説明

熱感応性ゲル化剤

【課題】
化粧品、トイレタリー、医薬品、食品、農薬などの分野で使用されているゲル化剤において、ゲル化温度(ゲル融点)やゾル/ゲル状態の可逆的な制御が可能なゲル化剤を提供すること並びに使用感の良好な該物質を含む組成物を提供すること。
【解決手段】
D−ガラクトースに3,6−アンヒドロ−L−ガラクトースがβ−1,4−ガラクトシド結合をした寒天に特定量の第4級窒素含有基などの変性基を導入し、かつ変性度を0.05〜0.5に調節し、0.1〜5w/w%濃度の水溶液が10〜55℃の温度範囲でゲル融点を有しかつ、熱可逆性である熱感応性ゲル化剤と、該物質を0.01〜10%含有することを特徴とする水溶性組成物。さらに水と、界面活性剤、水溶性アルコール、多価アルコール、水溶性高分子などの水溶性有機化合物を含む化粧料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、0.1〜5w/w%濃度の水溶液が10〜55℃の温度範囲でゲル融点を有しかつ、熱可逆性である、変性度が0.05〜0.5の寒天変性物からなる熱感応性ゲル化剤と、該ゲル化剤を含む水溶性組成物、特に化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品、トイレタリー、医薬品、食品、農薬などの分野では種々のゲル化剤が使用されており、その特性を利用し感触面、機能面、使用性などに優れたゲル状およびゾル状の製品が数多く上市されている。その中で寒天は、ゲル化能、みずみずしくべとつかない感触、保水性などに優れ、用いられてきている。
【0003】
特許文献1には、使用感・外観に優れたシート状化粧料などして有用な、外用ゲル組成物として、融点が80℃以上のゲルを形成する増粘多糖類として寒天などが用いられ、特許文献2には、寒天、ゼラチンなどの水溶性固形剤、デンプン、油剤、水からなる水中油型固形化粧料が、携帯性に優れ、清涼感など使用感の良い化粧料組成物として用いられている。また、特許文献3には、水中油型化粧料の処方安定性向上剤として未変性の寒天が用いられている。更に特許文献4には、寒天を60℃以上の精製水に溶解したものと、顔料を混合し、ここに低級アルコールを加えることで寒天を顔料表面に析出させることができる寒天被覆処理顔料が化粧品に用いられている。
【0004】
一方、ゲル化温度やゾル/ゲル状態の可逆的な制御が可能な製品が市場及び生産現場では求められ、未変性の寒天をそのまま使用するには問題があった。そこで様々な改良がなされ、特許文献5には、ゲル化温度以上の温度で加熱溶解後、冷却しながら高速攪拌による外力を加えることで低粘性を維持する寒天含有組成物が食品、化粧品用途に用いられることが示され、特許文献6には、化粧料組成物の使用性を改善する目的から、未変性寒天を加温溶解した後、冷却しながらせん断力を加えて冷却し、ゲル形成を崩壊しながら製造したフルイドゲル(流動性ゲル)が用いられている。また、非特許文献1には、食品の殺菌、加工技術への利用目的でガンマ線の照射を行った結果、寒天及びカラギーナンなどではゲル融点が低下することが述べられている。
【0005】
しかし、これらの方法でゲル融点を下げ、常温付近での流動性を確保しても、一度温度をゲル融点以上にあげた後に再度温度を下げた場合、常温付近ではゲル化を生じるため本質的な改善にはならない。また、冷却時の高速攪拌よるせん断力により寒天分子の主鎖が切断されることにより、寒天本来の保水力、みずみずしさが低下する。また、ガンマ線照射によるゲル融点の低下は僅かであり常温付近でのゲル化制御には適さない。
【0006】
特許文献7には、寒天などの常温で凝固する水溶性ゲル化素材をグリセリンなどの非水系溶媒に溶解させゾル状を保つことが示されているが、水を加えると常温ではゲル化しするため水を多く含む製品には適さない。
【0007】
特許文献8には、熱感応性多糖類を利用したヘアスタイリング剤が示されているが、ドライヤーの熱でゲル化する特性利用した熱ゲル化性高分子物質であり、本発明の目的は常温付近でゲル融点を制御することを目的としており、本発明の熱感応性寒天変性物とは構造も目的も異なるものである。
【0008】
特許文献9には、コンディショニング剤として優れた特性をもち、乾燥後に潤いの有るしっとりしたあるいはさっぱりとした使用感を提供出来る化粧料組成物、特に毛髪処理用組成物にカチオン変性寒天が用いられているが、ゲル融点の熱可逆的制御についての記述は無い。
【0009】
特許文献10には、多糖類をポリオキシアルキレン化/スルフォン化/カルボキシ化/カチオン化した多糖誘導体が低温時における取り扱い性に優れ、高温時には十分な増粘性を示す増粘剤として、また、優れた乳化作用を持つ乳化剤として種々のトイレタリー製品に有用であり、使用される多糖類中に寒天が例示されているが、本発明の熱感応性寒天変性物とは構造及び機能が異なる。
【特許文献1】特開2002−87993号公報
【特許文献2】特開平11−92333号公報
