熱画像撮影システム及び熱画像撮影装置
【課題】発熱体の移動方向を確実に検出し、自動的に撮影のための信号を生成する熱画像撮影システム及び熱画像撮影装置を提供する。
【解決手段】熱画像撮影装置が撮影する温度データ(熱画像データ)に、予め所定の領域(枠)を設定しておき、その領域に被写体が収まったことを検出し、検出信号を出力する。被写体の移動を検出するために、異なる領域を二つ設定する。この、二つの検出信号が所定の時間内に発生したことを検出することで、被写体の移動方向を認識し、トリガ信号を発生する。
【解決手段】熱画像撮影装置が撮影する温度データ(熱画像データ)に、予め所定の領域(枠)を設定しておき、その領域に被写体が収まったことを検出し、検出信号を出力する。被写体の移動を検出するために、異なる領域を二つ設定する。この、二つの検出信号が所定の時間内に発生したことを検出することで、被写体の移動方向を認識し、トリガ信号を発生する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱画像撮影システム及び熱画像撮影装置に適用して好適な技術に関する。
より詳細には、移動する発熱体の移動方向を正しく検出して自動的に熱画像の撮影を行い、発熱体の温度異常状態の監視等を行うためのシステム及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所では、レールにぶら下げられた取鍋に、溶融した鉄を充填して運ぶ。
周知のように、鉄の融点は1535℃と、極めて高い。このため、取鍋は断熱効果を有するコンクリートを内側に配し、外側を鋼鉄で構成している。しかし、溶融した鉄の熱によってコンクリートの内鍋は徐々に溶かされ、削れていく。すると、溶融した鉄は鋼鉄の外鍋に接触してしまう。こうなると、溶融した鉄と同じ材質の外鍋は短時間で溶かされてしまい、最悪の場合、取鍋から溶融した鉄が漏れ出てしまう。
【0003】
コンクリートの内鍋の削れ具合は、取鍋の表面温度から推測することができる。
内鍋が溶融した鉄によって徐々に溶かされていくと、内鍋の肉厚は薄くなっていく。すると、溶融した鉄の熱が外鍋に伝達し易くなる。したがって、取鍋の表面温度を監視すれば、取鍋の異常状態の早期発見に寄与する。
そこで、本出願人が開発し、製造販売する、熱画像撮影装置が役立つ。
極めて高温で危険な取鍋の熱画像を、遠隔位置から撮影することで、取鍋の表面温度を監視することができる。
なお、特許文献1に、出願人の熱画像撮影装置に関する文献を示す。
【特許文献1】特開2004−257769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レール上を移動する取鍋は、レール上を往復移動する。溶融した鉄を満たして、所定の場所に溶融した鉄を注ぎ込む。そして、再度溶融した鉄を取りに戻るべく、空の取鍋は逆方向に移動する。したがって、取鍋の表面温度の測定は、溶融した鉄を満たした状態での測定でなければならない。
熱画像撮影装置が熱画像を撮影し、熱画像データを取得する作業は、取鍋が溶融した鉄を満たした状態での、順方向の移動の途中で行わなければならない。
【0005】
ここで、熱画像撮影装置に与える撮影タイミングをどのようにして自動的に生成するのか、という問題が生じる。取鍋の移動方向と位置を検出するための専用センサを設けるのは、システム構築のコストを上昇させてしまう。また、熱画像撮影装置自身の被写体検出機能だけでは、取鍋の移動方向を検出できないので、空の取鍋が逆方向に移動している状態でも、空の取鍋自体が未だ溶融した鉄によって熱せられているため、撮影してしまう。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、発熱体の移動方向を確実に検出し、自動的に撮影のための信号を生成する熱画像撮影システム及び熱画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明による熱画像撮影システムは、移動する発熱体を撮影する第一の熱画像撮影装置と、前記第一の熱画像撮影装置と等しい構成を有し、移動する前記発熱体を撮影する第二の熱画像撮影装置と、前記第一の熱画像撮影装置及び前記第二の熱画像撮影装置と接続される制御コンピュータとよりなる熱画像撮影システムであって、前記第一及び第二の熱画像撮影装置は、発熱体が発する赤外線の強度をドット毎に計測してドット毎の信号を出力する赤外線検出器と、前記赤外線検出器が出力する前記ドット毎の信号をデジタル値に変換するA/D変換器と、前記デジタル値をドット毎の二次元温度データに変換する温度変換部と、前記二次元温度データを保存する温度データ一時メモリと、前記温度データ一時メモリに保存されている前記二次元温度データから所定領域の部分を抽出する領域抽出部と、前記領域抽出部が出力する部分温度データに演算処理を行った後に所定の閾値と比較して前記発熱体の存在の有無を判定する発熱体検出部と、前記発熱体検出部が前記発熱体を検出した結果のトリガ信号を外部に送信する第一通信部とを具備し、前記制御コンピュータは、前記第一通信部と通信を行う第二通信部と、前記第一の熱画像撮影装置の前記発熱体検出部から前記第二通信部を通じて得られる第一トリガ信号を受けて起動するタイマと、前記タイマが計測する時間が所定の規定時間を越えたか否かを判定する比較器と、前記タイマが計測する時間が所定の規定時間を越えていないことを比較器が判定している時に前記第二の熱画像撮影装置の前記発熱体検出部から前記第二通信部を通じて得られる第二トリガ信号が来たことを検出するゲートと、前記ゲートが発する検出信号を受けて前記第一の熱画像撮影装置から前記二次元温度データをダウンロードする温度データ受信部とを具備することを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の熱画像撮影装置は、発熱体が発する赤外線の強度をドット毎に計測して前記ドット毎の信号を出力する赤外線検出器と、前記赤外線検出器が出力する前記ドット毎の信号をデジタル値に変換するA/D変換器と、前記デジタル値を前記ドット毎の二次元温度データに変換する温度変換部と、前記二次元温度データを保存する温度データ一時メモリと、前記温度データ一時メモリに保存されている前記二次元温度データから第一の所定領域の部分を抽出する第一領域抽出部と、前記領域抽出部が出力する第一の部分温度データに演算処理を行った後に所定の第一閾値と比較して前記発熱体の存在の有無を判定する第一発熱体検出部と、前記温度データ一時メモリに保存されている前記二次元温度データから第二の所定領域の部分を抽出する第二領域抽出部と、前記領域抽出部が出力する第二の部分温度データに演算処理を行った後に所定の第二閾値と比較して前記発熱体の存在の有無を判定する第二発熱体検出部と、前記第一発熱体検出部から得られる第一トリガ信号を受けて起動するタイマと、前記タイマが計測する時間が所定の規定時間を越えたか否かを判定する第一比較器と、前記タイマが計測する時間が所定の規定時間を越えていないことを前記第一比較器が判定している時に前記第二領域抽出部から得られる第二トリガ信号が来たことを検出するゲートと、前記ゲートが発するトリガ信号を外部に送信する通信部とを具備することを特徴とする。
【0009】
熱画像撮影装置が撮影する温度データ(熱画像データ)に、予め所定の領域(枠)を設定しておき、その領域に被写体が収まったことを検出し、検出信号を出力する。被写体の移動を検出するために、異なる領域を二つ設定する。
この、二つの検出信号が所定の時間内に発生したことを検出することで、被写体の移動方向を認識し、トリガ信号を発生する。
専用のセンサを設けることなく、熱画像撮影装置自身の機能をセンサとして流用することで、システム構築が容易になると共に、システム構築にかかるコストを削減できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、発熱体の移動方向を確実に検出し、自動的に撮影のための信号を生成する熱画像撮影システム及び熱画像撮影装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図12を参照して説明する。
【0012】
[第一の実施形態]
図1は、本発明の第一の実施形態の例である、温度異常監視システムの概略図である。
温度異常監視システム101は、熱画像撮影システムを利用して実現するシステムである。熱画像を撮影し、得られた温度データから温度異常状態の検出を行う。
製鉄業を営む甲製鉄所では、レール102にぶら下げられた取鍋103に、溶融した鉄を充填して運ぶ。
取鍋103の運搬経路上には、やや離れた位置に、取鍋103を撮影するための第一カメラ104、第二カメラ105、第三カメラ106及び第四カメラ107が設置されている。
第一カメラ104、第二カメラ105、第三カメラ106及び第四カメラ107は、熱画像撮影装置である。熱画像撮影装置にとって、取鍋103は被写体であり、赤外線を放射する発熱体である。
これら第一カメラ104、第二カメラ105、第三カメラ106及び第四カメラ107は、LAN108によって遠隔地にある制御コンピュータ109に接続されている。
【0013】
周知のように、鉄の融点は1535℃と、極めて高い。このため、取鍋103は断熱効果を有するコンクリートを内側に配し、外側を鋼鉄で構成している。しかし、溶融した鉄の熱によってコンクリートの内鍋は徐々に溶かされ、削れていく。すると、溶融した鉄は鋼鉄の外鍋に接触してしまう。こうなると、溶融した鉄と同じ材質の外鍋は短時間で溶かされてしまい、最悪の場合、取鍋103から溶融した鉄が漏れ出てしまう。
【0014】
コンクリートの内鍋の削れ具合は、取鍋103の表面温度から推測することができる。
内鍋が溶融した鉄によって徐々に溶かされていくと、内鍋の肉厚は薄くなっていく。すると、溶融した鉄の熱が外鍋に伝達し易くなる。したがって、取鍋103の表面温度を監視すれば、取鍋103の異常状態の早期発見に寄与する。
【0015】
