説明

熱媒供給設備及びその運転制御方法

【課題】高温或いは冷温の熱媒を循環させることにより、暖房運転及び冷房運転が可能な熱媒供給設備を提供する。
【解決手段】高温暖房端末1が設けられた高温熱媒通流路26及び低温暖房端末2が設けられた低温熱媒通流路24が加熱手段Hを経由する熱媒加熱通流路8に接続され、高温側熱媒通流調整手段27と低温側熱媒通流調整手段28とを備えた熱媒供給設備であって、低温暖房端末2が冷房運転可能であり、冷却手段30を経由する熱媒冷却通流路32が、流路切替手段31により、低温熱媒通流路24に接続される冷房側状態と分離される暖房側状態とを切替自在に設けられており、高温暖房端末1及び低温暖房端末2の運転状態に基づいて、高温側熱媒通流調整手段27と低温側熱媒通流調整手段28と流路切替手段31との作動を制御する制御手段Cが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温暖房運転が可能な高温暖房端末が設けられた高温熱媒通流路が、熱媒を加熱可能な加熱手段を経由して熱媒を通流させる熱媒加熱通流路における熱媒送出用の出口と熱媒戻し用の入口とに接続された状態で設けられ、低温暖房運転が可能な低温暖房端末が設けられた低温熱媒通流路が、前記熱媒加熱通流路における前記熱媒戻し用の入口と前記加熱手段との間の流路部分と前記熱媒戻し用の入口とに接続された状態で設けられ、前記高温暖房端末への熱媒供給を断続又は調整するように前記高温熱媒通流路の開度を調整する高温側熱媒通流調整手段と、前記低温暖房端末への熱媒供給を断続又は調整するように前記低温熱媒通流路の開度を調整する低温側熱媒通流調整手段と、を備えた熱媒供給設備に関する。
【背景技術】
【0002】
上記は、いわゆる2温度コントロール方式の熱媒供給設備であり、高温暖房端末及び低温暖房端末に熱媒を循環供給して、高温暖房及び低温暖房を行う。一般に、高温暖房端末は浴室乾燥暖房装置やファンコンベクター等で構成され、80℃程度の温水により温風による高温暖房を行う。また、低温暖房端末は床暖房装置やパネルラジエータ等で構成され、60℃程度の温水により輻射熱による低温暖房を行う。このような熱媒供給設備では、熱媒の持つ熱量を暖房に利用するため、加熱により高温にした熱媒を、暖房対象の需要箇所に循環させて暖房を行う(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−216288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の熱媒供給設備は、高温の熱媒を暖房対象の需要箇所に循環させるために、熱媒を需要箇所に循環させるための流路である熱媒通流路(例えば配管)と、熱媒を需要箇所に循環させるための動力源である熱媒循環手段(例えば循環ポンプ)とを備えている。
しかし、上記の熱媒供給設備は、熱媒を需要箇所に循環させるための熱媒通流路及び熱媒循環手段を備えているにも関わらず、これまで暖房にしか利用されていなかった。
【0005】
そこで、設備を有効活用するために、上記の熱媒供給設備に低温熱源を含む冷房回路を組み込み、暖房運転と冷房運転の切替を可能とし、冷房運転時には、高温の熱媒に代えて冷温の熱媒を需要箇所に循環させることで、設備を暖房運転だけでなく、冷房運転にも利用することが考えられる。
【0006】
しかしながら、単に上記の熱媒供給設備に冷房回路を接続し、熱媒通流路に冷温の熱媒を循環させるだけでは、結露やそれによる金属の腐食等が発生し、設備の磨耗・損傷や性能の劣化を加速し、設備の耐久性を低下させる恐れがある。
特に、熱媒加熱通流路に設けられる加熱手段(例えば、熱交換器、バーナ、送風機、から構成される)は、加熱及び放熱効率を高めるべく、高い熱伝導性で構成されることが通常であるため、例えば、高温の熱媒から冷温の熱媒への切替えのような、急速な温度の低下があった場合には、結露が発生しやすく、設備の性能の劣化や耐久性の低下が懸念される。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、高温或いは冷温の熱媒を循環させることにより、暖房運転及び冷房運転が可能な熱媒供給設備を提供する点にある。また、そのような設備において、結露を防ぎ、設備の耐久性の低下を防止する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係る熱媒供給設備は、
高温暖房運転が可能な高温暖房端末が設けられた高温熱媒通流路が、熱媒を加熱可能な加熱手段を経由して熱媒を通流させる熱媒加熱通流路における熱媒送出用の出口と熱媒戻し用の入口とに接続された状態で設けられ、
低温暖房運転が可能な低温暖房端末が設けられた低温熱媒通流路が、前記熱媒加熱通流路における前記熱媒戻し用の入口と前記加熱手段との間の流路部分と前記熱媒戻し用の入口とに接続された状態で設けられ、
前記高温暖房端末への熱媒供給を断続又は調整するように前記高温熱媒通流路の開度を調整する高温側熱媒通流調整手段と、前記低温暖房端末への熱媒供給を断続又は調整するように前記低温熱媒通流路の開度を調整する低温側熱媒通流調整手段と、を備えた熱媒供給設備であって、その第1特徴構成は、
前記低温暖房端末において冷房運転が可能であり、
熱媒を冷却可能な冷却手段を経由して熱媒を通流させる熱媒冷却通流路が、前記低温熱媒通流路における前記低温暖房端末と前記熱媒戻し用の入口との間の流路部分において、流路切替手段により、前記低温暖房端末と前記熱媒戻し用の入口とを接続する熱媒通流路として前記低温熱媒通流路に接続される冷房側状態と、前記低温熱媒通流路から分離される暖房側状態と、を切替自在な状態で設けられており、
前記高温暖房端末及び前記低温暖房端末に要求される運転状態に基づいて、前記高温側熱媒通流調整手段と、前記低温側熱媒通流調整手段と、前記流路切替手段との作動を制御する制御手段が設けられた点にある。
【0009】
本特徴構成によれば、熱媒を冷却可能な冷却手段を経由して熱媒を通流させる熱媒冷却通流路が、低温熱媒通流路に設けられた低温暖房端末と熱媒戻し用の入口との間の流路部分において、流路切替手段を介して低温熱媒通流路に接続されている。
そして、流路切替手段により、熱媒冷却通流路を低温熱媒通流路に接続し、熱媒を冷却手段を経由させて冷却した上で熱媒戻し用の入口に通流させる冷房側状態と、熱媒冷却通流路を低温熱媒通流路から分離し、熱媒を冷却することなく熱媒戻し用の入口に通流させる暖房側状態とを切替自在に構成されている。
