説明

熱可塑性樹脂組成物及び成形品

【課題】 制電性、透明性、耐衝撃性、摺動性、及び成形品外観に優れた成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A)ゴム質重合体(a)存在下に(メタ)アクリル酸エステル化合物及び芳香族ビニル化合物、更に必要に応じてこれらの単量体と共重合可能な他のビニル単量体からなる単量体成分(b)を重合してなるゴム強化スチレン系樹脂(A−1)、及び/又は、単量体成分(b)を重合してなるスチレン系樹脂(A−2)55〜97質量%、
(B)オレフィンのブロック(B―1)と親水性ポリマーのブロック(B―2)とを有するブロック共重合体0.1〜15質量%
(C)ポリアミド及び/またはポリエステルのブロック(C―1)と親水性ポリマーのブロック(C―2)とを有するブロック共重合体2.9〜30質量%、
上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計100質量%からなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制電性、透明性、耐衝撃性、摺動性及び成形品外観性に優れた熱可塑性樹脂組成物及び成形品に関する。
【0002】
透明ABSは、透明性、耐衝撃性、成形加工性等に優れることから、OA・家電分野、建材分野、遊戯分野、サニタリー分野、車両分野等に幅広く使用されている。但し、帯電し易い欠点を有していることから静電気障害の問題が発生する液晶を用いた表示装置、半導体周辺、プラズマディスプレイ、クリーンルーム内等で使用される各種パーツ、シート、フィルム等に使用することは難しかった。透明ABSの帯電性を防止する目的から、特許文献1、特許文献2、特許文献3には、透明ABS樹脂にポリエーテルエステルアミドを配合することが提案されている。
かかる技術により帯電防止性は、改善されるものの十分ではなかった。更に、当該材料をシート、フィルム化すると射出成形品と比較して、帯電防止性能が低下するという問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開昭63―312342号公報
【特許文献2】特開平1―144417号公報
【特許文献3】特開2003−268104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、透明性、制電性、耐衝撃性、摺動性及び成形品外観性に優れた熱可塑性樹脂組成物、および成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、透明ABS/ポリエーテルエステルアミドからなる組成物にオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックを有するブロック共重合体を特定量配合することで、制電性、透明性及び成形品の外観性に優れた成形品が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明によれば、
〔1〕(A)ゴム質重合体(a)存在下に(メタ)アクリル酸エステル化合物及び芳香族ビニル化合物、更に必要に応じてこれらの単量体と共重合可能な他のビニル単量体からなる単量体成分(b)を重合してなるゴム強化スチレン系樹脂(A−1)、及び/又は、単量体成分(b)を重合してなるスチレン系樹脂(A−2)55〜97質量%、
(B)オレフィンのブロック(B―1)と親水性ポリマーのブロック(B―2)とを有するブロック共重合体0.1〜15質量%
(C)ポリアミド及び/またはポリエステルのブロック(C―1)と親水性ポリマーのブロック(C―2)とを有するブロック共重合体2.9〜30質量%、
上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計100質量%からなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
〔2〕上記〔1〕記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
〔3〕シートまたはフィルムである〔2〕記載の成形品。
〔4〕上記〔2〕記載の成形品が、上記〔1〕記載の熱可塑性樹脂組成物と上記〔1〕記載の(A)成分からなる多層シートまたは多層フィルム。
が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、(A)(ゴム強化)スチレン系樹脂、(B)オレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックを有するブロック共重合体、(C)ポリアミド及び/又はポリエステルのブロックと親水性ポリマーのブロックとを有するブロック共重合体からなり、制電性、透明性、耐衝撃性、摺動性及び成形品の外観性に優れた成形品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味し、「(ゴム強化)スチレン系樹脂」とは、ゴム強化スチレン系樹脂及び/又はスチレン系樹脂を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0008】
本発明の(A)成分のゴム強化スチレン系樹脂(A−1)について説明する。ゴム強化スチレン系樹脂は、ゴム質重合体(a)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル化合物及び芳香族ビニル化合物、更に必要に応じてこれらの単量体と共重合可能な他のビニル単量体からなる単量体成分(b)を重合して得られる。
ゴム質重合体(a)としては、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、ブタジエン・スチレンランダム共重合体の水素添加物、ブタジエン・アクリロニトリルランダム共重合体、ブタジエン・アクリロニトリルランダム共重合体の水素添加物、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・ブテンー1共重合体、エチレン・ブテンー1・非共役ジエン共重合体、アクリルゴム、シリコーンゴム、シリコーン・アクリルIPNゴム等があり、好ましくは、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、アクリルゴムであり、特に好ましくはポリブタジエンである。
【0009】
本発明の(A)成分がゴム強化スチレン系樹脂を含む場合、(A)成分中のゴム質重合体の含有率は、(A)成分を100質量%として、好ましくは3〜80質量%、更に好ましくは5〜70質量%、特に好ましくは10〜60質量%である。この範囲にあると本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と成形加工性の物性バランスに優れる。
(A)成分としては、ゴム強化スチレン系樹脂(A−1)を含むものが好ましい。
【0010】
上記ゴム質重合体(a)のゲル含率は、特に限定しないが、乳化重合でゴム質重合体を得る場合、好ましくは98質量%以下であり、更に好ましく40〜98質量%である。特に本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性に優れる。
上記ゲル含率は、以下に示す方法により求めることができる。すなわち、ゴム質重合体1gをトルエン100mlに投入し、室温で48時間静置した後、100メッシュの金網(質量をW1グラムとする)で濾過したトルエン不溶分と金網を80℃で6時間真空乾燥して秤量(質量をW2グラムとする)し、下記式(1)により算出する。
