説明

熱媒通流ローラ

【課題】ロールシェルの表面温度の分布を一層均一化するとともに、熱媒流体の出入り口間の温度差によるロールシェルへの影響を低減すること。
【解決手段】熱媒通流路を有し、前記熱媒通流路を流れる熱媒流体により表面に当接する処理物を加熱又は奪熱処理する中空円筒状の熱媒通流ローラにおいて、ロールシェル21を、外周を構成する管21aと両端部に凸部を形成した内周を構成する管21bとを重ねた二重管構成とし、その凸部よって形成される空間を気液二相の熱媒体を封入する密閉室24とし、その密閉室24内に位置し、内周を構成する管21bの外周に沿って熱媒通流管24を螺旋状に巻回して配置する。これにより、ロールシェル21の内部表面および外部表面温度とも均一にすることができ、熱媒流体の出入り口間の温度差によるロールシェル24の熱膨張を均一化し、ローラの機械精度のくるいが小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を熱媒体として樹脂フィルムなどの処理物を加熱又は奪熱処理するローラに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムなどの処理物をローラに掛け、ローラに当接して通過する間に処理物を所定の温度に加熱したり、高温の処理物を所定の温度にまで奪熱することが行われている。加熱処理する場合、ローラは加熱処理に必要な温度に高められ、奪熱処理する場合、処理物からの奪熱作用によってローラ自体の温度が上昇するので、処理物の冷却に適応する温度までローラを冷却する。いずれの場合も熱を移送する媒体を必要とし、その媒体として流体たとえば油が使用されている。すなわち、適温の流体をローラの内部を通過させ、この流体でローラを加熱又はローラから奪熱する(以下、このようなローラを熱媒通流ローラという。)ようにしている。
【0003】
図4はこのような熱媒通流ローラの一例の概略構成を示すもので、図4において、1はロールシェル、2は回転駆動軸、3は中子、4はロータリジョイント、5は貯油タンク、6は油(熱媒流体)、7は加熱又は冷却用熱交換器、8は温度センサ、9はポンプ、10は樹脂フィルムなどの処理物である。ロールシェル1は円筒状をなし、その中空内部に中子3が配置され、中子3の中央部を貫通して熱媒通流路3aが形成されている。熱媒通流路3aは回転駆動軸2内を経てロータリジョイント4の流入口に連結され、ロールシェル1の内周壁と中子3の外周壁との間で形成された熱媒通流路1aは回転駆動軸2内を経てロータリジョイント4の出口に連結されている。
【0004】
すなわち、貯油タンク5の油6は加熱又は冷却用熱交換器7を通り、所定の温度にされ、ポンプ9によってロールシェル1内に送られ、熱媒通流路3aおよび1aを通流した油6は貯油タンク5へ排出される。主として熱媒通流路1aを通流する間にロールシェル1は所定の温度に維持され、ロールシェル1の表面に当接した処理物10を加熱又は奪熱する。
【0005】
このような加熱又は奪熱するローラとして、図5に示す熱媒通流ローラが開発されている。すなわち、図5において、11はロールシェル、12は回転駆動軸、13は密閉室、14は熱媒通流管、15は気液二相を形成する熱媒体である。ロールシェル11は円筒状を成し、長手方向の両側の端部は回転駆動軸12のフランジ12aに連結固定されている。密閉室13はロールシェル11の肉厚内に、たとえばロールシェル11の長手方向の端縁からその長手方向にドリルで孔を形成し、その孔に気液二相の熱媒体となる適量の水15などを注入して開口部を閉塞することにより形成され、適宜間隔を隔ててローラの外周方向に複数個設けられている。
【0006】
熱媒通流管14は密閉室13の内部を長手方向に沿って貫通し、ロールシェル11の長手方向の両側の端縁に伸びている。回転駆動軸12およびそのフランジ12aには熱媒通流孔が形成され熱媒通流管14はこの熱媒通流孔と連通している。すなわち、図4に示す加熱又は冷却用熱交換器7、ポンプ9およびロータリジョイント4を経て送り込まれたロールシェル11を加熱し、または奪熱するための油などの熱媒流体6は、一方の回転駆動軸12およびそのフランジ12aの熱媒通流孔を経て熱媒通流管14を通り、他方のフランジ12aおよび回転駆動軸12の熱媒通流孔およびロータリジョイントを経て貯油タンクへ排出される。
【0007】
ロールシェル11が熱媒流体または処理物により加熱されると、密閉室13内の熱媒体15が加熱気化し、その気体は低温度部に移動し、その気体は熱を放出して液化し、この動作が繰り返され、この潜熱移動により熱媒流体の出入り口の間で温度差があってもロールシェル11の軸心に沿う長手方向に対してほぼ均一な温度となる。その結果、熱媒流体の流量を大幅に低減することができ、小さい配管およびポンプの採用によって設備費を削減することが可能となり、配管の放熱量の低減とポンプ容量の低下によって、省エネルギーを達成することができる。
