説明

熱可塑性エラストマー組成物

【課題】接着剤層を介さずとも加硫ゴム又は熱可塑性エラストマーに対し、十分な接着強度、硬度およびゴム弾性を有し、かつ軽量な成形体を形成し得る熱可塑性エラストマー組成物を提供する。
【解決手段】非架橋性の結晶性ポリオレフィン樹脂(A)10〜60重量部、プロピレン・1-ブ
テン・エチレンランダム共重合体(B)1〜20重量部及び一部又は全部が架橋されたエチレン・α-オレフィン(炭素数3〜20)・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)89〜20重量部を含有する熱可塑性エラストマー組成物(E)であって((A)〜(C)の合計100重量部)、該成分(B)が(1)プロピレン単位90〜50モル%、1-ブテン単位5〜25モル%及びエチレン単位5〜25モル%含有し、(2)Mw/Mn1.0〜3.5、(3)極限粘度[η](135℃、デカリン)0.7〜10dl/g、(4)mm分率(13C-NMRにより算出)が85%以上である熱可塑性エラストマー組成物(E)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマーおよびその用途に関し、さらに詳しくは、特に自動車のウェザーストリップ、ドアトリムなどのコーナー異形接続部や異形端末部を溶着成形するのに好適な熱可塑性エラストマーおよびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接続部を有するウェザーストリップの製造は、一般的に、エチレン・プロピレン・非共役ジエン三元共重合体(EPDM)のゴム配合物からなる押出加硫成形品を裁断して、一方または双方から金型にセットし、形成されるキャビティに、このEPDMのゴム配合物と同種のゴム成形材料を注入し加硫型成形することにより行なわれている。
【0003】
他方、この型成形の材料として、エチレン・プロピレン・非共役ジエン三元共重合体(EPDM)を使用した加硫ゴムに代わって、生産性、環境対応性および軽量化の見地から、加硫工程が不要な熱可塑性エラストマー(組成物)が使用され始めている。
【0004】
しかしながら、一般に加硫ゴムと熱可塑性エラストマーとは、加硫接着などができないため、接着剤を用いて一体化がなされたりしていたが、生産性あるいは環境対応性の点で十分とは言えない。また、熱可塑性エラストマー同士の接着においても十分な接着性が得られていなかった。
【0005】
熱可塑性エラストマーの組成に関する技術としては、極性基含有樹脂の添加(特許文献1〜3参照)が挙げられるが、極性基含有樹脂の添加の場合、成形時に、成形品の金型からの離型性が悪くなったりして成形サイクルが長くなってしまう。また、α−オレフィン系非晶性重合体を使用したり、熱可塑性エラストマーが提案されている(特許文献4〜5参照)が、接着性が不十分であり、また、ゴム弾性が悪化してしまう。
【0006】
さらに上記加硫ゴムの技術としては、従来の加硫ゴムの組成に加えて微結晶性のポリプロピレンを添加するものがある(特許文献6参照)。しかしながら、アタクチックポリプロピレンのような微結晶のポリプロピレンを添加すると、従来の加硫ゴムのゴム弾性が悪化するだけでなく、経時後の成形品のベタツキや成形品硬度の上昇などが生じる場合がある。
【0007】
以上のような熱可塑性エラストマーや加硫ゴムの組成に関する技術の他、加硫ゴムを裁断した後、切断面の凹凸を付けてアンカー効果を得ようとするもの(特許文献7参照)や、加硫ゴムの切断面にポリオレフィン樹脂パウダーを塗布したもの(特許文献8参照)などの技術があるが、いずれも生産性が低下する割に接着性の向上はみられないという欠点がある。
【0008】
したがって、接着剤層を介さなくても加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマーに対し、十分な接着強度を生じる成形体を形成し得る熱可塑性エラストマーおよびそのエラストマーを加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマーに溶着させた成形体、ならびに熱可塑性エラストマーとして十分な硬度とゴム弾性を有する軽量な成形体を形成し得る、成形性、経済性に優れる熱可塑性エラストマーおよびそのエラストマーを加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマーに溶着させた成形体の出現が望まれている。
【特許文献1】特開平2−115249号公報
【特許文献2】特開平8−244068号公報
【特許文献3】特開平10−324200号公報
【特許文献4】特許第3693017号公報
【特許文献5】特開2006−282827号公報
【特許文献6】特開平10−7849号公報
【特許文献7】特開平9−118133号公報
【特許文献8】特開平6−47816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、接着剤層を介さなくても加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマーに対し、十分な接着強度およびゴム弾性を有する成形体を形成し得る熱可塑性エラストマーを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の事項を含む。
〔1〕非架橋性の結晶性ポリオレフィン樹脂(A)10〜60重量部と、プロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)1〜20重量部と、一部または全部が架橋された、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)89〜20重量部とを含有する熱可塑性エラストマー組成物(E)であって(ただし、(A)、(B)および(C)の合計を100重量部とする)、該プロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)が、
(1)プロピレンから導かれる単位を90〜50モル%、1−ブテンから導かれる単位を5〜25モル%、エチレンから導かれる単位を5〜25モル%含有し、(2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn;標準ポリスチレン換算)が1.0〜3.5の範囲にあり、(3)135℃、デカリン中で測定される極限粘度[η]が0.7〜10dl/gであり、(4)13C−NMRにより算出したトリアドタクティシティ(mm分率)85%以上であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物(E)。
〔2〕前記(A)、(B)および(C)に加えて、さらに軟化剤(D)を含み、該軟化剤(D)が、これらの成分(A)、(B)および(C)の合計100重量部に対して、0〜200重量部含まれることを特徴とする〔1〕に記載の熱可塑性エラストマー組成物(E)。
〔3〕前記プロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)の13C−NMRにより算出したトリアドタクティシティ(mm分率)88%以上、98%以下であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の熱可塑性エラストマー組成物(E)。
〔4〕前記プロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)の135℃、デカリン中で測定される極限粘度[η]が1.0〜5.0dl/gであることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(E)。
〔5〕加硫ゴム成形体または熱可塑性エラストマー成形体への溶着用として用いられることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(E)
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物(E)は、加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマーの成形体への溶着用として好適に用いることができ、加硫ゴム成形体または熱可塑性エラストマー成形体へ溶融接着させ、剥離試験時の接着強度が高く、伸びが優れている。
【0012】
本発明の成形体は、ウェザーストリップ材などの自動車内外装材用に好適に用いられる。具体的には、直線的部分と接合コーナー部材とが接合されてなるウェザーストリップ材において、該直線的部分が加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマーの成形体からなり、該コ
ーナー部材が本発明の熱可塑性エラストマー組成物(E)から形成される成形体からなるウェザーストリップ材として好適に用いられる。
【0013】
