説明

熱分解方法

本発明は、テトラフルオロエチレンなどのフルオロモノマーを形成するためのヒドロクロロフルオロカーボンの熱分解であって、ニッケルでライニングされ、他の耐食性金属ジャケットによって機械的に支持された反応域で実施され、ニッケルライニングが改善された収率の価値ある反応生成物を提供する熱分解に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンの熱分解に関する。
【背景技術】
【0002】
(特許文献1)公報(1982年)は、クロロジフルオロメタン(HCFC−22)を白金チューブ中でテトラフルオロエチレン(TFE)に熱分解する欠点、すなわち低い転換率およびHClなどの腐食性生成物の形成をもたらす欠点を開示し、まずHCFC−22を、銅の存在下で予熱して、水蒸気を除去し、酸化銅を形成した後、ニッケルまたはニッケル合金からなるチューブ反応器(反応器チューブ)を使用することによってこの問題を解決すると主張している。この公報は、白金に比べて改善を示すデータを開示していない。さらに、HCFC−22(CFHCl)を熱分解するという結果は、HClをHCFC−22から分離させて、:CFラジカル(カルベン)を残すことであるので、ニッケルまたはニッケル合金チューブを使用すると、HClの形成を防止することができない。カルベンは、結合して、TFEを形成する。公報での白金チューブ反応器(反応器チューブ)への言及は、小型の研究用熱分解チューブへの言及であることは明らかである。というのは、白金の費用は、この材料を商業規模の反応器で使用することから製造工業を遠ざけるものであるからである。ニッケルの場合、同じことが真実である。というのは、費用の問題のためではなく、ニッケルは商業規模の反応器に作製するための強度および延性に欠けるからである。ニッケル合金、特に13〜25重量%のCrをMoおよび他の金属と共に含むインコネル(Inconel)(登録商標)合金は、ヒドロクロロフルオロカーボンまたはヒドロフルオロカーボンをTFEなどのフルオロモノマーに熱分解するための炉の構成の工業標準材料であり、このような合金は、作製に十分な強度および延性、ならびにこの用途で有用である熱分解条件下で耐食性を有する。
【0003】
【特許文献1】インド特許第158251号明細書
【特許文献2】米国特許第6,013,890号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ニッケル合金ライニングの代わりにニッケルライニングが、ヒドロクロロフルオロカーボンおよびヒドロフルオロカーボンの熱分解からの有用な生成物に改善された選択性を提供するという発見から生じる。ヒドロクロロフルオロカーボンまたはヒドロフルオロカーボンの転換率が、熱分解方法において改善され得るということは十分ではない。生成された反応生成物が高価値生成物であり、望ましくない副生物が最小限に抑えられることが最も重要であり、すなわち転換率が選択的であり、望ましい生成物だけができるだけ最大に生成されることが重要である。したがって、良好な転換率、および高選択性が必要である。わずかなパーセントの望ましくない副生物が、コストのかかる廃棄の問題を提起する。というのは、速い生産速度および長い生産工程が、大量の望ましくない副生物を廃棄する必要性をもたらすからである。反対に、わずかな収率の改善でさえ、蓄積された大量の高価値生成物のため価値の高い改善を表す。
【0005】
したがって、本発明は、ヒドロクロロフルオロカーボンまたはヒドロフルオロカーボンをフルオロモノマーに熱分解するステップを含む方法であって、前記熱分解を機械的に支持されたニッケルでライニングされた反応域中で実施する。反応域、例えば熱分解を通常は実施する管状反応器の構成の材料としてのニッケルそれ自体は、商業規模の熱分解チューブに適していない。本発明によれば、ニッケルは、反応域の作製およびその使用に必要とされた強度および延性を提供する構成の裏当て金属材料によって機械的に支持されたライニングとして存在する。したがって、本発明の方法は、反応域の断面が管状である場合に関して、必要な機械的強度を供給するニッケルライニング用金属支持体を含む。
【0006】
驚くべきことに、機械的に支持されたニッケルライニングをヒドロクロロフルオロカーボンおよびヒドロフルオロカーボンの熱分解で使用すると、ニッケル合金を反応域の表面として使用する場合より高い収率のフルオロモノマーおよび他の高価値反応生成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
