説明

熱可塑性ポリウレタン製の光伝導体

本発明は、光伝導体の製造に好適な熱可塑性ポリウレタン(以下、TPUと称す)、
その製造方法、およびTPUから得られる光伝導体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝導体の製造に好適な熱可塑性ポリウレタン(以下、TPUと称す)、その製造方法、およびTPU系の光伝導体に関する。
【背景技術】
【0002】
導波路が多量のデータを透過させることができ、このデータ伝送が電磁場により途絶されないこと、即ち影響を受けないことが知られている。ガラス繊維製の光伝導体が知られているが、プラスチックからなる光伝導体も知られている。後者は、特に機械工学分野や自動車製造分野、オフィス分野で知られている。「高分子光ファイバー」とも呼ばれるこの種の光伝導体は、光を透過させるポリマーからなる光学的芯部と、保護皮膜である光学的被覆材料とを持つことができる。工業的に使用される主なポリマーの例としては、芯部としてポリメタクリル酸メチルが、被覆材料として、ポリフッ化ビニリデンまたはポリテトラフルオロエチレンなどのフルオロポリマーがあげられる。
【0003】
US−A−4836646には、特定の保護層(「被覆層」)の使用が開示されており、この光学的芯部としては、一般的には、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン、またはスチレンとメタクリル酸メチルのコポリマーや、スチレンとアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとエチルアクリレート、スチレンとα−メチルスチレン、またはスチレンとビニルトルエンのコポリマーがあげられている。
【0004】
US2008/0117639A1には、集光効果のある光伝導性シートで、その通過中にその光を変化させるものが開示されている。この目的に用いられるプラスチックは、TPU、PC、シリコーン、PMMA、またはPETである。
【0005】
WO94/09048A1には、ガラス状の架橋ポリウレタンとポリウレタンネットワークが開示されており、これらは生物医学的な用途に、例えば光ファイバーとして使用可能である。ここでの意図は、ヒドロキシ基とイソシアネート基が化学量論的に用いられ、ポリオールが低分子量であることである。
【0006】
しかしながら、柔軟で弾性を持ち透明度の高いプラスチック製の既知の光伝導体材料は、長さが3mを超える送受信装置に信頼性よく好適な光透過をさせるわけではない。また、ポリメタクリル酸メチルなどの光伝導性プラスチックはフレキシブルな接続には堅く脆すぎて、ガラス繊維を用いる無機光伝導体は、小さな曲げ半径に不適当である。既知の光伝導体は、吸収損失が大きすぎ、及び/又は機械特性が不適当である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US−A−4836646
【特許文献2】US2008/0117639A1
【特許文献3】WO94/09048A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、柔軟で、弾性を有する、透明度の高い改善された光伝導体であって、長さが比較的大きいとしても確実に好適な光透過を与える光伝導体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
A)少なくとも一種のジイソシアネートと、
B)少なくとも一種のポリオールと、
C)少なくとも一種のイソシアネート反応性の連鎖延長剤から得られる光伝導性熱可塑性ポリウレタンであって、
熱可塑性ポリウレタンにおいて、
a)芳香族系と共役π電子系の含量が、存在するすべての添加物を含む熱可塑性ポリウレタンに対して40質量%以下、好ましくは25質量%以下、特に好ましくは10質量%以下であり、
b)熱可塑性ポリウレタンの屈折率が1.50以上、好ましくは1.52以上であり、
c)全不透明度が10%未満、好ましくは7%未満であることを特徴とする熱可塑性ポリウレタンを提供する。
【0010】
a)中の芳香族系と共役π電子系の含量は、芳香族系(水素Hを除く)と不飽和炭素原子とπ電子系の構成要素であるヘテロ原子を含み、酸素原子を除いたものの質量によるものである。
【0011】
