説明

熱特性を有しかつ吸収層を有する多層コーティングを備えた基材

本発明は、少なくとも2つの基材(10,30)を含む多重グレージングであり、1つの基材はガス充填キャビティーに接触している内面上を、赤外線及び/又は太陽放射に反射特性を有する薄膜多層コーティングによって被覆されており、前記コーティングは単一の金属機能層(140)及び2つの誘電膜(120,160)を含み、前記誘電膜は各々少なくとも1つの誘電層(122,126;162,166)を含み、前記機能層(140)は前記2つの誘電膜(120,160)の間に配置されている多重グレージングにおいて、
前記2つの誘電膜(120,160)は各々、該誘電膜中の2つの誘電層(122,126;162,166)の間に配置された少なくとも1つの吸収層(123,165)を含み、前記吸収層(123,165)の吸収性材料は前記金属機能層(140)の両側に対称的に配置されていることを特徴とする、多重グレージングに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーム構造により一緒に保持された、ガラス基材タイプの少なくとも2つの基材を含む多重グレージングであって、外側空間及び内側空間を分離しており、2つの基材の間に少なくとも1つのガス充填キャビティーがある、多重グレージングに関する。
【0002】
知られているとおり、基材の1つはガス充填キャビティーに接触している内面上を、赤外線及び/又は太陽放射に反射特性を有する薄膜多層コーティングによって被覆されていてよく、前記コーティングは単一の金属機能層、特に、銀又は銀含有合金をベースとする単一の金属機能層及び2つの誘電膜を含み、前記誘電膜は各々少なくとも1つの誘電層を含み、前記機能層は前記2つの誘電膜の間に配置されていてよい。
【0003】
本発明は、より詳細には、断熱性及び/又は太陽保護グレージングユニットを製造するための、このような基材の使用に関する。これらのグレージングユニットは、建築物に装備されることが意図されてよく、特に、空調の負荷を低減し及び/又は過度のオーバーヒーティングを抑制し(「太陽制御」グレージングと呼ばれる)及び/又は建築物にガラス窓を取り付けた表面の使用が非常に増加していることから生じる、外部へ散逸されるエネルギー量を低減する(低-E又は低放射率グレージングと呼ばれる)ことが意図されうる。
【0004】
グレージングは、また、たとえば、加熱グレージング又はエレクトロクロミックグレージングなどの特定の機能を有するグレージングユニットに組み込まれることができる。
【0005】
このような特性を基材に付与することが知られている1つのタイプの多層コーティングは赤外線及び/又は太陽放射に反射特性を有する金属機能層からなり、特に、銀又は銀を含有する合金をベースとする金属機能層からなる。
【0006】
このタイプの多層コーティングにおいて、機能層は、このように、2つの誘電膜の間に配置され、その誘電膜の各々は、一般に、窒化物タイプ、特に、窒化ケイ素又は窒化アルミニウム、又は、酸化物タイプの誘電材料から各々作られた数層を含む。光学的な観点から、金属機能層に隣接するこれらの膜の目的はこの金属機能層を「反射防止」させることである。
【0007】
しかしながら、時折、1つ又は各誘電膜と金属機能層との間にブロッカー膜が挿入され、基材方向において機能層の下側に配置されたブロッカー膜は、曲げタイプ及び/又はテンパリングタイプの、場合により行う高温熱処理の間に上記の機能層を保護し、そして基材の反対側にある機能層上に配置されたブロッカー膜はこの層を上部誘電膜の堆積の間及び曲げタイプ及び/又はテンパリングタイプの、場合により行う高温熱処理の間に、あらゆる劣化から保護する。
【0008】
念のために述べると、グレージングの太陽係数(solar factor)SFはこのグレージングを通って部屋に入り込む総太陽エネルギーの、総入射太陽エネルギーに対する比であり、選択率Sはグレージングの可視光の光透過率TLVISの、グレージングの太陽係数に対する比であり、S=TLVIS/SFである。
【0009】
現在、低-E薄膜多層コーティングであって、たとえば、以下の形態:
4−16(Ar−90%)−4(90%アルゴン及び10%空気を含む、厚さが16mmであるガス充填キャビティーによって分離された2枚の4mmガラスシートからなり、そのシートの1つ、すなわち、建築物に入る太陽光の入射方向を考慮したときに、建築物の内側から最も離れたシートのガス充填キャビティーに向けた面が、単一の機能層を含む多層コーティングにより被覆されている)
の従来のダブルグレージングユニット中の、例えば面3上に取り付けた際に、垂直放射率εNが約2〜3%であり、可視光での光透過率TLが約65%であり、約50%の太陽係数に対して選択率が約1.3〜1.35である、銀をベースとする単一の機能層を含む低-E薄膜多層コーティング(以下において、表現「単一の機能層を含む多層コーティング」により表す)が存在する。
【0010】
ダブルグレージングの面2上(建築物に入る太陽光の入射方向を考慮したときに、建築物の外側から最も離れたシート上であり、そしてガス充填キャビティーに向けた面上)に薄膜多層コーティングを配置することにより、太陽係数を低減することができ、このため、選択率を増加させることができることは当業者に知られている。
【0011】
上記の例の関係で、単一の機能層を含む同一の多層コーティングで約1.5の選択率を得ることが可能である。
【0012】
しかしながら、この解決法は可視光の光反射率、特に、建築物の外側から見た可視光の光反射率が比較的に高いレベルであり、20%を超え、そして約23〜25%であるから、幾つかの用途では満足されない。
【0013】
エネルギー反射をなおも維持しながら、又は、エネルギー反射を増加させながらも、この光反射を低減するために、可視光に吸収性がある1つ以上の層を多層コーティング中に導入し、より特定的には、1つ以上の誘電膜中に導入することができることが当業者に知られている。