従って、制御手段は、高温暖房端末及び低温暖房端末に要求される運転状態に基づいて、高温側熱媒通流調整手段と、低温側熱媒通流調整手段と、流路切替手段の作動を制御することで、当該運転状態に好適な熱媒通流回路を構成することができる。
【0010】
即ち、上記熱媒供給設備において、暖房運転を行う場合は、制御手段は、流路切替手段を暖房側状態に切替える。これにより、熱媒冷却通流路を低温熱媒通流路から分離して、熱媒を冷却することなく熱媒戻し用の入口に通流させる回路を構成することができる。つまり、熱媒加熱通流路の加熱手段において加熱した高温の熱媒を、熱媒冷却通流路を通流させることなく、高温熱媒通流路及び低温熱媒通流路に循環通流させることができる。これにより、従来の熱媒供給設備と同様に、高温暖房運転及び低温暖房運転、並びに高温低温同時暖房運転を行うことができる。
【0011】
一方、冷房運転を行う場合は、制御手段は、流路切替手段を冷房側状態に切替えるとともに、高温側熱媒通流調整手段を閉状態とする。
流路切替手段を冷房側状態に切替えたことにより、熱媒冷却通流路が低温熱媒通流路に接続される。これにより、熱媒は熱媒冷却通流路で冷却手段を経由し、冷却手段により冷却されて、冷温の熱媒として低温熱媒通流路に通流する。そして、当該冷温の熱媒により、低温暖房端末で冷房運転が行われる。
また、高温側熱媒通流調整手段を閉状態としたことにより、高温熱媒通流路及び熱媒加熱通流路への熱媒の循環通流が防止される。これにより、熱媒加熱通流路に設けられた加熱手段において、冷温の熱媒の通流による急激な温度低下による結露が発生するのを防止できる。加えて、高温熱媒通流路及び熱媒加熱通流路の閉止により熱媒が設備を内部循環することによる圧力降下を抑えることができるため、熱媒の循環に必要な熱媒循環手段の揚程の確保を容易にすることができる。
【0012】
このように、本特徴構成によれば、熱媒を需要箇所に循環させるための熱媒通流路を活用して、高温或いは冷温の熱媒を循環させることで、暖房運転及び冷房運転が可能な熱媒供給設備を提供することができる。また、冷房運転時には、高温熱媒通流路及び熱媒加熱通流路への循環通流を閉止することで、熱媒加熱通流路への熱媒の流入を防止する。これにより、特に結露が発生しやすい加熱手段における結露を防ぎ、設備の性能の劣化及び耐久性の低下を防止することができる。
【0013】
本発明に係る熱媒供給設備の第2特徴構成は、前記第1特徴構成において、
前記熱媒加熱通流路における前記加熱手段と前記熱媒加熱通流路における前記熱媒送出用の出口との間の流路部分と、前記熱媒加熱通流路における前記熱媒戻し用の入口と前記熱媒加熱通流路における前記低温熱媒通流路の接続点との間の流路部分と、を連通接続するバイパス路が設けられ、
前記バイパス路における熱媒の通流を断続するように当該バイパス路を開閉するバイパス路開閉手段が設けられており、
前記制御手段が、前記運転状態に基づいて、前記バイパス路開閉手段の作動を制御する点にある。
【0014】
本特徴構成によれば、熱媒加熱通流路における熱媒送出用の流路部分と熱媒加熱通流路における熱媒戻し用の流路部分とを接続するバイパス路が設けられている。そして、バイパス路における熱媒の通流を断続するようにバイパス路を開閉するバイパス路開閉手段が設けられており、制御手段が、高温暖房端末及び低温暖房端末に要求される運転状態に基づいて、バイパス路開閉手段の作動を制御する。
即ち、熱媒加熱通流路における熱媒送出用の出口から送出された熱媒が、高温暖房端末が設けられた高温熱媒通流路を経由することなく熱媒加熱通流路における熱媒戻し用の入口に通流可能にバイパス路が設けられている。また、当該バイパス路を経由する熱媒の通流を断続するためのバイパス路開閉手段の開閉作動が、制御手段により制御されている。
【0015】
このような構成によれば、制御手段により、バイパス路開閉手段を開状態、高温側熱媒通流調整手段を閉状態とすることで、熱媒が高温熱媒通流路を通流することなく循環可能な閉回路を構成することができる。これにより、熱媒を、熱媒加熱通流路及びバイパス路だけを循環させて熱媒加熱通流路に設けられた加熱手段で放熱させることや、高温熱媒通流路を通流させることなく低温熱媒通流路を循環させて低温暖房端末で低温暖房に利用することが可能となる。
【0016】
本発明に係る熱媒供給設備の第3特徴構成は、前記第2特徴構成において、前記バイパス路開閉手段が、前記バイパス路を通流する熱媒の流量を調整自在に設けられた点にある。
【0017】
本特徴構成によれば、バイパス路開閉手段が、バイパス路を通流する熱媒の流量を調整自在に設けられている。これにより、高温暖房端末において高温暖房を行う場合に、バイパス路開閉手段により、バイパス路を通流する熱媒の流量を調整することで、ひいては、高温暖房端末に通流する熱媒の流量を調整することで、高温暖房端末に通流する熱媒の熱量を調整し、高温暖房端末による高温暖房の暖房能力を調整することが可能となる。
また、同様に、高温低温同時暖房運転を行う場合に、バイパス路に通流する熱媒の流量を調整することで、高温暖房端末及び低温暖房端末に通流する熱媒の熱量を調整し、高温暖房端末における高温暖房の暖房能力及び低温暖房端末における低温暖房の暖房能力を調整することができる。
【0018】
本発明に係る熱媒供給設備の運転制御方法の第1特徴構成は、前記第1特徴構成を備える熱媒供給設備において、前記低温暖房端末に冷房運転が要求された場合は、前記制御手段に、前記低温側熱媒通流調整手段を開状態、前記高温側熱媒通流調整手段を閉状態、前記流路切替手段を前記冷房側状態とした状態で、熱媒を前記低温熱媒通流路と前記熱媒冷却通流路とを循環させて前記低温暖房端末で冷房運転を行わせる冷房運転制御を行わせる点にある。
【0019】
本特徴構成によれば、前記第1特徴構成を備える熱媒供給設備において、低温暖房端末に冷房運転が要求された場合は、制御手段に、低温側熱媒通流調整手段を開状態、高温側熱媒通流調整手段を閉状態とし、流路切替手段を冷房側状態とした状態で、熱媒を低温熱媒通流路と熱媒冷却通流路とを循環させて低温暖房端末で冷房運転を行わせる。即ち、熱媒加熱通流路及び高温熱媒通流路への循環通流を閉止し、熱媒を低温熱媒通流路及び熱媒冷却通流路からなる閉回路を循環させる状態で冷房運転が行われる。