加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマーからなる成形体に、上記の、本発明に係る熱可塑性エラストマーを溶着させてなる成形体は、たとえばインサート成形により得られる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物(E)は、接着剤層を介さずとも加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマー(母材)に対して十分な接着強度を有し、また剥離時の伸びにも優れる。また熱可塑性エラストマーとして十分な硬度とゴム弾性を有する、軽量でかつ、成形性、経済性にも優れる成形体を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物(E)および該熱可塑性エラストマー組成物(E)の加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマーの成形体への用途について具体的に説明する。
【0015】
〔非架橋性の結晶性ポリオレフィン樹脂(A)〕
本発明で用いられる非架橋性の結晶性ポリオレフィン樹脂(A)は、高圧法または低圧法のいずれかの方法により、1種または2種以上のモノオレフィンを重合して得られる結晶性の高分子量固体生成物であり、DSCあるいはX線などで測定される結晶化度が20%以上のものである。このような結晶性ポリオレフィン系樹脂(A)としては、たとえば、アイソタクチックおよびシンジオタクチックのモノオレフィン重合体樹脂が挙げられる。これらの結晶性ポリオレフィン樹脂(A)は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、結晶性ポリオレフィン系樹脂(A)としては、種々のプロピレン系重合体が挙げられるが、特にプロピレン単独重合体が好ましい。
【0016】
なお、結晶性ポリオレフィン樹脂(A)の代表的な樹脂は商業的に入手することもできる。
上記結晶性ポリオレフィン系樹脂(A)の適当な原料オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセンなどの炭素数2〜20、好ましくは2〜12のα−オレフィンが挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独で、または2種以上を混合して用いられる。
【0017】
重合様式はランダム型でもブロック型でも、結晶性の樹脂が得られればどのような重合様式を用いてもよい。
結晶性ポリオレフィン系樹脂(A)としてはプロピレン系重合体が好ましく、具体的にはプロピレンホモポリマー、プロピレン・エチレンブロックコポリマーおよびプロピレン・エチレンランダムコポリマーなどが挙げられる。このうち、プロピレンホモポリマーが特に好ましい。
【0018】
本発明で用いられる結晶性ポリオレフィン系樹脂(A)は熱可塑性エラストマー組成物(E)の流動性および耐熱性を向上させる役割を持つ。
結晶性ポリオレフィン系樹脂(A)は、メルトフローレート(MFR:ASTM D 1238−65T、230℃、2.16kg荷重)が、通常0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜50g/10分の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜30g/10minの範囲であることが好ましい。
【0019】
本発明で用いられる非架橋性の結晶性ポリオレフィン樹脂(A)は、非架橋性の結晶性ポリオレフィン(A)、プロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)、一
部または全部が架橋された、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)の合計100重量部に対して、10〜60重量部、好ましくは12.5〜50重量部、さらに好ましくは15〜40重量部の量で用いられる。
【0020】
〔プロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)〕
本発明で用いられるプロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)は、DSCあるいはX線などで測定される結晶化度が20%超えないものが好ましく、さらに好ましくは、結晶化度が10%以下のものである。本発明で用いられるプロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)は、プロピレンから導かれる単位を90〜50モル%、好ましくは85〜55モル%、さらに好ましくは80〜60モル%の量で、1−ブテンから導かれる単位を5〜25モル%、好ましくは7.5〜22.5モル%、さらに好ましくは10〜20モル%の量で、エチレンから導かれる単位を5〜25モル%、好ましくは7.5〜22.5モル%、さらに好ましくは10〜20モル%の量で含有している。
【0021】
プロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体(B)の分子量分布(Mw/Mn)は1.0〜3.5、好ましくは1.5〜3.0、さらに好ましくは1.7〜2.8の範囲である。
分子量分布(Mw/Mn)の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりカラム温度140℃で行う。なお、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量を表し、いずれも標準ポリスチレン換算で算出する。
【0022】
プロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体(B)の135℃、デカリン中で測定される極限粘度[η]は0.7〜10dl/gであり、好ましくは1.0〜5.0dl/g、さらに好ましくは1.2〜4.5dl/gである。
【0023】
プロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体(B)の立体規則性は、トリアドタクティシティ(mm分率)によって評価することができ、85%以上、好ましくは88〜98%、さらに好ましくは90〜95%である。ここで、「mm分率」は、ポリマー鎖中に存在する3個の頭−尾結合したプロピレン単位連鎖を表面ジグザグ構造で表したときのメチル基の分岐方向が同一である割合として定義され、下記のように13C−NMRスペクトルから求められる。また、本発明で用いられるプロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体(B)に対するmm分率は、国際公開第2004/087775号パンフレットの21頁7行目〜26頁6行目までに記載された方法で求められる。
【0024】
本発明におけるプロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体(B)の製造方法としては、特に制限はないが、オレフィンをアイソタクチックまたはシンジオタクチック構造で立体規則性重合することができる公知の触媒、たとえば、固体状チタン成分および有機金属化合物を主成分とする触媒、またはメタロセン化合物を触媒の一成分として用いたメタロセン触媒の存在下で製造することができる。このうち、プロピレン、1−ブテンおよびエチレンをメタロセン触媒の存在下で、共重合させることにより製造するのが好ましい。メタロセン触媒としては、たとえば、国際公開第2004/087775号パンフレットの実施例e1〜e5に記載の触媒などを用いることが好ましい。
【0025】
本発明で用いられるプロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)は、非架橋性の結晶性ポリオレフィン(A)、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(B)、エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)の合計100重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは3〜18重量部、さらに好ましくは5〜15重量部の割合で用いられる。
【0026】
本発明で用いられるプロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)は、動的架橋時に添加せず、熱可塑性エラストマーに成形前にドライブレンドにより添加したり、押出機により熱可塑性エラストマーに溶融混合してもよい。
【0027】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物(E)は、プロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)を添加することにより、溶着の際の熱可塑性エラストマー組成物(E)と加硫ゴム成形体との融着性、溶着後の剥離試験における接着強度、ならびに剥離までの伸びを向上させる。
【0028】
〔エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)〕
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)は、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンからなるゴムである。
【0029】
炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチルデセン−1、11−メチルドデセン−1,12−エチルテトラデセン−1などが挙げられる。なかでも、プロピレン、1−ブテン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。
