説明

熱板成形用ポリカーボネート樹脂シートおよびその製造方法

【課題】 熱板成形において印刷された意匠の寸法精度が良く、成形時にしわが発生せず、意匠性の高い立体形状に賦形された成形品作成用の樹脂シートを提供することにある。
【解決手段】 粘度平均分子量が21,500〜25,000であるポリカーボネート樹脂からなり、押出方向および幅方向の180℃で測定した加熱伸縮率が0〜−5%であると共に、押出方向および幅方向に100mm離れた隣り合う加熱伸縮率の差が2%以内であり、板厚が0.20〜0.60mmの熱板成形用ポリカーボネート樹脂シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂シートの片面の被賦型部全体に板状ヒーターを接触させて加熱した後、この板状ヒーターに対峙して配置された型に前記樹脂シートを吸着して、前記樹脂シートを立体形状に賦型する方法において、印刷されたシートの寸法精度が良く、意匠性が高く、立体形状に熱成形するための熱板成形用ポリカーボネート樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
意匠を印刷された樹脂シートを立体形状に成形する方法としては、プレス成形、輻射加熱式真空圧空成形がある。しかし、プレス成形では、冷間で強制的に絞るため、使用環境によってはスプリングバックが起きたり、また、深絞りや曲率のついた複雑な成形ができないという問題がある。また、樹脂シートの予備加熱をヒーターと接触することなく間接的に加熱する輻射加熱式圧空成形では、スプリングバックも発生せず、深絞りも成形可能であるがシートを支持せずに軟化温度まで加熱するために加熱時にシートが伸縮を起こし、意匠にずれを起こすという問題がある。また、50〜300バールという高圧下で成形する事によって、シートを軟化温度以下で成形する方法が提案されている(特許文献1)が、高圧成形のために成形機が非常に高価であるという問題がある。さらに、二次成形時の再加熱によっても熱収縮が少ないシートの製造方法として、複数個の冷却ロールにおいて各ロールの温度制御および該ロール間へ導入する際シートを加熱する方法が提案されている(特許文献2)が、この方法ではロール温度が高く、シートがロールに取られるなどシーティングの制御が容易で無いと共に得られたシートの加熱伸縮率も大きく、熱成形時に意匠ズレが起きるといった問題を抱えている。さらにまた、160℃に加熱したときの加熱伸縮率を特定の範囲に規定したインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムが提案されている(特許文献3)が、板状ヒーターに接触させ、3次元立体成形品を熱成形する場合には180〜190℃で加熱する必要があり、加熱収縮挙動を160℃で規定したフィルムでは成形品に皺が発生したり、意匠ズレが発生するといった問題が解決されていない。
【0003】
【特許文献1】特開平2−263621号公報
【特許文献2】特開平6−344417号公報
【特許文献3】特開2001−139705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来技術における上記の課題を解決し、印刷された意匠の寸法精度が良く、意匠性の高い立体形状に賦形された成形品用の基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、180℃で測定した加熱伸縮率が押出方向および幅方向共に特定の範囲にあり、なおかつ加熱伸縮率と板厚のバラツキを一定範囲内に収めたポリカーボネート樹脂シートが、熱板成形に適することを見出し本発明を完成した。即ち、該樹脂シートの片面の被賦型部全体に板状ヒーターを接触させて加熱した後、この板状ヒーターに対峙して配置された型に該樹脂シートを吸着して、該樹脂シートを立体形状に賦型(以下、熱板成形という。)した場合に、成形品に皺が発生したり、意匠ズレが発生するといった問題が解決されることを見出した。
【0006】
本発明は、粘度平均分子量が21,500〜25,000であるポリカーボネート樹脂からなり、押出方向および幅方向の180℃で測定した加熱伸縮率が0〜−5%であると共に、押出方向および幅方向に100mm離れて隣り合う加熱収縮率の差が2%以内であり、厚みが0.20〜0.60mmの熱板成形用ポリカーボネート樹脂シートである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱板成形用ポリカーボネート樹脂シートは、熱板成形において、意匠ズレや皺の発生の無く、高い歩留まりで成形品を加工できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の熱板成形用ポリカーボネート樹脂シートは、粘度平均分子量が21,500〜25,000であるポリカーボネート樹脂からなり、押出方向および幅方向の180℃で測定した加熱伸縮率が0〜−5%であると共に、押出方向および幅方向に100mm離れて隣り合う加熱伸縮率の差が2%以内であり、厚みは0.20〜0.60mm、好ましくは0.30〜0.50mmである。更に、押出方向および幅方向に50mm離れた隣り合う板厚の差が5%以内である。加熱伸縮率が上記範囲外となると意匠ズレが生じたり、皺が生じたりするので好ましくない。加熱伸縮率および板厚の差が上記範囲外の場合は、伸縮率差により意匠ズレが起きるので好ましくない。
