説明

熱可塑性エラストマー樹脂組成物

【課題】耐油性、機械的特性、特に高温下での圧縮歪みが低く、成形加工性が良く、且つ、得られる成形体表面のベタツキが無い熱可塑性エラストマー樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
(a−1)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体 85〜15重量%、及び
(a−2)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体 15〜85重量%、
よりなるブロック共重合体樹脂成分(a) 100重量部、
(b)非芳香族系ゴム用軟化剤 30〜300重量部、
(c)パーオキサイド分解型オレフィン系樹脂、 10〜300重量部、
(d)有機過酸化物 0.5〜5.0重量部
(e)架橋助剤 1.0〜10.0重量部
を含有する熱可塑性エラストマー樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性エラストマー樹脂組成物に関し、より詳細には圧縮歪み等の機械的特性、耐油性、及び成形加工性に優れ、且つ、該組成物からの成形体はベタツキがない、熱可塑性エラストマー樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スチレン・ブタジエン‐ブロックコポリマー(SBS)やスチレン・イソプレン‐プロックポリマー(SIS)などのポリスチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の水素添加物を用いた熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、例えば、特開昭58−132032号公報、特開昭58−145751号公報、特開昭59−53548号公報、特開昭62−48757号公報などから知られている。
【0003】
また、これらの樹脂組成物のゴム的特性、例えば加熱加圧変形率(圧縮永久歪み)や高温時のゴム弾性を改良するものとして、組成物をシラン変性した架橋組成物、または、このようなブロック共重合体の水素添加誘導体を含む組成物を有機過酸化物の存在下に架橋させて得られる架橋体が提案されており、例えば、特開昭59−6236号公報、特開昭62−57662号公報、特公平3−49927、特公平3−11291、特公平6−13628に示されている。
【0004】
しかし、これらの組成物から得られる成形体は、ショアA硬さで40以上のものばかりである。そのため軟化剤の添加量を増量して軟化させることが行われているが、成形品表面にベタツキを生じたり、加熱応力下において軟化剤のブリードアウトを生じ、実用上好ましくないと言う問題点がある。また、機械的特性および高温下、例えば100℃における圧縮永久歪みに劣る。
【0005】
これらの点を解決するものとして、水添ブロック共重合体、水添石油樹脂、オレフィン系樹脂等を有機過酸化物により架橋させた樹脂組成物が特開平9−151295号から知られている。しかし、高温下での圧縮永久歪みおよびベタツキに関してさらなる改良が望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐油性、機械的特性、特に高温下での圧縮歪みが低く、成形加工性が良く、且つ、得られる成形体表面のベタツキが無い熱可塑性エラストマー樹脂組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、
(a−1)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体 85〜15重量%、及び
(a−2)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体 15〜85重量%、
よりなるブロック共重合体樹脂成分(a) 100重量部、
(b)非芳香族系ゴム用軟化剤 30〜300重量部、
(c)パーオキサイド分解型オレフィン系樹脂、 10〜300重量部、
(d)有機過酸化物 0.5〜5.0重量部
(e)架橋助剤 1.0〜10.0重量部
を含有する熱可塑性エラストマー樹脂組成物である。
上記組成物に1〜50重量部の(f)液状ポリブタジエンをさらに配合することが好ましい。
また、上記(a−1)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体の重量平均分子量が、100,000〜300,000である事が好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物は、ビニル芳香族化合物および共役ジエン化合物から主としてなるブロック共重合体と水添ブロック共重合体を所定割合で含有する樹脂成分を含むので、ベタツキがなく、耐油性、耐摩耗性、および機械的強度に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の組成物を構成する各成分について、説明する。
a)成分 ブロック共重合体樹脂成分
本発明における(a)ブロック共重合体樹脂成分は、(a−1)成分と(a−2)成分からなる。(a−1)成分は、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体であり、(a−2)成分は、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体を水素添加して得られるものである。例えば、A−B−A、B−A−B−A、A−B−A−B−Aなどの構造を有するビニル芳香族化合物‐共役ジエン化合物ブロック共重合体、あるいは、これらの水素添加されたもの等を挙げることができる。
