説明

熱可塑性複合体並びにそれらを製造および使用する方法

繊維状基質および1種もしくはそれ以上の構成の重合体を含む芯複合体層(20)、並びに芯複合体層の少なくとも1つの表面に適用され、それが高性能重合体と配合された重合体を形成しそれにより改良された靭性および処理時間を与える表面層(10)重合体を有する熱可塑性組成物、並びにそれらを製造および使用する方法がここに提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明の主題は高い強度対重量比を有する構造体を作成するための熱可塑性複合体材料およびプリプレグに関する。より特に、ある種の態様では本発明は急速な積層および形成工程における使用のための積層された熱可塑性複合体に関し、その複合体は結晶化度において高く且つ急速な積層または形成工程の工程窓の最中に部分的にもしくは完全に結晶化する少なくとも1種の重合体を含有する内層領域並びに低いまたは無の結晶化度を有し且つ内層領域の重合体と相溶性および/または混和性である重合体を含有しておりそして内層領域の重合体より低い溶融および処理温度を有する外層領域を有する。そのような熱可塑性複合体は航空宇宙産業および他の高性能自動車/工業用途において有用である。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の記述
強化された熱可塑性および熱硬化性材料は、例えば、航空宇宙、自動車、工業/化学、およびスポーツ用品産業において広い用途を有する。熱可塑性樹脂は硬化前に強化用材料中に含浸されるが、樹脂状材料は粘度が低い。熱硬化性複合体は数種の欠点をこうむる。繊維に対する損傷を回避してこれらの複合体を製造するためには低い成型圧力が使用される。しかしながら、これらの低い圧力はマトリックスコーティング中の空間または欠陥を生じうる複合体内の気泡生成を抑制することを困難にする。それ故、熱硬化性複合体に伴う多くの処理上の問題は空間のないマトリックスを製造するための担持された空気または揮発性物質の除去に関連する。プリプレグ方法により製造される熱硬化性複合体は、樹脂の流れを調節して樹脂の厚さがマトリックス中の気泡を妨害するために圧力を変えながらの長い硬化時間を必要とする。大きな構造体の最近の製法は生産速度を高めるための熱硬化性複合体材料のロボット配置を利用するが、成分に関するその全体的な生産速度はオートクレーブ工程段階における長い硬化およびその工程段階用の材料を製造するための関連操作により制限される。例えば樹脂注入の如きある種の高容量方法はプリプレグ段階を回避するが、硬化時間全体にわたる工程の定期的な監視と共に特殊な装置および材料を依然として必要とする(例えば、特許文献1および特許文献2)。熱硬化性樹脂は小容量複合体用途においては成功を収めてきたが、これらの樹脂の処理における困難さが大容量用途におけるそれらの使用を制限してきた。
【0003】
対照的に、熱可塑性組成物は比較的高い粘度のために強化用材料の中に含浸させることがさらに困難である。他方で、熱可塑性組成物は熱硬化性組成物より多くの利点を与える。例えば、熱可塑性プリプレグはより急速に製品に製作できる。他の利点は、そのようなプリプレグから製造される熱可塑性製品を再循環しうることである。さらに、熱可塑性マトリックスの適切な選択により熱く湿った環境において優れた性能を有する損傷耐性複合体が得られうる。熱可塑性樹脂は高分子量の長鎖重合体である。これらの重合体は溶融時に高度に粘着性でありそしてそれらの流動性質においてはしばしば非ニュートン性である。それ故、熱硬化性物質は100〜5,000センチポイズ(0.1〜5 Pa*s)の範囲内の粘度を有するが、熱可塑性物質は5,000〜20,000,000センチポイズ(5〜20,000 Pa*s)、そしてより典型的には20,000〜1,000,000センチポイズ(20〜1000 Pa*s)、の範囲にわたる溶融粘度を有する。熱硬化性物質および熱可塑性物質の間の3桁の粘度差にもかかわらず、ある種の方法は繊維材料を積層するための両方のタイプの材料に適用されてきた。
【0004】
繊維で強化されたプラスチック材料は、最初に繊維強化剤に樹脂を含浸させてプリプレグを製造し、次に2つもしくはそれ以上のプリプレグを固めてラミネートとし、場合によ
り追加の製造段階を含めることにより、製作できる。熱可塑性物質の高い粘度のために、熱可塑性プリプレグを製造するための方法のほとんどは個別のフィラメントをコーティングするよりむしろ繊維束の外側を熱可塑性重合体粉末でコーティングすることを包含する。重合体粉末を次に溶融させて重合体を個別のフィラメントの周りに、中におよび上に強制的に送る。幾つかの方法は繊維への直接的な溶融を適用する。平行にされた繊維の乾燥ウエブに重合体をコーティングしそして重合体を繊維の中にそして周りに強制的に送る加熱工程を適用することによりテープを製造することができる(例えば、特許文献3および4を参照のこと)。平行にされた繊維の乾燥ウエブをコーティングしそして含浸させるために使用される別の方法は、ウエブを微細な熱可塑性重合体粒子の水性スラリーを通して引っ張り、それにより重合体粒子をフィラメント束の内部に留めることによる。この方法における連続的な熱および圧力が水を沸騰させそして次に重合体を溶融させてそれをフィラメントの中および周りに強制的に送る。この方法は特許文献5、特許文献6、特許文献7および特許文献8に記述されている。水性スラリー含浸方法の変法は、重合体粒子用の分散剤としての水および界面活性剤の使用を省略しそしてその代わりに粒子を空気の流動床の中で静電的に荷電して粒子をフィラメント束の中に留めることである。特許文献9に示されているように、その後の熱および圧力の領域が重合体を溶融させてフィラメント束をコーティングおよび/または含浸させる。それ故、当業者にとっては、利用可能な工程装置、並びに重合体製品形状(片、微細粉末、フィルム、不織ベール、ペレット)および溶融粘度の適切な選択があれば繊維状基質をコーティングおよび/または含浸させるための複数の方法がある。複合体製品製作用の既知の方法は手動式および自動化された製法を包含する。手動式の製法には専門家による材料の手動による切断およびマンドレルの表面への配置が伴われる。この製作方法は時間がかかり且つ価格が増加し、そして積層中に多分不均一性をもたらしうるであろう。既知の自動化された製作技術は、平坦テープ積層機械(FTLM)およびコンツーアテープ積層機械(CTLM)を包含する。典型的には、FTLMおよびCTLMの両者とも上部に複合体材料が適用される作業表面の上を移行する単一の複合体材料分配器を使用する。複合体材料は典型的には一度に(複合体材料の)一列の下に置かれて、所望する幅および長さの層を作成する。別の層をその後に前層の上に増やして、所望する厚さの積層を与えることができる。FTLMは典型的には複合体材料を平坦な転写シートに適用し、転写シートおよび積層がその後にFTLMから取り出されそして型またはマンドレルの上に置かれる。対照的に、CTLMは典型的には複合体材料をマンドレルの作業表面に直接的に適用する。FLTMおよびCTLM機械は自動化されたテープ下置き(ATL)および自動化された繊維配置(AFP)機械としても知られており、分散器は普遍的にはテープヘッドと称される。
