熱処理炉の熱効率改善方法及び熱処理炉
【課題】排気口から排出されるガスの顕熱を排気口内で輻射熱に変えて炉内に入れることにより、排気口から流出する熱を減少させる熱処理炉の熱効率改善方法及び熱処理炉を提供する。
【解決手段】加熱されたガスを排気口12から外に排出する熱処理炉10の熱効率改善方法において、排気口12の入口側に、排気口12を通過するガスの流れに沿って板状の耐熱性部材13、14を配置した。
【解決手段】加熱されたガスを排気口12から外に排出する熱処理炉10の熱効率改善方法において、排気口12の入口側に、排気口12を通過するガスの流れに沿って板状の耐熱性部材13、14を配置した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱されたガスが排気口を通過して炉内から炉外に排出される熱処理炉の熱効率改善方法及び熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス燃焼式加熱炉あるいは雰囲気制御加熱炉等の熱処理炉における最も顕著な熱損失は、熱処理炉の排気口を通過して炉内から炉外に排出される加熱されたガスが持ち出す熱損失である。そこで、Si−C系繊維で形成した通気性部材(例えば、3次元編み物、不織布の積層体)を熱処理炉の排気口の炉内側の入口に排気口を覆うように取付けて(例えば、炉壁に耐熱性のセラミック接着剤を用いて貼り付けて)、通気性部材で炉内から排気口内に流入する加熱されたガスの熱を濾し取って自らは加熱され(熱フィルタ作用)、加熱された通気性部材から放出される輻射熱を炉内に入れること(熱レフレクタ作用)により、加熱されたガスの顕熱を排気口内で回収し炉内に戻すことが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4325758号公報
【特許文献2】実用新案登録第3136873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、排気口を覆うように通気性部材を取付けると、加熱されたガスの炉内から排気口内への流入が妨げられ、炉内におけるガスの流れが変化したり、炉内圧力が上昇したりして、熱処理効果が変化するという問題が生じる。また、通気性部材がSi−C系繊維で形成されているため、炉内が酸化性雰囲気であると通気性部材を形成しているSi−C系繊維が徐々に酸化されて、通気性部材の有する熱フィルタ作用及び熱レフレクタ作用が低下すると共に、炉内で高速流転するガスによる機械的衝撃や磨耗により通気性部材に損傷が発生するという問題がある。更に、通気性部材をセラミック接着剤による接着だけで長期に亘って安定して炉壁に付着させることは困難で、通気性部材が使用中に剥がれて落下するという問題もある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、排気口を通過して炉内から炉外に排出されるガスの流れを妨げないように排気口内に耐熱性部材を配置し、加熱された耐熱性部材からの輻射熱を炉内に入れて排気口から流出する熱を減少させる熱処理炉の熱効率改善方法及び熱処理炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法は、加熱されたガスを排気口から外に排出する熱処理炉の熱効率改善方法において、
前記排気口の入口側に、該排気口を通過するガスの流れに沿って耐熱性部材を配置した。
【0007】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法において、前記耐熱性部材は板状とすることができる。
また、前記耐熱性部材は、耐熱性繊維を用いて作製した紐を編んで形成した網材とすることもできる。
更に、前記耐熱性部材は、耐熱性繊維を用いてそれぞれ作製された網材と布材又は複数の網材を重ね合わせて形成した積層体としてもよい。
【0008】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法において、前記耐熱性部材は、前記排気口を通過するガスの流れに沿って複数の貫通孔が形成された耐熱性の孔集合体とすることができる。
ここで、前記孔集合体は、耐熱性繊維を用いて作製した紐を編んで形成した網材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、該網材の開口部がそれぞれ上下に連通して前記貫通孔を形成することにより作製できる。
また、前記孔集合体は、耐熱性繊維を用いて作製した複数の開口部を有する布材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、該布材の該開口部がそれぞれ上下に連通して前記貫通孔を形成することにより作製することもできる。
更に、前記孔集合体は、複数の開口部を有する耐熱性の板材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、該板材の該開口部がそれぞれ上下に連通して前記貫通孔を形成することにより作製してもよい。
【0009】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法において、前記耐熱性部材は、耐熱性の支持部材を介して前記排気口に取付けられていることが好ましい。
【0010】
前記目的に沿う第2の発明に係る熱処理炉は、加熱されたガスを排気口から外に排出する熱処理炉において、
前記排気口の入口側に、該排気口を通過するガスの流れに沿って耐熱性部材を配置している。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法及び第2の発明に係る熱処理炉においては、排気口の入口側に、排気口を通過するガスの流れに沿って耐熱性部材を配置したので、排気口を通過するガスの流れを妨げることなく、ガスと耐熱性部材との接触を十分に行うことができ、耐熱性部材を効率的に加熱しながら排気口を通過するガスの温度を下げると共に、排気口の入口側を除いた領域の温度を下げることができる。その結果、排気口を通過して炉内から炉外に流出するガスが持ち出す熱を減少させることが可能になる。
そして、排気口内で加熱された耐熱性部材からは、輻射熱が炉内に放出(放射)されるので、熱処理炉の消費エネルギーを減少(燃料使用量を減少)させ、熱処理炉を昇温する際には昇温性能を向上させ、熱処理炉内を所定温度に保持する際には炉内の温度分布を均一にすることが可能になる。
【0012】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法において、耐熱性部材が板状となっている場合、ガスと耐熱性部材との接触面積を大きくできるので、ガスの温度を効率的に下げることが容易にできる。
【0013】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法において、耐熱性部材が、耐熱性繊維を用いて作製した紐を編んで形成した網材である場合、ガスは耐熱性部材を透過することができるので、排気口内をガスが通過する際の抵抗を下げることができる。
【0014】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法において、耐熱性部材が、耐熱性繊維を用いてそれぞれ作製された網材と布材又は複数の網材を重ね合わせて形成した積層体である場合、排気口を通過するガスの流れを妨げない範囲内で耐熱性部材の厚みを容易に調整することができるので、輻射熱の放出面積を大きくすることができる。なお、耐熱性部材を複数の網材を重ね合わせた積層体で形成すると、ガスは耐熱性部材を透過できるため、耐熱性部材の厚みを厚くできる。
【0015】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法において、耐熱性部材が、排気口を通過するガスの流れに沿って複数の貫通孔が形成された耐熱性の孔集合体である場合、孔集合体の下端面において貫通孔をのぞいた部分(非貫通孔部分)が排気口の横断面上に位置することになって、非貫通孔部分から放出される輻射熱を炉内に効果的に入れることができる。
【0016】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法において、孔集合体が、耐熱性繊維を用いて作製した紐を編んで形成した網材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、網材の開口部がそれぞれ上下に連通して貫通孔を形成している場合、排気口内に配置する耐熱性部材のガスの流れに沿う長さを容易に調整することができる。また、網材から耐熱性部材を構成すると、耐熱性部材の開口率(耐熱性部材の横断面積に対する貫通孔の総断面積の割合)を容易に高くすることができ、ガスの通過性を向上することができる。
【0017】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法において、孔集合体が、耐熱性繊維を用いて作製した複数の開口部を有する布材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、布材の開口部がそれぞれ上下に連通して貫通孔を形成している場合、あるいは孔集合体が、複数の開口部を有する耐熱性の板材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、板材の開口部がそれぞれ上下に連通して貫通孔を形成している場合、排気口内に配置する耐熱性部材の長さを容易に調整することができる。
【0018】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法において、耐熱性部材が、耐熱性の支持部材を介して排気口に取付けられている場合、耐熱性部材の排気口への取付け、取外しが容易になって、耐熱性部材の保守管理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る熱処理炉の排気口の入口側に配置された板状の耐熱性部材の説明図である。
【図2】板状の耐熱性部材で形成される集合体の説明図である。
【図3】(A)、(B)、(C)は集合体の作製方法を示す説明図である。
【図4】円筒体の説明図である。
【図5】第1の変形例に係る集合体の説明図である。
【図6】第2の変形例に係る集合体の説明図である。
【図7】第3の変形例に係る集合体の説明図である。
【図8】(A)、(B)は第3の変形例に係る集合体の作製方法を示す説明図である。
【図9】第3の変形例に係る集合体を取付ける円筒体の説明図である。
【図10】(A)は円筒体に第3の変形例に係る集合体を取付けた状態の平面図、(B)は斜視図である。
【図11】第4の変形例に係る集合体の説明図である。
【図12】第5の変形例に係る集合体の説明図である。
【図13】第6の変形例に係る集合体の説明図である。
【図14】第7の変形例に係る集合体の説明図である。
【図15】第8の変形例に係る集合体の説明図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係る熱処理炉の排気口の入口側に配置された網材で構成される耐熱性部材の説明図である。
【図17】網材を取付ける取付け枠体の説明図である。
【図18】本発明の第4の実施の形態に係る熱処理炉の排気口の入口側に配置された孔集合体で構成される耐熱性部材の説明図である。
【図19】孔集合体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る熱処理炉10は、内部に設けられた図示しない熱源(例えばバーナ)で発生した熱風を用いて対象物(図示せず)の熱処理を行い、加熱されたガスを排気ガスとして、例えば、熱処理炉10の天井部11を垂直に貫通させて形成した断面円形の排気口12から炉外に排出しており、排気口12の入口側には複数枚、例えば2枚の板状の耐熱性部材(以下、単に板材という)13、14が排気口12を通過する排気ガスの流れに沿って配置されている。そして、板材13、14は、排気口12を通過する排気ガスで加熱され、加熱された板材13、14から放出される輻射熱を熱処理炉10の内部に入れている。
【0021】
ここで、板材13、14は、排気口12の入口側に挿入された耐熱性の支持部材の一例であるセラミック製の円筒体15に形成されたスリット16、17、18、19に装着されている。そして、円筒体15は、例えば、円筒体15の側部の下側部位(排気ガスの入口側の領域)の周方向複数箇所(図1では4箇所)を、円筒体14の内側から外側に向けて貫通し、先部が排気口12の内壁に螺入するセラミック製の頭付きセラミックボルト20と、円筒体15の側部の上側部位(排気ガス出口側の領域)を貫通し両端部が排気口12の内壁内に取付けられる、例えば1本のセラミックボルト21と、セラミックボルト21の両端部からねじ込まれ円筒体15の外周面を両側から押圧して円筒体15にセラミックボルト21を固定するセラミックナット22とを有する耐熱性固定手段23を用いて排気口12内に通過する排気ガスの流れに沿って取付けられている。以下、詳細に説明する。
【0022】
円筒体15は、耐熱性酸化物(例えばアルミナ)及び耐熱性非酸化物(例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、サイアロン)のいずれか1からなる。これによって、円筒体15の高温下での変形や破損を防止して、長期間に亘って安定して使用することができる。熱処理炉10内で運転中に温度変動が発生する場合、円筒体15を耐熱性非酸化物で形成することで、円筒体15の温度変化に伴う破損を防止できる。なお、耐熱性非酸化物で形成した円筒体15は、高温下の酸化性雰囲気中では、円筒体15の表面が徐々に酸化するので、円筒体15の表面には、例えば、アルミナ、ジルコニア等の耐熱性酸化物のスラリーを塗布して被覆層を形成し、円筒体15の表面の酸化を防止する。これによって、円筒体15の高温特性(例えば、強度、熱衝撃抵抗)の低下を防いで、長期間に亘って安定して使用することができる。
【0023】
