説明

熱可塑性樹脂モノフィラメントおよびその製造方法

【課題】寸法安定性および耐摩擦性に優れた細径の熱可塑性樹脂モノフィラメントを生産性良く製造できる。
【解決手段】糸状に溶融樹脂Aを吐出する吐出口23から冷却水32の水面35までのエアーギャップBを50mm以下にする。溶融樹脂Aを、20℃〜90℃の温度の冷却水32で冷却固化し、紡糸ドラフト率10以上、引取速度80m/min以上および引取張力0.5kg/mm以下の状態で引き取って未延伸糸Cとする。紡糸ドラフト率と延伸倍率との積が85倍以上となる条件で未延伸糸Cを延伸して、糸径100μm以下および糸径斑±7%以下の延伸糸Dとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂モノフィラメントに関するものである。より詳しくは、溶融した熱可塑性樹脂を冷却固化してから延伸する熱可塑性樹脂モノフィラメントの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の熱可塑性樹脂モノフィラメントであるポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリフェニレンサルファイド(PPS)等は、耐熱性、強度、剛性等の優れた特性を有することから、あらゆる産業分野において必要不可欠な材料である。
【0003】
一方、先行技術文献(特許文献1〜4)には、この種の熱可塑性樹脂モノフィラメントおよびその製造方法が開示されている。そして、これら先行技術文献の製造方法では、溶融した熱可塑性樹脂を糸状に押し出してから冷却固化し、必要に応じて延伸させて溶融紡糸している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−285429号公報
【特許文献2】特開2003−278027号公報
【特許文献3】特開平10−183421号公報
【特許文献4】特開平9−111533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、熱可塑性樹脂モノフィラメントの製造方法につき、特に、溶融した熱可塑性樹脂を糸状に吐出して冷却固化してから延伸する際に、紡糸ドラフト率と延伸倍率との積を基準とした出願は見当たらない。また、従来の方法で延伸して得られた熱可塑性樹脂モノフィラメントでは、寸法安定性および耐摩擦性がまだ十分ではない、という問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、寸法安定性および耐摩擦性に優れた熱可塑性樹脂モノフィラメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために、熱可塑性樹脂モノフィラメントの製造方法について鋭意調査した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、請求項1に係る本発明は、糸径が100μm以下で糸径斑が±7%以下の熱可塑性樹脂モノフィラメントの製造方法であって、溶融した熱可塑性樹脂を糸状に吐出する吐出口から、この吐出口から吐出した糸状の溶融した熱可塑性樹脂を通過させる冷却媒体までの間の距離を50mm以下とするとともに、この冷却媒体の温度を20℃〜90℃として、前記糸状の溶融した熱可塑性樹脂を前記冷却媒体にて冷却固化し、紡糸ドラフト率10以上、引取速度80m/min以上および引取張力0.5kg/mm以下の状態で引き取って未延伸糸とし、この未延伸糸を、紡糸ドラフト率と延伸倍率との積を85倍以上とした条件で延伸することを特徴とする熱可塑性樹脂モノフィラメントの製造方法である。
【0008】
ここで、熱可塑性樹脂モノフィラメントは、糸径が100μmより大きい場合には、高密度の織物が得にくく、糸径斑が±7%より大きい場合には、織物等の加工品で目の不揃いや目ずれ等の不具合が発生する。また、熱可塑性樹脂モノフィラメントを製造する際に、吐出口から冷却媒体までの間の距離を50mmより長くした場合には、紡糸ドラフト率を超えると、糸径斑が大きくなる。さらに、冷却媒体の温度を20℃より低くした場合には、熱可塑性樹脂モノフィラメントが偏平になり、真円度が低くなる。また、この冷却媒体の温度を90℃より高くした場合には、溶融した熱可塑性樹脂の冷却固化が遅くなり、熱可塑性樹脂モノフィラメントの表面に荒れが生じる。さらに、紡糸ドラフト率が10より小さい場合には、80m/min以上の引取速度で糸径100μm以下の熱可塑性樹脂モノフィラメントの延伸に適した未延伸糸を生産性良く製造できなくなる。また、引取張力を0.5kg/mmより大きい状態で引き取って未延伸糸とした場合には、この未延伸糸の延伸性が低下し、延伸の際の紡糸ドラフト率と延伸倍率との積を85倍以上にできない。さらに、未延伸糸を延伸する際の引取速度が80m/minより小さい場合には、時間当たりの生産効率が低くなる。また、未延伸糸を延伸する際の紡糸ドラフト率と延伸倍率との積を85倍より小さくした場合には、延伸糸の引張強度を大きくできず、生産効率が低くなる。