しかしながら、押出方向に対しては生産条件を変えない限り加熱伸縮率や板厚が大きく変動することは稀であり、特段の管理は不要である。
【0009】
上記熱板成形用ポリカーボネート樹脂シートに関わるポリカーボネート樹脂としては、特に制限されず、芳香族ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物とホスゲンとを界面重合法により得られるものであり、例えばビスフェノールAを主原料とする炭酸エステル重合物が使用される。用いるポリカーボネート樹脂の分子量は、通常の押出成形によりシート、ボード、プレートを製造できることが好ましく、粘度平均分子量は21,500〜25,000のものである。該ポリカーボネート樹脂には、一般に用いられる各種の添加剤を添加しても良く、添加剤としては、例えば、酸化防止剤、着色防止剤、難燃剤、離型剤、帯電防止剤、染顔料などが挙げられる。
【0010】
本発明の熱板成形用ポリカーボネート樹脂シートは、片面あるいは両面に意匠を印刷したシートであり、印刷した意匠が鮮明に見えるために透明なものが好ましい。更に、ポリカーボネート樹脂と他の樹脂との共押出成形、もしくはラミネート成形された積層シートである。なかでもポリカーボネート樹脂の片面に10〜50μmの表面高度の高いアクリル系樹脂が積層された積層シートが好ましい。また、樹脂シートの片面にマット加工が施されていてもよい。
【0011】
前記のポリカーボネート樹脂に積層されるアクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルのホモポリマーまたはメタクリル酸メチルを50%以上含むビニル基を有する単量体のコポリマーである。これらのポリマー分子量は特に限定はないが、生産性の点で溶融押出成形が可能な範囲であることが好ましく、重量平均分子量で8〜17万のものが好ましい。かかるアクリル系樹脂は、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等公知の方法で行うことができ、重合に際して分子量調節剤、触媒は必要に応じて適宜使用される。
【0012】
前記ポリカーボネート樹脂および前記アクリル系樹脂に添加される紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸フェニルエステル系、トリアジン系の紫外線吸収剤が挙げられる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチレンブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等を例示することができ、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−クロルベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等を例示することができる。
【0013】
また、サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤としては、p−t−ブチルフェニルサリチル酸エステル等が例示でき、トリアジン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシ)−1,3,5−トリアジンなどを挙げることができるが、これらだけに限定されるものではなく、一般的に入手可能な紫外線吸収剤などが含まれる。
【0014】
本発明のシートへの意匠面の形成は、シルクスクリーン印刷やグラビヤ印刷、ロールコート等公知の方法を用いることができる。また、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等による金属薄膜を使用して絵柄を付与することも可能である。印刷される図柄は、シートの全面もしくは一部だけでもよく、かつ、文字や図案、幾何学模様や木目調など特に制限はない。
【0015】
以下に、熱板成形について説明する。
加飾されたシートは、板状ヒーターの加熱面をこれに接触させて、均一に直接加熱される。加熱条件は、シートの材質、肉厚によって異なり、賦形性と外観の良好な温度と時間が選択される。一般的には、180〜195℃の温度まで加熱される。加熱時には、シートがヒーターの加熱面に均一に接触するように低圧による加圧と板状ヒーターに設けられた空気流出入孔からの減圧によって全面に一様に熱面と接触するようにすることが望ましい。
