説明

熱可塑性樹脂組成物および成形体

【課題】 層状化合物の二次凝集を防ぎ、熱可塑性樹脂に微分散させる事により、物性バランスに優れる成形体と該成形体を得るための熱可塑性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 非イオン性化合物で処理された層状化合物と熱可塑性樹脂を前記非イオン性化合物が分解あるいは脱離する温度以下であらかじめ溶融して樹脂組成物を得、該樹脂組成物をさらに別種あるいは同種の熱可塑性樹脂で希釈して製造することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂に非イオン性化合物で処理された層状化合物が微分散している熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、層状ケイ酸塩等に代表される層状化合物を有機ポリマー中に無機フィラーとして薄片を均一に分散させることで、有機高分子材料の機械的特性、耐熱性、ガスバリア性等の性質を少量の添加で改善させることが行われている。従来技術として、層状ケイ酸塩の層間に有機オニウムイオンを挿入して有機化した層状ケイ酸塩と官能基を有する変性ポリマーとを溶融混練して複合化する方法が開発されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、有機ポリマー中での層状化合物の二次凝集を防ぐ方法として層状ケイ酸塩層間でモノマーを重合させる方法や、変性ポリオレフィンと有機カチオン処理された層状珪酸塩とを溶融混練することで層状珪酸塩が分子レベルで分散した樹脂組成物を得、それをポリオレフィン樹脂に添加する方法が開発された(例えば、特許文献2、3)。
【0004】
しかしながら、有機カチオンで処理された層状化合物は熱変色や可塑剤的効果による耐熱性の低下といった問題があった。また非イオン性化合物で処理し層間を拡大させた層状化合物を有機ポリマーと溶融混練して複合化する方法が開発されているが、高温となる溶融混練過程で二次凝集する傾向があるため、分散性の点においてはまだ改善の余地がある(例えば、特許文献4)。
【特許文献1】特開平11−92594号公報
【特許文献2】特開昭62−74957号公報
【特許文献3】特開2000―281841
【特許文献4】特開平10−259016
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、層状化合物の二次凝集を防ぎ、熱可塑性樹脂に微分散させる事により、物性バランスに優れる成形体と該成形体を得るための熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、層状化合物を熱可塑性樹脂に微分散させた熱可塑性樹脂組成物に関するものであって非イオン性化合物で処理された層状化合物と熱可塑性樹脂の混合物を前記非イオン性化合物が分解あるいは脱離する温度以下であらかじめ溶融して樹脂組成物を得、該樹脂組成物をさらに別種あるいは同種の熱可塑性樹脂で希釈して製造することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である(請求項1)。
【0007】
さらに本発明は、非イオン性化合物で処理された層状化合物と熱可塑性樹脂の混合物を前記非イオン性化合物が分解あるいは脱離する温度以下であらかじめ溶融して樹脂組成物を得、該樹脂組成物をさらに別種あるいは同種の熱可塑性樹脂で希釈する際に、前記樹脂組成物を得る際の溶融温度を超える温度で溶融することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である(請求項2)。
【0008】
さらに本発明は、層状化合物が層状ケイ酸塩である請求項1または2記載の熱可塑性樹脂組成物である(請求項3)。
【0009】
さらに本発明は、前記非イオン性化合物がポリエーテル化合物から選ばれることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物である(請求項4)。
【0010】
さらに本発明は、希釈する熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれる1種または2種以上の樹脂であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物である(請求項5)。
【0011】
さらに本発明は、請求項1〜5いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物から得られる層状化合物の底面間隔が35Å以上である成形体である(請求項6)。
【発明の効果】
【0012】
非イオン性化合物で処理された層状化合物と熱可塑性樹脂を前記非イオン化合物が分解あるいは脱離する温度以下であらかじめ溶融して樹脂組成物を得、該樹脂組成物をさらに別種あるいは同種の熱可塑性樹脂で希釈して製造することによって、層状化合物が二次凝集することなく、均一分散し、曲げ弾性率や熱安定性、ガスバリア性に優れた熱可塑性樹脂組成物および成形体が提供される。本発明では、ガラス繊維などの繊維状強化材を用いずとも機械的特性を改善できるため、樹脂のリサイクル性に優れるなど循環型社会に適合した組成物を得ることができ、工業的にも非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂とは、任意の熱可塑性樹脂を使用しうる。熱可塑性樹脂の例としては、例えば、アクリル系樹脂、ハロゲン化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エラストマー、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂、ゴムなど及び、それらの共重合樹脂があげられる。これらの熱可塑性樹脂は1種で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