【0005】
ATL/AFP機械の生産性は機械パラメーター、複合体部分積層特徴、および材料特性に依存する。例えば開始/停止時間、経過移行時間、およびプライの切断/追加の如き機械パラメーターが全体的な時間を決め、ATL/AFP上のテープヘッドはマンドレル上の積み材料である。例えば局在化されたプライ増加および部分寸法の如き複合体積層特徴もATL/AFP機械の全体的な生産性に影響する。ATL/AFP機械生産性に影響を与える重要な材料因子は熱可塑性マトリックスとの比較時には熱硬化性樹脂複合体に関するものと同様であるが、依然として幾らかの重要な差異がある。熱硬化性樹脂マトリックス複合体に関しては、重要な因子は含浸水準、表面樹脂被覆率、および「粘着性」である。「粘着性」は器具または積層上のテープ/トウの位置をそれがその上に配置された後に維持するために必要な付着水準である。熱硬化性樹脂は部分的に反応しそしてその結果として「粘着性」は2つの積層表面間の分子拡散および極性の未反応の化学的部分間の化学吸着の組み合わせにより得られる。熱硬化性樹脂の未反応性のために、ATL/AFP方法は一般的に室温ではあるが材料の粘着性水準に対する水分敏感性のために湿度調節室の中で行われる。
【0006】
ATL/AFP機械生産性に関して熱可塑性マトリックス複合体は熱硬化性マトリックス複合体と同様な重要因子を有するが、熱可塑性重合体材料は一般的にテープ内で完全に反応す
るためそれは周囲条件において「粘着性」を欠く。完全に反応した熱可塑性物質は一般的に低い表面エネルギーを有しており、室温における付着性をありそうもなくする。さらに、高性能熱可塑性マトリックスは室温においてそれらの「ガラス」状態にあり、「粘着性」に関する分子量拡散機構を事実上不可能にする。それ故、2つの表面間で重合体連鎖の分子拡散の発生を促進させるために追加のエネルギーを熱、超音波、光(レーザー)、および/または電磁(誘導)の形態で来入する積層テープに動的に適用して材料の温度をそれらの軟化および/または溶融温度より高く上昇させることにより、熱可塑性複合体中で「粘着性」が得られる。重合体連鎖が表面を越えて拡散したら、ATL/AFPヘッドからの積層圧力が除かれた時に積層された積層の歪みを防ぐ水準まで材料に加えられる追加のエネルギーを除去する必要がある。積層の中へのおよび外へのエネルギーのこの急速な流れがエネルギー使用量および下置き速度を望ましくさせて、生ずる複合体部分の温度性能を損なわずに最低可能温度およびエネルギーでこの方法を行う。
【0007】
繊維に樹脂を含浸させるために使用された工程の間に樹脂が繊維束、トウ、またはロービングからの空気を完全に置換できないことから生ずる空間を除くためには典型的に固めが必要である。プリプレグの個別に含浸させたロービング糸、トウ、プライ、または層は普通はオートクレーブ中での圧縮により熱および圧力によって固められる。固め段階は一般的には真空下における比較的長い時間にわたる非常に高い圧力および高い温度を必要とする。さらに、オートクレーブまたはオーブンを使用する固め工程段階は、器具全体にわたる密封部品を積層に与えて空気除去用の真空を可能にしそしてオートクレーブ中の固めを行うのに必要な圧力差を与えるために「バギング」操作を必要とする。この工程段階は複合体部分操作の全体的な生産性をさらに減ずる。それ故、熱可塑性複合体に関しては、テープをATL/AFP機械を用いて基質に積層しながらインシトゥで固めて低空間複合体にすることが有利であろう。この方法は典型的にはインシトゥATL/AFPと称されそしてこの方法で使用される材料はインシトゥ等級テープと称される。
【0008】
一般的に、熱可塑性複合体は良好な品質のラミネートを製造するために必要な高い処理温度(最近では約400℃)、高い圧力、および長い成型時間を包含する種々の因子の理由から現在までに限定された成功しか収めていない。研究のほとんどは高性能重合体と構造繊維の組み合わせに焦点が当てられており、それは工程問題を悪化させただけである。プリプレグプライを適切に固めるために典型的に必要な時間の長さがその部分に関する生産速度を決めるため、最短時間で最良の固めを達成することが望ましい。さらに、成型および他の製作利点に関する1片当たりの低下されたエネルギー消費量の理由からより低い固め圧力または温度およびより短い固め時間が費用のかからない生産方法をもたらすであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,132,755号明細書
【特許文献2】米国特許第5,721,034号明細書
【特許文献3】米国特許第4,549,920号明細書
【特許文献4】米国特許第4,559,262号明細書
【特許文献5】米国特許第6,372,294号明細書
【特許文献6】米国特許第5,725,710号明細書
【特許文献7】米国特許第4,883,552号明細書
【特許文献8】米国特許第4,792,481号明細書
【特許文献9】米国特許第5,094,883号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、繊維で強化された熱可塑性材料および軽量の強化された複合体を製造するための現在利用可能な方法はさらなる改良を要する。自動化された積層機械上での改良された工程速度およびより低い処理温度を有し且つオートクレーブまたはオーブン段階を有さない熱可塑性材料は当該技術において有用な進歩でありそしてとりわけ航空宇宙産業および高性能自動車産業において急速な受容を見出しうるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の要旨
ここに詳述されている発見は、より高温で溶融し、より急速に結晶化しそして最初に表面重合体の溶融工程温度において処理できるが冷却時にはより急速に結晶化するマトリックス重合体との中間にある速度で結晶化するマトリックス重合体が含浸されたテープまたはトウを含有する芯の表面に(例えば積層により)適用される、より低温で溶融し、よりゆっくり結晶化する半結晶性重合体フィルムを提供する。この発見は、例えば、自動化されたテープ下置き/自動化された繊維配置(ATL/AFP)機械上で、下置き後にオートクレーブまたはオーブン段階後工程を必要としないことを除いて、熱硬化性物質をベースとしたテープに匹敵する速度で処理できるインシトゥ等級の熱可塑性テープおよびトウプレグの開発において有用である。部分製作の価格モデル化は、後処理(オートクレーブ/オーブン)段階を省略することにより製作価格(繰り返し)の30%を節約できることを示している。さらに、この発見は大複合体を製造するための初期資本および装置費用投資も減ずるであろう。