屈折率は20℃の温度で測定し、全不透明度は好ましくは実施例に記載の方法により測定される。平坦な、水平に置かれた平滑面(以下、射出成形シートと呼ぶ)上に液体光伝導性熱可塑性ポリウレタンを注いで製造した均一な層厚を持つ試験片上で屈折率を測定することが好ましい。次いで、このキャストシートから、パンチまたはカットにより適当な大きさの試験片を得る。
【0012】
本発明はまた、本発明のTPU光伝導体中の、特に繊維中の光伝導性素子としての利用を提供する。
【0013】
本発明はまた、本発明のTPUを光伝導材料として、特に繊維またはチューブ状の光導電材料として用いることからなる光伝導体の製造方法を提供する。
【0014】
本発明はまた、少なくとも一種の有機ジイソシアネートA)と少なくとも一種の好ましくは線状のヒドロキシ末端ポリオールBと少なくとも一種のジオール系の短鎖の連鎖延長剤とを反応させる本発明のTPUの製造方法であって、
−イソシアネート反応性の基の全量に対してNCO基を、当量比で
0.9:1.0〜1.2:1.0、好ましくは0.95:1.0〜1.10:1.0で用い、
−散乱中心を導入することなく、
−また、紫外線及び/又は可視光線を吸収する添加物を、まったくあるいは実質的に導入することがないことを特徴とする製造方法を提供する。
【0015】
本発明の実施様態は、請求項や明細書、実施例に見出される。もちろん、本発明の範囲を逸脱することなく、上述の本発明の装置/プロセス/用途の側面を、それぞれ上述の組合せだけでなく他の組合せで用いることができ、また同じことが下に示す本発明の側面に適用される。
【0016】
熱可塑性ポリウレタンTPUは、一定の温度範囲内で繰り返し加熱により軟化し冷却により硬化することのできるポリウレタンであり、軟化状態で繰り返しキャスティングにより成型物、押出物または成形物に成型可能で半完成品または完成品を与えるものである。TPUはブロックコポリマーである。これらは、分子内にハードセグメントとソフトセグメントとを有している。ある好ましい実施様態においては、脂肪族のTPUの場合、全体のTPUに対する硬質相の比率が、好ましくは15〜65質量%であり、特に40〜65質量%である。
【0017】
なお、硬質相の比率は、下式で定義される。
【0018】
【数1】

【0019】
式中の用語は次のように定義される。
CEx:連鎖延長剤xのモル質量(g/mol)
CEx:連鎖延長剤xの質量(g)
iso:用いるイソシアネートのモル質量(g/mol)
tot:全出発原料の総質量(g)
k:連鎖延長剤の数
【0020】
また、波長が約280〜800nmの範囲の光に大きな吸収を示すか散乱中心により散乱をおこすような種類の添加物の使用は避けることが好ましい。
【0021】
本発明において、「大きな吸収がない」とは、280nmから800nmの範囲の光の、2mm射出成形シートの透過率が80%より大きい、好ましくは85%より大きい、より好ましくは90%より大きい、特に好ましくは95%より大きいことを意味する。
【0022】
本発明において、散乱中心とは、用いる波長において入射方向とは垂直な方向に光を散乱させるいずれかの粒子をいう。
【0023】
もし散乱中心の最大径が、用いる光の波長の4/2である、好ましくは1/1、より好ましくは1/2、特に好ましくは1/4である場合は、光散乱は、透明なTPUに入射する光の波長の関数として起こる。
【0024】
したがって、散乱中心とよばれる粒子は、その最大空間寸法が、光伝導体に入射する光の波長の4/2未満であり、好ましくは1/1、より好ましくは1/2、特に好ましくは1/4である。
【0025】
散乱中心は、極めて好ましくは、その最大径の空間寸法が0.7μmを超える粒子、好ましくは0.6μmを超える、特に好ましくは0.5μmを超える粒子である。
【0026】
本発明においては、熱可塑性ポリウレタンの製造に、イソシアネートAとポリオールBと必要なら他のイソシアネートに対して反応性の化合物との反応を利用するが、必要に応じて触媒D及び/又は従来から用いられている助剤Eの存在下で連鎖延長剤Cを用いてもよい。
【0027】
ポリウレタンの製造に通常用いられるこれらの成分A、B、Cとまた必要に応じて用いられる成分D及び/又はEを、以下に例示する。
【0028】
