熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置
【課題】吸引ノズル体のノズル穴の両側に設けられた吸引スリットの吸引空気を可変とし、ストランドの水切り能力を向上させた熱可塑性樹脂ストランド用水切り装置の提供。
【解決手段】吸引ノズル8のノズル穴13の両側に形成された入口側及び出口側吸引スリット30,31に可動式に設けられ吸引空気の流量を調整するための第1、第2吸引空気調整体15,15aとを備え、各吸引空気調整体15,15aの移動により各吸引スリット30,31の開口面積を変化させる構成。
【解決手段】吸引ノズル8のノズル穴13の両側に形成された入口側及び出口側吸引スリット30,31に可動式に設けられ吸引空気の流量を調整するための第1、第2吸引空気調整体15,15aとを備え、各吸引空気調整体15,15aの移動により各吸引スリット30,31の開口面積を変化させる構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置に関し、特に、吸引ノズル体のノズル穴の両側に設けられた吸引スリットの吸引空気を可変とし、ストランドの水切り能力を向上させるための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置としては、一般に、図5から図9で示される構成が採用されていた。
すなわち、図5において、押出機1のダイ2から押出された複数のストランド3はストランドバス4の冷却水5内を経て吸引ノズル体6の入口側ガイドロール7、吸引ノズル8及び出口側ガイドロール9を経た後にストランドカッタ10でペレットに切断されるように構成されている。
【0003】
前述の吸引ノズル体6は、具体的には、図6から図9で示されるように構成されている。
すなわち、前記吸引ノズル体6の入口側ガイドロール7、吸引ノズル8及び出口側ガイドロール9は、平面的にみて互いに平行に配列され、吸引ノズル8には吸引タンク8A、吸引ブロア11及び排気パイプ12が接続されている。
前記吸引タンク8Aには、吸引した水分を排出するためのドレン10aが設けられている。
【0004】
また、図8及び図9は、前記吸引ノズル体6の要部を拡大して示しており、前記吸引ノズル8の中央位置に多数設けられたノズル孔13は、平面的にみて、ストランド3が通過する各ガイドロール7,9の溝7a,9aの幅に合わせて形成されている。
【0005】
前述の従来構成において、前記押出機1のダイ2により複数のストランド3として連続成形され、このストランド3はストランドバス4の冷却水5によって冷却されて固化され、表面に冷却水5が付着した熱可塑性樹脂のストランド3は、吸引ノズル体6に運ばれる。
【0006】
この吸引ノズル体6に運ばれたストランド3は、吸引ブロア11によって吸引タンク10及び吸引ノズル1は負圧になっているため、ストランド3に付着している冷却水5はノズル穴13から吸引ノズル8内部に吸引される。
この吸引された冷却水5と空気は吸引タンク8Aにより分離され、冷却水5はドレン10aから、空気は吸引ブロア11を通り排気パイプ12から各々排出される。
前述のように、冷却水5が除去されたストランド3は出口側ガイドロール9に支えられてストランドカッタ10に送られる。
【0007】
また、前述の吸引式水切り装置の他、水切り能力を向上させる構成としては、特許文献1に示され、かつ、図10に示されるように、水切り装置体60にスリット式ノズル80を上下一対とすると共に層状の圧縮空気を同一作用面で衝突する構成とし、上下からの吹付けによって圧縮空気の衝突領域をストランド3が通過して効率よく水切りができるようにした構成である。尚、従来例と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0008】
また、特許文献2に示され、かつ、図11に示される吸引式水切り装置の構成においては、金網ベルト22(スクリーンコンベア)と、冷却水を噴霧する冷却機構23と、エアーを吹出す吹出機構24と金網ベルト22を挟んで設けられたエアー及び水滴を吸引する吸引機構25から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−265296号公報
【特許文献2】特開2002−265027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の吸引式水切り装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の図5から図9に示される従来構成の場合、従来の吸引式水切り装置では吸引ノズル8の溝部にのみノズル穴13が設けられていた。生産運転中は熱可塑性樹脂ストランド3が溝部を通過するが、その際熱可塑性樹脂ストランと3自身が吸引ノズル8の溝部に設けられたノズル穴13の大部分を塞いでしまい、ノズル穴13の開口面積が小さくなっていた。そのため、少量の空気しか吸引ノズル8内に吸引されず、ストランド3の周囲に十分な空気流れが発生しない場合があった。