熱媒加熱通流路への循環通流が閉止されることにより、冷却手段で冷却された冷温の熱媒が熱媒加熱通流路に設けられた加熱手段を循環通流することが防止される。これにより、加熱手段における結露を防ぎ、設備の性能の劣化及び耐久性の低下を防止することができる。
【0020】
また、熱媒の熱媒加熱通流路及び高温熱媒通流路への循環通流を閉止していることから、熱媒は高温熱媒通流路及び熱媒加熱通流路を通流することなく、低温熱媒通流路及び熱媒冷却通流路からなる閉回路を循環する。これにより、熱媒が設備を内部循環することによる圧力降下を抑えることができるため、熱媒の循環に必要な熱媒循環手段の揚程の確保が容易となる。
【0021】
本発明に係る熱媒供給設備の運転制御方法の第2特徴構成は、前記第2又は第3特徴構成のいずれかを備える熱媒供給設備において、前記低温暖房端末に冷房運転が要求された場合は、前記制御手段に、前記低温側熱媒通流調整手段を開状態、前記高温側熱媒通流調整手段を閉状態、前記流路切替手段を前記冷房側状態、前記バイパス路開閉手段を閉状態とした状態で、熱媒を前記低温熱媒通流路と前記熱媒冷却通流路とを循環させて前記低温暖房端末で冷房運転を行わせる冷房運転制御を行わせる点にある。
【0022】
本特徴構成によれば、前記第2又は第3特徴構成のいずれかを備える熱媒供給設備において、前記低温暖房端末に冷房運転が要求された場合は、制御手段に、低温側熱媒通流調整手段を開状態、高温側熱媒通流調整手段を閉状態、流路切替手段を冷房側状態、バイパス路開閉手段を閉状態とした状態で、熱媒を低温熱媒通流路と熱媒冷却通流路とを循環させて前記低温暖房端末で冷房運転を行わせるため、熱媒冷却通流路に設けられた冷却手段で冷却された冷温の熱媒の循環路を、低温熱媒通流路及び熱媒冷却通流路からなる閉回路に限定できる。これにより、高温熱媒通流路にバイパス路を備える熱媒供給設備において、熱媒が熱媒加熱通流路に通流するのを防止し、加熱手段における結露を防ぐことができる。ひいては、結露に基づく設備の性能の劣化や耐久性の低下を防止することができる。
【0023】
本発明に係る熱媒供給設備の運転制御方法の第3特徴構成は、前記第2特徴構成を備える運転制御方法において、前記低温暖房端末に冷房運転が要求された場合に、前記制御手段に前記冷房運転制御を行わせる前に、前記低温側熱媒通流調整手段と前記高温側熱媒通流調整手段とを閉状態、前記バイパス路開閉手段を開状態とした状態で、熱媒を前記バイパス路経由で前記熱媒加熱通流路を循環させて前記加熱手段で放熱させる放熱運転制御を行わせる点にある。
【0024】
本特徴構成によれば、前記第2特徴構成を備える運転制御方法において、低温暖房端末に冷房運転が要求された場合に、制御手段に冷房運転制御を行わせる前に、低温側熱媒通流調整手段と高温側熱媒通流調整手段とを閉状態、流路切替手段を暖房側状態、バイパス路開閉手段を開状態とするように作動を制御させた状態で、熱媒をバイパス路経由で熱媒加熱通流路を循環させて加熱手段で放熱させる放熱運転を行う。
即ち、前記第2特徴構成を備える運転制御方法において、低温暖房端末に冷房運転が要求された場合に、冷房運転に先立ち放熱運転を行う。具体的には、低温側熱媒通流調整手段と高温側熱媒通流調整手段とを閉状態として、低温熱媒通流路及び高温熱媒通流路への熱媒の通流を閉止するとともに、流路切替手段を暖房側状態、バイパス路開閉手段を開状態として、熱媒加熱通流路とバイパス路とを接続して閉回路を構成する。そして、熱媒加熱通流路に設けられた加熱手段を放熱手段として利用しながら、熱媒を当該閉回路を循環させることで、放熱運転を行うことができる。このように、冷房運転に先立って放熱運転を行い、予め熱媒を放熱させて低温としておくことで、よりスムーズに冷房運転に移行することができる。
また、加熱手段が送風機を備えている場合は、送風機により放熱用空気を供給して熱交換器を冷却することで、熱交換器における熱媒の放熱効果をより高めることができる。これにより、送風機を熱媒加熱時の燃焼用空気の供給だけでなく、熱媒放熱時の放熱用空気の供給に活用することができるため、効果的な放熱を行えるとともに、設備を有効利用することができる。
【0025】
本発明に係る熱媒供給設備の運転制御方法の第4特徴構成は、前記第1〜第3特徴構成のいずれかを備える熱媒供給設備において、
前記低温暖房端末に運転の要求がなく且つ前記高温暖房端末に高温暖房運転が要求される高温単独暖房運転が要求された場合は、前記高温側熱媒通流調整手段を開状態、前記低温側熱媒通流調整手段を閉状態、前記流路切替手段を前記暖房側状態とした状態で、
前記高温暖房端末に運転の要求がなく且つ前記低温暖房端末に低温暖房運転が要求される低温単独暖房運転が要求された場合は、前記高温側熱媒通流調整手段を閉状態、前記低温側熱媒通流調整手段を開状態、前記流路切替手段を前記暖房側状態とした状態で、
前記高温暖房端末に高温暖房運転が要求され且つ前記低温暖房端末に低温暖房運転が要求される高温低温同時暖房運転が要求された場合は、前記高温側熱媒通流調整手段及び前記低温側熱媒通流調整手段を開状態、前記流路切替手段を前記暖房側状態とした状態で、
前記加熱手段で加熱した熱媒を循環させて暖房運転を行わせる暖房運転制御を前記制御手段に行わせる点にある。
【0026】
本特徴構成によれば、前記第1〜第3特徴構成のいずれかを備える熱媒供給設備において、高温側熱媒通流調整手段、低温側熱媒通流調整手段、流路切替手段の作動を適切に制御することで、冷房運転だけでなく、高温単独暖房運転、低温単独暖房運転、高温低温同時暖房運転を行うことができる。これにより、冷房運転だけでなく、高温暖房運転、低温暖房運転、高温低温同時暖房を行うことができる利便性の高い熱媒供給設備の運転制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】熱媒供給設備の全体構成を示すブロック図
【図2】熱媒供給設備の制御フロー図
【図3】高温単独暖房運転時の熱媒の循環状態を示す図
【図4】低温単独暖房運転時の熱媒の循環状態を示す図
【図5】高温低温同時暖房運転時の熱媒の循環状態を示す図
【図6】放熱運転時の熱媒の循環状態を示す図
【図7】冷房運転時の熱媒の循環状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
