説明

熱分解法二酸化ケイ素粉末およびその分散液

5〜600m/gの比表面積および500ppm未満の炭素含有量を有する熱分解法により製造された二酸化ケイ素粉末であり、これは比表面積1mあたり、ジブチルフタレート1.2g/100gSiO以下の比ジブチルフタレート吸収量および比表面積1mあたり、15mPas未満の比増粘作用を有する。該二酸化ケイ素粉末は、蒸気状のテトラメトキシシランおよび/またはテトラエトキシシランを空気と一緒に、および別個に水素をバーナーに供給し、かつ気体の混合物をバーナーに直列に接続された反応室中の火炎中で反応させ、かつ固体の反応生成物を公知の手段により気体流から分離し、その際、バーナー中のラムダ値は0.95〜1.5であり、かつその際、反応室中のラムダ値が0.8〜1.6であるために十分な二次空気を反応室へ供給することにより製造される。本発明はまた、該二酸化ケイ素粉末を含有する分散液ならびに該粉末および該分散液の使用も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分解法により製造された二酸化ケイ素粉末、該二酸化ケイ素粉末を含有する水性分散液、該二酸化ケイ素粉末および該分散液の製造および使用を提供する。
【0002】
熱分解法二酸化ケイ素または熱分解法シリカ(ヒュームドシリカ)という用語は、高温の気相中での単量体シリカの凝集により得られる全ての高分散性シリカの総称である。熱分解法シリカを工業的に製造するためには2つの方法、つまり高温加水分解およびアーク法が存在する。
【0003】
高温の加水分解法では蒸気状のケイ素化合物、水素、酸素および不活性ガスの均一な混合物が、冷却された燃焼空間中でバーナーにより燃焼される。ここで2つの反応が並行して進行する。第一に水素と酸素との反応により水が形成され、かつ第二にケイ素化合物の加水分解により二酸化ケイ素が形成される。
【0004】
気体混合物の均一性は、反応条件ひいては形成および成長の条件がそれぞれのSiO粒子に関してほぼ同じであり、従って極めて均質で一様な粒子が形成されうることを意味する。公知の方法では空気が酸素源として使用される。公知法により製造される熱分解法シリカは10〜600m/gの比表面積を有する。
【0005】
二酸化ケイ素のための出発材料は一般に四塩化ケイ素である(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第A23巻、第635頁以降、第5版を参照のこと)。四塩化ケイ素に加えてメチルトリクロロシラン、トリクロロシランまたはこれらの混合物を四塩化ケイ素と共に使用することもできる。
【0006】
JP2002114510は、0.05〜5μmの平均粒径を有する二酸化ケイ素が得られる方法を請求している。この方法ではケイ素化合物を酸素と水素の存在下で燃焼させる。シロキサン、シランまたは塩化ケイ素をケイ素化合物として使用することができる。しかし、この方法により製造される二酸化ケイ素は従来技術の方法によっても得ることができなかった特性を示していない。記載されている方法は自体、大量の製造のためには限定的に適切であるにすぎない。一様でない生成物および、出発材料として炭素を含有するケイ素化合物が使用される場合には、暗色でもある生成物が特に予測される。
【0007】
ガラス製品の製造において、または半導体産業での化学的機械的研磨において使用されるような分散液中で使用する場合、JP2002114510により製造される粉末は、従来技術に勝る利点を示さない。
【0008】
増大する要求に基づいて、二酸化ケイ素の特性における改善がまさにこれらの分野において要求される。特にガラス産業では、乾燥および焼結の際の低い収縮率のために、高充てんされた、取り扱いの容易な分散液、換言すれば低い粘度を有する分散液が要求される。
【0009】
本発明の対象は、低い粘度を有する、高充てんされた分散液の製造のために適切な二酸化ケイ素粉末を提供することである。本発明の対象は、この二酸化ケイ素粉末を含有する安定した分散液を提供することでもある。
【0010】
本発明は、
− 比表面積1mあたり、SiO100gにつきジブチルフタレート1.2g以下の比ジブチルフタレート吸収量および
− 比表面積1mあたり、15mPas未満の比増粘作用
を示すことを特徴とする、5〜600m/gの比表面積および500ppm未満の炭素含有率を有する、熱分解法により製造される二酸化ケイ素粉末を提供する。