熱可塑性樹脂の中では、ポリオレフィン系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂およびポリアミド系樹脂が好ましい。
【0015】
前記ポリオレフィン系樹脂には特に限定はなく、公知のポリオレフィン系樹脂を使用することができる。その具体例としては、エチレンを含むα―オレフィンの単独重合体、2種以上のα―オレフィンの共重合体(ランダム、ブロック、グラフトなど、いずれの共重合体も含み、これらの混合物であってもよい)、オレフィン系エラストマーがあげられる。エチレン単独重合体としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)および線状低密度ポリエチレン(LLDPE)などを用いることができる。
【0016】
プロピレン重合体としては、プロピレン単独重合体に限られず、プロピレンとエチレンとの共重合体も含まれる。前記オレフィン系エラストマーとは、エチレンと、1種以上のエチレン以外のα−オレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなど)との共重合体を意味し、具体例としては、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレンブテン共重合体(EBR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)などが挙げられる。
【0017】
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また層状化合物の分散性を向上するため酸変性ポリプロピレン系樹脂等の極性基を含有する樹脂も適宜使用される。酸変性ポリプロピレン系樹脂は上記層状化合物との親和性を改善することが出来れば、特に限定されず、例えば、無水マレイン酸変性プロピレンオリゴマー、プロピレン−アクリル酸共重合体等の酸変性ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。上記酸変性ポリプロピレン系樹脂の含有量はポリプロピレン系樹脂100重量部に対して1〜50重量部であることが好ましい。
【0018】
前記芳香族ビニル系樹脂とは、芳香族ビニル系単量体を重合して得られる重合体、あるいは芳香族ビニル系単量体及びこれと共重合可能な他のビニル系単量体を共重合して得られる共重合体である。
【0019】
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン、およびジビニルベンゼン、等が挙げられる。これらのなかでも、反応の容易さや入手の容易さ等から、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましく用いられる。これらは1種単独、あるいは2種以上併用して用いられる。
【0020】
芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、およびアクリル酸ステアリル等が、不飽和ニトリル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、等が、マレイミド化合物としてはマレイミド、N−メチルマレイミド、N―エチルマレイミド、N―フェニルマレイミド、N―シクロヘキシルマレイミド、等が、その他のビニルモノマーとしては、アクリルアミド、酢酸ビニル、等が挙げられる。これらは単独または2種以上組み合わせて用いられる。
【0021】
耐衝撃性を必要とする場合には、芳香族ビニル系樹脂として、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル系単量体、又は芳香族ビニル系単量体およびこれらと共重合可能な単量体の混合物を重合してなるグラフト共重合体を、一部または全部用いるのが好ましい。
【0022】
ゴム状重合体としては、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルーブタジエンゴム(NBR)、ブチルアクリレート−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、等が挙げられる。ゴム状重合体および化合物は、単独または2種以上併用して用いられる。各成分中のゴム状重合体の量には特に制限はないが、熱可塑性組成物全体中のゴム状重合体の割合は、70重量部以下となる事が好ましい。熱可塑性樹脂組成物中のゴム状重合体量が70重量部を越えると、成形加工が困難となる。
【0023】
耐衝撃性を必要とする場合には上記のような方法以外に、芳香族ビニル系樹脂として、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーを用いても良い。
【0024】
芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーとは、一般的には、芳香族ビニル系化合物と共役ジエン系化合物とのブロック共重合体である。共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、等が用いられる。ブロックの状態としては、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、マルチブロック共重合体、ラジアルブロック共重合体、等が挙げられ、これらのブロック共重合体のいずれを用いても良い。
【0025】
芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー中の芳香族ビニル化合物単体の含有率は特に限定されないが、得られる樹脂組成物の成形性及び機械的特性の点から、好ましくは5〜70重量%であり、より好ましくは10〜50重量%である。
また、概芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーとして、ブロック共重合体の共役ジエン部分を水素添加することによって、主鎖中の二重結合を部分的に又は全て飽和化させた共重合体も用いることができる。
【0026】
芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーの好ましい例としては、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリイソブチレン共重合体、等が挙げられる。
芳香族ビニル系樹脂中に層状化合物をより細かく微分散させるためには、芳香族ビニル系樹脂の一部又は全部が、反応性を有する官能基を持つ変性芳香族ビニル系樹脂である事が好ましい。
【0027】
反応性を有する官能基を持つ変性芳香族ビニル系樹脂の製造方法としては、官能基を有するビニル系単量体を共重合する方法、芳香族ビニル系樹脂を化学反応により変性し官能基を付与する方法、等が挙げられる。
【0028】
官能基を有するビニル系単量体としては、種々のものを用いることができる。例えば、エポキシ基含有不飽和化合物としては、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が、アミノ基含有不飽和化合物としては、アクリルアミン、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル、アミノスチレン等が、水酸機含有不飽和化合物としては、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等が、オキサゾリン基含有不飽和化合物としてはビニルオキサゾリン等が、不飽和酸化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等が、不飽和カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは単独または2種以上組み合わせて用いられる。
【0029】
芳香族ビニル系樹脂を化学反応により変性し官能基を付与する方法としては、高分子鎖中の二重結合を過酢酸等によりエポキシ化し、エポキシ変性芳香族ビニル系樹脂を得る方法、等が挙げられる。
【0030】
芳香族ビニル系樹脂の一部又は全部が、反応性を有する官能基を持つ変性芳香族ビニル系樹脂である場合、反応性を有する官能基がカルボン酸および/またはその無水物であることが、層状化合物を容易に細かく微分散させることができるため好ましい。
【0031】
本発明に用いられる芳香族ビニル系樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、単量体成分を、公知の重合法である乳化重合、溶液重合、懸濁重合、塊状重合、塊状懸濁重合、等の方法にて重合して得られる。この際の単量体成分の配合比には特に制限は無く、用途に応じて各成分が適宜配合される。
【0032】
前記熱可塑性ポエステル樹脂としては、ジカルボン酸化合物および(または)ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、およびジオール化合物および(または)ジオール化合物のエステル形成性誘導体を重合させてなる従来公知の任意のポリエステル樹脂があげられる。
【0033】
その具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン−1,4―ジメチルテレフタレート、ネオペンチルテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレートなど、またはこれらの共重合ポリエステルをあげることができる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
前記ポリアミド樹脂にはとくに限定はなく、公知のポリアミド樹脂を使用することができる。その具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカミド(ナイロン11)、ポリドデカミド(ナイロン12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタラミド(TMHT)、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ナイロン6I)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリウンデカメチレンテレフタラミド(ナイロン11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ナイロン11TH)、およびこれらの共重合体をあげることができる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本発明で用いられる希釈熱可塑性樹脂とは、任意の熱可塑性樹脂を使用しうる。熱可塑性樹脂の例としては、例えば、アクリル系樹脂、ハロゲン化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エラストマー、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂、ゴムなど及び、それらの共重合樹脂があげられる。これらの熱可塑性樹脂は1種で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
熱可塑性樹脂の中では、ポリオレフィン系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂およびポリアミド系樹脂が好ましい。
【0037】
前記ポリオレフィン系樹脂には特に限定はなく、公知のポリオレフィン系樹脂を使用することができる。その具体例としては、エチレンを含むα―オレフィンの単独重合体、2種以上のα―オレフィンの共重合体(ランダム、ブロック、グラフトなど、いずれの共重合体も含み、これらの混合物であってもよい)、オレフィン系エラストマーがあげられる。エチレン単独重合体としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)および線状低密度ポリエチレン(LLDPE)などを用いることができる。
【0038】