【0012】
従って、ここに詳細に記述されている発明は、一面では、繊維状基質および少なくとも1種の高性能重合体を含む芯複合体層、並びに非晶質性重合体、ゆっくり結晶化する半結晶性重合体、またはそれらの組み合わせから選択される表面層重合体を有する熱可塑性組成物であって、表面層重合体が該芯複合体層の少なくとも1つの表面上に適用されそして高性能重合体と配合された重合体を形成し、表面層重合体のTmおよびTprocessが芯複合体層の高性能重合体のTmおよびTprocessより少なくとも10℃低い熱可塑性組成物を提供する。
【0013】
別の面では、本発明はここに記述されている発明に従う熱可塑性複合体から製造される製造製品に関する。そのような製品は、例えば、航空機/航空宇宙産業においてとりわけ有用である。
【0014】
繊維状基質に少なくとも1種の高性能重合体を含浸および/またはコーティングし、そしてここに詳細に記述されている表面層重合体を芯複合体の少なくとも1つの表面上に適用し、それにより表面層重合体および芯複合体層の高性能重合体の間に重合体配合物を形成することによるここに詳細に記述されている熱可塑性組成物を製造する方法も本発明により提供される。
【0015】
自動化されたテープ下置きまたは自動化された繊維配置機械上での使用のためのインシトゥ等級の熱可塑性複合体テープも提供される。
【0016】
本発明のこれらおよび他の目的、特徴および利点は、添付されている図面および実施例と関連させた本発明の種々の面の以下の詳細な記述から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図面の簡単な記述
【図1】本発明に従う熱可塑性複合体の態様: (A)二層複合体; (B)三層複合体。芯マトリックス20の急速に結晶化する高融点高性能重合体と相溶性および/または混和性である表面重合体10としてのゆっくり結晶化する低融点熱可塑性重合体または非晶質性重合体。
【図2】示差走査熱量計(DSC)曲線 - CYPEK(登録商標) PEKK DS-E フィルム(A); APC-2 PEEK/IM7 テープ(B); (C)組み合わせテープ - CYPEK(登録商標) PEKK DS-EフィルムとのラミネートAPC-2 PEEK/IM-7(G)はテープ表面上の6ミクロンCYPEK(登録商標) PEKK DS-E重合体層に指定できるDSC曲線の早期部分において強い信号を示す。この重合体は約300℃の溶融溶解ピークを有しそしてこれは第一の熱曲線で見ることができる。10℃およびそれより高い冷却速度を有するCYPEK(登録商標) PEKK DS-E重合体は冷却時に結晶化ピークを有さないであろう。PEKK (CYPEK(登録商標) PEKK DS-E)と積層されたAPC-2/IM-7は309℃におけるベースAPC-2 PEEK/IM-7テープと同様なピーク結晶化温度を有しており、それによりCYPEK(登録商標) PEKK DS-Eの表面層は積層された材料の結晶化速度に悪影響を有していなかったことを示唆しており、CYPEK(登録商標) PEKK DS-EとのラミネートAPC-2/IM-7(C)は非晶質状態にあるCYPEK(登録商標) PEKK DS-Eで起きるかもしれない冷却結晶化ピークを有していないベーステープAPC-2 PEEK/IM-7材料とさらに似て行動する曲線を示している。曲線は、CYPEK(登録商標) PEKK DS-Eよりはるかに急速に結晶化するベーステープAPC-2 PEEK/IM7が核生成性でありそしてCYPEL(登録商標) PEKK DS-E表面層重合体の結晶化速度を促進させることを示している。
【図3】インシトゥATP下置きの超音波走査 - (A) ベースAPC-2 PEEK/IM7単一方向テープ; (B) 三層CYPEK(登録商標) PEKK DS-E//APC-2 PEEK/IM7//CYPEK(登録商標) PEKK DS-E単一方向テープ。赤色は低空間複合体(好ましい)を示す信号伝達を示すが、青色はラミネート中の高い多孔性による高い信号損失を示す。
【図4】熱可塑性組成物の顕微鏡断面: (A) PEKK DS-M AS-4ラミネート対照; (B) 0.25 mm PEKK DS-Eを有するPEKK DS-M AS-4。PEKK DS-Eフィルム(4B)はプライ間の空間を増加させるプライ間スペーサーとして作用するが、対照(4A)はプライ間のほとんどのフィラメント−フィラメント接触を有する。
【0018】
発明のある種の態様の詳細な記述
以上でまとめられたように、この発見は独特な樹脂に富んだ層を1種もしくはそれ以上の高性能重合体を含浸させた繊維状基質を含有する芯複合体層の1つもしくはそれ以上の表面上に含有する熱可塑性組成物を提供する。独特な樹脂に富んだ層はインシトゥで配置された熱可塑性複合体材料の改良された湿潤および結合性を典型的な熱可塑性プリプレグ複合体材料で可能なものより高い下置き速度で与える。そのような独特な樹脂に富んだ層は、単一方向テープもしくはウエブ、繊維トウ/プレグ、または織物、および例えばマットまたはベールの如き不織材料を包含するがそれらに限定されない熱可塑性含浸製作方法において典型的に使用される繊維材料を含有するいずれかの芯マトリックスに適用することができる。繊維で強化された複合体材料は一般的にテープ、織布、不織布、紙、およびそれらの混合物として分類される。「テープ」は一般的に片材料の単一軸に沿って伸びる一軸強化繊維をさす。用語「布」は一般的に片材料の中に少なくとも2つの異なる軸に沿って置かれた強化繊維をさす。布は、それぞれ2つ、3つ、または4つの異なる軸内に伸びる繊維を示す二軸、三軸および四軸性として市販されている。繊維は場合により互いに織ることもでき、または不織布として製作することもできる。莫大な数の複合強化繊維、例えば、炭素繊維、Kevlar(登録商標)繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、およびそれらの混合物、が市販されている。金属箔も当該技術で既知であり、そして複合体製品の中に含むことができる。そのような金属箔はしばしば積層複合体の中に材料層として散在している。片材料は広範囲の幅で市販されている。繊維強化材料片用の1つの普遍的な幅は6インチである。本発明は種々の片材料幅を意図しておりそして適合可能である。
【0019】
芯複合体層
基質
ここに記述されている熱可塑性複合体の芯複合体層要素(またはベース)は繊維状基質および均一に分布された高性能熱可塑性重合体樹脂を含有する。ある種の態様では、繊維
状基質は炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維およびそれらの混合物を包含しうるが、それらに限定されない。1つの態様では、例えば、繊維状基質はポリアクリロニトリル(PAN)をベースとした炭素繊維である。