【0014】
可視光において吸収性である1つ以上の層の配置により、多重グレージングユニットに単一の機能層を含む多層コーティングを配置する際に特定の規則が尊重されなければならないようであり、これが本発明の主題を構成する。
【0015】
従来技術は、数層の機能層を含む多層コーティング中に可視光において吸収性であるこのような層を使用することを教示しており、特に、可視光において吸収性であるこのような層を、曲げ/テンパリングタイプの熱処理に耐性がある多層コーティングにおいて使用することに関する国際特許出願WO02/48065において教示されていることは注目されるべきである。
【0016】
しかしながら、多層コーティングの複雑さ及び堆積される材料の量のために、数層の機能層を含むこれらの多層コーティングは単一の機能層を含む多層コーティングよりも製造コストが嵩む。
【0017】
さらに、また、2層の機能層を含むこの多層コーティングの複雑さのために、上記の文献の教示は単一の機能層を含む多層コーティングを設計するのに直接的に置き換えることはできない。
【発明の概要】
【0018】
本発明の1つの目的は、単一の機能層を含む新規のタイプの多層コーティングであって、低いシート抵抗を有し(それゆえ、低い放射率を有し)、高い光透過率を有しそして比較的に無彩色であり、特に、多層コーティング側での反射で(しかし、反対側、すなわち、「基材側」での反射でも)比較的に無彩色であり、これらの特性は好ましくは多層コーティングが曲げ及び/又はテンパリング及び/又はアニーリングタイプの1つ以上の高温熱処理を受けていても、又は、受けていなくても、限定された範囲に維持される、多層コーティングを開発することにより、従来技術の欠点を無くすことに成功することである。
【0019】
別の重要な目的は、可視光での低い光反射性及び許容される色であって、特に、多重グレージングの外部反射において許容される色、特に赤でない色を有しながら、低い放射率を有する、単一の機能層を含む多層コーティングを提供することである。
【0020】
このため、本発明の1つの主題は、その最も広い範囲において、請求項1又は請求項2に記載されるとおりの多重グレージングである。この多重グレージングは少なくとも2つの基材又は少なくとも3つの基材をそれぞれ含み、それらの基材はフレーム構造により一緒に保持されており、前記グレージングは外側空間及び内側空間を分離しており、2つの基材の間に少なくとも1つのガス充填キャビティーがあり、1つの基材は、ガス充填キャビティーと接触している内面上を、赤外線及び/又は太陽放射に反射特性を有する薄膜多層コーティングにより被覆されており、前記コーティングは単一の金属機能層、特に、銀又は銀含有合金をベースとする単一の金属機能層、及び、2つの誘電膜を含み、前記誘電膜は各々少なくとも2つの誘電層を含み、前記機能層はこの2つの誘電膜の間に配置されている。本発明によると、2つの誘電膜は各々少なくとも1つの吸収層を含み、その吸収層はその各々2つの誘電膜中の2つの誘電層の間に配置されており、これらの2つの吸収層の全ての吸収性材料は金属機能層の両側において対称的に配置されている。
【0021】
好ましくは、少なくとも2つの基材を含む多重グレージング又は少なくとも3つの基材を含む多重グレージングの単一の基材は、ガス充填キャビティーと接触している内面上を、赤外線及び/又は太陽放射に反射特性を有する薄膜多層コーティングにより被覆されている。
【0022】
用語「対称的」とは、本発明の範囲で、多層コーティングの吸収層(単層又は複数層)の吸収性材料の合計厚さの半分が金属機能層の下方の誘電膜中にあり、多層コーティングの吸収層(単層又は複数層)の吸収性材料の合計厚さの他方の半分が金属機能層の上方の誘電膜中にあるものと理解されるべきである。
【0023】
本発明の関係で、用語「対称的」を解釈する際に、誘電膜内以外の多層コーティング中に存在する吸収性材料は考慮に入れない。このため、機能層に接触して又はその近傍にある、場合により存在してよいブロッカー層(単層又は複数層)は、用語「対称的」を解釈する際に考慮される吸収性材料の一部を構成しない。
【0024】
用語「膜(フィルム)」とは、本発明の関係の範囲で、膜内に単一の層又は異なる材料の幾つかの層が存在しうることを意味するものと理解されるべきである。
【0025】
用語「誘電層」とは、本発明の範囲内で、その性質の観点から、材料が「非金属」、すなわち、金属でないことを意味するものと理解されるべきである。本発明の関係で、この用語は全可視光波長範囲(380nm〜780nm)にわたってn/k比が5以上である材料を表す。
【0026】
用語「吸収性材料」とは、本発明の範囲で、全可視光波長範囲(380nm〜780nm)にわたってn/k比が0〜5(これらの値を除外する)であり、バルク状態での電気抵抗率が10-5Ω・cmを超える材料を意味するものと理解される。
【0027】
nは所与の波長における材料の実屈折率を表し、kは所与の波長における屈折率の虚数部を表し、比n/kはn及びkの両方について同一の所与の波長で計算されることが思い起こされるであろう。
【0028】
各誘電膜内で、吸収層に隣接している2つの誘電層は好ましくは同一の性質のものである。誘電層の組成(化学量論組成)は、このため、吸収層の両側で同一である。
【0029】
本発明の1つの特定の形態において、少なくとも1つの基材は、ガス充填キャビティーと接触している少なくとも1つの面上に反射防止膜を有し、その反射防止膜は、前記ガス充填キャビティーに対して、赤外線及び/又は太陽放射に反射特性を有する薄膜多層コーティングの反対側にある。
【0030】
この形態により、多重グレージングの光透過率が有意に増加し、太陽係数の増加がより少ないことにより、さらに高い選択率が達成できる。
【0031】