【0030】
これらのα-オレフィンは、単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
また、非共役ポリエンとしては、具体的には、
1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、8−メチル−4−エチリデン−1,7−ノナジエンおよび4−エチリデン−1,7−ウンデカジエンなどの鎖状非共役ジエン;
メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−イソブテニル−2−ノルボルネン、シクロペンタジエンおよびノルボルナジエンなどの環状非共役ジエン;
2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエンおよび4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンなどのトリエンなどが挙げられ、単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、5−エチリデン−2−ノルボルネンおよび5−ビニル−2−ノルボルネンが好ましい。
【0031】
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)は、(1)(a)エチレンから導かれる単位と、(b)炭素数3〜20のα-オレフィンから導かれる単位とを、40/60〜95/5、好ましくは60/40〜80/20、さらに好ましくは65/35〜75/25[(a)/(b)]のモル比で含有している。
【0032】
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)のヨウ素価は1〜50、好ましくは5〜40、さらに好ましくは10〜30である。エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)中の非共役ジエン量の含有量は、2〜20重量%である。なお、ヨウ素価は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)中の非共役ポリエンの含有量を示す指標のひとつである。
【0033】
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)の135℃デカリン中で測定される極限粘度は1.0〜10.0dl/g、好ましくは1.5〜8.0dl/gである。
【0034】
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)は、その製造の際に軟化剤、好ましくは鉱物油系軟化剤を配合した、いわゆる油展ゴムであってもよい。鉱物油系軟化剤としては、従来公知の鉱物油系軟化剤、たとえば、パラフィン系プロセスオイルなどが挙げられる。
【0035】
また、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)のムーニー粘度[ML1+4(100℃)]は、通常10〜250、好ましくは30〜150である。
上記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムは、従来公知の方法により製造することができる。
【0036】
また、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)には、必要に応じてエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム(C)をブレンドしてもよい。エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムを構成するα−オレフィンとしては、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムを構成するα−オレフィンと同様のものが挙げられる。前記エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムは、エチレンから導かれる単位を50モル%以上、好ましくは50〜90モル%、さらに好ましくは60〜85モル%含有し、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから導かれる単位を50モル%以下、好ましくは50〜10モル%、さらに好ましくは40〜15モル%含有する。
【0037】
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(C)は、非架橋性の結晶性ポリオレフィン(A)、プロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)、エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)の合計100重量部に対して、89〜20重量部、好ましくは84.5〜25重量部、さらに好ましくは80〜30重量部用いられる。
【0038】
〔熱可塑性エラストマー組成物(E)〕
本発明の熱可塑性エラストマー組成物(E)は、上記成分(A)、成分(B)および成分(C)からなるブレンド物を、架橋剤の存在下あるいは非存在下に、動的に熱処理することよって調製することができる。ここで、「動的に熱処理する」とは、溶融状態で混練し、架橋することをいう。
【0039】
本発明で用いられる架橋剤としては、たとえば、有機過酸化物、イオウ、イオウ化合物、フェノール樹脂などのフェノール系加硫剤などが挙げられるが、なかでも有機過酸化物が好ましく用いられる。
【0040】
有機過酸化物としては、具体的には、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシドなどが挙げられる。なかでも、臭気性、スコーチ安定性の点で、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ
)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびn−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレートが好ましく、特に1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが好ましい。
【0041】
この有機過酸化物は、非架橋性の結晶性ポリオレフィン樹脂(A)と、プロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)と、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)との合計100重量部に対し、0.01〜0.15重量部、好ましくは0.03〜0.12重量部用いられる。有機過酸化物を前記範囲の量で用いると、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)が架橋した熱可塑性エラストマー組成物(E)が得られ、耐熱性、引張特性、弾性回復性、反撥弾性などのゴム的性質および強度が十分な成形体が得られる。また、この組成物は成形性にも優れる。
【0042】
本発明においては、前述の有機過酸化物による架橋処理に際し、硫黄、p−キノンジオキシム、p、p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N,4−ジニトロソアニリン、ニトロベンゼン、ジフェニルグアニジンおよびトリメチロールプロパン−N,N’−m−フェニレンジマレイミドなどの架橋助剤、あるいはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートなどの多官能性メタクリレートモノマー、ならびにビニルブチラートおよびビニルステアレートなどの多官能性ビニルモノマーを配合することができる。このような化合物を配合することにより、均一かつ緩和な架橋反応が期待できる。特に、本発明においてはジビニルベンゼンを用いると、取扱い易さ、前記被処理物の主成分たる非架橋性の結晶性ポリオレフィン(A)、プロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)への相溶性が良好であり、かつ有機ペルオキシド可溶化作用を有し、有機過酸化物の分散助剤として働くため、熱処理による架橋効果が均質で、流動性と物性のバランスのとれた組成物が得られるため最も好ましい。
【0043】
また、動的架橋時に流動性や硬度の調整剤として軟化剤を添加してもよい。軟化剤は、非架橋性の結晶性ポリオレフィン(A)、プロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)、エチレン・炭素数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)の合計100重量部に対し、0〜200重量部、好ましくは30〜170重量部、さらに好ましくは50〜150重量部用いられる。
【0044】
軟化剤としては、具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、石油アスファルトおよびワセリンなどの石油系軟化剤;