管状反応器、すなわち反応器が単純なチューブである場合の反応域の機械的に支持されたニッケルによるライニングに関して、反応域の形状は管状である。チューブの断面形状は、通常は丸い(円形)であるが、楕円形など他の断面の形とすることができる。反応域の形状は、内部チューブが中心に加熱器を有し、外部チューブがその外部表面で加熱される同心チューブで作製された反応器(環状反応器)の場合と同様に、環状とすることもできる。反応域の長さは、一般に少なくとも約2.4〜15.24m(8〜50フィート)、好ましくは約3〜8m(10〜25フィート)である。単純なチューブである反応器では、反応域の幅は、チューブの内径である。環状反応器では、反応域の幅は、内部チューブの外部表面と外部チューブの内部表面との間の距離である環状の空間の厚さである。管状反応器の反応域の幅は、少なくとも約1.9cm(3/4インチ)であり、最高約30cm(1フィート)とすることができる。環状反応器の反応域の幅は、約60mm〜30cm(0.25インチ〜1フィート)である。商業規模の熱分解チューブの多くは、より長く、かつ/またはより幅広い。このような管状反応器は、表面(内部)と体積の比が少なくとも約2cm−1(5インチ−1)である。より具体的には、反応域の体積、すなわち管状反応器の体積は、一般に少なくとも約0.04mであり、より多くは少なくとも約0.2mである。環状反応器の体積も同様である。管状反応器は、直線状とすることができ、あるいは十分な長さを有する場合、空間を節約するために、螺旋状コイルの形とすることができる。通常は、このようなコイルは、直線状の長さのチューブから、コイル形状に曲げ、このコイル化された形状を、Niを溶接材料として使用して端部間を溶接して、螺旋を形成することによって形成する。言うまでも無く、螺旋状管状反応器は、(Niでライニングされた)螺旋状反応域を成す。
【0008】
管状反応器では、内部表面がニッケルであり、外部表面が支持材料である。ニッケルライニング用の機械的支持物は、ライニングを形成させた予備形成外部チューブ、ライニングと同時形成させた外部チューブ、一緒に嵌合させ次いで相互に接着させた予備形成ライニングチューブと外部支持チューブ、または予備形成管状ライニングの外部表面上に形成されたチューブとすることができる。
【0009】
環状反応器では、外部チューブは、その内部表面をニッケルでライニングし、内部チューブは、その外部表面をニッケルでライニングし、その結果、環状の空間を定義する表面がニッケルでライニングされている。
【0010】
ライニングの厚さは、その形成方法に依存する。加えられた熱の反応器壁を貫通した最も効率的な移動には、ライニングと支持チューブとの緊密な接触が望まれる。例えば、従来の手段によってめっきすることによって、ライニングを機械的支持用チューブの表面上に形成することができる。Niライニングと支持用チューブの同時押出によって、より厚いNiライニングを形成することができる。ライニングと支持用チューブとの接触の緊密さが、所望より低い、すなわちライニングと支持チューブがコイル化操作において一緒に動かない場合、ライニングを支持チューブにその両端で溶接することができる。この緊密な接触を実現するための追加の方法は、爆発圧着、および流体力学的膨張である。米国特許公報(特許文献2)に開示されているものなど、金属リボンをライニングチューブの外部表面の周りに接合関係に巻くときに、支持金属の連続リボンをライニングチューブの外部表面に溶接することによって、支持用チューブを、ライニング材料(Ni)の予備形成チューブの外部表面の全面にわたって形成するウェルドオーバーレイ方法を使用することもできる。環状反応器の内部チューブを作製する際に使用する場合、ニッケルライニングを支持用チューブの外部表面の全面にわたって形成する。ウェルドオーバーレイ方法が好ましい。ライニングは、チューブ端部を接合する際にNi溶接物を使用して一緒に接合し、支持チューブは、支持チューブの構成材料と同様または同じ材料を使用して端部間を溶接する。ライニングの厚さは、予想腐食度の推定に基づいて確立され、支持材料の厚さは、反応器の設置、操作、および修理において、反応器によって受けるものと予想される応力に抵抗するのに必要とされた強度の推定によって確立される。一般に、ライニングの厚さは、少なくとも約0.0025cm(0.001インチ)、好ましくは少なくとも約0.076cm(0.030インチ)、より好ましくは少なくとも約0.152cm(0.060インチ)であり、約2.54cm(1インチ)以上の厚さとすることができる。支持チューブの厚さは、一般に少なくとも約0.16から2.54cm(1/16インチから1インチ)である。温度計ウェル(反応器壁厚を貫通して反応器の内部に連通する熱電対用のハウジング)を、その強度不足のためライニング材料で作製しない場合、熱分解反応に曝露される温度計ウェルの構成材料をニッケルで覆うこともできる。