【0016】
真空圧空成形機の金型は、板状ヒーターの加熱面に対峙して配置され、三次元形状を賦形するためには、凸型か凹型の金型が使用されるが、凸型形状の金型を上部に使用することが望ましい。これによって加熱されたシートの自重変形を抑えると同時に、シートが金型に早く接触して、かつシートの賦形の方向と重力の方向とが逆になることで、局部的なシートの延伸が避けられ、印刷意匠を損なわずに賦形することができる。
【0017】
また、金型には、賦形に必要な大きさの周縁に5mm以上の幅で平面部が設けられ、周縁部でシートを固定することで、望ましからぬ変形を避けることができる。この周縁部にシートの位置決め固定用のスプリングピンを配置し、予めピン孔の空いたシートの孔部をピンに挿入することで、シートの位置決め精度を向上することができる。
【0018】
本発明の熱板成形用ポリカーボネート樹脂シートは、押出機を用いて、溶融樹脂はダイスに導かれ、シート状に成形された後、所定温度に設定された成形ロール(ポリッシングロール)に抱き付かせる様に接触させる。このシート状成形物は、成形ロール通過中に冷却固化が行われ、シートが形成される。その際、最初に接触する第2の成形ロールの温度を制御する事で、第3の成形ロールに円滑に乗り移ることが可能となる。
押出機の温度条件は、通常230〜300℃、好ましくは240〜290℃であり、ダイスから吐出される樹脂温度としては、通常280〜320℃、好ましくは290〜310℃である。吐出樹脂温度が280℃未満では樹脂が最初に抱き付くロールとの粘着性が不充分であり、良好な外観が得られない。320℃を超えると樹脂が最初に抱き付くロールとの粘着性が強くなりすぎ、川下側のロールへの乗り移りが円滑とならず、川下側のロールとの強制的な速度比を付ける必要がある。その結果、加熱伸縮率が大きくなったり、熱板成形時にシートに皺が生じたりする。樹脂が最初に抱き付くロール温度としては、通常125〜135℃である。樹脂が最初に抱き付くロール温度が125℃未満ではロールとの粘着性が不充分であり、良好な外観が伴わないと共に反りが大きくなる。135℃を超えると樹脂が最初に抱き付くロールとの粘着性が強くなりすぎ、川下側のロールへの乗り移りが円滑とならず、川下側のロールとの強制的な速度比を付ける必要がある。その結果、加熱伸縮率が大きくなったり、熱板成形時にシートに皺が生じたりする。また、樹脂が最初に抱き付くロールの川下側に配置するロールは130〜145℃が好ましい。樹脂が最初に抱き付くロールの川下側に配置するロールが130℃未満ではシートに反りが発生し易くなる。145℃を超えると半転写状態となり、外観を損ねる。成形ロールは、横型ロール配置のものが使用される。樹脂が最初に抱き付くロールの川上側に弾性ロールを配置し、低線圧でプレスする方法も外観改善の観点から好ましい態様である。その場合、川上側に配置するロール温度は125〜130℃が好ましい。また、バンク成形用の横型3本ロール配置のロール装置においてバンク成形を行わず、樹脂が最初に抱き付くロールの川上側に配置するロール上にダイスから吐出された樹脂を接触させても良い。或いは、直接中央に位置するロール上にダイスから吐出された樹脂を接触させても良い。
このほか、第1成形ロールと第2成形ロールの間にバンクを形成してシーティングする方法もあるが、バンク部分で樹脂に高線圧がかかり、幅方向の加熱伸縮率がプラスに膨張するので好ましくない。
上記説明において、樹脂が最初に抱き角として120°以上抱き付くロールを第2成形ロール、樹脂が最初に抱き付くロールの川下側に配置するロールを第3成形ロール、樹脂が最初に抱き付くロールの川上側に配置するロールを第1成形ロールと称す。
【実施例】
【0019】
以下に、本発明を実施例によってさらに詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。実施例、比較例中の各種物性の測定及び評価は以下の方法で行った。
【0020】
(1)粘度平均分子量
ウベローデ粘度計を用いて塩化メチレン中20℃の極限粘度[η]を測定し、以下の式より求めた。
[η]=1.23×10-4×(Mv)0.83
【0021】
(2)加熱伸縮率
500mm角のシートを6枚用意し、任意に抜き取った1枚について、100mm角に切断し、25枚のシートについて押出方向長さおよび幅方向長さを測定する。熱風循環乾燥機中で180℃に加熱されたタルクを敷いたバットに前記シートを入れ、180℃で30分間加熱する。加熱後、バットごと取出し、室温まで冷却後に再度シートの押出方向長さおよび幅方向長さを測定する。加熱前の長さをL、加熱後の長さをLとしたとき、加熱伸縮率Sは下式で与えられる。
S=−100×(L−L)/L
加熱冷却処理した25点のサンプルについて押出方向および幅方向について加熱伸縮率を求める。収縮したものをマイナス表記する。また、押出方向および幅方向に隣り合う100mm角シートの加熱伸縮率との差を求める。