【0011】
比ジブチルフタレート吸収量は、本発明による二酸化ケイ素粉末の比表面積の関数としてその構造の尺度を示す。この関連において構造という用語は、一次粒子の連晶(intergrowth)の程度を意味する。粒子はまず熱分解法において形成され、かつ反応が継続するにつれて凝集して鎖状の凝集体を形成することができ、これは交互に凝集塊を形成する。本発明による二酸化ケイ素粉末に関して請求される、比表面積mあたり、ジブチルフタレート1.2g/100gSiO以下の比ジブチルフタレート吸収量は一般に、従来技術により得られる熱分解法二酸化ケイ素粉末よりも低い。
【0012】
本発明による二酸化ケイ素粉末は、比増粘作用との関連においてのみ発生する。これは、比表面積1mあたりの増粘作用を意味すると理解される。この増粘作用はポリエステル中の二酸化ケイ素粉末の分散液中で測定される。
【0013】
有利な実施態様で本発明による粉末は、圧縮かさ密度と比表面積の積として定義される、比表面積1mあたり1000〜10000g/l、および特に有利には4000〜7000g/lの比圧縮かさ密度を示すことができる。この範囲の比圧縮かさ密度を示す本発明による粉末は、特に容易に分散液中に配合することができる。
【0014】
さらに本発明による二酸化ケイ素粉末は有利には50ppm未満、特に有利には20ppm未満の塩化物含有量を有していてよい。低い塩化物含有量はたとえば、本発明による粉末を化学的機械的研磨の分野で使用する場合に有利な効果を示すことができる。
【0015】
本発明はまた、
− 蒸気状のテトラメトキシシラン(TMOS)および/またはテトラエトキシシラン(TEOS)を空気と一緒に、または酸素が富化された空気と一緒に、および別個に
− 水素、
− を、バーナーに供給し、かつ気体の混合物をバーナーに直列に接続された反応室中の火炎中で反応させ、かつ固体の反応生成物を公知の手段により気体流から分離し、
− その際、バーナー中のラムダ値は0.95〜1.5であり、かつ
− その際、反応室中のラムダ値が0.8〜1.6であるために十分な二次空気を反応室へ供給する
ことを特徴とする、本発明による二酸化ケイ素粉末を製造するための方法も提供する。
【0016】
図1は、本発明による方法の基礎となっている簡略化された方法フローチャートを示す。A=バーナー、B=火炎、C=反応室、1=空気または酸素が富化された空気と共に蒸気状のテトラメトキシシランおよび/またはテトラエトキシシランからなる混合物の供給、2=水素の供給、3=二次空気の供給。
【0017】
方法の実施において、シランと空気との前混合が生じることが重要であり、その際、ラムダ値として表される空気/水素及び酸素成分の化学量論比はバーナーおよび反応室中で維持される。
【0018】
ラムダはバーナーまたは反応室に供給される酸素対シラン化合物を完全に二酸化ケイ素へと変換するために必要な化学量論的に要求される酸素の比率を示している。反応室中で維持されなくてはならないラムダ値の範囲は同様に、加水分解されるシランの全量を示す。
【0019】
本発明による方法では、バーナー中の酸素/水素の体積比は0.2〜2.8の範囲で変化することができる。特に有利な実施態様では、バーナー中の酸素/水素の体積比は0.9〜1.4である。
【0020】
所望の比表面積に依存して、バーナーから出る気体の排出速度が少なくとも10ms−1であるように、バーナーに供給される流およびバーナーの形状寸法を変更することは有用であり得る。少なくとも20ms−1の排出速度は特に有利である。
【0021】
本発明はまた、本発明による二酸化ケイ素粉末を含有する水性分散液も提供する。
【0022】
本発明による水性分散液は20〜80質量%の二酸化ケイ素粉末の含有率を有していてもよい。40〜60質量%の二酸化ケイ素粉末の含有率を有する分散液は特に有利でありうる。これらの分散液は比較的低い構造で特に高い安定性を有する。
【0023】
本発明による水性分散液は有利には200nm未満の二酸化ケイ素粉末の凝集体の平均粒径を有する。特定の適用、たとえば半導体基板の化学的機械的研磨のためには、150nm未満の値が特に有利でありうる。
【0024】
本発明による分散液は、塩基またはカチオン性ポリマーまたはアルミニウム塩またはカチオン性ポリマーとアルミニウム塩との混合物または酸により安定化することができる。