そのため、十分な冷却水5の吸引が行われず、熱可塑性樹脂ストランド3の表面に多量の冷却水5が付着した状態でストランドカッタ9に送られるために、製品樹脂に水分が残留するという問題があった。
また、図10で示される従来構成においては、ストランド3の上方及び下方から層状のエアーが送られるが、層状であるため、ストランド3の動きによっては十分にエアーが当らないことがあり、完全に冷却水を除去することは困難であった。
また、図11で示される従来構成においては、ストランド3上に上方から冷却水を噴射し、その後、ストランド3上にエアーを吹付ける構成であるため、ストランド3の裏側の冷却水除去が難しく、ペレットの品質向上が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置は、押出機から押出されたストランドが吸引ノズル体の吸引スリットを通過する際に、前記ストランドに付着している冷却水をエアーで吸引して除去し、ストランドカッタに送るようにした熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置において、前記吸引ノズルのノズル穴の両側に形成された入口側吸引スリット及び出口側吸引スリットと、前記入口側及び出口側吸引スリットに可動式に設けられ吸引空気の流量を調整するための第1、第2吸引空気調整体とを備え、前記各吸引空気調整体の移動により前記各吸引スリットの開口面積を変化させ、前記各吸引スリットの吸引空気の流量を可変とする構成であり、また、前記第1、第2吸引空気調整体は、板体よりなる構成であり、また、前記第1、第2吸引空気調整体は、網体よりなる構成である。
【発明の効果】
【0012】
本発明による熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、押出機から押出されたストランドが吸引ノズル体の吸引スリットを通過する際に、前記ストランドに付着している冷却水をエアーで吸引して除去し、ストランドカッタに送るようにした熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置において、前記吸引ノズルのノズル穴の両側に形成された入口側吸引スリット及び出口側吸引スリットと、前記入口側及び出口側吸引スリットに可動式に設けられ吸引空気の流量を調整するための第1、第2吸引空気調整体とを備え、前記各吸引空気調整体の移動により前記各吸引スリットの開口面積を変化させ、前記各吸引スリットの吸引空気の流量を可変とすることにより、ストランドの近傍に十分な流速を持った吸引空気を発生させることができ、その結果、空気と共にストランドの表面に付着した冷却水を十分吸引でき、水切り装置の水切り能力が向上し、製品樹脂への残留水分を減らすことができる。
また、前記第1、第2吸引空気調整体は、板体よりなることにより、この板体の移動のみで吸引空気の流量を可変とできる。
また、前記第1、第2吸引空気調整体は、網体よりなることにより、この網の抵抗によって吸引空気の流量を可変とできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置の要部の平面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1の要部の拡大平面図である。
【図4】図3の正面図である。
【図5】従来の熱可塑性ストランド用吸引式水切り装置を示す全体構成図ある。
【図6】図5の要部の平面図である。
【図7】図6の正面図である。
【図8】図6の要部の拡大平面図である。
【図9】図8の正面図である。
【図10】特許文献1の構成を示す全体構成図である。
【図11】特許文献2の構成を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、吸収ノズル体のノズル穴の両側に設けられた吸引スリットの吸引空気を可変とし、ストランドの水切り能力を向上させるようにした熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0015】
以下、図面と共に本発明による熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分については、同一符号を用いて説明する。