【0009】
次いで、請求項2に係る本発明は、糸径100μm以下、糸径斑±7%以下、引張強度3.5cN/dtex以上、30mN荷重での100℃の熱収縮率が0%〜5%、および100mN荷重での100℃の熱収縮率が0%〜3%である熱可塑性樹脂モノフィラメントである。
【0010】
ここで、引張強度が3.5cN/dtexより小さい場合には、加工の際に破断する可能性が大きくなる。また、30mN荷重での100℃の熱収縮率が5%より大きい場合、および100mN荷重での100℃の熱収縮率が3%より大きい場合には、織物加工の際に収縮によって皺や目ずれが発生する。さらに、30mN荷重での100℃の熱収縮率が0%より小さい場合、および100mN荷重での100℃の熱収縮率が0%より小さい場合、すなわち熱膨張する場合には、織物加工の際の膨張によって皺や目ずれが発生する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、寸法安定性および耐摩擦性に優れた熱可塑性樹脂モノフィラメントを製造でき、糸径が100μm以下で糸径斑が±7%以下の熱可塑性樹脂モノフィラメントの寸法安定性および耐摩擦性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態による熱可塑性樹脂モノフィラメントの製造装置を示す概略図である。
【図2】この製造装置の一部を示す概略図である。
【図3】耐摩擦性の測定方法を示す概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の好適な一実施の形態について説明する。なお、この一実施の形態は、本発明に係わる代表的な実施の形態を示したものであり、これによって本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0014】
そして、この一実施の形態では、熱可塑性樹脂モノフィラメントとして、例えば、ポリプロピレン(polypropylene:PP)、ポリフッ化ビニリデン(poly vinylidine fluoride:PVDF)またはポリフェニレンサルファイド(poly phenylene sulfide:PPS)等が挙げられる。また、この熱可塑性樹脂モノフィラメントは、耐摩擦性に優れており、糸径100μm以下、糸径斑±7%以下、引張強度が3.5cN/dtex以上、伸度が5%〜40%、30mN荷重での100℃の熱収縮率が0%〜5%、および100mN荷重での100℃の熱収縮率が0%〜3%の性質を有している。
【0015】
なお、dtex(デシテックス)とは、繊維10000m当たりのグラム(g)数であり、繊維の重さや太さ示す単位である。
【0016】
ここで、この熱可塑性樹脂モノフィラメントは、単層でもよく、二以上の層から構成されていてもよい。このような構成としては、例えば、長手方向に延在する芯部としての芯材と、この芯材の周囲に配置された少なくとも一層からなる鞘部としての鞘材とからなる芯鞘型複合糸等が好ましい。具体的には、芯材および鞘材を構成する樹脂を、異なる性質を有する同種の樹脂、例えばポリプロピレン樹脂とすることもできる。
【0017】
次に、上述した熱可塑性樹脂モノフィラメントの製造方法について説明する。図1には、熱可塑性樹脂モノフィラメントの製造装置10が示されている。図1に示すように、素材となる溶融された熱可塑性樹脂である溶融樹脂Aは、押出機20から、所定の条件で糸状に押し出されて、所定間隔のエアーギャップBを介して冷却バス30の内部へ通過させて冷却固化して未延伸糸Cとされた後、少なくとも1台以上、例えば3台の延伸ロール40および2台の延伸バス50にて少なくとも1段以上、例えば2段に分けて延伸されて、所望する熱可塑性モノフィラメントである延伸糸Dと紡糸されてから巻取機60へと送られて巻き取られる。
【0018】
図2には、溶融樹脂Aを押し出して吐出させる押出機20、およびこの押出機20から押し出された糸状の溶融樹脂Aが通過する冷却バス30の概略が示されている。特に、この図2は、押出機20から押し出された糸状の溶融樹脂Aの冷却バス30に対するエアーギャップBを示す図である。
【0019】