プロピレン重合体としては、プロピレン単独重合体に限られず、プロピレンとエチレンとの共重合体も含まれる。前記オレフィン系エラストマーとは、エチレンと、1種以上のエチレン以外のα−オレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなど)との共重合体を意味し、具体例としては、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレンブテン共重合体(EBR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また層状化合物の分散性を向上するため酸変性ポリプロピレン系樹脂等の極性基を含有する樹脂も適宜使用される。
【0039】
酸変性ポリプロピレン系樹脂は上記層状化合物との親和性を改善することが出来れば、特に限定されず、例えば、無水マレイン酸変性プロピレンオリゴマー、プロピレン−アクリル酸共重合体等の酸変性ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。上記酸変性ポリプロピレン系樹脂の含有量はポリプロピレン系樹脂100重量部に対して1〜50重量部であることが好ましい。
【0040】
前記芳香族ビニル系樹脂とは、芳香族ビニル系単量体を重合して得られる重合体、あるいは芳香族ビニル系単量体及びこれと共重合可能な他のビニル系単量体を共重合して得られる共重合体である。
【0041】
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン、およびジビニルベンゼン、等が挙げられる。これらのなかでも、反応の容易さや入手の容易さ等から、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましく用いられる。これらは1種単独、あるいは2種以上併用して用いられる。
【0042】
芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、およびアクリル酸ステアリル等が、不飽和ニトリル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、等が、マレイミド化合物としてはマレイミド、N−メチルマレイミド、N―エチルマレイミド、N―フェニルマレイミド、N―シクロヘキシルマレイミド、等が、その他のビニルモノマーとしては、アクリルアミド、酢酸ビニル、等が挙げられる。これらは単独または2種以上組み合わせて用いられる。
【0043】
耐衝撃性を必要とする場合には、芳香族ビニル系樹脂として、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル系単量体、又は芳香族ビニル系単量体およびこれらと共重合可能な単量体の混合物を重合してなるグラフト共重合体を、一部または全部用いるのが好ましい。
【0044】
ゴム状重合体としては、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルーブタジエンゴム(NBR)、ブチルアクリレート−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、等が挙げられる。ゴム状重合体および化合物は、単独または2種以上併用して用いられる。各成分中のゴム状重合体の量には特に制限はないが、熱可塑性組成物全体中のゴム状重合体の割合は、70重量部以下となる事が好ましい。熱可塑性樹脂組成物中のゴム状重合体量が70重量部を越えると、成形加工が困難となる。
【0045】
耐衝撃性を必要とする場合には上記のような方法以外に、芳香族ビニル系樹脂として、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーを用いても良い。
【0046】
芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーとは、一般的には、芳香族ビニル系化合物と共役ジエン系化合物とのブロック共重合体である。共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、等が用いられる。ブロックの状態としては、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、マルチブロック共重合体、ラジアルブロック共重合体、等が挙げられ、これらのブロック共重合体のいずれを用いても良い。
【0047】
芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー中の芳香族ビニル化合物単体の含有率は特に限定されないが、得られる樹脂組成物の成形性及び機械的特性の点から、好ましくは5〜70重量%であり、より好ましくは10〜50重量%である。
また、概芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーとして、ブロック共重合体の共役ジエン部分を水素添加することによって、主鎖中の二重結合を部分的に又は全て飽和化させた共重合体も用いることができる。
【0048】
芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーの好ましい例としては、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリイソブチレン共重合体、等が挙げられる。
芳香族ビニル系樹脂中に層状化合物をより細かく微分散させるためには、芳香族ビニル系樹脂の一部又は全部が、反応性を有する官能基を持つ変性芳香族ビニル系樹脂である事が好ましい。
【0049】
反応性を有する官能基を持つ変性芳香族ビニル系樹脂の製造方法としては、官能基を有するビニル系単量体を共重合する方法、芳香族ビニル系樹脂を化学反応により変性し官能基を付与する方法、等が挙げられる。
【0050】