【0011】
Niライニングは、本質的にNiからなる。すなわち、炉の操作条件下でライニングの寿命に認知できる悪影響を及ぼす不純物を含まない。Niライニングは、約1重量%超、好ましくは約0.1重量%超の他のいかなる元素も含まない。すなわち、Niは合金ではない。炭素がNi中に存在している場合、炭素の量は約0.02重量%以下とすべきであり、層でない場合、炭素はNiライニングを脆弱にしすぎる。したがって、本発明に従ってライニングとして使用するNiは、少なくとも約99.8重量%のNiとすることができる。Niは、通常はNi200、Ni201、およびNi270として入手することができ、後者が最も純粋である。Ni200は、0.02重量%超のCを含有することもあれば、0.02重量%以下の炭素含有量しか含まないで得られる可能性もある。したがって、Ni200が約0.02重量%以下の炭素しか含まない場合使用することができる。しかし、経済および性能に基づいて、Ni201が好ましい。本明細書に開示された重量パーセントは、Niの全重量、または場合によって支持金属(ジャケット)の全重量を基準にしている。
【0012】
ステンレス鋼、およびインコネル(Inconel)(登録商標)600、601、617などのインコネル(Inconel)(登録商標)合金など、Niライニング用の広範囲の支持材料を使用することができる。インコネル(Inconel)合金は、通常は13〜25重量%のCrを含有し、合金600、601、および617はそれぞれ、16、22、および23重量%のCrを含有する。ライニングを支持材料に接着させる方法は、特定の支持チューブの構成材料に依存する。反応器をコイルにしたい場合、ライニングされたチューブのコイル化を従来の手段によって行う。反応域を所望の熱分解温度に加熱するために、支持材料は、加えられた高温において耐酸化性であるべきである。支持材料は、熱が加えられる方向に面しているライニングの表面を、酸素から遮蔽し、それによって酸化崩壊から遮蔽する。
【0013】
本発明で使用する反応域を形成する管状反応器は、コイル化された反応器の外部表面とハウジングの内部表面との間を通過する熱ガスや、ハウジング内に設置された放射熱源など管状反応器を加熱するための手段を装備したハウジング内に設置されている。ハウジングとハウジング内に収容されている管状反応器の組合せは、熱分解炉と見なすことができる。環状反応器は、同様に電気加熱素子など内部チューブの内部を加熱するための追加の設備と配置することができる。
【0014】
反応域を定義する反応器のNiライニングは、通常は反応域を通過するガスの圧力低下を最小限に抑制するように平滑である。
【0015】
様々なヒドロクロロフルオロカーボンおよびヒドロフルオロカーボンを本発明に従って使用する上記の反応域で熱分解することができる。フルオロモノマーに熱分解される最も一般的なヒドロクロロフルオロカーボンは、クロロジフルオロメタン(HCFC−22)であり、主にTFE、および少量のヘキサフルオロプロピレンが得られ、この量は、各フルオロモノマーの比率を所望のものとするように調整された熱分解条件に依存する。形成される追加の価値ある熱分解反応生成物は、CFClCFH(HCFC 124a)およびパーフルオロシクロブタン(c−318)である。HCFC−124aおよびc−318はそれ自体、フルオロモノマーの供給源であり、反応域に供給するHCFC−22など主要なヒドロクロロフルオロカーボンからなる供給物と共に個別にまたは集合的に共供給物としてリサイクルすることができる。さらに反応してモノマーを作製することができる他の価値ある熱分解反応生成物には、HFC−23、HCFC−124、HCFC−143a、およびHCFC−226cbが含まれる。本発明の方法は、ヒドロクロロフルオロカーボンおよび/またはヒドロフルオロカーボンを管状反応器(反応域)の一端に連続供給し、未反応のヒドロクロロフルオロカーボンおよび/またはヒドロフルオロカーボンおよび反応生成物を反応器の出口端部から連続取り出しすることによって実施し、反応器内の反応システムは、これらのガスが反応域を連続通過するものである。炉へのリサイクルのための未反応のヒドロクロロフルオロカーボンおよび/またはヒドロフルオロカーボンと、フルオロモノマーと、他の価値ある反応生成物との分離および回収、ならびにパーフルオロイソブチレン(PFIB)など望ましくない副生物の処分を従来の方法によって行う。