【0011】
ゲル含率(質量%)=[{W2(g)―W1(g)}/1(g)]×100…(1)
ゲル含率は、ゴム質重合体の製造時に、分子量調節剤の種類及び量、重合時間、重合温度、重合転化率等を適宜設定することにより調整される。
【0012】
単量体成分(b)で使用される芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α―メチル スチレン、ヒドロキシスチレン等が挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン、α―メチルスチレンが好ましい。
単量体成分(b)で使用される(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等があり、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうちメタクリル酸メチルまたは、メタクリル酸メチルを50質量%以上含有する(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。
単量体成分(b)100質量%中に占める芳香族ビニル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの合計量は、40〜100質量%が好ましく、更に好ましくは50〜98質量%、特に好ましくは60〜98質量%である。
単量体成分(b)100質量%中に占める芳香族ビニル化合物の使用量は、好ましくは2〜90質量%、更に好ましくは3〜70質量%であり、この範囲にあると本発明の熱可塑性樹脂組成物における耐衝撃性と成形加工性の物性バランスに優れる。
一方、(メタ)アクリル酸エステルの使用量は、好ましくは10〜97質量%、更に好ましくは30〜97質量%であり、この範囲にある本発明の熱可塑性樹脂組成物における透明性(透明感も含む)と成形加工性の物性バランスに優れる。透明性であることが好ましいが、透明感であっても着色性に優れ工業的価値が大きい。
【0013】
前記単量体と共重合可能な他の単量体としては、シアン化ビニル化合物、マレイミド化合物、及び各種官能基含有不飽和化合物等があり、これらの群より選ばれた1種または2種以上が併用される。ここで、各種官能基含有不飽和化合物としては、不飽和酸、不飽和酸無水物、エポキシ基含有不飽和化合物、水酸基含有不飽和化合物、置換または非置換のアミノ基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等がある。
ここで使用されるシアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。シアン化ビニル化合物を使用する場合、単量体成分(b)100質量%中に占めるシアン化ビニル化合物の使用量は、好ましくは、2〜50質量%であり、この範囲にあると本発明の熱可塑性樹脂組成物における耐薬品性と成形加工性の物性バランスに優れる。
マレイミド化合物としては、マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。また、マレイミド単位を導入するために、無水マレイン酸を共重合させ、後イミド化してもよい。マレイミド化合物を使用する場合、単量体成分
(b)100質量%中に占めるマレイミド化合物の使用量は、好ましくは、2〜50質量%であり、この範囲にあると本発明の熱可塑性樹脂組成物における耐熱性と成形加工性の物性バランスに優れる。
【0014】
不飽和酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。
エポキシ基含有不飽和化合物としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
水酸基含有不飽和化合物としては、3―ヒドロキシ―1―プロペン、4―ヒドロキシ−1―ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド等が挙げられる。
酸無水物基含有不飽和化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる・
オキサゾリン基含有不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。
置換または非置換のアミノ基含有不飽和化合物としては、アクリル酸アミノエチル、ア クリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アクリルアミン、メタクリルアミン、N−メチルアクリルアミン、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、p−アミノスチレン等が挙げられる。各種官能基含有不飽和化合物を使用する場合、単量体成分(b)100質量%中に占める各種官能基含有不飽和化合物使用量は、好ましくは、0.1〜20質量%であり、この範囲にあると本発明の熱可塑性樹脂組成物における(A)成分と(B)成分、(C)成分の親和性を向上による耐衝撃性が向上効果と成形加工性の物性バランスに優れる。
【0015】
本発明のゴム強化スチレン系樹脂(A−1)は、公知の重合法、例えば、乳化重合、塊状重合、溶液重合、懸濁重合およびこれらを組み合わせた重合法で製造することができる。これらの重合法の重合条件は、公知の条件を使用することが出来る。好ましい重合法は、乳化重合および溶液重合である。
【0016】
乳化重合で製造する場合、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等が用いられるが,これらは公知のものが全て使用できる。
重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパ−オキサオイド、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
また、重合開始助剤として、各種還元剤、含糖ピロリン酸鉄処方、スルホキシレート処方等のレドックス系を用いることが好ましい。
連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、タ−ピノーレン類等が挙げられる。
乳化剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、ラウリル酸カ高級脂肪酸塩、ロジン酸塩等を用いることができる。
【0017】
尚、乳化重合において、ゴム質重合体およびビニル系単量体の使用方法は、ゴム質重合体全量の存在下にビニル系単量体を一括添加して重合してもよく、分割もしくは連続添加して重合してもよい。また、ゴム質重合体の一部を重合途中で添加してもよい。
乳化重合後の、得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、水洗、乾燥することにより、本発明のゴム強化スチレン系樹脂(A−1)成分粉末を得る。この際、乳化重合で得た2種以上の(A−1)のラテックスを適宜ブレンドしたあと、凝固してもよい。
【0018】
溶液重合により(A−1)成分を製造する場合に用いることのできる溶剤は、通常のラジカル重合で使用される不活性重合溶媒であり、例えば、芳香族炭化水素、ケトン類等が挙げられる。