押出機20は、溶融樹脂Aを押し出して糸状に吐出させる押出手段および吐出手段であって、この溶融樹脂Aが通過する円筒状の押出機本体21と、この押出機本体21の一端部である先端部の下面に設けられた口金としての中空円盤状のノズル22とを備えている。このノズル22は、軸方向を上下方向に向けた状態で取り付けられており、このノズル22の平板状の下面に所定の内径寸法としての口径寸法を有する複数の吐出口23が設けられている。そして、押出機20は、ノズル22の各吐出口23から溶融樹脂Aを下方に向けて連続して糸状に吐出させる。
【0020】
次いで、この押出機20のノズル22の各吐出口23に対向した位置に、冷却バス30が設置されている。この冷却バス30は、押出機20の各吐出口23から吐出された糸状の溶融樹脂Aが冷却水32中を連続して通過し、この溶融樹脂Aが冷却水32中を通過する際に冷却固化させる冷却固化手段としての冷却固化装置である。そして、この冷却バス30は、上方が開口した槽状の槽体としての冷却槽31と、この冷却槽31の内部に貯留された冷却媒体としての冷却液である冷却水32と、冷却槽31の内部に設置されこの冷却槽31内の冷却水32を所定の温度に冷却して維持させる冷却手段としての図示しない冷却ユニットと、冷却槽31内に設置され押出機20の吐出口23から吐出された糸状の溶融樹脂Aを冷却槽31内の冷却水32中に導いて通過させる空転ロール33を備えている。
【0021】
そして、冷却槽31は、この冷却槽31の上方の開口部34を、押出機20のノズル22の下面、すなわち各吐出口23に対向させた状態で設置されており、この冷却槽31に貯留された冷却水32の液面である水面35と、押出機20の各吐出口23との間に、所定間隔のエアーギャップBを形成させる。このエアーギャップBは、押出機20の吐出口23と冷却バス30の冷却水32の水面35との間の間隔であって、この押出機20の吐出口23から吐出された糸状の溶融樹脂Aが通過する、冷却バス30の冷却水32に入るまでの間の空気層である。具体的に、このエアーギャップBは、50mm以下、好ましくは20mm以下に設定されている。
【0022】
また、冷却バス30の冷却槽32内に貯留されている冷却水32は、冷却ユニットによって20℃〜90℃、好ましくは30℃〜70℃の温度に冷却されて維持されている。そして、この冷却バス30へ送られた糸状の溶融樹脂Aは、空転ロール33によって送られて、この冷却バス30の冷却槽31内の冷却水32へ入り、この冷却水32中を通過する際に冷却固化されて未延伸糸Cとなる。
【0023】
次いで、この未延伸糸Cは、冷却バス30の下流側に設置された延伸ロール40である引取手段としての引取ロール41によって所定の引取張力および引取速度で引き取られてから、この引取ロール41の下流側に設置された延伸バス50であるオーブンとしての第1の乾熱槽51内へと送られて所定の温度に加熱された後に、この第1の乾熱槽51の下流側に設置された延伸ロール40である延伸手段としての第1の延伸装置42にて所定の倍率に延伸されて延伸糸Dとされる。
【0024】
ここで、引取ロール41は、紡糸ドラフト率10以上、好ましくは15以上にし、80m/min以上の引取速度および0.5kg/mm以下、好ましくは0.3kg/mm以下、さらに好ましくは0.2kg/mm以下の引取張力の状態で、冷却バス30の冷却水32中で冷却固化された溶融樹脂Aを引き取って未延伸糸Cとして下流側へ送る。なお、紡糸ドラフト率とは、未延伸糸Cの引取速度に対する溶融樹脂Aの吐出速度の比:引取速度÷吐出速度であって、ドラフト比ともいわれている。
【0025】
さらに、第1の乾熱槽51および第1の延伸装置42においては、トータル倍率が85倍以上、好ましくは100倍以上の状態で、未延伸糸Cを延伸して、直径である糸径が100μm以下で糸径斑が±7%以下の延伸糸Dとする。ここで、トータル倍率とは、紡糸ドラフト率と延伸倍率との積(紡糸ドラフト率×延伸倍率)をいう。
【0026】
また、必要に応じ、この第1の延伸装置42にて延伸された延伸糸Dは、この第1の延伸装置42の下流側に設置された延伸バス50であるオーブンとしての第2の乾熱槽52内へと送られて所定の温度に加熱された後に、この第2の乾熱槽52の下流側に設置された延伸ロール40である延伸手段としての第2の延伸装置43にて所定の倍率に2段延伸されて延伸糸Dとされる。
【0027】
そして、第1の延伸装置42にて1段延伸された延伸糸D、または第2の延伸装置43にて2段延伸された延伸糸Dは、巻取機60へと送られて、複数、例えば3本の管状スプール61に順次巻き取られる。
【0028】
ここで、この延伸糸Dの延伸については、未延伸糸Cの紡糸後に連続して行ってもよく、また、この未延伸糸Cを図示しない巻取ロール等にて巻き取った後に、この未延伸糸Cを別工程で延伸してもよい。さらに、この未延伸糸Cの延伸の後に熱処理して緩和処理等することもできる。
【0029】