【特許文献1】特開2004−116538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、気液二相を形成する熱媒体を封入する密閉室は、ロールシェルの肉厚部にドリルで孔を明けることにより形成しているため、密閉室の内壁からロールシェルの表面までの距離がロールシェル表面の場所によって違い、微妙な温度分布の不均一が発生するという問題や熱媒流体の出入り口間の温度差によって若干ロールシェルの直径に違いが発生するという問題があった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、ロールシェルの表面温度の分布を一層均一化するとともに、熱媒流体の出入り口間の温度差によるロールシェルへの影響を低減することができるようにし、斯かる問題を解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、熱媒通流路を有し、前記熱媒通流路を流れる熱媒流体により表面に当接する処理物を加熱又は奪熱処理する中空円筒状の熱媒通流ローラであって、前記ローラは内側内周面に、長手方向および円周方向に沿って気液二相の熱媒体を封入する密閉室を有するとともに、前記密閉室内の円周方向に沿って伸びる螺旋状の熱媒通流管を前記密閉室内に配置してなることを主な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、ロールシェルを、内周を構成する管と外周を構成する管を重ねた二重管構成とし、その重ね間に気液二相の熱媒体を封入する密閉室を形成し、その密閉室内に位置し、内周を構成する管の外周に沿って螺旋状の熱媒通流管を巻回して配置するので、内周を構成する管および外周を構成する管の肉厚を均一化しやすく、また、ドリル孔のような密閉室間に隙間がなく、これによりロールシェルの内部表面および外部表面温度とも均一にすることができ、熱媒流体の出入り口間の温度差によるロールシェルの熱膨張を均一化し、ローラの機械精度のくるいが小さくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ロールシェルの表面温度の分布を一層均一化するとともに、熱媒流体の出入り口間の温度差によるロールシェルへの影響を低減することができるようにする目的を、ロールシェルを、内周を構成する管と外周を構成する管を重ねた二重管構成とし、その重ね間に気液二相の熱媒体を封入する密閉室を形成し、その密閉室内に位置し、内周を構成する管の外周に沿って螺旋状の熱媒通流管を巻回して配置することにより実現した。
【実施例】
【0013】
以下本発明の実施例について図1ないし図3を参照して説明する。図1は実施例に係る熱媒通流ローラの縦断面図である。図1において、21はロールシェル、22は回転駆動軸、23は密閉室、24は熱媒通流管である。ロールシェル21は外周を構成する管21aと両端に凸部を形成した内周を構成する管21bとを重ねて構成され、密閉室23は、この凸部による中央部の凹部によって形成される。
【0014】
熱媒通流管24は、内周を構成する管21bの凹部の外周に螺旋状に巻回され、ル両側の端部は、それぞれ図示しないロータリジョイントに連結される。すなわち、一方のロータリジョイントから流入した熱媒流体は螺旋状の熱媒通流管24内を通流し、他方のロータリジョイントから排出され、螺旋状の熱媒通流管24内を通流する間に密閉室23の気液二相の熱媒体を介してロールシェル21と熱交換される。この場合、図2に示すように熱媒通流管24にフィン25を設けると熱交換効率を高めることができる。また、図3に示すように、ロールシェル21の中空内に鉄心26に巻回した誘導コイル27からなる誘導発熱機構を設けるようにしてもよい。この場合、誘導コイル27に適宜交流電流を流し、ロールシェル21をジュール発熱させ、これによりロールシェル21全体の温度変動に対する応答速度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係る熱媒通流ローラを示す断面図である。
【図2】本発明の一実施例に係る熱媒通流管の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の他の実施例に係る熱媒通流ローラを示す断面図である。
【図4】熱媒通流ローラの一構成を示す構成図である。
【図5】従来の熱媒通流ローラを示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0016】
4 ロータリジョイント
5 貯油タンク
7 加熱又は冷却用熱交換器
8 温度センサ
9 ポンプ
10 処理物
21 ロールシェル
21a ロールシェルの外周を構成する管
21b ロールシェルの内周を構成する管
22 回転駆動軸
23 密閉室
24 熱媒通流管
25 フィン
26 鉄心
27 誘導コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒通流路を有し、前記熱媒通流路を流れる熱媒流体により表面に当接する処理物を加熱又は奪熱処理する中空円筒状の熱媒通流ローラであって、前記ローラは内側内周面に、長手方向および円周方向に沿って気液二相の熱媒体を封入する密閉室を有するとともに、前記密閉室内の円周方向に沿って伸びる螺旋状の熱媒通流管を前記密閉室内に配置してなることを特徴とする熱媒通流ローラ。
【請求項2】
螺旋状の熱媒通流管に熱交換フィンを設けたことを特徴とする請求項1に記載の熱媒通流ローラ。
【請求項3】
ローラの中空内に電磁発熱機構を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱媒通流ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−2562(P2008−2562A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172395(P2006−172395)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】