説明

熱式流量計

【課題】 より広い測定レンジで流量の測定が可能な熱式流量計を実現する。
【解決手段】 流路を流れる液体の温度を制御し温度制御部分の上流側及び下流側の流体の温度差に基づき流量を測定する熱式流量計において、接液部分が全てガラスで構成された第1の流路と、接液部分が全てガラスで構成され一端が第1の流路の一端に接続され第1の流路より断面積の大きい第2の流路と、これらの第1及び第2の流路にそれぞれ設けられた第1及び第2のセンサ手段と、これら第1及び第2のセンサ手段を制御して第1及び第2の流路を流れる液体の温度をそれぞれ制御すると共に測定する流量に応じて一方のセンサ手段を選択して選択されたセンサ手段で検出された上流側及び下流側の温度の温度差に基づき流量を求める演算制御手段とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路を流れる液体の温度を制御し温度制御部分の上流側及び下流側の流体の温度差に基づき流量を測定する熱式流量計に関し、特により広い測定レンジで流量の測定が可能な熱式流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の流路を流れる液体の温度を制御し温度制御部分の上流側及び下流側の流体の温度差に基づき流量を測定する熱式流量計に関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0003】
【特許文献1】特開平05−079875号公報
【特許文献2】特開平07−159215号公報
【特許文献3】特開平10−082678号公報
【特許文献4】特開2002−168668号公報
【特許文献5】特開2006−010322号公報
【特許文献6】特開2006−226796号公報
【0004】
図6はこのような従来の熱式流量計の一例を示す構成ブロック図である。図6において、1は金属の細管等で構成される流路、2は流路1を流れる流体の温度を加熱して一定温度にするヒータ等の伝熱手段、3及び4はサーミスタや白金測温抵抗体等の温度検出手段、5は上流側及び下流側の流体の温度差に基づき流量を求めるCPU(Central Processing Unit)等の演算制御手段である。
【0005】
図6中”FL01”に示すように被測定液体が流れる流路1の中央部分には伝熱手段2が設けられ、この流路1上であって伝熱手段2から等間隔の位置には温度検出手段3及び4が設けられる。
【0006】
また、温度検出手段3及び4の出力はそれぞれ演算制御手段5に接続され、演算制御手段5からの温度制御のための制御信号は伝熱手段2に接続される。
【0007】
ここで,図6に示す従来例の動作を図7を用いて説明する。図7は流路の位置に対する流路内の被測定液体の温度分布の一例を示す特性曲線図である。演算制御手段5は予め測定された被測定液体の温度に対して、被測定液体が数度程度高い一定温度になるように伝熱手段2を制御する。
【0008】
このような状態で、流量がゼロの場合には図7中”CH11”に示すように図7中”HT11”に示す伝熱手段2の設置位置を中心にして対称な温度分布を有する。このため、図7中”TS11”及び”TS12”に示す温度検出手段3及び4の設置位置における温度は等しくなる。言い換えれば、温度差はゼロになる。
【0009】
一方、流路1の流体が流れると図7中”CH12”に示すように温度分布のピークが下流側にシフトする。このため、図7中”TS11”及び”TS12”に示す温度検出手段3及び4の設置位置における温度はそれぞれ異なることになり、図7中”DT11”に示すような温度差が生じることになる。
【0010】
このような温度差は被測定液体の流量に依存した信号となるので、このような温度差に基づき演算制御手段5で流路1を流れる被測定液体の流量を求めることができる。
【0011】
この結果、流路1を流れる被測定液体の温度を伝熱手段2で制御し2つの温度検出手段3及び4によって伝熱手段2の上流側及び下流側の流体の温度を測定し、演算制御手段5で当該温度の温度差に基づき流量を求めることにより、被測定液体の流量を測定することが可能になる。
【0012】
但し、図6に示す従来例では、流路1として金属の細管等を用いるために金属を腐食するような液体の流量を測定することはできないといった問題点があった。
【0013】
このため、前述した”特許文献2”においては耐腐食性に優れたガラス基板に流路を形成した熱式流量計(質量流量センサ)が記載されている。
【0014】