【0025】
使用することができる塩基はアンモニア、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、第一、第二もしくは第三有機アミン、水酸化ナトリウム溶液または水酸化カリウム溶液である。
【0026】
使用することができるカチオン性ポリマーは、少なくとも1の第四級アンモニウム基、ホスホニウム基を有する例、第一、第二もしくは第三アミン基の酸付加物、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミンまたはポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミド縮合物、ジシアンジアミド−ポリアミン共縮合物またはポリアミド−ホルムアルデヒド縮合物である。
【0027】
使用することができるアルミニウム塩は、塩化アルミニウム、一般式Al(OH)Cl(式中、x=2〜8)を有するアルミニウムヒドロキシクロリド、塩素酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、一般式Al(OH)NO(式中、x=2〜8)を有するヒドロキシ硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ミョウバン、たとえば硫酸カリウムアルミニウムまたは硫酸アンモニウムアルミニウム、ギ酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化酢酸アルミニウム、イソプロピル酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウムおよび前記の化合物の混合物である。
【0028】
無機酸、有機酸または前記のものの混合物を酸として使用することができる。
【0029】
特にリン酸、亜リン酸、硝酸、硫酸、これらの混合物およびこれらの酸反応性の塩を無機酸として使用することができる。
【0030】
有利に使用される有機酸は、一般式C2n+1COH(式中、n=0〜6またはn=8、10、12、14、16)を有するカルボン酸、または一般式HOC(CHCOH(式中、n=0〜4)を有するジカルボン酸、または一般式RC(OH)COH(式中、R=H、R=CH、CHCOH、CH(OH)COH)を有するヒドロキシカルボン酸、またはフタル酸またはサリチル酸、または前記の酸の酸反応性の塩または前記の酸とその塩との混合物である。
【0031】
酸性媒体中での水酸化テトラメチルアンモニウムまたはアルミニウムヒドロキシクロリドによる本発明による分散液の安定化は特に有利でありうる。
【0032】
分散液は場合によりその他の添加剤を含有していてもよい。これらはたとえば過酸化水素または過酸のような酸化剤、酸化の速度を増大させることを目的とする酸化活性化剤、たとえばベンゾトリアゾールのような腐食防止剤である。非イオン性、カチオン性、アニオン性または両性の性質の表面活性物質もまた、本発明による分散液に添加することができる。
【0033】
本発明はまた、本発明による二酸化ケイ素粉末を分散装置を用いて水中に配合し、これは塩基またはカチオン性ポリマーまたはアルミニウム塩またはカチオン性ポリマーとアルミニウム塩との混合物または酸の添加により安定化することができ、次いでさらに5〜30分間分散させることを特徴とする、本発明による分散液の製造方法も提供する。
【0034】
分散装置の種類に関して制限はない。しかし、特に高充てん分散液を製造するためには、高いエネルギー入力を有する分散装置を使用することが有利でありうる。これらはたとえばローター・ステーターシステム、遊星型配合機または高エネルギーミルであってよい。後者では、高圧下で前分散した懸濁液の2の流をノズルにより減圧する。分散液の2の噴流が相互に正確に衝突し、かつ粒子が自体によって粉砕される。もう1つの実施態様では、前分散液は同様に高圧下におかれるが、しかし粒子は壁の外装を有する部分に衝突する。ローター・ステーターシステムが本発明による分散液を製造するために有利に使用されうる。
【0035】
本発明はまた、ゴム、シリコーンゴムおよびプラスチック中での充填材として、塗料および被覆中のレオロジーを調節するため、および触媒のための担体としての本発明による二酸化ケイ素粉末の使用も提供する。