【特許文献3】特開2001−189641号公報
【特許文献4】特開2001-233732号公報
【特許文献5】特開2005−162955号公報
【特許文献6】特開2000−119166号公報
【特許文献7】特開2004−59881号公報
【特許文献8】特開2001−342117号公報
【特許文献9】特開2006−335871号公報
【特許文献10】再公表特許WO 00/73351号公報(第1〜10頁)
【非特許文献1】食品照射、Vol.21(1,2)、29−42 ガンマ線照射した寒天及びカラギーナンのゲル融点
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、化粧品、トイレタリー、医薬品、食品、農薬などの分野で使用されているゲル化剤のゲル化温度(ゲル融点)やゾル/ゲル状態の可逆的な制御が可能なゲル化剤及び該物質を含む水溶性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、D−ガラクトースに3,6−アンヒドロ−L−ガラクトースがβ−1,4−ガラクトシド結合をしたアガロースと、アガロースと同じ結合様式をしており部分的に硫酸エステル、メトキシル基、ピルビン酸基、カルボキシル基を含むアガロペクチンの混合物を主成分とする寒天に特定量の第4級窒素含有基などの変性基を導入することで、ゲル融点やゾル/ゲル状態の可逆的な制御が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、変性度が0.05〜0.5の寒天変性物からなる熱感応性ゲル化剤に関する。本発明はまた、前記熱感応性ゲル化剤を0.01〜10質量%含有することを特徴とする水溶性組成物にも関する。本発明はさらに(A)前記熱感応性ゲル化剤、(B)水及び(C)水溶性有機化合物を含有する化粧料組成物にも冠する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱感応性ゲル化剤の水溶液は、特定範囲のゲル融点とゾル−ゲル状態の熱可逆性を有することから、化粧料組成物に配合した場合、塗布時に体温でゲルがゾルに変化することで塗布性に優れ、使用後はゲル形成能を有することからみずみずしくべとつかない感触と保湿効果が得られ、良好な使用感が得られ、従来品よりもより使い心地の優れた化粧料組成物を提供することができる。また、前記性質を応用し、トイレタリー、医薬医療品、食品、農薬等の分野にも利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明で用いられる寒天は、D−ガラクトースに3,6−アンヒドロ−L−ガラクトースがβ−1,4−ガラクトシド結合をしたアガロースと、アガロースと同じ結合様式をしており部分的に硫酸エステル、メトキシル基、ピルビン酸基、カルボキシル基を含むアガロペクチンの混合物を主成分とする多糖類で、天草、オゴノリ、オバクサ、イタニグサ、オオオゴノリより水洗・抽出・精密濾過・凝固・圧力脱水・乾燥粉砕工程を経て得られる天然水溶性多糖類である。この寒天は、一般的には、粉末寒天、糸寒天、角寒天、ウルトラ寒天、即溶性寒天、崩壊用精製寒天等があり、商品名「伊那寒天S−6/S−7/UP−6/UP−37/」、「ウルトラ寒天AX−30」、「ウルトラ即溶性寒天UX−30/UX−200」(伊那食品工業株式会社製)として容易に入手可能である。
【0015】
上記の、D−ガラクトースに3,6−アンヒドロ−L−ガラクトースがβ−1,4−ガラクトシド結合をしたアガロースと、アガロースと同じ結合様式をしており部分的に硫酸エステル、メトキシル基、ピルビン酸基、カルボキシル基を含むアガロペクチンの混合物を主成分とする天然多糖類は水に溶解した時、溶液状態ではランダムコイルの分子として存在しているが、冷却によりダブルヘリクッス構造の三次元ネットワークを形成しゾルからゲルへ転移する。
【0016】
本発明では、ゲル化する時の温度をゲル凝固点といい、凝固したゲルが加熱によって再溶解する時の温度をゲル融点という。寒天の一般的なゲル凝固点は33〜45℃、ゲル融点は85〜93℃である。
【0017】
本発明による寒天類の変性は、寒天に含まれるD−ガラクトースに3,6−アンヒドロ−L−ガラクトースがβ−1,4−ガラクトシド結合をしたアガロースと、アガロースと同じ結合様式をしており部分的に硫酸エステル、メトキシル基、ピルビン酸基、カルボキシル基を含むアガロペクチンの混合物中の水酸基の一部を変性剤と反応させることにより行われる。
【0018】
変性剤としては、第4級窒素含有基を有するグリシジルトリアルキルアンモニウム塩や3−ハロゲノ−2−ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩が挙げられ、下記化学式(1)で表される第4級窒素含有基で置換された寒天変性物を得ることができる。
【化1】