また、図5の従来例は、本発明における構成と概略同一であるため、これを援用するものとする。
【0016】
図1において符号6で示されるものは、吸引ノズル体であり、この吸引ノズル体6には、入口側ガイドロール7、吸引ノズル8及び出口側ガイドロール9が互いに間隔をあけて平行な関係で配設されている。
前記吸引ノズル8は、その上面において軸方向に沿い所定間隔で角状のノズル孔13が配列され、この各ノズル孔13の両側には、軸方向Aに沿って連続する長手形状の入口側及び出口側吸引スリット30,31が形成されており、この各吸引スリット30,31の構成は、図3及び図4で示される具体的拡大構成のように、一対のゲートすなわち、第1、第2吸引空気調整体15,15aを有して設けられている。
【0017】
前記吸引ノズル8の各ノズル孔13に対する各吸引スリット30,31は、図4に開示されているように、矢印Bで示される方向に、各吸引空気調整体15,15aを移動させることにより各吸引スリット30,31の開口面積が可変となるように構成されている。尚、各吸引空気調整体15,15aは、周知の凹凸の組合せ等により、ディテント型の位置決めができるように構成されている。
【0018】
前記各吸引空気調整体15,15aは、所定の厚さを有する板状部材又は網状部材で構成され、かつ、その厚さは、図4でも明らかなように、吸引ノズル8の外周の各吸引スリット30,31の面よりも、例えば、5ミリ位高くなるように構成されているため、ストランド3が通過する時に、ストランド3が各吸引スリット30,31に直接触れることのないように構成されている。
【0019】
次に、動作について述べる。まず、熱可塑性樹脂は押出機1のダイ2により複数のストランド3として連続成形される。この熱可塑性樹脂のストランド3は冷却水5で満たされたストランドバス4により水冷され固化する。表面に冷却水5が付着した熱可塑性樹脂ストランド3は吸引式水切り装置の吸引ノズル体6に運ばれる。
この冷却水5が表面に付着した熱可塑性樹脂のストランド3は入口側ガイドロール7により支えられ、吸引ノズル8に設けられた溝部8aを通る。
吸引ノズル8の溝部8aにはノズル穴13が設けられ、ノズル穴13の入口側及び出口側の両側に入口側吸引スリット30及び出口側吸引スリット31の開口面積を調整できる第1、第2吸引空気調整体15,15aが設けられている。
前記吸引ブロア11によって吸引タンク8A及び吸引ノズル8は負圧となっているため、開口面積の広い各吸引スリット30,31近傍には十分な流量・流速を持った吸引空気17が発生する。
前記ストランド3は十分な流量・流速を持った吸引空気17が通過するため、ストランド3の表面に付着した冷却水5は空気と共に吸引ノズル8内部へ吸引される。
この吸引された冷却水5と空気は吸引タンク8Aにより分離され、冷却水5はドレン10aから、空気は吸引ブロア11を通り排気パイプ12からそれぞれ排出される。
吸引式水切り装置20により、付着した水分を十分取り除かれたストランド3は、出口側ガイドロール9に支えられストランドカッタ10に運ばれる。
【0020】
従って、吸引ノズル8内部は負圧となっているため、ノズル穴13の入口側及び出口側の両側に設けられた各吸引スリット30,31の開口部から空気が吸引ノズル8内部に吸引される。
従来の吸引ノズル8では溝部8aのノズル穴13しか開口部がないが、本発明の吸引ノズル8ではさらに各吸引スリット30,31が設置されているため開口面積は大きくなる。そのため、本発明の吸引ノズル8は従来の吸引ノズル8と比較して大きい吸引空気17の流量を得ることができる。
この吸引空気17の流量が大きくなると、それを通過するストランド3近傍の吸引空気17の流速も高くなり、ストランド3表面に付着した冷却水5も空気と共に吸引され易くなる。その結果、本発明の吸引ノズル8では高い水切り効果が得られる。
尚、生産運転時の生産量や熱可塑性樹脂の温度によって適した吸引空気17の速度は異なるため、各吸引空気調整体15,15aを用いて各吸引スリット30,31の開度を調整することにより、最適な吸引速度に調整することが可能である。
また、各吸引スリット30,31には十分な開口面積が確保されているため、熱可塑性樹脂ストランド3が例え各吸引スリット30,31に接触しても吸引空気17の流量が低下することはない。また、各吸引スリット30,31の表面よりも各吸引空気調整体15,15aの表面の方がその肉厚分だけ高くなっているため、ストランド3が各吸引スリット30,31に触れることがなく、各吸引スリット30,31の形状が常に維持される。
なお、各吸引スリット30,31の代わりに金網を使用してもよい。
また、一定の真空度に達した場合に大気との流路を開くリリーフバルブを、吸引ノズル1又は吸引タンク8Aに設置してもよい。
