剤を含有してもよい。
【0028】
本組成物を調製する方法は限定されないが、(A)成分と(B)成分を加熱混合した後、室温で(C)成分を混合する方法が例示され、(B)成分の表面を(E)成分により表面処理する場合には、(A)成分と(B)成分と(E)成分を加熱混合した後、室温で(C)成分を混合する方法が好ましい。これは、(C)成分を(A)成分と(B)成分中で加熱処理すると、得られる組成物の耐熱性、すなわち、得られる組成物を塗布後、垂直に放置した場合、そのずれ落ちを抑制する効果が低下する傾向にあり、(C)成分は本組成物中に単に含有されていることが好ましい。
【実施例】
【0029】
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物を実施例により詳細に説明する。なお、実施例中の特性は25℃における値である。また、熱伝導性シリコーングリース組成物の特性を次のようにして評価した。
【0030】
[粘度]
熱伝導性シリコーングリース組成物の粘度をTAインスツルメンツ社製レオメーター(AR550)を用いて測定した。ジオメトリーとして、直径20mmのプレートを用いた。なお、粘度は、シェアレイト10(1/s)における値とした。
【0031】
[オイルブリード性]
5cm角の片面すりガラス(株式会社パルテック社製)上に、熱伝導性シリコーングリース組成物を0.2cc塗布し、その上に1.8cm角のカバーガラス(松浪硝子工業株式会社製)を置き、マイクロメーター(株式会社ミツトヨ社製)にて試料厚を300μmに調整した。この試験体を25℃で3日間放置し、熱伝導性シリコーングリース組成物からブリードアウトしたオイルの直径と初期の熱伝導性シリコーングリース組成物の直径の比により、オイルブリード性を評価した。
【0032】
[耐熱性]
25×75×1mmの銅製テストパネル(株式会社パルテック社製)と25×75×1mmのカバーガラス(松浪硝子工業株式会社製)の間に熱伝導性シリコーングリース組成物0.6ccを挟み込み、1mmスペーサーで前記組成物の厚さを調整した。この試験体を垂直方向に立てた状態で熱衝撃試験(−40℃/125℃/500サイクル)を行い、熱伝導性シリコーングリース組成物の垂れの有無を確認した。
【0033】
[熱伝導率]
京都電子株式会社製QTM−500により、熱伝導性シリコーングリース組成物の熱伝導率を測定した。
【0034】
[実施例1]
式:
【化3】

(式中、mは粘度が2,000mPa・sとなる値)
で表されるジメチルポリシロキサン100質量部および平均粒子径12μmの球状酸化アルミニウム粉末2,400質量部を室温で30分間予備混合した後、減圧下、150℃で60分間加熱混合した。その後、室温まで冷却し、アルミニウム系カップリング剤(味の素株式会社の商品名プレンアクトAL−M)80質量部を混合して熱伝導性シリコーングリース組成物を調製した。
【0035】
[実施例2]
式:
【化4】

(式中、mは粘度が12,000mPa・sとなる値)
で表されるジメチルポリシロキサン100質量部、式:
【化5】

(式中、pは粘度が20mPa・sとなる値)
で表されるジメチルポリシロキサン100質量部、平均粒子径12μmの球状酸化アルミニウム粉末4,000質量部、およびメチルトリメトキシシラン30質量部を室温で30分間予備混合した後、減圧下、150℃で60分間加熱混合した。その後、室温まで冷却しアルミニウム系カップリング剤(味の素株式会社の商品名プレンアクトAL−M)15質量部を混合して熱伝導性シリコーングリース組成物を調製した。
【0036】
[実施例3]
式:
【化6】

(式中、pは粘度が20mPa・sとなる値)
で表されるジメチルポリシロキサン100質量部、平均粒子径12μmの球状酸化アルミニウム粉末2560質量部、平均粒子径0.1μmの不定形状酸化亜鉛粉末360質量部、およびメチルトリメトキシシラン10質量部を室温で30分間予備混合した後、減圧下、150℃で60分間加熱混合した。その後、室温まで冷却し、チタン系カップリング剤(味の素株式会社の商品名プレンアクトKR−44)2.7質量部を混合して熱伝導性シリコーングリース組成物を調製した。
【0037】
[実施例4]
式:
【化7】