【0036】
本発明はまた、ガラス製品を製造するため、化学的機械的研磨のため、およびインクジェット紙の製造のための本発明による分散液の使用も提供する。
【0037】
実施例
分析的測定
粉末の比表面積をDIN66131により測定する。
【0038】
ジブチルフタレート吸収量を、Haake(Karlsruhe)により供給されるRHEOCORD 90により測定する。この終了時に二酸化ケイ素粉末8gを0.001gの精度で混合室へ導入し、該混合室を蓋で閉鎖し、かつジブチルフタレートを0.0667ml/sの事前定義された供給速度で蓋の穴から計量供給する。配合機を毎分125回転のモーター速度で運転する。最大トルクに達したら、配合機およびDBP供給は自動的にスイッチオフされる。DBP吸収量をDBPの消費量および粒子の秤量から、次の式に従って計算する:
DBP値(g/100g)=(DBP消費量g/粒子の秤量g)×100。
【0039】
増粘作用を次の方法により測定する:二酸化ケイ素粉末7.5gを、スチレン中の不飽和ポリエステル樹脂の溶液142.5g中に温度22℃で1300±100mPasの粘度で導入し、かつ高速ミキサーを用いて3000分−1で分散させる。不飽和ポリエステル樹脂の適切な例は、Ludopal(R)P6(BASF)である。さらにスチレン中の不飽和ポリエステル樹脂90gを、この分散液60gに添加し、かつ分散工程を繰り返す。増粘作用は、剪断速度2.7s−1で回転粘度計により測定される、25℃での分散液の粘度の値をmPasで記載したものである。
【0040】
二酸化ケイ素粉末の塩化物含有量は次の方法により測定される:本発明による粒子約0.3gを正確に秤量し、試薬グレードの20%の水酸化ナトリウム溶液20mlでトッピングし、溶解し、かつ撹拌しながら冷却されるHNO 15ml中に移す。該溶液中の塩化物含有量をAgNO溶液により滴定する(0.1モル/lまたは0.01モル/l)。
【0041】
二酸化ケイ素粉末の炭素含有率は次の方法により測定される:本発明による粒子約100〜1000mgをるつぼ中へ正確に秤量し、超純粋な鉄および凝集体(LECOCELL II)それぞれ1gと合し、かつ炭素分析装置(LECO)中、約1800℃で補助的な酸素を用いて燃焼させる。発生するCOをIRにより測定し、かつ含有量をここから計算する。
【0042】
圧縮かさ密度はDIN ISO 787/XI K 5101/18を参照することにより測定する(ふるい分けせず)。
【0043】
pHはDIN ISO 787/IX、ASTM D1280、JIS K5101/24を参照することにより測定する。
【0044】
分散液の粘度はPhysica Model 300ロータリー・レオメーターおよびCC27測定ビーカーを用いて25℃で測定する。粘度値は10l/秒の剪断速度で測定する。この剪断速度は、形成される分散液の粘度が実質的に剪断負荷に無関係である範囲である。
【0045】
分散液中で一般的な粒径は、動的光散乱法により測定する。Zetasizer 3000 HSa(Malvern Instrument、UK)を使用する。ピーク分析の体積荷重平均値(volume-weighted median value)を記載する。
【0046】
例1:
テトラメトキシシラン1.5kg/hを180℃で蒸発させ、かつバーナーの中心管に導入する。さらに空気12m/hを中心管へ導入する。中心管を取り巻いている管に水素1.8m/hを供給する。気体混合物は、二次空気17m/hが付加的に導入される反応室中で燃焼する。
【0047】
反応ガスおよび形成される二酸化ケイ素を部分真空の適用により冷却システムに通過させ、これらを100〜160℃の数値まで冷却する。フィルターまたはサイクロン中で廃ガス流から固体を分離する。
【0048】
得られた二酸化ケイ素粉末のための分析データは第2表に再現されている。
【0049】
例2〜9および比較例10および11を同様に実施した。
【0050】
比較例12〜14ではテトラメトキシシランの代わりに四塩化ケイ素を使用する。これらの実験では廃ガス流からの分離に引き続き、水蒸気を含有する空気により二酸化ケイ素粉末を処理して付着している塩酸残留物を除去する。
【0051】
得られた二酸化ケイ素粉末のための物理的化学的データは第2表に再現されている。
【0052】
