説明

熱収縮包装用フィルム

【課題】 ミシン目カット性に優れ、直線引裂性を有する熱収縮性ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 共重合ポリエステルに非相溶なポリカーボネートが共重合ポリエステル中に細長い島状に分散した構造を有する延伸されたフィルムであって、ヘーズが20%以下であり、80℃の温水中で10秒間処理した際の温湯中収縮率が主収縮方向に35%以上であるとともに主収縮方向と直角方向に10%以下であり、長手方向に直線引裂性を有することを特徴とする易引裂性の熱収縮包装用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮包装に用いるポリエステルフィルムに関する。詳しくは、フィルムの長手方向の直線引裂性に優れラベル包装材料として有用な熱収縮包装用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱収縮性フィルム、特にPETボトル胴部のラベル用の熱収縮性フィルムとしては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等からなるフィルムが主として用いられている。しかし、ポリ塩化ビニルについては、近年、廃棄時に焼却する際の塩素系ガス発生が問題となり、ポリエチレンについては、印刷が困難である等の問題がある。さらに、PETボトルの回収リサイクルにあたっては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等のPET以外の樹脂ラベルは分別する必要がある。このため、これらの問題の無いポリエステル系の熱収縮性フィルムが注目を集めている。
【0003】
また、近年、飲料用ペットボトルのリサイクルに関して、ボトルに装着されたラベルは印刷が施されるのが通常でありそのままでは再生に不向きであることからボトルの再生前に剥がされることが多い。また、その手段として主収縮方向と直交する形でミシン目が設けられることがある。
【特許文献1】特開2001−329077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムはボトルに装着された際のミシン目カット性に難点があり、ボトルの形状やミシン目の形態によってはラベルがミシン目に沿って切断され難いケースがあり、素手のみで剥がすことが困難となる場合がある。
このように、ボトルのラベル用途の場合、これまでのポリエステル系熱収縮性フィルムではミシン目による長手方向の直線引裂性が不十分であった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するものである。本発明の目的は、従来の熱収縮ラベルのもつ優れた透明性、収縮特性および機械強度を損なうことなく、優れた直線引裂性を有し、ラベルの主収縮方向と直交する方向のミシン目カット性に優れ、ミシン目がなくても長手方向に直線引裂性を有する熱収縮包装用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分としエチレングリコールを主たるグリコール成分とする共重合ポリエステル95〜70重量%と、ポリカーボネート5〜30重量%とからなり、ポリカーボネートが共重合ポリエステル中に細長い島状に分散した海島構造を有する延伸されたフィルムであって、ヘーズが20%以下であり、80℃の温水中で10秒間処理した際の温湯中収縮率が主収縮方向に35%以上であるとともに主収縮方向と直角方向に10%以下であり、長手方向に直線引裂性を有することを特徴とする熱収縮包装用フィルムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来の熱収縮ラベルのもつ優れた透明性、収縮特性および機械強度を損なうことなく、優れた直線引裂性を有し、ラベルの主収縮方向と直交する方向のミシン目カット性に優れ、ミシン目がなくても長手方向に直線引裂性を有する熱収縮包装用フィルムを提供することができる。本発明のフィルムは、収縮ラベルとして使用後にラベルを容易に手で引き裂けるので、ラベルの除去作業性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
[共重合ポリエステル]
本発明に用いる共重合ポリエステルは、テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分としエチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。ここでの主たるとは、全ジカルボン酸成分あたり60モル%以上、好ましくは70モル%以上を意味し、全グリコール成分あたり60モル%以上、好ましくは70モル%以上を意味する。