官能基を有するビニル系単量体としては、種々のものを用いることができる。例えば、エポキシ基含有不飽和化合物としては、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が、アミノ基含有不飽和化合物としては、アクリルアミン、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル、アミノスチレン等が、水酸機含有不飽和化合物としては、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等が、オキサゾリン基含有不飽和化合物としてはビニルオキサゾリン等が、不飽和酸化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等が、不飽和カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは単独または2種以上組み合わせて用いられる。
【0051】
芳香族ビニル系樹脂を化学反応により変性し官能基を付与する方法としては、高分子鎖中の二重結合を過酢酸等によりエポキシ化し、エポキシ変性芳香族ビニル系樹脂を得る方法、等が挙げられる。
【0052】
芳香族ビニル系樹脂の一部又は全部が、反応性を有する官能基を持つ変性芳香族ビニル系樹脂である場合、反応性を有する官能基がカルボン酸および/またはその無水物であることが、層状化合物を容易に細かく微分散させることができるため好ましい。
【0053】
本発明に用いられる芳香族ビニル系樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、単量体成分を、公知の重合法である乳化重合、溶液重合、懸濁重合、塊状重合、塊状懸濁重合、等の方法にて重合して得られる。この際の単量体成分の配合比には特に制限は無く、用途に応じて各成分が適宜配合される。
【0054】
前記熱可塑性ポエステル樹脂としては、ジカルボン酸化合物および(または)ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、およびジオール化合物および(または)ジオール化合物のエステル形成性誘導体を重合させてなる従来公知の任意のポリエステル樹脂があげられる。その具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン−1,4―ジメチルテレフタレート、ネオペンチルテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレートなど、またはこれらの共重合ポリエステルをあげることができる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
前記ポリアミド樹脂にはとくに限定はなく、公知のポリアミド樹脂を使用することができる。その具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカミド(ナイロン11)、ポリドデカミド(ナイロン12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタラミド(TMHT)、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ナイロン6I)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリウンデカメチレンテレフタラミド(ナイロン11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ナイロン11TH)、およびこれらの共重合体をあげることができる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
本発明で用いられる層状化合物としては、ケイ酸塩、リン酸ジルコニウム等のリン酸塩、チタン酸カリウム等のチタン酸塩、タングステン酸ナトリウム等のタングステン酸塩、ウラン酸ナトリウム等のウラン酸塩、バナジン酸カリウム等のバナジン酸塩、モリブデン酸マグネシウム等のモリブデン酸塩、ニオブ酸カリウム等のニオブ酸塩、黒鉛等が挙げられる。入手の容易性、取扱い性等の点から層状ケイ酸塩が好ましく用いられる。
【0057】
上記の層状ケイ酸塩とは、主として酸化ケイ素の四面体シートと、主として金属水酸化物の八面体シートから形成され、例えば、スメクタイト族粘土および膨潤性雲母などが挙げられる。
【0058】
前記のスメクタイト族粘土は下記一般式(1):
10.20.61231410(OH)2・nH2O (1)
(式中、X1はK、Na、1/2Ca、及び1/2Mgから成る群より選ばれる1種以上であり、Y1はMg、Fe、Mn、Ni、Zn、Li、Al、及びCrから成る群より選ばれる1種以上であり、Z1はSi、及びAlから成る群より選ばれる1種以上である。尚、H2Oは層間イオンと結合している水分子を表すが、nは層間イオンおよび相対湿度に応じて著しく変動する)
で例えば表すことができ、天然または合成することが可能である。
【0059】
該スメクタイト族粘土の具体例としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト及びベントナイト等、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。前記スメクタイト族粘土の初期の凝集状態における底面間隔は一般には約1.0〜1.7nmであり、凝集状態でのスメクタイト族粘土の平均粒径はおおよそ100〜100000nmであるといわれている。
【0060】
また、前記の膨潤性雲母は下記一般式(2):
20.51.0223(Z2410)(F、OH)2 (2)
(式中、X2はLi、Na、K、Rb、Ca、Ba、及びSrから成る群より選ばれる1種以上であり、Y2はMg、Fe、Ni、Mn、Al、及びLiから成る群より選ばれる1種以上であり、Z2はSi、Ge、Al、Fe、及びBから成る群より選ばれる1種以上である。)
で例えば表すことができ、天然または合成することが可能である。
【0061】