図1に示すように、熱媒供給設備は、高温暖房端末1、低温暖房端末2、それら高温暖房端末1や低温暖房端末2に加熱した熱媒を循環供給する熱源機G、この熱媒供給設備の運転を制御する制御手段としての主制御部C、高温暖房端末1の運転を制御する高温端末制御部3、その高温端末制御部3に高温暖房端末1を運転するための各種制御情報を指令する高温側操作部4、低温暖房端末2の運転を制御する低温端末制御部5、その低温端末制御部5に低温暖房端末2を運転するための各種制御情報を指令する低温側操作部6等を備えて構成されている。
ちなみに、高温暖房端末1としては、例えば浴室暖房乾燥装置やファンコンベクターが設けられ、低温暖房端末2としては、例えば床冷暖房装置やパネルラジエータが設けられる。低温暖房端末2は、低温暖房運転及び冷房運転が可能な端末で構成される。
【0029】
熱源機Gは、熱交換器7を含む加熱手段Hを経由して熱媒を通流させる熱媒加熱通流路8、熱交換器7を加熱するガスバーナ9、ガスバーナ9に燃焼用空気を供給し或いは熱交換器7に放熱用空気を供給することが可能な送風機10、熱媒加熱通流路8における加熱手段Hと熱媒加熱通流路8における熱媒送出用の出口8eとの間の往き流路部分81と、熱媒加熱通流路8における熱媒戻し用の入口8iと熱媒加熱通流路8における後述する低温熱媒通流路24の接続点との間の流路部分と、を連通接続するバイパス路11、及び、バイパス路11における熱媒の通流を断続するようにバイパス路11を開閉するバイパス路開閉手段であり、バイパス路11を通流する熱媒の流量を調整自在に設けられたバイパス路熱動弁33等を備えて構成されている。なお、加熱手段Hは、熱交換器7、ガスバーナ9、送風機10、により、熱交換器7を通流する熱媒を加熱又は放熱可能に構成されている。
【0030】
熱媒加熱通流路8における熱媒戻し用の入口8iの下流であって熱交換器7までの流路である戻り流路部分82には、膨張タンク12が介装され、更に、その戻り流路部分82における膨張タンク12よりも下流側の箇所には、熱媒を熱媒加熱通流路8の熱媒送出用の出口8e(即ち、往き流路部分81の出口8e)に向けて流動させる熱媒循環手段である熱媒循環ポンプ13が設けられている。
【0031】
ガスバーナ9へガス燃料を供給する燃料供給路14には、ガスバーナ9へのガス燃料の供給を断続する燃料断続弁15、及び、ガスバーナ9へのガス燃料の供給量を調整する燃料調整弁16が設けられている。
更に、ガスバーナ9に点火するイグナイタ17、及び、ガスバーナ9の燃焼状態を検出するフレームロッド18も設けられている。
【0032】
熱媒加熱通流路8の往き流路部分81の出口8eには、高温側往き接続部材19が設けられ、熱媒加熱通流路8の熱媒戻し用の入口8i(即ち、戻り流路部分82の入口8i)には、共通戻り接続部材20が設けられ、更に、熱媒加熱通流路8の戻り流路部分82における熱媒循環ポンプ13と熱交換器7との間の流路部分(即ち、熱媒戻し用の入口8iと加熱手段Hとの間の流路部分に相当する)から低温側接続用流路21が分岐されて、その低温側接続用流路21の先端の熱媒送出用の出口21eには、低温側往き接続部材22が設けられている。
【0033】
熱媒加熱通流路8の往き流路部分81におけるバイパス路11の分岐箇所よりも上流側には、その熱媒送出用の出口8eから送出される熱媒の温度を検出する供給温度検出手段としての供給温度センサ23が設けられ、膨張タンク12には、戻り流路82を経由して低温側接続用流路21の熱媒送出用の出口21eから送出される熱媒の温度、即ち、後述する低温熱媒通流路24を通して低温暖房端末2に供給される熱媒の温度を検出する低温側往き温度検出手段としての低温側往き温度センサ25が設けられている。
【0034】
高温暖房端末1が設けられた高温熱媒通流路26が、高温側往き接続部材19と共通戻り接続部材20とに接続された状態で設けられている。
また、低温暖房端末2が設けられた低温熱媒通流路24が、低温側往き接続部材22と前記共通戻り接続部材20とに接続された状態で設けられている。
つまり、高温暖房端末1が設けられた高温熱媒通流路26が、熱媒を加熱及び放熱可能な加熱手段Hを経由して熱媒を通流させる熱媒加熱通流路8における熱媒送出用の出口8eと熱媒戻し用の入口8iとに接続された状態で設けられ、低温暖房端末2が設けられた低温熱媒通流路24が、熱媒加熱通流路8における熱媒戻し用の入口8iと加熱手段Hとの間の流路部分と熱媒戻し用の入口8iとに接続された状態で設けられている。
【0035】
高温熱媒通流路26における高温暖房端末1よりも上流側の部分に、高温暖房端末1への熱媒供給を調整する高温側熱媒通流調整手段である高温側熱動弁27が設けられ、低温熱媒通流路24における低温暖房端末2よりも上流側の部分に、低温暖房端末2への熱媒供給を調整する低温側熱媒通流調整手段である低温側熱動弁28が設けられている。
【0036】
高温暖房端末1の一例として設けられる浴室暖房乾燥装置は周知であるので、詳細な説明及び図示を省略して簡単に説明すると、その高温暖房端末1は、高温熱媒通流路26からの熱媒を通流させる高温端末用熱交換器、暖房対象空間から吸引した空気を前記高温端末用熱交換器に通風させた後に暖房対象空間に戻すように通風作用する循環用送風機及び暖房対象空間の空気を排気する排気用送風機等を備えて構成されている。
低温暖房端末2の一例として設けられる床冷暖房装置も周知であるので、詳細な説明及び図示を省略して簡単に説明すると、その床冷暖房装置は、低温熱媒通流路24からの熱媒を通流させる熱媒流通管を床冷暖房パネルに埋入状態に装備して構成してある。
【0037】
また、熱媒を冷却可能な冷却手段Rである冷却装置30を経由して熱媒を通流させる熱媒冷却通流路32が、低温熱媒通流路24における低温暖房端末2と熱媒戻し用の入口8iとの間の流路部分において、流路切替手段である四方弁31により、低温暖房端末2と熱媒戻し用の入口8iとを接続する熱媒通流路として低温熱媒通流路24に接続された冷房側状態と、低温熱媒通流路24から分離された暖房側状態と、を切替自在な状態で設けられている。冷却装置30としては、例えばヒートポンプや地中杭が設けられる。
【0038】
高温端末制御部3は、高温側操作部4及び主制御部Cの夫々と通信可能に構成され、低温端末制御部5は、低温側操作部6及び主制御部Cの夫々と通信可能に構成されている。
