説明

熱延鋼帯の製造方法

【課題】凸部を有する一対のプレス金型で鋼のスラブを幅プレスするサイジングプレスが設置された熱間圧延設備にて、エッジシーム疵を余幅の部分に含ませた幅(目標幅という)の熱延鋼帯を確実に製造する方法を提供する。
【解決手段】スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量と、エッジシーム疵最大回り込み量との相関関係を、鋼種、スラブ寸法を含むスラブ規格ごとに予め求めておき、当該スラブについて、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量とエッジシーム疵最大回り込み量との相関関係に基づき、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量が零である場合に対するエッジシーム疵最大回り込み量の増分を決定し、当該スラブの後に幅プレスする後行スラブについて、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量が零である場合に設定された余幅に前記増分を加え、設定された余幅を修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸部を有する一対のプレス金型で鋼のスラブを幅プレスするサイジングプレスが設置された熱間圧延設備にて、エッジシーム疵を余幅の部分に確実に含む幅の熱延鋼帯を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
幅を調整する設備の一種として、サイジングプレスを熱間圧延ラインに設置し、粗圧延機、仕上げ圧延機で圧延する前に、凸部を有する一対のプレス金型で鋼のスラブを幅方向にプレスすること(以下、幅プレスするという)が行われている。このようにすることにより、熱間圧延工程にて幅調整量を増やし、連続鋳造工程にて鋳造するスラブの幅統合を図り、熱延鋼帯の幅を作り分けしている。
【0003】
熱間圧延設備にて、熱延鋼帯を製造すると、幅方向エッジ部近くに長手方向に延びた線状欠陥(エッジシーム疵と称される)が発生することがある。この長手方向に延びたエッジシーム疵9は、図6に示したように、被圧延材7を粗圧延し仕上げ圧延する熱間圧延過程で、被圧延材7の側面のしわ状欠陥8が表裏面に回り込んで生じる。圧延中の幅方向断面である図6(a)、(b)中、6は粗圧延用水平ロール、7は粗圧延中の被圧延材7を示した。また、図6(c)中、10は熱延鋼帯の上面または下面を示した。熱延鋼帯10の表裏面には、回り込み量dのエッジシーム疵9が生じる。
【0004】
ここで、被圧延材の側面に生じたしわ状欠陥が、表裏面に回り込むのを抑制するため、凸部を有する一対のプレス金型1を用い、図5(a)、(b)に示すように、スラブMを幅プレスする方法が開示されている(特許文献1、2)。図5(a)は、特許文献1に記載の凸部を有する一対のプレス金型1の形状を示す平面図、図5(b)はX−X断面図である。図5中、2はスラブ搬送方向に対し傾けて入側に設けた入側傾斜面、3はスラブ搬送方向に対し平行となるよう中間に設けた平行面、4はスラブ搬送方向に対し傾けて出側に設けた出側傾斜面であり、5は凸部である。凸部5は等脚台形形状であり、入側傾斜面2、平行面3および出側傾斜面4に形成され、一対のプレス金型1でスラブMを幅プレスする際、スラブMの側面に、等脚台形形状の凸部5に一致する凹み部を形成するようになっている。
【0005】
その前提条件は、一対のプレス金型1でスラブMを幅プレスする際、プレス金型によるスラブ叩き位置の厚み方向ずれがないことである。ここで、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量δは、等脚台形形状の凸部の上下方向中央位置1aと、スラブ厚み中心O位置との上下方向の差である(図5(b)および図1(a)参照)。
スラブ叩き位置の厚み方向ずれがない場合、スラブ1の側面に形成される凹み部の開始位置P、Qは、図5(b)に示したとおり、スラブの側面における厚み中央位置を境として、上下でほぼ同じ位置となる。
【0006】