重合温度は、好ましくは80〜140℃、更に好ましくは85〜120℃の範囲である。重合に際し、重合開始剤を用いてもよいし、重合開始剤を使用せずに、熱重合で重合してもよい。重合開始剤としては、ケトンパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、1,1´−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等が好ましく用いられる。
また、連鎖移動剤を用いる場合、例えば、メルカプタン類、ターピノーレン類、α―メチルスチレンダイマー等を用いることができる。
また、塊状重合、懸濁重合で製造する場合、溶液重合において説明した重合開始剤、連鎖移動剤等を用いることができる。
上記重合法によって得たゴム強化スチレン系樹脂中に残存する単量体量は、好ましくは10,000ppm以下、更に好ましくは5,000ppm以下である。
【0019】
また、ゴム強化スチレン系樹脂(A−1)には、通常、上記ビニル系単量体がゴム質重合体にグラフト共重合した共重合体とゴム質重合体にグラフトしていない未グラフト成分(上記ビニル系単量体の共重合体)が含まれる。
上記ゴム強化スチレン系樹脂(A−1)のグラフト率は、好ましくは20〜200質量%、更に好ましくは30〜150質量%、特に好ましくは40〜120質量%であり、グラフト率は、下記式(2)により求めることができる。
【0020】
グラフト率(質量%)={(T―S)/S}×100…(2)
上記式(2)中、Tは(A)成分1gをアセトン20mlに投入し、振とう機により2時間振とうした後、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Sは(A)成分1gに含まれるゴム質重合体の質量(g)である。
【0021】
また、上記(A−1)又は(A)成分のアセトン可溶分の極限粘度[η](溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜1.2dl/g、更に好ましくは0.2〜1.0dl/g、特に好ましくは0.3〜0.8dl/gである。
上記(A−1)又は(A)成分中に分散するグラフト化ゴム質重合体粒子の平均粒径は、好ましくは500〜30,000Å、更に好ましくは1,000〜20,000Å、特に好ましくは1,500〜8,000Åの範囲である。平均粒径は、電子顕微鏡を用いる公知の方法で測定できる。
スチレン系樹脂(A−2)について説明する。
(A−2)は、上記単量体成分(b)を重合して得られる共重合体である。(A−2)で使用される単量体成分(b)は、上記の単量体成分(b)がそのままここに記載される。
上記(A−2)のアセトン可溶分の極限粘度[η](溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜1.2dl/g、更に好ましくは0.2〜1.0dl/g、特に好ましくは0.3〜0.8dl/gである。 (A−2)の好ましい重合法は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、および乳化重合である。
【0022】
本発明の(A)成分は、少なくとも1種の(A−1)、又は、少なくとも1種の(A−2)、又は、少なくとも1種の(A−1)と少なくとも1種の(A−2)、からなる。本発明の(A)成分の使用量は、本発明の(A)成分(B)成分、及び(C)成分の合計100質量%中55〜97質量%、好ましくは60〜96質量%、更に好ましくは65〜95質量%、特に好ましくは68〜94質量%の範囲であり、55質量%未満では本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形品の外観性及び耐衝撃性に劣り、97質量%を超えると本発明の熱可塑性樹脂組成物の制電性が劣る。
【0023】
本発明の(B)成分は、オレフィンブロック(B−1)と親水性のブロック(B−2)とを有するブロック共重合体であり、上記オレフィンブロック(B−1)とは、α―オレフィンの(共)重合体である。ここで使用されるα―オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテンー1、ペンテンー1、ヘキセンー1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルヘキセン−1等があり、好ましくは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン―1である。また他に、4−メチル−1、4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエンを重合体成分の一部として使用することができる。更にノルボルネン等の環状オレフィンを共重合することもできる。該オレフィンブロック(B−1)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量は、好ましいくは800〜20,000、更に好ましいくは1,000〜10,000、特に好ましくは1,200〜6,000である。
【0024】
上記ブロック(B−1)は、上記ブロック(B−2)と化学的に結合されるが、その結合は、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合等から選ばれた少なくとも1種の結合であり、これらの結合を介して繰り返し交互に結合した構造を有する。
このために、上記ブロック(B−1)の分子両末端は、上記ブロック(B−2)の分子両末端官能基と反応性を有する官能基で変性されている必要がある。これらの官能基としては、カルボン酸基、水酸基、アミノ基、酸無水物基、オキサゾリン基、エポキシ基等がある。
これらの官能基を付与する付与する方法として好ましいものは、熱減成法により得られる分子末端に炭素―炭素二重結合を有する(B−1)成分と上記した官能基を有する炭素―炭素不飽和化合物を付加させる方法である。
【0025】
上記ブロック(B−2)の親水性ポリマーとしては、ポリエーテル(B−2−a)、ポリエーテル含有親水性ポリマー(B−2−b)、およびアニオン性ポリマー(B−2−c)が挙げられる。
ポリエーテル(B−2―a)としては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン、およびこれらの変性物が挙げられる。
ポリエーテル含有親水性ポリマー(B−2−b)としては、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステル、ポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルアミド、および、ポリエーテルジオールまたはポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルウレタンが挙げられる。
アニオン性ポリマー(B−2−c)としては、スルホニル基を有するジカルボン酸と、ポリエーテル(B−2−a)とを必須構成単位とし、かつ一分子内に好ましくは2〜80個、更に好ましくは3〜60個のスルホニル基を有するアニオン性ポリマーが挙げられる。
これらは、直鎖状であっても、また分岐状であってもよい。特に好ましいブロック(B−2)は、ポリエーテル(B−2−a)である。
【0026】
ポリエーテル(B−2―a)のうちのポリエーテルジオールとしては、一般式(I):H―(OA1)n―O―E1―O―(A1O)n′―Hで表されるもの、及び一般式(II) :H−(OA2)m―O―E2―O―(A2O)m′―Hで表されるもの等が挙げられる。