以上のように、各吸引スリット30,31を設置し、またその開口面積を調整できる各吸引空気調整体15,15aを設けることにより、吸引式水切り装置の水切り能力が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明による熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置は、押出機だけではなく、食品分野にも適用可である。
【符号の説明】
【0022】
1 押出機
2 ダイ
3 ストランド
4 ストランドバス
5 冷却水
6 吸引ノズル体
7 入口側ガイドロール
8 吸引ノズル
8A 吸引タンク
9 出口側ガイドロール
10 ストランドカッタ
11 吸引ブロア
13 ノズル孔
15,15a 第1、第2吸引空気調整体(ゲート)
17 吸引空気
20 吸引式水切り装置
30,31 入口側及び出口側吸引スリット
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置に関し、特に、吸引ノズル体のノズル穴の両側に設けられた吸引スリットの吸引空気を可変とし、ストランドの水切り能力を向上させるための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置としては、一般に、図5から図9で示される構成が採用されていた。
すなわち、図5において、押出機1のダイ2から押出された複数のストランド3はストランドバス4の冷却水5内を経て吸引ノズル体6の入口側ガイドロール7、吸引ノズル8及び出口側ガイドロール9を経た後にストランドカッタ10でペレットに切断されるように構成されている。
【0003】
前述の吸引ノズル体6は、具体的には、図6から図9で示されるように構成されている。
すなわち、前記吸引ノズル体6の入口側ガイドロール7、吸引ノズル8及び出口側ガイドロール9は、平面的にみて互いに平行に配列され、吸引ノズル8には吸引タンク8A、吸引ブロア11及び排気パイプ12が接続されている。
前記吸引タンク8Aには、吸引した水分を排出するためのドレン10aが設けられている。
【0004】
また、図8及び図9は、前記吸引ノズル体6の要部を拡大して示しており、前記吸引ノズル8の中央位置に多数設けられたノズル孔13は、平面的にみて、ストランド3が通過する各ガイドロール7,9の溝7a,9aの幅に合わせて形成されている。
【0005】
前述の従来構成において、前記押出機1のダイ2により複数のストランド3として連続成形され、このストランド3はストランドバス4の冷却水5によって冷却されて固化され、表面に冷却水5が付着した熱可塑性樹脂のストランド3は、吸引ノズル体6に運ばれる。
【0006】
この吸引ノズル体6に運ばれたストランド3は、吸引ブロア11によって吸引タンク10及び吸引ノズル1は負圧になっているため、ストランド3に付着している冷却水5はノズル穴13から吸引ノズル8内部に吸引される。
この吸引された冷却水5と空気は吸引タンク8Aにより分離され、冷却水5はドレン10aから、空気は吸引ブロア11を通り排気パイプ12から各々排出される。
前述のように、冷却水5が除去されたストランド3は出口側ガイドロール9に支えられてストランドカッタ10に送られる。
【0007】
また、前述の吸引式水切り装置の他、水切り能力を向上させる構成としては、特許文献1に示され、かつ、図10に示されるように、水切り装置体60にスリット式ノズル80を上下一対とすると共に層状の圧縮空気を同一作用面で衝突する構成とし、上下からの吹付けによって圧縮空気の衝突領域をストランド3が通過して効率よく水切りができるようにした構成である。尚、従来例と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0008】
また、特許文献2に示され、かつ、図11に示される吸引式水切り装置の構成においては、金網ベルト22(スクリーンコンベア)と、冷却水を噴霧する冷却機構23と、エアーを吹出す吹出機構24と金網ベルト22を挟んで設けられたエアー及び水滴を吸引する吸引機構25から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−265296号公報