図8及び図9は”特許文献2”に記載された従来の熱式流量計の他の一例を示す斜視図及び断面図である。図8及び図9において、6はガラス基板、7及び9はシリコン基板、8は伝熱手段、10はガラス基板6に形成された流路である。
【0015】
ガラス基板6の中央部分には超音波加工、レーザ加工、サンドブラスト加工、ウエットエッチング等によって長孔である流路10が形成される。また、ガラス基板6の上面にはシリコン基板7が陽極接合により貼り合わされる。
【0016】
また、ガラス基板6の下面にはシリコン基板9が陽極接合により貼り合わされ、ガラス基板6に形成された流路10の両端部分に隣接するシリコン基板9には図8中”HL21”及び”HL22”に示すような孔が形成され、それぞれ被測定液体の流入孔若しくは排出孔として機能する。
【0017】
さらに、シリコン基板7上には白金やニッケル等の抵抗温度係数の大きい金属から構成されるヒータ等の伝熱手段8(温度検出手段を兼ねる)が形成され、シリコン基板7及びガラス基板6上には配線が適宜形成される。
【0018】
ここで、図8及び図9に示す従来例では、ガラス基板6に流路10を形成する構成ではあるものの、流路10の上面及び下面にはシリコン基板7及び9が用いられているので、やはり、耐腐食性に問題がある。
【0019】
一方、図8及び図9に示す従来例においてシリコン基板7及び9をガラス基板に置換することにより、接液部分が全てガラスとなり耐腐食性が向上するものの、ガラスは熱伝導率が小さいので、流路を流れる液体の流量が大きい場合には、伝熱手段8直下の液体が十分に温まらない。
【0020】
このため、伝熱手段8直下の温度が十分に温まっていない場合には、流量の増加に伴なって上流側と下流側との温度差が小さくなるように変化する。
【0021】
一方、流量が小さく、伝熱手段8直下の温度が十分に温まっている場合には、流量の増加に伴なって上流側と下流側との温度差が大きくなるように変化する。
【0022】
すなわち、図10は上流側と下流側との温度差と、流量との関係を示す特性曲線図であり、図10中”TD31”に示すように上流側と下流側との温度差は、ピークを有する特性となり、測定可能な流量範囲が極めて狭くなってしまうといった問題点があった。
【0023】
例えば、図8及び図9に示す従来例においてシリコン基板7及び9をガラス基板に置換することにより、耐腐食性が向上するものの、図10中”AR31”に示すような流量が小さく、伝熱手段8直下の温度が十分に温まっている状況下でのみしか流量の測定ができなくなってしまうといった問題点があった。
【0024】
このような問題点を解決するために本願出願人の出願に係る”特許文献5”が考案された。図11は”特許文献5”に記載された熱式流量計の他の一例を示す構成ブロック図、図12は熱式流量計の他の一例のセンサ部分の具体例を示す平面図及び断面図である。
【0025】
図11及び図12において、11及び12はガラス基板、13はヒータ等の伝熱手段、14及び15はサーミスタや白金測温抵抗体等の温度検出手段、16は被測定液体が流れる流路、17は上流側及び下流側の流体の温度差に基づき流量を求めるCPU等の演算制御手段である。
【0026】
図11中”FL41”に示すように被測定液体が流れる流路16の中央部分には伝熱手段13が設けられ、この流路16上であって伝熱手段13から等間隔の位置には温度検出手段14及び15が設けられる。
【0027】
また、図11中”TU41”及び”TD41”に示すように温度検出手段14及び15の出力はそれぞれ演算制御手段17に接続され、図11中”CT41”に示すように演算制御手段17からの温度制御のための制御信号は伝熱手段13に接続される。
【0028】
さらに、図12を用いて熱式流量計の他の一例のセンサ部分の具体例をより詳細に説明する。
【0029】
超音波加工、レーザ加工、サンドブラスト加工、ウエットエッチング等によってガラス基板12の短手方向の中央部分であってガラス基板12の長手方向に沿うように長方形の溝が形成される。また、当該長方形の溝が形成された側のガラス基板12にはガラス基板11が接着や熱圧着等により貼り合わされ、接液部分が全てガラスで構成された流路16が形成される。
【0030】
また、流路16に接しない側のガラス基板11上であって流路16の中央部分上に位置する部分にはヒータ等の伝熱手段13が蒸着やスパッタリング等によって形成され、流路16の上に位置し流路16に接しない側のガラス基板11上であって伝熱手段13から等間隔の位置には温度検出手段14及び15が蒸着やスパッタリング等によって形成される。
【0031】
すなわち、伝熱手段13、温度検出手段14及び15は流路16に接しない側のガラス基板11に形成されるので非接液の状態にある。