一般式(I)中E1は二価の水酸基含有化合物から水酸基を除いた残基、A1は炭素数2〜4のアルキレン基、nおよびn′は前記二価の水酸基含有化合物の水酸基1個当たりのアルキレンオキサイド付加数を表す。n個の(OA1)とn′個の(A1O)とは、同一であっても異なっていてもよく、また、これらが2種以上のオキシアルキレン基で構成されている場合の結合形式はブロックもしくはランダムまたはこれらの組み合わせのいずれでもよい。nおよびn′は、通常1〜300、好ましくは2〜250、特に好ましくは10〜100である。また、nとn′は、同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
上記二価の水酸基含有化合物としては、一分子中にアルコール性またはフェノール性の水酸基を2個含む化合物、すなわち、ジヒドロキシ化合物が挙げられ、具体的には、二価アルコール(例えば炭素数2〜12の脂肪族、脂環式、または芳香族二価アルコール)、炭素数6〜18の二価フェノール、第3級アミノ基含有ジオール等が挙げられる。
脂肪族二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。
脂環式二価アルコールとしては、例えば、1,2−および1,3−シクロペンタンジオール、1,2−、1,3−および1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、芳香族二価アルコールとしては、例えば、キシレンジオール等が挙げられる。
二価フェノールとしては、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、ウルシオール等の単環二価フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4′―ジヒドロキシジフェニル−2,2―ブタン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシジフェニルエーテル等のビスフェノール、およびジヒドロキシナフタレン、ビナフトール等の縮合多環二価フェノール等が挙げられる。
【0028】
一般式(II)中、E2は、一般式(I)で記載した二価の水酸基含有化合物から水酸基 を除いた残基、A2は、少なくとも一部が一般式(III):―CHR―CHR′―[式中、 R、R′の一方は、一般式(IV):―CH2O(A3O)XR″で表される基、他方はHで ある。一般式(IV)中、Xは1〜10の整数、R″はHなたは炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基またはアシル基、A3は炭素 数2〜4のアルキレン基である。]で表される置換アルキレン基であり、残りは炭素数2〜4のアルキレン基であってもよい。m個の(OA2)とm′個の(A2O)とは同一であっても異なっていても良い。mおよびm′は1〜300であることが好ましく、更に2〜250、特に10〜100が好ましい。またmとm′とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
上記一般式(II)で示されるポリエーテルジオールは、二価の水酸基含有化合物にアルキレンオキサイドを付加反応させることにより製造することができる。アルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,4−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、および1,3−ブチレンオキサイドおよびこれらの2種以上の併用系が用いられる。2種以上のアルキレンオキサイドを併用するときの結合形式はランダムおよび/またはブロックのいずれでもよい。アルキレンオキサイドとして好ましいものは、エチレンオキサイド単独およびエチレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとの併用によるブロックおよび/またはランダム付加である。アルキレンオキサイドの付加数は、前記二価の水酸基含有化合物の水酸基1個当たり、好ましくは1〜300、更に好ましくは2〜250、特に好ましくは10〜100である。
【0030】
上記一般式(III)で示されるポリエーテルジオールの好ましい製造方法としては下記の(ア)、(イ)等の方法が挙げられる。
(ア)上記二価の水酸基含有化合物を出発物質として、一般式(V):
【化1】


[一般式(V)中のA4は炭素数2〜4のアルキレン基、pは1〜10の整数、R1はHまたは炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基またはアシル基である。]で表されるグリシジルエーテルを重合、または炭素数2〜4のアルキレンオキサイドと共重合する方法。
(イ)上記二価の水酸基含有化合物を出発物質として、側鎖にクロロメチル基を有するポリエーテルを経由する方法。更に具体的には、エピクロルヒドリン、またはエピクロルヒドリンとアルキレンオキサイドを付加共重合し、側鎖にクロロメチル基を有するポリエーテルを得た後、該ポリエーテルと炭素数2〜4のポリアルキレングリコールとR1
(R1は上記したもの、XはCl、BrまたはI)をアルカリ存在下で反応させるか、ま たは該ポリエーテルと炭素数2〜4のポリアルキレングリコールモノカルビルエーテルを
アルカリ存在下で反応させる方法である。
【0031】
ここで使用される炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとしては、前記したものがある。また、本発明の(B)成分は、上記ポリオレフィンブロック(B−1)と親水性ポリマーブロック(B−2)とを公知の方法で重合することによって得ることができる。例えば、ブロック(B−1)とブロック(B−2)を減圧下200〜250℃で重合反応を行うことにより製造することができる。
【0032】
また、重合反応に際し公知の重合触媒を使用することができるが、好ましいものは、モノブチルスズオキサイド等のスズ系触媒、三酸化アンチモン、二酸化アンチモン等のアンチモン系触媒、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒、ジルコニウム水酸化物、酸化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等のジルコニウム系触媒、IIB族有機酸塩触媒から選ばれる1種または2種以上の組み合わせである。
【0033】
本発明の目的である、帯電防止性を更に向上させる目的から、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の塩(D)を含有させることができる。これらの成分は、(B)成分の重合前、(B)成分の重合時に含有させることができるし、(B)成分の重合後に含有させることも、また本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する際に配合することも、またこれらを組み合わせた方法で含有させることもできる。
(D)成分としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属および/またはマグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の有機酸、スルホン酸、無機酸の塩、及びハロゲン化物等が挙げられる。
【0034】