頭付きセラミックボルト20(セラミックボルト21及びセラミックナット22も同様)は、耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は耐熱性非酸化物(例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、サイアロン)のいずれか1からなる。これによって、頭付きセラミックボルト20の高温下での変形や破損を防止して、長期間に亘って安定して使用することができる。熱処理炉10内で運転中に温度変動が発生する場合、頭付きセラミックボルト20を耐熱性非酸化物で形成することで、頭付きセラミックボルト20の温度変化に伴う破損を更に防止できる。なお、耐熱性非酸化物で形成した頭付きセラミックボルト20は、高温下の酸化性雰囲気中では、頭付きセラミックボルト20の表面が徐々に酸化するので、頭付きセラミックボルト20の表面には、例えば、アルミナ、ジルコニア等の耐熱性酸化物のスラリーを塗布して被覆層を形成し、頭付きセラミックボルト20の表面の酸化を防止する。これによって、頭付きセラミックボルト20の高温特性(例えば、強度、熱衝撃抵抗)の低下を防いで、長期間に亘って安定して使用することができる。
【0024】
図2に示すように、板材13、14は、同一サイズの矩形状であって、平面視して(即ち、排気口12を通過する排気ガスの流れ方向に見て、又は、排気口12の軸心方向に見て)1箇所(板材13、14の幅方向の中央部)で交差させて、板材13、14間の交差角度が10°以上90°以下、ここでは90°となった放射状の集合体24を形成している。そして、集合体24は、その長手方向(板材13、14の長手方向)を円筒体15の軸心方向に向けて円筒体15内に挿入されている。なお、集合体24が挿入された円筒体15を排気口12に取付けた場合、円筒体15の外側に突出している板材13、14の幅方向の両側の端部は排気口12の内壁にそれぞれ接触していても、板材13、14の両側の端部と排気口12の内壁との間に隙間が形成されていてもよい。
【0025】
集合体24は、図3(A)に示すように、板材13、14の幅方向中央部に、長手方向に沿って板材13、14の長さLの半分の長さの切込み25、26をそれぞれ形成し、図3(B)に示すように、板材13、14の切込み25、26が同軸上で対向すると共に板材13、14が直交するように配置して、図3(C)に示すように、板材13、14の切込み25、26を、他方の切込み26、25内に切込み25、26に沿って挿入して組合わせることにより形成する。そして、図4に示すように、円筒体15の周方向4等分位置に円筒体15の基端(排気ガス出口側端部)から、それぞれ円筒体15の軸方向に沿って板材13、14の長さLより長い長さSのスリット16〜19を形成し、集合体24の交差部分を中心としてその両側部がそれぞれスリット16〜19に嵌入するように集合体24を円筒体15内に挿入する。これにより、集合体24を、板材13、14間の交差角度を90°に維持した状態で、円筒体15内に配置することができる。なお、図4において、符号27、28はセラミックボルト21が挿通する取付け孔、符号29、30、31、32は頭付きセラミックボルト20が挿通する取付け孔である。
【0026】
板材13、14は厚みが0.2〜10mmであって、例えば、炭化ケイ素粉末又は炭素粉末に結合剤、可塑剤等を添加して調製したスラリーを用いてシート成形により形成したシートを焼結して原板材を作製し、得られた原板材の表面にアルミナ又はジルコニア等の耐熱性酸化物の粉末からなるスラリーを塗布して被覆層を形成し、被覆層が形成された原板材を熱処理することにより製造した。原板材を炭化ケイ素又は炭素で形成することで、板材13、14の比熱を小さくすることができ、排気口12を通過する排気ガスで板材13、14の温度を素早く上げることができると共に、加熱され板材13、14からの輻射熱の放射効率を高めることができる。そして、被覆層を設けることで、酸化性雰囲気中に板材13、14を配置しても、原板材が酸化されることを防止できる。
【0027】
また、炭化ケイ素粉末又は炭素粉末の代わりに耐熱性酸化物(例えばアルミナ)の粉末を使用して成形したシートを焼結して板材を製造することができる。更に、アルミナ繊維で構成された織物又は不織布から裁断して作製したシートにアルミナ又はジルコニア等の耐熱性酸化物の粉末からなるスラリーを含浸して熱処理することにより板材を製造することもできる。シートを酸化物質とすることで、シートから製造される板材を、酸化性雰囲気中において安定して使用することが可能になる。
【0028】
集合体24を2枚の板材13、14で形成したが、3枚以上の板材を、平面視して1点(板材の幅方向の中央部)で交差させて、隣接する板材間の各交差角度が等しくなるように集合体を形成してもよい。ここで、隣接する板材間の各交差角度は、5°以上とする。交差角度を5°以上とすることで、排気ガスが板材間を通過する際の抵抗を小さくでき、排気ガスの流れを阻害しないようにできる。なお、交差角度の上限は、3枚の板材を有する場合で、60°である。
【0029】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係る熱処理炉10の熱効率改善方法について説明する。
熱処理炉10の排気口12の入口側に、排気口12を通過する排気ガスの流れに沿って円筒体15を設置することで、排気ガスは円筒体15内を軸方向に沿って通過して外部に排出されることになる。ここで、円筒体15内には、板材13、14が、平面視して1箇所で交差して放射状となった集合体24が、その長手方向(板材13、14の長手方向)を円筒体15の軸心方向(排気ガスの流れ方向)に向けて挿入されているので、排気ガスは、通過を妨げられることなく板材13、14に沿って通過することができる。これによって、排気ガスと板材13、14との接触を十分に確保することができ、排気ガスで板材13、14は効率的に加熱され、加熱された板材13、14によって、排気口12の入口端部(すなわち、熱処理炉10炉内との境界)の温度を上昇させると共に、加熱された板材13、14から放射される輻射熱を熱処理炉10内に入れて、排気口12から外部に流出する熱を減少させることができる。
【0030】
また、排気口12の入口側に配置した板材13、14を加熱することにより、排気口12内の温度を下げ、排気口12の出口から排出される排気ガスの温度を下げることができ、熱処理炉10の消費エネルギーを減少(燃料使用量を減少)することができると共に、熱処理炉10内の温度を昇温する際には昇温性能を向上させ、熱処理炉10内を所定温度に保持する際には炉内の温度分布を均一にすることが可能になる。そして、排気ガスが板材13、14及び円筒体15の側部に沿って流れるので、排気口12内に円筒体15及び板材13、14を設置しても排気ガスの通過が妨げられないため、熱処理炉10内の炉内ガスの流れを、排気口12内に板材13、14を設置しない場合と同一に保つことができると共に、炉内圧力の上昇の虞もなく、この熱処理炉の熱効率改善方法を、既存の熱処理炉に対して容易に適用することができる。更に、板材13、14の排気口12への取付け、取外しは、円筒体15に対する板材13、14の取付け、取外しとなるので、熱処理炉10の保守管理が容易になる。
【0031】
第1の実施の形態では、集合体24を板材13、14で形成したが、図5に示す第1の変形例のように、支持部材として排気口12内に同心に2つの円筒体33、34を配置し、複数、例えば8枚の板材35〜42の幅方向両側を、円筒体33、34の周方向同一角度位置にそれぞれ形成したスリット(図示せず)に装着させて集合体43を形成することもできる。板材35〜42が、排気口12の中央部(軸心側)に配置されないので、排気口12の中央部を通過する流速の速い排気ガスを優先して通過させることができる。
また、排気口12の中央部を通過する排気ガスの流れを妨げないようにすることで、図6に示す第2の変形例のように、同心に配置した2つの円筒体44、44aに装着される板材の枚数が多くなった集合体45を形成するようにすることもできる。
【0032】
図7に示す第3の変形例のように、集合体46を、5mm以上の間隔を有して平行配置された複数枚、例えば2枚の板材47、48を備えた第1の板材群49と、第1の板材群49を構成する板材47、48に90°の交差角度で交差する1枚の板材50で構成してもよい。ここで、集合体46の形成は、図8(A)に示すように、板材50の幅方向の長さWを3等分する部位に、長手方向に沿って板材47の長さLの半分の長さの切込み51、52をそれぞれ形成する。一方、板材47、48には、板材47、48の幅方向中央部に、長手方向に沿って板材48、49の長さLの半分の長さの切込み53、54をそれぞれ形成する。次いで、板材50の切込み51と板材47の切込み53が同軸上で対向し、板材50の切込み52と板材48の切込み54が同軸上で対向すると共に板材50に対して板材47、48がそれぞれ直交するように配置する。そして、図8(B)に示すように、板材50の切込み51と板材47の切込み53を互いに切込み51、53に沿って挿入して組合わせ、板材50の切込み52と板材48の切込み54を互いに切込み52、54に沿って挿入して組合わせることによりできる。
【0033】
そして、図9に示すように、支持部材の一例である円筒体55の基端(排気ガス出口側端部)において、平面視して(軸心方向に見て)円筒体55の中心を通る直線(直径)と基端との交差部をF、Gとし、交差部F、Gを結ぶ線分FGを3等分する線分FG上の2点をそれぞれ通過して線分FGに直交する2本の直線のうち、一方の直線と円筒体55の基端との交差部をH、I、他方の直線と円筒体55の基端との交差部J、Kとし、各交差部F、G、H、I、J、Kの位置に、それぞれ円筒体55の軸方向に沿って板材47、48、50の長さLより長い長さRのスリット56、57、58、59、60、61を形成する。次いで、集合体46の板材50、47、48の両側部がそれぞれスリット56〜61に嵌入するように集合体46を円筒体55内に挿入する。これにより、図10(A)、(B)に示すように、平行に配置された板材47、48が板材50に平面視して異なる2点で直交した状態となって円筒体55内に配置することができる。その結果、円筒体55内は、集合体46により、円筒体55内を通過する(排気口12内を通過する)排気ガスの流れに沿った複数の分岐路に分割される。なお、図9、図10(A)、(B)において、符号62、63はセラミックボルト21が挿通する取付け孔、符号64〜67は頭付きセラミックボルト20が挿通する取付け孔である。
【0034】
集合体46を、板材50に対して、平行配置された板材47、48が、直交するように形成したが、1枚の板材に対して、平行配置された2枚の板材が、5°以上90°未満の角度で交差するように配置してもよい。また、1枚の板材に対して、平行配置された3枚の板材が、5°以上90°以下の角度で交差するように配置してもよい。
また、集合体46を形成する第1の板材群49を2枚の板材47、48で構成したが、第1の板材群を3枚以上の板材を用いて構成することもできる。
【0035】
図11に示す第4の変形例のように、集合体68を、距離を設けて平行配置した2枚の板材69、70を備えた第1の板材群と、距離を設けて平行配置した2枚の板材71、72を備えた第2の板材群を、第1の板材群の板材69、70と第2の板材群の板材71、72が直交交差するように配置することもできる。この集合体68を、排気口12内に配置した円筒体73に図示しないスリットを形成して装着すると、集合体68(排気口12)の中央部に空間が形成され、集合体68の中央部を通過する排気ガスの流れを妨げないようにすることができる。
【0036】
また、排気口12の中央部を通過する排気ガスの流れを妨げないようにすることで、図12に示す第5の変形例のように、排気口12内に配置した円筒体74で集合体68と同様に配置された板材69〜72を保持すると共に、円筒体74及び板材69〜72にスリット(図示せず)を更に設けて、円筒体74に集合体68より多くの板材を装着させることにより、集合体75を形成することもできる。
【0037】
図13に示す第6の変形例のように、集合体76を、距離を設けて平行配置した複数枚、例えば3枚の板材77〜69で構成し、この集合体76を構成している板材77〜69を、排気口12内に配置した円筒体80に形成した図示しないスリットを用いて装着させてもよい。また、図14に示す第7の変形例のように、排気口12内に配置した円筒体81の中央部を除いた領域に、例えば4枚の板材82〜85を平行配置して集合体86を形成することもできる。板材82〜85が、排気口12の中央部に配置されないので、排気口12の中央部を通過する流速の速い排気ガスを優先して通過させることができる。
更に、排気口12の中央部を通過する排気ガスの流れを妨げないようにすることで、図15に示す第8の変形例のように、排気口12に配置した円筒体87に装着する板材の枚数が多くなった、例えば6枚の板材88〜93からなる集合体94を形成することもできる。
【0038】
図16に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る熱処理炉は、第1の実施の形態に係る熱処理炉10及びその変形例にかかる熱処理炉と比較して、耐熱性部材として排気口12の入口側に配置する板材の代わりに、耐熱性繊維を用いて作製した紐101を編んで(紐101を縦線及び横線に用いて)形成した複数枚、例えば4枚の網材95〜98を用い、網材95〜98を取付け枠体99、100を介して排気口12内に設けた図示しない円筒体に取付けたことが特徴となっている。
ここで、円筒体には第1の実施の形態に係る熱処理炉10及びその変形例にかかる熱処理炉で使用した円筒体と同一のものを使用することができ、排気口12への円筒体の取付け方法も第1の実施の形態及びその変形例の場合と同様にすることができる。このため、網材95〜98と取付け枠体99、100についてのみ説明する。また、本発明の第2の実施の形態に係る熱処理炉の熱効率改善方法は、第1の実施の形態に係る熱処理炉の熱効率改善方法と同様なので説明は省略する。
【0039】
耐熱性繊維は、炭化ケイ素系繊維、炭素系繊維、又はアルミナ系繊維のいずれかであり、炭化ケイ素系繊維及び炭素系繊維は、内殻構造と外殻構造を持つ多層構造となっている。