【0022】
(3)板厚
上記の500mm角のシートの内、加熱伸縮率の測定に使用しなかったものから、任意に抜き取った1枚についてシートの板厚を押出方向および幅方向に50mmピッチで合計121点をマイクロメーターにより測定する。また、押出方向および幅方向に50mm隣り合う位置の板厚との差を求める。
【0023】
(4)熱板成形
実施例における評価用金型としては、500mm角の金型に直径110mm、高さ4.5mmの時計皿を伏せた凸型形状が16個並んだ金型を使用し、浅野研究所製の真空圧空成形機にて成形を行った。成形には、上記の加熱伸縮率測定および板厚測定に供しなかった4枚のシートを使用する。
両面に縦横に1mmピッチで格子の意匠をシルクスクリーン印刷されたポリカーボネート樹脂シートを金型を下部に配置された接触加熱式真空圧空成形機の金型の周縁部上にセットして成形を開始する。板状ヒーターの温度は185℃に設定されており、金型が上昇し、板状ヒーターが下降することによって樹脂シートを金型の周縁部と板状ヒーターの間に挟み、直ちに板状ヒーターに設けられた空気流出入孔から減圧し、金型側の空気流出入孔から0.8kg/cmの空気圧をかけて樹脂シートを3秒間加熱する。3秒後に板状ヒーターの空気流出入孔から5kg/cmの空気圧をかけ、金型の空気流出入孔から減圧して立体形状(3次元形状)に成形した。
【0024】
実施例1
ポリカーボネート樹脂として、三菱エンジニアリングプラスチックス社製のユーピロンS−2000(商品名、粘度平均分子量:23,000)を使用した。
ポリカーボネート樹脂を押出す押出機として、バレル直径120mm、スクリュウのL/D=35、シリンダー温度は270℃、ダイス温度は300℃に設定した。ダイスより押出された樹脂温度は302〜305℃であり、第2成形ロール温度127℃、第3成形ロール温度132℃に設定された横型3本配置のポリッシングロール(成形ロール)に導かれ、第2ロール上に吐出され、接触後、第3成形ロールを通過させ、幅1000mmの板厚0.45mmのシートを成形した。第2成形ロールと第3成形ロールの速度比は1.02倍、第3成形ロールと引き取りロールの速度比は1.02倍とした。製造されたシートの加熱伸縮率は押出方向が−1.0%、幅方向が−0.4%であった。また、押出方向および幅方向に100mm離れて隣り合う加熱伸縮率の差は2%以内で、押出方向および幅方向に50mm離れて隣り合う板厚の差も5%以内であった。
このシートを前記方法で熱板成形した。成形品は意匠ズレや皺が無く、外観良好なものであった。評価結果を表1に示した。
【0025】
実施例2
ポリカーボネート樹脂として、三菱エンジニアリングプラスチックス社製のユーピロンS−2000(商品名、粘度平均分子量:23,000)を使用した。
ポリカーボネートを押出す押出機として、バレル直径120mm、スクリュウのL/D=35、シリンダー温度は270℃、ダイス温度は310℃に設定した。ダイスより押出された樹脂温度は311〜314℃であった。第2成形ロール温度132℃、第3成形ロール温度140℃に設定された横型3本配置のポリッシングロール(成形ロール)に導かれ、第2ロール上に吐出され、接触後、第3成形ロールを通過させ、幅1000mmの板厚0.40mmのシートを成形した。第2成形ロールと第3成形ロールの速度比は1.02倍、第3成形ロールと引き取りロールの速度比は1.02倍とした。製造されたシートの加熱伸縮率は押出方向が−4.2%、幅方向が−0.9%であった。また、押出方向および幅方向に100mm離れて隣り合う加熱伸縮率の差は2%以内で、押出方向および幅方向に50mm離れて隣り合う板厚の差も5%以内であった。
このシートを前記方法で熱板成形した。成形品は意匠ズレや皺が無く、外観良好なものであった。評価結果を表1に示した。
【0026】
実施例3
ポリカーボネート樹脂として、三菱エンジニアリングプラスチックス社製のユーピロンS−3000(商品名、粘度平均分子量:21,500)を使用した。アクリル系樹脂としてクラレ社製パラペットHR1000Lを使用した。
ポリカーボネート樹脂層を押出す押出機としてバレル直径90mm、スクリュウのL/D=35の単軸押出機を使用し、シリンダー温度270℃とした。また、被覆層となるアクリル系樹脂層脂層を押出す押出機は、バレル直径50mm、スクリュウのL/D=32の単軸押出機を使用し、シリンダー温度240℃に設定した。2種類の樹脂を同時に溶融押出し、積層する際のフィードブロック設定温度は260℃、ダイ設定温度は290℃とした。フィードブロックダイ内で積層一体化され、ダイスより押出された樹脂温度は291〜294℃であり、第2成形ロール温度125℃、第3成形ロール温度142℃に設定された横型3本配置のポリッシングロール(成形ロール)に導かれ、第2ロール上に吐出され、接触後、第3成形ロールを通過させ、幅1000mmの板厚0.45mmのシートを成形した。第2成形ロールと第3成形ロールの速度比は1.08倍、第3成形ロールと引き取りロールの速度比は1.01倍とした。製造されたシートの加熱伸縮率は押出方向が−3.8%、幅方向が−0.5%であった。また、押出方向および幅方向に100mm離れて隣り合う加熱伸縮率の差は2%以内で、押出方向および幅方向に50mm離れて隣り合う板厚の差も5%以内であった。