【特許文献2】特開2002−265027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の吸引式水切り装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の図5から図9に示される従来構成の場合、従来の吸引式水切り装置では吸引ノズル8の溝部にのみノズル穴13が設けられていた。生産運転中は熱可塑性樹脂ストランド3が溝部を通過するが、その際熱可塑性樹脂ストランと3自身が吸引ノズル8の溝部に設けられたノズル穴13の大部分を塞いでしまい、ノズル穴13の開口面積が小さくなっていた。そのため、少量の空気しか吸引ノズル8内に吸引されず、ストランド3の周囲に十分な空気流れが発生しない場合があった。
そのため、十分な冷却水5の吸引が行われず、熱可塑性樹脂ストランド3の表面に多量の冷却水5が付着した状態でストランドカッタ9に送られるために、製品樹脂に水分が残留するという問題があった。
また、図10で示される従来構成においては、ストランド3の上方及び下方から層状のエアーが送られるが、層状であるため、ストランド3の動きによっては十分にエアーが当らないことがあり、完全に冷却水を除去することは困難であった。
また、図11で示される従来構成においては、ストランド3上に上方から冷却水を噴射し、その後、ストランド3上にエアーを吹付ける構成であるため、ストランド3の裏側の冷却水除去が難しく、ペレットの品質向上が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置は、押出機から押出されたストランドが吸引ノズル体の吸引スリットを通過する際に、前記ストランドに付着している冷却水をエアーで吸引して除去し、ストランドカッタに送るようにした熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置において、前記吸引ノズルのノズル穴の両側に形成された入口側吸引スリット及び出口側吸引スリットと、前記入口側及び出口側吸引スリットに可動式に設けられ吸引空気の流量を調整するための第1、第2吸引空気調整体とを備え、前記各吸引空気調整体の移動により前記各吸引スリットの開口面積を変化させ、前記各吸引スリットの吸引空気の流量を可変とする構成であり、また、前記第1、第2吸引空気調整体は、板体よりなる構成であり、また、前記第1、第2吸引空気調整体は、網体よりなる構成である。
【発明の効果】
【0012】
本発明による熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、押出機から押出されたストランドが吸引ノズル体の吸引スリットを通過する際に、前記ストランドに付着している冷却水をエアーで吸引して除去し、ストランドカッタに送るようにした熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置において、前記吸引ノズルのノズル穴の両側に形成された入口側吸引スリット及び出口側吸引スリットと、前記入口側及び出口側吸引スリットに可動式に設けられ吸引空気の流量を調整するための第1、第2吸引空気調整体とを備え、前記各吸引空気調整体の移動により前記各吸引スリットの開口面積を変化させ、前記各吸引スリットの吸引空気の流量を可変とすることにより、ストランドの近傍に十分な流速を持った吸引空気を発生させることができ、その結果、空気と共にストランドの表面に付着した冷却水を十分吸引でき、水切り装置の水切り能力が向上し、製品樹脂への残留水分を減らすことができる。
また、前記第1、第2吸引空気調整体は、板体よりなることにより、この板体の移動のみで吸引空気の流量を可変とできる。
また、前記第1、第2吸引空気調整体は、網体よりなることにより、この網の抵抗によって吸引空気の流量を可変とできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置の要部の平面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1の要部の拡大平面図である。
【図4】図3の正面図である。
【図5】従来の熱可塑性ストランド用吸引式水切り装置を示す全体構成図ある。
【図6】図5の要部の平面図である。
【図7】図6の正面図である。
【図8】図6の要部の拡大平面図である。
【図9】図8の正面図である。
【図10】特許文献1の構成を示す全体構成図である。
【図11】特許文献2の構成を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、吸収ノズル体のノズル穴の両側に設けられた吸引スリットの吸引空気を可変とし、ストランドの水切り能力を向上させるようにした熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0015】
以下、図面と共に本発明による熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分については、同一符号を用いて説明する。