ここで、炭化ケイ素系繊維の場合、内殻構造は、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質、(2)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2とし、更にその炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物、(3)Si、C、及びOを含有する無機物質、(4)粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物、及び(5)β−SiCの微結晶からなる結晶質無機物質のいずれか1の炭化ケイ素から構成されている。一方、炭素系繊維の場合、内殻構造は微結晶炭素から構成されている。
【0040】
外殻構造は、Al、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成されている。そして、外殻構造の熱膨張係数の値は、内殻構造の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下である。これによって、炭化ケイ素系繊維、炭素系繊維に温度変動が生じても、外殻構造が内殻構造から剥離することを防止できる。
【0041】
なお、固溶体酸化物は、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、更に第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QE2Si2O7、QESiO5、RE3Al5O12、及びREAlO3のいずれか1又は2以上からなる。これにより、固溶体酸化物(すなわち、外殻構造)の耐熱性及び耐食性が高まる。
【0042】
そして、炭化ケイ素系繊維で網材95〜98を構成する場合、(1)〜(7)の炭化ケイ素からなる炭化ケイ素繊維の紐を用いて原網材を作製し、この原網材を構成している炭化ケイ素繊維の外側に外殻構造を設けて、炭化ケイ素繊維を内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変えることにより網材95〜98を作製する。また、炭素系繊維で網材95〜98を構成する場合、微結晶炭素からなる炭素繊維の紐を用いて原網材を作製し、この原網材を構成している炭素繊維の外側に外殻構造を設けて、炭素繊維を内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変えることにより網材95〜98を作製する。一方、アルミナ系繊維からなる耐熱性繊維で網材95〜98を構成する場合、アルミナ系繊維で構成された紐から製造した網を、予め設定された形状(例えば、所定寸法の正方形状又は長方形状)に裁断することにより網材95〜98を作製する。
以下、炭化ケイ素系繊維又は炭素系繊維からなる耐熱性繊維で網材95〜98を構成する場合の製造方法について説明する。
【0043】
炭化ケイ素系繊維又は炭素系繊維で構成された網材95〜98の作製方法は、(1)〜(7)の炭化ケイ素からなる炭化ケイ素繊維又は微結晶炭素からなる炭素繊維で構成された原網材を作製する第1工程と、原網材を、材料Aの粉末が水中、有機溶媒中、あるいは水と有機溶媒の混合溶媒中に分散した分散溶液中に浸漬し、次いで原網材を陰極側にして50〜150ボルトの直流電圧を2〜10分間印加して、電気泳動により、粉末を原網材を構成する炭化ケイ素繊維又は炭素繊維の表面に付着させて処理網材を得る第2工程と、処理網材を分散溶液中から取り出し乾燥させて、水及び/又は有機溶媒を除去する第3工程と、乾燥した処理網材を、不活性ガス雰囲気中1300〜1700℃で、0.2〜2時間加熱処理して粉末を炭化ケイ素繊維又は炭素繊維の表面に固着させ、炭化ケイ素繊維又は炭素繊維を内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変える第4工程とを有している。
【0044】
(1)〜(7)の炭化ケイ素からなる炭化ケイ素繊維又は微結晶炭素からなる炭素繊維で構成された網を、予め設定された形状(例えば、所定寸法の正方形状又は長方形状)に裁断することにより、原網材を作製する。ここで、原網材を作製するのに使用した紐に、化学繊維(例えばレーヨン繊維)が含有される場合は、原網材を不活性ガス雰囲気(窒素ガス雰囲気、好ましくはアルゴンガス雰囲気)中で、800〜1200℃の温度で、0.5〜5時間加熱処理する。これによって、化学繊維を完全に分解除去、又は一部を分解除去し残部を炭化させることができる。その結果、原網材は、完全に無機物化する(以上、第1工程)。
【0045】
そして、完全に無機物化した原網材を、材料Aの粉末が水中、有機溶媒中、あるいは水と有機溶媒の混合溶媒中に分散した分散溶液が貯留された浴槽中に浸漬する。ここで、有機溶媒は、例えば、アセトン、エタノール、又はノルマルヘプタンのいずれか1である。また、Al、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、材料Aは、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる。なお、耐熱性及び耐食性の高い固溶体酸化物とする場合、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、更に第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとして、固溶体酸化物の組成を、一般式QE2Si2O7、
QESiO5、RE3Al5O12、及びREAlO3のいずれか1又は2以上とする。
【0046】
続いて、原網材を陰極側にして、直流安定化電源から50〜150ボルトの直流電圧を2〜10分間印加して、電気泳動により、粉末を原網材を構成する炭化ケイ素繊維又は炭素繊維の外側に付着させて処理原網材を形成する。ここで、浴槽中には、例えば、C/Cコンポジット製のカソ−ド電極が距離を有して対向配置されており、原網材はアノ−ド電極となる2枚のステンレス製金網に抱き合わされて(挟まれて)、カソ−ド電極間に配置される(以上、第2工程)。
【0047】
処理原網材の形成が完了すると、処理原網材を分散溶液中から取り出し、分散溶液の液切りを行った後、1〜4時間風乾して水及び/又は有機溶媒の大半を飛散除去する。次いで、大気雰囲気中、40〜80℃の温度で3〜10時間熱風乾燥して、残存する水及び/又は有機溶媒を完全に除去する(以上、第3工程)。
【0048】
乾燥が完了した処理原網材を、アルゴンガス等の不活性ガス気流下、又は0.2〜1MPaの微圧力の不活性ガス雰囲気中で、1300〜1700℃の温度で0.2〜2時間加熱処理する。これによって、炭化ケイ素繊維又は炭素繊維の外側に付着している粉末が焼結して炭化ケイ素繊維又は炭素繊維に固着し、炭化ケイ素繊維又は炭素繊維は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造に変わり(以上、第4工程)、網材が形成される。なお、外殻構造は、材料Aで形成され、内殻構造は、炭化ケイ素繊維を構成している無機物質又は微結晶炭素で形成される。
【0049】
また、図16、図17に示すように、取付け枠体99、100は、耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は耐熱性非酸化物(例えば窒化ケイ素)からなっている。そして、取付け枠体99は、幅方向中央部に縦桟101aを備え、縦桟101aの両側に網材95、96の取付けが可能な枠体102と、網材95、96が取付けられた枠体102の縦桟101aの両側部にそれぞれ取付けられて網材95、96を枠体102と共に挟持する2つの小枠体103、104とを有し、取付け枠体100は、幅方向中央部に縦桟105を備え、縦桟105の両側に網材97、98の取付けが可能な枠体106と、網材97、98が取付けられた枠体106の縦桟105の両側部にそれぞれ取付けられて網材97、98を枠体106と共に挟持する2つの小枠体107、108とを有している。
なお、縦桟101aには、長手方向一端(上端)の幅方向中央部から長手方向に沿って長さの半分の長さの切込み109が形成され、縦桟105には、長手方向他端(下端)の幅方向中央部から長手方向に沿って長さの半分の長さの切込み110が形成されている。
【0050】
このような構成とすることにより、枠体102の縦桟101aの両側にそれぞれ網材95、96を載置し、網材95、96の上に小枠体103、104を載置することで、網材95、96を枠体102と小枠体103、104で挟持することができる。同様に、枠体106の縦桟105の両側に網材97、98を載置し、網材97、98の上に小枠体107、108を載置することで、網材97、98を枠体106と小枠体107、108で挟持することができる。そして、小枠体103、104、107、108に設けられた各取付け孔111から、耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は耐熱性非酸化物(例えば窒化ケイ素)のピン(図示せず)を差し込み先部を枠体102、106に予め形成されている各取付け孔112に挿入し、耐熱性の無機接着剤(例えばアルミナ質)で固定する。そして、枠体102の縦桟101aに形成した切込み109に枠体106の縦桟105に形成した切込み110を挿入することにより、集合体113が形成される。
なお、ピンの代わりに耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は耐熱性非酸化物(例えば窒化ケイ素)からなるボルトを使用してもよい。
【0051】
本発明の第3の実施の形態に係る熱処理炉は、第1の実施の形態に係る熱処理炉10及びその変形例にかかる熱処理炉と比較して、耐熱性部材として排気口12の入口側に配置する板材の代わりに、耐熱性繊維を用いてそれぞれ作製された網材と布材又は複数の網材を重ね合わせて形成した積層体を用い、この積層体を排気口12内に設けた図示しない円筒体に取付けたことが特徴となっている。布材と網材又は網材の枚数を変えることで種々の厚みの積層体を容易に形成することができる。なお、積層体を形成する場合、重ね合わせる布材、網材は、同一素材のもの同士を重ね合わせることが好ましい。
【0052】
ここで、円筒体には第1の実施の形態に係る熱処理炉10及びその変形例にかかる熱処理炉で使用した円筒体と同一のものを使用することができ、排気口12への円筒体の取付け方法も第1の実施の形態及びその変形例の場合と同様にすることができる。また、積層体に使用する網材は、第2の実施の形態に係る熱処理炉で使用した網材と同一の網材を使用することができ、積層体に使用する布材は、第2の実施の形態に係る熱処理炉で使用した網材を構成している耐熱性繊維と同一の耐熱性繊維から形成された織物又は不織布を所定のサイズで裁断することにより作製できる。そして、積層体の円筒体への取付け方法も第1、第2の実施の形態の場合と同様にすることができる。このため、積層体の作製方法についてのみ説明する。また、本発明の第3の実施の形態に係る熱処理炉の熱効率改善方法は、第1の実施の形態に係る熱処理炉の熱効率改善方法と同様なので説明は省略する。
【0053】
積層体を炭化ケイ素系繊維からなる耐熱性繊維でそれぞれ構成された網材と布材を用いて作製する場合、前記した炭化ケイ素からなる炭化ケイ素繊維でそれぞれ作製された原網材と原布材を重ね合わせて原積層体を形成し、次いで、原積層体を構成している炭化ケイ素繊維の外側に外殻構造を設けて、炭化ケイ素繊維を、炭化ケイ素からなる内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変えることにより積層体を作製する。また、積層体が、炭素系繊維からなる耐熱性繊維でそれぞれ構成された網材と布材を用いて作製する場合、微結晶炭素からなる炭素繊維で作製された原網材と原布材を重ね合わせて原積層体を形成し、次いで、原積層体を構成している炭素繊維の外側に外殻構造を設けて、炭素繊維を、炭素からなる内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変えることにより積層体を作製する。
【0054】
積層体を炭化ケイ素系繊維からなる耐熱性繊維で構成された網材を用いて作製する場合、前記した炭化ケイ素からなる炭化ケイ素繊維で作製された原網材を重ね合わせて原積層体を形成し、次いで、原積層体を構成している炭化ケイ素繊維の外側にそれぞれ外殻構造を設けて、炭化ケイ素繊維を、炭化ケイ素からなる内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変えることにより作製する。また、積層体を炭素繊維からなる耐熱性繊維で構成された網材を用いて作製する場合、微結晶炭素からなる炭素繊維で作製された原網材を重ね合わせて原積層体を形成し、次いで、原積層体を構成している炭素繊維の外側にそれぞれ外殻構造を設けて、炭化ケイ素繊維を、炭素からなる内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変えることにより作製する。
ここで、炭化ケイ素繊維又は炭素繊維を内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変える方法は、第2の実施の形態に係る熱処理炉に使用した網材95〜98の場合と同様にすることができるので、方法の詳細な説明は省略する。
【0055】
一方、積層体を、アルミナ系繊維からなる耐熱性繊維で構成された網材と布材を用いて作製する場合、アルミナ系繊維で構成された網材と布材を積層することにより積層体を作製する。また、積層体を、アルミナ系繊維からなる耐熱性繊維で構成された網材を用いて作製する場合、アルミナ系繊維で構成された網材を積層することにより積層体を作製する。なお、積層体としての一体性を向上させる場合、網材と布材を積層する際、網材を積層する際、例えばアルミナ系の接着剤を介して積層する。
【0056】
図18、図19に示すように、本発明の第4の実施の形態に係る熱処理炉114は、第1の実施の形態に係る熱処理炉10と比較して、耐熱性部材として排気口12の入口側に配置する板材13、14の代わりに、炭化ケイ素系繊維、炭素系繊維、又はアルミナ系繊維からなる耐熱性繊維を用いて作製した複数の開口部115を有する布材116を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、布材116の開口部115がそれぞれ上下に連通して貫通孔117となった耐熱性の孔集合体118を使用し、排気口119内に設けた耐熱性の支持部材の一例である円筒体120内に、円筒体120の軸方向に沿って各貫通孔117の軸心が並ぶように(円筒体120の軸心方向と各貫通孔117の貫通方向が同じ向きとなるように)孔集合体118を配置したことが特徴となっている。なお、炭化ケイ素系繊維及び炭素系繊維は、内殻構造と外殻構造を持つ多層構造となっている。