(式中R、R、Rは、各々炭素数1〜24のアルキル基、を示し、Xは無機酸または有機酸の陰イオンを示す。nは、n=0又はn=1〜5を示し、n=1〜5の時、(RO)は炭素数2〜4のアルキレンオキサイドの重合体残基であって、単一のアルキレンオキサイドからなるポリアルキレングリコール鎖及び/又は2種類以上のブロック状又はランダム状のアルキレンオキサイドからなるポリアルキレングリコール鎖を示す。)
【0019】
前記化学式(1)において、R、R及びRの具体例としては、メチル基、エチル基及びプロピル基が挙げられる。ROの具体例としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。また、陰イオンXの具体例としては、塩素イオン、臭素イオン及びヨウ素イオンなどのハロゲンイオンの他、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、酢酸イオン等を挙げることができる。
【0020】
変性剤としてはまた、アルキルグリシジルエーテル、グリシジルスルホン酸塩等が挙げられる。
【0021】
変性剤との反応は通常適当な溶媒、好適には含水アルコール中において、アルカリの存在下で実施される。このような変性剤の導入は、従来公知の方法によって行うことができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。例えば寒天に含まれる水酸基の一部に、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した後、変性剤と反応させることによって本発明の熱感応性ゲル化剤を製造することもできる。また、反応時に溶媒中での寒天の凝集を防ぐため、無機塩、好適には塩化ナトリウムを添加することもできる。更に、寒天の凝集を防ぎ、分散性を良くし反応率を上げるため、反応溶媒中にアルカリ及び無機塩を添加後溶解又は分散させ、その後該寒天を添加し、溶解又は分散させた後、上記の変性剤を導入することでも製造することができる。
【0022】
本発明の寒天変性物の変性度は、0.05〜0.5であるが、より好ましくは0.1〜0.4である。変性度が0.05未満ではゲル融点の低下が僅かとなり、また0.5を超えるとゲル化能が失われる。本発明では、0.1〜5w/w%濃度の水溶液が10〜55℃の温度範囲でゲル融点を有するよう、濃度毎に変性度を調節し、目的の熱感応性ゲル化剤を得る。
【0023】
本発明の熱感応性ゲル化剤のゲル融点は、0.1〜5w/w%濃度の水溶液が10〜55℃であるが、好ましくは25〜45℃である。ゲル融点が10℃未満では使用時に十分なゲル化能が得られず、また保湿性などの機能も損なわれる。ゲル融点が55℃を超えると使用時のゲル強度が強すぎるため、塗布時の広がりなど使用性に問題が生じるなど好ましくない。
【0024】
なお、本発明における寒天変性物の変性度とは、寒天を構成する糖骨格、D−ガラクトース及び3,6−アンヒドロ−L−ガラクトース中の水酸基に結合した変性基の数を、糖骨格1個に対して結合した変性基の数として表したものである。
【0025】
本発明の熱感応性ゲル化剤の配合量は、所望のゲル化機能及び保湿性などを得る点で、熱感応性ゲル化剤に対して水が6〜2,000倍となるように配合することが好ましい。例えば化粧料組成物として用いる場合、水溶性組成物全体を100質量%として、通常0.01〜10質量%であり、好ましくは0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜2質量%である。0.01質量%未満ではゲル化機能及び保湿性などの感触が十分に発揮されない傾向にあり、10質量%を越えるゲルが硬くなりすぎるため使用性が悪くなる傾向がある。
【0026】
本発明の熱感応性ゲル化剤を含む化粧料組成物では、さらに30%を超えない量の界面活性剤、水溶性アルコール、多価アルコール、水溶性高分子などの水溶性有機化合物をその機能を向上するために配合することができる。具体的には、界面活性剤としては、アルキル(炭素数8〜24)硫酸塩、アルキル(炭素数8〜24)エーテル硫酸塩、アルキル(炭素数8〜24)ベンゼンスルホン酸塩、アルキル(炭素数8〜24)リン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数8〜24)エーテルリン酸塩、アルキル(炭素数8〜24)スルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数8〜24)エーテルスルホコハク酸塩、アシル(炭素数8〜24)化アラニン塩、アシル(炭素数8〜24)化N−メチル−β−アラニン塩、アシル(炭素数8〜24)化グルタミン酸塩、アシル(炭素数8〜24)化イセチオン酸塩、アシル(炭素数8〜24)化サルコシン酸塩、アシル(炭素数8〜24)化タウリン塩、アシル(炭素数8〜24)化メチルタウリン塩、α―スルホ脂肪酸エステル塩、エーテルカルボン酸塩、ポリオキシアルキレン脂肪酸モノエタノールアミド硫酸塩、長鎖(炭素数8〜24)カルボン酸塩等のアニオン界面活性剤、アルキル(炭素数8〜24)アミドプロピルベタイン、アルキル(炭素数8〜24)カルボキシベタイン、アルキル(炭素数8〜24)スルホベタイン、アルキル(炭素数8〜24)ヒドロキシスルホベタイン、アルキル(炭素数8〜24)アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン、アルキル(炭素数8〜24)ヒドロキシホスホベタイン、アルキル(炭素数8〜24)アミノカルボン酸塩、アルキル(炭素数8〜24)アンホNa、アルキル(炭素数8〜24)アミンオキシド、3級窒素及び4級窒素を含むアルキル(炭素数8〜24)リン酸エステル等の両性界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム等などのカチオン界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0027】
水溶性アルコールとしては、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。
【0028】
多価アルコールとしては、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ジプロピレングリコールなどが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0029】
水溶性高分子としては、カチオン変性ヒドロキシエチルセルロース、カチオン変性グアーガム、カチオン変性ローカストビーンガム、カチオン変性デンプン、カチオン変性タラガム、カチオン変性タマリンドガム、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム、ビニルピロリドン・ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体塩、ビニルピロリドン・メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド共重合体、ビニルピロリドン・塩化メチルビニルイミダゾリウム共重合体、メタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール共重合体等のカチオン性水溶性高分子、両性化デンプン、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体、アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体、ポリメタクリロイルエチルジメチルベタイン、N-メタクリロイルオキシエチルN,N-ジメチルアンモニウム-α-メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキル共重合体等の両性水溶性高分子、ポリアクリル酸及びその塩、アクリル酸・アクリルアミド・アクリル酸エチル共重合体及びその塩、ポリメタクリル酸及びその塩、メタクリル酸・アクリルアミド・ジアセトンアクリルアミド・アクリル酸アルキルエステル・メタクリル酸アルキルエステル共重合体及びその塩、ポリグルタミン酸及びその塩、ヒアルロン酸及びその塩、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー等のアニオン性水溶性高分子、ポリアクリル酸アミド、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドガム等のノニオン性水溶性高分子が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0030】
本発明の熱感応性ゲル化剤を含む化粧料組成物では、その効果を損なわない範囲で化粧料に一般に用いられる成分を任意成分として配合することが可能である。配合可能な他の成分としては、オリーブ油、ホホバ油、流動パラフィン、スクワラン等の油分、脂肪酸エチレングリコール等のパール化剤、ポリスチレン乳化物等の懸濁剤、カルナバロウ、キャンデリラロウ等のワックス類、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸‐2‐ヘキシルデシル、トリミリスチン酸グリセリン、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸‐2‐ヘプチルウンデシル、パルミチン酸‐2‐ヘキシルデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、12‐ヒドロキシステアリン酸コレステリル、セトステアリルアルコール、オクタン酸セチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸エチル、酢酸ブチル酢酸アミル、酢酸ラノリン、2‐エチルヘキサン酸セチル、2‐エチルヘキシルパルミテート、ジ‐2‐エチルヘキシル酸エチレングリコール、トリ‐2‐エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリ‐2‐エチルヘキシル酸グリセリン、テトラ‐2‐エチルヘキシル酸ペンタエリスリトール、セチル‐2‐エチルヘキサノエート、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸‐2‐ヘプチルウンデシル、アジピン酸‐2‐ヘキシルデシル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ‐2‐ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ‐2‐ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、アセトグリセライド、N‐ラウロイル‐L‐グルタミン酸‐2‐オクチルドデシルエステル、セバシン酸ジ‐2‐エチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸‐2‐エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、エチルラウレート、ミンク油脂肪酸エチル等のエステル類、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム脂肪酸、パーム核脂肪酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の高級脂肪酸、アルギニン、グルタミン酸、アラニン等のアミノ酸類、アルカノールアミド、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、酸化防止剤、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、高重合度メチルポリシロキサン、環状ポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、高級アルコール、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤(酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機化合物)、金属封鎖剤(エデト酸塩等)、pH調整剤、殺菌剤、防腐剤、育毛剤、ビタミン類、抗炎症剤、色素、顔料(二酸化チタン等の無機白色顔料、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等の無機赤色系顔料、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料、酸化鉄処理雲母チタン、カーボンブラック処理雲母チタン等)、香料、起泡増進剤等が挙げられる。
【実施例】
【0031】
以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に指定のない限り、配合量は質量%で示す。
【0032】
[熱感応性ゲル化剤の製造]
実施例1
48質量%の水酸化ナトリウム水溶液9.0g及び塩化ナトリウム2.4gを、80容量%のイソプロパノール水溶液800mlに添加した後、伊那寒天S−6(伊那食品工業株式会社製)150.0gを徐々に添加し分散させた。次に80質量%グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド(以下GTAとも記す)水溶液65.0gを加え、加温し50℃で3時間反応させた。反応終了後35%塩酸12.0gを80容量%のイソプロパノール水溶液700mlで希釈し、中和に使用した。室温で1時間中和後、メタノール1240mlに反応液を注ぎ、反応生成物を沈殿させ、濾別した。得られた沈殿物をメタノール水溶液にて洗浄した後、反応生成物を減圧下で乾燥した。
【0033】
このようにして得られた寒天変性物の変性度をGTA中に含まれる窒素分をケルダール法(外原規)で測定した値を基に算出した結果、0.25であった。また1%水溶液を調整し、5℃以下まで冷却し固化させた後、温度を徐々に上げて行きゲル融点を測定した。その結果、ゲル融点は25℃であった。また85℃まで加温した結果、均一な液状となった。更に5℃まで冷却した結果、ゲルを形成した。この操作を2回繰り返したが同様の現象が見られ、熱可逆性であることを確認した。この結果を表1に示した(表1中、試料番号1)。
【0034】
同様に添加するGTAの量を変えることで変性度の異なる寒天変性物を合成し、同様の評価を行った。この結果を表1中に示した(表1中、試料番号2、3)。
【0035】
実施例2