本発明の1つの特定の形態において、多層コーティングの少なくとも1つの吸収層、好ましくは多層コーティングのすべての吸収層は窒化物をベースとし、特に、これらの層の少なくとも1つの層、好ましくはこれらの層のすべては窒化ニオブNbNをベースとし、又は、これらの層の少なくとも1つの層、好ましくはこれらの層のすべては窒化チタンTiNをベースとする。
【0032】
誘電膜中の吸収層の吸収性材料は好ましくは厚さが0.5nm〜10nm(これらの値を含む)であり、又は、さらには2nm〜8nm(これらの値を含む)であり、それにより、多重グレージングにおいて、光透過率を25%以上、又は、さらには30%以上に維持する。
【0033】
少なくとも各誘電膜内に存在する、上記のとおりの誘電層は光学屈折率が1.8〜2.5(これらの値を含む)であり、又は、好ましくは1.9〜2.3(これらの値を含む)である(光学屈折率又は屈折率は通常のとおり、550nmで測定された屈折率をここでは示す)。
【0034】
1つの特定の実施形態において、下部誘電膜及び上部誘電膜は各々窒化ケイ素をベースとし、場合により、アルミニウムなどの少なくとも1つの他の元素によりドーピングされていてよい、少なくとも1つの誘電層を含む。
【0035】
本発明の1つの特定の実施形態において、各吸収層は、誘電膜中の2つの誘電層の間に配置され、それらの誘電層は両方とも、窒化ケイ素をベースとし、場合により、アルミニウムなどの少なくとも1つの他の元素によりドーピングされていてよい。
【0036】
1つの特定の実施形態において、基材から最も遠くに離れた、下部誘電膜の最終層又はオーバーコートは、酸化物をベースとし、特に、酸化亜鉛をベースとし、場合により、アルミニウムなどの少なくとも1つの他の元素によりドーピングされていてよい湿潤層である。
【0037】
最も特定の実施形態において、下部誘電膜は、窒化物をベースとし、特に窒化ケイ素及び/又は窒化アルミニウムをベースとする少なくとも1つの誘電層、及び、混合酸化物から作られた少なくとも1つの非結晶性スムージング層を含み、前記スムージング層は結晶性の上部湿潤層と接触している。
【0038】
好ましくは、機能層は、機能層と、機能層の下方にある誘電膜との間でアンダーブロッカー膜上に直接的に配置されており、及び/又は、機能層は、機能層と、機能層の上方にある誘電膜との間に配置されたオーバーブロッカー膜の下に直接的に堆積され、そして、アンダーブロッカー膜及び/又はオーバーブロッカー膜は、幾何学的厚さeが0.2nm≦e≦2.5nmであるニッケル又はチタンをベースとする薄層を含む。
【0039】
さらに、アンダーブロッカー膜及び/又はオーバーブロッカー膜は、薄膜多層コーティングを備えた基材がコーティングを堆積させた後に曲げ及び/又はテンパリング熱処理を受けていない場合、金属形態で存在するニッケル又はチタンをベースとする少なくとも1つの薄層を含むことができ、この層は、薄膜多層コーティングを備えた基材が多層コーティングの堆積後に少なくとも1つの曲げ及び/又はテンパリング熱処理を受けている場合は、少なくとも部分的に酸化されている。
【0040】
アンダーブロッカー膜の薄いニッケルベースの層及び/又はオーバーブロッカー膜の薄いニッケルベースの層は、その層が存在する場合には、好ましくは機能層と直接的に接触している。
【0041】
1つの特定の実施形態において、基材から最も離れている上部誘電膜の最終層又はオーバーコートは、酸化物をベースとし、好ましくは化学量論未満で堆積されており、そして特に、チタン酸化物(TiOx)又は混合スズ亜鉛(SnZnOx)をベースとし、場合により、最大で10質量%の量で別の元素によりドーピングされていてよい。
【0042】
多層コーティングは、このように、オーバーコート、すなわち、保護層を含むことができ、好ましくは化学量論未満で堆積される。この層は堆積後に多層コーティング中で化学量論的になるように本質的に酸化される。
【0043】
この保護層は好ましくは厚さが0.5〜10nmである。
【0044】
本発明に係るグレージングは本発明に係る多層コーティングを有する基材を少なくとも含み、その基材は場合により少なくとも1つの他の基材に結合されている。各基材は透明であっても、又は、色付きであってもよい。特に、基材の少なくとも1つはバルク着色されたガラスから作られていてよい。着色タイプの選択は光透過率のレベル及び/又はグレージングの製造が完了された際にグレージングに望まれている彩色外観によるであろう。
【0045】
本発明に係るグレージングは積層構造を有することができ、特に、ガラスタイプの少なくとも2つの剛性基材を少なくとも1つの熱可塑性ポリマーのシートと組み合わせ、ガラス/薄膜多層コーティング/シート/ガラス/ガス充填キャビティー/ガラスシートのタイプの構造を有するようにすることができる。ポリマーは、特に、ポリビニルブチラールPVB、エチレン−酢酸ビニルEVA、ポリエチレンテレフタレートPET又はポリ塩化ビニルPVCをベースとするものであってよい。
【0046】
本発明に係るグレージングの基材は薄膜多層コーティングが損傷されないで熱処理を受けることができる。場合により、上記基材は曲げられ及び/又はテンパリングされる。
【0047】
本発明の主題はまた、フレーム構造により一緒に保持されている少なくとも2つの基材を含む本発明に係る多重グレージングの製造方法に関し、上記グレージングは外側空間及び内側空間の間を分離しており、2つの基材の間に少なくとも1つのガス充填キャビティーがあり、1つの基材は上記ガス充填キャビティーに接触している内面上を、赤外線及び/又は太陽放射に反射特性を有する薄膜多層コーティングによって被覆されており、上記コーティングは単一の金属機能層、特に、銀又は銀含有合金をベースとする単一の金属機能層及び2つの誘電膜を含み、上記誘電膜は各々少なくとも2つの誘電層を含み、上記機能層は上記2つの誘電膜の間に配置されており、上記2つの誘電膜は、その各々の誘電膜中の2つの誘電層の間に配置された少なくとも1つの吸収層を各々含み、上記吸収層の吸収性材料を上記金属機能層の両側に対称的に配置させる、多重グレージングの製造方法に関する。