【0032】
ここで、図11及び図12に示す熱式流量計の他の一例の動作を図13を用いて説明する。図13は流量に対する上流側と下流側との温度差、温度和及び温度差を温度和で除算した値の関係をそれぞれ示す特性曲線図である。但し、図6に示す従来例と同様の動作に関しては説明を適宜省略する。
【0033】
演算制御手段17は予め測定された被測定液体の温度に対して、被測定液体が数度程度高い一定温度になるように伝熱手段13を制御する。
【0034】
このような状態で、上流側の温度検出手段14及び下流側の温度検出手段15で検出される温度の温度差は被測定液体の流量に依存した信号となるので、このような温度差に基づき演算制御手段17で流路16を流れる被測定液体の流量を求めることができる。
【0035】
但し、前述の従来例の説明のように、流路の接液部分が全てガラスとした場合には、ガラスの小さな熱伝導率のために、例えば、温度差は図13中”TD51”に示すようにピークを有する特性となり、測定可能な流量範囲が極めて狭くなってしまうといった問題点があった。
【0036】
このため、演算制御手段17は上流側の温度検出手段14及び下流側の温度検出手段15で検出される温度の温度差を求めると共に上流側の温度検出手段14及び下流側の温度検出手段15で検出される温度の温度和を求めて温度差を温度和で除算することにより、温度差を規格化する。
【0037】
例えば、上流側の温度検出手段14及び下流側の温度検出手段15で検出される温度の温度和は、図13中”TA51”に示すような特性曲線となり、このような特性曲線の温度和で図13中”TD51”に示す温度差を除算することにより、図13中”NT51”に示すような規格化された温度差の特性曲線が得られる。
【0038】
図13中”NT51”に示すような規格化された温度差は、広い流量範囲において単調増加を示しているので、広い流量範囲を測定することが可能であることがわかる。
【0039】
この結果、接液部分が全てガラスで構成された流路16を流れる被測定液体の温度を伝熱手段13で制御し2つの温度検出手段14及び15によって伝熱手段13の上流側及び下流側の流体の温度を測定し、演算制御手段17で当該温度の温度差を温度和で除算した規格化された温度差を求め、当該規格化された温度差に基づき流量を求めることにより、耐腐食性が高く被測定液体の広い流量範囲を測定することが可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
しかし、図11及び図12に示す熱式流量計の他の一例では、流路(細管)を流れる被測定流体の流量が大きくなるにつれて、流量変化に対する温度分布変化量が小さくなり、温度差(流量信号)が飽和してしまう。このため、規格化された温度差に基づき流量を求める場合であっても、測定レンジが狭くなってしまうと言った問題点があった。
従って本発明が解決しようとする課題は、より広い測定レンジで流量の測定が可能な熱式流量計を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0041】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
流路を流れる液体の温度を制御し温度制御部分の上流側及び下流側の流体の温度差に基づき流量を測定する熱式流量計において、
接液部分が全てガラスで構成された第1の流路と、接液部分が全てガラスで構成され一端が前記第1の流路の一端に接続され前記第1の流路より断面積の大きい第2の流路と、これらの第1及び第2の流路にそれぞれ設けられた第1及び第2のセンサ手段と、これら第1及び第2のセンサ手段を制御して前記第1及び第2の流路を流れる液体の温度をそれぞれ制御すると共に測定する流量に応じて一方のセンサ手段を選択して選択されたセンサ手段で検出された上流側及び下流側の温度の温度差に基づき流量を求める演算制御手段とを備えたことにより、より広い測定レンジでの流量の測定を可能にする。
【0042】
請求項2記載の発明は、
請求項1記載の発明である熱式流量計において、
前記第1のセンサ手段が
前記第1の流路に設けられた伝熱手段と、前記第1の流路上であって前記伝熱手段から等間隔の位置に設けられた上流側及び下流側の温度検出手段とから構成されたことにより、より広い測定レンジでの流量の測定を可能にする。
【0043】
請求項3記載の発明は、
請求項1記載の発明である熱式流量計において、
前記第2のセンサ手段が