加圧密閉容器内で伊那寒天UP−37(伊那食品工業株式会社製)160.0gを80容量%のイソプロパノール水溶液730mlに分散させ、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液6.0gを添加した。次にエチレンオキサイド22.1g、プロピレンオキサイド29.0gを加え、加温し70℃で3時間、加圧密閉下で反応させた。反応終了後解圧し、50℃まで冷却する。冷却後、80質量%GTA水溶液51.3gを加え、50℃で3時間反応させる。反応終了後35%塩酸7.5gを80容量%のイソプロパノール水溶液700mlで希釈し、中和に使用した。室温で1時間中和後、メタノール1240mlに反応液を注ぎ、反応生成物を沈殿させ、濾別した。得られた沈殿物をメタノール水溶液にて洗浄した後、反応生成物を減圧下で乾燥した。
【0036】
このようにして得られた寒天変性物を実施例1と同様の評価を行った。この結果を表1中に示した(表1中、試料番号4)。
【0037】
比較例1
実施例1の方法に準じ、添加するGTAの量を変えることで変性度の異なる寒天変性物を合成し、実施例1と同様の評価を行った。この結果を表1中に示した(表1中、試料番号5、6)。
【0038】
【表1】

【0039】
表1の結果から、変性度が0.5を超えるとゲルを形成しなくなることから、みずみずしくべとつかない感触、保水性などの機能が悪化するものと考えられる。また、変性度が0.05未満ではゲル融点が高く、塗布性など使用感の悪化が考えられる。
【0040】
[熱感応性ゲル化剤を配合した水溶性組成物の評価]
表3〜4に記載の配合組成よりなる水溶性組成物の手のひらに塗布した際の使用感(使用時の感触、使用後の感触)について、10名のテスターにより評価を実施し、下記表2に示す方法にて数値化し、それぞれの項目について10名のテスターの評価値を合計した。この評価結果を表3〜4中に示した。更に調整した各々の水溶性組成物を5℃以下まで冷却し固化させた後、温度を徐々に上げて行きゲル融点を測定した。また熱可逆性を確認するため、85℃まで加温し、均一な液状であることを確認した後、5℃まで冷却しゲルを形成の確認を行った。この操作を2回繰り返し同様の現象が見られることを確認し、熱可逆性の判断とした。この結果を表3〜4中に示した。
【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
表3〜4の結果から、本発明の熱感応性ゲル化剤を配合した水溶性組成物は、10〜55℃の間にゲル融点を有しかつ、ゾル−ゲル状態が熱可逆的に変化することから、塗布時に体温でゲルがゾルに変化することで塗布性に優れ、使用後はゲル形成能を有することでみずみずしくべとつかない感触と保湿効果が得られる。よって、ハンドクリーム、リップクリーム、口紅、ローション、クレンジング剤、洗顔料、軟膏などの化粧料組成物や医薬医療品等へ配合することで良好な使用感が得られる。またこれらの機能を有することから、毛髪洗浄剤、毛髪化粧料、ボディ用洗浄剤、洗顔料、皮膚化粧料等の様々な化粧料組成物の感触改善が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性度が0.05〜0.5の寒天変性物からなる熱感応性ゲル化剤。
【請求項2】
前記寒天変性物が、寒天に含まれる水酸基の一部を下記化学式(1)で表される第4級窒素含有基で置換したものである請求項1記載の熱感応性ゲル化剤。
【化1】

(式中R、R、Rは、各々炭素数1〜24のアルキル基、を示し、Xは無機酸または有機酸の陰イオンを示す。nは、n=0又はn=1〜5の整数を示し、n=1〜5の時、(RO)は炭素数2〜4のアルキレンオキサイドの重合体残基であって、単一のアルキレンオキサイドからなるポリアルキレングリコール鎖及び/又は2種類以上のブロック状又はランダム状のアルキレンオキサイドからなるポリアルキレングリコール鎖を示す。)
【請求項3】
前記寒天変性物の0.1〜5w/w%濃度の水溶液が10〜55℃の温度範囲でゲル融点を有しかつ、ゾル−ゲル状態を熱可逆的に変化させることができる、請求項1又は2に記載の熱感応性ゲル化剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱感応性ゲル化剤を0.01〜10質量%含有することを特徴とする水溶性組成物。
【請求項5】
(A)請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱感応性ゲル化剤、(B)水及び(C)水溶性有機化合物を含有する化粧料組成物。

【公開番号】特開2011−153100(P2011−153100A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16013(P2010−16013)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000221797)東邦化学工業株式会社 (188)
【Fターム(参考)】