【0020】
ある種の態様では、繊維状基質は熱可塑性複合体の全重量の50重量%〜80重量%を含む。繊維状基質は当業者に既知であるいずれかの製作/含浸方法により少なくとも1種の高性能重合体を含浸させた単一方向テープ(ユニテープ)ウエブ、不織マットもしくはベール、繊維トウ、または織物材料でありうる。適する含浸方法は当業者に既知でありそして例えば熱−溶融含浸、水性スラリー含浸、粉末コーティング、押し出しフィルム積層、およびそれらの組み合わせを包含するが、それらに限定されない。
【0021】
高性能重合体
より低い処理温度を有しながら依然として高性能重合体に既知である性能目標を維持する熱可塑性複合体テープおよび/またはリボンを得ることが本発明の目的である。従って、芯複合体層の均一に分布された熱可塑性樹脂は表面層重合体のものより高い溶融温度およびより急速な結晶化速度を有する高性能重合体である。ここで使用される際には、用語「高性能重合体」は280℃より高いかもしくはそれと同等な溶融温度(Tm)および310℃より高いかもしくはそれと同等な工程温度(Tprocess)を有するいずれかの熱可塑性重合体をさす。ある種の態様では、芯複合体層のより高性能の重合体はポリアリールエーテルケトン類(PAEK)、PAEK配合物、ポリイミド類、およびポリフェニレンスルフィド類(PPS)から選択される。これらの重合体は全て熱可塑性技術の専門家に既知でありそして容易に且つ商業的に入手可能である。
【0022】
ある種の態様では、PAEKはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、およびポリエーテルケトンケトンエーテルケトン(PEKKEK)から選択される。
【0023】
テレフタロイル(「T」)対イソフタロイル(「I」)比(「T:I比」)を調節することによりPEKKの融点および結晶化速度を変更しうることは既知である。PEKKの最近の合成では、「T」および「I」はブロック共重合体を製造するための塩化テレフタロイルおよび塩化イソフタロイルの相対量により調節される。理論により拘束しようとは望まないが、「I」断片の量の増加が重合体骨格中により多い「キンク」を入れ、それにより連鎖回転に関する速度および活性化エネルギーを遅らせて結晶構造に関する最少エネルギーを得ることが信じられている。これがより低い溶融温度およびより遅い結晶化速度を生ずる。しかしながら、本発明に従う熱可塑性組成物の性能目的を達成するためには、高性能重合体は工程の時間枠内で結晶化することが必要である。それ故、芯複合体層中の高性能重合体は急速結晶性(すなわち、約7秒以内)でなければならない。この理由のために、ある種の態様では高性能重合体が20%より高い結晶化度を有する半結晶性状態で存在する(すなわち、高結晶性複合体を有する)ことが好ましい。従って、高性能重合体がポリエーテルケトンケトン(PEKK)から選択される時には、それは70:30〜100:0のT:I比を有する。例えば、態様の2つは70:30〜100:0の範囲内のT:I比を有するCYPEK(登録商標) HTおよびCYPEK(登録商標) FCを包含する。70:30より低いT:I比を有するPEKK-タイプ重合体を使用できるが、核生成剤も使用して重合体が結晶化する速度に高めるために70:30 - 100:0のT:I比を有する重合体のものに到達させなければならない。カーボンブラックがそのような核生成剤の一例である。55:45のT:I比を有する重合体中へのより高いT:I比(例えば、90:10)を有する重合体の配合も結晶化の速度を高めうる。本発明での使用に適する他の核生成剤も複合体技術の専門家に既知でありそして本発明での使用も意図される。
【0024】
ポリアリールエーテルケトン類は複合体技術の専門家に既知でありそしてAPC-2(登録商標) PEEK、CYPEK(登録商標)-FCおよび/またはCYPEK(登録商標)-HTを包含するが
それらに限定されず、それらは全てニュージャージー州、ウッドランド・パークのサイテック・エンジニアード・マテリアルズ(Cytec Engineered Materials)/サイテック・インダストリーズ・インコーポレーテッド(Cytec Industries Inc.)から市販されている。
【0025】
さらに他の態様では、高性能重合体は1種もしくはそれ以上のポリアリールエーテルケトンと混合されたポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィドおよび/またはポリエーテルスルホンを有するPAEK配合物である。高性能重合体はポリイミド類、例えば、Aurum N-TPI(登録商標)およびAvimid K3B(登録商標)、からも選択できる。
【0026】
芯複合体層中の高性能重合体の樹脂含有量は全体の26重量%〜90重量%の範囲にわたり、それにより500 ksiより高い樹脂弾性率およびG1cにより測定された600 J/m2より高い層間破壊靭性を有する層を与える。高性能重合体の粘度は良好なフィラメント湿潤性(wet out)が得られるように調節される。結局、芯複合体層の高性能重合体は重合体マトリックスの一部として作用しそして重合体が芯複合体層に適用される時に表面層重合体との重合体配合物を形成する。ここで使用される際には、用語「重合体配合物」は本発明が関連する技術の専門家によりこれらの用語が知られており且つ理解されているような相溶性および混和性の重合体配合物を包含する。
【0027】
表面層重合体
従って、表面層重合体は芯複合体層の1つまたは2つの表面上に適用される。表面層重合体が芯複合体層の1つだけの表面上に適用される時には、二層複合体が形成される。それが芯複合体層の2つの表面上に適用される時には、生ずる複合体構造を三層と称する。芯複合体マトリックスの高性能重合体および表面層重合体の間の相溶性および/または混和性配合物が所望されるため、表面層重合体はそれが高性能重合体より低い融点および処理温度を有するように選択される。ある種の態様では、表面層重合体の溶融および/または処理温度は高性能重合体の溶融および/または処理温度より少なくとも10〜20℃(例えば、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、または20℃)低い。
【0028】
表面層重合体の形態は非晶質性および/またはゆっくり結晶化する(すなわち、低結晶化度の−典型的に20%より低い結晶化度の)半結晶性重合体でありうる。非晶質性および半結晶性重合体の配合物も本発明による表面層としての使用が特に意図される。ある種の態様では、表面層重合体はポリアリールエーテルケトン類(PAEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド類、PEIおよび/またはポリエーテルスルホン(PES)および/またはポリフェニレンスルフィド(PPS)とのPAEK共重合体、並びにPEI、PES、PPSおよび/またはポリイミド類の1種もしくはそれ以上とのPAEK配合物から選択される。