(D)成分の具体的な好ましい例として、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等のアルカリ金属のハロゲン化物;過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等のアルカリ金属の無機酸塩、
酢酸カリウム、ステアリン酸リチウム等のアルカリ金属の有機酸塩;オクチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、テトラデシルスルホン酸、ステアリルスルホン酸、テトラコシルスルホン酸、2−エチルヘキシルスルホン酸等の、アルキル基の炭素数8〜24のアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩;フェニルスルホン酸、ナフチルスルホン酸等の芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩;オクチルフェニルスルホン酸、ドデシルフェニルスルホン酸、ジブチルフェニルスルホン酸、ジノニルフェニルスルホン酸等の、アルキル基の炭素数6〜18のアルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩;ジメチルナフチルスルホン酸、ジイソプロピルナフチルスルホン酸、ジブチルナフチルスルホン酸等の、アルキル基の炭素数2〜18のアルキルナフタレンスルホン酸等のアルキル基の炭素数2〜18のアルキルナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩;トリフルオロメタンスルホン酸等のフッ化スルホン酸等のアルカリ金属塩等が挙げられ、これらは、1種単独で、または2種以上を併用して用いることができる。上記(F)成分は、本発明の(B)成分に対して、好ましくは0.001〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%の範囲で用いることができる。
【0035】
本発明の(B)成分におけるブロック(B−1)/ブロック(B−2)の好ましい比率(質量比)は、10〜90/10〜90の範囲であり、更に好ましくは20〜80/20〜80、特に好ましくは30〜70/30〜70の範囲である。
このようなブロック共重合体(B)は、例えば、特開2001−278985号公報、特開2003−48990号公報に記載の方法で製造することができ、更に、本発明の
(B)成分は、三洋化成工業社製ペレスタット300シリーズの300、303、230(商品名)等として入手できる。
【0036】
上記本発明の(B)成分は、本発明の(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計100質量%中、0.1〜15質量%、好ましくは0.2〜12質量%、更に好ましくは0.2〜10質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%であり、0.1質量%未満では本発明の熱可塑性樹脂組成物の制電性及び摺動性が劣り、15質量%を超えると本発明の熱可塑性樹脂組成物の透明性、成形品外観及び耐衝撃性が低下する。
【0037】
本発明の(C)成分は、ポリアミド及び/またはポリエステルのブロック(C―1)と親水性ポリマーのブロック(C―2)とを有するブロック共重合体であり、親水性ポリマーのブロックとしては、前記(B―2)成分が全て使用できる。本発明の(C)成分には、
(C―a)ポリアミドブロックと親水性ポリマーのブロック(C―2)とのジブロック共重合体、及びマルチブロック共重合体、(C―b)ポリエステルブロックと親水性ポリマーのブロック(C―2)とのジブロック、及びマルチブロック共重合体、(C−c)ポリアミドブロック及びポリエステルブロックと親水性ポリマーのブロック(C―2)とのブロック共重合体、及び(C―d)前記(C―a)〜(C―c)のブロック重合体の混合物等があり、好ましいものは(C―a)、(C―b)、及び(C―d)であり、更に好ましくは(C―a)、(C―b)である。
【0038】
(C−a)成分で使用されるポリアミドとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2,3,4もしくは2,4,4−トリメチレンヘキサメチレンジアミン、1,3もしくは1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノヘキシル)メタン、フェニルジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン等の脂肪族、脂環族、または芳香族ジアミン等のジアミン成分と、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の脂肪族、脂環族または芳香族ジカルボン酸とから導かれるポリアミド、カプロラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム類の開環重合によって得られるポリアミド。ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナン酸、アミノウンデカン酸、1,2−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸から導かれるポリアミド、ならびにこれらの共重合ポリアミドがあり、更にこれらの混合ポリアミドが挙げられる。
【0039】
本発明の(C―a)成分の好ましい重合法は加熱溶融重合法であり、その好ましい具体例を下記に示す。
(i)ポリアミドを重合した後、ジカルボン酸化合物を添加し、ポリアミド成分の両末端をカルボキシル化し、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールを添加重合しブロック共重合体を得る方法。
(ii)ポリアミド重合時に分子両末端が実質上カルボキシル化されるようにジカルボン酸化合物を過剰に添加重合し、更にポリ(アルキレンオキシド)グリコールを添加重合し、ブロック共重合体を得る方法。
(iii)ポリアミド生成成分と過剰にジカルボン酸化合物、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールを規定量一括添加重合しブロック共重合体を得る方法。
上記方法で、特に好ましい方法は、上記(i)の方法である。
又、前記(B−2)成分の説明で述べたアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の塩(D)を使用することができる。
【0040】
上記ポリアミド成分の分子末端をカルボキシル化するために用いられるジカルボン酸としては、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、マレイン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等がある。本発明の上記ポリアミドの数平均分子量は、好ましくは500〜20,000、更に好ましくは500〜10,000、特に好ましくは500〜5,000の範囲であることが本発明の目的を達成するうえで好ましい。
本発明の(C―a)成分におけるポリアミドブロック(C―1)と親水性ポリマーブロック(C―2)の質量割合(C―1/C―2)は、90/10〜10/90の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは80/20〜20/80、特に好ましくは70/30〜30/70である。