コールタールおよびコールタールピッチなどのコールタール系軟化剤;
ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油および椰子油などの脂肪油系軟化剤;
トール油;
サブ、(ファクチス);
蜜ロウ、カルナウバロウおよびラノリンなどのロウ類;
リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウムおよびラウリン酸亜鉛などの脂肪酸および脂肪酸塩;
ナフテン酸;
パイン油、ロジンまたはその誘導体;
テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂およびアタクチックポリプロピレンなどの合成高分子物質;
ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペートおよびジオクチルセバケートなどのエステル系軟化剤;
マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、末端変性ポリイソプレン、水添末端変性ポリイソプレン、液状チオコールおよび炭化水素系合成潤滑油などが挙げられる。なかでも、石油系軟化剤、特にプロセスオイルが好ましく用いられる。
【0045】
本発明における動的な熱処理は、非開放型の装置中で行うことが好ましく、また窒素、炭酸ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
その混練温度は、通常150〜280℃、好ましくは170〜240℃である。混練時間は、通常1〜20分間、好ましくは3〜10分間である。また、加えられる剪断力は、剪断速度として10〜100,000sec-1、好ましくは100〜50,000sec-1である。
【0046】
混練装置としては、ミキシングロール、インテンシブミキサー(たとえば、バンバリーミキサー、ニーダー)、一軸または二軸押出機などであって、非開放型の装置が挙げられる。
【0047】
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(E)には、必要に応じて、発泡剤、スリップ剤、核剤、充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤および着色剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0048】
前記発泡剤としては、具体的には、重炭酸ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウムおよび亜硝酸アンモニウムなどの無機発泡剤;N,N'−ジメチル−N,N'−ジニトロソテレフタルアミドおよびN,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)などのニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AZBN)、アゾビスシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼンおよびバリウムアゾジカルボキシレートなどのアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド(BSH)、トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、p,p'− オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)およびジフェニルスルホン−3,3'−ジスルホニルヒドラジドなどのスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4-ジフェニルジスルホニルアジドおよびp-トルエンスルホニルアジドなどのアジド化合物が挙げられる。
【0049】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物(E)から形成される成形体または発泡成形体は、発泡されていてもよい加硫ゴム成形体および/または発泡されていてもよい熱可塑性エラストマー成形体などの被接合物と接合することができる。発泡成形体の形成は、前記発泡剤を用いてゴムまたはエラストマーの発泡体を製造する際に用いられる従来公知の方法により行うことができる。
【0050】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物(E)は、押出成形、プレス成形、射出成形、カレンダー成形などの各種の成形方法により、非発泡または発泡した成形体を調製することができる。
【0051】
また、上記核剤としては、非融解型および融解型の結晶化核剤が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
非融解型の結晶化核剤としては、タルク、マイカ、シリカ、アルミニウムなどの無機物
、臭素化ビフェニルエーテル、アルミニウムヒドロキシジp−t−ブチルベンゾエート(TBBA)、ヒドロキシ−ジ−p−t−ブチル安息香酸アルミニウム、有機リン酸塩、ロジン系結晶化核剤、置換トリエチレングリコールテレフタレートおよびTerylene&Nylon繊維などが挙げられ、特にヒドロキシ−ジ−p−t−ブチル安息香酸アルミニウム、メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム塩、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム、ロジン系結晶化核剤およびPDTSが望ましい。
【0052】
融解型の結晶化核剤としては、ジベンジリデンソルビトール(DBS)、置換DBS、低級アルキルジベンジリデンソルビトール(PDTS)、などのソルビトール系の化合物が挙げられる。
【0053】
上記スリップ剤としては、具体的には、脂肪酸アミド、シリコーンオイル、グリセリン、ワックスおよびパラフィン系オイルなどが挙げられる。
上記充填剤としては、従来公知の充填剤であれば特に制限なく用いることができ、具体的には、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、ケイソウ土、シリカ、アルミナ、グラファイト、ガラス繊維などが挙げられる。
【0054】
<加硫ゴム成形体>
加硫ゴム成形体を構成する加硫ゴムとしては、エチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体ゴムが、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(E)との溶着性の面から好ましい。このような共重合体ゴムとして、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン共重合体ゴムが好ましく用いられる。
【0055】
なお、ここで「加硫ゴム」には、イオウを用いて架橋したもののみならず、他の架橋剤で架橋したものも含まれる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物(E)は、車両の内外装材として用いられる加硫ゴム成形体、好ましくはポリオレフィン系加硫ゴム成形体に溶着するコーナー部、たとえば、自動車用ウェザーストリップのコーナー部分(コーナー材)として好適に用いられる。具体的には、ポリオレフィン系加硫ゴムの押出成形物を裁断し、得られた裁断押出物同士を異なる方向から接続するコーナー部分の成形において、上述した本発明の熱可塑性エラストマー組成物(E)を融点以上の温度で射出成形して、加硫ゴムの押出成形品と接触させて溶着させることにより、ウェザーストリップを得ることができる。
【0056】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物(E)からなるコーナー部成形体を有するウェザーストリップについて図1に基づいてより具体的に説明する。
図1は、自動車のウェザーストリップ(グラスランチャンネル)およびその成形方法を説明する模式斜視図である。
【0057】
図1の(A)に示すように、ウェザーストリップは、加硫ゴム製の裁断押出成形物1、2と、この裁断押出成形物1、2を異なる方向から接続する際に形成される接合コーナー部材3とで構成されている。この裁断押出成形物1、2は、加硫ゴムをチャンネル状に押出成形した後、所定の長さに裁断したものである。この裁断押出成形物1、2は長手方向の形状が直線形状をしている。また、ここでいう「接合コーナー部材」とは、裁断押出成形物同士を異なる方向から接続する際に形成される熱可塑性エラストマー製の部分をいう。
【0058】
このようなウェザーストリップは、次のようにして調製することができる。
まず、射出成形用金型4を予め所定の温度に加熱しておく。次に、図1の(B)に示すように、この金型4に加硫ゴムからなる裁断押出成形物1、2を挿入する。
【0059】
次いで、図示していないが、加熱室内(スクリュー内)で融点以上の温度で溶融された本発明の熱可塑性エラストマー組成物(E)を、金型4のキャビティとコアの間にできる空間部に注入し、裁断押出成形物1、2の端面に、融点以上の温度で溶融させた本発明の熱可塑性エラストマー組成物(E)を溶着させた後、この熱可塑性エラストマー組成物(E)を冷却し、図1の(B)に示すようなコーナー部材3を有するウェザーストリップを得る。