これらは、水、水と任意の割合で相溶する極性溶媒、或いは水と極性溶媒の混合溶媒の何れかで膨潤する性質を有する物であり、例えば、リチウム型テニオライト、ナトリウム型テニオライト、リチウム型四ケイ素雲母、及びナトリウム型四ケイ素雲母等、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。前記膨潤性雲母の初期の凝集状態における底面間隔はおおよそ1.0〜1.7nmであり、凝集状態での膨潤性雲母の平均粒径は約100〜100000nmであるといわれている。
【0062】
上記の膨潤性雲母の中にはバーミキュライト類と似通った構造を有するものもあり、この様なバーミキュライト類相当品等も使用し得る。該バーミキュライト類相当品には3八面体型と2八面体型があり、下記一般式(3):
(Mg,Fe,Al)23(Si4-xAlx)O10(OH)2・(M+,M2+1/2x・nH2O (3)
(式中、MはNa及びMg等のアルカリまたはアルカリ土類金属の交換性陽イオン、x=0.6〜0.9、n=3.5〜5である)
で表されるものが挙げられる。前記バーミキュライト相当品の初期の凝集状態における底面間隔はおおよそ1.0〜1.7nmであり、凝集状態での平均粒径は約100〜500000nmである。
【0063】
層状ケイ酸塩の結晶構造は、c軸方向に規則正しく積み重なった純粋度が高いものが望ましいが、結晶周期が乱れ、複数種の結晶構造が混じり合った、いわゆる混合層鉱物も使用され得る。
【0064】
層状ケイ酸塩は単独で用いても良く、2種以上組み合わせて使用しても良い。層状ケイ酸塩の中でも、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライトおよび層間にナトリウムイオンを有する膨潤性雲母が、得られる樹脂組成物中での分散性および物性改善効果の点から更に好ましい。
【0065】
本発明で用いられる非イオン性化合物とは、特に限定されないが、例えばポリエーテル構造を含有する化合物がある。前記化合物は例えばポリオキシエチレン基のユニット数が2〜20、好ましくは2〜10含まれる化合物が挙げられる。また、ポリオキシエチレン基には、さらにポリオキシプロピレン基等の他のポリオキシアルキレン基が付加されていても良い。特に室温にて水または水を含有する極性溶媒中に溶解または分散し、40度以上に加熱することにより二層分離状態となる性質を有する化合物が層状化合物の分散性に優れる点で好ましい。なお、水溶液が白濁している状態も前記分散に含まれる。二層分離状態となる温度の下限は、50度以上、好ましくは40度以上であり、上限は90度以下、好ましくは80度以下である。
【0066】
一般に、曇点を有する非イオン性化合物の水溶液は、曇点以下であれば非イオン性化合物中に含まれるポリオキシエチレン鎖中の酸素原子と水分子とが緩い水素結合を作り、両者が良好に溶解しているが、水溶液を昇温していくと、白濁状態となる現象が生じ、この点が曇点といわれている。この現象は、ポリオキシエチレン鎖の分子運動が激しくなることで、ポリオキシエチレン鎖中の酸素原子と水分子との水素結合が切れるためとされている。この白濁状態は本発明の分散状態に含まれる。さらに昇温を続けると、非イオン性化合物同士の凝集が進行することで、二層に分離する現象がおこる。
【0067】
そのような性質を有する化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、脂肪酸ポリエチレングリコール、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル等が挙げられる。前記の化合物が含有するポリオキシエチレン基のユニット数は、3〜20が好ましく、より好ましくは3〜10である。また、ポリオキシエチレン基には、さらにポリオキシプロピレン基等の他のポリオキシアルキレン基が付加されていても良い。前記化合物が含有する疎水性部位としては、直鎖状、分岐鎖状の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基、飽和または不飽和脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0068】
前記化合物の具体例としては、ノイゲンTDS30、ノイゲンTDS50((ポリオキシエチレントリデシルエーテル、第一工業製薬(株)製))、ノニオンHS206、ノニオンHS204.5((ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、日本油脂(株)製))等が挙げられる。
【0069】
非イオン性化合物の層状化合物に対する使用量は、熱可塑性樹脂組成物中の層状化合物の分散、すなわち層状化合物の底面間隔が35Å以上になるようであれば特に限定されないが、層状化合物100重量部に対して10〜150重量部の処理剤を加えて処理をすることが望ましい。より好ましくは15〜100重量部であり、更に好ましくは20〜70重量部である。非イオン性化合物で層状化合物を処理することにより、層状化合物の層間を広げ熱可塑性樹脂に微分散し易くなる。非イオン性化合物の使用量が少なければ、熱可塑性樹脂組成物中への層状化合物の分散および物性の発現が不十分になる恐れがある。非イオン性化合物の使用量が多ければ、可塑化効果により得られる樹脂組成物が軟化し、層状化合物との複合化によって得られた機械的特性が打ち消される場合がある。
【0070】
非イオン性化合物で層状化合物を処理する方法としては、分散媒として、水または水を含有する極性溶媒中にて層状化合物と非イオン性化合物を混合する処理を行うことが好ましい。極性溶媒とは、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド化合物、その他の溶媒としてピリジン、ジメチルスルホキシドやN−メチルピロリドン等が挙げられる。又、炭酸ジメチルや炭酸ジエチルような炭酸ジエステルも使用できる。これらの極性溶媒は単独で用いても良く2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0071】
本発明において、非イオン性化合物で層状化合物を処理する方法は特に限定されず、例えば、以下に示した方法で行い得る。
【0072】