従来、熱延鋼帯の余幅bは、プレス金型によるスラブ叩き位置の厚み方向ずれがないこと前提として設定され、図7に示すとおり、製品幅aに余幅bを付与して熱延鋼帯10の幅W(目標幅Wともいう)を設定している。すなわち、製造した熱延鋼帯10について、各エッジシーム疵のエッジシーム疵回り込み量dを測定し、そのうちの最大値(エッジシーム疵最大回り込み量という)に応じて設定されている。このため、凸部を有する一対のプレス金型1でスラブMを幅プレスする際、スラブ叩き位置の厚み方向ずれがない場合においては、設定された余幅bに当る部分にエッジシーム疵が含まれるので、熱延鋼帯の幅Wは合格である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-52701号公報
【特許文献2】特開2005-34887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、実際には、凸部を有する一対のプレス金型1でスラブMを幅プレスする際、スラブ叩き位置の厚み方向ずれが生じ、これによって、設定された余幅bよりも内側にまでエッジシーム疵が回り込み、製品としての幅aを確保できないという問題があった。
また、特許文献1、2には、熱延鋼帯10のエッジシーム疵最大回り込み量を小さくする技術が記載されているが、スラブ叩き位置の厚み方向ずれが生じた場合、設定された余幅よりも内側にまでエッジシーム疵が回り込むということが考慮されていないという問題があった。
【0009】
したがって、凸部を有する一対のプレス金型で鋼のスラブを幅プレスする際、スラブ叩き位置の厚み方向ずれが生じた場合、設定された余幅bを超えて内側の製品幅aにまでエッジシーム疵が入り込んで、図7に示した熱延鋼帯の幅Wは不合格、つまり製品幅aを確保できなくなる。このようなことになると、再度、別のスラブを充当し、熱延鋼帯の幅W(目標幅W)を設定し直して、熱延鋼帯を製造する必要があり、鋼帯製造工程を混乱させるばかりでなく、納期遅れにつながる恐れもある。
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、凸部を有する一対のプレス金型で鋼のスラブを幅プレスするサイジングプレスが設置された熱間圧延設備にて、エッジシーム疵を余幅の部分に含む幅の熱延鋼帯を確実に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、スラブ叩き位置の厚み方向ずれが生じる原因を鋭意検討した結果、金型を交換してから、ほぼ同一規格のスラブをまとめて仕上げ圧延する製造チャンスごとに、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量が異なり、スラブ叩き位置の厚み方向ずれが生じると、設定された余幅の部分よりも内側にまでエッジシーム疵が回り込み、エッジシーム疵最大周り込み量が増えるということを知見し、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量と、エッジシーム疵最大回り込み量との相関関係を、鋼種、スラブ寸法を含むスラブ規格ごとに予め求めておくことで、上記課題を解決できることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0012】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1)凸部を有する一対のプレス金型で鋼のスラブを幅方向に幅プレスするサイジングプレスが設置された熱間圧延設備にて、前記スラブを幅方向に幅プレスしてから、引き続き幅プレスしたスラブを熱間圧延し、予め設定された余幅に製品幅を加えた目標幅の熱延鋼帯を得る際、プレス金型の凸部の中央からスラブ厚み中心までの上下方向距離で表わされるスラブ叩き位置の厚み方向ずれ量と、エッジシーム疵最大回り込み量との相関関係を、鋼種、スラブ寸法を含むスラブ規格ごとに予め求めておく。ついで、一対のプレス金型によるスラブ叩き位置の厚み方向ずれ量をスラブごとに検出し、前記の相関関係に基づき、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量が零である場合に対するエッジシーム疵最大回り込み量の増分を決定し、当該スラブの後に幅プレスする後行スラブについて、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量が零である場合に設定された余幅に前記増分を加え、設定された余幅を修正することを特徴とするエッジシーム疵を含まない熱延鋼帯の製造方法。
(2)幅プレス途中または幅プレス後に前記スラブの側面の形状を測定して、前記スラブの側面に形成される凹み部の開始位置から表裏面側の縁までの距離の差を求め、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量を検出することを特徴とする上記(1)に記載のエッジシーム疵を含まない熱延鋼帯の製造方法。