【0057】
ここで、円筒体120には第1の実施の形態に係る熱処理炉10で使用した円筒体15と同一のものを使用することができ、排気口119への円筒体120の取付け方法も第1の実施の形態の場合と同様にすることができる。このため、孔集合体118の作製方法、孔集合体118の円筒体120への取付け方法についてのみ説明する。
【0058】
炭化ケイ素系繊維からなる耐熱性繊維で構成された布材116を用いて孔集合体118を作製する場合、前記した炭化ケイ素からなる炭化ケイ素繊維の織物又は不織布を円板状に裁断した原布材に予め設定された形状の開口部115を並べて形成し、開口部115の位置が一致するように原布材を水平方向に位置合せしながら上下方向に複数枚重ねて原孔集合体を構成して、原孔集合体を構成している炭化ケイ素繊維の外側に外殻構造を設けて、炭化ケイ素繊維を内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変えることにより各原布材を布材116に変えて孔集合体118を形成する。
【0059】
また、炭素繊維からなる耐熱性繊維で構成された布材116を用いて孔集合体118を作製する場合、微結晶炭素からなる炭素繊維の織物又は不織布を円板状に裁断した原布材に予め設定された形状の開口部115を並べて形成し、開口部115の位置が一致するように原布材を水平方向に位置合せしながら上下方向に複数枚重ねて原孔集合体を構成して、原孔集合体を構成している炭素繊維の外側に外殻構造を設けて、炭素繊維を内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変えることにより原布材を布材116に変えて孔集合体118を形成する。
なお、炭化ケイ素繊維又は炭素繊維を内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変える方法は、第2の実施の形態に係る熱処理炉に使用した網材95〜98の場合と同様に行うことができるので、方法の詳細な説明は省略する。
【0060】
また、アルミナ系繊維からなる耐熱性繊維で構成された布材116を用いて孔集合体118を形成する場合、アルミナ系繊維の織物又は不織布を円板状に裁断した原布材に予め設定された形状の開口部115を並べて形成して布材116を作製し、この布材116を開口部115の位置が一致するように水平方向に位置合せしながら上下方向に複数枚重ねることにより孔集合体118を形成する。なお、孔集合体118としての一体性を向上させる場合は、布材116を積層する際、例えばアルミナ系の接着剤を使用する。
【0061】
孔集合体118が挿入された円筒体120を排気口119内入口側に固定した場合、円筒体120を排気口119内に固定する複数の頭付きセラミックボルト20の各頭部の側面に円筒体120内に挿入した孔集合体118の下面が当接する。このため、孔集合体118は頭付きセラミックボルト20を介して円筒体120内に掛止されることになって、孔集合体118の円筒体120内からの脱落を防止できる。一方、排気ガスの流れで孔集合体118が円筒体120内を上方に移動すると、孔集合体118の上面が円筒体120の上側を貫通するセラミックボルト21に当接して上方への移動が阻止され、孔集合体118の円筒体120内からの飛び出しを防止できる。
【0062】
続いて、本発明の第4の実施の形態に係る熱処理炉114の熱効率改善方法について説明する。
熱処理炉114の排気口119の入口側に、排気口119を通過する排気ガスの流れに沿って円筒体120を設置すると、排気ガスは円筒体120内を円筒体120の軸方向に沿って通過して外部に排出されることになる。このため、円筒体120内に、円筒体120の軸方向に沿って各貫通孔117の軸心が並ぶように孔集合体118を配置すると、円筒体120内を通過する排気ガスは各貫通孔117内を軸心方向に沿って通過することになって、排気口119を通過する排気ガスの流れを妨げることなく、排気ガスと貫通孔117の内壁との接触を十分に行うことができる。
【0063】
これによって、排気ガスで孔集合体118を効率的に加熱しながら排気口119を通過する排気ガスの温度を下げると共に、排気口119の入口側を除いた領域の温度を下げることができる。その結果、排気口119から外部に流出する熱を減少させることができる。また、孔集合体118の下端面において貫通孔117を除いた部分(非貫通孔部分)は排気口119の横断面上に位置することになるため、加熱された孔集合体118の非貫通孔部分から放出される輻射熱を熱処理炉114内に効率的に入射させることができる。このため、熱処理炉114の消費エネルギーを減少(燃料使用量を減少)することができると共に、熱処理炉114内の温度を昇温する際には昇温性能を向上させ、熱処理炉114内を所定温度に保持する際には炉内の温度分布を均一にすることが可能になる。
【0064】
そして、排気ガスは、円筒体120内を円筒体120の軸方向に沿って流れるので、孔集合体118の各貫通孔117内を軸心方向に沿って通過することになって、排気口119内に円筒体120及び孔集合体118を設置しても排気ガスの通過が妨げられない。このため、熱処理炉114内の炉内ガスの流れを、排気口119内に円筒体120及び孔集合体118を配置しない場合と同一に保つことができると共に、炉内圧力の上昇の虞もなく、この熱処理炉114の熱効率改善方法を、既存の熱処理炉に対して容易に適用することができる。更に、孔集合体118の排気口119への取付け、取外しは、円筒体120に対する孔集合体118の取付け、取外しとなるので、熱処理炉114の保守管理が容易になる。
【0065】
また、布材116で形成した孔集合体118の代わりに、複数の開口部を有する耐熱性の板材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、板材の開口部がそれぞれ上下に連通して貫通孔を形成している孔集合体を使用することができる。
ここで、開口部を有する耐熱性の板材は、第1の実施の形態の場合と同様に、炭化ケイ素粉末を使用して成形したシートに予め設定された形状の開口部を並べて形成した原板材を作製し、得られた原板材の表面にアルミナ又はジルコニア等の耐熱性酸化物の粉末からなるスラリーを塗布して被覆層を形成し、被覆層が形成された原板材を熱処理することにより製造できる。また、炭化ケイ素粉末の代わりに耐熱性酸化物(例えばアルミナ)の粉末を使用して成形したシートに予め設定された形状の開口部を並べて形成し焼結して板材を製造することができる。更に、アルミナ繊維で構成された織物又は不織布から裁断して作製したシートに予め設定された形状の開口部を並べて形成した後、アルミナ又はジルコニア等の耐熱性酸化物の粉末からなるスラリーを含浸して熱処理することにより板材を製造することもできる。
【0066】
更に、布材116で形成した孔集合体118の代わりに、耐熱性繊維を用いて作製した紐を編んで形成した網材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、網材の開口部がそれぞれ上下に連通して貫通孔を形成している孔集合体を使用することもできる。ここで、網材は、第2の実施の形態で使用した網材95〜98と同一の網材を使用することができる。
【0067】
そして、網材が炭化ケイ素系繊維で構成される場合、炭化ケイ素繊維で形成された網から裁断した円形の原網材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、原網材の開口部がそれぞれ上下に連通して貫通孔を形成している原孔集合体を作製し、原孔集合体を構成している炭化ケイ素繊維の外側に外殻構造を設けて、炭化ケイ素繊維を内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変えることにより孔集合体を作製する。また、網材が炭素系繊維で構成される場合、炭素繊維で形成された網から裁断した円形の原網材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、原網材の開口部がそれぞれ上下に連通して貫通孔を形成している原孔集合体を作製し、原孔集合体を構成している炭素繊維の外側に外殻構造を設けて、炭素繊維を内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変えることにより孔集合体を作製する。
【0068】
一方、網材がアルミナ系繊維で構成される場合、アルミナ系繊維で形成された網から裁断した円形の網材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、網材の開口部がそれぞれ上下に連通して貫通孔を形成するようにして孔集合体を作製する。なお、孔集合体としての一体性を向上させる場合には、網材を積層する際、例えばアルミナ系の接着剤を使用する。
【0069】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
例えば、布材、板材を円筒体に取付ける場合、網材を取付けるのに使用した枠体に布材、板材を取付け、布材、板材が取付けられた枠体を円筒体に取付けるようにしてもよい。
また、第1の実施の形態で使用した板材の代わりに、第3の実施の形態で使用した積層体の作製に使用した原布材にアルミナ、ジルコニア等の耐熱性酸化物のスラリーを含浸すると共に表層に塗布し非酸化性雰囲気中で熱処理することにより板状としたものを使用することができる。ここで、原布材が炭化ケイ素繊維又は炭素繊維で構成されている場合、炭化ケイ素繊維又は炭素繊維の外側に外殻構造を設けて、原布材を炭化ケイ素系繊維又は炭素系繊維で構成される布材を変えて、この布材の表層に更に耐熱性酸化物のスラリーを塗布し酸化性雰囲気又は非酸化性雰囲気中で熱処理することにより板状とすることもできる。
更に、板材の代わりに、炭化ケイ素系繊維又は炭素系繊維で構成される布材を使用することも可能である。
【符号の説明】
【0070】
10:熱処理炉、11:天井部、12:排気口、13、14:板状の耐熱性部材(板材)、15:円筒体、16、17、18、19:スリット、20:頭付きセラミックボルト、21:セラミックボルト、22:セラミックナット、23:耐熱性固定手段、24:集合体、25、26:切込み、27、28、29、30、31、32:取付け孔、33、34:円筒体、35、36、37、38、39、40、41、42:板材、43:集合体、44、44a:円筒体、45:集合体、46:集合体、47、48:板材、49:第1の板材群、50:板材、51、52、53、54:切込み、55:円筒体、56、57、58、59、60、61:スリット、62、63、64、65、66、67:取付け孔、68:集合体、69、70、71、72:板材、73:円筒体、74:円筒体、75:集合体、76:集合体、77、78、79:板材、80、81:円筒体、82、83、84、85:板材、86:集合体、87:円筒体、88、89、90、91、92、93:板材、94:集合体、95、96、97、98:網材、99、100:取付け枠体、101:紐、101a:縦桟、102:枠体、103、104:小枠体、105:縦桟、106:枠体、107、108:小枠体、109、110:切込み、111、112:取付け孔、113:集合体、114:熱処理炉、115:開口部、116:布材、117:貫通孔、118:孔集合体、119:排気口、120:円筒体
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱されたガスが排気口を通過して炉内から炉外に排出される熱処理炉の熱効率改善方法及び熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス燃焼式加熱炉あるいは雰囲気制御加熱炉等の熱処理炉における最も顕著な熱損失は、熱処理炉の排気口を通過して炉内から炉外に排出される加熱されたガスが持ち出す熱損失である。そこで、Si−C系繊維で形成した通気性部材(例えば、3次元編み物、不織布の積層体)を熱処理炉の排気口の炉内側の入口に排気口を覆うように取付けて(例えば、炉壁に耐熱性のセラミック接着剤を用いて貼り付けて)、通気性部材で炉内から排気口内に流入する加熱されたガスの熱を濾し取って自らは加熱され(熱フィルタ作用)、加熱された通気性部材から放出される輻射熱を炉内に入れること(熱レフレクタ作用)により、加熱されたガスの顕熱を排気口内で回収し炉内に戻すことが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4325758号公報
【特許文献2】実用新案登録第3136873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、排気口を覆うように通気性部材を取付けると、加熱されたガスの炉内から排気口内への流入が妨げられ、炉内におけるガスの流れが変化したり、炉内圧力が上昇したりして、熱処理効果が変化するという問題が生じる。また、通気性部材がSi−C系繊維で形成されているため、炉内が酸化性雰囲気であると通気性部材を形成しているSi−C系繊維が徐々に酸化されて、通気性部材の有する熱フィルタ作用及び熱レフレクタ作用が低下すると共に、炉内で高速流転するガスによる機械的衝撃や磨耗により通気性部材に損傷が発生するという問題がある。更に、通気性部材をセラミック接着剤による接着だけで長期に亘って安定して炉壁に付着させることは困難で、通気性部材が使用中に剥がれて落下するという問題もある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、排気口を通過して炉内から炉外に排出されるガスの流れを妨げないように排気口内に耐熱性部材を配置し、加熱された耐熱性部材からの輻射熱を炉内に入れて排気口から流出する熱を減少させる熱処理炉の熱効率改善方法及び熱処理炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法は、加熱されたガスを排気口から外に排出する熱処理炉の熱効率改善方法において、
前記排気口の入口側に、該排気口を通過するガスの流れに沿って耐熱性部材を配置した。