ところで、レール102上を移動する取鍋103は、レール102上を往復移動する。溶融した鉄を満たして、所定の場所に溶融した鉄を注ぎ込む。そして、再度溶融した鉄を取りに戻るべく、空の取鍋103は逆方向に移動する。このため、取鍋103の表面温度の測定は、溶融した鉄を満たした状態での測定でなければならない。
図1では、実線矢印で示す、図1の左側から右側への進行方向が、溶融した鉄を満たした状態での移動方向に該当する。
制御コンピュータ109は、LAN108上の第一カメラ104が取鍋103を捉えた後、第二カメラ105が取鍋103を捉えたことを検出すると、第一カメラ104、第二カメラ105、第三カメラ106及び第四カメラ107から、熱画像データのダウンロードを行う。この制御コンピュータ109は工業用途に調製されたコンピュータであり、実質的にはパソコンと殆ど変わらない。
【0016】
図2は、熱画像撮影装置の機能ブロック図である。図1の第一カメラ104、第二カメラ105、第三カメラ106及び第四カメラ107がこれに該当する。
レンズ202で焦点を合わせ込んだ赤外線は、赤外線検出器203によってアナログ電気信号に変換される。赤外線検出器203は、例えばCCDカメラ等のような、ドット毎に赤外線の強度を検出するマトリクスセンサである。
赤外線検出器203から出力されるアナログ電気信号は、増幅器204によって増幅され、A/D変換器205でデジタル値に変換された後、温度変換部206にて温度データに変換される。温度データは、温度データ記憶部207に記憶される。温度データ記憶部207は、ビデオカメラのフレームメモリに相当するもので、一画面分の温度データを保持する。赤外線検出器203から得られる電気信号から温度変換部206による温度データ変換処理は、所定の時間間隔にて定期的に行われる。このため、温度データ記憶部207には最新の温度データが記憶されている。
ここで、温度データ記憶部207に記憶されている温度データは、厳密には温度データ「群」であり、温度を示すドットの集合体である。言い換えれば、二次元である白黒画像データの、各ドットが温度を表しているものであり、「二次元温度データ」ともいえる。
【0017】
温度データ記憶部207の中の温度データは、スイッチ208を介して温度データ一時メモリ209に保存される。温度データ一時メモリ209は、通信部210を介して温度データ送信部211が温度データ一時メモリ209の中の温度データを制御コンピュータ109に送信する際に、送信途中で温度データが温度変換部206によって書き換えられてしまわないように、スイッチ208と共に設けられている。つまり、制御コンピュータ109の要求に応じて温度データを制御コンピュータ109へ送信する際には、スイッチ208は温度データ送信部211によってオフ制御される。
【0018】
温度データ一時メモリ209内の温度データは、領域抽出部212によってその一部が取り出される。領域抽出部212は、領域設定データ格納部213に記述されているXY座標、横幅そして高さに基づいて、温度データ一時メモリ209内の温度データの一部領域を取り出す。
【0019】
ここで、一旦領域抽出部212と領域設定データ格納部213の動作を、図3を用いて説明する。
図3は、領域抽出部212と領域設定データ格納部213の動作を模式的に示す図である。
温度データ一時メモリ209に格納されている温度データ302は、丁度白黒画像データのように、発熱体である取鍋103の赤外線画像、つまり熱画像を撮影した結果である。
領域設定データ格納部213に格納されている領域設定データ303は、この温度データ302に対して設定される、四角形の枠である。領域抽出部212は、温度データ一時メモリ209から、この枠に囲まれた温度データのドットを取り出すのである。領域設定データ格納部213に記憶されているデータは、その枠の左上の角の座標を示す「XY座標」、枠の「横幅」そして「高さ」である。つまり、これらのデータが、フラッシュメモリ等の図示しない不揮発性ストレージに記憶されている。
不揮発性ストレージには、枠の位置と大きさを示す領域設定データ以外に、枠の中の温度データの比較演算のための値である、基準温度及び占有率も記憶されている。これらについては後述する。
【0020】
再び図2に戻って説明する。
領域抽出部212から取り出された、枠に含まれる温度データは、温度データ弁別部214に与えられる。温度データ弁別部214は、枠の中の各ドットの温度と、基準温度格納部215とを比較して、二値化する。枠の中の各ドットの温度が基準温度格納部215よりも高ければ「1(論理の「真」)」に、低ければ「0(論理の「偽」)」に変換する。
二値化された枠のデータは、比較器216に与えられる。比較器216は、占有率格納部217と比較して、全体のドットの数の内、「1」が占める率が高いか否かを比較し、高ければ「真」を出力する。これが、この熱画像撮影装置201におけるトリガ信号となって、通信部210を介して制御コンピュータ109に出力される。
【0021】
通信部210は、一般的なTCP/IPプロトコルスタックである。前述のトリガ信号を制御コンピュータ109に出力し、制御コンピュータ109から発される温度データ送信要求を受け取り、温度データ送信部211が温度データ一時メモリ209中の温度データを制御コンピュータ109に出力する。
以上に記した動作を実現するため、トランスポート層のプロトコルは特に特定されるものではない。制御信号の送受信は、いわゆるパソコン通信のような無手順プロトコルを用いても良いし、TELNET或はSSHを用いても良い。温度データの転送も、無手順プロトコルであればUUENCODE/UUDECODEのバイナリテキスト変換プログラムや、ZMODEM等のバイナリ転送プロトコルを採用しても良いし、コマンド及びメッセージの送受信にTELNET或はSSHを採用する場合は、FTP、HTTP或はSCP等を用いても良い。
なお、LAN108上に配置される、温度異常監視システム101を構成する各カメラと制御コンピュータ109には、通信する相手を特定するため、固定のプライベートIPアドレスが割り振られている。
【0022】
図1の第一カメラ104、第二カメラ105、第三カメラ106及び第四カメラ107は、全て同じ、図2に詳述した熱画像撮影装置201であるが、第三カメラ106及び第四カメラ107では、領域抽出部212、領域設定データ格納部213、温度データ弁別部214、基準温度格納部215、比較器216及び占有率格納部217は、機能しない。このため、第三カメラ106及び第四カメラ107の領域設定データ格納部213には、何の値も記憶されず、領域抽出部212が機能しないように設定されている。
領域抽出部212、領域設定データ格納部213、温度データ弁別部214、基準温度格納部215、比較器216及び占有率格納部217は、第一カメラ104及び第二カメラ105でのみ機能する。
【0023】
第一カメラ104及び第二カメラ105に領域設定データ格納部213、基準温度格納部215及び占有率格納部217を設定するために、予め製造ラインの運用前に、制御コンピュータ109からこれらの適切な設定値を各カメラに送信する。第一カメラ104及び第二カメラ105はそれら設定値を通信部210を介して受信して、不揮発性ストレージに記憶する。
製造ラインに設置された第一カメラ104及び第二カメラ105は、その場で設定値を入力するのは煩雑であると共に危険であるので、ユーザインターフェースを遠隔地にある制御コンピュータで実現する。
【0024】
図4(a)、(b)及び(c)は、温度データ弁別部214と比較器216の動作を模式的に示す図である。
図4(a)は、領域設定データ格納部213にて設定される領域を模式的に示す図である。
領域設定データ303に含まれるドット403は、その一つ一つが温度を表している。これら温度のデータを、基準温度格納部215と比較する。図4では、仮に基準温度格納部215が650℃であるものとしている。
図4(b)は、領域設定データ303の一部を仮想的に拡大して示す図である。
図4(c)は、図4(b)のドット403を温度データ弁別部214にて変換した状態を示す図である。
図4(b)に示すように、取鍋103の表面は、例えば700℃以上と、大変高温になっている。このため、温度データ弁別部214にて基準温度格納部215と比較した結果、それらドット403は図4(c)に示すように、「1」に変換される。一方、取鍋103から離れた空間の部分は、取鍋103から発せられる放射熱の影響があるものの、極端に温度は低くなる。したがって、基準温度格納部215と比較した結果、それらドット403は「0」に変換される。最終的には、領域設定データ303の中の「1」のドット403の数を、領域設定データ303の中の全てのドット403の数で割って、領域設定データ303の中の「1」の率を算出する。これを比較器216が占有率格納部217と比較して、トリガ信号を出力するか否かを決定する。
【0025】
図4にて説明したように、温度データ弁別部214、基準温度格納部215、比較器216及び占有率格納部217は、領域抽出部212によって特定された温度データに対し、所定の演算処理を行い、その結果、発熱体の存在の有無を判断する。つまり、領域内の発熱体の存在の有無を検出する発熱体検出部としての機能をもたらす。
【0026】
図5は、制御コンピュータ109の機能ブロック図である。
通信部502は、熱画像撮影装置201のものと同じTCP/IPプロトコルスタックである。
通信部502から得られる第一カメラ104のトリガ信号は、タイマ503に起動信号として供給される。
タイマ503の計時データは比較器504のプラス側端子に入力される。比較器504のマイナス側端子には、規定時間データ格納部505に格納されている規定時間データが与えられる。つまり、タイマ503が閾値である規定時間を越えると、比較器504が「1」(論理の「真」)を出力する。この「1」の出力は、ORゲート506を介してタイマ503自身のリセット及び停止信号として入力される。
【0027】