【0048】
吸収層に隣接している2つの誘電層が窒素及び/又は酸素の存在下で反応性スパッタリングにより堆積される場合には、これら2つの層の間に堆積される吸収層も好ましくはそれぞれ窒素及び/又は酸素の存在下で堆積される。
【0049】
本発明はまた、フレーム構造により一緒に保持されている少なくとも2つの基材を含み、2つの基材の間にガス充填キャビティーがある、本発明に係る多重グレージングを製造するための薄膜多層コーティングの使用に関し、上記薄膜多層コーティングは赤外線及び/又は太陽放射に反射特性を有し、単一の金属機能層、特に、銀又は銀含有合金をベースとする単一の金属機能層及び2つの誘電膜を含み、上記誘電膜は各々少なくとも1つの誘電層を含み、上記機能層は上記2つの誘電膜の間に配置されており、上記薄膜多層コーティングは少なくとも1つの基材の内面上に配置される、薄膜多層コーティングの使用に関する。
【0050】
有利なことに、本発明により、多重グレージング形態、特にダブルグレージング形態中に、高選択率(S≧1.40)、低放射率(εN≦3%)及び美的魅力のある外観(TLVIS≧60%、外部RLVIS≦25%又は外部RLVIS≦20%又は、さらには外部RLVIS<20%であり、外部反射において無彩色)を有する、単一の機能層を含む薄膜多層コーティングを製造することが可能であり、一方、これまでは、2つの機能層を含む多層コーティングでしか、この基準の組み合わせを満たすことができなかった。
【0051】
本発明に係る単一の機能層を含む多層コーティングは同一の特性(TLVIS、RLVIS及び外部反射において無彩色)を有する2つの機能層を含む多層コーティングよりも製造コストが低い。
【0052】
また、有利なことに、本発明は、吸収層とともに単一の機能層を含む多層コーティングを提供するが、多層コーティングが多重グレージングのどの内面上に配置されるかに関係なく;多層コーティングの方向付けに注意を払う必要がない(たとえば、従来のダブルグレージングでは、面2上であるか又は面3上であるかが問題となる)。
【0053】
本発明の詳細及び有利な特徴は添付図面により例示されている以下の非制限的実施例から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1において、従来技術による単一の機能層を含む多層コーティングが示されており、機能層がアンダーブロッカー膜及びオーバーブロッカー膜を備えている。
【図2】図2において、単一の機能層を含む多層コーティングを取り込んだ2つのダブルグレージング手段が示されている。
【図3】図3において、単一の機能層を含む多層コーティングを取り込んだ2つのダブルグレージング手段が示されている。
【図4】図4において、本発明に係る単一の機能層を含む多層コーティングが示されており、機能層がアンダーブロッカー膜及びオーバーブロッカー膜を備えている。
【図5】図5において、単一の機能層を含む多層コーティングを取り込んだ2つのトリプルグレージング手段が示されている。
【図6】図6において、単一の機能層を含む多層コーティングを取り込んだ2つのトリプルグレージング手段が示されている。
【実施例】
【0055】
これらの図面において、種々の層又は種々の要素の厚さの割合は、容易に検討できるように厳格に尊重されていない。
【0056】
図1は透明ガラス基材10,30上に堆積された従来技術の単一の機能層を含む多層コーティングの構造を例示しており、ここで、単一の機能層140、特に、銀又は銀含有合金をベースとする単一の機能層140は2つの誘電膜の間に配置されており、すなわち、下部誘電膜120は基材10,30の方向に機能層140の下方にあり、そして上部誘電膜160は基材10,30上の反対側に機能層140の上方にある。
【0057】
これら2つの誘電膜120,160は各々少なくとも2つの誘電層122,126,128;162,166,168を含む。
【0058】
場合により、一方で、機能層140は下部誘電膜120と機能層140との間に配置されるアンダーブロッカー膜上に堆積されてよく、他方で、機能層140は機能層140と上部誘電膜160との間に配置されるオーバーブロッカー膜の直下に堆積されてよい。
【0059】
この誘電膜160は場合により存在する保護層168、特に、酸化物をベースとし、特に、酸素が化学量論未満である酸化物をベースとする保護層168を末端とすることができる。
【0060】
単一の機能層を含む多層コーティングがダブルグレージング構造の多重グレージング100において使用される場合には、このグレージングは、フレーム構造90により一緒に保持されておりそしてガス充填キャビティー15により互いに分離されている2つの基材10,30を含む。
【0061】
グレージングは、このため、外側空間(ES)及び内側空間(IS)の間を分離している。
【0062】
多層コーティングは面2上(建築物に入る太陽光の入射方向を考慮して、建築物の内側から最も離れたガラスシート上で、ガスキャビティーに向けた面上)に配置されてよく、又は、面3上(建築物に入る太陽光の入射方向を考慮して、建築物の内側に最も近いシート上で、ガスキャビティーに向けた面上)に配置されてもよい。
【0063】
図2及び3はそれぞれ配置を例示している(建築物に入る太陽光の入射方向は二重線矢印により示されている)
−面2上に薄膜多層コーティング14が配置されており、該薄膜多層コーティング14はガス充填キャビティー15と接触している基材10の内面11上に配置されており、基材10の反対面9は外部空間ESと接触しており、