【0041】
本発明のブロック共重合体(C−a)の分子量は特に限定されるものではないが、還元粘度(ηsp/C)(ギ酸溶液中、0.5g/100ml、25℃で測定)は、1〜3dl/gの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは1.2〜2.5dl/gである。
更に、本発明の(C−a)成分は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
この様な(C−a)成分を含む(C)成分としては、三洋化成工業社製ペレスタットNC6321、M―140(商品名)として入手できる。
【0042】
本発明の(C―b)におけるポリエステルとしては、(1)炭素数4〜20のジルカルボン酸成分及び/またはそのエステル形成誘導体と(2)ジオール成分から得られる重合体である。ここで使用される上記(1)としては以下のものが例示される。ここで炭素数とは、カルボキシル基の炭素数及びカルボキシル基の炭素に直結する鎖や環を構成する炭素の総数をいう。
【0043】
炭素数4〜20のジカルボン酸としては、(a)コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、α、ω―ドデカンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクタデセニルジカルボン酸等の炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸、(b)1,4―シクロヘキサンジカルボン酸等の炭素数8〜20の脂環族ジカルボン酸、(c)テレフタル酸、イソフタル酸、1,4―ナフタレンジカルボン酸、2,3―ナフタレンジカルボン酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、2,7―ナフタレンジカルボン酸等の炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸、(d)5―ナトリウムスルホイソフタル酸、5―カリウムスルホイソフタル酸、5―テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸等のスルホン酸基が芳香環に結合した炭素数8〜12の置換芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。また炭素数4〜20のジカルボン酸のエステル形成誘導体としては、前記(a)〜(d)の低級アルキルエステルが挙げられる。これには例えば、コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、シバシン酸ジメチル、α、ω―ドデカンジカルボン酸ジメチル、ドデセニルコハク酸ジメチル、オクタデセニルジカルボン酸ジメチル、1,4―シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アゼライン酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、α、ω―ドデカンジカルボン酸ジエチル、ドデセニルコハク酸ジエチル、オクタデセニルジカルボン酸ジエチル、1,4―シクロヘキサンジカルボン酸ジエチル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジ(2―ヒドロキシエチル)、イソフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジ(2―ヒドロキシエチル)、1,4―ナフタレンジカルボン酸ジメチル、1,4―ナフタレンジカルボン酸ジエチル、2,6―ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,6―ナフタレンジカルボン酸ジエチル、2,7―ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,7―ナフタレンジカルボン酸じエチル、5―ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5―カリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5―ナトリウムスルホイソフタル酸(2―ヒドロキシエチル)、5―カリウムスルホイソフタル酸(2―ヒドロキシエチル)等が挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を併用して用いることができる。なかでも、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、5―ナトリウムスルホイソフタル酸およびこれらのエステル形成誘導体が好ましい。
【0044】
本発明の(C―b)の好ましい重合法は加熱溶融重合法であり、その好ましい具体的例を下記に示す。
(i)ポリエステルを重合した後、ジカルボン酸化合物を添加し、ポリステル成分の両末端をカルボキシル化し、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールを添加重合しブロック共重合体を得る方法。
(ii)ポリエステル重合時に分子両末端が実質上カルボキシル化されるようにジカルボン酸化合物を過剰に添加重合し、更にポリ(アルキレンオキシド)グリコールを添加重合し、ブロック共重合体を得る方法。
(iii)ポリエステル生成成分と過剰にジカルボン酸化合物、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールを規定量一括添加重合しブロック共重合体を得る方法。
上記方法で、特に好ましい方法は、上記(i)の方法である。
又、前記(B−2)成分の説明で述べたアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の塩(D)を使用することができる。
【0045】
上記ポ利エステル成分の分子末端をカルボキシル化する際に用いられるジカルボン酸としては、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、マレイン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等があり、本発明の平均分子量は、好ましくは300〜20,000、更に好ましくは300〜10,000、特に好ましくは500〜5,000の範囲であることが本発明の目的を達成するうえで好ましい。
本発明の(C―b)におけるポリエステル成分と親水性ポリマー成分の質量割合(ポリエステル/親水性ポリマー)は、90/10〜10/90の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは80/20〜20/80、特に好ましくは70/30〜30/70の範囲である。
本発明の(C―b)の分子量は特に限定されるものではないが、還元粘度(ηsp/C)(フェノール/テトラクロロエタン=40/60質量比の混合溶媒を用いて、濃度1.0g/dl、35℃で測定)は、好ましくは0.3〜2.5dl/g、更に好ましくは0.5〜2.5dl/gである。
本発明の(C―b)は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の上記(C)成分の製造に当たり、前記(B)成分で述べた重合触媒等を使用することができる。