【0010】
(a−1)成分と(a−2)成分を、所定の割合で併用することにより、柔軟性、耐油性、および高温下での圧縮永久歪みが向上され、且つ、成形体のベタツキがなくなる。(a−1)成分は、(b)成分の軟化剤を樹脂内に取り込み、成形体のベタツキを無くし、また、耐油性、高温での物性劣化を抑える。(a−2)成分は、耐摩耗性および耐候性を向上し、また、耐油性、高温での物性劣化を抑える。
【0011】
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAは、好ましくは、ビニル芳香族化合物のみから成るか、またはビニル芳香族化合物50重量%超、好ましくは70重量%以上と共役ジエン化合物との共重合体ブロックである。
【0012】
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAは、好ましくは、ビニル芳香族化合物のみから成るか、またはビニル芳香族化合物50重量%超、好ましくは70重量%以上と共役ジエン化合物及び/又は水素添加された共役ジエン化合物との共重合体ブロックである。
【0013】
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBおよびBは、好ましくは共役ジエン化合物のみから成るか、または共役ジエン化合物50重量%超、好ましくは70重量%以上とビニル芳香族化合物との共重合体ブロックである。
【0014】
これらのビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAおよびA、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBおよびBのそれぞれにおいて、分子鎖中のビニル化合物または共役ジエン化合物の分布がランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加または減少するもの)、一部ブロック状またはこれらの任意の組合せでなっていてもよい。ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック或いは共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックが2個以上ある場合には、それぞれが同一構造であっても異なる構造であってもよい。
【0015】
ブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α‐メチルスチレン、ビニルトルエン、p‐第3ブチルスチレンなどのうちから1種または2種以上が選択でき、中でもスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどのうちから1種または2種以上が選ばれ、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組合せが好ましい。
【0016】
(a−1)ブロック共重合体の具体例としては、SBS、SIS等を挙げることができる。本発明において、特に好ましいブロック共重合体は、スチレンを主体とする重合体ブロックAと、ブタジエン又はイソプレンを主体としかつブタジエン又はイソプレンの40〜100重量%が1,2−ミクロ構造、1,3−ミクロ構造、又は3,4−ミクロ構造を有するところの重合体ブロックBとからなるブロック共重合体である。好ましくは、ブタジエン又はイソプレンの45〜100重量%が1,2−ミクロ構造、1,3−ミクロ構造、又は3,4−ミクロ構造を有するところの重合体ブロックBとからなる重量平均分子量が100,000〜300,000、好ましくは150,000〜250,000のブロック共重合体である。該分子量が100,000未満であると、耐油性、高温下での永久圧縮歪みの改良が見られず、一方、300,000を超えると、樹脂組成物中で相分離を生じる場合がある。
【0017】
(a−2)水添ブロック共重合体の具体例としては、SEBS、SEPS等を挙げることができる。本発明において、特に好ましい水添ブロック共重合体は、スチレンを主体とする重合体ブロックAと、イソプレンを主体としかつイソプレンの70〜100重量%が1,4−ミクロ構造を有し、かつ該イソプレンに基づく脂肪族二重結合の少なくとも90%が水素添加されたところの重合体ブロックBとからなる重量平均分子量が50,000〜550,000の水添ブロック共重合体である。更に好ましくは、イソプレンの90〜100重量%が1,4−ミクロ構造を有する水添ブロック共重合体である。
【0018】
(a−1)成分と(a−2)成分は、15〜85重量%:85〜15重量%、好ましくは55〜80重量%:45〜20重量%、さらに好ましくは、60〜80重量%:40〜20重量%で配合する。(a−2)成分が15重量%未満であると、耐油性、高温下での圧縮永久歪みが劣り、一方85重量%を超えると 樹脂組成物中で相分離したり、成形が困難となる。(a−1)成分と(a−2)成分は他の成分と一括混練して、又は、予め双方の成分をブレンドしてブロック共重合体樹脂成分にした後に他の成分と混練してもよい。
【0019】