上述した一実施の形態の製造方法によれば、製造される延伸糸Dの糸径が100μmより大きい場合には、高密度の織物を得にくくなる。また、この延伸糸Dの糸径斑が±7%より大きい場合には、織物等の加工品において目の不揃いや目ずれ等の不具合が発生するおそれがある。さらに、この延伸糸Dを製造方法する際に、エアーギャップを50mmより長くした場合には、紡糸ドラフト率を超えると、糸径斑が大きくなってしまう。
【0030】
また、冷却バス30内の冷却水32の温度を20℃より低くした場合には、製造される延伸糸Dが偏平になり、真円度が低くなるため、織物等の加工品にした際に目の不揃い等の不具合が発生してしまう。さらに、この冷却水32の温度を90℃より高くした場合には、この冷却水32の通過による溶融樹脂Aの冷却固化が遅くなり、この溶融樹脂Aが半溶融状態で図示しない糸ガイド等を通過する際に変形するおそれがあり、この溶融樹脂Aが冷却水32中に入る際に、この冷却水32に沸騰が発生するおそれがあるから、未延伸糸Cまたは延伸糸Dの表面に荒れが生じてしまう。
【0031】
さらに、未延伸糸Cを延伸する際の紡糸ドラフト率が10より低い場合には、80m/min以上の高速の引取速度で糸径100μm以下の延伸に適し、織物等の加工に適した延伸糸Dを得ることができる未延伸糸Cを生産性良く製造できなくなってしまう。また、冷却バス30にて冷却固化される溶融樹脂Aを0.5kg/mmより大きい引取張力で引き取って未延伸糸Cとした場合には、この未延伸糸Cの延伸性が低くなるから、この未延伸糸Cを延伸する際のトータル倍率を85倍以上にできなくなってしまう。特に、この未延伸糸Cを延伸する際のトータル倍率を85倍より小さくした場合には、延伸糸Dの引張強度を大きくできなくなり、生産効率が低下してしまう。
【0032】
そこで、上述のように、糸径が100μm以下で糸径斑が±7%以下の熱可塑性樹脂モノフィラメントである延伸糸Dを製造する際に、溶融樹脂Aの吐出口23から冷却バス30内の冷却水32の水面35までのエアーギャップBを50mm以下(好ましくは20mm以下)とし、この冷却水32の温度を20℃〜90℃(好ましくは30℃〜70℃)として、溶融樹脂Aを冷却固化し、紡糸ドラフト率10以上(好ましくは15以上)、引取速度80m/min以上および引取張力0.5kg/mm以下(好ましくは0.3kg/mm以下、さらに好ましくは0.2kg/mm以下)の状態で引き取って未延伸糸Cとしてから、この未延伸糸Cをトータル倍率85倍以上(好ましくは100倍以上)の条件で延伸する。この結果、糸径100μm以下、糸径斑±7%以下、引張強度が3.5cN/dtex以上、30mN荷重での100℃の熱収縮率が0%〜5%(好ましくは0%〜3.5%)、および100mN荷重での100℃の熱収縮率が0%〜3%(好ましくは0.5%〜2%)の性質を有する延伸糸Dを製造できる。よって、結晶化度が高く、強度、糸径斑、熱収縮等の品質の良い100μm以下の細径モノフィラメントの延伸糸Dを生産性良く製造できる。
【0033】
ここで、この延伸糸Dの引張強度が3.5cN/dtexより小さい場合には、織物加工の際に、延伸糸Dが破断等するトラブルが発生する可能性が大きくなる。特に、この延伸糸Dの用途によっては、織物にした際の強度が不十分となってしまう。また、この延伸糸Dの30mN荷重での100℃の熱収縮率が5%より大きい場合や、100mN荷重での100℃の熱収縮率が3%より大きい場合には、この延伸糸Dを織物加工した際に、この延伸糸D自体の収縮によって、織物に皺や目ずれ等の問題が発生するおそれがある。さらに、この延伸糸Dの30mN荷重での100℃の熱収縮率が0%より小さい場合や、100mN荷重での100℃の熱収縮率が0%より小さい場合、すなわち熱膨張する場合には、この延伸糸Dを織物加工する際に、この延伸糸D自体の膨張によって、織物に皺や目ずれが発生するおそれがあるとともに、熱膨張によって伸びた延伸糸Dがループ状になって織物の表面から飛び出してしまうおそれがある。
【0034】
具体的に、この延伸糸Dは、この延伸糸Dの表面を構成する表層部であるスキン層が高結晶化度および高配向となる。すなわち、この延伸糸Dは、TMA(Thermo Mechanical Analyzer:熱機械測定)による100℃周辺の熱膨張率が低く非晶部が少ないことから、結晶化度が高い。また、10以上の紡糸ドラフト率で80m/min以上の引取速度で未延伸糸Cを引き取っていることから、延伸糸Dの表層部に高結晶化度および高配向の構造が形成される。
【0035】
そして、この延伸糸Dは、結晶化度が高いことから、融点(Tm)より十分低い温度において、熱収縮は非晶部の収縮に起因する収縮が主となるため、強度を発現するために十分に延伸して分子配向させたとしても、非晶部で収縮は生じるが結晶部での収縮がほとんど生じなくなり、熱収縮率が小さくなる。また、非晶部は、常温以上になると柔らかくなるため、荷重が大きくなると収縮ではなく荷重の重さで伸びてしまう。これに対し、結晶部である表層部の結晶化度が高い場合には、非晶部の伸びを結晶部が抑えることとなり、結果的に伸びを抑えることとなるから、伸びも小さく、熱収縮率も小さくなる。特に、結晶化度の高い表層部を有する場合には、この表層部全体で伸びを抑えることとなるから、伸びを抑える効果は大きい。
【0036】
よって、高結晶化度および高配向の結晶部を多く含むスキン層が延伸糸Dの表層に形成されるため、100℃付近の高温においても熱安定性、すなわち寸法安定性が良い。このため、この延伸糸Dを用いて織物等を加工する際に、織物性能として品質の良い高密度の織物等の加工品を製造できる。同時に、延伸糸Dの表層部に結晶化度の高いスキン層が形成されるため、荷重下での耐摩擦性に優れた延伸糸Dとなるから、織物加工時に、糸切れが発生しにくく、加工の際に発生する糸の削れによるトラブルの発生を少なくできる。したがって、寸法安定性および耐摩擦性に優れた延伸糸Dを生産性良く製造でき、この延伸糸Dを用いることによって、織物加工が容易になり、品質の良い織物を得ることができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、本実施例等において得られた未延伸糸Cおよび延伸糸Dの引張強度・伸度、インヘレント粘度、熱収縮率、糸径、糸径斑、偏平率および耐摩擦性は、下記の方法により測定または評価した。
【0038】
(1)引張強度・伸度
JIS L1013に準じて、測定対象である未延伸糸Cまたは延伸糸Dについて、長さ300mm、引張速度300mm/min、測定数5の条件で、引張強度[cN/dtex]および伸度[%]をそれぞれ測定した。
【0039】
(2)インヘレント粘度(ηinh
測定対象である未延伸糸Cまたは延伸糸Dを、N,N−ジメチルホルムアミド(N,N‐Dimethyl formamide)の溶媒に、0.4g/dlの濃度で溶解させて溶液をつくり、この溶液の30℃における粘度を、日本ジェネティクス(株)製Ubbelohde粘度計(Ubbelohde Viscometers, Calibrated)を用いて溶液粘度を測定してから、この溶液粘度と同じ温度での溶媒粘度との比である相対粘度(η)の自然対数(Inη)に、濃度の逆数(1/0.4)g/dlを掛けてインヘレント粘度(ηinh)を測定した。
【0040】
(3)熱収縮率
TMA(Thermo Mechanical Analyzer:熱機械測定)装置にて、荷重30mNおよび荷重100mNにおける100℃での熱収縮率[%]をそれぞれ測定した。
【0041】
(4)糸径
(株)キーエンス製レーザー外径測定器を用い、測定間隔6mm、測定長980mの条件で、糸径[μm]を測定した。
【0042】
(5)糸径斑
測定した糸径の最大値(DMAX)および最小値(DMIN)のそれぞれを、測定した糸径の平均値(D)で割って百分率[%]で算出した。
【0043】
(6)偏平率
測定対象となる未延伸糸Cまたは延伸糸Dの断面の外径の長径(最大値)と短径(最小値)とのそれぞれを、ソニー(株)製マイクロメーター「M−30」を用いて測定し、これら長径および短径の平均値をDとし、式:偏平率={(長径−短径)/D}×100 を用いて偏平率[%]を算出した。
【0044】
(7)耐摩擦性
図4に示すように、テスター産業(株)製の学振型改良摩擦試験機71に、評価対象となる延伸糸Dの一端を固定し、この延伸糸Dの他端側に錘72を固定して荷重を掛けた状態で、1000メッシュ(♯1000)のサンドペーパー73で外周を覆った外径寸法100mmの細長円柱状の丸棒74上を、100mm/minの速度で延伸糸Dを長さ方向Eに沿って往復運動させて、この延伸糸Dが切断されるまでの回数を測定して耐摩擦性[回]を評価した。
【0045】
実施例1
素材となる熱可塑性樹脂として、日本ポリプロ(株)製ポリプロピレン樹脂MFR5g/10min「FY4」を用い、このポリプロピレン樹脂を260℃に加熱して溶融させて溶融樹脂Aとし、内径寸法(Φ)35mmの押出機本体21を有する押出機20のノズル22の口径寸法(Φ)0.8mmの吐出口23から3.2g/minの吐出速度で溶融樹脂Aを糸状に吐出させ、紡糸ドラフト率16で、20mmのエアーギャップBを通過させて30℃の冷却水32にて冷却固化し、引取張力0.2kg/mmで引取速度135m/minで引き取って、糸径200μm及び糸径斑±5%の未延伸糸Cとした。
【0046】