例1〜9は、比DBP値として表される低い構造、低い比増粘作用および高い比圧縮かさ密度を有する本発明による二酸化ケイ素粉末を生じる。
【0053】
例10および11は本発明による方法のみが、これらの粉末を生じることを示している。二次空気を低減するか、またはまったく省略すること、あるいはバーナーの空気を増加することによって、本発明による二酸化ケイ素の粉末は生じない。
【0054】
同様に、例12〜14の、バーナー中で、および反応室中でのラムダ値に関する条件を維持しながら四塩化ケイ素を使用することによって、本発明による二酸化ケイ素粉末は生じない。
【0055】
例15:酸性のpH範囲の分散液の製造
脱イオン水36kgを60lのステンレススチールの回分式容器中に装入する。次いで熱分解法により製造された二酸化ケイ素6.4kgを、Ystral Conti−TDS 3の吸引管を使用して剪断条件下で吸引し、かつ吸引工程の終了時に剪断をさらに3000rpmで15分間継続する。
【0056】
例16:アルカリ性pH範囲の分散液の製造
脱イオン水35.5kgおよび30%のKOH溶液52gを60lのステンレススチールの回分式容器中に装入する。次いで熱分解法により製造された二酸化ケイ素6.4kgを、Ystral Conti−TDS 3の吸引管を使用して剪断条件下で吸引し、かつ吸引工程の終了時に剪断をさらに3000rpmで15分間継続する。この15分間の分散の間にKOH溶液をさらに添加することによりpHを10.4に調節し、かつ維持する。この工程でKOH溶液43gをさらに使用し、かつ水0.4kgの添加により15質量%の固体濃度が確立される。
【0057】
例17:アルミニウム塩の存在下での分散液の製造
脱イオン水35kgを60lのステンレススチールの回分式容器中に装入する。次いで熱分解法により製造された二酸化ケイ素6.4kgを、Ystral Conti−TDS 3の吸引管を使用して剪断条件下で吸引する。次いで塩化アルミニウムの1質量%溶液(酸化アルミニウムに対する)640gを分散液と共に添加し、かつ吸引工程の終了時に剪断をさらに3000rpmで15分間継続する。脱イオン水0.1kgおよび1NのNaOH305gを添加してpH3.5を有する15質量%の分散液が得られる。
【0058】
例18:Aerosil 90の分散液の製造(比較例)
脱イオン水35.5gおよび30%のKOH溶液52gを60lのステンレススチールの回分式容器中に装入する。次いでAEROSIL (R) 90 5.2kgをYstral Conti−TDS 3の吸引管を使用して剪断条件下で吸引し、かつ吸引工程の終了時に剪断をさらに3000rpmで15分間継続する。この15分間の分散の間に、KOH溶液をさらに添加することによりpHを10.4に調節し、かつ維持する。この工程でさらにKOH溶液を63g使用し、かつ水0.6kgの添加により15質量%の固体濃度が確立される。
【0059】
分散液の物理的化学的パラメータは第3表に再現されている。
【0060】
【表1】

【0061】
例19:高い固体含有率を有する分散液
60lのステンレススチール回分式容器中の脱イオン水35.5kgを水酸化テトラメチルアンモニウム溶液(25%)によりpH11に調節する。次いで熱分解法により製造された二酸化ケイ素37kgを、Ystral Conti−TDS 3の吸引管を使用して剪断条件下で吸引し、かつ吸引工程の終了時に剪断をさらに3000rpmで15分間継続する。この15分間の分散の間に水酸化テトラメチルアンモニウムをさらに添加することによりpHを10〜11に維持する。必要とされる水の残りの量の添加により50質量%の固体濃度が確立される。
【0062】
得られる分散液は50質量%の二酸化ケイ素含有率および10.3のpHを有している。これはPhysica粘度計により測定して2450mPasの粘度を有する。平均粒径は116nmである。該分散液は6ヶ月間の貯蔵期間の後でも増粘または沈澱を示さない。
【0063】
本発明による二酸化ケイ素の粉末は水性媒体へ迅速に混合される能力により特徴付けられる。
【0064】
公知の二酸化ケイ素粉末を含有する分散液と比較して、本発明による分散液は粘度に関してより有利な数値およびより小さい粒径を有する。
【0065】
例19は、高い固体含有率を有する分散液を製造することができることを示している。類似の条件下で、同等のBET表面積を有する公知の二酸化ケイ素粉末の使用はゲル状の組成物を生じるか、または粉末を完全に配合することができない。