【0009】
共重合ポリエステルの共重合成分の割合は、ジカルボン酸成分およびグリコール成分の合計で好ましくは5〜40モル%、さらに好ましくは10〜30モル%である。5モル%未満であると結晶性が高すぎて収縮特性が悪化するので好ましくなく、40モル%を超えると非晶性が高すぎてフィルムの機械強度が大幅に低下し製膜が困難になるため好ましくない。
【0010】
共重合ポリエステルにおける共重合成分としては、ジカルボン酸成分としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ダイマー酸、コハク酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、ε−カプロラクトン、乳酸などのオキシカルボン酸を好ましく例示できる。ジオール成分としては、アルコール成分はジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ビスフェノールAやビスフェノールSのエチレンオキシド付加体などのグリコールを好ましく例示できる。また、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多官能化合物を共重合成分として用いることもできる。これらの中でジカルボン酸成分としてはイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が特に好ましい。またアルコール成分としてはジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。これらの共重合成分は1種類あるいは2種類以上を使用することができる。
【0011】
また共重合ポリエステルは単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また共重合ポリエステルは他のホモのポリエステル樹脂を混合して使用してもよい。ホモのポリエステル樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリネオペンチレンレテフタレート、ポリネオペンチレンイソフタレートなどが好ましい。
【0012】
共重合ポリエステルとして特に好適なものは、イソフタル酸および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸の合計5〜40モル%を共重合成分として含むポリエステルである。
【0013】
本発明における共重合ポリエステルは公知の方法で製造できる。具体的にはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコール、および所望の共重合成分のモノマーからのエステル交換反応法、あるいはテレフタル酸とエチレングリコール、および所望の共重合成分のモノマーとの直接エステル化によりオリゴマーを得た後、溶融重合して得ることができる。共重合ポリエステルの重合には、チタン化合物を触媒として用いることが好ましい。この触媒としてのチタン化合物は、単独でTi系触媒として用いてもよく、ゲルマニウム化合物と併用して、Ti−Ge触媒として用いてもよい。他方、触媒としてチタン化合物を用いることなく、マンガン化合物やアンチモン化合物を触媒として用いると、ポリカーボネートの末端基部分より脱炭酸反応が生じてしまい、フィルム成形のための押出機内でのポリマー溶融時に発泡してしまう問題が発生する。本発明ではこの発泡を防ぐために、チタン化合物を触媒として用いることが好ましい。共重合ポリエステルは必要があればさらに常法により固相重合をしてもよい。
【0014】
[ポリカーボネート]
本発明に用いるポリカーボネートは、共重合ポリエステルとは実質的に非相溶である。実質的に非相溶とは、フィルム製膜時の溶融混練後において、共重合ポリエステル中にポリカーボネートが海島状に相分離して分散した状態をとることをいい、具体的には後述の測定方法により海島構造が観察されるものをいう。ここでは共重合ポリエステルが海、ポリカーボネートが島に相当する。
【0015】
本発明におけるポリカーボネートは下記式(1)で表される繰り返し単位からなり、粘度平均分子量は、好ましくは15000〜25000、さらに好ましくは16000〜24000、特に好ましくは17000〜23000の範囲である。ポリカーボネートの分子量が25000を超えると溶融粘度が高すぎて安定した製膜が不可能となり、15000未満では逆に溶融粘度が低くなるため直線的な引裂性発現に必要な大きさのポリカーボネートの細長い島を含む海島構造を共重合ポリエステルの海の中に形成できない。
【0016】
【化1】