【0016】
方法は、炉の容積に基づいて選択された広範囲の温度、圧力および接触時間条件で実施して、過剰量の望ましくない副生物を生成することなしにHFPを最も経済的に生成することができる。ヒドロクロロフルオロカーボンの場合、熱分解反応の温度は、望ましくない副生物の形成を最小限に抑制するために一般に少なくとも約600℃、好ましくは約750℃以下である。しかし、熱分解反応を約625℃〜725℃の範囲内で実施することが好ましい。ヒドロフルオロカーボンの場合、熱分解反応の温度は、一般により高く、少なくとも約750℃、好ましくは少なくとも約800℃〜900℃である。反応器へのヒドロクロロフルオロカーボンまたはヒドロフルオロカーボンの共供給物の場合、好ましい温度は、ヒドロクロロフルオロカーボンの場合に使用される温度範囲である。
【0017】
通常は、反応域)内での接触時間(滞在時間は、反応剤がヒドロクロロフルオロカーボンの場合約0.1秒未満、好ましくは約60〜100ミリ秒である。ヒドロフルオロカーボンは、より長い接触時間を必要とするかもしれないが、それでもなお2秒未満しか必要としない。熱分解反応器への共供給物がHCFCとHFCの混合物である場合、接触時間は、通常は1秒未満、好ましくは0.1秒未満である。ヒドロクロロフルオロカーボンまたはヒドロフルオロカーボンの転換率は、望ましくない副生物の形成を最小限に抑制するため、反応域を通過するごとに好ましくは約10〜50%、より好ましくは約20〜40%である。反応器への供給ガスは、周囲温度と同じように低い比較的低温とすることができ、このような供給ガスは、管状反応器の長さ方向を移動するとき加熱される。あるいは、供給ガスを、ヒドロクロロフルオロカーボンの熱分解温度未満である高温に予備加熱することができる。この加熱は反応域内で起こる熱分解反応の発熱性とともに、反応を反応器の端部に向けて所望の温度範囲内に導き、反応器の出口端部に隣接して最高温度に遭遇する。反応器の長さ方向を熱分解炉内で加熱するが、熱分解反応の温度を反応器の出口端部の温度計ウェルに設置された熱電対によって好都合に測定する。これは反応の実測温度である。本明細書に開示されている反応温度は、反応器(反応域)の出口端部で測定されたガス温度である。反応を大気圧で好都合に実施することができるが、約0.5〜1.5気圧など準および超大気圧を使用することもできる。
【0018】
炉へのヒドロクロロフルオロカーボンの供給は、上記に述べた共反応剤であり、または管状反応器内での反応において不活性である他の供給材料によって実現することができる。例えば、窒素やアルゴンなどの不活性ガスを、反応器にヒドロクロロフルオロカーボンと共供給して、反応器に加えられた熱を調節し、またはそれを増大することができる。水蒸気を反応器に共供給することもできる。
【実施例】
【0019】
4個の反応器を使用する。反応器#1、#2、および#3は、長さ41cm(16インチ)のチューブである。反応器#1は、ハイネス(Haynes)(登録商標)242で作製されている。反応器#2は、インコネル(Inconel)(登録商標)617で作製されている。反応器#3は、インコネル(Inconel)(登録商標)617で支持されたニッケルで作製されている。チューブはそれぞれ、内径が0.40インチである。チューブを2個のクランプオンセラミック加熱器で加熱する。各チューブの予熱部分は長さ5インチであり、反応器部分は長さ2インチである。2個のスプリットニッケルインサートは、予熱器および反応器部分のチューブの外側を締め、加熱器はニッケルインサートの外側で締められている。反応器部分は絶縁されている。予熱器部分(チューブの入口端部から6.4cm(2 1/2インチ))の中央に、熱電対が存在する。これは、ニッケルインサートとチューブ反応器(反応器チューブ)の間に設置されている。反応器部分は、2.5cm(1インチ)の間隔をあけて、予熱器部分と同じように適所に保持された3個の外部熱電対を有する。さらに、内部白金熱電対(外径6.1mm(1/16インチ))は、反応器壁上の対応する点で内部バルクガス温度をモニターする。
【0020】
較正した質量流量制御装置を使用して、反応器への供給を制御する。反応器の出口部分は、ガスクロマトグラフ/質量分光計(GC/MS)を使用してオンラインで分析する。結果をモル%で示す。
【0021】