−面3上に薄膜多層コーティング26が配置されており、該薄膜多層コーティング26はガス充填キャビティー15と接触している基材30の内面29上に配置されており、基材30の反対面31は内部空間ISと接触している。
【0064】
しかしながら、このダブルグレージング構造において、基材の1つが積層構造を有することも考えられるが、このような構造において、ガス充填キャビティーが存在しないので混同は生じえない。
【0065】
さらに、例示はされていないが、赤外線及び/又は太陽放射に反射特性を有する薄膜多層コーティングを有していない少なくとも1つの基材10,30はガス充填キャビティー15に接触している少なくとも1つの面11(図3の場合)又は面29(図2の場合)上に、反射防止膜を含むことができ、その反射防止膜は上記ガス充填キャビティー15との関係で、赤外線及び/又は太陽放射に反射特性を有する薄膜多層コーティング14(図2の場合)及び薄膜多層コーティング26(図3の場合)とは反対側にある。
【0066】
反射防止膜をダブルグレージング構造中に導入する目的は高い光透過率及び高い太陽係数を得ることを可能にすることである。
【0067】
一連の3つの例を製造し、各例を例1〜3と番号付けした。
国際特許出願WO2007/101964の教示より、下部誘電膜120は窒化ケイ素をベースとする誘電層122及び混合酸化物から作られた少なくとも1つの非結晶性スムージング層126を含むことができ、この場合には、混合亜鉛スズ酸化物であって、アンチモンでドーピングされており(上記酸化物はそれぞれZn:Sn:Sb質量比が65:34:1である金属ターゲットを用いて堆積)、上記スムージング層126は上部湿潤層128と接触している。
【0068】
この多層コーティングにおいて、アルミニウムでドーピングされた亜鉛酸化物ZnO:Al(2質量%のアルミニウムでドーピングされた亜鉛からなる金属ターゲットを用いて堆積)から作られた湿潤層128により、銀の結晶化が改良でき、それにより、その導電率が増加し、この効果は非晶性Sn:ZnOx:Sbスムージング層の使用により増強され、それにより、ZnO成長及びそれゆえ銀成長が改良される。
【0069】
上部誘電膜160はアルミニウムでドーピングされた亜鉛酸化物ZnO:Al(2質量%のアルミニウムでドーピングされた亜鉛からなる金属ターゲットを用いて堆積)から作られた少なくとも1つの誘電層162及び窒化ケイ素をベースとする誘電層166を含むことができる。
【0070】
窒化ケイ素層122,166はSi34層であり、そして8質量%のアルミニウムでドーピングされた金属ターゲットを用いて堆積される。
【0071】
これらの多層コーティングは、また、テンパリングされうるという利点を有し、すなわち、これらの多層コーティングはテンパリング熱処理に耐えることができ、そしてその光学特性はこの熱処理を行った際にほとんど変動しない。
【0072】
上記のすべての例に関して、層を堆積させる条件は下記のとおりである。
【0073】
【表1】

【0074】
このように、堆積された層は3つのカテゴリーに分類されうる。
i)全可視線波長範囲にわたってn/k比が5より大きい誘電性材料から作られた層:Si34、SnZnO、ZnO
ii)全可視線波長範囲にわたってn/k比が0<n/k<5であり、バルク状態での電気抵抗率が10-5Ω・cmを超える吸収性材料から作られた層:NbN
iii)赤外線及び/太陽放射に反射特性を有する材料から作られた金属機能層:Ag
【0075】
銀は、また、全可視線波長範囲にわたってn/k比が0<n/k<5であるが、バルク状態での電気抵抗率が10-5Ω.cmより低いことが判った。
【0076】
また、材料Ti、NiCr、TiN及びNbは上記の所与の定義による吸収性材料から作られる層を構成することができる。
【0077】
すべての例に関して、以下において、薄膜多層コーティングはSaint-Gobainにより販売されているPlaniluxの商標名の4mmの厚さの透明ソーダライムガラスから作られた基材上に堆積される。
【0078】
これらの基材に関し、
−RはΩ/スクエアで多層コーティングのシート抵抗を示し、
−TLは光源D65下に2°で測定される、%での可視線の光透過率を示し、
−aT*及びbT*は光源D65下に2°で測定される、LAB系での透過の色a*及びb*を示し、
−Rcは、薄膜多層コーティングにより被覆された基材の側で、光源D65下に2°で測定される、%での可視線の光反射率を示し、
−ac*及びbc*は、被覆された基材側で、光源D65下に2°で測定される、LAB系での透過の色a*及びb*を示し、
−Rgは、露出した基材側で、光源D65下に2°で測定される、%での可視線の光反射率を示し、
−ag*及びbg*は、露出した基材側で、光源D65下に2°で測定される、LAB系での透過の色a*及びb*を示す。
【0079】
さらに、これらの例では、基材に熱処理を付したすべての場合に、曲げ又はテンパリング熱処理を模倣するために、アニーリング処理を約620℃の温度で約6分間行ない、その後に、基材を周囲温度(約20℃)で冷却させる。
【0080】
さらに、これらの例では、多層コーティングを有する基材がダブルグレージング中に取り込まれる場合には、これは4−16−4(90%Ar)構造、すなわち、90%アルゴン及び10%空気からなる16mm厚さのガスキャビティーにより分離された各々の厚さが4mmである2つのガラス基材の構造を有する。
【0081】
上記のすべての例で、このダブルグレージング形態において、EN673標準により計算して、約1.1W・m-2・K-1のU係数又はK係数(すなわち、外部空間と接触しているグレージングの面と内部空間に接触している面との単位温度差を得るために定常状態で単位面積当たりに基材をとおして通過する熱量を表す、グレージングをとおした熱透過係数)を達成することができる。
【0082】
これらのダブルグレージングユニットでは、