前記第2の流路に設けられた伝熱手段と、前記第2の流路上であって前記伝熱手段から等間隔の位置に設けられた上流側及び下流側の温度検出手段とから構成されたことにより、より広い測定レンジでの流量の測定を可能にする。
【0044】
請求項4記載の発明は、
請求項1記載の発明である熱式流量計において、
前記演算制御手段が、
測定する流量が低流量領域であると判断した場合に、前記第1の流路に設けられた前記第1のセンサ手段で検出された上流側の温度と下流側の温度の温度差に基づいて流量を求め、測定する流量が高流量領域であると判断した場合に、前記第2の流路に設けられた前記第2のセンサ手段で検出された上流側の温度と下流側の温度の温度差に基づいて流量を求めることにより、より広い測定レンジでの流量の測定を可能にする。
【0045】
請求項5記載の発明は、
請求項1記載の発明である熱式流量計において、
前記第1及び第2のセンサ手段の測定可能な流量範囲が互いに重複していることにより、より広い測定レンジでの流量の測定を可能にする。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば次のような効果がある。
請求項1,2,3,4及び請求項5の発明によれば、相互に接続され互いに断面積の異なる複数の流路にそれぞれセンサ手段を設けると共に、測定する流量に応じて、センサ手段(感度の良い流路断面積に設けられたセンサ手段)を適宜選択して流量を求めることにより、より広い測定レンジでの流量の測定を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る熱式流量計の一実施例を示す構成ブロック図、図2は本発明に係る熱式流量計の一実施例のセンサ部分の具体例を示す平面図及び断面図である。
【0048】
図1において、18はガラス基板、19及び20は中央部分で一端が相互に接続され断面積が互いに異なるガラス基板18に形成された流路、21は流路19を流れる液体の温度を制御し上流側及び下流側の流体の温度を検出するセンサ手段、22は流路20を流れる液体の温度を制御し上流側及び下流側の流体の温度を検出するセンサ手段、23は2つセンサ手段の一方を適宜選択し選択したセンサ手段における上流側及び下流側の流体の温度差に基づき流量を求めるCPU等の演算制御手段である。
【0049】
また、18,19,20,21及び22は流量計チップ50を構成している。さらに、流路19の断面積のほうが流路20の断面積よりも大きいものとする(以下、適宜、断面積の大きい流路19、或いは、断面積の小さい流路20と呼ぶものとする。)。
【0050】
図1中”IN61”に示す流入孔から被測定流体が注入され、図1中”OT61”に示す流出孔から被測定流体が放出される。このため、断面積の大きい流路19及び断面積の小さい流路20では図1中”FL61”に示す方向に被測定流体が流れることになる。
【0051】
図1中”FL61”に示すように被測定液体が流れる断面積の大きい流路19の中央部分にはセンサ手段21が設けられ、被測定液体が流れる断面積の小さい流路20の中央部分にはセンサ手段22が設けられる。また、センサ手段21及び22の入出力はそれぞれ演算制御手段23に接続される。
【0052】
さらに、図2を用いて本発明に係る熱式流量計の一実施例の流量計チップ50の具体例をより詳細に説明する。図2において,24はガラス基板であり、18,19,20,21及び22は図1と同一符号を付してある。
【0053】
超音波加工、レーザ加工、サンドブラスト加工、ウエットエッチング等によってガラス基板18の短手方向の中央部分であってガラス基板18の長手方向に沿うように互いに断面積が異なり一端で相互に接続された2種類の長方形の溝が形成される。
【0054】
また、当該2種類の長方形の溝が形成された側のガラス基板18にはガラス基板24が接着や熱圧着等により貼り合わされ、接液部分が全てガラスで構成された断面積の大きい流路19及び断面積の小さい流路20が形成される。
【0055】
また、断面積の大きい流路19に接しない側のガラス基板24上であって流路19の中央部分上に位置する部分にはセンサ手段21が蒸着やスパッタリング等によって形成され、断面積の小さい流路20に接しない側のガラス基板24上であって流路20の中央部分上に位置する部分にはセンサ手段22が蒸着やスパッタリング等によって形成される。
【0056】
すなわち、センサ手段21及び22は断面積の大きい流路19及び断面積の小さい流路20に接しない側のガラス基板24に形成されるので非接液の状態にある。
【0057】