【0060】
上記の裁断押出成形物1、2の調製に用いられる加硫ゴムとしては、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムが主成分であるのが好ましく、エチレン・α−オレフィン非共役ポリエン共重合体ゴムにおける炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチルデセン−1、11−メチルドデセン−1、12−エチルテトラデセン−1などが挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらのα−オレフィンのうち、炭素原子数3〜8のα−オレフィン、たとえばプロピレン、1−ブテン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
【0061】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムは、耐熱老化性、強度特性、ゴム弾性、耐寒性および加工性に優れた加硫ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られるという点で、(a)エチレンから導かれる単位と(b)炭素原子数3〜20のα−オレフィンから導かれる単位とを、50/50〜90/10[(a)/(b)]のモル比で含有していることが好ましい。このモル比は、好ましくは65/35〜90/10、より好ましくは65/35〜85/15、さらに好ましくは65/35〜80/20である。
【0062】
また、非共役ポリエンとしては、本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)を構成する非共役ポリエンと同様のものを特に制限なく用いることができるが、なかでも5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、シクロペンタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンが好ましい。これらの非共役ポリエンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0063】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムのヨウ素価は、架橋効率の高いゴム組成物が得られ、耐圧縮永久歪み性に優れる加硫ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られ、かつ、コスト的に有利である点で、1〜40であることが好ましく、1〜30であることがさらに好ましい。
【0064】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムの135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は、強度特性、耐圧縮永久歪み性および加工性に優れた加硫ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られるという点で、2.0〜4.5dl/gであることが好ましく、2.2〜4.0dl/gであることがさらに好ましい。これらのエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムは、単独で用いてもよく、また2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0065】
加硫ゴム中には、十分な機械強度を有する押出成形加硫ゴム成形体を得るために、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム100重量部に対して、カーボンブラックを30〜300重量部用いるのが好ましい。
【0066】
カーボンブラックとしては、SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MTなどのカーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックは、機械的強度および製品肌の良好な加硫ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られるという点で、窒素吸着比表面積が10〜100m2/gであることが好ましい。
【0067】
加硫ゴム中には、加硫物の用途に応じて、老化防止剤、加工助剤、発泡剤、発泡助剤、着色剤、分散剤、難燃剤などの従来公知の配合剤が適宜配合される。
また、加硫ゴム中には、必要に応じて、補強剤として無機充填剤などの補強剤を適宜用いることができるが、無機充填剤の量は通常、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム100重量部に対して、最大100重量部である。
【0068】
無機充填剤としては、具体的には、シリカ、軟質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレーなどが挙げられる。
加硫ゴム中に配合される軟化剤としては、前述のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(C)に用いられる軟化剤と同様の軟化剤を用いることができる。これらの軟化剤の配合量は、加硫物の用途などにより適宜選択される。
【0069】
加硫ゴムの加硫に用いる加硫剤としては、イオウおよびイオウ化合物が挙げられる。
イオウとしては、具体的には、粉末イオウ、沈降イオウ、コロイドイオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウなどが挙げられる。
【0070】
イオウ化合物としては、具体的には、塩化イオウ、二塩化イオウ、高分子多硫化物などが挙げられる。また、加硫温度で活性イオウを放出して加硫するイオウ化合物、たとえば、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレンなども使用することができる。
【0071】
これらの中では、イオウが好ましい。イオウまたはイオウ化合物は、前記共重合体ゴム100重量部に対して、通常0.1〜10重量部用いられる。
また、加硫剤としてイオウまたはイオウ化合物を使用するときは、加硫促進剤を併用することが好ましい。加硫促進剤としては、具体的には、
N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(OBS)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(BBS)、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系化合物;
2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィドなどのチアゾール系化合物;
ジフェニルグアニジン(DPG)、トリフェニルグアニジン、ジオルソニトリルグアニジン(DOTG)、オルソトリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレートなどのグアニジン系化合物;
アセトアルデヒド−アニリン縮合物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン(H)、アセトアルデヒドアンモニアなどのアルデヒドアミンまたはアルデヒド−アンモニア系化合物;
2−メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系化合物;
チオカルバニリド、ジエチルチオウレア(EUR)、ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジオルソトリルチオウレアなどのチオウレア系化合物;
テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィ
ド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(TRA)などのチウラム系化合物;
ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸テルルなどのジチオカルバミン酸塩;
ジブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸塩;
亜鉛華(酸化亜鉛)などの化合物が挙げられる。
【0072】
これらの加硫促進剤は、前記共重合体ゴム100重量部に対して、通常0.1〜20重量部の割合で用いられる。
また、本発明の目的を損なわない範囲で、アミン系、ヒンダードフェノール系またはイオウ系などの老化防止剤を添加してもよい。
【0073】
アミン系老化防止剤としては、ジフェニルアミン類、フェニレンジアミン類などが挙げられる。
イオウ系老化防止剤としては、通常ゴムに使用されるイオウ系老化防止剤が用いられる。
【0074】
加工助剤としては、通常のゴムの加工に使用される加工助剤を使用することができる。具体的には、リノール酸、リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸およびラウリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸の塩;前記高級脂肪酸のエステル類などが挙げられる。