これらのブロック共重合体の製造方法としては数多くの方法が提案されているが、代表的な方法としては、例えば特公昭40−23798号明細書に記載された方法により、リチウム触媒またはチーグラー型触媒を用い、不活性溶媒中にてブロック重合させて得ることができる。上記方法により得られたブロック共重合体に、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下にて水素添加することにより水添ブロック共重合体が得られる。
【0020】
(b)成分 非芳香族系ゴム用軟化剤
本発明の成分(b)としては、非芳香族系の鉱物油または液状もしくは低分子量の合成軟化剤を用いることができる。ゴム用として用いられる鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環およびパラフィン鎖の三者の組み合わさった混合物であって、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系とよび、ナフテン環炭素数が30〜40%のものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれて区別されている。
【0021】
本発明の成分(b)として用いられる鉱物油系ゴム用軟化剤は上記区分でパラフィン系およびナフテン系のものである。芳香族系の軟化剤は、その使用により成分(a)が可溶となり、架橋反応を阻害し、得られる組成物の物性の向上が図れないので好ましくない。成分(b)としては、パラフィン系のものが好ましく、更にパラフィン系の中でも芳香族環成分の少ないものが特に好ましい。
これらの非芳香族系ゴム用軟化剤の性状は、37.8℃における動的粘度が20〜500cSt、流動点が−10〜−15℃、引火点(COC)が170〜300℃を示す。
【0022】
成分(b)の配合量は、成分(a)100重量部に対して、30〜300重量部、好ましくは、80〜200重量部である。300重量部を越える配合は、軟化剤のブリードアウトを生じやすく、最終製品に粘着性を与えるおそれがあり、機械的性質も低下せしめる。また、配合量が30重量部未満では、得られる組成物の柔軟性が失われることになる。成分(b)の一部を、パーオキサイド存在下での熱処理の後に配合することもできるが、ブリードアウトを生じる要因となるので好ましくない。成分(b)は、重量平均分子量が100〜2,000のものが好ましい。
【0023】
(c)成分 パーオキサイド分解型オレフィン系樹脂
本発明の成分(c)は、得られる組成物中のゴム分散を良好にし、成形品の外観を良好にする効果を有する。
本発明の成分(c)として適したパーオキサイド分解型オレフィン系樹脂は、そのホモ部分のDSC測定により、Tmが150℃〜167℃、△Hmが25mJ/mg〜83mJ/mgの範囲のものである。結晶化度はTm、△Hmから推定することができる。Tm及び△Hmが上記範囲以外のものでは、得られるエラストマー組成物の、100℃以上におけるゴム弾性が改良されない。
【0024】
パーオキサイド分解型オレフィン系樹脂は、次の2種類を組み合わせて用いるのが好ましい。架橋反応前に配合するパーオキサイド分解型オレフィン系樹脂は、高分子量のホモ型のポリプロピレン、例えばアイソタクチックポリプロピレンやプロピレンと他の少量のα−オレフィン例えばエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等との共重合体が好ましい。該樹脂のMFR(ASTM‐D‐1238、L条件、230℃)は、好ましくは0.1〜10g/10分、より好ましく0.1〜5g/10分、更に好ましくは0.1〜3g/10分である。架橋反応後に配合するパーオキサイド分解型オレフィン系樹脂は、良流動性のブロック、ランダム、ホモタイプのPPの一以上、例えばアイソタクチックポリプロピレン、又はプロピレンと他の少量のα−オレフィン例えばエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等との共重合体が好ましい。該樹脂のMFRは、好ましくは5〜200g/10分、より好ましくは8〜150g/10分、更に好ましくは10〜100g/10分である。
【0025】
架橋反応前に配合する場合、パーオキサイド分解型オレフィン系樹脂のMFRが0.1g/10分未満では、得られるエラストマーの成形性が低下し、MFRが10g/10分を越えると、得られるエラストマー組成物のゴム弾性が悪化するので好ましくない。架橋反応後に配合する場合、パーオキサイド分解型オレフィン系樹脂のMFRが5g/10分未満では、得られるエラストマーの成形性が低下し、MFRが200g/10分を越えると、得られるエラストマー組成物のゴム弾性が悪化するので好ましくない。
【0026】
成分(c)の配合量は、成分(a)100重量部に対して10〜300重量部、好ましくは20〜200重量部である。10重量部未満では成形性が悪化し、300重量部を越えると、得られるエラストマー組成物の硬度が高くなりすぎて柔軟性が失われ、ゴム的感触の製品が得られない。
本発明において、成分(c)の一部、好ましくは少なくとも3重量部が有機過酸化物の存在下での熱処理に付され、そして成分(c)の残部、好ましくは少なくとも5重量部が該熱処理後に配合される。このように成分(c)を分割して加えることにより、各成分が均一に分散するので、成形品の表面でのベタツキがなくなるとともに成形性が良好になる。
【0027】