また、図5の従来例は、本発明における構成と概略同一であるため、これを援用するものとする。
【0016】
図1において符号6で示されるものは、吸引ノズル体であり、この吸引ノズル体6には、入口側ガイドロール7、吸引ノズル8及び出口側ガイドロール9が互いに間隔をあけて平行な関係で配設されている。
前記吸引ノズル8は、その上面において軸方向に沿い所定間隔で角状のノズル孔13が配列され、この各ノズル孔13の両側には、軸方向Aに沿って連続する長手形状の入口側及び出口側吸引スリット30,31が形成されており、この各吸引スリット30,31の構成は、図3及び図4で示される具体的拡大構成のように、一対のゲートすなわち、第1、第2吸引空気調整体15,15aを有して設けられている。
【0017】
前記吸引ノズル8の各ノズル孔13に対する各吸引スリット30,31は、図4に開示されているように、矢印Bで示される方向に、各吸引空気調整体15,15aを移動させることにより各吸引スリット30,31の開口面積が可変となるように構成されている。尚、各吸引空気調整体15,15aは、周知の凹凸の組合せ等により、ディテント型の位置決めができるように構成されている。
【0018】
前記各吸引空気調整体15,15aは、所定の厚さを有する板状部材又は網状部材で構成され、かつ、その厚さは、図4でも明らかなように、吸引ノズル8の外周の各吸引スリット30,31の面よりも、例えば、5ミリ位高くなるように構成されているため、ストランド3が通過する時に、ストランド3が各吸引スリット30,31に直接触れることのないように構成されている。
【0019】
次に、動作について述べる。まず、熱可塑性樹脂は押出機1のダイ2により複数のストランド3として連続成形される。この熱可塑性樹脂のストランド3は冷却水5で満たされたストランドバス4により水冷され固化する。表面に冷却水5が付着した熱可塑性樹脂ストランド3は吸引式水切り装置の吸引ノズル体6に運ばれる。
この冷却水5が表面に付着した熱可塑性樹脂のストランド3は入口側ガイドロール7により支えられ、吸引ノズル8に設けられた溝部8aを通る。
吸引ノズル8の溝部8aにはノズル穴13が設けられ、ノズル穴13の入口側及び出口側の両側に入口側吸引スリット30及び出口側吸引スリット31の開口面積を調整できる第1、第2吸引空気調整体15,15aが設けられている。
前記吸引ブロア11によって吸引タンク8A及び吸引ノズル8は負圧となっているため、開口面積の広い各吸引スリット30,31近傍には十分な流量・流速を持った吸引空気17が発生する。
前記ストランド3は十分な流量・流速を持った吸引空気17が通過するため、ストランド3の表面に付着した冷却水5は空気と共に吸引ノズル8内部へ吸引される。
この吸引された冷却水5と空気は吸引タンク8Aにより分離され、冷却水5はドレン10aから、空気は吸引ブロア11を通り排気パイプ12からそれぞれ排出される。
吸引式水切り装置20により、付着した水分を十分取り除かれたストランド3は、出口側ガイドロール9に支えられストランドカッタ10に運ばれる。
【0020】
従って、吸引ノズル8内部は負圧となっているため、ノズル穴13の入口側及び出口側の両側に設けられた各吸引スリット30,31の開口部から空気が吸引ノズル8内部に吸引される。
従来の吸引ノズル8では溝部8aのノズル穴13しか開口部がないが、本発明の吸引ノズル8ではさらに各吸引スリット30,31が設置されているため開口面積は大きくなる。そのため、本発明の吸引ノズル8は従来の吸引ノズル8と比較して大きい吸引空気17の流量を得ることができる。
この吸引空気17の流量が大きくなると、それを通過するストランド3近傍の吸引空気17の流速も高くなり、ストランド3表面に付着した冷却水5も空気と共に吸引され易くなる。その結果、本発明の吸引ノズル8では高い水切り効果が得られる。
尚、生産運転時の生産量や熱可塑性樹脂の温度によって適した吸引空気17の速度は異なるため、各吸引空気調整体15,15aを用いて各吸引スリット30,31の開度を調整することにより、最適な吸引速度に調整することが可能である。
また、各吸引スリット30,31には十分な開口面積が確保されているため、熱可塑性樹脂ストランド3が例え各吸引スリット30,31に接触しても吸引空気17の流量が低下することはない。また、各吸引スリット30,31の表面よりも各吸引空気調整体15,15aの表面の方がその肉厚分だけ高くなっているため、ストランド3が各吸引スリット30,31に触れることがなく、各吸引スリット30,31の形状が常に維持される。
なお、各吸引スリット30,31の代わりに金網を使用してもよい。