また、図3はセンサ手段21及び22の具体例を示す説明図であり、図3において、25はガラス基板、26はガラス基板25に形成された流路、27はヒータ等の伝熱手段、28及び29はサーミスタや白金測温抵抗体等の温度検出手段である。また、27,28及び29はセンサ手段51を構成する。
【0058】
被測定液体が流れる流路26の任意の部分には伝熱手段27が設けられ、この流路26上であって伝熱手段27から等間隔の位置には温度検出手段28及び29が設けられる。このような、センサ手段21及び22が、断面積の大きい流路19及び断面積の小さい流路20の中央部分にそれぞれ設けられる。
【0059】
ちなみに、センサ手段51単体の基本的な動作に関しては、従来例の動作と同様であるのでその説明は省略する。
【0060】
ここで、図1に示す実施例の動作を図4及び図5を用いて説明する。図4は演算制御手段23の動作を説明するフロー図、図5はセンサ手段21及び22の上流側と下流側との温度差と、流量との関係を示す特性曲線図である。
【0061】
流路を流れる液体の温度を制御し温度制御部分の上流側及び下流側の流体の温度差に基づき流量を測定する測定方法では、流量の測定の可能な範囲は流路の断面積によって決まる。
【0062】
定性的には、流路の断面積が大きいほど、より大きな流量まで温度差(流量信号)が飽和しないものの、低流量領域では感度が足りなくなる。
【0063】
一方、流路の断面積が小さい場合、低流量領域で感度を有するものの、流量が大きくなると温度差(流量信号)が飽和してしまう。
【0064】
このため、互いに断面積の異なる複数の流路にそれぞれセンサ手段を設け、演算制御手段23が測定する流量に応じて、センサ手段(感度の良い流路断面積に設けられたセンサ手段)を適宜選択して流量を求めることにより、より広い測定レンジでの流量の測定を可能にする。
【0065】
すなわち、先ず第1に、演算制御手段23は、予め測定された被測定液体の温度に対して、被測定液体が数度程度高い一定温度になるようにセンサ手段21及び22を構成する伝熱手段をそれぞれ制御する。
【0066】
このような状態で、図4中”S001”において演算制御手段23は、測定する流量が、低流量領域であるか否かを判断する。
【0067】
もし、図4中”S001”において低流量領域であると判断した場合には、図4中”S002”において演算制御手段23は、断面積の小さい(細い)流路20に設けられたセンサ手段22における上流側の温度と下流側の温度の温度差に基づいて流路を流れる被測定液体の流量を求める。
【0068】
例えば、断面積の小さい流路20に設けられたセンサ手段22の温度差と流量との関係は図5中”CH71”に示すような特性になり、図5中”RG71”に示す範囲の流量を測定することが可能になる。
【0069】
もし、図4中”S001”において低流量領域ではないと判断した場合には、図4中”S003”において演算制御手段23は、断面積の大きい(太い)流路19に設けられたセンサ手段21における上流側の温度と下流側の温度の温度差に基づいて流路を流れる被測定液体の流量を求める。
【0070】
例えば、断面積の大きい流路19に設けられたセンサ手段21の温度差と流量との関係は図5中”CH72”に示すような特性になり、図5中”RG72”に示す範囲の流量を測定することが可能になる。
【0071】
このため、図5中”PT71”に示す流量より低流量領域、或いは、高流量領域かにより、センサ手段22、或いは、センサ手段21を選択して選択したセンサ手段の温度差に基づき流量を求めることにより、図5中”RG71”及び”RG72”に示す範囲を包括した広い領域にわたって流量を測定することが可能になる。
【0072】
この結果、相互に接続され互いに断面積の異なる複数の流路にそれぞれセンサ手段を設けると共に、測定する流量に応じて、センサ手段(感度の良い流路断面積に設けられたセンサ手段)を適宜選択して流量を求めることにより、より広い測定レンジでの流量の測定を可能にする。
【0073】
なお、図1に示す実施例では説明の簡単のために、互いに断面積の異なる2つの流路に2つのセンサ手段をそれぞれ設けているが、互いに断面積の異なる3以上の流路に3以上のセンサ手段をそれぞれ設けても、勿論、構わない。
【0074】
また、図1に示す実施例では説明の簡単のために、被測定液体が流れる方向に沿って、断面積の大きな流路から断面積の小さな流路を順次配置しているが、これに限定されるものではなく、被測定液体が流れる方向に沿って、断面積の小さな流路から断面積の大きな流路を順次配置しても、流路の断面積の大きさに関わりなくランダムに配置しても勿論構わない。
【0075】