一方、通信部502から得られる第二カメラ105のトリガ信号は、ANDゲート507に入力される。ANDゲート507のもう一方の入力端子には、比較器504の出力がNOTゲート508を通じて入力される。つまり、タイマ503が規定時間データ格納部505に格納されている規定時間以内のときに第二カメラ105のトリガ信号が来ると、ANDゲート507は「1」を出力する。この「1」の出力は、ORゲート506を介してタイマ503自身のリセット及び停止信号として入力されると共に、温度データ受信部509と表示制御部510に供給される。
【0028】
ANDゲート507が「1」を出力すると、その信号は温度データ受信部509の起動パルスとして供給される。温度データ受信部509は第一カメラ104、第二カメラ105、第三カメラ106及び第四カメラ107から温度データのダウンロードを行う。ダウンロードした各カメラの温度データは、ハードディスク等の不揮発性ストレージ511に記憶されると共に、温度検査部512によって詳細な検査が行われる。温度検査部512の検査結果は、表示制御部510を通じてディスプレイよりなる表示部513に表示される。
一方、ANDゲート507の「1」を示す出力信号は、表示制御部510にも与えられ、表示部513に「撮影中」等のメッセージを表示する。
【0029】
温度検査部512は、被写体である取鍋103の表面温度を、より精緻に検査する。単に発熱体の存在の有無を検出する、熱画像撮影装置201の発熱体検出部とは異なり、取鍋103の表面温度が異常な高温に達しているか否かを判定する。判定の結果、異常高温状態にあると判定したら、表示制御部510を通じて表示部513に警告メッセージを出力する。
【0030】
なお、図5の制御コンピュータ109の各機能ブロック、特にORゲート506、ANDゲート507、NOTゲート508は、プログラムにて実現されているものである。勿論、ハードウェアで実装しても全く等価な作用効果を奏する。
【0031】
図6(a)、(b)及び(c)は、第一カメラ104と第二カメラ105の温度データと、タイマ503と比較器504の動作との関係を模式的に示す図である。
図6(a)は、図1のレール102を真上から見た図である。横の線はレール102である。レール102上を、取鍋103が時点t1、t2そしてt3と移動する。この様子を、第一カメラ104と第二カメラ105は、レール102から離れた地点から、夫々斜めに撮影するべく設置されている。
第一カメラ104から出ている二本の斜めの線は、第一カメラ104の視野角604である。第一カメラ104は、視野角604の範囲の被写体を撮影可能である。
第二カメラ105から出ている二本の斜めの線は、第二カメラ105の視野角605である。第二カメラ105は、視野角605の範囲の被写体を撮影可能である。
【0032】
図6(b)は、第一カメラ104の温度データ記憶部207に記録された温度データを模式的に示す図である。いわば、第一カメラ104から、視野角604の範囲内で見える赤外線画像である。
温度データ602aは、t1時点における、第一カメラ104の温度データ記憶部207に記録された温度データである。
温度データ602bは、t2時点における、第一カメラ104の温度データ記憶部207に記録された温度データである。
温度データ602cは、t3時点における、第一カメラ104の温度データ記憶部207に記録された温度データである。
第一カメラ104は取鍋103の進行方向に対して逆らうように設置されている。したがって、t1時点で既に取鍋103をその視界の中に捉えている。この様子が、温度データ602aである。
t2時点では、温度データ602bに示されるように、取鍋103全体が視界の中に納まっている。そして、t3時点では、温度データ602cに示されるように、取鍋103は視界から外れている。
【0033】
図6(c)は、第二カメラ105の温度データ記憶部207に記録された温度データを模式的に示す図である。いわば、第二カメラ105から、視野角605の範囲内で見える赤外線画像である。
温度データ603aは、t1時点における、第二カメラ105の温度データ記憶部207に記録された温度データである。
温度データ603bは、t2時点における、第二カメラ105の温度データ記憶部207に記録された温度データである。
温度データ603cは、t3時点における、第二カメラ105の温度データ記憶部207に記録された温度データである。
第二カメラ105は取鍋103の進行方向に沿うように設置されている。したがって、t1時点では温度データ603aに示されるように、取鍋103は視界から外れている。
t2時点では、温度データ603bに示されるように、取鍋103全体が視界の中に納まっている。そして、t3時点でも、温度データ603cに示されるように、取鍋103の一部がまだその視界の中に残っている。
【0034】
図6(b)及び(c)より、t1時点では、第一カメラ104は取鍋103を捕捉できているものの、第二カメラ105は取鍋103が視界から外れている。そして、第二カメラ105はt2時点でようやく取鍋103の捕捉に成功する。この時間差を利用して、取鍋103の移動方向を検出する。
【0035】
図7は、制御コンピュータ109の動作の流れを示すフローチャートである。
処理を開始すると(ステップS701)、通信部502は第一カメラ104のトリガ信号が来たか否か、確認する(ステップS702)。第一カメラ104のトリガ信号が来たなら(ステップS702のY)、通信部502はタイマ503に第一カメラ104のトリガ信号を渡す。タイマ503はこれに呼応して始動し(ステップS703)、一旦処理を終了する(ステップS704)。なお、本フローチャートは無限ループであるため、再びステップS701から処理が開始される。
【0036】
通信部502は第一カメラ104のトリガ信号が来ていないと認識したら(ステップS702のN)、次に第二カメラ105のトリガ信号が来たか否か、確認する(ステップS705)。
第二カメラ105のトリガ信号が来たなら(ステップS705のY)、通信部502はANDゲート507に第二カメラ105のトリガ信号を渡す。ANDゲート507は、NOTゲート508から来る、タイマ503が規定時間以内であることを示す信号を受けて、トリガ信号を出力する(ステップS706)。そして、このトリガ信号はタイマ503に対して、停止及びリセット信号として供給され、タイマ503はこれに呼応して停止し(ステップS707)、一旦処理を終了する(ステップS704)。
【0037】
第二カメラ105のトリガ信号が来ていない場合(ステップS705のN)、比較器504はタイマ503が規定時間データ格納部505に格納されている規定時間を越えた時間を示しているか否か、確認する(ステップS708)。もし規定時間を越えていれば(ステップS708のY)、比較器504は「1」を出力する。タイマ503はこれに呼応して停止し(ステップS707)、一旦処理を終了する(ステップS704)。
ステップS708で、タイマ503が規定時間を越えていなければ(ステップS708のN)、何もせずに一旦処理を終了する(ステップS704)。
ここで、ステップS705で第二カメラ105のトリガ信号を受信する時は、タイマ503が規定時間を越えていないことがステップS708にて保障される。したがって、ステップS705がYの時に、タイマ503が規定時間データ格納部505に格納されている規定時間を超えているか否かを確認する必要はない。
【0038】
以上より、本実施形態の温度異常監視システム101は、第一カメラ104が予め設定された領域内に取鍋103の存在を検出してから、規定時間データ格納部505に格納されている規定時間を経過する迄に第二カメラ105が取鍋103の存在を検出すると、制御コンピュータ109は、取鍋103が順方向に移動したことを検出する。そして、この検出結果に呼応して、第一カメラ104乃至第四カメラ107から、温度データのダウンロードを開始する。
もし、取鍋103が逆方向に移動する場合、第一カメラ104が取鍋103の存在を検出しても、その後第二カメラ105は取鍋103の存在を検出できないので、タイマ503は規定時間を過ぎてしまう。このため、取鍋103の逆方向の移動に対しては、制御コンピュータ109は誤った温度データのダウンロードを行わずに済む。
【0039】
[第二の実施形態]
図8は、本発明の第二の実施形態の例である、温度異常監視システムの概略図である。なお、図8の、図1と異なる部分以外の説明は省略する。
温度異常監視システム801は、熱画像撮影システムを利用して実現するシステムである。熱画像を撮影し、得られた温度データから温度異常状態の検出を行う。
図8では、図1の第一カメラ104及び第二カメラ105の代わりに、第五カメラ802が設けられている。第五カメラ802は取鍋103の進行方向に対してほぼ直角の位置に設置されている。
【0040】
図9は、熱画像撮影装置の機能ブロック図である。第五カメラ802の内部の機能に該当する。なお、図9の、図2と異なる部分以外の説明は省略する。
図9の熱画像撮影装置901は、図2の熱画像撮影装置201の領域検出機能を二つ分包含し、更に図5の制御コンピュータ109の機能の一部も包含したものである。
【0041】
ここで、図9の熱画像撮影装置901の各機能ブロックの説明に入る前に、熱画像撮影装置901の動作の概要を説明する。
図10は、図9の熱画像撮影装置901の第一領域と第二領域を模式的に示す図である。
図9の熱画像撮影装置901は、図2の熱画像撮影装置201とは異なり、一つの温度データについて、二つの領域を設定する。これが、第一領域1002と第二領域1003である。夫々の領域は、必ずしも同じ大きさでなくても良いが、必ず異なる位置に配置されていなければならない。つまり、取鍋103の移動を正しく検出できる必要がある。
【0042】
図9に戻って、各機能ブロックを説明する。
図10にて説明したように、第一領域抽出部902と、第二領域抽出部903は、温度データ一時メモリ209から、異なる領域のドットを抜き出す。つまり、第一領域抽出部902と第二領域抽出部903は、機能は全く同じであるものの、第一領域設定データ格納部904と第二領域設定データ格納部905には異なる領域を指定するデータが記憶されている。