このシートを前記方法で熱板成形した。成形品は意匠ズレや皺が無く、外観良好なものであった。評価結果を表1に示した。
【0027】
比較例1
ポリカーボネート樹脂として、三菱エンジニアリングプラスチックス社製のユーピロンS−2000(商品名、粘度平均分子量:23,000)を使用した。
ポリカーボネートを押出す押出機として、バレル直径120mm、スクリュウのL/D=35、シリンダー温度は270℃、ダイス温度は300℃に設定した。ダイスより押出された樹脂温度は301〜304℃であり、第1成形ロール温度128℃、第2成形ロール温度130℃、第3成形ロール140℃に設定された横型3本配置のポリッシングロール(成形ロール)に導かれ、第1成形ロールと第2成形ロールの間でバンク成形された後、第2成形ロールから第3成形ロールへと導かれ、幅1000mmの板厚0.45mmのシートを成形した。第2成形ロールと第3成形ロールの速度比は1.02倍、第3成形ロールと引き取りロールの速度比は1.02倍とした。製造されたシートの加熱伸縮率は押出方向が−12.0%、幅方向が+2.4%であった。また、押出方向および幅方向に100mm離れて隣り合う加熱収縮率の差2%を超えたが、押出方向および幅方向に50mm離れて隣り合う板厚の差は5%以内であった。
このシートを前記方法で熱板成形した。成形品には意匠ズレおよびしわが発生した。評価結果を表1に示した。
【0028】
比較例2
実施例1において、ポリカーボネート樹脂として三菱エンジニアリングプラスチックス社製のユーピロンE−2000(商品名、粘度平均分子量:27,500)を使用した以外は実施例1と同様の方法とした。第2成形ロールと第3成形ロールの速度比は1.02倍、第3成形ロールと引き取りロールの速度比は1.02倍とした。
製造されたシートの加熱伸縮率は押出方向が−7.2%、幅方向が+0.3%であった。また、押出方向および幅方向に100mm離れた隣り合う加熱伸縮率の差は2%以内で、押出方向および幅方向に50mm離れて隣り合う板厚の差も5%以内であった。
このシートを前記方法で熱板成形した。成形品には意匠ズレおよびしわが生じた。評価結果を表1に示した。
【0029】
比較例3
実施例1において、ダイス温度を260℃に設定した以外は実施例1と同様の方法とした。
ダイスより押出された樹脂温度は260〜264℃であり、第2成形ロールと第3成形ロールの速度比は1.02倍、第3成形ロールと引き取りロールの速度比は1.02倍とした。製造されたシートの加熱伸縮率は押出方向が−4.2%、幅方向が−0.3%であった。また、押出方向および幅方向に100mm離れて隣り合う加熱伸縮率の差は2%以内であったが、押出方向および幅方向に50mm離れて隣り合う板厚の差は5%を超えるものであった。
このシートを前記方法で熱板成形した。成形品にはしわが生じた。評価結果を表1に示した。
【0030】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度平均分子量が21,500〜25,000であるポリカーボネート樹脂からなり、押出方向および幅方向の180℃で測定した加熱伸縮率が0〜−5%であると共に、押出方向および幅方向に100mm離れて隣り合う加熱伸縮率の差が2%以内であり、板厚が0.20〜0.60mmの熱板成形用ポリカーボネート樹脂シート。
【請求項2】
押出方向および幅方向に50mm離れて隣り合う板厚の差が5%以内である請求項1に記載の熱板成形用ポリカーボネート樹脂シート。
【請求項3】
該ポリカーボネート樹脂シートの一方の面に共押出によって10〜50μmのアクリル系樹脂を積層した請求項1〜2のいずれかに記載の熱板成形用ポリカーボネート樹脂シート
【請求項4】
ダイスより吐出された樹脂から冷却ロールを用いてポリカーボネートシートを製造する方法において、ダイスより280〜320℃で吐出された樹脂を最初に樹脂が抱き付くロールの設定温度を125〜135℃、次にシートの反対面が接触するロールの設定温度を130〜145℃とすることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の熱板成形用ポリカーボネート樹脂シートの製造方法。

【公開番号】特開2006−316124(P2006−316124A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138152(P2005−138152)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】