架橋反応前に配合する量(X)と架橋反応後に配合する量(Y)の割合は、X<Yにした方が、より優れたゴム弾性を有した樹脂が得られるので好ましい。上記添加割合X、Yは、射出成形、押出成形などのそれぞれの最終成形方法によって決定することができる。
【0028】
(d)成分 有機過酸化物
本発明で用いられる有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ‐tert‐ブチルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ‐(tert‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5ジ(tert‐ブチルペルオキシ)ヘキシン‐3、1,3−ビス(tert‐ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1‐ビス(tert‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、n‐ブチル‐4,4‐ビス(tert‐ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p‐クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4‐ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert‐ブチルパーオキシベンゾエート、tert‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert‐ブチルクミルパーオキサイドなどを挙げることができる。
【0029】
これらのうち、臭気性、着色性、スコーチ安定性の点で、2,5‐ジメチル2,5‐ジ‐(tert‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル2,5‐ジ‐(tert‐ブチルペルオキシ)ヘキシン‐3が最も好ましい。
【0030】
有機過酸化物の添加量は、成分(a)100重量部に対して0.5〜5.0重量部が好ましく、更に好ましくは1.0〜3.0重量部である。
【0031】
(e)成分 架橋助剤
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法においては、有機過酸化物による部分架橋処理に際し、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレートのような多官能性ビニルモノマー、又はエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマーを架橋助剤として配合することができる。このような化合物により、均一かつ効率的な架橋反応が期待できる。
【0032】
特に、本発明においては、トリエチレングリコールジメタクリレートが、取扱いやすく、かつ有機過酸化物可溶化作用を有し、有機過酸化物の分散助剤として働くため、熱処理による架橋効果が均一かつ効果的で、硬さとゴム弾性のバランスのとれた架橋熱可塑性エラストマーが得られるため、最も好ましい。更に、トリエチレングリコールジメタクリレートは、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとの相溶性も良好で、成形品の表層剥離が抑えられる。
【0033】
本発明で用いられる架橋助剤の添加量は、成分(a)100重量部に対して、0.1〜10.0重量部の範囲が好ましく、さらに好ましくは1.0〜8.0重量部であり、より好ましくは1.5〜4.0重量部である。架橋助剤の添加量は有機過酸化物の添加量の約2〜2.5倍の割合が好ましい。
【0034】
(f)成分 液状ポリブタジエン
液状ポリブタジエンは、主鎖の微細構造がビニル1,2―結合型、トランス1,4−結合型、シス1,4−結合型からなる、室温において透明な液状の重合体である。ここでビニル1,2−結合は30重量%以下であることが好ましく、ビニル1,2−結合が30重量%を越えては、得られる組成物の低温特性が低下するため好ましくない。
【0035】
該液状ポリブタジエンの数平均分子量は、上限が好ましくは5000、更に好ましくは、4000であり、下限が好ましくは、1000、更に好ましくは3000である。前記下限未満では、得られる組成物の耐熱変形性が低下し、前記上限を超えては、得られる組成物の相溶性が低下する。
【0036】
また、液状ポリブタジエンは、エポキシ基、水酸基、イソシアネート基、カルボキシル基から選ばれる1種又は2種の基を有する共重合性物であることが好ましい。なかでも、水酸基と共重合反応性不飽和二重結合とを有するものが特に好ましく、市販品としては、例えば、出光石油化学株式会社製 R−45HTが挙げられる。
【0037】
成分(f)の配合量は、成分(a)100重量部に対して、上限が50重量部、好ましくは、10重量部であり、下限は0重量部、好ましくは1重量部、より好ましくは、3重量部である。上限を超えては、組成物の機械的特性が悪化する。
【0038】