そして、この未延伸糸Cを150℃の温度の第1の乾熱槽51および第1の延伸装置42で6.25倍の倍率(トータル倍率:100倍)に延伸したところ、糸径80μm、糸径斑±5%、引張強度5.0cN/dtex、伸度21%、荷重30mNでの100℃の熱収縮率が2.2%、荷重100mNでの100℃の熱収縮率が0.3%、荷重10.5kg/mmでの耐摩擦性130回、および荷重21kg/mmでの耐摩擦性30回の延伸糸Dとなった。この延伸糸Dは、荷重下でも熱収縮率の変化が小さく寸法安定性が良く、かつ耐摩擦性に優れていることから、織物等の加工に適したモノフィラメントである。
【0047】
なお、MFR(melt flow rate:メルトフローレート)とは、荷重5kgで測定した10分当たりの流出量で示される値[単位:g/10min]である。
【0048】
実施例2
素材となる熱可塑性樹脂として、芯材にポリプロピレン樹脂MFR5g/10min、および鞘材にポリプロピレン樹脂MFR6.5g/10minを用い、芯鞘複合比率:芯材/鞘材=60/40(Vol比:体積比)の芯鞘型複合糸を、それぞれ内径寸法(Φ)35mmの押出機本体21を有する芯材用および鞘材用の2台の押出機20の各ノズル22の口径寸法(Φ)0.8mmの吐出口23から2.3g/minの吐出速度(芯材の吐出速度:1.4g/min、鞘材の吐出速度:0.9g/min)で各溶融樹脂Aをそれぞれ吐出させ、紡糸ドラフト率16で、8mmのエアーギャップBを通過させて30℃の冷却水32にて冷却固化し、引取張力0.2kg/mmで引取速度90m/minで引き取って、糸径200μm及び糸径斑±4%の芯鞘型の未延伸糸Cとした。
【0049】
そして、この未延伸糸Cを、133℃の温度の第1の乾熱槽51および第1の延伸装置42で5.7倍の倍率に延伸してから、さらに145℃の温度の第2の乾熱槽および第2の延伸装置43で1.1倍の倍率に2段延伸(トータル倍率:100.32倍)したところ、糸径82μm、糸径斑±4%、引張強度7.0cN/dtex、伸度25%、30mN荷重での100℃の熱収縮率が3.2%、100mN荷重での100℃の熱収縮率が1.9%、荷重10.5kg/mmでの耐摩擦性138回、および荷重21kg/mmでの耐摩擦性32回の延伸糸Dとなった。この延伸糸Dもまた、荷重下でも熱収縮率の変化が小さく寸法安定性が良く、かつ耐摩擦性に優れていることから、織物等の加工に適したモノフィラメントである。
【0050】
実施例3
引取速度を300m/min、紡糸ドラフト率を42にした以外は、実施例1と同様にして、糸径123μm、糸径斑±3%の未延伸糸Cを作製した。
【0051】
そして、この未延伸糸Cを、135℃の温度の第1の乾熱槽51および第1の延伸装置42で3.0倍の倍率に1段延伸してから、さらに140℃の温度の第2の乾熱槽および第2の延伸装置43で1.4倍の倍率に2段延伸(トータル倍率:176.4倍)したところ、糸径60μm、糸径斑±3.5%、引張強度5.0cN/dtex、伸度27%、30mN荷重での100℃の熱収縮率が2.4%、100mN荷重での100℃の熱収縮率が0.3%、荷重10.5kg/mmでの耐摩擦性135回、および荷重21kg/mmでの耐摩擦性32回の延伸糸Dとなった。この延伸糸Dもまた、荷重下でも熱収縮率の変化が小さく寸法安定性が良く、かつ耐摩擦性に優れていることから、織物等の加工に適したモノフィラメントである。
【0052】
実施例4
素材となる熱可塑性樹脂として、(株)クレハ製のインヘレント粘度(ηinh)1.0のポリフッ化ビニリデンを用いた以外は、実施例3と同様にして、糸径125μm、糸径斑±3%の未延伸糸Cを作製した。
【0053】
そして、この未延伸糸Cを、170℃の温度の第1の乾熱槽51および第1の延伸装置42で3.5倍の倍率に1段延伸してから、さらに175℃の温度の第2の乾熱槽および第2の延伸装置43で1.05倍に2段延伸(トータル倍率:154.35倍)したところ、糸径65μm、糸径斑±3.0%、引張強度4.8cN/dtex、伸度27%、30mN荷重での100℃の熱収縮率が2.3%、100mN荷重での100℃の熱収縮率が1.0%、荷重10.5kg/mmでの耐摩擦性158回、および荷重21kg/mmでの耐摩擦性45回の延伸糸Dとなった。この延伸糸Dもまた、荷重下でも熱収縮率の変化が小さく寸法安定性が良く、かつ耐摩擦性に優れていることから、織物等の加工に適したモノフィラメントである。
【0054】
実施例5
素材となる熱可塑性樹脂として、(株)クレハ製の温度310℃および剪断速度1200sec−1での溶融粘度が1500ポイズ[P](=150Ns/m)のポリフェニレンサルファイドを用い、この熱可塑性樹脂を310℃に加熱して溶融させて溶融樹脂Aとし、紡糸ドラフト率を25、冷却水の温度を80℃とした以外は、実施例1と同様にして、糸径160μm、糸径斑±5%の未延伸糸Cを作製した。
【0055】