−SFは太陽係数を示し、すなわち、グレージングをとおして部屋に入っている総太陽エネルギーの総入射太陽放射に対する、百分率としての比を示し、
−Sは可視光での光透過率TLの太陽係数SFに対する比、S=TLVIS/SFに対応する選択率を示し、
−TLは光源D65下に2°で測定される、%での可視線の光透過率を示し、
−aT*及びbT*は光源D65下に2°で測定される、LAB系での透過の色a*及びb*を示し、
−Reは、外部空間ES側で、光源D65下に2°で測定される、%での可視線の外部光反射率を示し、
−ae*及びbe*は、外部空間ES側で、光源D65下に2°で測定される、LAB系での外部反射の色a*及びb*を示し、
−Riは、内部空間IS側で、光源D65下に2°で測定される、%での可視線の内部光反射率を示し、
−ai*及びbi*は、内部空間IS側で、光源D65下に2°で測定される、LAB系での内部反射の色a*及びb*を示す。
【0083】
例1は本発明に係る吸収層を含まずに図1に例示されるコーティング構造によって製造したが、場合により存在してよい保護層168及びアンダーブロッカー膜130も含まれなかった。
【0084】
下記の表1は例1の各層のナノメートルでの幾何学的又は物理的厚さを示している。
【表2】

【0085】
下記の表2は、熱処理前の10/30基材のみを考慮した際、熱処理後の10’/30’基材のみを考慮した際、そしてこれらの基材をダブルグレージングとしてそれぞれ面2、F2に取り付けた際(図2に示すとおり)、そして面3、F3に取り付けた際(図3に示すとおり)の例1の主たる光学特性及びエネルギー特性を要約する。
【0086】
2つのF2の列に関し、上の列は基材10で得られたデータを示し、下の列は熱処理を受けた基材10’で得られたデータを示す。同様に、2つのF3の列に関し、上の列は熱処理を受けていない基材(それゆえ、基材30)で得られたデータを示し、下の列は熱処理を受けた基材(それゆえ、基材30’)で得られたデータを示す。
【0087】
【表3】

【0088】
このように、表2から判るであろうとおり、グレージングの可視線の光透過率TLは約65%であり、外部反射での色は比較的に無彩色である。
【0089】
しかしながら、外部光反射率Reは面2及び面3の両方で高すぎるようであるという点で完全に満足されるものでなく、それゆえ、他のパラメータ、特に、色パラメータが影響を受けることなく、外部光反射率を20%以下の値、又は、さらには15%以下の値に低下させることが望ましい。
【0090】
その後、窒化ニオブNbNから作られる1つ(又はそれ以上)の吸収層を多層コーティング中に導入することにより、例2及び3と番号付けした例を図4に例示した多層コーティングを基礎にして製造した。
【0091】
下記の表3はこれらの例の各層のナノメートルでの幾何学的厚さを示している。
【表4】

【0092】
例2及び3は、このように、例1と実質的に同一であるが、誘電層122及び166が各々実質的に同一の厚さの2つの部分(それぞれ、122/124及び164/166)に分割されており、吸収層123,165が各々これらの2つの層の間に、すなわち、例1の層122及び166の実質的に中央に挿入されている。
【0093】
さらに、吸収層の吸収性材料は、下部膜120中(すなわち、キャリア基材と機能層140との間)及び上部膜160中(すなわち、キャリア基材から反対側で、機能層140上)に対称的に配置されており、2つの吸収層123及び165は同一の物理的厚さを有し、それらは両方とも同一の材料から作られておりそして同一の条件下に堆積されたものであった。
【0094】
下記の表4に、熱処理前を施さない基材自体のみを考慮した際、そしてこれらの基材をダブルグレージングとしてそれぞれ面2上に取り付けた際(図2に示すとおり)又は面3上に取り付けた際(図3に示すとおり)の例2及び3の主たる光学特性及びエネルギー特性を示す。
【0095】
【表5】

表4から判るであろうとおり、外部光反射率Reは約15%の値であり、非常に満足される。それは例1の値よりも低い。
【0096】
さらに、多層コーティングが熱処理を受けていても、又は、受けていなくても、外側から見た色は例1とほとんど異ならず、無彩色のままである。
【0097】
さらに、一般に、テンパリング熱処理は本発明に係る例にわずかにしか影響を及ぼさない。
【0098】
特に、本発明に係る多層コーティングのシート抵抗は、熱処理の前及び後において、常に4Ω/スクエア未満である。
【0099】
例2及び3は、適切な美的外観を維持しながらも(TLが60%を超え、色が外部反射で無彩色)、単一の金属銀機能層を含む多層コーティングと、高選択率、低放射率及び低外部光反射率とを組み合わせることが可能であることを示す。
【0100】
さらに、基材側にて、ともに光源D65下で測定された光反射率RL、光透過率TL、及び、光源D65下で測定されたLAB系での反射の色a*及びb*は熱処理を行ったときに実際に有意に変動することはない。
【0101】
熱処理前の光学特性及びエネルギー特性を、熱処理後のこれら同特性と比較することにより、大きな劣化は観測されなかった。
【0102】
さらに、本発明に係る多層コーティングの機械強度は非常に良好である。さらに、このコーティングの全体としての一般的な化学耐性は良好である。
【0103】
単一の機能層を含む多層コーティングがトリプルグレージング構造の多重グレージング100において使用される場合には、このグレージングはフレーム構造90によって一緒に保持され、そしてそれぞれガス充填キャビティー15,25によって対になって分離されている3つの基材10,20,30を含む。グレージングは、このようにして、外部空間ES及び内部空間ISの間を分離している。
【0104】