【0029】
特定の態様では、例えば、表面層重合体はPEEKまたは例えば限定するものではないがジフェニルスルホンと配合されたPEKKから選択されるPAEKを包含する。表面層重合体がPEKKを包含する時には、表面層重合体のゆっくりした結晶化速度を維持するためにPEKKのT:I比は0:100〜70:30の範囲にわたる。特定の態様では、表面層重合体のT:I比は0:100〜70:30の範囲内のT:I比を有するCYPEK(登録商標) DSを使用する。本発明での使用に利用可能な適するPEKK重合体はニュージャージー州、ウッドランド・パークのサイテック・インダストリーズ・インコーポレーテッドから市販されているもの、例えばCYPEK(登録商標) DS-EまたはCYPEK(登録商標) DS-M、を包含するが、それらに限定されない。
【0030】
生ずる表面層はK1c > 1.5 MPa-m0.5より高い破壊靭性を有する。表面層重合体は芯複合体層に1層当たり1〜20ミクロンの範囲内の厚さで適用される。ある態様では、表面層の厚さは1層当たり1〜10ミクロンの範囲内であることができ、別の態様では、それは1層当たり4〜6ミクロンの範囲内でありうる。従って、三層構造では、表面層重合体の厚さは
2〜40ミクロンの範囲内でありうる。熱可塑性組成物は全体として25〜400ミクロンの範囲内でありうる。
【0031】
ある種の態様では、表面層重合体は金属コーティング並びに/または微細−および/もしくはナノ−粒子から選択される多機能剤をさらに包含しうる。そのような多機能剤は基質の複合体特徴を高め、それにより熱可塑性複合体の電気伝導性、靭性、酸素透過性、結晶化速度および/または溶媒耐性を改良しうる。
【0032】
表面層重合体および/または高性能重合体および/または芯マトリックスは、衝撃改質剤、型抜き剤、潤滑剤、チオキソトロープ、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、顔料、着色剤、非繊維状強化剤および充填剤、結晶化速度を高めそして収縮を緩和するためのナノ−グラファイト小板、溶媒耐性を改良するためのナノ−粘土、ナノ−金属(例えばニッケルフィブリル)、衝撃強化用の粒子インターリーブ、OML採光ストライク(lightning strike)用のインターリーブ中のCVDベール織物、衝撃性能を改良するための繊維または重合体ベール、圧力がATL機械により適用される際の空気除去を助けるための表面仕上げ剤、およびプライ間領域を越えるレプテーション修復(reptation healing)を加速するための高流速表面コーティングの如くであるが限定されるものではない1種もしくはそれ以上の添加剤をさらに包含しうる。
【0033】
複合体
上記の芯マトリックスおよび表面層重合体を使用して、低樹脂含有量の高融点熱可塑性樹脂テープまたはプリプレグの表面を1〜20ミクロンの範囲内の厚さを有する低融点の相溶性または混和性重合体で積層またはコーティングすることにより全樹脂の30-95重量%の範囲内の全樹脂含有量(すなわち、高性能重合体の樹脂含有量+表面層重合体の樹脂含有量)を有する樹脂に富んだ表面を有する熱可塑性複合体が提供される。本発明に従う熱可塑性組成物の全厚さは25〜400ミクロンの範囲にわたる。本発明の熱可塑性複合体がテープである時には、例えば、低処理温度重合体はプライ積層工程力学が起きる表面に配置される。これが低処理温度重合体(すなわち、表面層重合体)の表面コーティングを溶融させ、注入させ、そして表面円滑化させて芯マトリックス/ベーステープとし、それによりインシトゥ等級の配置可能な熱可塑性テープまたはトウプレグを得る。円滑で平らな表面層を有することにより、テープに関する積層の物理的性質は2つの積層表面(すなわち、芯マトリックス/ベースおよび表面層重合体)間の「密な接触」が接触開始の数秒以内に起きるようなものであろう。
【0034】
非限定例によると、CYPEK(登録商標) DS-Eは非常にゆっくり結晶化し、それにより結晶化の開始前にTgより20-30℃高い温度において溶融しうる非晶質状態のテープの表面上に積層されたフィルムが残る。CYPEK(登録商標) DS等級PEKKはより急速に結晶化するポリアリールエーテルケトン、例えばPEEK、CYPEK(登録商標) FC、およびCYPEK(登録商標) HT、と配合された時には数倍の桁でさらに急速に結晶化する。それ故、この表面層は非晶質状態で開始しうるが、それは実際にはテープ配置工程中にインシトゥテープヘッドの複数の通過後に結晶化するであろう。最終的な結果は、高結晶性領域とそれより結晶性が小さい層間層との交互層を有することである。この方法で製造される複合体構造は、例えば、ベーステープより最少でも10℃ほど低い処理温度、インシトゥの熱可塑性物質配置工程の工程窓の最中に部分的もしくは完全に結晶化した層間領域、層間におけるより低い残存応力増加の理由からより良好な衝撃耐性および改良された溶媒耐性をもたらすであろう結晶化度およびその結果として靭性が低い層間領域、並びに低樹脂含有量テープに対するフィルム積層または低樹脂含有量テープの粉末/溶媒コーティングによる積層テープの製造方法を有するであろう。
【0035】
本発明の熱可塑性複合体は、硬くなった翼および胴体表面用のインシトゥでの熱可塑性
テープ/トウ配置、硬化剤製作用の連続的な圧縮成型(CCM)およびロール成形方法、固められた平らなパネルおよび航空機床パネルを製造するための二重ベルトプレス、インシトゥのフィラメント巻き円筒構造体、並びに複合体組み立て品の溶融結合および溶接を包含するがそれらに限定されない急速な積層および成形方法を用いて種々の製品に成形することができる。
【0036】
方法
本発明は、繊維状基質に高性能熱可塑性重合体を含む芯複合体層を含浸および/またはコーティングし、そして表面層重合体を芯複合体層の少なくとも1つの表面上に適用することにより25〜400ミクロンの範囲内の厚さを有しそしてATL機械および製作装置上で改良された処理温度および処理時間を有する熱可塑性組成物を製造する方法も提供する。この明細書を通して論じられているように、表面層重合体はゆっくり結晶化する半結晶性重合体もしくは非晶質性重合体(またはそれらの混合物)のいずれかから選択されるため、表面層重合体は芯複合体層の高性能重合体との相溶性および/または混和性配合物を形成する。生ずる熱可塑性組成物はこの明細書および特許請求の範囲に詳述されているような特性を有する。インシトゥ等級の熱可塑性複合体テープを与えるための同様な段階も提供される。
【0037】