そして、この未延伸糸Cを、沸騰水を用いた延伸バス50および第1の延伸装置42にて3.5倍の倍率に1段延伸してから、さらに150℃の温度の第2の乾熱槽51および第2の延伸装置43で1.2倍の倍率に2段延伸した後、230℃の温度の図示しない第3の乾熱槽および第3の延伸装置にて2%の緩和熱処理(トータル倍率:102.9倍)をして延伸糸Dとした。この結果、この延伸糸Dは、糸径81μm、糸径斑±5%、引張強度4.3cN/dtex、伸度28%、30mN荷重での100℃の熱収縮率が1.5%、100mN荷重での100℃の熱収縮率が0.1%、荷重10.5kg/mmでの耐摩擦性239回、および荷重21kg/mmでの耐摩擦性113回であった。したがって、この延伸糸Dもまた、荷重下でも熱収縮率の変化が小さく寸法安定性が良く、かつ耐摩擦性に優れていることから、織物等の加工に適したモノフィラメントである。
【0056】
比較例1
エアーギャップBを150mmとした以外は、実施例1と同様にして、未延伸糸Cを作製した。この未延伸糸Cは、糸径斑が±15%と大きかった。そして、この未延伸糸Cを、実施例1と同様にして延伸したところ、この未延伸糸Cの細い部分で糸切れが発生し延伸できなかった。
【0057】
比較例2
未延伸糸Cの引取張力を0.65kg/mmとした以外は、実施例1と同様にして、紡糸および延伸をしたところ、延伸の際に倍率が十分に上がらず、3.5倍の段階で糸切れが発生した。また、この延伸時の引張強度は2.3cN/dtexと低い値であった。
【0058】
比較例3
冷却水32の温度を7℃とした以外は、実施例1と同様にして、延伸糸Dを作製した。この延伸糸Dは、偏平が激しく真円度が低く、荷重10.5kg/mmでの耐摩擦性が41回、および荷重21kg/mmでの耐摩擦性が4回あり、織物等の加工において糸切れや織り目の不揃い等の問題が発生した。
【0059】
比較例4
エアーギャップBを190mm、紡糸ドラフト率を9、ノズル22からの溶融樹脂Aの吐出量を0.53g/min、および未延伸糸Cの引取速度を18m/minとした(トータル倍率:56.43倍)以外は、実施例2と同様にして、延伸糸Dを作製した。この延伸糸Dは、糸径82μmおよび糸径斑±9%であり、糸径斑が大きく、織物に加工した際に、糸径斑が原因の織り目の不揃いが発生した。
【0060】
比較例5
紡糸ドラフト率を9、ノズル22からの溶融樹脂Aの吐出量を0.53g/min、および未延伸糸Cの引取速度を18m/minとした(トータル倍率:56.43倍)以外は、実施例2と同様にして、延伸糸Dを作製した。この延伸糸Dは、糸径81μm、糸径斑±4%、引張強度4.3cN/dtex、伸度46%、30mN荷重での100℃の熱収縮率が2.4%、100mN荷重での100℃の熱収縮率が−1.2%(1.2%の熱膨張、すなわち熱膨張率が1.2%)、荷重10.5kg/mmでの耐摩擦性が68回、および荷重21kg/mmでの耐摩擦性が1回であった。よって、この延伸糸Dは、荷重が大きくなると膨張が大きくなることから、寸法安定性および耐摩擦性が低く、織物加工において糸切れが発生しやすく、織物において目ずれや皺等が発生した。
【0061】
比較例6
紡糸ドラフト率を9、ノズル22からの溶融樹脂Aの吐出量を0.6g/min、未延伸糸Cの引取速度を18m/min、1段延伸倍率を7.0倍、および2段延伸倍率を1.1倍とした(トータル倍率:69.3倍)以外は、実施例2と同様にして、延伸糸Dを作製した。この延伸糸Dは、糸径82μm、糸径斑±4%、引張強度5.9cN/dtex、伸度25%、30mN荷重での100℃の熱収縮率が5.4%、100mN荷重での100℃の熱収縮率が−1.0%(1.0%の熱膨張、すなわち熱膨張率が1.0%)、荷重10.5kg/mmでの耐摩擦性が49回、および荷重21kg/mmでの耐摩擦性が5回であった。よって、この延伸糸Dは、熱収縮率が高く、荷重下での熱吸収率の変化が大きいことから、寸法安定性および耐摩擦性が低く、織物等の加工において糸切れが発生しやすく、織物において目ずれや皺等が発生した。
【0062】
以上の結果、実施例1−6では、糸径が100μm以下で糸径斑が±7%以下の延伸糸Dを製造する際に、エアーギャップBを50mm以下(好ましくは20mm以下)としつつ冷却水32の温度を20℃〜90℃(好ましくは30℃〜70℃)として溶融樹脂Aを冷却固化し、紡糸ドラフト率10以上(好ましくは15以上)、引取速度80m/min以上および引取張力0.5kg/mm以下(好ましくは0.3kg/mm以下、さらに好ましくは0.2kg/mm以下)の状態で引き取って未延伸糸Cとしてから、この未延伸糸Cをトータル倍率85倍以上(好ましくは100倍以上)の条件で延伸することによって、糸径100μm以下、糸径斑±7%以下、引張強度が3.5cN/dtex以上、30mN荷重での100℃の熱収縮率が0%〜5%(好ましくは0%〜3.5%)、および100mN荷重での100℃の熱収縮率が0%〜3%(好ましくは0.5%〜2%)の織物の加工に適した性質を有する延伸糸Dを生産性良く製造できる。