上記各成分に加えて、本発明の組成物は、必要に応じて無機充填剤を配合することができる。無機充填剤は成形品の圧縮永久歪みなど一部の物性を改良する効果のほかに、増量による経済上の利点を有する。用いられる無機充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、水酸化マグネシウム、マイカ、クレー、硫酸バリウム、天然けい酸、合成けい酸(ホワイトカーボン)、酸化チタン、カーボンブラックなどがある。これらのうち、炭酸カルシウム、タルクが特に好ましい。配合量は成分(a)100重量部に対して、好ましくは100重量部以下、特に好ましくは60重量部以下である。100重量部を越えると、得られるエラストマー組成物の機械的強度の低下が著しく、かつ、硬度が高くなって柔軟性が失われ、ゴム的な感触の製品が得られなくなる。
【0039】
さらに、本発明の組成物は用途に応じて、各種のブロッキング防止剤、シール性改良剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、結晶核剤、着色剤等を含有することも可能である。ここで、酸化防止剤としては、例えば、2,6‐ジ‐tert‐p‐ブチル‐p‐クレゾール、2,6‐ジ‐tert‐ブチルフェノール、2,4‐ジメチル‐6‐tert‐ブチルフェノール、4,4‐ジヒドロキシジフェニル、トリス(2‐メチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐tert‐ブチルフェニル)ブタンなどのフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。このうちフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤が特に好ましい。酸化防止剤は、上記の成分(a)〜(e)の合計100重量部に対して、上限が好ましくは3.0重量部、特に好ましくは1.0重量部である。
【0040】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上記(a)〜(e)及び(f)を任意の順序で又は同時に溶融混練することにより製造することができる。溶融混練の方法に特に制限はなく、公知の方法を使用し得る。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等を使用し得る。2軸混練機を用いる場合には、例えば、スクリュー回転数100rpm、混練温度180〜240℃で溶融混練を行う。
以下、実施例、及び、比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
実施例、及び、比較例において用いた評価方法は次の通りである。
1)硬さ:JIS K 7215に準拠した。試験片は、溶融混練によって得られたペレットを、240℃で、6.3mm厚にプレスしたシートを用いた。
2)引張強さ:JIS K 7161に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを、ダンベルで3号型に打抜いて使用した。引っ張り速度は500mm/分とした。
3)100%伸び応力:JIS K 7161に準拠し、試験片1mm厚プレスシートを、ダンベルで3号3号型に打抜いて使用した。引っ張り速度は500mm/分とした。
4)破断伸び: JIS K 7161に準拠し、試験片1mm厚プレスシートを、ダンベルで3号3号型に打抜いて使用した。引っ張り速度は500mm/分とした。
5)圧縮永久歪み: JIS K7181に準拠し、試験片は6.3mm厚プレスシートを使用した。120℃×72時間、25%変形の条件にて測定した。
6)耐油性: JIS K 7161に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートをダンベルで3号型に打抜いて使用した。ASTM2号油(IRM #902)を使用し、100℃×24時間の引張強さ残率、伸び残率を測定した。引っ張り速度は500mm/分とした。
7)テーバー耐摩耗性:JIS K 7204に準拠し、試験片として2mm厚プレスシートを用い、磨耗輪H-22、1000回転後の摩耗量(mg)を測定した。
8)射出成形性:
型締め圧120トンの射出成形機で、12.5×13.5×1mmのシートを下記の成形条件で成形した。
成形温度 220℃
金型温度 40℃
射出速度 55mm/秒
射出圧力 1400kg/cm
保圧圧力 4001400kg/cm
射出時間 6秒
冷却時間 45秒
デラミネーション、変形及び著しく外観を悪化させる様なフローマークの有無を評価した。表1中、フローマーク等が認められないものを○、若干でも認められたものを×とした。
9)押出・ブロー成形性
押出成形性
40mm押出機で、幅 40mm、厚さ1mm、の帯状のシートを押出した。この時の成形条件は、成形温度:ダイス温度200℃、スクリュー回転数 40rpmであった。ブツがなく、エッジ成形性が良好、であり且つ光沢も均一であるものを○、ブツが多く、外観不良があり、光沢が不均一であるものを×とした。
ブロー成形性
65mm押出機で、50mm径の中空円柱形の成形品を押出ブローで得た。この時の成形条件は、成形温度: 170〜200℃、ブロー時間 5秒、空気圧:1kg/cm、冷却時間: 10秒であった。
ドローダウンがなく、十分に延伸し、表面性が良好であるものを○、ドローダウンが若干発生したが、十分に延伸し、表面性が良好であるものを△、ドローダウンが激しく、また外観不良が認められたものを×とした。
10)成形品のベタツキ
試験片の6.3mm厚プレスシートを、100℃×22時間の環境下で50%圧縮した後、目視による低分子量物のブリード及びブルーミングの有無、更に触感によるベトツキの有無により評価した。ベトツキのないものを○、若干ベトツキがあるものを△、ベトツキがあるものを×とした。