(3)前記スラブの側面に、厚み方向に並行するスリット状の光を当てて走査し、カメラで前記スラブの側面から反射されるスリット状の光を撮像し、前記カメラで撮像した画像データに基づき、前記スラブの側面の形状を測定することを特徴とする上記(2)に記載のエッジシーム疵を含まない熱延鋼帯の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明法によれば、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量をスラブごとに検出し、当該スラブにスラブ叩き位置の厚み方向ずれがある場合、当該スラブの後に幅プレスする後行スラブについて、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量が零である場合に設定された余幅に、当該スラブについて決定した増分を加え、設定された余幅を修正する。
このため、後行スラブの余幅は、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量が零である場合に設定された余幅に、後行スラブよりも前に当該スラブについて決定した増分を加え、エッジシーム疵最大回り込み量が増える増分を下回らないように修正した余幅となっている。
【0014】
したがって、エッジシーム疵を余幅の部分に含ませた幅(目標幅という)の熱延鋼帯を確実に製造することができる。その後熱延鋼帯をトリミングラインに供給し、修正された余幅の部分を切断除去し、製品幅の部分にエッジシーム疵を含まない熱延鋼帯が得られるから、プレス金型によるスラブ叩き位置の厚み方向ずれがあっても、鋼帯製造工程を混乱させずかつ納期遅れもなく、エッジシーム疵を含まない熱延鋼帯が出荷できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)〜(d)は本発明法を知見した各熱延過程における断面図である。
【図2】スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量δとエッジシーム疵最大回り込み量dmaxとの相関関係を示す特性図の一例である。
【図3】(a)は本発明法に用いて好適なスラブ側面形状検出装置の構成図、(b)はそれを用いた検出法の説明図である。
【図4】本発明法を適用して好適な熱間圧延設備の構成図である。
【図5】特許文献1に記載された一対のプレス金型の形状を示す(a)は平面図、(b)はX−X断面図である。
【図6】(a)、(b)はエッジシーム疵の発生過程を示す圧延幅方向断面図、(c)は熱延鋼帯のエッジシーム疵を示す平面図である。
【図7】熱延鋼帯の目標幅Wの定義を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明法を適用して好適な熱間圧延設備について説明する。
図4は、特許文献1に記載された熱間圧延設備20の構成図であり、サイジングプレス22は、加熱炉21と粗圧延機23の間に設置されている。粗圧延機23はエッジャーロール26と粗圧延用水平ロール27を具備する4スタンドで構成され、仕上げ圧延機24は7スタンドで構成されている。幅計28はサイジングプレス以降の各設備の入出側に設置されている。
【0017】
Mは鋼のスラブを示し、幅プレスするスラブMは、加熱炉21で加熱されて搬送テーブル上に抽出される場合あるいは熱間圧延ラインの搬送テーブル上に連続鋳造機から直送されてくる場合がある。なお、スラブMを長手方向にわたり幅プレスするには、スラブMの搬送方向への送り量を金型の平行部の長さを超えないように設定し、送り量だけスラブMを送った後、凸部を有する一対のプレス金型で叩くという動作を繰り返す(図5(a)参照)。熱間圧延して所定の目標幅、所定の仕上げ厚みとした熱延鋼帯10は巻き取り機25で巻き取られ、その後トリミング工程などに送られる。ただし、本発明法適用前は、スラブ叩き位置が板厚方向にずれていないことを前提として余幅が設定されていた。
【0018】
次いで、上記した熱間圧延設備にて、凸部を有する一対のプレス金型でスラブMを幅プレスする際、スラブ叩き位置の厚み方向ずれが生じる原因を鋭意検討し、本発明を成すに至った経緯について説明する。図1(a)〜(d)は本発明法を成すに至った各熱延過程における断面図である。ここで、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量はδで表わされ、後述するように、スラブ側面形状検出装置で検出することができる(図3参照)。なお、スラブ叩き位置の厚み方向ずれは、凸部を有する一対のプレス金型1を交換したタイミングでサイジングプレスの設備特性によって起る(図1(a)参照)。