【0075】
このような加工助剤は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム100重量部に対して、通常10重量部以下の量で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0076】
発泡剤としては、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(E)に用途などに応じて添加してもよい発泡剤と同様のものを特に制限なく用いることができる。
また、上記加硫ゴムには、公知の他のゴムや樹脂をブレンドして用いてもよい。
【0077】
このような他のゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)などのイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などの共役ジエン系ゴムが挙げられる。
【0078】
他の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、1,2−ポリブタジエン、ポリブテンなどを挙げることができる。
加硫ゴム成形体を形成するためには、まず押出成形用のゴム組成物を調製することにより行う。押出成形用ゴム組成物は、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー(密閉式混合機)類を用いて、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム、カーボンブラック、ゴム補強剤、無機充填剤および軟化剤などの添加剤を80〜170℃の温度で2〜20分間混練した後、さらにイオウを添加して混練し、必要に応じて加硫促進剤、加硫助剤、発泡剤および発泡助剤を追加混合し、オープンロールのようなロール類またはニーダーを用いてロール温度40〜80℃で5〜30分間混練した後、分出しすることにより調製する。
【0079】
上記のようにして調製された押出成形用ゴム組成物は、押出成形機により目的の形状に成形し、同時または成形後、成形物を加硫槽内に導入し、140〜300℃の温度で1〜
20分間加熱することにより、加硫することができる。
【0080】
加硫の工程は、通常連続的に実施される。加硫槽における加熱方法としては、熱空気、ガラスビーズ流動床、溶融塩槽(LCM)、PCM(Powder Curing MediumまたはPowder Curing Method)、UHF(極超短波電磁波)、スチームなどの加熱手段を用いることができる。
【0081】
なお、ここではウェザーストリップを例にとって説明したが、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(E)は、加硫ゴム成形体に融着成形体を形成する場合はもちろん、ドアトリムなどの表皮部を融着表皮層で形成する場合にも適用することができる。
【0082】
<熱可塑性エラストマー成形体>
熱可塑性エラストマー成形体としては、オレフィン系、スチレン系、塩ビ系、ウレタン系、エステル系、アミド系などが挙げられるが、オレフィン系樹脂と、一部または全部が架橋されたオレフィン系ゴムとを含有するオレフィン系の組成物であることが好ましい。
【0083】
オレフィン系樹脂
熱可塑性エラストマー成形体の構成成分であるオレフィン系樹脂は、高圧法または低圧法の何れかの方法により、1種または2種以上のモノオレフィンを重合して得られる結晶性の高分子量固体生成物である。
【0084】
上記オレフィン系樹脂の適当な原料オレフィンとしては、具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセンなどの炭素数2〜20、好ましくは2〜12のα−オレフィンが挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独で、または2種以上混合して用いられる。
【0085】
重合様式はランダム型でもブロック型でも、樹脂状のものが得られればどのような重合様式を用いてもよい。
なかでもオレフィン系樹脂としてはプロピレン系重合体が好ましく、具体的には、プロピレンホモポリマー、プロピレン・エチレンブロックコポリマー、プロピレン・エチレン、およびプロピレン・エチレン・ブテンランダムコポリマーなどが好ましい。このなかでも特にアイソタクチックおよびシンジオタクチックのプロピレン系重合体が挙げられる。オレフィン系樹脂は単独で用いてもよく、また2種以上組み合せて用いてもよい。前記オレフィン系樹脂としては、特に制限はないが、ポリプロピレンなどを例示することができ、特にポリプロピレンが好ましい。これらの代表的な樹脂は商業的に入手できる。
【0086】
オレフィン系樹脂は、メルトフローレート(MFR:ASTM D 1238−65T、230℃、2.16kg荷重)が通常0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜50g/10分の範囲にあることが望ましい。
オレフィン系樹脂は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(E)の流動性および耐熱性を向上させる役割を有する。
【0087】
オレフィン系ゴム
熱可塑性エラストマー成形体の構成成分として用いられるオレフィン系ゴムとしては、特に制限はないが、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムおよびエチレン・α−オレフィン共重合体ゴムなどが挙げられる。
【0088】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムまたはエチレン・α−オレフィン共重合体ゴムのエチレン含有量が通常25〜95モル%、好ましくは30〜90モル%、さらに好ましくは35〜85モル%である。
【0089】
α−オレフィンとしては、前述した炭素数3〜20のα−オレフィンが挙げられるが、好ましくはプロピレンである。
また、非共役ポリエンとしては、前述した加硫ゴム成形体を構成する非共役ポリエンと同様のものを特に制限なく用いることができる。
【0090】
前記エチレン・α−オレフィン(・非共役ポリエン)共重合体ゴムのヨウ素価は、1〜30g/100g、好ましくは3〜25g/100gである。また、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が10〜250であることが好ましい。
【0091】
熱可塑性エラストマー成形体
オレフィン系樹脂およびオレフィン系ゴムの使用割合は、オレフィン系樹脂およびオレフィン系ゴムの合計に対してオレフィン系樹脂が10〜80重量%、好ましくは15〜60重量%、オレフィン系ゴムが90〜20重量%、好ましくは85〜40重量%である。オレフィン系樹脂およびオレフィン系ゴムの使用割合が前記範囲にある場合、柔軟性およびゴム弾性に優れるとともに、成形加工に優れた本発明の耐熱性熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
他の成分として用いられる軟化剤、無機充填剤としては、通常ゴムに使用される軟化剤、無機充填剤を用いることができる。
【0092】
〔実施例〕
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものではない。
【0093】
なお、実施例および比較例で用いた熱可塑性エラストマー組成物(E)のメルトフローレート(MFR)、熱可塑性エラストマー組成物(E)から形成された成形体の引張剥離強度、剥離までの伸び、硬度、引張強度および伸びの測定ならびに評価は、以下の方法に従って行った。
(1)メルトフローレート(MFR)
ASTM D 1238−65Tに準拠して230℃、2.16kg荷重で測定した。
(2)硬度
JIS K6253に準拠して、ショアーA硬度を測定した。
(測定条件)プレス成形機によりシートを作製し、A型測定器を用い、押針接触後直ちに目盛りを読み取った。
(3)引張強度および伸び
JIS K6251に準拠して、引張試験を下記の条件で行い、破断時の引張強度と伸びを測定した。
(試験条件)プレス成形機によりシートを作製し、JIS3号試験片を打ち抜き、引張速度500mm/分の条件で行った。
(4)接着強度強度と剥離までの伸び
後述する製造例1〜2で得られた加硫ゴムプレスシート(縦12cm×横14.7cm×厚み2mmの平板)、熱可塑性エラストマー成形体(縦12cm×横14.7cm×厚み2mmの平板)のJIS3号試験片を打ち抜き、加硫ゴム成形体および熱可塑性エラストマー成形体の被接着材を作製する。これらの成形体を各々カッターで半分に切断して射出成形用金型にセットする。そして、100Ton射出成形機にて、射出温度250℃、金型温度50℃にて、この加硫ゴム成形物、熱可塑性エラストマー成形体の切断面に溶着用熱可塑性エラストマー組成物がその射出段階にて被接着材と溶融接着するように成形する。
【0094】
このようにして溶融接着させた成形品(JIS3号試験片)を200mm/分の引張速度で剥離試験を行い、そのときの引張剥離強度(接着強度)と剥離までの伸びを測定する。
【0095】
[製造例1]加硫ゴムプレスシートの作製