【0007】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法において、前記耐熱性部材は板状とすることができる。
また、前記耐熱性部材は、耐熱性繊維を用いて作製した紐を編んで形成した網材とすることもできる。
更に、前記耐熱性部材は、耐熱性繊維を用いてそれぞれ作製された網材と布材又は複数の網材を重ね合わせて形成した積層体としてもよい。
【0008】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法において、前記耐熱性部材は、前記排気口を通過するガスの流れに沿って複数の貫通孔が形成された耐熱性の孔集合体とすることができる。
ここで、前記孔集合体は、耐熱性繊維を用いて作製した紐を編んで形成した網材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、該網材の開口部がそれぞれ上下に連通して前記貫通孔を形成することにより作製できる。
また、前記孔集合体は、耐熱性繊維を用いて作製した複数の開口部を有する布材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、該布材の該開口部がそれぞれ上下に連通して前記貫通孔を形成することにより作製することもできる。
更に、前記孔集合体は、複数の開口部を有する耐熱性の板材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、該板材の該開口部がそれぞれ上下に連通して前記貫通孔を形成することにより作製してもよい。
【0009】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法において、前記耐熱性部材は、耐熱性の支持部材を介して前記排気口に取付けられていることが好ましい。
【0010】
前記目的に沿う第2の発明に係る熱処理炉は、加熱されたガスを排気口から外に排出する熱処理炉において、
前記排気口の入口側に、該排気口を通過するガスの流れに沿って耐熱性部材を配置している。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法及び第2の発明に係る熱処理炉においては、排気口の入口側に、排気口を通過するガスの流れに沿って耐熱性部材を配置したので、排気口を通過するガスの流れを妨げることなく、ガスと耐熱性部材との接触を十分に行うことができ、耐熱性部材を効率的に加熱しながら排気口を通過するガスの温度を下げると共に、排気口の入口側を除いた領域の温度を下げることができる。その結果、排気口を通過して炉内から炉外に流出するガスが持ち出す熱を減少させることが可能になる。
そして、排気口内で加熱された耐熱性部材からは、輻射熱が炉内に放出(放射)されるので、熱処理炉の消費エネルギーを減少(燃料使用量を減少)させ、熱処理炉を昇温する際には昇温性能を向上させ、熱処理炉内を所定温度に保持する際には炉内の温度分布を均一にすることが可能になる。
【0012】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法において、耐熱性部材が板状となっている場合、ガスと耐熱性部材との接触面積を大きくできるので、ガスの温度を効率的に下げることが容易にできる。
【0013】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法において、耐熱性部材が、耐熱性繊維を用いて作製した紐を編んで形成した網材である場合、ガスは耐熱性部材を透過することができるので、排気口内をガスが通過する際の抵抗を下げることができる。
【0014】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法において、耐熱性部材が、耐熱性繊維を用いてそれぞれ作製された網材と布材又は複数の網材を重ね合わせて形成した積層体である場合、排気口を通過するガスの流れを妨げない範囲内で耐熱性部材の厚みを容易に調整することができるので、輻射熱の放出面積を大きくすることができる。なお、耐熱性部材を複数の網材を重ね合わせた積層体で形成すると、ガスは耐熱性部材を透過できるため、耐熱性部材の厚みを厚くできる。
【0015】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法において、耐熱性部材が、排気口を通過するガスの流れに沿って複数の貫通孔が形成された耐熱性の孔集合体である場合、孔集合体の下端面において貫通孔をのぞいた部分(非貫通孔部分)が排気口の横断面上に位置することになって、非貫通孔部分から放出される輻射熱を炉内に効果的に入れることができる。
【0016】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法において、孔集合体が、耐熱性繊維を用いて作製した紐を編んで形成した網材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、網材の開口部がそれぞれ上下に連通して貫通孔を形成している場合、排気口内に配置する耐熱性部材のガスの流れに沿う長さを容易に調整することができる。また、網材から耐熱性部材を構成すると、耐熱性部材の開口率(耐熱性部材の横断面積に対する貫通孔の総断面積の割合)を容易に高くすることができ、ガスの通過性を向上することができる。
【0017】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法において、孔集合体が、耐熱性繊維を用いて作製した複数の開口部を有する布材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、布材の開口部がそれぞれ上下に連通して貫通孔を形成している場合、あるいは孔集合体が、複数の開口部を有する耐熱性の板材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、板材の開口部がそれぞれ上下に連通して貫通孔を形成している場合、排気口内に配置する耐熱性部材の長さを容易に調整することができる。
【0018】
第1の発明に係る熱処理炉の熱効率改善方法において、耐熱性部材が、耐熱性の支持部材を介して排気口に取付けられている場合、耐熱性部材の排気口への取付け、取外しが容易になって、耐熱性部材の保守管理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る熱処理炉の排気口の入口側に配置された板状の耐熱性部材の説明図である。
【図2】板状の耐熱性部材で形成される集合体の説明図である。
【図3】(A)、(B)、(C)は集合体の作製方法を示す説明図である。
【図4】円筒体の説明図である。
【図5】第1の変形例に係る集合体の説明図である。
【図6】第2の変形例に係る集合体の説明図である。
【図7】第3の変形例に係る集合体の説明図である。
【図8】(A)、(B)は第3の変形例に係る集合体の作製方法を示す説明図である。
【図9】第3の変形例に係る集合体を取付ける円筒体の説明図である。
【図10】(A)は円筒体に第3の変形例に係る集合体を取付けた状態の平面図、(B)は斜視図である。
【図11】第4の変形例に係る集合体の説明図である。
【図12】第5の変形例に係る集合体の説明図である。
【図13】第6の変形例に係る集合体の説明図である。
【図14】第7の変形例に係る集合体の説明図である。
【図15】第8の変形例に係る集合体の説明図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係る熱処理炉の排気口の入口側に配置された網材で構成される耐熱性部材の説明図である。
【図17】網材を取付ける取付け枠体の説明図である。
【図18】本発明の第4の実施の形態に係る熱処理炉の排気口の入口側に配置された孔集合体で構成される耐熱性部材の説明図である。
【図19】孔集合体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る熱処理炉10は、内部に設けられた図示しない熱源(例えばバーナ)で発生した熱風を用いて対象物(図示せず)の熱処理を行い、加熱されたガスを排気ガスとして、例えば、熱処理炉10の天井部11を垂直に貫通させて形成した断面円形の排気口12から炉外に排出しており、排気口12の入口側には複数枚、例えば2枚の板状の耐熱性部材(以下、単に板材という)13、14が排気口12を通過する排気ガスの流れに沿って配置されている。そして、板材13、14は、排気口12を通過する排気ガスで加熱され、加熱された板材13、14から放出される輻射熱を熱処理炉10の内部に入れている。
【0021】
ここで、板材13、14は、排気口12の入口側に挿入された耐熱性の支持部材の一例であるセラミック製の円筒体15に形成されたスリット16、17、18、19に装着されている。そして、円筒体15は、例えば、円筒体15の側部の下側部位(排気ガスの入口側の領域)の周方向複数箇所(図1では4箇所)を、円筒体14の内側から外側に向けて貫通し、先部が排気口12の内壁に螺入するセラミック製の頭付きセラミックボルト20と、円筒体15の側部の上側部位(排気ガス出口側の領域)を貫通し両端部が排気口12の内壁内に取付けられる、例えば1本のセラミックボルト21と、セラミックボルト21の両端部からねじ込まれ円筒体15の外周面を両側から押圧して円筒体15にセラミックボルト21を固定するセラミックナット22とを有する耐熱性固定手段23を用いて排気口12内に通過する排気ガスの流れに沿って取付けられている。以下、詳細に説明する。
【0022】
円筒体15は、耐熱性酸化物(例えばアルミナ)及び耐熱性非酸化物(例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、サイアロン)のいずれか1からなる。これによって、円筒体15の高温下での変形や破損を防止して、長期間に亘って安定して使用することができる。熱処理炉10内で運転中に温度変動が発生する場合、円筒体15を耐熱性非酸化物で形成することで、円筒体15の温度変化に伴う破損を防止できる。なお、耐熱性非酸化物で形成した円筒体15は、高温下の酸化性雰囲気中では、円筒体15の表面が徐々に酸化するので、円筒体15の表面には、例えば、アルミナ、ジルコニア等の耐熱性酸化物のスラリーを塗布して被覆層を形成し、円筒体15の表面の酸化を防止する。これによって、円筒体15の高温特性(例えば、強度、熱衝撃抵抗)の低下を防いで、長期間に亘って安定して使用することができる。
【0023】
頭付きセラミックボルト20(セラミックボルト21及びセラミックナット22も同様)は、耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は耐熱性非酸化物(例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、サイアロン)のいずれか1からなる。これによって、頭付きセラミックボルト20の高温下での変形や破損を防止して、長期間に亘って安定して使用することができる。熱処理炉10内で運転中に温度変動が発生する場合、頭付きセラミックボルト20を耐熱性非酸化物で形成することで、頭付きセラミックボルト20の温度変化に伴う破損を更に防止できる。なお、耐熱性非酸化物で形成した頭付きセラミックボルト20は、高温下の酸化性雰囲気中では、頭付きセラミックボルト20の表面が徐々に酸化するので、頭付きセラミックボルト20の表面には、例えば、アルミナ、ジルコニア等の耐熱性酸化物のスラリーを塗布して被覆層を形成し、頭付きセラミックボルト20の表面の酸化を防止する。これによって、頭付きセラミックボルト20の高温特性(例えば、強度、熱衝撃抵抗)の低下を防いで、長期間に亘って安定して使用することができる。
【0024】
図2に示すように、板材13、14は、同一サイズの矩形状であって、平面視して(即ち、排気口12を通過する排気ガスの流れ方向に見て、又は、排気口12の軸心方向に見て)1箇所(板材13、14の幅方向の中央部)で交差させて、板材13、14間の交差角度が10°以上90°以下、ここでは90°となった放射状の集合体24を形成している。そして、集合体24は、その長手方向(板材13、14の長手方向)を円筒体15の軸心方向に向けて円筒体15内に挿入されている。なお、集合体24が挿入された円筒体15を排気口12に取付けた場合、円筒体15の外側に突出している板材13、14の幅方向の両側の端部は排気口12の内壁にそれぞれ接触していても、板材13、14の両側の端部と排気口12の内壁との間に隙間が形成されていてもよい。
【0025】
集合体24は、図3(A)に示すように、板材13、14の幅方向中央部に、長手方向に沿って板材13、14の長さLの半分の長さの切込み25、26をそれぞれ形成し、図3(B)に示すように、板材13、14の切込み25、26が同軸上で対向すると共に板材13、14が直交するように配置して、図3(C)に示すように、板材13、14の切込み25、26を、他方の切込み26、25内に切込み25、26に沿って挿入して組合わせることにより形成する。そして、図4に示すように、円筒体15の周方向4等分位置に円筒体15の基端(排気ガス出口側端部)から、それぞれ円筒体15の軸方向に沿って板材13、14の長さLより長い長さSのスリット16〜19を形成し、集合体24の交差部分を中心としてその両側部がそれぞれスリット16〜19に嵌入するように集合体24を円筒体15内に挿入する。これにより、集合体24を、板材13、14間の交差角度を90°に維持した状態で、円筒体15内に配置することができる。なお、図4において、符号27、28はセラミックボルト21が挿通する取付け孔、符号29、30、31、32は頭付きセラミックボルト20が挿通する取付け孔である。
【0026】
板材13、14は厚みが0.2〜10mmであって、例えば、炭化ケイ素粉末又は炭素粉末に結合剤、可塑剤等を添加して調製したスラリーを用いてシート成形により形成したシートを焼結して原板材を作製し、得られた原板材の表面にアルミナ又はジルコニア等の耐熱性酸化物の粉末からなるスラリーを塗布して被覆層を形成し、被覆層が形成された原板材を熱処理することにより製造した。原板材を炭化ケイ素又は炭素で形成することで、板材13、14の比熱を小さくすることができ、排気口12を通過する排気ガスで板材13、14の温度を素早く上げることができると共に、加熱され板材13、14からの輻射熱の放射効率を高めることができる。そして、被覆層を設けることで、酸化性雰囲気中に板材13、14を配置しても、原板材が酸化されることを防止できる。