a)用いる有機イソシアネートAは、既知の芳香族、脂肪族、脂環式及び/又は芳香脂肪族イソシアネートを好ましくはジイソシアネートを含む。その具体例としては、ジフェニルメタン2,2’−、2,4’−及び/又は4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタンジイソシアネート、及び/又はフェニレンジイソシアネート、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、2−エチルブチレン1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、ブチレン1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]シクロヘキサン(H12MDI)、2,6−ジイソシアナト−ヘキサンカルボン酸エステル、1,4−及び/又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキサン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート、及び/又はジシクロヘキシルメタン4,4’−、2,4’−、及び2,2’−ジイソシアネートがあげられ、好ましくはジフェニルメタン2,2’−、2,4’−及び/又は4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]−シクロヘキサン、及び/又はIPDIがあげられる。
【0029】
特に好ましいイソシアネートは、脂肪族のイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネートであり、特にH12MDIである。
【0030】
b)用いるイソシアネートに対して反応性の化合物(b)は、既知のイソシアネート反応性化合物を含み、その例としては、数平均モル質量(Mn)が500g/mol〜8000g/mol、好ましくは600g/mol〜6000g/mol、特に800g/mol〜3000g/molで、好ましくは平均官能基数がイソシアネートに対して1.8〜2.3、好ましくは1.9〜2.2、特に2であるポリエステルオール、ポリエーテルオール及び/又はポリカーボネートジオール(これらには、総称として「ポリオール」が通常用いられる)があげられる。
【0031】
ポリエーテルポリオールを使用することが好ましく、その例としては、既知の出発物質からのものやエチレンオキシド、プロピレンオキシド、及び/又はブチレンオキシドなどの従来のアルキレンオキシドからのものがあげられ、プロピレン1,2−オキシドとエチレンオキシド系のポリエーテルオールが好ましく、ポリオキシテトラメチレングリコールが特に好ましい。用いるポリエーテルオールは、いわゆる低不飽和度ポリエーテルオールを含むこともできる。本発明の目的では、低不飽和度ポリオールは、特に0.02meq/g未満の、好ましくは0.01meq/g未満の不飽和化合物を含むポリエーテルアルコールである。この種のポリエーテルアルコールは、主に、高活性触媒の存在下で上記のジオールまたはトリオールに、アルキレンオキシドを、特にエチレンオキシド、プロピレンオキシド及びこれらの混合物を添加する反応で製造される。
【0032】
この種の高活性触媒の例としては、水酸化セシウムや、DMC触媒とも呼ばれる多金属シアン化物触媒があげられる。よく用いられるDMC触媒は、亜鉛ヘキサシアノコバルテートである。DMC触媒は、反応後ポリエーテルアルコール中に残留していてもよいが、通常は、例えば沈殿や濾過で除かれる。
【0033】
ポリオールに代えて、いろいろなポリオールの混合物を使用することもできる。本発明の熱可塑性ポリウレタンでは、成分(b)がポリテトラヒドロフラン系のもので、数平均モル質量(Mn)が600g/mol〜2000g/mol、好ましくは800g/mol〜1400g/mol、特に好ましくは950g/mol〜1050g/molのものであることが特に好ましい。
【0034】
c)連鎖延長剤Cは、既知の脂肪族、芳香脂肪族、芳香族及び/又は脂環式化合物で、数平均モル質量が50g/mol〜499g/molである、好ましくは二官能性化合物であり、その例としては、アルキレン基中に2〜10個の炭素原子をもつアルカンジオールがあげられ、好ましくは1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及び/又は3〜8個の炭素原子をもつジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−、オクタ−、ノナ−及び/又はデカアルキレングリコールであり、好ましくは非分岐のアルカンジオール、特に1,3−プロパンジオールと1,4−ブタンジオールである。