原料ゴムとしてエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(エチレン含量=68モル%、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]=2.8dl/g、ヨウ素価=12)100重量部と、FEF級カーボンブラック(旭カーボン(株)製、商品名:旭#60G)170重量部と、軟化剤(出光興産(株)製、商品名:ダイアナプロセスオイルTM PS−430)95重量部と、ステアリン酸1重量部と、亜鉛華1号5重量部と、活性剤(ライオン(株)製、商品名:アーカード2HT−F)1重量部とを、容積1.7リットルのバンバリーミキサー((株)神戸製鋼所製、BB−2形ミキサー)で混練した。
【0096】
混練方法は、まず原料ゴムを1分素練りし、次いで、カーボンブラック、軟化剤、ステアリン酸、亜鉛華1号、活性剤を入れ、2分間混練した。その後、ラムを上昇させ、掃除を行い、さらに2分間混練し、ゴム配合物(I)1390重量部を得た。この混練は充填率75%で行い、さらに同様の手順で2バッチ混練し、合計4170重量部を得た。
【0097】
得られたゴム配合物(I)から3670重量部秤量し、14インチロール(日本ロール(株)製)(前ロールの表面温度60℃、後ロールの表面温度60℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm)に巻き付けて、そのゴム配合物(I)に、イオウ5重量部、2−メルカプトベンゾチアゾール(三新化学工業(株)製、商品名:サンセラーM)15重量部、ジベンゾチアジルジスルフィド(三新化学工業(株)製、商品名:サンセラーDM)5重量部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(三新化学工業(株)製、商品名:サンセラーBZ)20重量部、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(三新化学工業(株)製、商品名:サンセラーPZ)5重量部、エチレンチオ尿素(三新化学工業(株)製、商品名:サンセラー22C)10重量部、ジチオジモルホリン(三新化学工業(株)製、商品名:サンフェルR)5重量部および酸化カルシウム(井上石灰工業(株)製、商品名:ベスタPP)50重量部を添加し、14インチオープンロール(日本ロール(株)製、ロール温度60℃)で7分間混練し、ゴム配合物(II)を得た。
以下、このゴム配合物(II)を用い、150tonプレスを用いて加硫ゴムプレスシートを作製した。
【0098】
[製造例2]熱可塑性エラストマープレスシートの作製
ゴム成分として油展エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(エチレン含量:78モル%、プロピレン含量:22モル%、ヨウ素価:13、ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]74、油展量:ゴム100重量部に対してパラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製、商品名:PW−380)62重量部;以下「EPT」という。)60.6重量部と、ポリプロピレンとして、プロピレン単独重合体(MFR(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重):55g/10分、融点(Tm):162℃;以下「PP−1」という。)27重量部、プロピレン単独重合体(MFR(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重):1.5g/10分、融点(Tm):160℃;以下「PP−2」という。)12.4重量部と、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(日本チバガイギー(株)製、商品名:イルガノックス1010)0.1重量部と、耐候剤としてジアゾ系耐候安定剤(日本チバガイギー(株)製、商品名:チヌビン326)0.1重量部と、スリップ材としてオレイン酸アミド(ライオン(株)製、商品名:アーモスリップCP)0.3重量部と、架橋剤として有機過酸化物(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキサ25B)0.64重量部と、架橋助剤としてジビニルベンゼン0.48重量部とをヘンシェルミキサーで十分混合し、押出機(品番 TEM−50、東芝機械(株)製、L/D=40、シリンダー温度:C1〜C2 120℃、C3〜C4 140℃、C5〜C6 180℃、C7〜C8 200℃、C9〜C12 220℃、ダイス温度:210℃、スクリュー回転数:280rpm、押出量:40kg/h)にてパラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製、商品名:PW−100)21重量部をシリンダーに注入しながら造粒を行い、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
次いで、プレス成形機により2mmtシートを作製した。
【0099】
[合成例1]プロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)(PBER−1)の調製
触媒/助触媒として、特開2007−186664号公報に記載の方法で調製されたジ
フェニルメチレン(3−t−ブチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(2,7−t−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド/メチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製、アルミニウム換算で0.3mml)を用いて、原料となるエチレン、プロピレンおよび1−ブテンを、連続重合設備を用いてヘキサン溶液中で重合することにより、プロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(PBER−1)(プロピレン67モル%、1−ブテン19モル%、エチレン14モル%、Mw/Mn=2.1、極限粘度[η]=1.8dl/g、mm分率=92.1%)を得た。
【0100】
[合成例2]プロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)(PBER−2)の調製
触媒/助触媒として、特開2007−186664号公報に記載の方法で調製されたジ
フェニルメチレン(3−t−ブチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(2,7−t−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド/メチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製、アルミニウム換算で0.3mml)を用いて、原料となるエチレン、プロピレンおよび1−ブテンを、連続重合設備を用いてヘキサン溶液中で重合することでプロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(PBER−2)(プロピレン76モル%、1−ブテン6モル%、エチレン18モル%、Mw/Mn=2.1、極限粘度[η]=1.4dl/g、mm分率=90.9%)を得た。
【0101】
〔実施例1〕
ポリプロピレン(A)(MFR(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重):8g/10分、融点(Tm):140℃;以下「PP−1」という。)35重量部と、ゴム成分としてエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(C)(エチレン含量:57wt%、ジエン含量:7.3wt%、ムーニー粘度[ML1+4(125℃)]
74、以下「EPT」という。)54重量部と、シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:SH200)1重量部と、カーボンマスターバッチとして40%カーボンマスターマッチ2.5重量部と、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(日本チバガイギー(株)製、商品名:イルガノックス1010)0.1重量部と、耐候剤としてジアゾ系耐候安定剤(日本チバガイギー(株)製、商品名:チヌビン326)0.5重量部と、架橋剤として有機過酸化物(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキサ25B)1.0重量部と、架橋助剤としてジビニルベンゼン0.11重量部とをヘンシェルミキサーで十分混合し、押出機(品番:TEM−50、東芝機械(株)製、L/D=40、シリンダー温度:C1〜C2 120℃、C3〜C4 140℃、C5〜C6 180℃、C7〜C8 200℃、C9〜C12 220℃、ダイス温度:210℃、スクリュー回転数:280rpm、押出量:40kg/h)にてパラフィン系プロセスオイル(D)(出光興産(株)製、商品名:PW−380)39重量部をシリンダーに注入しながら造粒を行い、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0102】