多層コーティングは面2上(建築物に入る太陽光の入射方向を考慮して、建築物の外側から最も離れたガラスシート上で、ガスキャビティーに向けた面上)に配置されてよく、又は、面5上(建築物に入る太陽光の入射方向を考慮して、建築物の内側に最も近いシート上で、ガスキャビティーに向けた面上)に配置されてもよい。
【0105】
図5及び6はそれぞれ配置を例示している:
−面2上に薄膜多層コーティング14が配置されており、該薄膜多層コーティング14はガス充填キャビティー15と接触している基材10の内面11上に配置されており、基材10の反対面9は外部空間ESと接触しており、
−面5上に薄膜多層コーティング26が配置されており、該薄膜多層コーティング26はガス充填キャビティー25と接触している基材30の内面29上に配置されており、基材30の反対面31は内部空間ISと接触している。
【0106】
しかしながら、このトリプルグレージング構造において、基材の1つが積層構造を有することも考えられるが、このような構造において、ガス充填キャビティーが存在しないので混同は生じえない。
【0107】
さらに、少なくとも1つの基材10,20,30はガス充填キャビティー15,25に接触している少なくとも1つの面11,19,21,29上に、反射防止膜18,22を含むことができ、その反射防止膜は上記ガス充填キャビティー15,25に対して、赤外線及び/又は太陽放射に反射特性を有する薄膜多層コーティング14,26とは反対側にある。
【0108】
図6は、このように、トリプルグレージングの中央基材20が、ガス充填キャビティー25と接触しているその面21上に、反射防止膜22を含み、ここで、その反射防止膜22が上記ガス充填キャビティー25との関係で、赤外線及び/又は太陽放射に反射特性を有する薄膜多層コーティング26とは反対側にある場合を例示している。
【0109】
もちろん、本発明の実施の関係において、赤外線及び/又は太陽放射に反射特性を有する薄膜多層コーティング14が基材10の面11上に配置される場合は、ガス充填キャビティー15に接触しているトリプルグレージングの中央基材20の面19が反射防止膜18を含み、ここで、その反射防止膜18は上記ガス充填キャビティー15との関係で、薄膜多層コーティング14の反対側にある。
【0110】
これらの両方の場合において、トリプルグレージングの中央基材20の反対面も、図6中のこれら2つの場合の第一の場合に関して例示されるとおり、反射防止膜を有することができる。
【0111】
トリプルグレージング構造中に1つ(又はそれ以上)の反射防止膜を導入する目的は、高い光透過率及び高い太陽係数を得ることを可能にすることであり、何はともあれ、改良された断熱性とともに、ダブルグレージングと同様の光透過率及び太陽係数を得ることを可能にすることである。
【0112】
本発明は実施例によって上記に説明されてきた。もちろん、当業者は特許請求の範囲によって規定されるとおりの特許の範囲から逸脱することなく、本発明の種々の変型を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム構造(90)により一緒に保持されている少なくとも2つの基材(10,30)を含む多重グレージング(100)であり、前記グレージングは外側空間(ES)及び内側空間(IS)の間を分離しており、前記2つの基材の間に少なくとも1つのガス充填キャビティー(15)があり、1つの基材(10,30)は、前記ガス充填キャビティー(15)に接触している内面(11,29)上にて、赤外線及び/又は太陽放射に反射特性を有する薄膜多層コーティング(14,26)によって被覆されており、前記コーティングは単一の金属機能層(140)、特に、銀又は銀含有合金をベースとする単一の金属機能層(140)及び2つの誘電膜(120,160)を含み、前記誘電膜は各々少なくとも1つの誘電層(122,126;162,166)を含み、前記機能層(140)は前記2つの誘電膜(120,160)の間に配置されている多重グレージング(100)において、
前記2つの誘電膜(120,160)は各々、該誘電膜中の2つの誘電層(122,126;162,166)の間に配置された少なくとも1つの吸収層(123,165)を含み、前記吸収層(123,165)の吸収性材料は前記金属機能層(140)の両側に対称的に配置されていることを特徴とする、多重グレージング(100)。
【請求項2】
フレーム構造(90)により一緒に保持されている少なくとも3つの基材(10,20,30)を含む多重グレージング(100)であり、前記グレージングは外側空間(ES)及び内側空間(IS)の間を分離しており、2つの基材の間に各々少なくとも2つのガス充填キャビティー(15,25)があり、1つの基材(10,30)は前記ガス充填キャビティー(15,25)に接触している内面(11,29)上にて、赤外線及び/又は太陽放射に反射特性を有する薄膜多層コーティング(14,26)によって被覆されており、前記コーティングは単一の金属機能層(140)、特に、銀又は銀含有合金をベースとする単一の金属機能層(140)及び2つの誘電膜(120,160)を含み、前記誘電膜は各々少なくとも1つの誘電層(122,126;162,166)を含み、前記機能層(140)は前記2つの誘電膜(120,160)の間に配置されている多重グレージング(100)において、
前記2つの誘電膜(120,160)は各々、該誘電膜中の2つの誘電層(122,126;162,166)の間に配置された少なくとも1つの吸収層(123,165)を含み、前記吸収層(123,165)の吸収性材料は前記金属機能層(140)の両側に対称的に配置されていることを特徴とする、多重グレージング(100)。
【請求項3】
少なくとも1つの基材(10,20,30)が、ガス充填キャビティー(15,25)と接触している少なくとも1つの面(11,19,21,29)上に反射防止膜(18,22)を有し、該反射防止膜が、前記ガス充填キャビティー(15,25)に対して、赤外線及び/又は太陽放射に反射特性を有する薄膜多層コーティング(14,26)とは反対側にあることを特徴とする、請求項1又は2記載の多重グレージング(100)。