【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
5〜600m/gの比表面積および500ppm未満の炭素含有量を有する熱分解法により製造された二酸化ケイ素粉末において、
− 比表面積1mあたり、ジブチルフタレート1.2g/100gSiO以下の比ジブチルフタレート吸収量および
− 比表面積1mあたり、15mPas未満の比増粘作用
を有することを特徴とする、熱分解法により製造された二酸化ケイ素粉末。
【請求項2】
比圧縮かさ密度が1000〜10000g/l×m比表面積である、請求項1記載の二酸化ケイ素粉末。
【請求項3】
塩化物含有量が50ppm未満である、請求項1または2記載の二酸化ケイ素粉末。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載の二酸化ケイ素粉末の製造方法において、
− 蒸気状のテトラメトキシシランおよび/またはテトラエトキシシランを空気と一緒に、または酸素が富化された空気と一緒に、および
− 別個に水素、
− を、バーナーに供給し、かつ気体の混合物をバーナーに直列に接続された反応室中の火炎中で反応させ、かつ固体の反応生成物を公知の手段により気体流から分離し、
− その際、バーナー中のラムダ値は0.95〜1.5であり、かつ
− その際、反応室中のラムダ値が0.8〜1.6であるために十分な二次空気を反応室へ供給する
ことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の二酸化ケイ素粉末の製造方法。
【請求項5】
バーナー中の酸素/水素の体積比が0.2〜2.8である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
バーナーを出る気体の排出速度が少なくとも10ms−1である、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
請求項1から3までのいずれか1項記載の二酸化ケイ素粉末を含有する水性分散液。
【請求項8】
分散液中の二酸化ケイ素の含有率が20〜80質量%である、請求項7記載の水性分散液。
【請求項9】
分散液中の凝集体の平均直径が200nm未満である、請求項7または8記載の水性分散液。
【請求項10】
添加剤を含有する、請求項7から9までのいずれか1項記載の水性分散液。
【請求項11】
請求項7から10までのいずれか1項記載の水性分散液の製造方法において、請求項1から3までのいずれか1項記載の二酸化ケイ素粉末を分散装置により水中へ混合し、これを塩基またはカチオン性ポリマーまたはアルミニウム塩またはカチオン性ポリマーとアルミニウム塩との混合物または酸の添加により安定化することができ、かつ次いで分散させることを特徴とする、請求項7から10までのいずれか1項記載の水性分散液の製造方法。
【請求項12】
ゴム、シリコーンゴムおよびプラスチック中の充填材として、塗料および被覆のレオロジーを調節するため、触媒のための担体としての分散液中での請求項1から3までのいずれか1項記載の二酸化ケイ素粉末の使用。
【請求項13】
ガラス製品を製造するため、化学的機械的研磨のため、インクジェット紙を製造するための、請求項7から10までのいずれか1項記載の分散液の使用。

【公表番号】特表2006−523172(P2006−523172A)
【公表日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504689(P2006−504689)
【出願日】平成16年3月15日(2004.3.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002664
【国際公開番号】WO2004/085311
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(501073862)デグサ アクチエンゲゼルシャフト (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa AG
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】