【0027】
また、炭化ケイ素粉末又は炭素粉末の代わりに耐熱性酸化物(例えばアルミナ)の粉末を使用して成形したシートを焼結して板材を製造することができる。更に、アルミナ繊維で構成された織物又は不織布から裁断して作製したシートにアルミナ又はジルコニア等の耐熱性酸化物の粉末からなるスラリーを含浸して熱処理することにより板材を製造することもできる。シートを酸化物質とすることで、シートから製造される板材を、酸化性雰囲気中において安定して使用することが可能になる。
【0028】
集合体24を2枚の板材13、14で形成したが、3枚以上の板材を、平面視して1点(板材の幅方向の中央部)で交差させて、隣接する板材間の各交差角度が等しくなるように集合体を形成してもよい。ここで、隣接する板材間の各交差角度は、5°以上とする。交差角度を5°以上とすることで、排気ガスが板材間を通過する際の抵抗を小さくでき、排気ガスの流れを阻害しないようにできる。なお、交差角度の上限は、3枚の板材を有する場合で、60°である。
【0029】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係る熱処理炉10の熱効率改善方法について説明する。
熱処理炉10の排気口12の入口側に、排気口12を通過する排気ガスの流れに沿って円筒体15を設置することで、排気ガスは円筒体15内を軸方向に沿って通過して外部に排出されることになる。ここで、円筒体15内には、板材13、14が、平面視して1箇所で交差して放射状となった集合体24が、その長手方向(板材13、14の長手方向)を円筒体15の軸心方向(排気ガスの流れ方向)に向けて挿入されているので、排気ガスは、通過を妨げられることなく板材13、14に沿って通過することができる。これによって、排気ガスと板材13、14との接触を十分に確保することができ、排気ガスで板材13、14は効率的に加熱され、加熱された板材13、14によって、排気口12の入口端部(すなわち、熱処理炉10炉内との境界)の温度を上昇させると共に、加熱された板材13、14から放射される輻射熱を熱処理炉10内に入れて、排気口12から外部に流出する熱を減少させることができる。
【0030】
また、排気口12の入口側に配置した板材13、14を加熱することにより、排気口12内の温度を下げ、排気口12の出口から排出される排気ガスの温度を下げることができ、熱処理炉10の消費エネルギーを減少(燃料使用量を減少)することができると共に、熱処理炉10内の温度を昇温する際には昇温性能を向上させ、熱処理炉10内を所定温度に保持する際には炉内の温度分布を均一にすることが可能になる。そして、排気ガスが板材13、14及び円筒体15の側部に沿って流れるので、排気口12内に円筒体15及び板材13、14を設置しても排気ガスの通過が妨げられないため、熱処理炉10内の炉内ガスの流れを、排気口12内に板材13、14を設置しない場合と同一に保つことができると共に、炉内圧力の上昇の虞もなく、この熱処理炉の熱効率改善方法を、既存の熱処理炉に対して容易に適用することができる。更に、板材13、14の排気口12への取付け、取外しは、円筒体15に対する板材13、14の取付け、取外しとなるので、熱処理炉10の保守管理が容易になる。
【0031】
第1の実施の形態では、集合体24を板材13、14で形成したが、図5に示す第1の変形例のように、支持部材として排気口12内に同心に2つの円筒体33、34を配置し、複数、例えば8枚の板材35〜42の幅方向両側を、円筒体33、34の周方向同一角度位置にそれぞれ形成したスリット(図示せず)に装着させて集合体43を形成することもできる。板材35〜42が、排気口12の中央部(軸心側)に配置されないので、排気口12の中央部を通過する流速の速い排気ガスを優先して通過させることができる。
また、排気口12の中央部を通過する排気ガスの流れを妨げないようにすることで、図6に示す第2の変形例のように、同心に配置した2つの円筒体44、44aに装着される板材の枚数が多くなった集合体45を形成するようにすることもできる。
【0032】
図7に示す第3の変形例のように、集合体46を、5mm以上の間隔を有して平行配置された複数枚、例えば2枚の板材47、48を備えた第1の板材群49と、第1の板材群49を構成する板材47、48に90°の交差角度で交差する1枚の板材50で構成してもよい。ここで、集合体46の形成は、図8(A)に示すように、板材50の幅方向の長さWを3等分する部位に、長手方向に沿って板材47の長さLの半分の長さの切込み51、52をそれぞれ形成する。一方、板材47、48には、板材47、48の幅方向中央部に、長手方向に沿って板材48、49の長さLの半分の長さの切込み53、54をそれぞれ形成する。次いで、板材50の切込み51と板材47の切込み53が同軸上で対向し、板材50の切込み52と板材48の切込み54が同軸上で対向すると共に板材50に対して板材47、48がそれぞれ直交するように配置する。そして、図8(B)に示すように、板材50の切込み51と板材47の切込み53を互いに切込み51、53に沿って挿入して組合わせ、板材50の切込み52と板材48の切込み54を互いに切込み52、54に沿って挿入して組合わせることによりできる。
【0033】
そして、図9に示すように、支持部材の一例である円筒体55の基端(排気ガス出口側端部)において、平面視して(軸心方向に見て)円筒体55の中心を通る直線(直径)と基端との交差部をF、Gとし、交差部F、Gを結ぶ線分FGを3等分する線分FG上の2点をそれぞれ通過して線分FGに直交する2本の直線のうち、一方の直線と円筒体55の基端との交差部をH、I、他方の直線と円筒体55の基端との交差部J、Kとし、各交差部F、G、H、I、J、Kの位置に、それぞれ円筒体55の軸方向に沿って板材47、48、50の長さLより長い長さRのスリット56、57、58、59、60、61を形成する。次いで、集合体46の板材50、47、48の両側部がそれぞれスリット56〜61に嵌入するように集合体46を円筒体55内に挿入する。これにより、図10(A)、(B)に示すように、平行に配置された板材47、48が板材50に平面視して異なる2点で直交した状態となって円筒体55内に配置することができる。その結果、円筒体55内は、集合体46により、円筒体55内を通過する(排気口12内を通過する)排気ガスの流れに沿った複数の分岐路に分割される。なお、図9、図10(A)、(B)において、符号62、63はセラミックボルト21が挿通する取付け孔、符号64〜67は頭付きセラミックボルト20が挿通する取付け孔である。
【0034】
集合体46を、板材50に対して、平行配置された板材47、48が、直交するように形成したが、1枚の板材に対して、平行配置された2枚の板材が、5°以上90°未満の角度で交差するように配置してもよい。また、1枚の板材に対して、平行配置された3枚の板材が、5°以上90°以下の角度で交差するように配置してもよい。
また、集合体46を形成する第1の板材群49を2枚の板材47、48で構成したが、第1の板材群を3枚以上の板材を用いて構成することもできる。
【0035】
図11に示す第4の変形例のように、集合体68を、距離を設けて平行配置した2枚の板材69、70を備えた第1の板材群と、距離を設けて平行配置した2枚の板材71、72を備えた第2の板材群を、第1の板材群の板材69、70と第2の板材群の板材71、72が直交交差するように配置することもできる。この集合体68を、排気口12内に配置した円筒体73に図示しないスリットを形成して装着すると、集合体68(排気口12)の中央部に空間が形成され、集合体68の中央部を通過する排気ガスの流れを妨げないようにすることができる。
【0036】
また、排気口12の中央部を通過する排気ガスの流れを妨げないようにすることで、図12に示す第5の変形例のように、排気口12内に配置した円筒体74で集合体68と同様に配置された板材69〜72を保持すると共に、円筒体74及び板材69〜72にスリット(図示せず)を更に設けて、円筒体74に集合体68より多くの板材を装着させることにより、集合体75を形成することもできる。
【0037】
図13に示す第6の変形例のように、集合体76を、距離を設けて平行配置した複数枚、例えば3枚の板材77〜69で構成し、この集合体76を構成している板材77〜69を、排気口12内に配置した円筒体80に形成した図示しないスリットを用いて装着させてもよい。また、図14に示す第7の変形例のように、排気口12内に配置した円筒体81の中央部を除いた領域に、例えば4枚の板材82〜85を平行配置して集合体86を形成することもできる。板材82〜85が、排気口12の中央部に配置されないので、排気口12の中央部を通過する流速の速い排気ガスを優先して通過させることができる。
更に、排気口12の中央部を通過する排気ガスの流れを妨げないようにすることで、図15に示す第8の変形例のように、排気口12に配置した円筒体87に装着する板材の枚数が多くなった、例えば6枚の板材88〜93からなる集合体94を形成することもできる。
【0038】
図16に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る熱処理炉は、第1の実施の形態に係る熱処理炉10及びその変形例にかかる熱処理炉と比較して、耐熱性部材として排気口12の入口側に配置する板材の代わりに、耐熱性繊維を用いて作製した紐101を編んで(紐101を縦線及び横線に用いて)形成した複数枚、例えば4枚の網材95〜98を用い、網材95〜98を取付け枠体99、100を介して排気口12内に設けた図示しない円筒体に取付けたことが特徴となっている。
ここで、円筒体には第1の実施の形態に係る熱処理炉10及びその変形例にかかる熱処理炉で使用した円筒体と同一のものを使用することができ、排気口12への円筒体の取付け方法も第1の実施の形態及びその変形例の場合と同様にすることができる。このため、網材95〜98と取付け枠体99、100についてのみ説明する。また、本発明の第2の実施の形態に係る熱処理炉の熱効率改善方法は、第1の実施の形態に係る熱処理炉の熱効率改善方法と同様なので説明は省略する。
【0039】
耐熱性繊維は、炭化ケイ素系繊維、炭素系繊維、又はアルミナ系繊維のいずれかであり、炭化ケイ素系繊維及び炭素系繊維は、内殻構造と外殻構造を持つ多層構造となっている。
ここで、炭化ケイ素系繊維の場合、内殻構造は、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質、(2)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2とし、更にその炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物、(3)Si、C、及びOを含有する無機物質、(4)粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物、及び(5)β−SiCの微結晶からなる結晶質無機物質のいずれか1の炭化ケイ素から構成されている。一方、炭素系繊維の場合、内殻構造は微結晶炭素から構成されている。
【0040】
外殻構造は、Al、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成されている。そして、外殻構造の熱膨張係数の値は、内殻構造の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下である。これによって、炭化ケイ素系繊維、炭素系繊維に温度変動が生じても、外殻構造が内殻構造から剥離することを防止できる。
【0041】
なお、固溶体酸化物は、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、更に第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QE2Si2O7、QESiO5、RE3Al5O12、及びREAlO3のいずれか1又は2以上からなる。これにより、固溶体酸化物(すなわち、外殻構造)の耐熱性及び耐食性が高まる。
【0042】
そして、炭化ケイ素系繊維で網材95〜98を構成する場合、(1)〜(7)の炭化ケイ素からなる炭化ケイ素繊維の紐を用いて原網材を作製し、この原網材を構成している炭化ケイ素繊維の外側に外殻構造を設けて、炭化ケイ素繊維を内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変えることにより網材95〜98を作製する。また、炭素系繊維で網材95〜98を構成する場合、微結晶炭素からなる炭素繊維の紐を用いて原網材を作製し、この原網材を構成している炭素繊維の外側に外殻構造を設けて、炭素繊維を内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変えることにより網材95〜98を作製する。一方、アルミナ系繊維からなる耐熱性繊維で網材95〜98を構成する場合、アルミナ系繊維で構成された紐から製造した網を、予め設定された形状(例えば、所定寸法の正方形状又は長方形状)に裁断することにより網材95〜98を作製する。
以下、炭化ケイ素系繊維又は炭素系繊維からなる耐熱性繊維で網材95〜98を構成する場合の製造方法について説明する。
【0043】
炭化ケイ素系繊維又は炭素系繊維で構成された網材95〜98の作製方法は、(1)〜(7)の炭化ケイ素からなる炭化ケイ素繊維又は微結晶炭素からなる炭素繊維で構成された原網材を作製する第1工程と、原網材を、材料Aの粉末が水中、有機溶媒中、あるいは水と有機溶媒の混合溶媒中に分散した分散溶液中に浸漬し、次いで原網材を陰極側にして50〜150ボルトの直流電圧を2〜10分間印加して、電気泳動により、粉末を原網材を構成する炭化ケイ素繊維又は炭素繊維の表面に付着させて処理網材を得る第2工程と、処理網材を分散溶液中から取り出し乾燥させて、水及び/又は有機溶媒を除去する第3工程と、乾燥した処理網材を、不活性ガス雰囲気中1300〜1700℃で、0.2〜2時間加熱処理して粉末を炭化ケイ素繊維又は炭素繊維の表面に固着させ、炭化ケイ素繊維又は炭素繊維を内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変える第4工程とを有している。