第一温度データ弁別部906と第二温度データ弁別部907は、図2の温度データ弁別部214と機能は全く変わらない。第一基準温度格納部908と第二基準温度格納部909は、図2の基準温度格納部215と同じものである。第一基準温度格納部908と第二基準温度格納部909は同じであっても良いし、異なる温度であっても良い。
比較器910と比較器911は、図2の比較器216と機能は全く変わらない。第一占有率格納部912と第二占有率格納部913は、図2の占有率格納部217と同じものである。第一占有率格納部912と第二占有率格納部913は同じであっても良いし、異なる率であっても良い。
【0043】
比較器910の出力は、タイマ503に起動信号として供給される。
タイマ503の計時データは比較器504のプラス側端子に入力される。比較器504のマイナス側端子には規定時間データ格納部505に格納されている規定時間データが与えられる。つまり、タイマ503が規定時間データ格納部505に格納されている規定時間を越えると、比較器504が「1」を出力する。この「1」の出力は、ORゲート506を介してタイマ503自身のリセット及び停止信号として入力される。
【0044】
一方、比較器911の出力は、ANDゲート507に入力される。ANDゲート507のもう一方の入力端子には、比較器504の出力がNOTゲート508を通じて入力される。つまり、タイマ503が規定時間データ格納部505に格納されている規定時間以内のときに比較器504の出力信号が来ると、ANDゲート507は「1」を出力する。この「1」の出力は、ORゲート506を介してタイマ503自身のリセット及び停止信号として入力されると共に、通信部914を通じて制御コンピュータ109にトリガ信号として出力される。
【0045】
以上、タイマ503、規定時間データ格納部505、比較器504、ORゲート506、NOTゲート508、ANDゲート507は、図5の制御コンピュータ109のものと全く同じである。
【0046】
図11は、制御コンピュータ809の機能ブロック図である。
図5の制御コンピュータ109と違う点は、タイマ503、規定時間データ格納部505、比較器504、ORゲート506、NOTゲート508、ANDゲート507がない点である。これらは熱画像撮影装置901側に取り込まれたので、制御コンピュータ809は単にトリガ信号を受けて温度データのダウンロードを行うだけの、簡素な構成となっている。
【0047】
図12は、熱画像撮影装置901の動作の流れを示すフローチャートである。
処理を開始すると(ステップS1201)、第一温度データ弁別部906と比較器910は第一領域1002のチェックを行う(ステップS1202)。比較器910による第一占有率格納部912に格納されている第一占有率との比較の結果、第一領域1002の「1」の割合が第一占有率を越えたなら(ステップS1203のY)、比較器910の出力が真になる。タイマ503はこれに呼応して始動し(ステップS1204)、一旦処理を終了する(ステップS1205)。なお、本フローチャートは無限ループであるため、再びステップS1201から処理が開始される。
【0048】
第一領域1002の「1」の割合が第一占有率を越えていない場合(ステップS1203のN)、第二温度データ弁別部と比較器911は第二領域1003のチェックを行う(ステップS1206)。比較器911による第二占有率格納部913に格納されている第二占有率との比較の結果、第二領域1003の「1」の割合が第二占有率を越えたなら(ステップS1207のY)、比較器504の出力が真になる。ANDゲート507は、この比較器504の出力と、NOTゲート508から来る、タイマ503が規定時間データ格納部505に格納されている規定時間以内であることを示す信号を受けて、「1」を出力する(ステップS1208)。そして、この「1」の信号はタイマ503に対して、停止及びリセット信号として供給され、タイマ503はこれに呼応して停止し(ステップS1209)、一旦処理を終了する(ステップS1205)。
【0049】
第二領域1003の「1」の割合が第二占有率を越えていない場合(ステップS1207のN)、比較器504はタイマ503が規定時間データ格納部505に格納されている規定時間を越えた時間を示しているか否か、確認する(ステップS1210)。もし規定時間を越えていれば(ステップS1210のY)、比較器504は「1」を出力する。タイマ503はこれに呼応して停止し(ステップS1209)、一旦処理を終了する(ステップS1205)。
ステップS1210で、タイマ503が規定時間を越えていなければ(ステップS1210のN)、何もせずに一旦処理を終了する(ステップS1205)。
ここで、ステップS1207で第二領域1003が閾値を越えた時は、タイマ503が規定時間を越えていないことがステップS1210にて保障される。したがって、ステップS1207がYの時に、タイマ503が規定時間を超えているか否かを確認する必要はない。
【0050】
本実施形態には、以下のような応用例が考えられる。
(1)第一及び第二の実施形態では、領域内の被写体の検出に、領域内の温度データを温度の閾値で二値化した後、「1」を示すドットの占有率で判断した。
この算出方法に代えて、全領域内の温度データの平均を算出した後、その平均温度を温度の閾値で判定する、という方法でもよい。
【0051】
以上に記した、第一及び第二の実施形態では、熱画像撮影システムを内包する温度異常監視システムを開示した。
熱画像撮影装置が撮影する温度データ(熱画像データ)に、予め所定の領域(枠)を設定しておき、その領域に被写体が収まったことを検出し、検出信号を出力する。被写体の移動を検出するために、異なる領域を二つ設定する。
この、二つの検出信号が所定の時間内に発生したことを検出することで、被写体の移動方向を認識し、トリガ信号を発生する。
専用のセンサを設けることなく、熱画像撮影装置自身の機能をセンサとして流用することで、システム構築が容易になると共に、システム構築にかかるコストを削減できる。
【0052】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含むことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第一の実施形態の例である、温度異常監視システムの概略図である。
【図2】熱画像撮影装置の機能ブロック図である。
【図3】領域抽出部と領域設定データの動作を模式的に示す図である。
【図4】温度データ弁別部と比較器の動作を模式的に示す図である。
【図5】制御コンピュータの機能ブロック図である。
【図6】第一カメラと第二カメラの温度データと、タイマと比較器の動作との関係を模式的に示す図である。
【図7】制御コンピュータの動作の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の第二の実施形態の例である、温度異常監視システムの概略図である。
【図9】熱画像撮影装置の機能ブロック図である。
【図10】熱画像撮影装置の第一領域と第二領域を模式的に示す図である。
【図11】制御コンピュータの機能ブロック図である。
【図12】熱画像撮影装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
101…温度異常監視システム、102…レール、103…取鍋、104…第一カメラ、105…第二カメラ、106…第三カメラ、107…第四カメラ、108…LAN、109…制御コンピュータ、201…熱画像撮影装置、202…レンズ、203…赤外線検出器、204…増幅器、205…A/D変換器、206…温度変換部、207…温度データ記憶部、208…スイッチ、209…温度データ一時メモリ、210…通信部、211…温度データ送信部、212…領域抽出部、213…領域設定データ格納部、214…温度データ弁別部、215…基準温度格納部、216…比較器、217…占有率格納部、302…温度データ、303…領域設定データ、403…ドット、502…通信部、503…タイマ、504…比較器、505…規定時間データ格納部、506…ORゲート、507…ANDゲート、508…NOTゲート、509…温度データ受信部、510…表示制御部、511…不揮発性ストレージ、512…温度検査部、513…表示部、602a、602b、602c、603a、603b、603c…温度データ、604、605…視野角、802…第五カメラ、809…制御コンピュータ、901…熱画像撮影装置、902…第一領域抽出部、903…第二領域抽出部、904…第一領域設定データ格納部、905…第二領域設定データ格納部、906…第一温度データ弁別部、907…第二温度データ弁別部、908…第一基準温度格納部、909…第二基準温度格納部、910…比較器、911…比較器、912…第一占有率格納部、913…第二占有率格納部、914…通信部、1002…第一領域、1003…第二領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱画像撮影システム及び熱画像撮影装置に適用して好適な技術に関する。
より詳細には、移動する発熱体の移動方向を正しく検出して自動的に熱画像の撮影を行い、発熱体の温度異常状態の監視等を行うためのシステム及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所では、レールにぶら下げられた取鍋に、溶融した鉄を充填して運ぶ。
周知のように、鉄の融点は1535℃と、極めて高い。このため、取鍋は断熱効果を有するコンクリートを内側に配し、外側を鋼鉄で構成している。しかし、溶融した鉄の熱によってコンクリートの内鍋は徐々に溶かされ、削れていく。すると、溶融した鉄は鋼鉄の外鍋に接触してしまう。こうなると、溶融した鉄と同じ材質の外鍋は短時間で溶かされてしまい、最悪の場合、取鍋から溶融した鉄が漏れ出てしまう。
【0003】
コンクリートの内鍋の削れ具合は、取鍋の表面温度から推測することができる。
内鍋が溶融した鉄によって徐々に溶かされていくと、内鍋の肉厚は薄くなっていく。すると、溶融した鉄の熱が外鍋に伝達し易くなる。したがって、取鍋の表面温度を監視すれば、取鍋の異常状態の早期発見に寄与する。
そこで、本出願人が開発し、製造販売する、熱画像撮影装置が役立つ。
極めて高温で危険な取鍋の熱画像を、遠隔位置から撮影することで、取鍋の表面温度を監視することができる。
なお、特許文献1に、出願人の熱画像撮影装置に関する文献を示す。
【特許文献1】特開2004−257769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レール上を移動する取鍋は、レール上を往復移動する。溶融した鉄を満たして、所定の場所に溶融した鉄を注ぎ込む。そして、再度溶融した鉄を取りに戻るべく、空の取鍋は逆方向に移動する。したがって、取鍋の表面温度の測定は、溶融した鉄を満たした状態での測定でなければならない。
熱画像撮影装置が熱画像を撮影し、熱画像データを取得する作業は、取鍋が溶融した鉄を満たした状態での、順方向の移動の途中で行わなければならない。
【0005】
ここで、熱画像撮影装置に与える撮影タイミングをどのようにして自動的に生成するのか、という問題が生じる。取鍋の移動方向と位置を検出するための専用センサを設けるのは、システム構築のコストを上昇させてしまう。また、熱画像撮影装置自身の被写体検出機能だけでは、取鍋の移動方向を検出できないので、空の取鍋が逆方向に移動している状態でも、空の取鍋自体が未だ溶融した鉄によって熱せられているため、撮影してしまう。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、発熱体の移動方向を確実に検出し、自動的に撮影のための信号を生成する熱画像撮影システム及び熱画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明による熱画像撮影システムは、移動する発熱体を撮影する第一の熱画像撮影装置と、前記第一の熱画像撮影装置と等しい構成を有し、移動する前記発熱体を撮影する第二の熱画像撮影装置と、前記第一の熱画像撮影装置及び前記第二の熱画像撮影装置と接続される制御コンピュータとよりなる熱画像撮影システムであって、前記第一及び第二の熱画像撮影装置は、発熱体が発する赤外線の強度をドット毎に計測してドット毎の信号を出力する赤外線検出器と、前記赤外線検出器が出力する前記ドット毎の信号をデジタル値に変換するA/D変換器と、前記デジタル値をドット毎の二次元温度データに変換する温度変換部と、前記二次元温度データを保存する温度データ一時メモリと、前記温度データ一時メモリに保存されている前記二次元温度データから所定領域の部分を抽出する領域抽出部と、前記領域抽出部が出力する部分温度データに演算処理を行った後に所定の閾値と比較して前記発熱体の存在の有無を判定する発熱体検出部と、前記発熱体検出部が前記発熱体を検出した結果のトリガ信号を外部に送信する第一通信部とを具備し、前記制御コンピュータは、前記第一通信部と通信を行う第二通信部と、前記第一の熱画像撮影装置の前記発熱体検出部から前記第二通信部を通じて得られる第一トリガ信号を受けて起動するタイマと、前記タイマが計測する時間が所定の規定時間を越えたか否かを判定する比較器と、前記タイマが計測する時間が所定の規定時間を越えていないことを比較器が判定している時に前記第二の熱画像撮影装置の前記発熱体検出部から前記第二通信部を通じて得られる第二トリガ信号が来たことを検出するゲートと、前記ゲートが発する検出信号を受けて前記第一の熱画像撮影装置から前記二次元温度データをダウンロードする温度データ受信部とを具備することを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の熱画像撮影装置は、発熱体が発する赤外線の強度をドット毎に計測して前記ドット毎の信号を出力する赤外線検出器と、前記赤外線検出器が出力する前記ドット毎の信号をデジタル値に変換するA/D変換器と、前記デジタル値を前記ドット毎の二次元温度データに変換する温度変換部と、前記二次元温度データを保存する温度データ一時メモリと、前記温度データ一時メモリに保存されている前記二次元温度データから第一の所定領域の部分を抽出する第一領域抽出部と、前記領域抽出部が出力する第一の部分温度データに演算処理を行った後に所定の第一閾値と比較して前記発熱体の存在の有無を判定する第一発熱体検出部と、前記温度データ一時メモリに保存されている前記二次元温度データから第二の所定領域の部分を抽出する第二領域抽出部と、前記領域抽出部が出力する第二の部分温度データに演算処理を行った後に所定の第二閾値と比較して前記発熱体の存在の有無を判定する第二発熱体検出部と、前記第一発熱体検出部から得られる第一トリガ信号を受けて起動するタイマと、前記タイマが計測する時間が所定の規定時間を越えたか否かを判定する第一比較器と、前記タイマが計測する時間が所定の規定時間を越えていないことを前記第一比較器が判定している時に前記第二領域抽出部から得られる第二トリガ信号が来たことを検出するゲートと、前記ゲートが発するトリガ信号を外部に送信する通信部とを具備することを特徴とする。
【0009】
熱画像撮影装置が撮影する温度データ(熱画像データ)に、予め所定の領域(枠)を設定しておき、その領域に被写体が収まったことを検出し、検出信号を出力する。被写体の移動を検出するために、異なる領域を二つ設定する。
この、二つの検出信号が所定の時間内に発生したことを検出することで、被写体の移動方向を認識し、トリガ信号を発生する。
専用のセンサを設けることなく、熱画像撮影装置自身の機能をセンサとして流用することで、システム構築が容易になると共に、システム構築にかかるコストを削減できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、発熱体の移動方向を確実に検出し、自動的に撮影のための信号を生成する熱画像撮影システム及び熱画像撮影装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図12を参照して説明する。
【0012】
[第一の実施形態]
図1は、本発明の第一の実施形態の例である、温度異常監視システムの概略図である。
温度異常監視システム101は、熱画像撮影システムを利用して実現するシステムである。熱画像を撮影し、得られた温度データから温度異常状態の検出を行う。
製鉄業を営む甲製鉄所では、レール102にぶら下げられた取鍋103に、溶融した鉄を充填して運ぶ。
取鍋103の運搬経路上には、やや離れた位置に、取鍋103を撮影するための第一カメラ104、第二カメラ105、第三カメラ106及び第四カメラ107が設置されている。
第一カメラ104、第二カメラ105、第三カメラ106及び第四カメラ107は、熱画像撮影装置である。熱画像撮影装置にとって、取鍋103は被写体であり、赤外線を放射する発熱体である。
これら第一カメラ104、第二カメラ105、第三カメラ106及び第四カメラ107は、LAN108によって遠隔地にある制御コンピュータ109に接続されている。
【0013】
周知のように、鉄の融点は1535℃と、極めて高い。このため、取鍋103は断熱効果を有するコンクリートを内側に配し、外側を鋼鉄で構成している。しかし、溶融した鉄の熱によってコンクリートの内鍋は徐々に溶かされ、削れていく。すると、溶融した鉄は鋼鉄の外鍋に接触してしまう。こうなると、溶融した鉄と同じ材質の外鍋は短時間で溶かされてしまい、最悪の場合、取鍋103から溶融した鉄が漏れ出てしまう。
【0014】
コンクリートの内鍋の削れ具合は、取鍋103の表面温度から推測することができる。
内鍋が溶融した鉄によって徐々に溶かされていくと、内鍋の肉厚は薄くなっていく。すると、溶融した鉄の熱が外鍋に伝達し易くなる。したがって、取鍋103の表面温度を監視すれば、取鍋103の異常状態の早期発見に寄与する。
【0015】
ところで、レール102上を移動する取鍋103は、レール102上を往復移動する。溶融した鉄を満たして、所定の場所に溶融した鉄を注ぎ込む。そして、再度溶融した鉄を取りに戻るべく、空の取鍋103は逆方向に移動する。このため、取鍋103の表面温度の測定は、溶融した鉄を満たした状態での測定でなければならない。
図1では、実線矢印で示す、図1の左側から右側への進行方向が、溶融した鉄を満たした状態での移動方向に該当する。
制御コンピュータ109は、LAN108上の第一カメラ104が取鍋103を捉えた後、第二カメラ105が取鍋103を捉えたことを検出すると、第一カメラ104、第二カメラ105、第三カメラ106及び第四カメラ107から、熱画像データのダウンロードを行う。この制御コンピュータ109は工業用途に調製されたコンピュータであり、実質的にはパソコンと殆ど変わらない。
【0016】
図2は、熱画像撮影装置の機能ブロック図である。図1の第一カメラ104、第二カメラ105、第三カメラ106及び第四カメラ107がこれに該当する。
レンズ202で焦点を合わせ込んだ赤外線は、赤外線検出器203によってアナログ電気信号に変換される。赤外線検出器203は、例えばCCDカメラ等のような、ドット毎に赤外線の強度を検出するマトリクスセンサである。
赤外線検出器203から出力されるアナログ電気信号は、増幅器204によって増幅され、A/D変換器205でデジタル値に変換された後、温度変換部206にて温度データに変換される。温度データは、温度データ記憶部207に記憶される。温度データ記憶部207は、ビデオカメラのフレームメモリに相当するもので、一画面分の温度データを保持する。赤外線検出器203から得られる電気信号から温度変換部206による温度データ変換処理は、所定の時間間隔にて定期的に行われる。このため、温度データ記憶部207には最新の温度データが記憶されている。
ここで、温度データ記憶部207に記憶されている温度データは、厳密には温度データ「群」であり、温度を示すドットの集合体である。言い換えれば、二次元である白黒画像データの、各ドットが温度を表しているものであり、「二次元温度データ」ともいえる。
【0017】