又、本発明の(C)成分の製造時(重合中、重合後)に、公知の酸化防止剤、熱安定剤等を透明性を大きく損なわない範囲のおいて存在させることもできる。
この様な(C−b)成分を含む(C)成分としては、例えば竹本油脂社製TEP004、TEP010、TEP008(商品名)として入手できる。
【0046】
本発明の(C)成分は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計100質量%に対して2.9〜30質量%、好ましくは3.8〜28質量%、更に好ましくは4.8〜25質量%、特に好ましくは5.5〜22質量%の範囲で使用される。2.9質量%未満では本発明の熱可塑性樹脂組成物の制電性が劣り、30質量%を超えると本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形品外観性、摺動性、耐衝撃性に劣る。
【0047】
ゴム強化スチレン系樹脂(A−1)を含む本発明の熱可塑性樹脂組成物において、ゴム質重合体(a)の好ましい含有率は、3〜40質量%、更に好ましくは5〜35質量%である。この範囲にあると本発明の熱可塑性樹脂組成物における耐衝撃性と成形加工性の物性バランスに優れる。
【0048】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、AS樹脂、PMMA樹脂等のビニル系樹脂、耐候
(光)剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、可塑剤、摺動剤、着色剤、染料、発泡剤、加工助剤(超高分子量アクリル系重合体、超高分子量スチレン系重合体)等、公知のものが適宜配合することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、連続ニーダー、ロール等により、溶融混練することにより得ることができる。
【0049】
このように調製された本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、プレス成形、シート成形、カレンダー成形、Tダイ押出成形、インフレーション成形、共押出成形、真空成形、
異形押出成形、発泡成形等、またこれらを組合わせた成形法等の公知の成形法により成形品を得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、特にシート、フィルム用途に好ましく、厚みは、10μm〜10mmの範囲のものが好ましい。
上記シート、フィルムは、単層のシート、フィルムであってもよく、また他材料との間で多層化したものであってもよく、また、粘着剤を積層したシート、フィルムであってもよい。更に前記シート、フィルムに公知のガスバリア膜を形成させることもできる。
【0050】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて多層シート、フィルムにする場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、他材との2層シート、フィルム、又他材を中間層とする3層シート、フィルム等がある。ここで使用される他材としては、公知の重合体を用いることができるが、シート、フィルムの透明性を発現させる目的から、透明ABS、透明HIPS、AS樹脂、PS樹脂等の透明スチレン系樹脂、PMMA等の透明アクリル樹脂、透明ポリアミド樹脂等が好ましい。
上記多層シートにおいて、本発明の熱可塑性樹脂組成物の厚みは、安定的な制電性を発現させる目的から好ましくは10〜200μm、更に好ましくは50〜200μm、特に好ましく80〜200μmの厚みである。このような多層シート、フィルムを得る方法で特に好ましい方法は、共押出法である。
【0051】
粘着シート、フィルムを生産する場合、粘着剤との接着性またはプライマー層との接着性を向上させる目的から、基材シート、フィルム(基材樹脂;本発明の熱可塑性樹脂組成物)の表面を公知の種々の処理、例えばコロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、プラズマ処理、UV処理、イオンボンバード処理、溶剤処理を行うことができる。また必要に応じてこれらを組み合わせた処理を行うことができる。
更に基材シート、フィルムと粘着材との接着性を向上させる目的から、基材フィルムに直接または上記表面処理面にプライマー層を形成させることができる。具体的には、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、若しくはアクリル等の樹脂を含むごく薄い、0.1〜5μm程度の厚みの層を形成させる。通常は、溶剤溶液として塗布し、乾燥することにより形成できる。
【0052】
粘着剤としては、スクリーン法、グラビア法、メッシュ法、バー塗工法等で塗工するエマルジョンタイプ、有機溶剤タイプ等、更に押出ラミネート法、ドライラミネート法、及び共押出し法で形成させる熱溶融タイプ等があり、いずれも使用できる。
粘着剤の厚みは、特に規定しないが、通常1〜100μmの範囲である。
このようにして得られた成形品は、リレーケース、ウエハーケース、レチクルケース 、マスクケース等のケース類、液晶トレイ、チップトレイ、メモリートレイ、ICトレイ等もトレイ類、偏光フィルムの保護シート、液晶を用いた表示装置・プラズマディスプレイ等の表面保護フィルム、半導体関連の保護フィルム、クリーンルーム内の保護フィルム等のフィルム類等の電子材料関連分野に好適に使用される。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない、尚、実施例において部および%は、特に断らない限り質量基準である。また、実施例、比較例中の各種測定は、下記の方法によった。
【0054】
[1]評価方法
(1)(A)成分のグラフト率;前記の方法に従った。
(2)(A)成分のアセトン可溶分の極限粘度[η];前記の方法に従った。
【0055】
(3)制電性の測定
成形品を23℃×50%RH条件下で24時間放置した後、三菱化学社製ハイレスター−UP MCP―HT450を用い、印加電圧500Vで表面固有抵抗(Ω)を測定した。
(4)透明性
23℃×50%RH条件下で、BKY―GARDNER社製Haze−gard plu smを用い曇価(%)を測定した。
(5)衝撃強さ
2.4mm厚みの平板を用い、1/2インチ径の打撃棒、速度2.4m/secで平板を破壊させるエネルギー(kgf・cm)を測定し。尚、試験時の環境条件は23℃×50%RHである。
(6)成形品表面外観
成形品の表面を目視観察し、下記基準で評価した。
○;平滑な表面で良好。
×;表面の凹凸があり表面性が悪い。
(7)摺動性
2.4mm肉厚平板とSUS45Cとの間で往復摺動試験を行ない、動摩擦係数(μ)を求めた。
【0056】
[1]熱可塑性樹脂成分
(1)(A)成分
(1−1)製造例1;ゴム強化スチレン系樹脂A1
攪拌機およびジャケット付きオートクレーブを窒素置換した後、ポリブタジエンラテッ クス(平均粒子径2,500Å)50部(固形分)、ラウリル酸カリウム0.5部、イオン交換水120部を投入し、攪拌を開始した。メタクリル酸メチル9.2部、スチレン3.3部を投入した後、昇温を行い、内温が40℃に到達した時点で、スルホキシレート系開始助剤水溶液とクメンハイドロパーオキサイド0.04部を添加し、重合反応を開始した。