また、一定の真空度に達した場合に大気との流路を開くリリーフバルブを、吸引ノズル1又は吸引タンク8Aに設置してもよい。
以上のように、各吸引スリット30,31を設置し、またその開口面積を調整できる各吸引空気調整体15,15aを設けることにより、吸引式水切り装置の水切り能力が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明による熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置は、押出機だけではなく、食品分野にも適用可である。
【符号の説明】
【0022】
1 押出機
2 ダイ
3 ストランド
4 ストランドバス
5 冷却水
6 吸引ノズル体
7 入口側ガイドロール
8 吸引ノズル
8A 吸引タンク
9 出口側ガイドロール
10 ストランドカッタ
11 吸引ブロア
13 ノズル孔
15,15a 第1、第2吸引空気調整体(ゲート)
17 吸引空気
20 吸引式水切り装置
30,31 入口側及び出口側吸引スリット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機(1)から押出されたストランド(3)が吸引ノズル体(6)の吸引スリット(30)を通過する際に、前記ストランド(3)に付着している冷却水(5)をエアで吸引して除去し、ストランドカッタ(10)に送るようにした熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置において、
前記吸引ノズル(8)のノズル穴(13)の両側に形成された入口側吸引スリット(30)及び出口側吸引スリット(31)と、前記入口側及び出口側吸引スリット(30,31)に可動式に設けられ吸引空気の流量を調整するための第1、第2吸引空気調整体(15,15a)とを備え、
前記各吸引空気調整体(15,15a)の移動により前記各吸引スリット(30,31)の開口面積を変化させ、前記各吸引スリット(30,31)の吸引空気の流量を可変とすることを特徴とする熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置。
【請求項2】
前記第1、第2吸引空気調整体(15,15a)は、板体よりなることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置。
【請求項3】
前記第1、第2吸引空気調整体(15,15a)は、網体よりなることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置。
【請求項1】
押出機(1)から押出されたストランド(3)が吸引ノズル体(6)の吸引スリット(30)を通過する際に、前記ストランド(3)に付着している冷却水(5)をエアで吸引して除去し、ストランドカッタ(10)に送るようにした熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置において、
前記吸引ノズル(8)のノズル穴(13)の両側に形成された入口側吸引スリット(30)及び出口側吸引スリット(31)と、前記入口側及び出口側吸引スリット(30,31)に可動式に設けられ吸引空気の流量を調整するための第1、第2吸引空気調整体(15,15a)とを備え、
前記各吸引空気調整体(15,15a)の移動により前記各吸引スリット(30,31)の開口面積を変化させ、前記各吸引スリット(30,31)の吸引空気の流量を可変とすることを特徴とする熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置。
【請求項2】
前記第1、第2吸引空気調整体(15,15a)は、板体よりなることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置。
【請求項3】
前記第1、第2吸引空気調整体(15,15a)は、網体よりなることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂ストランド用吸引式水切り装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−224788(P2011−224788A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93799(P2010−93799)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】
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