また、高温側操作部4及び低温側操作部6で要求された運転状態に基づいて、制御手段である主制御部Cが、高温側熱媒通流調整手段である高温側熱動弁27と、低温側熱媒通流調整手段である低温側熱動弁28と、前記流路切替手段である四方弁31と、バイパス路開閉手段であるバイパス路熱動弁33との作動を制御するように構成されている。
【0039】
高温側操作部4には、高温暖房端末1の運転の開始及び停止を指令する運転スイッチ41等が設けられている。
【0040】
低温側操作部6には、低温暖房端末2の運転の開始及び停止を指令する運転スイッチ61、低温暖房端末2で暖房運転若しくは冷房運転のいずれを行うかを選択する冷暖房選択スイッチ62、低温暖房端末2に要求する冷暖房の能力を示す制御情報として複数段階の冷暖房能力からいずれか1つを設定する冷暖房能力設定スイッチ63、その冷暖房能力設定スイッチ63にて設定されている冷暖房能力を表示するランプからなる冷暖房能力表示部64等が設けられている。
そして、低温端末制御部5は、冷暖房能力設定スイッチ63にて設定されている冷暖房能力と低温側往き温度センサ25で検出される熱媒の温度とに基づいて、低温側熱動弁28の開度を、低温側往き温度センサ25で検出される熱媒の温度が冷暖房能力毎に設定されている目標温度に近づくように調整するように構成されている。
【0041】
高温端末制御部3は、高温側操作部4の運転スイッチ41により高温暖房端末1の運転開始が指令されると、主制御部Cに、高温暖房運転を行うための回路の構成と、高温暖房端末1への熱媒の供給とを指令する。また、高温側操作部4の運転スイッチ41により高温暖房端末1の運転停止が指令されると、主制御部Cに、高温暖房端末1への熱媒供給の停止を指令するように構成されている。
低温端末制御部5は、低温側操作部6の運転スイッチ61により低温暖房端末2の運転開始が指令されると、主制御部Cに、冷暖房選択スイッチ62における暖房運転若しくは冷房運転の選択に基づく回路の構成と、低温暖房端末2への熱媒の供給と、冷暖房能力設定スイッチ63にて設定されている冷暖房能力と低温側往き温度センサ25で検出される熱媒の温度とに基づく低温側熱動弁28の開度の調整とを指令する。また、低温側操作部6の運転スイッチ61により低温暖房端末2の運転停止が指令されると、主制御部Cに、低温暖房端末2への熱媒供給の停止を指令するように構成されている。
【0042】
〔熱媒供給設備の制御〕
以下では、図2の制御フロー図及び図3〜図7の熱媒の循環状態を示す図に基づいて、熱媒供給設備の挙動を説明する。
【0043】
熱媒供給設備への指令は、高温側操作部4及び低温側操作部6を通じて、高温端末制御部3及び低温端末制御部5に制御情報を指令することにより行う。高温側操作部4及び低温側操作部6から制御情報が指令されると、当該制御情報は高温端末制御部3及び低温端末制御部5を介して主制御部Cに通信される。
【0044】
図2に示すように、主制御部Cは、高温端末制御部3或いは低温端末制御部5から制御情報を受信すると(#1)、当該制御情報に基づいて高温暖房端末1及び低温暖房端末2に要求される運転状態を判断する(#2)。
図2の#2(運転状態判断)の分岐に示されるように、高温暖房端末1及び低温暖房端末2に要求される運転状態には、加熱手段Hにより熱媒を加熱して高温の熱媒として循環させ、暖房に活用する暖房運転(A)、冷却手段Rにより熱媒を冷却して冷温の熱媒として循環させ、冷房に活用する冷房運転(B)、暖房運転若しくは冷房運転を停止させる運転停止(C)、がある。
また、暖房運転(A)には、高温暖房端末1でのみ暖房を行う高温単独暖房運転(A−1)、低温暖房端末2でのみ暖房を行う低温単独暖房運転(A−2)、高温暖房端末1及び低温暖房端末2の双方で暖房を行う高温低温同時暖房運転(A−3)、がある。
以下では、上記の運転状態毎に、熱媒供給設備の挙動を説明する。
【0045】
(A−1)高温単独暖房運転
主制御部Cは、高温端末制御部3において高温暖房端末1での高温暖房運転が指令され、且つ、低温端末制御部5において低温暖房端末2での低温暖房運転が指令されていない場合は、運転状態として、高温暖房端末1のみに熱媒を供給する高温単独暖房運転が指令されたと判断する(#1→#2:暖房運転)。そして、回路を高温単独暖房用に構成した上で(#11)、高温暖房運転として、供給温度センサ23の検出温度が高温暖房端末1へ供給するための熱媒の温度に設定された高温用設定温度(例えば80℃)になるように加熱手段Hの加熱作動を制御し且つ熱媒循環ポンプ13を作動させる(#12)。
【0046】
本発明に係る熱媒供給設備は、図3の熱媒の循環状態により、高温単独暖房運転を行う。即ち、主制御部Cは、高温単独暖房運転が指令されると、四方弁31を暖房側状態とし、高温側熱動弁27を開弁し且つ低温側熱動弁28を閉弁させるとともに、バイパス路熱動弁33を開弁させて、高温単独暖房運転用の回路を構成する(#11)。
高温単独暖房運転用の回路の構成後、主制御部Cは、熱媒循環ポンプ13を作動させて、高温熱媒通流路26を通して熱媒を循環させる状態で、送風機10を作動させ、燃料断続弁15及び燃料調整弁16を開弁し、イグナイタ17を作動させてガスバーナ9に点火する点火処理を実行し、以降、供給温度センサ23の検出温度が前記高温用設定温度になるようにガスバーナ9への燃料供給量を調整すべく燃料調整弁16の開度を調整し、且つ、その燃料供給量に応じた燃焼用空気通風量になるように送風機10の回転速度を調整する(#12)。
これにより、図3に示すように、熱媒は加熱手段Hで加熱され、前記高温用設定温度の熱媒となって、熱媒加熱通流路8、高温熱媒通流路26及びバイパス路11を循環し、高温暖房端末1において、高温暖房に利用される。
【0047】
上記の高温単独暖房運転は、主制御部Cが、他の暖房運転(A)、冷房運転(B)、運転停止(C)、のいずれかの制御情報を受信するまで行われる。
他の暖房運転(A)である低温暖房運転の運転開始の制御情報を受信した場合は、後述する高温低温同時暖房運転(A−3)が指令されたと判断し、当該暖房運転を行う。また、冷房運転(B)の運転開始の制御情報を受信した場合は、後述する冷房運転を行う。
【0048】
また、運転停止(C)の制御情報を受信した場合は、運転停止が指令されたと判断する(#1→#2:運転停止)。この場合、暖房運転の停止であるため、ポストパージ処理を行う(#31:Yes→#32)。即ち、主制御部Cは、燃料断続弁15及び燃料調整弁16を閉弁し、当該閉弁後、送風機10によるポストパージを行い、ポストパージ用設定時間が経過すると、送風機10を停止させる(#32)。そして、当該ポストパージ処理の実行後、高温側熱動弁27を閉弁し、熱媒循環ポンプ13を停止させて、運転停止状態の回路構成とする(#33)。