温度データ記憶部207の中の温度データは、スイッチ208を介して温度データ一時メモリ209に保存される。温度データ一時メモリ209は、通信部210を介して温度データ送信部211が温度データ一時メモリ209の中の温度データを制御コンピュータ109に送信する際に、送信途中で温度データが温度変換部206によって書き換えられてしまわないように、スイッチ208と共に設けられている。つまり、制御コンピュータ109の要求に応じて温度データを制御コンピュータ109へ送信する際には、スイッチ208は温度データ送信部211によってオフ制御される。
【0018】
温度データ一時メモリ209内の温度データは、領域抽出部212によってその一部が取り出される。領域抽出部212は、領域設定データ格納部213に記述されているXY座標、横幅そして高さに基づいて、温度データ一時メモリ209内の温度データの一部領域を取り出す。
【0019】
ここで、一旦領域抽出部212と領域設定データ格納部213の動作を、図3を用いて説明する。
図3は、領域抽出部212と領域設定データ格納部213の動作を模式的に示す図である。
温度データ一時メモリ209に格納されている温度データ302は、丁度白黒画像データのように、発熱体である取鍋103の赤外線画像、つまり熱画像を撮影した結果である。
領域設定データ格納部213に格納されている領域設定データ303は、この温度データ302に対して設定される、四角形の枠である。領域抽出部212は、温度データ一時メモリ209から、この枠に囲まれた温度データのドットを取り出すのである。領域設定データ格納部213に記憶されているデータは、その枠の左上の角の座標を示す「XY座標」、枠の「横幅」そして「高さ」である。つまり、これらのデータが、フラッシュメモリ等の図示しない不揮発性ストレージに記憶されている。
不揮発性ストレージには、枠の位置と大きさを示す領域設定データ以外に、枠の中の温度データの比較演算のための値である、基準温度及び占有率も記憶されている。これらについては後述する。
【0020】
再び図2に戻って説明する。
領域抽出部212から取り出された、枠に含まれる温度データは、温度データ弁別部214に与えられる。温度データ弁別部214は、枠の中の各ドットの温度と、基準温度格納部215とを比較して、二値化する。枠の中の各ドットの温度が基準温度格納部215よりも高ければ「1(論理の「真」)」に、低ければ「0(論理の「偽」)」に変換する。
二値化された枠のデータは、比較器216に与えられる。比較器216は、占有率格納部217と比較して、全体のドットの数の内、「1」が占める率が高いか否かを比較し、高ければ「真」を出力する。これが、この熱画像撮影装置201におけるトリガ信号となって、通信部210を介して制御コンピュータ109に出力される。
【0021】
通信部210は、一般的なTCP/IPプロトコルスタックである。前述のトリガ信号を制御コンピュータ109に出力し、制御コンピュータ109から発される温度データ送信要求を受け取り、温度データ送信部211が温度データ一時メモリ209中の温度データを制御コンピュータ109に出力する。
以上に記した動作を実現するため、トランスポート層のプロトコルは特に特定されるものではない。制御信号の送受信は、いわゆるパソコン通信のような無手順プロトコルを用いても良いし、TELNET或はSSHを用いても良い。温度データの転送も、無手順プロトコルであればUUENCODE/UUDECODEのバイナリテキスト変換プログラムや、ZMODEM等のバイナリ転送プロトコルを採用しても良いし、コマンド及びメッセージの送受信にTELNET或はSSHを採用する場合は、FTP、HTTP或はSCP等を用いても良い。
なお、LAN108上に配置される、温度異常監視システム101を構成する各カメラと制御コンピュータ109には、通信する相手を特定するため、固定のプライベートIPアドレスが割り振られている。
【0022】
図1の第一カメラ104、第二カメラ105、第三カメラ106及び第四カメラ107は、全て同じ、図2に詳述した熱画像撮影装置201であるが、第三カメラ106及び第四カメラ107では、領域抽出部212、領域設定データ格納部213、温度データ弁別部214、基準温度格納部215、比較器216及び占有率格納部217は、機能しない。このため、第三カメラ106及び第四カメラ107の領域設定データ格納部213には、何の値も記憶されず、領域抽出部212が機能しないように設定されている。
領域抽出部212、領域設定データ格納部213、温度データ弁別部214、基準温度格納部215、比較器216及び占有率格納部217は、第一カメラ104及び第二カメラ105でのみ機能する。
【0023】
第一カメラ104及び第二カメラ105に領域設定データ格納部213、基準温度格納部215及び占有率格納部217を設定するために、予め製造ラインの運用前に、制御コンピュータ109からこれらの適切な設定値を各カメラに送信する。第一カメラ104及び第二カメラ105はそれら設定値を通信部210を介して受信して、不揮発性ストレージに記憶する。
製造ラインに設置された第一カメラ104及び第二カメラ105は、その場で設定値を入力するのは煩雑であると共に危険であるので、ユーザインターフェースを遠隔地にある制御コンピュータで実現する。
【0024】
図4(a)、(b)及び(c)は、温度データ弁別部214と比較器216の動作を模式的に示す図である。
図4(a)は、領域設定データ格納部213にて設定される領域を模式的に示す図である。
領域設定データ303に含まれるドット403は、その一つ一つが温度を表している。これら温度のデータを、基準温度格納部215と比較する。図4では、仮に基準温度格納部215が650℃であるものとしている。
図4(b)は、領域設定データ303の一部を仮想的に拡大して示す図である。
図4(c)は、図4(b)のドット403を温度データ弁別部214にて変換した状態を示す図である。
図4(b)に示すように、取鍋103の表面は、例えば700℃以上と、大変高温になっている。このため、温度データ弁別部214にて基準温度格納部215と比較した結果、それらドット403は図4(c)に示すように、「1」に変換される。一方、取鍋103から離れた空間の部分は、取鍋103から発せられる放射熱の影響があるものの、極端に温度は低くなる。したがって、基準温度格納部215と比較した結果、それらドット403は「0」に変換される。最終的には、領域設定データ303の中の「1」のドット403の数を、領域設定データ303の中の全てのドット403の数で割って、領域設定データ303の中の「1」の率を算出する。これを比較器216が占有率格納部217と比較して、トリガ信号を出力するか否かを決定する。
【0025】
図4にて説明したように、温度データ弁別部214、基準温度格納部215、比較器216及び占有率格納部217は、領域抽出部212によって特定された温度データに対し、所定の演算処理を行い、その結果、発熱体の存在の有無を判断する。つまり、領域内の発熱体の存在の有無を検出する発熱体検出部としての機能をもたらす。
【0026】
図5は、制御コンピュータ109の機能ブロック図である。
通信部502は、熱画像撮影装置201のものと同じTCP/IPプロトコルスタックである。
通信部502から得られる第一カメラ104のトリガ信号は、タイマ503に起動信号として供給される。
タイマ503の計時データは比較器504のプラス側端子に入力される。比較器504のマイナス側端子には、規定時間データ格納部505に格納されている規定時間データが与えられる。つまり、タイマ503が閾値である規定時間を越えると、比較器504が「1」(論理の「真」)を出力する。この「1」の出力は、ORゲート506を介してタイマ503自身のリセット及び停止信号として入力される。
【0027】
一方、通信部502から得られる第二カメラ105のトリガ信号は、ANDゲート507に入力される。ANDゲート507のもう一方の入力端子には、比較器504の出力がNOTゲート508を通じて入力される。つまり、タイマ503が規定時間データ格納部505に格納されている規定時間以内のときに第二カメラ105のトリガ信号が来ると、ANDゲート507は「1」を出力する。この「1」の出力は、ORゲート506を介してタイマ503自身のリセット及び停止信号として入力されると共に、温度データ受信部509と表示制御部510に供給される。
【0028】
ANDゲート507が「1」を出力すると、その信号は温度データ受信部509の起動パルスとして供給される。温度データ受信部509は第一カメラ104、第二カメラ105、第三カメラ106及び第四カメラ107から温度データのダウンロードを行う。ダウンロードした各カメラの温度データは、ハードディスク等の不揮発性ストレージ511に記憶されると共に、温度検査部512によって詳細な検査が行われる。温度検査部512の検査結果は、表示制御部510を通じてディスプレイよりなる表示部513に表示される。
一方、ANDゲート507の「1」を示す出力信号は、表示制御部510にも与えられ、表示部513に「撮影中」等のメッセージを表示する。
【0029】
温度検査部512は、被写体である取鍋103の表面温度を、より精緻に検査する。単に発熱体の存在の有無を検出する、熱画像撮影装置201の発熱体検出部とは異なり、取鍋103の表面温度が異常な高温に達しているか否かを判定する。判定の結果、異常高温状態にあると判定したら、表示制御部510を通じて表示部513に警告メッセージを出力する。
【0030】
なお、図5の制御コンピュータ109の各機能ブロック、特にORゲート506、ANDゲート507、NOTゲート508は、プログラムにて実現されているものである。勿論、ハードウェアで実装しても全く等価な作用効果を奏する。
【0031】
図6(a)、(b)及び(c)は、第一カメラ104と第二カメラ105の温度データと、タイマ503と比較器504の動作との関係を模式的に示す図である。
図6(a)は、図1のレール102を真上から見た図である。横の線はレール102である。レール102上を、取鍋103が時点t1、t2そしてt3と移動する。この様子を、第一カメラ104と第二カメラ105は、レール102から離れた地点から、夫々斜めに撮影するべく設置されている。
第一カメラ104から出ている二本の斜めの線は、第一カメラ104の視野角604である。第一カメラ104は、視野角604の範囲の被写体を撮影可能である。