本発明の熱可塑性組成物の製造においては、表面層重合体が芯複合体材料に粉末もしくは溶媒コーティング、フィルム積層、不織ベール積層、火炎/プラズマコーティング(例えばモンタナ州のレソジン(Resodyn)によるサーマル・スプレイ・システム(Thermal Spray System))、およびそれらの組み合わせを包含するがそれらに限定されない当該技術で既知のいずれかの適当な手段により適用される。或いは、表面層重合体を積層することができる。積層されたテープまたは基質を次に冷却することができる。繊維状基質は以上ですでに詳述したような繊維のいずれかから選択することができそして基質またはテープを1つまたは2つの表面上に積層することができる。
【0038】
他の態様
1.a)繊維状基質および1種もしくはそれ以上の高性能重合体を含んでなる芯複合体層、並びに
b)非晶質性重合体、ゆっくり結晶化する半結晶性重合体、およびそれらの混合物から選択される表面層重合体
を含んでなる熱可塑性組成物であって、表面層重合体が該芯複合体層の少なくとも1つの表面上に適用されて該芯複合体層の高性能重合体と配合された重合体を形成し、そして表面層重合体のTmおよびTprocessが芯複合体層の高性能重合体のTmおよびTprocessより少なくとも10℃低い熱可塑性組成物。
2.繊維状基質が炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、およびそれらの混合物から選択されそして全複合体重量の50〜80重量%を構成する、態様1に記載の熱可塑性組成物。
3.繊維状基質がポリアクリロニトリル(PAN)をベースとした炭素繊維である、態様1または2に記載の熱可塑性組成物。
4.繊維状基質がユニテープウエブ、不織マットもしくはベール、繊維トウ、または織物材料の形状である、前記態様のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
5.高性能重合体がポリアリールエーテルケトン類(PAEK)、PAEK配合物、ポリイミド類、およびポリフェニレンスルフィド類(PPS)から選択される、前記態様のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
6.ポリアリールエーテルケトンがポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、70:30〜100:0のテレフタロイル対イソフタロイル比を有するポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、およびポリエーテルケトンケトンエーテルケトン(PEKKEK)から選択される、態様5に記載の熱可塑性組成物。
7.ポリアリールエーテルケトンがAPC-2(登録商標)PEEK、Cypek(登録商標)FC、およ
びCypek(登録商標)HTから選択される、態様5に記載の組成物。
8.ポリアリールエーテルケトン配合物がPEI、PES、PPSおよびそれらの混合物を含んでなる、態様5に記載の組成物。
9.ポリイミドがAurum(登録商標)TPIである、態様5に記載の組成物。
10.表面層重合体がポリエーテルイミド(PEI);PEI、PES、PPS、ポリイミド、およびそれらの混合物と配合されたポリアリールエーテルケトン重合体;ポリアリールエーテルケトン類;ポリイミド類;並びにそれらの混合物から選択される、前記態様のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
11.PAEK重合体配合物がPEEKまたはPEKKおよびジフェニルスルホンを含んでなる、態様10に記載の熱可塑性組成物。
12.PAEKが0:100〜70:30のテレフタロイル対イソフタロイル比を有するPEKKである、態様10または11に記載の熱可塑性組成物。
13.表面層重合体がCypek(登録商標)DS-EまたはCypek(登録商標)DS-Mを含んでなる、態様10〜12のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
14.表面層重合体層が1〜20ミクロン厚さである、前記態様のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
15.表面層重合体が1〜10ミクロン厚さである、態様14に記載の熱可塑性組成物。
16.表面層重合体が4〜6ミクロン厚さである、態様15に記載の熱可塑性組成物。
17.表面層重合体が該芯複合体層の2つの表面上に適用される、前記態様のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
18.表面層重合体が金属コーティング、微細粒子、およびナノ粒子から選択される多機能剤をさらに含んでなる、前記態様のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
19.多機能剤が該基質の複合体特徴を増進させ、該複合体特徴は電気伝導性、靭性、酸素透過性、結晶化速度、および溶媒耐性の1つもしくはそれ以上から選択される、態様18に記載の熱可塑性組成物。
20.高性能重合体が表面層重合体より急速な速度で結晶化する、前記態様のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
21.高性能重合体が核生成しそして表面層重合体の結晶化速度を促進させる、前記態様のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
22.高性能重合体の樹脂含有量が全樹脂含有量の26重量%〜90重量%である、前記態様のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
23.全樹脂含有量が全樹脂の30重量%〜95重量%である、態様1〜21のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
24.全樹脂含有量が全樹脂の32重量%〜42重量%である、態様23に記載の熱可塑性組成物。
25.表面層重合体の破壊靭性がK1c> 1.5 MPa-m0.5より上であることにより組成物がさらに特徴づけられる、前記態様のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
26.芯複合体層の層間破壊靭性がG1cにより測定して600 J/m2より上であることにより組成物がさらに特徴づけられる、前記態様のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
27.組成物の厚さが25〜400ミクロンの範囲にわたる、前記態様のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