【0019】
したがって、サイジングプレスの設備特性によって、一対のプレス金型1によるスラブ叩き位置の厚み方向ずれが生じた場合、凸部に対応する凹み部の開始位置P、Qは、図1(b)に示したとおり、スラブ中心0に対してほぼ点対称であり、スラブMの側面の上、下部で形状が異なる。
このようなスラブMを後続する粗圧延機に供給し、粗圧延用水平ロール6で粗圧延中の状態を図1(c)に、被圧延材7に粗圧延、仕上げ圧延を施して得られる熱延鋼帯10のエッジシーム疵9の発生位置を図1(d)に示した。
【0020】
被圧延材7の両側面におけるふくらみ形状は、図1(c)に示したように形成され、これに対応して、図1(d)に示したように、スラブ中心0に対してほぼ点対称であり、スラブMの側面の上、下部で回り込み量の異なるエッジシーム疵9が、表裏面に生じる。そして、スラブMの側面の上、下部のうち、凸部でずれて叩かれた部分からの回り込み量が大きくなるということが分かった。図1(d)中、d、dは、凸部でずれて叩かれた部分から生じたエッジシーム疵の回り込み量である。
【0021】
以上、熱間圧延設備にて、凸部を有する一対のプレス金型1でスラブMを幅プレスする際、スラブ叩き位置の厚み方向ずれが生じる原因を鋭意検討し、凸部で叩かれたスラブ叩き位置が、スラブMの側面の上部または下部にずれると、スラブ中心0に対してほぼ点対称で、一方の面への回り込み量は減少するが、他方の面への回り込み量は増大し、結果として、凸部でずれて叩かれた部分からの回り込み量が、スラブ叩き位置の厚み方向ずれがない場合と比べて増大することを把握した。ここで、エッジシーム疵最大回り込み量をdmaxとする。
【0022】
次いで本発明者らは、図4に示した熱間圧延設備を用い、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量δと、エッジシーム疵最大回り込み量dmaxとの関係を定量的に把握する実験を行なった。
(実験条件)
実験設備:図4に示した熱間圧延設備のサイジングプレス22に組み込んだ一対のプレス金型1の形状は、断面台形形状の凸部5を、平行な底辺間を結ぶ辺の長さの等しい等脚台形とした(図1(a)参照)。
スラブMの規格:鋼種=SUS430、スラブ寸法=厚み200〜260mm、スラブ幅500〜2000mm、加熱温度=1100〜1300℃、幅プレス量=30〜250mm、スラブ長さ=4500〜12500mm、スラブ重量=0〜32ton。
(実験方法)
等脚台形とした凸部5を有する一対のプレス金型1でスラブMをサイジングプレス22で幅プレスした後、一旦スラブMを冷却し、冷却したスラブの側面形状に基づき、スラブ長手方向3ヶ所を測り、その平均値でスラブ叩き位置の厚み方向ずれ量δを検出した。その後、スラブMを加熱炉に再装入して加熱し、加熱したスラブMをサイジングプレス22は空通とし、それ以降は工程材と同様に被圧延材を熱間圧延して熱延鋼帯を得、得た熱延鋼帯のエッジシーム疵回り込み量を調べた。その結果を図2に示す。
(実験結果)
図2に示した結果から、鋼種、スラブ寸法を含むスラブ規格がほぼ同じであるスラブに関し、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量δとエッジシーム疵最大回り込み量dmaxとに相関関係があることが分かる。図2中の曲線は、エッジシーム疵最大回り込み量dmaxの各実験点を下回らないように決めた余幅増分決定カーブである。この余幅増分決定カーブによれば、当該スラブにスラブ叩き位置の厚み方向ずれ量が検出された場合、当該スラブとスラブ規格がほぼ同じであり、当該スラブの後に幅プレスする後行スラブについて、エッジシーム疵が余幅に含まれるようにするための増分を決定することができる。例えば、当該スラブのスラブ叩き位置の厚み方向ずれ量δ=4mmと検出された場合、δ=4mmにおけるdmaxの値21.2mmからδ=0mmにおけるdmaxの基準値16.2mmを引いて、増分(=21.2−16.2=5.0mm)を算出する。次いで、当該スラブの後に幅プレスする後行スラブに対しては、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量が、当該スラブと同じだけ、すなわちこの例ではスラブ叩き位置の厚み方向ずれ量δ=4mmあると予測できる。