また、図1に示す実施例では、互いに断面積の異なる2つの流路の接続部分は、図面上の表現では、段差をなくすためテーパー状になっているが、勿論、段差を有する形状であっても構わない。
【0076】
また、一つの熱式流量計で広い測定範囲を網羅できるので、流量変化の大きなアプリケーションにおいて、複数の熱式流量計を用意する必要性はなく、コストや設置スペースの削減が可能になる。
【0077】
また、メーカ側にとっても、複数の測定範囲に対応した熱式流量計をラインアップする必要性がなく、1種類の熱式流量計を製造して、演算制御手段のプログラムを書き換えることにより複数の測定範囲に対応することができるので、製造コストの削減が可能になる。
【0078】
また、複数のセンサ手段の測定可能な流量範囲を互いにオーバーラップ(重複)させることにより、広い領域にわたって流量を連続的に測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る熱式流量計の一実施例を示す構成ブロック図である。
【図2】本発明に係る熱式流量計の一実施例のセンサ部分の具体例を示す平面図及び断面図である。
【図3】センサ手段の具体例を示す説明図である。
【図4】演算制御手段の動作を説明するフロー図である。
【図5】センサ手段の上流側と下流側との温度差と、流量との関係を示す特性曲線図である。
【図6】従来の熱式流量計の一例を示す構成ブロック図である。
【図7】流路の位置に対する流路内の被測定液体の温度分布の一例を示す特性曲線図である。
【図8】従来の熱式流量計の他の一例を示す斜視図である。
【図9】従来の熱式流量計の他の一例を示す断面図である。
【図10】上流側と下流側との温度差と、流量との関係を示す特性曲線図である。
【図11】熱式流量計の他の一例を示す構成ブロック図である。
【図12】熱式流量計の他の一例のセンサ部分の具体例を示す平面図及び断面図である。
【図13】流量に対する上流側と下流側との温度差、温度和及び温度差を温度和で除算した値の関係をそれぞれ示す特性曲線図である。
【符号の説明】
【0080】
1,10,16,19,20,26 流路
2,8,13,27 伝熱手段、
3,4,14,15,28,29 温度検出手段
5,17,23 演算制御手段
6,11,12,18,24,25 ガラス基板
7,9 シリコン基板
21,22,51 センサ手段
50 流量計チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を流れる液体の温度を制御し温度制御部分の上流側及び下流側の流体の温度差に基づき流量を測定する熱式流量計において、
接液部分が全てガラスで構成された第1の流路と、
接液部分が全てガラスで構成され一端が前記第1の流路の一端に接続され前記第1の流路より断面積の大きい第2の流路と、
これらの第1及び第2の流路にそれぞれ設けられた第1及び第2のセンサ手段と、
これら第1及び第2のセンサ手段を制御して前記第1及び第2の流路を流れる液体の温度をそれぞれ制御すると共に測定する流量に応じて一方のセンサ手段を選択して選択されたセンサ手段で検出された上流側及び下流側の温度の温度差に基づき流量を求める演算制御手段と
を備えたことを特徴とする熱式流量計。
【請求項2】
前記第1のセンサ手段が
前記第1の流路に設けられた伝熱手段と、
前記第1の流路上であって前記伝熱手段から等間隔の位置に設けられた上流側及び下流側の温度検出手段とから構成されたことを特徴とする
請求項1記載の熱式流量計。
【請求項3】
前記第2のセンサ手段が
前記第2の流路に設けられた伝熱手段と、
前記第2の流路上であって前記伝熱手段から等間隔の位置に設けられた上流側及び下流側の温度検出手段とから構成されたことを特徴とする
請求項1記載の熱式流量計。
【請求項4】
前記演算制御手段が、
測定する流量が低流量領域であると判断した場合に、前記第1の流路に設けられた前記第1のセンサ手段で検出された上流側の温度と下流側の温度の温度差に基づいて流量を求め、
測定する流量が高流量領域であると判断した場合に、前記第2の流路に設けられた前記第2のセンサ手段で検出された上流側の温度と下流側の温度の温度差に基づいて流量を求めることを特徴とする
請求項1記載の熱式流量計。
【請求項5】
前記第1及び第2のセンサ手段の測定可能な流量範囲が互いに重複していることを特徴とする
請求項1記載の熱式流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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