反応器#4は、インコネル(Inconel)617のウェルドオーバーレイ付きの長さ46cm(18インチ)のスケジュール80ニッケル200パイプである。ニッケルパイプの外径は3.2cm(1.25インチ)であり、内径は2.5cm(1.0インチ)である。インコネル(Inconel)(登録商標)617のウェルドオーバーレイ付きのチューブの外径は3.8cm(1.5インチ)である。チューブを、長さ21.6cm(8 1/2インチ)であった直径6.35cm(2 1/2インチ)のスプリットチューブ炉内に設置する。チューブ炉の加熱された部分は、20cm(8.0インチ)である。反応器の中間点は、10cm(4インチ)であり、温度は、中間点で、さらに中間点の両側から2.5cm(1インチ)で外部壁に取り付けられた熱電対によって測定する。対応する内部ガス温度は、これらの点で内部熱電対によって測定する。
【0022】
反応器出口ガスをGC/MSを使用して分析し、結果をモル%で報告する。GC/MSは、60/80メッシュ(0.25/0.18mm)カーボパック(Carbopak)BHT上の5%クライトックス(Krytox)(登録商標)143ACパーフルオロエーテルを充填した20フィート(6.1m)×0.125インチ(3.2mm)スチールカラムを装備している。
【0023】
出発温度60℃で、3分間保持するためにKプログラミング条件を設定する。次いで、5℃/分の速度で200℃に加熱し、200℃に5分間保持する。分析結果をモル%で報告する。すべての実施例では、生成物分析は、別段の記述のない限り0.1%未満のPFIBを示している。
【0024】
反応器流出物の大半は、50%メタノール水溶液中10重量%水酸化カリウムを含有した直列に並べた1対のガス洗浄器を通してバブリングすることによってガス洗浄する。ガス洗浄器は両方とも、pH指示薬としてフェノールフタレインを有しており、pHが低下していることを指示する変色についてモニターする。直列に並べた第1のガス洗浄器がわずかに酸性になるとすぐに、ガス洗浄器溶液を取り替える。示唆のない限り、生成物分析をモル%で報告する。非特定化合物は、表の「その他」の行に含まれる。
【0025】
実施例では、流量をsccm、すなわち標準立方センチメートル/分で記載する。「標準」は、標準状態、20℃および大気圧を指す。実施例での接触時間は、別段の示唆のない限り60〜100ミリ秒の範囲である。
【0026】
(反応剤および生成物の識別)
TFE=テトラフルオロエチレン
HFP=ヘキサフルオロプロピレン
HCFC−22=CHFCl
HCFC−23=CHF
c−318=オクタフルオロシクロブタン
HCFC−124=CFCFHCl
HCFC−124a=CHFCFCl
HFC−143a=CFCH
HCFC−226cb=CHFCFCFCl
HC−1150=エチレン
HFC−1132a=フッ化ビニリデン(CH=CF
PFIB=パーフルオロイソブチレン
【0027】
実施例での熱分解温度は、出口ガス温度、すなわち「出口 T int」(出口内部温度)であり、「出口 T Ex」は、出口壁温度である。
【0028】
(実施例1)
表1に、反応器#1(ハイネス(Haynes)(登録商標)242)、#2(インコネル(Inconel)(登録商標)617)、および#3(インコネル(Inconel)(登録商標)617のウェルドオーバーレイ付きのニッケル)でのHCFC−22の熱分解の反応条件および結果をまとめる。有用な生成物は、重要なモノマーであるTFE、HFP;さらに熱分解してTFEおよび/またはHFPを生じることができるc−318、HCFC−124a、およびHCFC−226cbである。内部出口温度、例えば反応器#4の場合722℃は、熱分解反応器温度と見なされる。
【0029】
【表1】

【0030】
ニッケルでライニングされた反応器(#3)は、有用な生成物に対して、ニッケル合金反応器#1および#2より大幅に高い選択性を提供する。ニッケルでライニングされたチューブは、たとえ722℃および725℃のより高い温度で行われるとしてもハイネス(Haynes)またはインコネル(Inconel)合金より高いHCFC−22の転換率を714℃の内部出口温度で与える。
【0031】
(実施例2)
ニッケルでライニングされたインコネル(Inconel)617支持チューブの反応器#4で、HCFC−22を熱分解する。表2に、結果をまとめる。606℃、652℃、および705℃の出口ガス温度で、有用な生成物の対して高い選択性が得られる。本特許に従った温度を超えた763℃で、選択性は低下し、PFIBが初めて見られる。
【0032】
【表2】

【0033】
(実施例3)
反応器#4を使用して、温度を出口ガス温度が608℃になるように制御して、等量のHCFC−22およびHCFC−124を供給する。
【0034】
【表3】

【0035】
650℃の熱分解温度で、有用な生成物に対して高い選択性をもつ、より多い量のTFEおよびHFPが得られる。