【0023】
このように予測できる理由は、スラブ叩き位置の厚み方向ずれは、凸部を有する一対のプレス金型1を交換したタイミングでサイジングプレスの設備特性によって起り、一対の金型を交換してから製造チャンス(ほぼ同一規格のスラブをまとめて仕上げ圧延するチャンス)ごとに、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量δが異なることによる。
以上説明したように、本発明法は、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量δと、エッジシーム疵最大回り込み量との相関関係を、たとえば図2に示したように、鋼種、スラブ寸法を含むスラブ規格ごとに予め求めておき、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量δをスラブごとに検出し、当該スラブについて、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量δとエッジシーム疵最大回り込み量との相関関係に基づき、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量が零である場合に対するエッジシーム疵最大回り込み量の増分を決定する。次いで、当該スラブの後に幅プレスする後行スラブについて、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量が零である場合に設定された余幅に前記増分を加え、設定された余幅を修正する。
【0024】
このようにすることで、後行スラブについて、修正された余幅に製品幅を加えた目標幅の熱延鋼帯を得ることができる。
スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量δの検出は、図3(a)に示したようなスラブ側面形状検出装置を用いるのが好適である。このスラブ側面形状検出装置は、スラブMの側面に厚み方向に並行するスリット状の光11を当てて走査するスリット光投光手段12と、スラブMの側面から反射されるスリット状の光11を撮像するカメラ13と、カメラ13に接続された画像処理装置14とを、具備している。このようなスラブ側面形状検出装置によれば、カメラ13で撮像して得たスラブMの側面の画像データに基づき、図3(b)に示したように、側面の形状に基づき、該側面の上、下部で凸部に対応する凹み部の開始位置Pから側面の縁までの距離L、Lを求め、求めた上下の距離の差(=L−L)でスラブ叩き位置の厚み方向ずれ量を精度よくオンラインで検出することができる。
【実施例】
【0025】
(実施例1)本発明例1として、等脚台形形状の凸部5を有する一対のプレス金型で幅プレスした当該スラブについて、厚み方向に並行するスリット状の光を当てて走査し、カメラで前記スラブの側面から反射されるスリット状の光を撮像し、前記カメラで撮像した画像データに基づき、スラブの側面形状を測定した。その結果、一対のプレス金型の一方(駆動側)が上方に他方(操作側)が下方に4mmずれていたため、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量δ=4mmとし、図2示した余幅増分決定カーブに基づき、当該スラブのエッジシーム疵最大回り込み量の増分(+5mm)を決定し、当該スラブの後に幅プレスする後行スラブについて、スラブ叩き位置の厚み方向ずれがないとして設定された余幅に前記増分(+5mm)を加え、設定された余幅を修正した。この余幅を付与する熱間圧延を実施し熱延鋼帯を得た。
【0026】
得られた熱延鋼帯をトリミング工程に送り、余幅の部分を切断し除去した結果、エッジシーム疵がない所望する製品幅を得ることができた。
(実施例2)本発明例2として、等脚台形形状の凸部5を有する一対のプレス金型で幅プレスした当該スラブについて、冷却後、側面形状を小型マイクロメータを用いて人手で測定した。その結果、一対のプレス金型の一方(駆動側)が下方に他方(操作側)が上方に2mmずれていたため、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量δ=2mmとし、図2示した余幅増分決定カーブに基づき、当該スラブのエッジシーム疵最大回り込み量の増分(=17.5−16.2=1.3mm)を決定し、当該スラブの後に幅プレスする後行スラブについて、スラブ叩き位置の厚み方向ずれがないとして設定された余幅に前記増分1.3mmを加え、設定された余幅を修正した。この余幅を付与する熱間圧延を実施した。