【0035】
d)好適な触媒、特にジイソシアネートのNCO基と成分Bとの間の反応を加速する触媒は、既存の先行技術に知られる第三級アミンであり、その例としては、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N.N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、等が挙げられ、また特に有機金属化合物、例えばチタン酸エステル、鉄化合物、好ましくは鉄(III)アセチルアセトネート、すず化合物類、好ましくは第一すずジアセテート、第一すずジオクトエート、第一すずジラウレートが、または他の好ましい例では、脂肪族カルボン酸のジブチルすず塩があげられ、より好ましくはジブチルすずジアセテート、ジブチルすずジラウレート、その他があげられる。触媒の通常使用量は、100質量部のポリヒドロキシ化合物(b)に対して0.00001〜0.1質量部である。
【0036】
e)構造成分A〜Cに加えて、触媒Dとともに既存の助剤Eを添加することもできる。言及に足る具体例としては、発泡剤、界面活性剤、難燃剤、核剤、潤滑剤、離型剤、染料や顔料、加水分解や光、加熱、または変色からの保護用の安定剤、無機及び/又は有機増量剤、強化剤、可塑剤、金属不活性化剤があげられる。使用に好ましい加水分解安定剤は、脂肪族または芳香族カルボジイミドのオリゴマー及び/又はポリマーである。
【0037】
しかしながら、ある好ましい実施様態では、この種の助剤が、添加物を含む熱可塑性ポリウレタンの全質量に対して好ましくは多くとも1質量%の量で、特に多くとも0.1質量%の量で使用される。ある特に好ましい実施様態では、上記の助剤が使用されない。
【0038】
存在するすべての添加物を含む熱可塑性ポリウレタンに対して、特に芳香族化合物を含まないTPUに対して多くとも25質量%の比率で、多くとも10質量%の比率で芳香族系や共役型π電子系を含む、水添MDI系TPUと少なくとも一種のポリエーテルオール系とからなるTPUが特に好ましい。
【0039】
「芳香族化合物を含まない」とは、光波長が0.25μm〜0.35μmの範囲において、厚み2mmの射出成型シートからなる試験片の透過率が、30%を超える、より好ましくは50%を、特に好ましくは70%を超えることを意味する。
【0040】
これらのTPUは、既知のプロセスで回分的または連続的に製造可能であり、例えば反応押出機またはベルト法で、ワンショット法またはプレポリマー法で、好ましくはワンショット法で製造できる。これらのプロセスでは、反応成分AとBと、必要ならC、D及び/又はEを連続または同時に相互に混合して反応を開始することができる。押出機プロセスでは、構造成分のAとB、また必要に応じてC、D及び/又はEを、個別にあるいは混合物の形で押出機に導入し、好ましくは100℃〜280℃の温度で、より好ましくは140℃〜250℃の温度で反応させ、得られる熱可塑性ポリウレタンを押し出し冷却してペレット化する。
【0041】
TPUの最適化のために、ポリオール成分Bと連鎖延長剤Cとを変更することができる。ある好ましい実施様態では、ポリオールBと使用するすべての連鎖延長剤Cの質量比が20〜2、特に8〜3である。
【0042】
ある好ましい実施様態においては、イソシアネートAとイソシアネート反応性の成分との反応が、950〜1050の指数で、特に好ましくは970〜1010、特に980〜1000の指数で進行する。この指数は、成分A中の反応に用いられる全イソシアネート基の、イソシアネート反応性基、即ち特に基BとCに対する比率と定義される。この指数が1000の時、Aの各イソシアネート基に1個の活性水素原子が存在する。この指数が1000を超えると、イソシアネート基がOH基より過剰となる。
【0043】
本発明の光伝導性TPUを直接紡糸して、ストランド、チューブまたは繊維を製造することができる、これらは光伝導体用途に用いられる。ある好ましい実施様態においては、本発明のTPUは、本発明のTPUを好ましくは光伝導体中での全反射を向上させるための他の層(被覆層)を持つ光伝導体の形で含む複合伝導体中で使用される。ある好ましい実施様態においては、この被覆層が、機械的損傷から保護するための外側を取り囲む層を持っていてもよい。
【0044】