【0036】
(実施例4)
HCFC−124aを反応器#4に646℃、694℃、および747℃で供給する。転換率は、温度と共に上昇し、76%という良好な選択性が747℃においてでさえ示される。799℃での熱分解は、2.7%のPFIBの生成をもたらす。これは、747℃での熱分解で形成された量の9倍である。
【0037】
【表4】

【0038】
(実施例5)
HFC−143aの約790〜800℃での熱分解のために、反応器#4を使用する(カラム3および4での熱分解の場合の出口ガス温度は利用できないが、カラム2から、出口ガス温度が中間ガス温度より約10°低いことが推論できる)。このヒドロフルオロカーボンは、熱分解反応におけるフッ化ビニリデンへの前駆体である。熱分解は、4:1、2:1、および1:1のヘリウム希釈で実施する。ヘリウム添加の効果は、反応器でのHFC−143aの滞在時間(接触時間)を低減し、それによって転換率が低減されることである。表5にまとめられた結果が示すように、本発明に従ってニッケルでライニングされたチューブで、HFC−143aは、40+%の転換率でさえ少しの副生成物しかなく高収率でフッ化ビニリデンに熱分解する。
【0039】
【表5】

【0040】
(実施例6)
反応器#4で、HFC−23およびc−318を約885℃で共熱分解して、TFEおよびHFPを生じるとともに、生成HFPに対して約5%のPFIBが形成する。HFPの生成がPFIBの少なくとも10倍である場合、熱分解結果(選択性)は優れている。
【0041】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロクロロフルオロカーボンまたはヒドロフルオロカーボンをフルオロモノマーに熱分解するステップを含む方法であって、前記熱分解が機械的に支持されたニッケルでライニングされた反応域中で実施されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ヒドロクロロフルオロカーボンにはクロロジフルオロメタンが含まれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒドロクロロフルオロカーボンにはCFClCFHも含まれることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱分解は、約10〜50%の前記ヒドロクロロフルオロカーボンを転換して実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒドロフルオロカーボンが熱分解されているときに、温度が約750℃〜900℃であることを条件にして、前記熱分解を約600℃〜750℃の温度で実施することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒドロフルオロカーボンが熱分解されているときに、滞在時間が約2秒未満であることを条件にして、前記熱分解を約0.1秒未満の前記反応域での滞在時間で実施することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フルオロモノマーにはテトラフルオロエチレンが含まれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記反応域の断面が管状であり、前記ニッケルライニング用の機械的支持物は前記ライニング用の金属ジャケットであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記反応域の断面が環状であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記反応域の体積が少なくとも約0.04mであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記反応域の長さが少なくとも約8mであることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2007−514747(P2007−514747A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545401(P2006−545401)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/042168
【国際公開番号】WO2005/058780
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】