(ここでR1、R2はそれぞれ水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または環員炭素数5〜6のシクロアルキル基を示し、またR1、R2はそれらが結合する炭素原子と共に環員数5〜6のシクロアルキル基を形成しても良く、R3およびR4はそれぞれ炭素数5〜6のアルキル基、フェニル基またはハロゲン原子を示し、mおよびnはそれぞれ0、1または2である。)
【0017】
本発明においてポリカーボネートは細長い島状に分散しており、それぞれの島はフィルムの長手方向(MD方向)に長く、この方向と直行するTD方向に短い構造をとる。それぞれの島は好ましくはMD方向に伸びた平板状で分布する。このような構造をとることにより、本発明のフィルムは、長手方向に良好な直線引裂性を発現する。
【0018】
海島構造は、フィルムを包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂を用いて包埋し、ミクロトーム(Reichert-Jung製、UlTRACUT)にて長手断面および巾断面を50μm厚に薄切りしたサンプルを3.2%オスミウム酸・60℃・2hrの条件で蒸気染色を行った後、透過電子顕微鏡(トプコン製、LEM−2000)によって加速電圧100kVで観察する。本測定方法において海島構造が観察されないものは共重合ポリエステルとポリカーボネートが実質的に非相溶でないことを意味し、本発明に該当しない。この場合、本発明のいう長手方向の直線引裂性は発現しない。
【0019】
本発明におけるポリカーボネートは公知の方法で製造できる。例えば、ビスフェノールA、ジフェニルカーボネートを原料としたエステル交換法、ビスフェノールA、塩化カルボニルを原料としたホスゲン法、によって得ることができる。
【0020】
本発明において、共重合ポリエステルとポリカーボネートとは、共重合ポリエステルの95〜70重量%、好ましくは90〜75重量%、さらに好ましくは85〜80重量%に対してポリカーボネートが5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%、さらに好ましくは15〜20重量%の割合をとる。フィルム中の海島構造におけるポリカーボネートの島は細長い形状を呈しており、その長径方向はフィルムの巻き取り方向にほぼ一致している。ポリカーボネートの割合が30重量%を超えるとフィルム中の海島構造におけるポリカーボネートの島の個々のサイズが大きくなり過ぎ、ヘーズが高くなり過ぎる。5%未満では直線引裂性を発現するに十分な量のポリカーボネートの島が共重合ポリエステルの海の中に形成できない。
【0021】
[直線引裂性]
本発明のフィルムは延伸されたポリエステルフィルムであるが、フィルムの面内方向において、フィルムの長手方向(MD方向)に沿ってポリカーボネートの細長い島状分散の長径の方向が並ぶことになり、MD方向に直線的なカット性を有する。この機構については、未だ十分に解明できていないが、以下のような機構ではないかと予想される。まず、共重合ポリエステルとポリカーボネートは非相溶であるため相分離し、この状態は前者が海で後者がその海の中に島状に分散した状態となる。そして、ポリカーボネートの島状に分散した粒子が、押出し機内でのせん断力によってポリマーの進行方向に細く伸ばされるような大きな変形をうけ、海島構造のポリカーボネートの島の長径方向は、最終的なポリマーの進行方向であるMD方向に一致した状態となる。また、島の長径方向に沿った直線的な引裂き性が発現する機構については、このMD方向への変形量が本フィルムの製膜時に横延伸で受けるTD方向への変形量よりも大きいことから、長径方向がMD方向に揃ったままとなり、その方向に直交する方向のフィルム内の結合力が弱まるためと考えられる。
【0022】
本発明のフィルムは長手方向に直線引裂き性を有し、具体的には、フィルムの長手方向を長辺とする長さ30cmの短冊状サンプルについて、引裂き開始点と引裂き終点の短辺方向のずれが5%未満のものを合格として評価したときの合格率が80%以上である直線引裂き性を有することが好ましい。
【0023】
[温湯中収縮率]
本発明のフィルムの収縮率は、80℃の温水中で10秒間処理した際の温湯中収縮率が主収縮方向に35%以上、好ましくは40%以上であるとともに、主収縮方向と直角方向に10%以下、好ましくは5%以下である。この範囲の温湯中収縮率を備えることにより、ボトルのラベル用、特にPETボトルのラベルとして用いたときに、ボトルとの高い密着性を得ることができる。
【0024】
[ヘーズ]
本発明のフィルムのヘーズは20%以下、好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。20%を超えるとフィルムの透明性が悪くなり、商品価値が損なわれる。
【0025】
[結晶融解熱量]