まず、層状化合物と分散媒を撹拌混合する。層状化合物と分散媒との攪拌の方法は特に限定されず、例えば、従来公知の湿式撹拌機を用いて行われる。該湿式撹拌機としては、撹拌翼が高速回転して撹拌する高速撹拌機、高剪断速度がかかっているローターとステーター間の間隙で試料を湿式粉砕する湿式ミル類、硬質媒体を利用した機械的湿式粉砕機類、ジェットノズルなどで試料を高速度で衝突させる湿式衝突粉砕機類、超音波を用いる湿式超音波粉砕機などを挙げることができる。次いで、非イオン性化合物を加えてから更に撹拌を続け、十分に混合する。分散媒の温度は、特に限定されず、室温でも高温でも良い。
【0073】
ついで、層状化合物と分散媒の混合物を乾燥させるが、乾燥させる方法に特に限定はなく、混合物を熱風乾燥機にてそのまま熱的に乾燥させる方法、混合物を凍結させ真空乾燥させる方法、噴霧乾燥機にて乾燥させる方法等が挙げられる。熱風乾燥機にて乾燥させる方法、真空乾燥させる方法の場合には、粉体化する工程が必要となる。その場合、粉体はできるだけ細かくすることが好ましく、粉砕機で粉砕したものをふるいにかけて微粉体にしたものだけを集めて使用することがポリマーブレンド中での分散性を向上させる上では好ましい。噴霧乾燥機を用いると、粉体化する工程を省略することができる場合があり好ましい。
【0074】
噴霧乾燥機を用いる場合、乾燥条件は処理量、やその他条件によりその条件を適宜選択できるが、例えば層状化合物と分散媒の混合物の入口温度は150℃〜250℃、出口温度は100℃〜150℃が挙げられる。これ以上に入口温度が高いと、処理剤が分解される場合がある。噴霧乾燥時の噴霧液中の処理粘土濃度は1%〜50%で、更には2%〜20%が好ましい。濃度が薄すぎると粉体化に要する時間が長くなり、濃すぎると噴霧液をポンプで装置に送り込むことが困難になることがある。粉体のサイズは、霧吹きのように物質を微粒子に加工するアトマイザーの回転数と液添加ポンプの速度により調節することができる。
【0075】
本発明の非イオン性化合物が分解あるいは脱離する温度とは、熱分析装置(TGA−50 島津製作所製)を用いて判断することができる。非イオン性化合物で処理された層状化合物を一定の速度で加熱し、加熱に伴う重量減少を測定し重量減少が急激に起こる温度を分解あるいは脱離する温度と判断した。
【0076】
本発明の非イオン性化合物で処理された層状化合物(処理層状化合物)と熱可塑性樹脂を溶融する温度については、前記に示した非イオン性化合物が分解あるいは脱離する温度以下であり、層状化合物の二次凝集が抑制される温度であれば特に限定しない。
【0077】
本発明でいう二次凝集とは、処理層状化合物を樹脂と複合化する前後で、底面間隔が狭くなることや、底面間隔を示すピークの強度が5割以下になることをいう。
【0078】
本発明の処理層状化合物と熱可塑性樹脂を溶融する方法は、特に制限されるものではなく、例えば、熱可塑性樹脂と粉体状の処理層状化合物、あるいはスラリー状の処理層状化合物とを、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練する方法をあげることができる。混練機の例としては、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、プラストミルなどが挙げられる。熱可塑性樹脂と処理層状化合物は予めヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等で十分混合させ、混合物となしておくことが必要である。
【0079】
本発明の非イオン性化合物と層状化合物を溶融する際の、熱可塑性樹脂100重量部に対する、非イオン性化合物で処理された処理層状化合物の配合量は好ましくは5重量部〜100重量部であり、より好ましくは10重量部〜70重量部であり、さらに好ましくは15重量部〜50重量部となるように調製される。
【0080】
本発明の前記樹脂組成物をさらに別種あるいは同種の希釈熱可塑性樹脂で希釈して製造する方法は、特に制限されるものではなく、例えば、樹脂組成物と希釈熱可塑性樹脂とを、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練する方法をあげることができる。混練機の例としては、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、プラストミルなどが挙げられる。樹脂組成物と希釈熱可塑性樹脂は、上記の混練機に一括投入して溶融混練しても良いし、あるいは予め溶融状態にした希釈熱可塑性樹脂に本発明の樹脂組成物を添加して溶融しても良いし予め樹脂組成物と希釈熱可塑性樹脂をヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等を用いて混合しておいても良い。
【0081】
前記溶融混練の温度は、希釈熱可塑性樹脂の融点以上であれば特に限定されず、非イオン性化合物が分解あるいは脱離する温度以上であっても、層状化合物の前記したような二次凝集を抑制できる。
【0082】
本発明の熱可塑性樹脂組成物中の層状化合物含有量は、好ましくは1〜20重量%であり、より好ましくは2〜10重量%である。合有量が1重量%未満であると機械的特性、反りの改善効果が不充分となる場合があり、20重量%を超えると成形体の表面外観などが損なわれる場合がある。
【0083】
本発明の樹脂組成物と希釈熱可塑性樹脂組成物の配合量は、層状化合物含有量が上記の範囲になるように配合すれば良い。
【0084】
本発明の熱可塑性樹脂組成物中の層状化合物の分散状態は底面間隔で表現されうる。底面間隔は熱可塑性樹脂組成物のX線回折の測定を行い、得られたX線チャートから層状化合物の001反射に起因するピーク位置を求めることで決定することができる。
【0085】
本発明の熱可塑性樹脂組成物中における層状化合物の底面間隔は35Å以上であることが好ましい。さらに好ましくは40Å以上であり、特に好ましくは50Å以上である。平均層厚が35Åより小さいと、本発明の樹脂組成物の曲げ弾性率、ガスバリア性などの改良効果が十分に得られない場合がある。