【0063】
これに対し、比較例1では、エアーギャップBを50mmより大きい150mmとした場合に、未延伸糸Cの糸径斑が±15%と大きくなり、この未延伸糸Cを延伸した際に細い部分で糸切れが発生した。
【0064】
また、比較例2では、未延伸糸Cの引取張力を0.5kg/mmより大きい0.65kg/mmとした場合に、延伸の際に倍率が十分に上がらず糸切れが発生し、延伸時の引張強度が2.3cN/dtexと低い値であった。
【0065】
さらに、比較例3では、冷却水32の温度を20℃より低い7℃とした場合に、延伸糸Dの偏平が激しく真円度が低く耐摩擦性が低くなり、織物等の加工において糸切れや織り目の不揃い等が発生した。
【0066】
次いで、比較例4では、エアーギャップBを50mmより大きい190mmとし、紡糸ドラフト率を10より低い9とし、未延伸糸Cの引取速度を80m/minより遅い18m/minとし、およびトータル倍率を85倍より低い56.43倍とした場合に、延伸糸Dの糸径斑が±9%と大きくなり、織物に加工した際に糸径斑が原因の織り目の不揃いが発生した。
【0067】
また、比較例5では、紡糸ドラフト率を10より低い9とし、未延伸糸Cの引取速度を80m/minより遅い18m/minとし、トータル倍率を85倍より低い56.43倍とした場合に、延伸糸Dの伸度が40%より高い46%となり、かつ100mN荷重での100℃の熱収縮率が0%より低い−1.2%となったため、荷重が大きくなると膨張が大きくなり、寸法安定性および耐摩擦性が低く、織物加工において糸切れが発生しやすく、織物において目ずれや皺等が発生した。
【0068】
さらに、比較例6では、紡糸ドラフト率を10より低い9とし、未延伸糸Cの引取速度を80m/minより遅い18m/minとし、トータル倍率を85倍より低い69.3倍とした場合に、延伸糸Dの30mN荷重での100℃の熱収縮率が5%より高い5.4%となるとともに、100mN荷重での100℃の熱収縮率が0%より低い−1.0%となり、荷重10.5kg/mmでの耐摩擦性が49回および荷重21kg/mmでの耐摩擦性が5回と低かったため、熱収縮率が高く、荷重下での熱吸収率の変化が大きいことから、寸法安定性および耐摩擦性が低く、織物等の加工において糸切れが発生しやすく、織物において目ずれや皺等が発生した。
【符号の説明】
【0069】
10 熱可塑性樹脂モノフィラメントの製造装置
20 押出機
21 押出機本体
22 ノズル
23 吐出口
30 冷却バス
31 冷却槽
32 冷却水
33 空転ロール
34 開口部
35 水面
40 延伸ロール
41 引取ロール
42 第1の延伸装置
43 第2の延伸装置
50 延伸バス
51 第1の乾熱槽
52 第2の乾熱槽
60 巻取機
61 管状スプール
71 学振型改良摩擦試験機
72 錘
73 サンドペーパー
74 丸棒
A 溶融樹脂
B エアーギャップ
C 未延伸糸
D 延伸糸
E 長さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸径が100μm以下で糸径斑が±7%以下の熱可塑性樹脂モノフィラメントの製造方法であって、
溶融した熱可塑性樹脂を糸状に吐出する吐出口から、この吐出口から吐出した糸状の溶融した熱可塑性樹脂を通過させる冷却媒体までの間の距離を50mm以下とするとともに、この冷却媒体の温度を20℃〜90℃として、前記糸状の溶融した熱可塑性樹脂を前記冷却媒体にて冷却固化し、紡糸ドラフト率10以上、引取速度80m/min以上および引取張力0.5kg/mm以下の状態で引き取って未延伸糸とし、
この未延伸糸を、紡糸ドラフト率と延伸倍率との積を85倍以上とした条件で延伸する、
ことを特徴とする熱可塑性樹脂モノフィラメントの製造方法。
【請求項2】
糸径100μm以下、糸径斑±7%以下、引張強度3.5cN/dtex以上、30mN荷重での100℃の熱収縮率が0%〜5%、および100mN荷重での100℃の熱収縮率が0%〜3%である熱可塑性樹脂モノフィラメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−163720(P2010−163720A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8386(P2009−8386)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(390009830)クレハ合繊株式会社 (8)
【Fターム(参考)】