この被覆層は、光伝導体上に、この場合は熱可塑性ポリウレタン上に形成されたもう一つの層であり、この層は、屈折率において光伝導体と異なる。被覆層がないと、光伝導体の境界層での反射は、光伝導体と空気との間の屈折率の差により決まるが、被覆層があると、その反射挙動は光伝導体の屈折率と被覆層の屈折率の比率により決まる。光伝導体が曲げられる場合に、光伝導体と被覆層の間の屈折率の差が特に重要となる。境界層での光の反射角度は屈折率の差により決まる。光伝導体の中心部の屈折率は、好ましくは1.45より大きく、より好ましくは1.5より大きい。この場合は、光が系内に保持され、光伝導体が曲げられても光が逃げることがない。光伝導体と被覆層との間の屈折率の差が大きくなると、光伝導体を曲げることのできる程度が大きくなる。光伝導体と被覆層間の屈折率の差は、好ましくは0.1より大きく、より好ましくは0.15、特に好ましくは0.2より大きい。
【0045】
もう一つの実施様態においては、本発明のTPUを、中央に電気伝導体、例えば銅線を有し、さらに周囲に本発明の光伝導性TPUからなる層を有し、このTPUの環が周辺被覆層となっている複合伝導体中で用いることができる。あるより好ましい実施様態においては、この被覆層が、機械的な損傷から保護のための外塗布膜を有している。この種の構造は、自動車中での信号の伝達に好適である。
【0046】
本発明の材料の光伝導体としてのある特定の用途は、自動車の製造であり、ここでは伝送距離が3〜5mである。他の可能性のある用途は、特に伝送距離が3〜5mである時に、その部材が高い運動の自由度を持つようなエネルギー供給システムである。ここでは、柔軟なエネルギーケーブルの被覆に、柔軟で透明な光伝導性TPUが用いられる。自動車用途での可能性としては、安全機能を持つライン(ABSケーブル、ブレーキホース)の保護のための損傷の検出や、干渉電圧なしでの制御と測定用の高速データ伝達があげられる。他の用途の一例は、装置のバックライト用のフレキシブルシステムである。
【0047】
好適な被覆層は、好ましくはフルオロポリマーやフッ素含有エラストマー、またUS−A−4836646に記載のポリウレタン−シロキサンコポリマーである。
【実施例】
【0048】
1.成分
以下の成分を、下の実施例で用いる。
【0049】
【表1】

【0050】
2.測定方法
上記熱可塑性ポリウレタンを使用して、直径2mmのストランドに押し出し、光伝導体を得た。
【0051】
光透過率の測定のため、ストランドの入射端、即ち光が光伝導体上に入射する位置を、連結スリーブを用いて「スーパーブライト白色」LED(発光ダイオード)(直径5mm)またはレーザーダイオード(LD)に連結した。レーザーダイオードがその軸に垂直に切り出した光伝導体の表面に対して垂直に接触するように、接続位置をデザインした。この光伝導体の末端は、同様に光伝導体の軸に垂直に切断した。このように、LEDまたはLDからの光信号が、試験片中に、即ち光伝導体中に入る、即ち入射する。測定は、この方法により、即ちLEDまたはLDからの光信号の直接入射とゲットスペック2048小型分光計を用い、380nm〜780nmの範囲で、以下の光源電力または照度で行った。
【0052】
LED(白色)光源電力=47μW、
照度=1000ルックス
レーザーダイオードLD(赤)光源電力=450μW、
照度=3450ルックス
【0053】
テスト試料片、即ち直径2mmの熱可塑性ポリウレタン製光伝導体の末端に、市販の光伝導体(直径:200μm、光学的検出器カプセル内の中心に置かれている)によりゲットスペック2048分光計に連結された光学検出器が設置されている。試験した光伝導体の長さは、最大で8mである。
【0054】
全不透明度は次のようにして求めた。
【0055】
色測定装置を使用し、まず光トラップを背景に、次いで白色タイルを背景に用いて、鏡面反射を除いた反射により試験片の色を測定した。明度(DIN6174のL値)を比率として計算し、不透明度(%)とした。
【0056】
ハンターラブ社の「ウルトラスキャン」色測定装置、またはその同等品を用いた。試験片は、AAE−10−132−002により製造した。この色測定装置は、その作動温度に達した後通常30分間標準化させ、以下の条件で操作した。
【0057】
モード:RSEX(鏡面反射を除く)、鏡面反射を除く反射、グロストラップは開放
視認面積:大
ポートの大きさ:25.4
UVフィルター:なし
【0058】
全不透明度を計算するのに次式を用いた。
不透明度=[L値(黒)/L値(白)]×100%
【0059】