【0049】
(A−2)低温単独暖房運転
主制御部Cは、低温端末制御部5において低温暖房端末2での低温暖房運転が指令され、且つ、高温端末制御部3において高温暖房端末1での高温暖房運転が指令されていない場合は、運転状態として、低温暖房端末2のみに熱媒を供給する低温単独暖房運転が指令されたと判断する(#1→#2:暖房運転)。そして、回路を低温単独暖房用に構成した上で(#11)、低温暖房運転として、低温側往き温度センサ25の検出温度が前記高温用設定温度よりも低い低温暖房端末2へ供給するための熱媒の温度に設定された低温用設定温度(例えば60℃)になるように加熱手段Hの加熱作動を制御し且つ熱媒循環ポンプ13を作動させる(#12)。
【0050】
本発明に係る熱媒供給設備は、図4の熱媒の循環状態により、低温単独暖房運転を行う。即ち、主制御部Cは、低温単独暖房運転が指令されると、四方弁31を暖房側状態とし、低温側熱動弁28を開弁させ且つ高温側熱動弁27を閉弁させるとともに、バイパス路熱動弁33を開弁させて、低温単独暖房運転用の回路を構成する(#11)。
低温単独暖房運転用の回路の構成後、主制御部Cは、熱媒循環ポンプ13を作動させて、低温熱媒通流路24を通して熱媒を循環させる状態で、前記点火処理を実行し、以降、低温側往き温度センサ25の検出温度が前記低温用設定温度になるようにガスバーナ9への燃料供給量を調整すべく燃料調整弁16の開度を調整し、且つ、その燃料供給量に応じた燃焼用空気通風量になるように送風機10の回転速度を調整する。また、低温端末制御部5が、冷暖房能力設定スイッチ63にて設定されている暖房能力と低温側往き温度センサ25で検出される熱媒の温度とに基づいて、低温暖房運転用の回路が断絶された状態とならないように、低温側熱動弁28の開度を閉弁させない範囲で調整して、暖房能力を制御する(#12)。
これにより、図4に示すように、熱媒は加熱手段Hで加熱され、前記低温用設定温度の熱媒となって、熱媒加熱通流路8、低温熱媒通流路24及びバイパス路11を循環し、低温暖房端末2において、低温暖房に利用される。
【0051】
上記の低温単独暖房運転は、主制御部Cが、他の暖房運転(A)、冷房運転(B)、運転停止(C)、のいずれかの制御情報を受信するまで行われる。
他の暖房運転(A)である高温暖房運転の運転開始の制御情報を受信した場合は、後述する高温低温同時暖房運転(A−3)が指令されたと判断し、当該暖房運転を行う。また、冷房運転(B)の制御情報を受信した場合は、後述する冷房運転を行う。
【0052】
また、運転停止(C)の制御情報を受信した場合は、運転停止が指令されたと判断する(#1→#2:運転停止)。この場合、暖房運転の停止であるため、前記ポストパージ処理を行う(#31:Yes→#32)。そして、当該ポストパージ処理の実行後、低温側熱動弁28を閉弁し、熱媒循環ポンプ13を停止させて、運転停止状態の回路構成とする(#33)。
【0053】
(A−3)高温低温同時暖房運転
主制御部Cは、高温端末制御部3において高温暖房端末1での高温暖房運転が指令され、且つ、低温端末制御部5において低温暖房端末2での低温暖房運転が指令された場合は、運転状態として、高温暖房端末1と低温暖房端末2とに熱媒を供給する高温低温同時暖房運転が指令されたと判断する(#1→#2:暖房運転)。そして、回路を高温低温同時暖房用に構成した上で(#11)、供給温度センサ23の検出温度が前記高温用設定温度(例えば80℃)になるように加熱手段Hの加熱作動を制御し且つ熱媒循環ポンプ13を作動させる(#12)。
【0054】
本発明に係る熱媒供給設備は、図5の熱媒の循環状態により、高温低温同時暖房運転を行う。即ち、主制御部Cは、高温低温同時暖房運転が指令されると、四方弁31を暖房側状態とし、高温側熱動弁27及び低温側熱動弁28を開弁させるとともに、バイパス路熱動弁33を開弁させて、高温低温同時暖房運転用の回路を構成する(#11)。
高温低温同時暖房運転用の回路の構成後、主制御部Cは、熱媒循環ポンプ13を作動させて、高温熱媒通流路26と低温熱媒通流路24とを通して熱媒を循環させる状態で前記点火処理を実行し、以降、供給温度センサ23の検出温度が前記高温用設定温度になるようにガスバーナ9への燃料供給量を調整すべく燃料調整弁16の開度を調整し、且つ、その燃料供給量に応じた燃焼用空気通風量になるように送風機10の回転速度を調整する。また、低温端末制御部5が、冷暖房能力設定スイッチ63にて設定されている暖房能力と低温側往き温度センサ25で検出される熱媒の温度とに基づいて、低温熱媒通流路24が暖房運転用の回路から断絶された状態とならないように、低温側熱動弁28の開度を閉弁させない範囲で調整して、暖房能力を制御する(#12)。
これにより、図5に示すように、熱媒は加熱手段Hで加熱され、前記高温用設定温度の熱媒となって、熱媒加熱通流路8、高温熱媒通流路26及びバイパス路11を循環し、高温暖房端末1において、高温暖房に利用される。また、高温暖房端末1で利用され、温度が低下した熱媒の一部は、バイパス路11からの高温の熱媒と混合されて、低温熱媒通流路24に通流し、低温暖房端末2において、低温暖房に利用される。
【0055】
なお、先述したように、主制御部Cは、高温単独暖房運転(A−1)の実行中に低温端末制御部5から低温暖房端末2での低温暖房運転が指令されたとき、及び、低温単独暖房運転(A−2)の実行中に高温端末制御部3から高温暖房端末1での高温暖房運転が指令されたときも、高温低温同時暖房運転が指令されたと判断するように構成されている。
【0056】
また、主制御部Cは、高温低温同時暖房運転(A−3)の実行中に、高温端末制御部3から高温暖房端末1の運転停止が指令されると、高温側熱動弁27を閉弁して高温熱媒通流路26への熱媒の循環を停止して、低温単独暖房運転(A−2)を実行するように構成されている。
また、主制御部Cは、高温低温同時暖房運転(A−3)の実行中に、低温端末制御部5から低温暖房端末2の運転停止が指令されると、低温側熱動弁28を閉弁して低温熱媒通流路24への熱媒の循環を停止して、高温単独暖房運転(A−1)を実行するように構成されている。