本発明のフィルムの示差走査熱量計により測定した結晶融解熱量ΔHmは、好ましくは20〜60J/g、さらに好ましくは25〜55J/g、特に好ましくは30〜50J/gである。ΔHmはフィルム中の結晶(製膜時の配向結晶および昇温中の冷結晶化)存在量の指標となり、ΔHmが大きいほど結晶の存在量は多いと考えられる。ΔHmが20J/g未満ではフィルムが非晶に近くフィルムの機械的強度の不足が生じることがあり好ましくない。他方、60J/gを超えると結晶化度が高くなりすぎ、収縮特性が低下し易くなるため好ましくない。
【0026】
[滑剤]
本発明のフィルムは滑剤を含有することが好ましい。透明性を維持するために平均粒径2.5μm未満、製膜性や滑り性の観点から平均粒径1.0μm以上の滑剤を含有することが好ましい。滑剤の添加量としては、その粒径にも依存するが、フィルムの巻き取り性および透明性に悪影響を及ぼさない範囲で選択すると良い。滑剤としては無機系、有機系のいずれも用いることができるが、無機系滑剤が好ましい。無機系滑剤としてはシリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウムまたは硫酸バリウムが例示でき、有機系滑剤としてはシリコーン粒子が例示できる。
【0027】
[厚み]
本発明のフィルムは、厚みが好ましくは20〜70μm、さらに好ましくは30〜60μm、特に好ましくは35〜55μmである。20μm未満であるとフィルムの腰が弱くなって、ラベル装着時に折れ曲がったりして不良品を発する可能性があり好ましくない。70μmを超えるとフィルムの剛性(腰)が強すぎて、加工時の取り扱いが難しくなり好ましくない。
【0028】
[製造方法]
本発明のフィルムは、例えば次のようにして製造することができる。まず、共重合ポリエステルとポリカーボネートをチップ状で混合したものを押出機に投入し、加熱溶融した後、Tダイのダイオリフィスからシート状に押し出し吐出する。ダイオリフィスから吐出された軟化状態にあるシートは、冷却ドラムに密着して巻きつけられて冷却される。続いて、得られた未延伸シートを90〜130℃の温度で予熱後、65〜85℃の温度にて3.0〜5.0 倍の延伸倍率で横一軸延伸する。延伸温度が65℃未満であると均質な延伸フィルムを得ることができない場合があり、85℃を超えると、共重合ポリエステルの結晶化が促進されて熱収縮率が低くなる場合がある。また、延伸倍率が 3.0倍未満であると強度が小さく、チューブ状に折り畳んだときにピンホールが発生しやすく、5.0 倍を超えると熱収縮率が低くなり好ましくない。また、未延伸シートと横延伸の間で、縦延伸をしても構わない。この場合、延伸温度は70〜135℃の温度にて1.1〜5.0倍の延伸倍率で延伸され、その直後に30℃以下の温度へ冷却すればよい。横延伸されたフィルムは、60〜90℃の温度で熱処理される。熱処理温度が60℃より低いとフィルムの寸法安定性が悪化し、印刷工程や輸送工程、あるいは経時でフィルムが変形する原因となる場合があり、また、90℃より高いとフィルムの熱収縮率が低下し過ぎる。なお、延伸方法としては、チューブラー法、ロールとテンターによる延伸方法のいずれでもよい。
【0029】
本発明のフィルムには、コロナ放電処理、表面硬化処理、メッキ処理、着色処理、あるいは各種のコーティング処理による表面処理を付与してもよい。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例を掲げて本発明をさらに説明する。なお、各特性の測定および評価は以下の方法に従った。
(1)ポリカーボネートの平均分子量
塩化メチレン溶液中(25℃)で測定した固有粘度([η])より下記Schnellの式を用いて算出した。
Mv={log([η]/1.23×10-4)}/0.83
【0031】
(2)フィルム厚み
打点式フィルム厚み計(Anritsu、K402B)を用い、フィルム幅方向の任意の場所50箇所、フィルム幅の中心付近の長手方向で任意の場所50箇所について厚みを測定し、全100箇所の数平均値をフィルム厚みとした。
【0032】
(3)ヘーズ
JIS K7105の測定法Aに準じて測定した。
【0033】
(4)熱収縮率
JIS−Z1709に従い、80℃の温水中で10秒間処理した際の主収縮方向及び主収縮方向と直角方向の温湯中熱収縮率を測定した。各々N=3の平均値を測定値とした。なお、フィルム平面方向の測定を行い、最も収縮の大きい方向を主収縮方向とした。
【0034】
(5)結晶融解熱量(ΔHm)
DuPont Instruments910型DSCを用い、サンプル量20mgについて昇温速度20℃/分で290℃まで昇温させた時の結晶融解ピーク面積を読み取り結晶融解熱量を求めた。測定は合計5回行い、その平均値を結晶融解熱量の測定値した。
【0035】
(6)直線引裂性