【0044】
(1)〜(7)の炭化ケイ素からなる炭化ケイ素繊維又は微結晶炭素からなる炭素繊維で構成された網を、予め設定された形状(例えば、所定寸法の正方形状又は長方形状)に裁断することにより、原網材を作製する。ここで、原網材を作製するのに使用した紐に、化学繊維(例えばレーヨン繊維)が含有される場合は、原網材を不活性ガス雰囲気(窒素ガス雰囲気、好ましくはアルゴンガス雰囲気)中で、800〜1200℃の温度で、0.5〜5時間加熱処理する。これによって、化学繊維を完全に分解除去、又は一部を分解除去し残部を炭化させることができる。その結果、原網材は、完全に無機物化する(以上、第1工程)。
【0045】
そして、完全に無機物化した原網材を、材料Aの粉末が水中、有機溶媒中、あるいは水と有機溶媒の混合溶媒中に分散した分散溶液が貯留された浴槽中に浸漬する。ここで、有機溶媒は、例えば、アセトン、エタノール、又はノルマルヘプタンのいずれか1である。また、Al、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、材料Aは、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる。なお、耐熱性及び耐食性の高い固溶体酸化物とする場合、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、更に第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとして、固溶体酸化物の組成を、一般式QE2Si2O7、
QESiO5、RE3Al5O12、及びREAlO3のいずれか1又は2以上とする。
【0046】
続いて、原網材を陰極側にして、直流安定化電源から50〜150ボルトの直流電圧を2〜10分間印加して、電気泳動により、粉末を原網材を構成する炭化ケイ素繊維又は炭素繊維の外側に付着させて処理原網材を形成する。ここで、浴槽中には、例えば、C/Cコンポジット製のカソ−ド電極が距離を有して対向配置されており、原網材はアノ−ド電極となる2枚のステンレス製金網に抱き合わされて(挟まれて)、カソ−ド電極間に配置される(以上、第2工程)。
【0047】
処理原網材の形成が完了すると、処理原網材を分散溶液中から取り出し、分散溶液の液切りを行った後、1〜4時間風乾して水及び/又は有機溶媒の大半を飛散除去する。次いで、大気雰囲気中、40〜80℃の温度で3〜10時間熱風乾燥して、残存する水及び/又は有機溶媒を完全に除去する(以上、第3工程)。
【0048】
乾燥が完了した処理原網材を、アルゴンガス等の不活性ガス気流下、又は0.2〜1MPaの微圧力の不活性ガス雰囲気中で、1300〜1700℃の温度で0.2〜2時間加熱処理する。これによって、炭化ケイ素繊維又は炭素繊維の外側に付着している粉末が焼結して炭化ケイ素繊維又は炭素繊維に固着し、炭化ケイ素繊維又は炭素繊維は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造に変わり(以上、第4工程)、網材が形成される。なお、外殻構造は、材料Aで形成され、内殻構造は、炭化ケイ素繊維を構成している無機物質又は微結晶炭素で形成される。
【0049】
また、図16、図17に示すように、取付け枠体99、100は、耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は耐熱性非酸化物(例えば窒化ケイ素)からなっている。そして、取付け枠体99は、幅方向中央部に縦桟101aを備え、縦桟101aの両側に網材95、96の取付けが可能な枠体102と、網材95、96が取付けられた枠体102の縦桟101aの両側部にそれぞれ取付けられて網材95、96を枠体102と共に挟持する2つの小枠体103、104とを有し、取付け枠体100は、幅方向中央部に縦桟105を備え、縦桟105の両側に網材97、98の取付けが可能な枠体106と、網材97、98が取付けられた枠体106の縦桟105の両側部にそれぞれ取付けられて網材97、98を枠体106と共に挟持する2つの小枠体107、108とを有している。
なお、縦桟101aには、長手方向一端(上端)の幅方向中央部から長手方向に沿って長さの半分の長さの切込み109が形成され、縦桟105には、長手方向他端(下端)の幅方向中央部から長手方向に沿って長さの半分の長さの切込み110が形成されている。
【0050】
このような構成とすることにより、枠体102の縦桟101aの両側にそれぞれ網材95、96を載置し、網材95、96の上に小枠体103、104を載置することで、網材95、96を枠体102と小枠体103、104で挟持することができる。同様に、枠体106の縦桟105の両側に網材97、98を載置し、網材97、98の上に小枠体107、108を載置することで、網材97、98を枠体106と小枠体107、108で挟持することができる。そして、小枠体103、104、107、108に設けられた各取付け孔111から、耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は耐熱性非酸化物(例えば窒化ケイ素)のピン(図示せず)を差し込み先部を枠体102、106に予め形成されている各取付け孔112に挿入し、耐熱性の無機接着剤(例えばアルミナ質)で固定する。そして、枠体102の縦桟101aに形成した切込み109に枠体106の縦桟105に形成した切込み110を挿入することにより、集合体113が形成される。
なお、ピンの代わりに耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は耐熱性非酸化物(例えば窒化ケイ素)からなるボルトを使用してもよい。
【0051】
本発明の第3の実施の形態に係る熱処理炉は、第1の実施の形態に係る熱処理炉10及びその変形例にかかる熱処理炉と比較して、耐熱性部材として排気口12の入口側に配置する板材の代わりに、耐熱性繊維を用いてそれぞれ作製された網材と布材又は複数の網材を重ね合わせて形成した積層体を用い、この積層体を排気口12内に設けた図示しない円筒体に取付けたことが特徴となっている。布材と網材又は網材の枚数を変えることで種々の厚みの積層体を容易に形成することができる。なお、積層体を形成する場合、重ね合わせる布材、網材は、同一素材のもの同士を重ね合わせることが好ましい。
【0052】
ここで、円筒体には第1の実施の形態に係る熱処理炉10及びその変形例にかかる熱処理炉で使用した円筒体と同一のものを使用することができ、排気口12への円筒体の取付け方法も第1の実施の形態及びその変形例の場合と同様にすることができる。また、積層体に使用する網材は、第2の実施の形態に係る熱処理炉で使用した網材と同一の網材を使用することができ、積層体に使用する布材は、第2の実施の形態に係る熱処理炉で使用した網材を構成している耐熱性繊維と同一の耐熱性繊維から形成された織物又は不織布を所定のサイズで裁断することにより作製できる。そして、積層体の円筒体への取付け方法も第1、第2の実施の形態の場合と同様にすることができる。このため、積層体の作製方法についてのみ説明する。また、本発明の第3の実施の形態に係る熱処理炉の熱効率改善方法は、第1の実施の形態に係る熱処理炉の熱効率改善方法と同様なので説明は省略する。
【0053】
積層体を炭化ケイ素系繊維からなる耐熱性繊維でそれぞれ構成された網材と布材を用いて作製する場合、前記した炭化ケイ素からなる炭化ケイ素繊維でそれぞれ作製された原網材と原布材を重ね合わせて原積層体を形成し、次いで、原積層体を構成している炭化ケイ素繊維の外側に外殻構造を設けて、炭化ケイ素繊維を、炭化ケイ素からなる内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変えることにより積層体を作製する。また、積層体が、炭素系繊維からなる耐熱性繊維でそれぞれ構成された網材と布材を用いて作製する場合、微結晶炭素からなる炭素繊維で作製された原網材と原布材を重ね合わせて原積層体を形成し、次いで、原積層体を構成している炭素繊維の外側に外殻構造を設けて、炭素繊維を、炭素からなる内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変えることにより積層体を作製する。
【0054】
積層体を炭化ケイ素系繊維からなる耐熱性繊維で構成された網材を用いて作製する場合、前記した炭化ケイ素からなる炭化ケイ素繊維で作製された原網材を重ね合わせて原積層体を形成し、次いで、原積層体を構成している炭化ケイ素繊維の外側にそれぞれ外殻構造を設けて、炭化ケイ素繊維を、炭化ケイ素からなる内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変えることにより作製する。また、積層体を炭素繊維からなる耐熱性繊維で構成された網材を用いて作製する場合、微結晶炭素からなる炭素繊維で作製された原網材を重ね合わせて原積層体を形成し、次いで、原積層体を構成している炭素繊維の外側にそれぞれ外殻構造を設けて、炭化ケイ素繊維を、炭素からなる内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変えることにより作製する。
ここで、炭化ケイ素繊維又は炭素繊維を内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変える方法は、第2の実施の形態に係る熱処理炉に使用した網材95〜98の場合と同様にすることができるので、方法の詳細な説明は省略する。
【0055】
一方、積層体を、アルミナ系繊維からなる耐熱性繊維で構成された網材と布材を用いて作製する場合、アルミナ系繊維で構成された網材と布材を積層することにより積層体を作製する。また、積層体を、アルミナ系繊維からなる耐熱性繊維で構成された網材を用いて作製する場合、アルミナ系繊維で構成された網材を積層することにより積層体を作製する。なお、積層体としての一体性を向上させる場合、網材と布材を積層する際、網材を積層する際、例えばアルミナ系の接着剤を介して積層する。
【0056】
図18、図19に示すように、本発明の第4の実施の形態に係る熱処理炉114は、第1の実施の形態に係る熱処理炉10と比較して、耐熱性部材として排気口12の入口側に配置する板材13、14の代わりに、炭化ケイ素系繊維、炭素系繊維、又はアルミナ系繊維からなる耐熱性繊維を用いて作製した複数の開口部115を有する布材116を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、布材116の開口部115がそれぞれ上下に連通して貫通孔117となった耐熱性の孔集合体118を使用し、排気口119内に設けた耐熱性の支持部材の一例である円筒体120内に、円筒体120の軸方向に沿って各貫通孔117の軸心が並ぶように(円筒体120の軸心方向と各貫通孔117の貫通方向が同じ向きとなるように)孔集合体118を配置したことが特徴となっている。なお、炭化ケイ素系繊維及び炭素系繊維は、内殻構造と外殻構造を持つ多層構造となっている。
【0057】
ここで、円筒体120には第1の実施の形態に係る熱処理炉10で使用した円筒体15と同一のものを使用することができ、排気口119への円筒体120の取付け方法も第1の実施の形態の場合と同様にすることができる。このため、孔集合体118の作製方法、孔集合体118の円筒体120への取付け方法についてのみ説明する。
【0058】
炭化ケイ素系繊維からなる耐熱性繊維で構成された布材116を用いて孔集合体118を作製する場合、前記した炭化ケイ素からなる炭化ケイ素繊維の織物又は不織布を円板状に裁断した原布材に予め設定された形状の開口部115を並べて形成し、開口部115の位置が一致するように原布材を水平方向に位置合せしながら上下方向に複数枚重ねて原孔集合体を構成して、原孔集合体を構成している炭化ケイ素繊維の外側に外殻構造を設けて、炭化ケイ素繊維を内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変えることにより各原布材を布材116に変えて孔集合体118を形成する。
【0059】
また、炭素繊維からなる耐熱性繊維で構成された布材116を用いて孔集合体118を作製する場合、微結晶炭素からなる炭素繊維の織物又は不織布を円板状に裁断した原布材に予め設定された形状の開口部115を並べて形成し、開口部115の位置が一致するように原布材を水平方向に位置合せしながら上下方向に複数枚重ねて原孔集合体を構成して、原孔集合体を構成している炭素繊維の外側に外殻構造を設けて、炭素繊維を内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変えることにより原布材を布材116に変えて孔集合体118を形成する。
なお、炭化ケイ素繊維又は炭素繊維を内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変える方法は、第2の実施の形態に係る熱処理炉に使用した網材95〜98の場合と同様に行うことができるので、方法の詳細な説明は省略する。
【0060】
また、アルミナ系繊維からなる耐熱性繊維で構成された布材116を用いて孔集合体118を形成する場合、アルミナ系繊維の織物又は不織布を円板状に裁断した原布材に予め設定された形状の開口部115を並べて形成して布材116を作製し、この布材116を開口部115の位置が一致するように水平方向に位置合せしながら上下方向に複数枚重ねることにより孔集合体118を形成する。なお、孔集合体118としての一体性を向上させる場合は、布材116を積層する際、例えばアルミナ系の接着剤を使用する。
【0061】
孔集合体118が挿入された円筒体120を排気口119内入口側に固定した場合、円筒体120を排気口119内に固定する複数の頭付きセラミックボルト20の各頭部の側面に円筒体120内に挿入した孔集合体118の下面が当接する。このため、孔集合体118は頭付きセラミックボルト20を介して円筒体120内に掛止されることになって、孔集合体118の円筒体120内からの脱落を防止できる。一方、排気ガスの流れで孔集合体118が円筒体120内を上方に移動すると、孔集合体118の上面が円筒体120の上側を貫通するセラミックボルト21に当接して上方への移動が阻止され、孔集合体118の円筒体120内からの飛び出しを防止できる。