さらに、主制御部Cは、高温低温同時暖房運転(A−3)の実行中に、高温端末制御部3から高温暖房端末1の運転停止と低温端末制御部5から低温暖房端末2の運転停止とが同時に指令されると、暖房運転の停止が指令されたと判断し、前記ポストパージ処理を実行する(#1→#2:運転停止→#31:Yes→#32)。そして、ポストパージ処理の実行後、高温側熱動弁27及び低温側熱動弁28を閉弁し、熱媒循環ポンプ13を停止させて、運転停止状態の回路構成とする(#33)。
【0057】
(B)冷房運転
主制御部Cは、低温端末制御部5において低温暖房端末2での冷房運転が指令されると、運転状態として冷房運転が指令されたと判断する。そして、まず放熱運転を行い、続いて冷房運転を実行する。
即ち、主制御部Cは、冷房運転を指令する制御情報を受信すると(#1→#2:冷房運転)、回路を放熱運転用に構成し(#21)、低温側往き温度センサ25の検出温度が冷房運転を開始するための熱媒の基準温度として設定された放熱用設定温度(例えば人間の体温より若干高い40℃)以下になるように、加熱手段Hを放熱用に作動させ且つ熱媒循環ポンプ13を作動させて、放熱運転を実行する(#22)。
そして、低温側往き温度センサ25の検出温度が放熱用設定温度以下となった後、冷房運転を実行する。即ち、回路を冷房運転用に構成した上で(#23)、低温側往き温度センサ25の検出温度が冷房用設定温度(例えば地中杭による冷却による15℃)になるように冷却装置30の作動を制御し且つ熱媒循環ポンプ13を作動させて、冷房運転を実行する(#24)。
【0058】
以下では、放熱運転及び冷房運転について、さらに詳細に説明する。
本発明に係る熱媒供給設備は、図6の熱媒の循環状態により、放熱運転を行う。即ち、主制御部Cは、放熱運転が指令されると、四方弁31を暖房側状態とし、低温側熱動弁28及び高温側熱動弁27を閉弁させるとともに、バイパス路熱動弁33を開弁させて、放熱運転用の回路を構成する(#21)。
放熱運転用の回路の構成後、主制御部Cは、熱媒循環ポンプ13を作動させて、熱媒加熱通流路8及びバイパス路11を通して熱交換器7を含む加熱手段Hを経由して熱媒を循環させるとともに、送風機10を作動させて、熱交換器7に放熱用空気を供給して冷却し、熱交換器7を通流する熱媒を放熱させる(#22)。
これにより、図6に示すように、熱媒は加熱手段Hで放熱され、前記放熱用設定温度以下となるまで低温熱媒通流路24及び熱媒冷却通流路32を循環する。
【0059】
本発明に係る熱媒供給設備は、上記放熱運転が完了すると、図7に示す冷房運転用の回路を構成し、冷房運転を行う。即ち、主制御部Cは、上記放熱運転が完了すると、四方弁31を前記冷房側状態とし、低温側熱動弁28を開弁させ、且つ、高温側熱動弁27及びバイパス路熱動弁33を閉弁させて、冷房運転用の回路を構成する(#23)。
冷房運転用の回路の構成後、主制御部Cは、熱媒循環ポンプ13を作動させて、低温熱媒通流路24及び熱媒冷却通流路32を通して熱媒を循環させる。以降、低温側往き温度センサ25の検出温度が前記冷房用設定温度になるように冷却装置30の作動を制御する。また、低温端末制御部5が、冷暖房能力設定スイッチ63にて設定されている冷房能力と低温側往き温度センサ25で検出される熱媒の温度とに基づいて、冷房運転用の回路が断絶された状態とならないように、低温側熱動弁28の開度を閉弁させない範囲で調整して、冷房能力を制御する(#24)。
これにより、図7に示すように、熱媒は冷却装置30で冷却され、前記冷房用設定温度の熱媒となって、低温熱媒通流路24及び熱媒冷却通流路32を循環し、低温暖房端末2において、冷房に利用される。
【0060】
上記の冷房運転は、主制御部Cが、暖房運転(A)、若しくは、運転停止(C)、のいずれかの制御情報を受信するまで行われる。
暖房運転(A)の制御情報を受信した場合は、前記した暖房運転を行う。また、運転停止(C)の制御情報を受信した場合は、運転停止が指令されたと判断する(#1→#2:運転停止)。この場合、冷房運転の停止であるため、ポストパージ処理は行わず、冷却装置30を停止し、低温側熱動弁28を閉弁し、熱媒循環ポンプ13を停止させて、運転停止状態の回路構成とする(#31:No→#33)。
【0061】
〔別実施形態〕
以下、本発明の別実施形態について説明する。
【0062】
(イ)上記実施形態では、低温冷暖房端末に要求する冷暖房の能力を複数段階の冷暖房能力で設定する構成を例示したが、当該構成は例示に過ぎず、低温冷暖房端末に要求する冷暖房の能力を設定する構成は、当該構成に限定されるものではない。
例えば、低温暖房端末にて暖房する対象の暖房対象空間の温度を検出する対象空間温度検出手段と、暖房対象空間を暖房する目標暖房温度を設定する目標暖房温度設定手段とを設けて、目標暖房温度設定手段で設定される目標暖房温度と対象空間温度検出手段の検出温度との温度差に基づいて、低温冷暖房端末に要求する冷暖房の能力を決定する構成としてもよい。
【0063】
(ロ)上記実施形態では、高温側熱媒通流調整手段を熱動弁(高温側熱動弁)で構成し、開閉制御する構成を例示したが、別実施形態として、高温側熱媒通流調整手段を開閉作動(高温暖房端末への熱媒供給の断続)のみが可能な開閉弁で構成し、上記実施形態における高温側熱動弁と同様に開閉作動させる構成としてもよい。
また、上記実施形態では、高温側熱媒通流調整手段である高温側熱動弁を開弁又は閉弁する開閉制御のみを行う構成を例示したが、別実施形態として、高温側熱動弁を開弁する場合(高温単独暖房運転又は高温低温同時暖房運転の場合)に、高温側熱動弁の開度を調整して高温暖房端末の暖房能力を制御する構成としてもよい。
【0064】
(ハ)上記実施形態では、低温暖房の暖房能力及び冷房時の冷房能力を制御する構成として、冷暖房能力設定スイッチで設定されている冷暖房能力に基づいて、低温側熱動弁の開度を調整して低温暖房端末の冷暖房能力を制御する構成を例示したが、別実施形態として、低温側熱媒通流調整手段を開閉作動(低温暖房端末への熱媒供給の断続)のみが可能な開閉弁で構成し、低温暖房時及び冷房運転時は当該開閉弁を開状態とし、加熱手段の加熱能力或いは冷却手段の冷却能力を調整することで冷暖房能力を制御する構成としてもよい。
【0065】
(ニ)上記実施形態では、加熱手段の加熱源としてガスバーナを備える構成を例示したが、当該構成は例示に過ぎず、これに限定されるものではない。例えば、電気ヒータ等を加熱源として構成してもよい。