28.態様1〜27のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物を含んでなる製造製品。
29.a)繊維状基質に1種もしくはそれ以上の高性能重合体を含浸および/またはコーティングし、それにより芯複合体層を形成し、そして
b)表面層重合体を該芯複合体層の少なくとも1つの表面上に適用し、それにより芯複合体層の高性能重合体と配合された重合体を形成しそして改良された処理時間および靭性を有する熱可塑性組成物を形成する
ことを含んでなる、改良された処理時間および靭性を有する態様1〜27のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物を製造する方法。
30.熱可塑性組成物が自動化されたテープ下置き/自動化された繊維配置機械上での使
用のためのインシトゥ等級の熱可塑性複合体テープの形状である、態様29に記載の方法。
31.自動化されたテープ下置き/自動化された繊維配置機械上の熱可塑性テープのTprocessが290℃〜410℃である、態様30に記載の方法。
32.全樹脂含有量が全樹脂の32重量%〜42重量%である、態様30または31に記載の方法。
33.テープの空間容量が< 2%である、態様30〜32のいずれかに記載の方法。
34.表面層重合体の破壊靭性がK1c > 1.5 MPa-m0.5より上であることにより組成物がさらに特徴づけられる、態様29〜33のいずれかに記載の方法。
35.芯複合体層の層間破壊靭性がG1cにより測定して600 J/m2より上であることにより組成物がさらに特徴づけられる、態様29〜34のいずれかに記載の方法。
36.芯複合体層への表面層重合体の適用がi)粉末または溶媒コーティング、ii)フィルム積層、iii)不織ベール積層、iv)火炎/プラズマ噴霧コーティング、およびv)それらの組み合わせにより行われる、態様29〜35のいずれかに記載の方法。
37.適用段階がフィルム積層により行われ、そして方法が積層された組成物を冷却することをさらに含んでなる、態様36に記載の方法。
38.表面層重合体が芯複合体層の2つの表面上に適用される、態様29〜37のいずれかに記載の方法。
39.繊維状基質が炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、およびそれらの組み合わせから選択される、態様29〜38のいずれかに記載の方法。
40.熱可塑性組成物の厚さが25〜400ミクロンの範囲にわたる、態様29〜39のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
【実施例】
【0039】
実施例
以下の実施例は当業者が本発明のある種の態様をさらに理解するのを助けるために提供される。これらの実施例は説明目的を意図しておりそして本発明の種々の態様の範囲を制限するものとして解釈すべきでない。
【実施例1】
【0040】
二または三層のインシトゥ熱可塑性テープを用いるフィルム積層
小さいプレスを290℃〜410℃の間に加熱する。カプトン(Kapton)フィルムをリリース剤でコーティングしそして、プレスを用いて所望する温度において二または三層構造をリリース剤がコーティングされたカプトンフィルムの2つの片の間に挟み、それにより積層を形成する。積層をプレスの2つの3”X 3”ステンレス鋼カウル板の間に熱電対に沿って配置する。スタックをプレスの中に挿入しそして1,000ポンドの圧力をかけそして10〜30秒の期間にわたり保つ。圧力および頂部圧盤を次に離しそしてスタックを取り出して冷たいプレス(1分間にわたる1000ポンド)下で冷却する。
【実施例2】
【0041】
比較例
積層されたAPC-2/IM7 Unitapeおよび三層積層されたPEKK DS-E//APC-2/IM7//PEKK DS-Eを用いる熱可塑性複合体のインシトゥ下置きをアキュジン・システムズ・インコーポレーテッド(Accudyne Systems Inc.)からの自動化されたテープ下置き機械を用いて行う(米国特許第7,404,868号明細書参照)。寸法75mm x 1000mmおよび [0°]20の積層配向(20プライ単一方向積層)のラミネートをインシトゥで固める/配置する。重要な工程パラメーターは温度(テープをラミネートに溶かすための下置き温度)、圧力(テープをラミネートに溶かすための頭部圧力)、および速度(テープをラミネートに溶融させるための速度)である。インシトゥATLに関する実験条件および結果は以下の表並びに図3Aおよび3Bに再現されている。
【0042】
【表1】

【0043】
以上の表におけるデータは、指定条件に関する三層テープはラミネート中でより低い空間含有量を有するAPC-2/IM7に匹敵することを終始一貫して示している。このことは図3Aおよび3Bにおける超音波走査によっても確認される。三層ラミネートは基線APC-2/IM7より高い短波剪断強度(SBS)も有しており、それはプライの改良された固めをさらに示唆している。さらに、360℃の下置き温度を有する三層パネル#5はより高い下置き温度(410℃)および圧力(100%対75%)において同じ頭部速度で処理される基線APC-2/IM7パネル4より低い空間含有量およびより高いSBS値を有する。これらの観察は、良好な性能を維持しながらより低い下置き温度においてより良好な性質の積層が製造されていることを確認する。
【実施例3】
【0044】
Cypek(登録商標) PEKK DS-Eプライ間試験
32プライの単一方向APC-PEKK-DS-M/AS-4熱可塑性テープを試験対照製品として固め用に製造する。ここに詳細に記述されているような本発明に従う別のラミネートを製造し、そしてそれはAPC-PEKK-DS-M/AS-4熱可塑性2テープの各プライ間に.25 mmの名目厚さの2(2)シートのCypek(登録商標) PEKK DS-E等級重合体フィルムを含んでいる。(図4 A-B)。Cypek(登録商標) PEKK DS-EはAPC-PEKK DS-M/AS4熱可塑性テープ中の樹脂マトリックスとして使用されるCypek(登録商標) PEKK DS-Mの同じ化学的骨格を有するが、50%高い重量平均分子量を有する。両方のパネルを真空下でオートクレーブ中で100 psiのN2気体の圧力において391℃の温度で20分間にわたり処理する。連続するラミネートを超音波走査(C-走査)にかけてラミネートの性質を確認する。ラミネートを次に1500インチ-ポンドの衝撃事象にかけそして次に機械的試験にかけて各ラミネートの衝撃後圧縮(CAI)性能を測定する。プライ間PEKK DS-Eフィルムを有するラミネートのCAI性能(55.1 KSI平均)は対照(53.6 KSI平均)のものを超えることが見出されている。
【0045】