第二カメラ105から出ている二本の斜めの線は、第二カメラ105の視野角605である。第二カメラ105は、視野角605の範囲の被写体を撮影可能である。
【0032】
図6(b)は、第一カメラ104の温度データ記憶部207に記録された温度データを模式的に示す図である。いわば、第一カメラ104から、視野角604の範囲内で見える赤外線画像である。
温度データ602aは、t1時点における、第一カメラ104の温度データ記憶部207に記録された温度データである。
温度データ602bは、t2時点における、第一カメラ104の温度データ記憶部207に記録された温度データである。
温度データ602cは、t3時点における、第一カメラ104の温度データ記憶部207に記録された温度データである。
第一カメラ104は取鍋103の進行方向に対して逆らうように設置されている。したがって、t1時点で既に取鍋103をその視界の中に捉えている。この様子が、温度データ602aである。
t2時点では、温度データ602bに示されるように、取鍋103全体が視界の中に納まっている。そして、t3時点では、温度データ602cに示されるように、取鍋103は視界から外れている。
【0033】
図6(c)は、第二カメラ105の温度データ記憶部207に記録された温度データを模式的に示す図である。いわば、第二カメラ105から、視野角605の範囲内で見える赤外線画像である。
温度データ603aは、t1時点における、第二カメラ105の温度データ記憶部207に記録された温度データである。
温度データ603bは、t2時点における、第二カメラ105の温度データ記憶部207に記録された温度データである。
温度データ603cは、t3時点における、第二カメラ105の温度データ記憶部207に記録された温度データである。
第二カメラ105は取鍋103の進行方向に沿うように設置されている。したがって、t1時点では温度データ603aに示されるように、取鍋103は視界から外れている。
t2時点では、温度データ603bに示されるように、取鍋103全体が視界の中に納まっている。そして、t3時点でも、温度データ603cに示されるように、取鍋103の一部がまだその視界の中に残っている。
【0034】
図6(b)及び(c)より、t1時点では、第一カメラ104は取鍋103を捕捉できているものの、第二カメラ105は取鍋103が視界から外れている。そして、第二カメラ105はt2時点でようやく取鍋103の捕捉に成功する。この時間差を利用して、取鍋103の移動方向を検出する。
【0035】
図7は、制御コンピュータ109の動作の流れを示すフローチャートである。
処理を開始すると(ステップS701)、通信部502は第一カメラ104のトリガ信号が来たか否か、確認する(ステップS702)。第一カメラ104のトリガ信号が来たなら(ステップS702のY)、通信部502はタイマ503に第一カメラ104のトリガ信号を渡す。タイマ503はこれに呼応して始動し(ステップS703)、一旦処理を終了する(ステップS704)。なお、本フローチャートは無限ループであるため、再びステップS701から処理が開始される。
【0036】
通信部502は第一カメラ104のトリガ信号が来ていないと認識したら(ステップS702のN)、次に第二カメラ105のトリガ信号が来たか否か、確認する(ステップS705)。
第二カメラ105のトリガ信号が来たなら(ステップS705のY)、通信部502はANDゲート507に第二カメラ105のトリガ信号を渡す。ANDゲート507は、NOTゲート508から来る、タイマ503が規定時間以内であることを示す信号を受けて、トリガ信号を出力する(ステップS706)。そして、このトリガ信号はタイマ503に対して、停止及びリセット信号として供給され、タイマ503はこれに呼応して停止し(ステップS707)、一旦処理を終了する(ステップS704)。
【0037】
第二カメラ105のトリガ信号が来ていない場合(ステップS705のN)、比較器504はタイマ503が規定時間データ格納部505に格納されている規定時間を越えた時間を示しているか否か、確認する(ステップS708)。もし規定時間を越えていれば(ステップS708のY)、比較器504は「1」を出力する。タイマ503はこれに呼応して停止し(ステップS707)、一旦処理を終了する(ステップS704)。
ステップS708で、タイマ503が規定時間を越えていなければ(ステップS708のN)、何もせずに一旦処理を終了する(ステップS704)。
ここで、ステップS705で第二カメラ105のトリガ信号を受信する時は、タイマ503が規定時間を越えていないことがステップS708にて保障される。したがって、ステップS705がYの時に、タイマ503が規定時間データ格納部505に格納されている規定時間を超えているか否かを確認する必要はない。
【0038】
以上より、本実施形態の温度異常監視システム101は、第一カメラ104が予め設定された領域内に取鍋103の存在を検出してから、規定時間データ格納部505に格納されている規定時間を経過する迄に第二カメラ105が取鍋103の存在を検出すると、制御コンピュータ109は、取鍋103が順方向に移動したことを検出する。そして、この検出結果に呼応して、第一カメラ104乃至第四カメラ107から、温度データのダウンロードを開始する。
もし、取鍋103が逆方向に移動する場合、第一カメラ104が取鍋103の存在を検出しても、その後第二カメラ105は取鍋103の存在を検出できないので、タイマ503は規定時間を過ぎてしまう。このため、取鍋103の逆方向の移動に対しては、制御コンピュータ109は誤った温度データのダウンロードを行わずに済む。
【0039】
[第二の実施形態]
図8は、本発明の第二の実施形態の例である、温度異常監視システムの概略図である。なお、図8の、図1と異なる部分以外の説明は省略する。
温度異常監視システム801は、熱画像撮影システムを利用して実現するシステムである。熱画像を撮影し、得られた温度データから温度異常状態の検出を行う。
図8では、図1の第一カメラ104及び第二カメラ105の代わりに、第五カメラ802が設けられている。第五カメラ802は取鍋103の進行方向に対してほぼ直角の位置に設置されている。
【0040】
図9は、熱画像撮影装置の機能ブロック図である。第五カメラ802の内部の機能に該当する。なお、図9の、図2と異なる部分以外の説明は省略する。
図9の熱画像撮影装置901は、図2の熱画像撮影装置201の領域検出機能を二つ分包含し、更に図5の制御コンピュータ109の機能の一部も包含したものである。
【0041】
ここで、図9の熱画像撮影装置901の各機能ブロックの説明に入る前に、熱画像撮影装置901の動作の概要を説明する。
図10は、図9の熱画像撮影装置901の第一領域と第二領域を模式的に示す図である。
図9の熱画像撮影装置901は、図2の熱画像撮影装置201とは異なり、一つの温度データについて、二つの領域を設定する。これが、第一領域1002と第二領域1003である。夫々の領域は、必ずしも同じ大きさでなくても良いが、必ず異なる位置に配置されていなければならない。つまり、取鍋103の移動を正しく検出できる必要がある。
【0042】
図9に戻って、各機能ブロックを説明する。
図10にて説明したように、第一領域抽出部902と、第二領域抽出部903は、温度データ一時メモリ209から、異なる領域のドットを抜き出す。つまり、第一領域抽出部902と第二領域抽出部903は、機能は全く同じであるものの、第一領域設定データ格納部904と第二領域設定データ格納部905には異なる領域を指定するデータが記憶されている。
第一温度データ弁別部906と第二温度データ弁別部907は、図2の温度データ弁別部214と機能は全く変わらない。第一基準温度格納部908と第二基準温度格納部909は、図2の基準温度格納部215と同じものである。第一基準温度格納部908と第二基準温度格納部909は同じであっても良いし、異なる温度であっても良い。
比較器910と比較器911は、図2の比較器216と機能は全く変わらない。第一占有率格納部912と第二占有率格納部913は、図2の占有率格納部217と同じものである。第一占有率格納部912と第二占有率格納部913は同じであっても良いし、異なる率であっても良い。
【0043】
比較器910の出力は、タイマ503に起動信号として供給される。
タイマ503の計時データは比較器504のプラス側端子に入力される。比較器504のマイナス側端子には規定時間データ格納部505に格納されている規定時間データが与えられる。つまり、タイマ503が規定時間データ格納部505に格納されている規定時間を越えると、比較器504が「1」を出力する。この「1」の出力は、ORゲート506を介してタイマ503自身のリセット及び停止信号として入力される。
【0044】
一方、比較器911の出力は、ANDゲート507に入力される。ANDゲート507のもう一方の入力端子には、比較器504の出力がNOTゲート508を通じて入力される。つまり、タイマ503が規定時間データ格納部505に格納されている規定時間以内のときに比較器504の出力信号が来ると、ANDゲート507は「1」を出力する。この「1」の出力は、ORゲート506を介してタイマ503自身のリセット及び停止信号として入力されると共に、通信部914を通じて制御コンピュータ109にトリガ信号として出力される。
【0045】
以上、タイマ503、規定時間データ格納部505、比較器504、ORゲート506、NOTゲート508、ANDゲート507は、図5の制御コンピュータ109のものと全く同じである。
【0046】
図11は、制御コンピュータ809の機能ブロック図である。
図5の制御コンピュータ109と違う点は、タイマ503、規定時間データ格納部505、比較器504、ORゲート506、NOTゲート508、ANDゲート507がない点である。これらは熱画像撮影装置901側に取り込まれたので、制御コンピュータ809は単にトリガ信号を受けて温度データのダウンロードを行うだけの、簡素な構成となっている。
【0047】
図12は、熱画像撮影装置901の動作の流れを示すフローチャートである。