【0027】
得られた熱延鋼帯をトリミング工程に送り、余幅の部分を切断し除去した結果、エッジシーム疵がない所望する製品幅を得ることができた。
(実施例3)従来例として、サイジングプレスによる幅プレスを発明例1と同じ条件で行なったスラブについて、発明例1と同様にしてスラブの側面形状を測定した。その結果、発明例1のスラブと同じだけ、一対のプレス金型によるスラブ叩き位置の板厚方向ずれ量が生じていたが、従来どおり、スラブ叩き位置の板厚方向ずれ量が生じていないとして設定された余幅のままとし、この余幅を付与する熱間圧延を実施した。
【0028】
得られた熱延鋼帯の余幅をトリミング工程で切断し除去したが、エッジシーム疵が製品幅内に残ったため、再度、トリミング工程でエッジシーム疵が製品幅内に含まれないようにトリミングを実施せざるを得ず、熱延鋼帯の生産を阻害し、製品幅未満の熱延鋼帯となったので、狭幅の製品に振り替えざるを得なかった。
【符号の説明】
【0029】
M スラブ
O スラブ断面中心
δ 厚み方向ずれ量
エッジシーム疵の回り込み量
max エッジシーム疵最大回り込み量
、d エッジシーム疵の回り込み量
P、Q 凸部に対応する凹み部の開始位置
、L 凸部に対応する凹み部の開始位置から側面の縁までの距離
W 熱延鋼帯の目標幅
a 製品幅
b 余幅
1 一対のプレス金型
1a 等脚台形形状の凸部の上下方向中央位置
2 入側傾斜面
3 平行面
4 出側傾斜面
5 金型の凸部
6 粗圧延用水平ロール
7 被圧延材
8 しわ状欠陥
9 エッジシーム疵
10 熱延鋼帯
11 スリット光
12 スリット光投光手段
13 カメラ
14 画像処理装置
20 熱間圧延設備
21 加熱炉
22 サイジングプレス
23 粗圧延機
24 仕上げ圧延機
25 巻き取り機
26 エッジャーロール
27 粗圧延用水平ロール
28 幅計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸部を有する一対のプレス金型で鋼のスラブを幅方向に幅プレスするサイジングプレスが設置された熱間圧延設備にて、前記スラブを幅方向に幅プレスしてから、引き続き幅プレスしたスラブを熱間圧延し、予め設定された余幅に製品幅を加えた目標幅の熱延鋼帯を得る際、
前記凸部の中央からスラブ厚み中心までの上下方向距離で表わされるスラブ叩き位置の厚み方向ずれ量と、エッジシーム疵最大回り込み量との相関関係を、鋼種、スラブ寸法を含むスラブ規格ごとに予め求めておき、
スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量をスラブごとに検出し、前記の相関関係に基づき、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量が零である場合に対するエッジシーム疵最大回り込み量の増分を決定し、
当該スラブの後に幅プレスする後行スラブについて、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量が零である場合に設定された余幅に前記増分を加え、設定された余幅を修正することを特徴とするエッジシーム疵を含まない熱延鋼帯の製造方法。
【請求項2】
幅プレス途中または幅プレス後に前記スラブの側面の形状を測定し、該側面の形状に基づき、該側面の上、下部で凸部に対応する凹み部の開始位置から側面の縁までの距離を求め、求めた上下の距離の差で、スラブ叩き位置の厚み方向ずれ量を検出することを特徴とする請求項1に記載のエッジシーム疵を含まない熱延鋼帯の製造方法。
【請求項3】
前記スラブの側面に、厚み方向に並行するスリット状の光を当てて走査し、カメラで前記スラブの側面から反射されるスリット状の光を撮像し、前記カメラで撮像した画像データに基づき、前記スラブの側面の形状を測定することを特徴とする請求項2に記載のエッジシーム疵を含まない熱延鋼帯の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−207824(P2010−207824A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53631(P2009−53631)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】