種々の特許および/または科学参考文献がこの出願全体にわたり言及されている。これらの刊行物の開示の全ては、あたかもそのような開示が本発明と矛盾しない程度までそして参照によるそのような内容が認められるという全ての判断に関しては、ここに記述されているかの如く引用することにより本発明の内容となる。以上の記述および実施例に鑑みて、当業者は特許請求されている本発明を過度の実験なしに実施しうるであろう。
以上の記述がこの教示の基本的な新規な特徴を示し、記載し、そして指摘してきたが、説明されそして記述されている組成物および方法の形態における種々の省略、置換、および変更を、この教示の範囲から逸脱せずに、当業者が行えることは理解されよう。従って、この教示の範囲は以上の記述に限定されるべきでなく、添付されている特許請求の範囲により規定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)繊維状基質および1種もしくはそれ以上の高性能重合体を含んでなる芯複合体層、並びに
b)非晶質性重合体、ゆっくり結晶化する半結晶性重合体、およびそれらの混合物から選択される表面層重合体
を含んでなる熱可塑性組成物であって、表面層重合体が該芯複合体層の少なくとも1つの表面上に適用されて該芯複合体層の高性能重合体と配合された重合体を形成し、そして表面層重合体のTmおよびTprocessが芯複合体層の高性能重合体のTmおよびTprocessより少なくとも10℃低い熱可塑性組成物。
【請求項2】
繊維状基質が炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、およびそれらの混合物から選択されそして全複合体重量の50〜80重量%を構成する、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項3】
高性能重合体がポリアリールエーテルケトン類(PAEK)、PAEK配合物、ポリイミド類、およびポリフェニレンスルフィド類(PPS)から選択される、前記請求項のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
【請求項4】
表面層重合体がポリエーテルイミド(PEI);ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド、およびそれらの混合物と配合されたポリアリールエーテルケトン重合体;ポリアリールエーテルケトン類;ポリイミド類;並びにそれらの混合物から選択される、前記請求項のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
【請求項5】
PAEK重合体配合物がPEEKまたはPEKKおよびジフェニルスルホンを含んでなる、請求項4に記載の熱可塑性組成物。
【請求項6】
表面層重合体層が1〜20ミクロン厚さである、前記請求項のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
【請求項7】
表面層重合体が該芯複合体層の2つの表面上に適用される、前記請求項のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
【請求項8】
表面層重合体が金属コーティング、微細粒子、およびナノ粒子から選択される多機能剤をさらに含んでなる、前記請求項のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
【請求項9】
多機能剤が該基質の複合体特徴を増進させ、該複合体特徴が電気伝導性、靭性、酸素透過性、結晶化速度、および溶媒耐性の1つもしくはそれ以上から選択される、請求項8に記載の熱可塑性組成物。
【請求項10】
高性能重合体が表面層重合体より急速な速度で結晶化する、前記請求項のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
【請求項11】
高性能重合体が核生成しそして表面層重合体の結晶化速度を促進させる、前記請求項のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
【請求項12】
高性能重合体の樹脂含有量が全樹脂含有量の26重量%〜90重量%である、前記請求項のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
【請求項13】
全樹脂含有量が全樹脂の30重量%〜95重量%である、前記請求項のいずれかに記載の熱
可塑性組成物。
【請求項14】
全樹脂含有量が全樹脂の32重量%〜42重量%である、請求項13に記載の熱可塑性組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の熱可塑性組成物を含んでなる製造製品。
【請求項16】
a)繊維状基質に1種もしくはそれ以上の高性能重合体を含浸および/またはコーティングし、それにより芯複合体層を形成し、そして
b)表面層重合体を該芯複合体の少なくとも1つの表面上に適用し、それにより芯複合体層の高性能重合体と配合された重合体を形成しそして改良された処理時間および靭性を有する熱可塑性組成物を形成する
ことを含んでなる、改良された処理時間および靭性を有する請求項1〜14のいずれか1項に記載の熱可塑性組成物を製造する方法。
【請求項17】
熱可塑性組成物が自動化されたテープ下置き/自動化された繊維配置機械上での使用のためのインシトゥ等級の熱可塑性複合体テープの形状である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
全樹脂含有量が全樹脂の32重量%〜42重量%である、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
芯複合体層への表面層重合体の適用がi)粉末または溶媒コーティング、ii)フィルム積層、iii)不織ベール積層、iv)火炎/プラズマ噴霧コーティング、およびv)それらの組み合わせにより行われる、請求項16〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
表面層重合体が芯複合体層の2つの表面上に適用される、請求項16〜19のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2013−505859(P2013−505859A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531014(P2012−531014)
【出願日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/049916
【国際公開番号】WO2011/038065
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(594060532)サイテク・テクノロジー・コーポレーシヨン (36)
【Fターム(参考)】