【0086】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、目的に応じて、顔料や染料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、及び帯電防止剤等の添加剤を添加することができる。
【0087】
本発明で得られる熱可塑性樹脂組成物は、射出成形や熱プレス成形で成形しても良く、ブロー成形、発泡成形にも使用できる。得られる成形品は外観に優れ、機械的特性や耐熱変形性、熱変色性、ガスバリア性等に優れる為、例えば、自動車部品、家庭用電気製品部品、家庭日用品、包装資材、その他一般工業用資材に好適に用いられる。
【実施例】
【0088】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0089】
実施例、及び比較例で使用する主要原料を以下にまとめて示す。
(原料)
〔ポリオレフィン系樹脂〕
・ポリプロピレン(三井住友ポリオレフィン(株)製:J103WB)
・無水マレイン酸変性プロピレンオリゴマー((株)三洋化成製:ユーメックス1001、無水マレイン酸官能基含有量=0.23mmol/g)
〔芳香族ビニル系樹脂〕
・ポリスチレン((株)A&Mスチレン:G9305)
・スチレンメタクリル酸共重合体((株)A&Mスチレン:G9001)
〔層状ケイ酸塩〕
・膨潤性フッ素化マイカ(コープケミカル(株)製:ソマシフME―100、以降、「ME―100」と称す)
〔非イオン性化合物〕
・ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(n=6、日本油脂(株)製:ノニオンHS−206)
〔その他〕
(底面間隔の測定)
溶融混練後のサンプルをプレスシート状にし、回転対陰極型X線回折装置ガイガーフレックスRAD−rA((株)理学電機)にて、Cu・Kα線40kV80mAのX線で測定を行った。
【0090】
(製造例)処理層状化合物
90℃に加熱した純水と層状化合物を混合し、5分間攪拌混合した。ついで非イオン性化合物であるノニオンHS206を層状化合物100重量部に対して50重量部添加して10分間混合を続ける事によって処理した。その後100℃の乾燥機に入れ一昼夜乾燥した後に、粉砕機を用いて0.3mm未満の粉体にし、非イオン性化合物で処理した処理層状化合物を得た。
【0091】
(実施例)樹脂組成物1、2
表1に示す重量比で、製造例で得た処理層状化合物と熱可塑性樹脂を配合し、ヘンシェルミキサーで加熱や冷却操作を行わないで5分間混合して混合物を得た。その混合物をプラストミル((株)東洋精機製、LABOPLASTOMILL)を用いて170℃で溶融混練することにより樹脂組成物を得た。なお、TGA―50を用いて測定したノニオンHS206の重量減少が急激に起こる温度は、210°Cであった。
【0092】
(実施例)熱可塑性樹脂組成物1、2
表2に示す重量比で、実施例で得た樹脂組成物1、2と、希釈熱可塑性樹脂を配合し、上記樹脂組成物1、2と同じ方法により混合物を得た。その混合物をプラストミル((株)東洋精機製、LABOPLASTOMILL)を用いて210℃で溶融混練することにより熱可塑性樹脂組成物を得、プレスして作成したフィルムを用いてX線回折測定を行い、底面間隔を測定し分散性を評価した。その結果も表2に示す。
【0093】
(比較例1)
表2に示す重量比で、処理層状化合物と熱可塑性樹脂を上記実施例のようには混合せずプラストミル((株)東洋精機製、LABOPLASTOMILL)を用いて溶融混練することにより熱可塑性樹脂組成物を得、プレスして作成したフィルムを用いてX線回折測定を行い、底面間隔を測定し分散性を評価した。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
表1及び2より、処理層状化合物と熱可塑性樹脂を非イオン性化合物の分解あるいは脱離温度以下で溶融し樹脂組成物を得、さらに希釈熱可塑性樹脂で希釈する本発明の方法により作成した熱可塑性樹脂組成物は、処理層状化合物と熱可塑性樹脂を一段階で非イオン性化合物の分解あるいは脱離温度以上で溶融混練した熱可塑性樹脂組成物よりも、層状化合物の底面間隔が大きく拡大しており、分散性が良好であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非イオン性化合物で処理された層状化合物と熱可塑性樹脂の混合物を前記非イオン性化合物が分解あるいは脱離する温度以下であらかじめ溶融して樹脂組成物を得、該樹脂組成物をさらに別種あるいは同種の熱可塑性樹脂で希釈して製造することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
非イオン性化合物で処理された層状化合物と熱可塑性樹脂の混合物を前記非イオン性化合物が分解あるいは脱離する温度以下であらかじめ溶融して樹脂組成物を得、該樹脂組成物をさらに別種あるいは同種の熱可塑性樹脂で希釈する際に、前記樹脂組成物を得る際の溶融温度を超える温度で溶融することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
層状化合物が層状ケイ酸塩である請求項1または2記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記非イオン性化合物がポリエーテル化合物から選ばれることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
希釈する熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれる1種または2種以上の樹脂であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物から得られる層状化合物の底面間隔が35Å以上である成形体。

【公開番号】特開2006−96915(P2006−96915A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286315(P2004−286315)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】