フィルムのMD方向を、フィルムから切り出す短冊の長辺に合わせ、4cm×30cmの短冊を切り出した。この短冊の短辺中心に切れ目を入れて、該切れ目より2つに引裂 いたときの、引裂き開始位置から短冊の短辺方向におけるずれを測定した。そして、該ずれを短冊の長辺の長さ(30cm)で割った値(図1において(b−a)cm/30cm×100)が5%未満のもの合格とし、各水準ごとに10個の短冊を測定し、その結果から、以下の基準で判断した。
○:10個中8個以上が合格する良好な直線引裂性
×:10個中7個以下しか合格しない乏しい直線引裂性
【0036】
(7)相分離粒子(海島構造)の観察方法
フィルムを包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂を用いて包埋し、ミクロトーム(Reichert-Jung製、UlTRACUT)にて長手断面、巾断面を50μm厚に薄切りしたサンプルを、3.2%オスミウム酸・60℃・2hrの条件で蒸気染色を行った後、透過電子顕微鏡(トプコン製、LEM−2000)によって加速電圧100kVで観察した。
【0037】
[実施例1〜4および比較例1〜6]
ジメチルテレフタレートとエチレングリコールおよび表1に記載の共重合成分とを原料として、テトラブトキシチタンをエステル交換触媒、二酸化ゲルマニウムを重合触媒、正リン酸を安定剤として用い、常法により固有粘度(o−クロロフェノール、35℃)0.71の共重合ポリエステルを製造した。
【0038】
また、ジフェニルカーボネート、ビスフェノールA、ビスフェノールAのジナトリウム塩を反応容器に仕込み常法により表1に記載の分子量のポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートにリン化合物として旭電化工業(株)アデカスタブPEP−8を50ppm(リン濃度換算)を混合し、溶融押出しすることにより混合した。
【0039】
上記の如くして選られた共重合ポリエステルおよびポリカーボネートを表1に示す比率(wt%)でチップ状態でブレンドしたものを140℃で6時間乾燥した後、押出機ホッパーに供給して溶融温度270℃で溶融し、ダイを用いて表面温度20℃の冷却ドラム上に押出して急冷し厚さ180〜190μの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムをステンターに供給し、表1に示す延伸温度、延伸倍率にて製膜方向に直交する方向(TD方向)に延伸し、その後73℃にて熱固定を行い一軸延伸ポリエステルフィルムを得た。なお、得られたフィルムは、平均粒径1.4μmの球状シリカ粒子を、0.04重量%滑剤として添加されていた。また実施例2では表1に示す条件にて製膜方向に縦延伸(MD方向)を行ない、続けて直ぐに20℃の金属ロールにて冷却を行なった上でステンターでの横延伸を行なった。
得られた延伸ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。なお、延伸倍率1.0は実質延伸していないことを示す。
【0040】
本発明の実施例1〜4の延伸ポリエステルフィルムは、ポリカーボネートの細長い島状構造のサイズがいずれもMD方向に0.8〜2.3μm、TD方向に0.3〜0.5μmとMD方向に伸びた平板状であり、長手方向(MD方向)に良好な引裂直線性を有した上でヘーズも低く透明であり、かつ熱収縮ラベルに必要な良好な収縮特性をも有するものであった。
【0041】
これに対して、ポリカーボネートの割合が過度に多い比較例1のフィルムでは、ポリエステルAの海の中のポリエステルBの細長い島状構造のサイズがいずれもMD方向に10〜28μ、TD方向に3.1〜6.2μmと大きくなり過ぎて透明性が悪化した。また、ポリカーボネートの割合が過度に少ない比較例2のフィルム、あるいはポリカーボネートの分子量が小さ過ぎる比較例5のフィルムでは共重合ポリエステルの海の中にポリカーボネートの細長い島状構造が明確に観察されず、海島間の相溶性が高過ぎるか島状構造を十分に形成できないため引裂き直線性が悪かった。また、分子量が過度に大きいポリカーボネートを用いた比較例6のフィルムは溶融粘度が高過ぎて製膜が出来なかった。また、共重合ポリエステルの代わりにホモのポリエチレンテレフタレートを使用した比較例3のフィルムでは結晶性が高過ぎて熱収縮フィルムに必要な収縮特性が得られなかった。また共重合ポリエステルの共重合成分の比率が高過ぎた比較例4のフィルムはその機械強度が低すぎてフィルムが切断してしまい延伸フィルムが製膜できなかった。
【0042】