重合開始から1時間後から、メタクリル酸メチル27.5部、スチレン10部、tert―ドデシルメルカプタン0.5部、ラウリル酸カリウム0.5部、イオン交換水20部からなるエマルジョン液、クメンハイドロパーオキサオイド0.1部、又スルホキシレート系開始助剤の水溶液を4時間かけて連続的に添加しながら重合反応をおこなった後、更に2時間攪拌を継続したのち、50℃まで冷却し、重合反応を終了させた。反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗したのち乾燥をおこないゴム強化スチレン系樹脂A1を得た。
このもののグラフト率は55%、極限粘度[η]は0.45であった。
【0057】
(1−2)製造例2;ゴム強化スチレン系樹脂A2
攪拌機およびジャケット付きオートクレーブを窒素置換した後、ポリブタジエンラテックス(平均粒子径2,500Å)20部(固形分)、ラウリル酸カリウム0.5部、イオン交換水150部を投入し、攪拌を開始した。メタクリル酸メチル14.7部、スチレン5.3部を投入した後、昇温を行い、内温が40℃に到達した時点で、スルホキシレート系開始助剤水溶液とクメンハイドロパーオキサイド0.05部を添加し、重合反応を開始した。
重合開始から1時間後から、メタクリル酸メチル44部、スチレン16部、ラウリル酸カリウム0.5部、イオン交換水25部からなるエマルジョン液、クメンハイドロパーオキサオイド0.1部、又スルホキシレート系開始助剤の水溶液を4時間かけて連続的に添加しながら重合反応をおこなった後、更に2時間攪拌を継続したのち、50℃まで冷却し、重合反応を終了させた。反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗したのち乾燥をおこないゴム強化スチレン系樹脂A2を得た。
このもののグラフト率は83%、極限粘度[η]は0.62であった。
【0058】
(1−3)製造例3;スチレン系樹脂A3
攪拌機、ジャケット付きオートクレーブを窒素置換した後、窒素気流中でメタクリル酸メチル73.4部、スチレン26.6部、トルエン20部、tert―ドデシルメルカプタン0.1部を投入したのち攪拌及び昇温を開始した。内温が50℃に到達した時点で、ベンゾイルパーオキサイド0.5部を添加し、更に昇温し、80℃に達した後、80℃一定で制御しながら重合反応を行わせた、反応開始後6時間目から1時間を要して120℃まで昇温し、更に2時間反応を行って終了した。100℃まで冷却後、反応混合物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去したあと、粉砕し、VENT付き押出機で脱揮しペレット化し、スチレン系樹脂A3を得た。このものの極限粘度[η]は0.45であった。
【0059】
(2)(B)成分
(2―1);重合体B1
三洋化成工業社製ポリオレフィンーポリエーテルマルチブロック共重合体“ペレスタット230”(商品名)を用いた。
(2―2);重合体B2
三洋化成工業社製ポリオレフィンーポリエーテルマルチブロック共重合体“ペレスタット303”(商品名)を用いた。
【0060】
(3)(C)成分
(3―1);重合体C1
三洋化成工業社製ポリアミドーポリエーテルマルチブロック共重合体“ぺレスタットNC6321”(商品名)を用いた。
(3―2);重合体C2
三洋化成工業社製ポリアミドーポリエーテルマルチブロック共重合体“ぺレスタットM―140”(商品名)を用いた。
(3―3);重合体C3
三洋化成工業社製ポリアミドーポリエーテルマルチブロック共重合体“ぺレスタットMAX330”(商品名)を用いた。
(3―4)重合体C4
竹本油脂社製ポリエステルーポリエーテルマルチブロック共重合体“TEP0044”
(商品名)を用いた。
【0061】
(4)その他の成分(E)
(4―1);E1
滑剤・摺動助剤として三洋化成工業社製ポリエチレンワックス“サンワックス171―P”(商品名)を用いた。
(4―2);E2
加工助剤として、三菱レイヨン社製超高分子アクリル系重合体“メタブレン P531A ”(商品名)を用いた。
【0062】
【表1】


実施例1〜 16、比較例1〜4
表1記載の配合割合成分をヘンシエルミキサーで混合した後、二軸押出機(シリンダ ー設定温度220℃)で溶融混練し、ペレット化した。射出成形(シリンダー設定温度220℃)で透明性・摺動性・外観性評価用試験片(厚み2.4mm)、耐衝撃性評価用試験片、制電性評価用試験片(2.1mm肉厚)を成形し、前記評価法で評価した。
又、実施例1〜3の組成物を表裏それぞれ0.1mm、中心部分が重合体A2であるトータル厚みが1mmである三層シートを共押出で得た。このシートについて、前記方法で、制電性、透明性、成形品外観を測定した。又、本シートを用いて真空成形を行い、良好なトレイを得た。実施例1の組成物を用いたものを実施例14、実施例2が実施例15、実施例3が実施例16にそれぞれ対応する。
表1に示される結果から、以下のことが明らかである。
本発明の実施例1〜16の成形品は、制電性、透明性、耐衝撃性、摺動性、及び成形品外観のいずれにも優れている。
一方、比較例1は、本発明の(B)成分の使用量が発明の範囲外で少ない例であり、制電性及び摺動性が劣る。比較例2は、本発明の(B)成分の使用量が発明の範囲外で多く、(C)成分の使用量が発明の範囲外で少ない例であるり、透明性、衝撃強さ、成形品外観及び摺動性が劣る。比較例3は、本発明の(A)成分の使用量が発明の範囲外で少なく、(C)成分の使用量が発明の範囲外で多い例であり、成形品外観及び摺動性が劣る。比較例4は、本発明の(A)成分の使用量が発明の範囲外で多く、(B)、(C)成分の使用量が発明の範囲外で少ない例でり、制電性及び摺動性が劣る。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、制電性、透明性、耐衝撃性、摺動性及び成形品外観性に優れており、高度な性能が要求される半導体関連分野、液晶関連分野、プラズマディスプレイ関連分野、クリーンルーム内の各種部品として適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ゴム質重合体(a)存在下に(メタ)アクリル酸エステル化合物及び芳香族ビニル化合物、更に必要に応じてこれらの単量体と共重合可能な他のビニル単量体からなる単量体成分(b)を重合してなるゴム強化スチレン系樹脂(A−1)、及び/又は、単量体成分(b)を重合してなるスチレン系樹脂(A−2)55〜97質量%、
(B)オレフィンのブロック(B―1)と親水性ポリマーのブロック(B―2)とを有するブロック共重合体0.1〜15質量%
(C)ポリアミド及び/またはポリエステルのブロック(C―1)と親水性ポリマーのブロック(C―2)とを有するブロック共重合体2.9〜30質量%、
上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計100質量%からなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
【請求項3】
シートまたはフィルムである請求項2記載の成形品。
【請求項4】
請求項2記載の成形品が、請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物と請求項1記載の(A)成分からなる多層シートまたは多層フィルム。

【公開番号】特開2006−152036(P2006−152036A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341246(P2004−341246)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】