得られた熱可塑性エラストマーペレットを92重量部、合成例1で得られたPBER−1を8重量部、ヘンシェルミキサーで十分混合し、押出機(品番:TEM−50、東芝機
械(株)製、L/D=40、シリンダー温度:C1〜C2 120℃、C3〜C4 140℃、C5〜C6 180℃、C7〜C8 200℃、C9〜C12 220℃、ダイス温度:210℃、スクリュー回転数:800rpm、押出量:40kg/h)にて造粒を行い、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0103】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前述の方法に従って評価した。
結果を表1に示す。
【0104】
〔実施例2〕
実施例1において、PP−1を32重量部、PBER−1を13重量部およびEPTを49重量部、得られた熱可塑性エラストマーペレットを87重量部とした以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0105】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前記方法に従って評価した。
結果を表1に示す。
【0106】
〔実施例3〕
実施例1においてPBER−1の代わりにPBER−2を8重量部用いた以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0107】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前記方法に従って評価した。
結果を表1に示す。
【0108】
〔実施例4〕
実施例2においてPBER−1の代わりにPBER−2を13重量部用いた以外は、実施例2と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0109】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前記方法に従って評価した。
結果を表1に示す。
【0110】
〔実施例5〕
実施例1において、PP−1を54重量部、PBER−1を8重量部、EPTを36重量部およびパラフィン系プロセスオイルを29重量部とした以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0111】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前記方法に従って評価した。
結果を表1に示す。
【0112】
〔実施例6〕
実施例1においてPP−1を18重量部、PBER−1を12重量部、EPTを70重量部およびパラフィン系プロセスオイルを47重量部とした以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0113】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前記方法に従って評価した。
結果を表1に示す。
【0114】
[比較例1]
実施例1において、PBER−1(成分(B))を用いず、PP−1を35重量部、PBRを54重量部およびパラフィン系プロセスオイルを39重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを作製した。
【0115】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前記方法に従って評価した。
結果を表1に示す。
【0116】
[比較例2]
実施例1において、EPT(成分(C))の代わりに、非架橋ゴムを用いた以外は実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを作製した。なお、非架橋ゴムを用いたため、架橋剤および架橋助剤を用いなかった。
【0117】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前記方法に従って評価した。
結果を表1に示す。
【0118】
[比較例3]
実施例1において、PBER−1(成分(B))の代わりに、プロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体(PBER−3)(三井化学(株)製、商品名:RS2605、プロピレン54モル%、1−ブテン21モル%、エチレン25モル%、Mw/Mn=5.3、極限粘度[η]=1.8dl/g、mm分率=95%)を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを作製した。
【0119】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前述の方法に従って評価した。
結果を表1に示す。
【0120】
[比較例4]
実施例1において、PBER−1の代わりに、非晶性プロピレン−1−ブテン共重合体(Huntsman Polymers、商品名:REXtac2780A、プロピレン71モル%、1−ブテ
ン29モル%、Mw/Mn=5.1、極限粘度[η]=0.5dl/g、mm分率=15%)を用いた以外は実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを作製した。
【0121】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前記方法に従って評価した。
結果を表1に示す。
【0122】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】図1(A)は、コーナー部分が本発明の熱可塑性エラストマー組成物(E)から形成された自動車用ウェザーストリップの一例を示す模式斜視図であり、図1(B)は、図1(A)のウェザーストリップのコーナー部分の形成方法を示す模式斜視図である。
【符号の説明】
【0124】
1,2・・・裁断押出成形物
3・・・接合コーナー部材
4・・・射出成型用金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非架橋性の結晶性ポリオレフィン樹脂(A)10〜60重量部と、
プロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)1〜20重量部と、
一部または全部が架橋された、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(C)89〜20重量部と
を含有する熱可塑性エラストマー組成物(E)であって(ただし、(A)、(B)および(C)の合計を100重量部とする)、
該プロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)が、
(1)プロピレンから導かれる単位を90〜50モル%、1−ブテンから導かれる単位を5〜25モル%、エチレンから導かれる単位を5〜25モル%含有し、
(2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.5の範囲にあり、
(3)135℃、デカリン中で測定される極限粘度[η]が0.7〜10dl/gであり、
(4)13C−NMRにより算出したトリアドタクティシティ(mm分率)が85%以上
であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物(E)。
【請求項2】
前記(A)、(B)および(C)に加えて、さらに軟化剤(D)を含み、該軟化剤(D)が、これらの成分(A)、(B)および(C)の合計100重量部に対して、0〜200重量部含まれることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物(E)。
【請求項3】
前記プロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)の13C−NMRにより算出したトリアドタクティシティ(mm分率)が88%以上、98%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物(E)。
【請求項4】
前記プロピレン・1−ブテン・エチレンランダム共重合体(B)の135℃、デカリン中で測定される極限粘度[η]が1.0〜5.0dl/gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(E)。
【請求項5】
加硫ゴム成形体または熱可塑性エラストマー成形体への溶着用として用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(E)。

【図1】
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【公開番号】特開2009−215356(P2009−215356A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57724(P2008−57724)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】