実施例1で得られたフィルムに常法により印刷を付し、チューブ状に加工し、長手方向に2本のミシン目を入れ、所望の長さに切断した後、500ml丸型ペットボトル(コカコーラナショナルビバレッジ製爽健美茶で使用のもの)に挿入し、ハンドドライヤーにて収縮させた後にミシン目より手で各々10本ずつ切断したところ、引裂く感触が軽く、その優れた直線引裂性によって10本共に切断なくラベルを剥がすことができた。また、図2のようにノッチの形状を付与することによりミシン目をなくしても長手方向に開封性が良好なラベルを得ることができた。
【0043】
【表1】

【0044】
[比較例7]
ポリカーボネートを添加しなかった以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られた延伸ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。ポリカーボネートをブレンドせずに共重合ポリエステルのみで製膜した比較例7のフィルムでは島状構造がまったく無い為に引裂直線性は悪かった。
【0045】
得られたフィルムに常法により印刷を付し、チューブ状に加工し、長手方向に2本のミシン目を入れ、所望の長さに切断した後、500ml丸型ペットボトル(コカコーラナショナルビバレッジ製爽健美茶で使用のもの)に挿入し、ハンドドライヤーにて収縮させた後にミシン目より手で各々10本ずつ切断したところ、引裂く感触が重く、途中で切断してしまうものが4本生じた。また、図2のようにノッチの形状を付与しても、ミシン目をなくしては引裂途中でTD方向へ裂けてしまうため、開封性が不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のフィルムは、常法により印刷されチューブ状に加工され、所望の長さに切断した後、例えばペットボトル、アルミボトル缶、弁当トレーや惣菜トレーなどの収縮ラベルとして使用することができる。このようなラベルとしても本発明のポリエステルフィルムの直線引裂性によって、優れたミシン目カット性を有すると共に、必要によりノッチ等の形状を付与することによりミシン目をなくしても開封性が良好なラベルを得ることができる。また、例えばビールなどのように外部から進入する光線により劣化しやすい内容物であってもミシン目を無くすことができることから、フィルムに遮光性を付与することにより、外部の光線に対して、より内容物保護性に優れたラベルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】直線引裂性の評価における短冊状サンプルの引裂きの一例を示す。
【図2】ミシン目なし引裂性の評価におけるサンプルのノッチ部を示す。
【符号の説明】
【0048】
a 直線引裂性の評価における短冊状サンプルの端から引裂き開始点までの距離
b 直線引裂性の評価における短冊状サンプルの端から引裂き終了点までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分としエチレングリコールを主たるグリコール成分とする共重合ポリエステル95〜70重量%と、ポリカーボネート5〜30重量%とからなり、ポリカーボネートが共重合ポリエステル中に細長い島状に分散した海島構造を有する延伸されたフィルムであって、ヘーズが20%以下であり、80℃の温水中で10秒間処理した際の温湯中収縮率が主収縮方向に35%以上であるとともに主収縮方向と直角方向に10%以下であり、長手方向に直線引裂性を有することを特徴とする熱収縮包装用フィルム。
【請求項2】
共重合ポリエステルがイソフタル酸および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸を共重合成分として合計5〜40モル%含むポリエステルである、請求項1記載の熱収縮包装用フィルム。
【請求項3】
共重合ポリエステルが、Ti化合物を触媒として用いて重合された、請求項1記載の熱収縮包装用フィルム。
【請求項4】
ポリカーボネートの平均分子量が15000〜25000である、請求項1記載の熱収縮包装用フィルム。
【請求項5】
フィルムの示差走査熱量計により測定した結晶融解熱量ΔHmが20〜60J/gである、請求項1記載の熱収縮包装用フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の熱収縮包装用フィルムからなるラベル。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の熱収縮包装用フィルムからなる、ミシン目なしで引裂直線性を有するラベル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−62681(P2006−62681A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245072(P2004−245072)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】