不透明度値が0%は、試験片が完全に透明であることを意味し、100%は完全に不透明であることを意味する。
【0060】
屈折率は、屈折計と昼光スペクトルの光を用いて測定した。
【0061】
3.TPUの製造方法の一般規格
試験押出成型物は、直径を約2mmとして次の条件で製造した。
【0062】
【表2】

【0063】
4.具体的な例
上記の出発成分を用いて、上記のプロセス(突起品場合は、数値の単位はgである)で、以下のTPUを製造した。
【0064】
【表3】

【0065】
表中でデータに単位が示されていない場合、そのデータの単位はグラム[g]である。
【0066】
最長伝送距離の測定
試料ストランドを用いて、上記の方法でLEDとLDから可視域のスペクトルの光を伝達させ、好適に利用できるパルスの伝送が可能な最大伝送距離を検出・決定した。
【0067】
【表4】

【0068】
RT:好適に利用できるパルスの伝送が可能とする最大の相対透過歪
【0069】
用いた光源は次のとおりである。
LED(白色):光源電力47μW、照度1000ルックス
レーザーダイオードLD(赤):光源電量450μW、照度3450ルックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)少なくとも一種のジイソシアネートと、
B)少なくとも一種のポリオールと、
C)少なくとも一種のイソシアネート反応性の連鎖延長剤から得られる光伝導性熱可塑性ポリウレタンであって、
該熱可塑性ポリウレタン中において、
a)芳香族系と共役π電子系の含量が、存在するすべての添加物を含む熱可塑性ポリウレタンに対して40質量%以下、好ましくは25質量%以下、特に好ましくは10質量%以下であり、
b)熱可塑性ポリウレタンの屈折率が1.50以上、好ましくは1.52以上であり、
c)全不透明度が10%未満、好ましくは7%未満であることを特徴とする熱可塑性ポリウレタン。
【請求項2】
前記ジイソシアネートA)が脂肪族のジイソシアネートを含み、前記ポリオールがポリエーテルオールを含む請求項1に記載の光伝導性熱可塑性ポリウレタン。
【請求項3】
前記ジイソシアネートA)が1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]シクロヘキサンである請求項1又は2に記載の光伝導性熱可塑性ポリウレタン。
【請求項4】
前記ポリオールが、平均分子量600〜2000のポリエーテルオールである請求項の1〜3のいずれか一項に記載の光伝導性熱可塑性ポリウレタン。
【請求項5】
前記ポリオールがポリテトラヒドロフランを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の光伝導性熱可塑性ポリウレタン。
【請求項6】
前記連鎖延長剤Cが1,4−ブタンジオールである請求項1〜5のいずれか一項に記載の光伝導性熱可塑性ポリウレタン。
【請求項7】
請求項の1〜6のいずれか一項に記載の光伝導性熱可塑性ポリウレタンを、光伝導体内で、特に光伝導性が付与された繊維やチューブ内で光伝導性素子として使用する方法。
【請求項8】
請求項の1〜6のいずれか一項に記載の光伝導性熱可塑性ポリウレタンを光伝導体として用いることを特徴とする光伝導体の製造方法。
【請求項9】
請求項の1〜6のいずれか一項に記載の光伝導性熱可塑性ポリウレタンの製造方法であって、
少なくとも一種の有機ジイソシアネートA)と、
少なくとも一種の好ましくは線状のヒドロキシ末端ポリオールB)と、
少なくとも一種のジオール系の短鎖の連鎖延長剤と、を反応させ、
イソシアネート反応性の基の全量に対してNCO基を、当量比で0.9:1.0〜1.2:1.0、好ましくは0.95:1.0〜1.10:1.0で用い、
散乱中心を導入することなく、
紫外線及び/又は可視光線を吸収する添加物を、まったくあるいは実質的に導入することがないことを特徴とする製造方法。

【公表番号】特表2012−514057(P2012−514057A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542775(P2011−542775)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067308
【国際公開番号】WO2010/076224
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】