(式中、mは粘度が400mPa・sとなる値)
で表されるジメチルポリシロキサン100質量部、平均粒子径12μmの球状酸化アルミニウム粉末500質量部、およびヘキサメチルジシラザンで表面を疎水化処理したBET比表面積200m/gのヒュームドシリカ10質量部を室温で30分間予備混合した後、減圧下、150℃で60分間加熱混合した。その後、室温まで冷却し、アルミニウム系カップリング剤(味の素株式会社の商品名プレンアクトAL−M)5質量部を混合して熱伝導性シリコーングリース組成物を調製した。
【0038】
[実施例5]
式:
【化8】

(式中、mは粘度が300mPa・sとなる値)
で表されるジメチルポリシロキサン100質量部、平均粒子径3μmの不定形状窒化アルミニウム粉末650質量部、式:
【化9】

(式中、pは粘度が20mPa・sとなる値)
で表されるジメチルポリシロキサン5質量部、およびメチルトリメトキシシラン5質量部を室温で30分間予備混合した後、減圧下、150℃で60分間加熱混合した。その後、室温まで冷却し、アルミニウム系カップリング剤(味の素株式会社の商品名プレンアクトAL−M)10質量部を混合して熱伝導性シリコーングリース組成物を調製した。
【0039】
[比較例1]
式:
【化10】

(式中、mは粘度が2,000mPa・sとなる値)
で表されるジメチルポリシロキサン100質量部および平均粒子径12μmの球状酸化アルミニウム粉末2,400質量部を室温で30分間予備混合した後、減圧下、150℃で60分間加熱混合した。その後、室温まで冷却し、熱伝導性シリコーングリース組成物を調製した。
【0040】
[比較例2]
式:
【化11】

(式中、mは粘度が300mPa・sとなる値)
で表されるジメチルポリシロキサン100質量部、平均粒子径3μmの不定形状窒化アルミニウム粉末650質量部、式:
【化12】

(式中、pは粘度が20mPa・sとなる値)
で表されるジメチルポリシロキサン5質量部、およびメチルトリメトキシシラン5質量部を室温で30分間予備混合した後、減圧下、150℃で60分間加熱混合した。その後、室温まで冷却し、熱伝導性シリコーングリース組成物を調製した。
【0041】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は、耐熱性が優れ、オイルブリードが少ないので、電気・電子部品の放熱材として好適であり、特に、過酷な温度環境下、垂直に放置されてもずれ落ち難いことが要求される自動車のコントロールユニットの放熱材として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式:
【化1】

{式中、Rは同種または異種の一価炭化水素基であり、Xは同種または異種の一価炭化水素基もしくは一般式:
−R−SiR(OR)(3−a)
(式中、Rは前記と同じであり、Rは酸素原子またはアルキレン基であり、Rはアルキル基であり、aは0〜2の整数である。)
で表されるアルコキシシリル含有基であり、m、nはそれぞれ0以上の整数である。}
で表されるオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)熱伝導性充填剤 500〜4,500質量部、および
(C)アルミニウム系またはチタン系カップリング剤 1〜100質量部
から少なくともなる熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項2】
(A)成分の25℃における粘度が5〜100,000mPa・sである、請求項1記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項3】
(B)成分の平均粒子径が0.01〜100μmである、請求項1記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項4】
(B)成分が、金属系粉末、金属酸化物系粉末、または金属窒化物系粉末である、請求項1記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項5】
(B)成分が、銀粉末、アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、または窒化アルミニウム粉末である、請求項1記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項6】
さらに、(D)シリカ系充填剤を、(A)成分100質量部に対して0.1〜100質量部含有する、請求項1記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項7】
さらに、(E)シランカップリング剤を、(A)成分100質量部に対して1〜150質量部含有する、請求項1記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。

【公開番号】特開2011−140566(P2011−140566A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2094(P2010−2094)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】