【請求項4】
少なくとも1つの吸収層(123,165)、好ましくはすべての吸収層が、窒化物をベースとしており、特に、窒化ニオブNbNをベースとするか又は窒化チタンTiNをベースとしていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多重グレージング(100)。
【請求項5】
前記吸収層(123,165)の吸収性材料が、合計厚さが0.5〜10nm(これらの値を含む)であり、又は、さらには2〜8nm(これらの値を含む)であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多重グレージング(100)。
【請求項6】
下部誘電膜(120)及び上部誘電膜(160)が各々、窒化ケイ素をベースとし、場合により、アルミニウムなどの少なくとも1つの他の元素によりドーピングされている少なくとも1つの誘電層(122,166)を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多重グレージング(100)。
【請求項7】
各吸収層(123,165)が、誘電膜中の2つの誘電層(122,124;164,166)の間に配置されており、該誘電層が両方とも窒化ケイ素をベースとし、場合により、アルミニウムなどの少なくとも1つの他の元素によりドーピングされていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多重グレージング(100)。
【請求項8】
前記機能層(140)が、該機能層(140)と、該機能層の下方にある誘電膜(120)との間に配置されたアンダーブロッカー膜(130)上に直接的に配置されており、及び/又は、前記機能層(140)が、該機能層(140)と、該機能層の上方にある誘電膜(160)との間に配置されたオーバーブロッカー膜(150)の下に直接的に堆積されており、かつ、前記アンダーブロッカー膜(130)及び/又はオーバーブロッカー膜(150)が、物理的厚さe’が0.2nm≦e’≦2.5nmであるニッケル又はチタンをベースとする薄層を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多重グレージング(100)。
【請求項9】
前記基材から最も遠くに離れている、前記上部誘電膜(160)の最終層又はオーバーコート(168)が、酸化物をベースとし、好ましくは化学量論未満で堆積された酸化物をベースとし、特に、チタン酸化物(TiOx)をベースとするか又は混合スズ亜鉛酸化物(SnZnOx)をベースとすることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多重グレージング(100)。
【請求項10】
フレーム構造(90)により一緒に保持されている少なくとも2つの基材(10,30)を含み、2つの基材の間にガス充填キャビティー(15)がある、請求項1〜9のいずれか一項に記載の多重グレージング(100)を製造するための薄膜多層コーティング(14,26)の使用であって、前記薄膜多層コーティング(14,26)が赤外線及び/又は太陽放射に反射特性を有し、単一の金属機能層(140)、特に、銀又は銀含有合金をベースとする単一の金属機能層(140)及び2つの誘電膜(120,160)を含み、前記誘電膜が各々、少なくとも1つの誘電層(122,126;164,168)を含み、前記機能層(140)が、前記2つの誘電膜(120,160)の間に配置されており、前記薄膜多層コーティング(14,26)が、少なくとも1つの基材(10,30)の内面(11,29)上に配置される、薄膜多層コーティング(14,26)の使用。
【請求項11】
フレーム構造(90)により一緒に保持されている少なくとも2つの基材(10,30)を含む多重グレージング(100)であり、前記グレージングは外側空間(ES)及び内側空間(IS)の間を分離しており、2つの基材の間に少なくとも1つのガス充填キャビティー(15)があり、1つの基材(10,30)は前記ガス充填キャビティー(15)に接触している内面(11,29)上にて、赤外線及び/又は太陽放射に反射特性を有する薄膜多層コーティング(14,26)によって被覆されており、前記コーティングは単一の金属機能層(140)、特に、銀又は銀含有合金をベースとする単一の金属機能層(140)及び2つの誘電膜(120,160)を含み、前記誘電膜は各々、少なくとも1つの誘電層(122,126;164,168)を含み、前記機能層(140)は前記2つの誘電膜(120,160)の間に配置されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の多重グレージング(100)の製造方法であって、
前記2つの誘電膜(120,160)が各々、該誘電膜中の2つの誘電層(122,126;162,166)の間に配置された少なくとも1つの吸収層(123,165)を含み、前記吸収層(123,165)の吸収性材料を前記金属機能層(140)の両側に対称的に配置させることを特徴とする、多重グレージング(100)の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−513323(P2012−513323A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542879(P2011−542879)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052664
【国際公開番号】WO2010/072974
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】