【0042】
また、実施例及び比較例で用いた各成分は下記の通りである。
成分(a−1):
ブロック共重合体−1 スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体
商品名:アサプレン T−430
スチレンの含有量:30重量%
数平均分子量:130,000
重量平均分子量:200,000
分子量分布:1.5
ブロック共重合体−2 スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体
重量平均分子量 80,000
成分(a−2):水添ブロック共重合体
製造会社:クラレ社製
商品名:セプトン4077 (商標)
種類:スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体
スチレンの含有量:30重量%
イソプレンの含有量:70重量%
数平均分子量:260,000
重量平均分子量:320,000
分子量分布1.23
水素添加率:90%以上
成分(b):非芳香族系ゴム軟化剤
製造会社:出光興産社製
商品名:ダイアナプロセスオイル PW−90 (商標)
種類:パラフィン系オイル
重量平均分子量:540
芳香族成分の含有量:0.1%以下
成分(c):ポリプロピレン系樹脂
製造会社:グランドポリマー社製
商品名:CJ−700
種類:ホモポリプロピレン
密度:0.9g/cm
結晶化度:Tm 166℃、△Hm:82mJ/mg
成分(d):有機過酸化物
製造会社:日本油脂株式会社製
商品名:パーヘキサ25B
種類:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン
成分(e):架橋助剤
製造会社:新中村化学社製
商品名:NKエステル3G
種類:トリエチレングリコールジメタクリレート
成分(f):液状ポリブタジエン
製造会社:出光石油化学工業株式会社製
商品名:R‐45HT
種類:官能基として水酸基(アクリル型1級)と共重合反応性不飽和二重結合(1, 4結合:80%)を持つ。
数平均分子量:2800
【0043】
表1に示す割合の各成分と、成分(a)に対して40重量部の炭酸カルシウム(三共精粉株式会社製、商品名:RS400)を一括で、2軸押出機(L/D=46)を使用し、混練温度180〜240℃およびスクリュー回転数350rpmで溶融混練した。
【0044】
【表1】


【0045】
表1に示すように、本発明に従う組成物からの樹脂は、高温での圧縮永久歪みをはじめとして各種機械的強度、耐摩耗性、および耐油性に優れる。これに対して、(a−1)成分を含まないもの(比較例10)、又は(a−1)成分が(a)の15重量%未満であるもの(比較例1)は、共に耐油性が悪かった。(a−1)成分の分子量が8万の組成物(実施例6)は、分子量が20万の組成物(実施例1〜5)に比べ、押出・ブロー成形性およびべたつきが若干劣った。
また、(a−2)成分を含まないもの(比較例11)、又は(a−2)成分が(a)の15重量%未満であるもの(比較例2)は、共に、テーバー耐摩耗性が悪かった。
成分(b)ゴム用軟化剤を、本発明の範囲を超えて含有するもの(比較例3および4)は、成形性が悪く、機械的強度の評価を行なうことができなかった。成分(c)パーオキサイド分解型オレフィン系樹脂を多くすることにより(比較例6)、耐油性は向上するが、成形体が大変に硬くなりA硬度の範囲を超えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a−1)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体 85〜15重量%、及び
(a−2)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体 15〜85重量%、
よりなるブロック共重合体樹脂成分(a) 100重量部、
(b)非芳香族系ゴム用軟化剤 30〜300重量部、
(c)パーオキサイド分解型オレフィン系樹脂、 10〜300重量部、
(d)有機過酸化物 0.5〜5.0重量部
(e)架橋助剤 1.0〜10.0重量部
を含有する熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
【請求項2】
(f)液状ポリブタジエン 1〜50重量部をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
【請求項3】
(a−1)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体の重量平均分子量が100,000〜300,000である事を特徴とする請求項1、又は、請求項2に記載の熱可塑性エラストマー樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−159433(P2010−159433A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99520(P2010−99520)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【分割の表示】特願平11−299736の分割
【原出願日】平成11年10月21日(1999.10.21)
【出願人】(000250384)リケンテクノス株式会社 (236)
【Fターム(参考)】