【0062】
続いて、本発明の第4の実施の形態に係る熱処理炉114の熱効率改善方法について説明する。
熱処理炉114の排気口119の入口側に、排気口119を通過する排気ガスの流れに沿って円筒体120を設置すると、排気ガスは円筒体120内を円筒体120の軸方向に沿って通過して外部に排出されることになる。このため、円筒体120内に、円筒体120の軸方向に沿って各貫通孔117の軸心が並ぶように孔集合体118を配置すると、円筒体120内を通過する排気ガスは各貫通孔117内を軸心方向に沿って通過することになって、排気口119を通過する排気ガスの流れを妨げることなく、排気ガスと貫通孔117の内壁との接触を十分に行うことができる。
【0063】
これによって、排気ガスで孔集合体118を効率的に加熱しながら排気口119を通過する排気ガスの温度を下げると共に、排気口119の入口側を除いた領域の温度を下げることができる。その結果、排気口119から外部に流出する熱を減少させることができる。また、孔集合体118の下端面において貫通孔117を除いた部分(非貫通孔部分)は排気口119の横断面上に位置することになるため、加熱された孔集合体118の非貫通孔部分から放出される輻射熱を熱処理炉114内に効率的に入射させることができる。このため、熱処理炉114の消費エネルギーを減少(燃料使用量を減少)することができると共に、熱処理炉114内の温度を昇温する際には昇温性能を向上させ、熱処理炉114内を所定温度に保持する際には炉内の温度分布を均一にすることが可能になる。
【0064】
そして、排気ガスは、円筒体120内を円筒体120の軸方向に沿って流れるので、孔集合体118の各貫通孔117内を軸心方向に沿って通過することになって、排気口119内に円筒体120及び孔集合体118を設置しても排気ガスの通過が妨げられない。このため、熱処理炉114内の炉内ガスの流れを、排気口119内に円筒体120及び孔集合体118を配置しない場合と同一に保つことができると共に、炉内圧力の上昇の虞もなく、この熱処理炉114の熱効率改善方法を、既存の熱処理炉に対して容易に適用することができる。更に、孔集合体118の排気口119への取付け、取外しは、円筒体120に対する孔集合体118の取付け、取外しとなるので、熱処理炉114の保守管理が容易になる。
【0065】
また、布材116で形成した孔集合体118の代わりに、複数の開口部を有する耐熱性の板材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、板材の開口部がそれぞれ上下に連通して貫通孔を形成している孔集合体を使用することができる。
ここで、開口部を有する耐熱性の板材は、第1の実施の形態の場合と同様に、炭化ケイ素粉末を使用して成形したシートに予め設定された形状の開口部を並べて形成した原板材を作製し、得られた原板材の表面にアルミナ又はジルコニア等の耐熱性酸化物の粉末からなるスラリーを塗布して被覆層を形成し、被覆層が形成された原板材を熱処理することにより製造できる。また、炭化ケイ素粉末の代わりに耐熱性酸化物(例えばアルミナ)の粉末を使用して成形したシートに予め設定された形状の開口部を並べて形成し焼結して板材を製造することができる。更に、アルミナ繊維で構成された織物又は不織布から裁断して作製したシートに予め設定された形状の開口部を並べて形成した後、アルミナ又はジルコニア等の耐熱性酸化物の粉末からなるスラリーを含浸して熱処理することにより板材を製造することもできる。
【0066】
更に、布材116で形成した孔集合体118の代わりに、耐熱性繊維を用いて作製した紐を編んで形成した網材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、網材の開口部がそれぞれ上下に連通して貫通孔を形成している孔集合体を使用することもできる。ここで、網材は、第2の実施の形態で使用した網材95〜98と同一の網材を使用することができる。
【0067】
そして、網材が炭化ケイ素系繊維で構成される場合、炭化ケイ素繊維で形成された網から裁断した円形の原網材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、原網材の開口部がそれぞれ上下に連通して貫通孔を形成している原孔集合体を作製し、原孔集合体を構成している炭化ケイ素繊維の外側に外殻構造を設けて、炭化ケイ素繊維を内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変えることにより孔集合体を作製する。また、網材が炭素系繊維で構成される場合、炭素繊維で形成された網から裁断した円形の原網材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、原網材の開口部がそれぞれ上下に連通して貫通孔を形成している原孔集合体を作製し、原孔集合体を構成している炭素繊維の外側に外殻構造を設けて、炭素繊維を内殻構造と外殻構造を有する多層構造に変えることにより孔集合体を作製する。
【0068】
一方、網材がアルミナ系繊維で構成される場合、アルミナ系繊維で形成された網から裁断した円形の網材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、網材の開口部がそれぞれ上下に連通して貫通孔を形成するようにして孔集合体を作製する。なお、孔集合体としての一体性を向上させる場合には、網材を積層する際、例えばアルミナ系の接着剤を使用する。
【0069】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
例えば、布材、板材を円筒体に取付ける場合、網材を取付けるのに使用した枠体に布材、板材を取付け、布材、板材が取付けられた枠体を円筒体に取付けるようにしてもよい。
また、第1の実施の形態で使用した板材の代わりに、第3の実施の形態で使用した積層体の作製に使用した原布材にアルミナ、ジルコニア等の耐熱性酸化物のスラリーを含浸すると共に表層に塗布し非酸化性雰囲気中で熱処理することにより板状としたものを使用することができる。ここで、原布材が炭化ケイ素繊維又は炭素繊維で構成されている場合、炭化ケイ素繊維又は炭素繊維の外側に外殻構造を設けて、原布材を炭化ケイ素系繊維又は炭素系繊維で構成される布材を変えて、この布材の表層に更に耐熱性酸化物のスラリーを塗布し酸化性雰囲気又は非酸化性雰囲気中で熱処理することにより板状とすることもできる。
更に、板材の代わりに、炭化ケイ素系繊維又は炭素系繊維で構成される布材を使用することも可能である。
【符号の説明】
【0070】
10:熱処理炉、11:天井部、12:排気口、13、14:板状の耐熱性部材(板材)、15:円筒体、16、17、18、19:スリット、20:頭付きセラミックボルト、21:セラミックボルト、22:セラミックナット、23:耐熱性固定手段、24:集合体、25、26:切込み、27、28、29、30、31、32:取付け孔、33、34:円筒体、35、36、37、38、39、40、41、42:板材、43:集合体、44、44a:円筒体、45:集合体、46:集合体、47、48:板材、49:第1の板材群、50:板材、51、52、53、54:切込み、55:円筒体、56、57、58、59、60、61:スリット、62、63、64、65、66、67:取付け孔、68:集合体、69、70、71、72:板材、73:円筒体、74:円筒体、75:集合体、76:集合体、77、78、79:板材、80、81:円筒体、82、83、84、85:板材、86:集合体、87:円筒体、88、89、90、91、92、93:板材、94:集合体、95、96、97、98:網材、99、100:取付け枠体、101:紐、101a:縦桟、102:枠体、103、104:小枠体、105:縦桟、106:枠体、107、108:小枠体、109、110:切込み、111、112:取付け孔、113:集合体、114:熱処理炉、115:開口部、116:布材、117:貫通孔、118:孔集合体、119:排気口、120:円筒体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されたガスを排気口から外に排出する熱処理炉の熱効率改善方法において、
前記排気口の入口側に、該排気口を通過するガスの流れに沿って耐熱性部材を配置したことを特徴とする熱処理炉の熱効率改善方法。
【請求項2】
請求項1記載の熱処理炉の熱効率改善方法において、前記耐熱性部材は板状となっていることを特徴とする熱処理炉の熱効率改善方法。
【請求項3】
請求項1記載の熱処理炉の熱効率改善方法において、前記耐熱性部材は、耐熱性繊維を用いて作製した紐を編んで形成した網材であることを特徴とする熱処理炉の熱効率改善方法。
【請求項4】
請求項1記載の熱処理炉の熱効率改善方法において、前記耐熱性部材は、耐熱性繊維を用いてそれぞれ作製された網材と布材又は複数の網材を重ね合わせて形成した積層体であることを特徴とする熱処理炉の熱効率改善方法。
【請求項5】
請求項1記載の熱処理炉の熱効率改善方法において、前記耐熱性部材は、前記排気口を通過するガスの流れに沿って複数の貫通孔が形成された耐熱性の孔集合体であることを特徴とする熱処理炉の熱効率改善方法。
【請求項6】
請求項5記載の熱処理炉の熱効率改善方法において、前記孔集合体は、耐熱性繊維を用いて作製した紐を編んで形成した網材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、該網材の開口部がそれぞれ上下に連通して前記貫通孔を形成していることを特徴とする熱処理炉の熱効率改善方法。
【請求項7】
請求項5記載の熱処理炉の熱効率改善方法において、前記孔集合体は、耐熱性繊維を用いて作製した複数の開口部を有する布材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、該布材の該開口部がそれぞれ上下に連通して前記貫通孔を形成していることを特徴とする熱処理炉の熱効率改善方法。
【請求項8】
請求項5記載の熱処理炉の熱効率改善方法において、前記孔集合体は、複数の開口部を有する耐熱性の板材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、該板材の該開口部がそれぞれ上下に連通して前記貫通孔を形成していることを特徴とする熱処理炉の熱効率改善方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1に記載の熱処理炉の熱効率改善方法において、前記耐熱性部材は、耐熱性の支持部材を介して前記排気口に取付けられていることを特徴とする熱処理炉の熱効率改善方法
【請求項10】
加熱されたガスを排気口から外に排出する熱処理炉において、
前記排気口の入口側に、該排気口を通過するガスの流れに沿って耐熱性部材を配置したことを特徴とする熱処理炉。
【請求項1】
加熱されたガスを排気口から外に排出する熱処理炉の熱効率改善方法において、
前記排気口の入口側に、該排気口を通過するガスの流れに沿って耐熱性部材を配置したことを特徴とする熱処理炉の熱効率改善方法。
【請求項2】
請求項1記載の熱処理炉の熱効率改善方法において、前記耐熱性部材は板状となっていることを特徴とする熱処理炉の熱効率改善方法。
【請求項3】
請求項1記載の熱処理炉の熱効率改善方法において、前記耐熱性部材は、耐熱性繊維を用いて作製した紐を編んで形成した網材であることを特徴とする熱処理炉の熱効率改善方法。
【請求項4】
請求項1記載の熱処理炉の熱効率改善方法において、前記耐熱性部材は、耐熱性繊維を用いてそれぞれ作製された網材と布材又は複数の網材を重ね合わせて形成した積層体であることを特徴とする熱処理炉の熱効率改善方法。
【請求項5】
請求項1記載の熱処理炉の熱効率改善方法において、前記耐熱性部材は、前記排気口を通過するガスの流れに沿って複数の貫通孔が形成された耐熱性の孔集合体であることを特徴とする熱処理炉の熱効率改善方法。
【請求項6】
請求項5記載の熱処理炉の熱効率改善方法において、前記孔集合体は、耐熱性繊維を用いて作製した紐を編んで形成した網材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、該網材の開口部がそれぞれ上下に連通して前記貫通孔を形成していることを特徴とする熱処理炉の熱効率改善方法。
【請求項7】
請求項5記載の熱処理炉の熱効率改善方法において、前記孔集合体は、耐熱性繊維を用いて作製した複数の開口部を有する布材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、該布材の該開口部がそれぞれ上下に連通して前記貫通孔を形成していることを特徴とする熱処理炉の熱効率改善方法。
【請求項8】
請求項5記載の熱処理炉の熱効率改善方法において、前記孔集合体は、複数の開口部を有する耐熱性の板材を水平方向に位置合せしながら上下方向に重ね、該板材の該開口部がそれぞれ上下に連通して前記貫通孔を形成していることを特徴とする熱処理炉の熱効率改善方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1に記載の熱処理炉の熱効率改善方法において、前記耐熱性部材は、耐熱性の支持部材を介して前記排気口に取付けられていることを特徴とする熱処理炉の熱効率改善方法
【請求項10】
加熱されたガスを排気口から外に排出する熱処理炉において、
前記排気口の入口側に、該排気口を通過するガスの流れに沿って耐熱性部材を配置したことを特徴とする熱処理炉。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−247108(P2012−247108A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118285(P2011−118285)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(594081397)株式会社超高温材料研究センター (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(594081397)株式会社超高温材料研究センター (15)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]