【0066】
(ホ)上記実施形態では、放熱運転から冷房運転への移行について、供給温度センサの検出温度が放熱用設定温度以下になった場合に放熱運転から冷房運転に移行させる構成を例示したが、当該構成は例示に過ぎず、これに限定されるものではない。例えば、放熱運転を所定時間実行した後、冷房運転に移行する等の他の構成としてもよい。
【0067】
(へ)上記実施形態では、低温暖房端末に冷却手段により冷却された冷媒を循環させる構成を説明したが、加熱手段Hをバイパスさせる形態で、高温暖房端末、膨張タンク、熱媒循環ポンプに冷却手段により冷却された冷媒を循環させるようにしてもよい。
この場合、高温暖房端末に対して、低温暖房端末とは独立に冷媒を循環させるようにしてもよいし、冷温暖房端末及び高温暖房端末の両方に循環させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 高温暖房端末
2 低温暖房端末
8 熱媒加熱通流路
8e 熱媒送出用の出口
8i 熱媒戻し用の入口
11 バイパス路
13 熱媒循環ポンプ(熱媒循環手段)
24 低温熱媒通流路
26 高温熱媒通流路
27 高温側熱動弁(高温側熱媒通流調整手段)
28 低温側熱動弁(低温側熱媒通流調整手段)
30 冷却装置(冷却手段)
31 四方弁(流路切替手段)
32 熱媒冷却通流路
33 バイパス路熱動弁(バイパス路開閉手段)
C 主制御部
H 加熱手段
R 冷却手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温暖房運転が可能な高温暖房端末が設けられた高温熱媒通流路が、熱媒を加熱可能な加熱手段を経由して熱媒を通流させる熱媒加熱通流路における熱媒送出用の出口と熱媒戻し用の入口とに接続された状態で設けられ、
低温暖房運転が可能な低温暖房端末が設けられた低温熱媒通流路が、前記熱媒加熱通流路における前記熱媒戻し用の入口と前記加熱手段との間の流路部分と前記熱媒戻し用の入口とに接続された状態で設けられ、
前記高温暖房端末への熱媒供給を断続又は調整するように前記高温熱媒通流路の開度を調整する高温側熱媒通流調整手段と、前記低温暖房端末への熱媒供給を断続又は調整するように前記低温熱媒通流路の開度を調整する低温側熱媒通流調整手段と、を備えた熱媒供給設備であって、
前記低温暖房端末において冷房運転が可能であり、
熱媒を冷却可能な冷却手段を経由して熱媒を通流させる熱媒冷却通流路が、前記低温熱媒通流路における前記低温暖房端末と前記熱媒戻し用の入口との間の流路部分において、流路切替手段により、前記低温暖房端末と前記熱媒戻し用の入口とを接続する熱媒通流路として前記低温熱媒通流路に接続される冷房側状態と、前記低温熱媒通流路から分離される暖房側状態と、を切替自在な状態で設けられており、
前記高温暖房端末及び前記低温暖房端末に要求される運転状態に基づいて、前記高温側熱媒通流調整手段と、前記低温側熱媒通流調整手段と、前記流路切替手段との作動を制御する制御手段が設けられた熱媒供給設備。
【請求項2】
前記熱媒加熱通流路における前記加熱手段と前記熱媒加熱通流路における前記熱媒送出用の出口との間の流路部分と、前記熱媒加熱通流路における前記熱媒戻し用の入口と前記熱媒加熱通流路における前記低温熱媒通流路の接続点との間の流路部分と、を連通接続するバイパス路が設けられ、
前記バイパス路における熱媒の通流を断続するように当該バイパス路を開閉するバイパス路開閉手段が設けられており、
前記制御手段が、前記運転状態に基づいて、前記バイパス路開閉手段の作動を制御する請求項1記載の熱媒供給設備。
【請求項3】
前記バイパス路開閉手段が、前記バイパス路を通流する熱媒の流量を調整自在に設けられた請求項2記載の熱媒供給設備。
【請求項4】
請求項1記載の熱媒供給設備において、前記低温暖房端末に冷房運転が要求された場合は、前記制御手段に、前記低温側熱媒通流調整手段を開状態、前記高温側熱媒通流調整手段を閉状態、前記流路切替手段を前記冷房側状態とした状態で、熱媒を前記低温熱媒通流路と前記熱媒冷却通流路とを循環させて前記低温暖房端末で冷房運転を行わせる冷房運転制御を行わせる熱媒供給設備の運転制御方法。
【請求項5】
請求項2又は3記載の熱媒供給設備において、前記低温暖房端末に冷房運転が要求された場合は、前記制御手段に、前記低温側熱媒通流調整手段を開状態、前記高温側熱媒通流調整手段を閉状態、前記流路切替手段を前記冷房側状態、前記バイパス路開閉手段を閉状態とした状態で、熱媒を前記低温熱媒通流路と前記熱媒冷却通流路とを循環させて前記低温暖房端末で冷房運転を行わせる冷房運転制御を行わせる熱媒供給設備の運転制御方法。
【請求項6】
前記低温暖房端末に冷房運転が要求された場合に、前記制御手段に前記冷房運転制御を行わせる前に、前記低温側熱媒通流調整手段と前記高温側熱媒通流調整手段とを閉状態、前記バイパス路開閉手段を開状態とした状態で、熱媒を前記バイパス路経由で前記熱媒加熱通流路を循環させて前記加熱手段で放熱させる放熱運転制御を行わせる請求項5記載の熱媒供給設備の運転制御方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項記載の熱媒供給設備において、
前記低温暖房端末に運転の要求がなく且つ前記高温暖房端末に高温暖房運転が要求される高温単独暖房運転が要求された場合は、前記高温側熱媒通流調整手段を開状態、前記低温側熱媒通流調整手段を閉状態、前記流路切替手段を前記暖房側状態とした状態で、
前記高温暖房端末に運転の要求がなく且つ前記低温暖房端末に低温暖房運転が要求される低温単独暖房運転が要求された場合は、前記高温側熱媒通流調整手段を閉状態、前記低温側熱媒通流調整手段を開状態、前記流路切替手段を前記暖房側状態とした状態で、
前記高温暖房端末に高温暖房運転が要求され且つ前記低温暖房端末に低温暖房運転が要求される高温低温同時暖房運転が要求された場合は、前記高温側熱媒通流調整手段及び前記低温側熱媒通流調整手段を開状態、前記流路切替手段を前記暖房側状態とした状態で、
前記加熱手段で加熱した熱媒を循環させて暖房運転を行わせる暖房運転制御を前記制御手段に行わせる熱媒供給設備の運転制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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