処理を開始すると(ステップS1201)、第一温度データ弁別部906と比較器910は第一領域1002のチェックを行う(ステップS1202)。比較器910による第一占有率格納部912に格納されている第一占有率との比較の結果、第一領域1002の「1」の割合が第一占有率を越えたなら(ステップS1203のY)、比較器910の出力が真になる。タイマ503はこれに呼応して始動し(ステップS1204)、一旦処理を終了する(ステップS1205)。なお、本フローチャートは無限ループであるため、再びステップS1201から処理が開始される。
【0048】
第一領域1002の「1」の割合が第一占有率を越えていない場合(ステップS1203のN)、第二温度データ弁別部と比較器911は第二領域1003のチェックを行う(ステップS1206)。比較器911による第二占有率格納部913に格納されている第二占有率との比較の結果、第二領域1003の「1」の割合が第二占有率を越えたなら(ステップS1207のY)、比較器504の出力が真になる。ANDゲート507は、この比較器504の出力と、NOTゲート508から来る、タイマ503が規定時間データ格納部505に格納されている規定時間以内であることを示す信号を受けて、「1」を出力する(ステップS1208)。そして、この「1」の信号はタイマ503に対して、停止及びリセット信号として供給され、タイマ503はこれに呼応して停止し(ステップS1209)、一旦処理を終了する(ステップS1205)。
【0049】
第二領域1003の「1」の割合が第二占有率を越えていない場合(ステップS1207のN)、比較器504はタイマ503が規定時間データ格納部505に格納されている規定時間を越えた時間を示しているか否か、確認する(ステップS1210)。もし規定時間を越えていれば(ステップS1210のY)、比較器504は「1」を出力する。タイマ503はこれに呼応して停止し(ステップS1209)、一旦処理を終了する(ステップS1205)。
ステップS1210で、タイマ503が規定時間を越えていなければ(ステップS1210のN)、何もせずに一旦処理を終了する(ステップS1205)。
ここで、ステップS1207で第二領域1003が閾値を越えた時は、タイマ503が規定時間を越えていないことがステップS1210にて保障される。したがって、ステップS1207がYの時に、タイマ503が規定時間を超えているか否かを確認する必要はない。
【0050】
本実施形態には、以下のような応用例が考えられる。
(1)第一及び第二の実施形態では、領域内の被写体の検出に、領域内の温度データを温度の閾値で二値化した後、「1」を示すドットの占有率で判断した。
この算出方法に代えて、全領域内の温度データの平均を算出した後、その平均温度を温度の閾値で判定する、という方法でもよい。
【0051】
以上に記した、第一及び第二の実施形態では、熱画像撮影システムを内包する温度異常監視システムを開示した。
熱画像撮影装置が撮影する温度データ(熱画像データ)に、予め所定の領域(枠)を設定しておき、その領域に被写体が収まったことを検出し、検出信号を出力する。被写体の移動を検出するために、異なる領域を二つ設定する。
この、二つの検出信号が所定の時間内に発生したことを検出することで、被写体の移動方向を認識し、トリガ信号を発生する。
専用のセンサを設けることなく、熱画像撮影装置自身の機能をセンサとして流用することで、システム構築が容易になると共に、システム構築にかかるコストを削減できる。
【0052】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含むことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第一の実施形態の例である、温度異常監視システムの概略図である。
【図2】熱画像撮影装置の機能ブロック図である。
【図3】領域抽出部と領域設定データの動作を模式的に示す図である。
【図4】温度データ弁別部と比較器の動作を模式的に示す図である。
【図5】制御コンピュータの機能ブロック図である。
【図6】第一カメラと第二カメラの温度データと、タイマと比較器の動作との関係を模式的に示す図である。
【図7】制御コンピュータの動作の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の第二の実施形態の例である、温度異常監視システムの概略図である。
【図9】熱画像撮影装置の機能ブロック図である。
【図10】熱画像撮影装置の第一領域と第二領域を模式的に示す図である。
【図11】制御コンピュータの機能ブロック図である。
【図12】熱画像撮影装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
101…温度異常監視システム、102…レール、103…取鍋、104…第一カメラ、105…第二カメラ、106…第三カメラ、107…第四カメラ、108…LAN、109…制御コンピュータ、201…熱画像撮影装置、202…レンズ、203…赤外線検出器、204…増幅器、205…A/D変換器、206…温度変換部、207…温度データ記憶部、208…スイッチ、209…温度データ一時メモリ、210…通信部、211…温度データ送信部、212…領域抽出部、213…領域設定データ格納部、214…温度データ弁別部、215…基準温度格納部、216…比較器、217…占有率格納部、302…温度データ、303…領域設定データ、403…ドット、502…通信部、503…タイマ、504…比較器、505…規定時間データ格納部、506…ORゲート、507…ANDゲート、508…NOTゲート、509…温度データ受信部、510…表示制御部、511…不揮発性ストレージ、512…温度検査部、513…表示部、602a、602b、602c、603a、603b、603c…温度データ、604、605…視野角、802…第五カメラ、809…制御コンピュータ、901…熱画像撮影装置、902…第一領域抽出部、903…第二領域抽出部、904…第一領域設定データ格納部、905…第二領域設定データ格納部、906…第一温度データ弁別部、907…第二温度データ弁別部、908…第一基準温度格納部、909…第二基準温度格納部、910…比較器、911…比較器、912…第一占有率格納部、913…第二占有率格納部、914…通信部、1002…第一領域、1003…第二領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する発熱体を撮影する第一の熱画像撮影装置と、
前記第一の熱画像撮影装置と等しい構成を有し、移動する前記発熱体を撮影する第二の熱画像撮影装置と、
前記第一の熱画像撮影装置及び前記第二の熱画像撮影装置と接続される制御コンピュータと
よりなる熱画像撮影システムであって、
前記第一及び第二の熱画像撮影装置は、
発熱体が発する赤外線の強度をドット毎に計測してドット毎の信号を出力する赤外線検出器と、
前記赤外線検出器が出力する前記ドット毎の信号をデジタル値に変換するA/D変換器と、
前記デジタル値をドット毎の二次元温度データに変換する温度変換部と、
前記二次元温度データを保存する温度データ一時メモリと、
前記温度データ一時メモリに保存されている前記二次元温度データから所定領域の部分を示す部分温度データを抽出する領域抽出部と、
前記部分温度データに演算処理を行った後に所定の第一閾値と比較して前記発熱体の存在の有無を判定する発熱体検出部と、
前記発熱体検出部が前記発熱体を検出した結果のトリガ信号を外部に送信する第一通信部と
を具備し、
前記制御コンピュータは、
前記第一通信部と通信を行う第二通信部と、
前記第一の熱画像撮影装置の前記発熱体検出部から前記第二通信部を通じて得られる第一トリガ信号を受けて起動するタイマと、
前記タイマが計測する時間が所定の規定時間を越えたか否かを判定する第一比較器と、
前記タイマが計測する時間が所定の規定時間を越えていないことを前記第一比較器が判定している時に前記第二の熱画像撮影装置の前記発熱体検出部から前記第二通信部を通じて得られる第二トリガ信号が来たことを検出するゲートと、
前記ゲートが発する検出信号を受けて前記第一の熱画像撮影装置から前記二次元温度データをダウンロードする温度データ受信部と
を具備することを特徴とする熱画像撮影システム。
【請求項2】
前記発熱体検出部は、
前記部分温度データを所定の第二閾値と比較して二値化し、前記第二閾値を越える前記ドットの占有率を算出する温度データ弁別部と、
前記占有率を所定の第三閾値と比較し、前記占有率が前記第三閾値を越えるか否かを判定する第二比較器と
よりなることを特徴とする、請求項1記載の熱画像撮影システム。
【請求項3】
前記発熱体検出部は、前記部分温度データの前記ドット毎の温度の平均値を算出し、前記平均値が所定の第四閾値を越えるか否かを判定することを特徴とする、請求項1記載の熱画像撮影システム。
【請求項4】
発熱体が発する赤外線の強度をドット毎に計測して前記ドット毎の信号を出力する赤外線検出器と、
前記赤外線検出器が出力する前記ドット毎の信号をデジタル値に変換するA/D変換器と、
前記デジタル値を前記ドット毎の二次元温度データに変換する温度変換部と、
前記二次元温度データを保存する温度データ一時メモリと、
前記温度データ一時メモリに保存されている前記二次元温度データから第一の所定領域の部分を示す第一部分温度データを抽出する第一領域抽出部と、
前記第一部分温度データに演算処理を行った後に所定の第一閾値と比較して前記発熱体の存在の有無を判定する第一発熱体検出部と、
前記温度データ一時メモリに保存されている前記二次元温度データから第二の所定領域の部分を示す第二部分温度データを抽出する第二領域抽出部と、
前記第二部分温度データに演算処理を行った後に所定の第二閾値と比較して前記発熱体の存在の有無を判定する第二発熱体検出部と、
前記第一発熱体検出部から得られる第一トリガ信号を受けて起動するタイマと、
前記タイマが計測する時間が所定の規定時間を越えたか否かを判定する第一比較器と、
前記タイマが計測する時間が所定の規定時間を越えていないことを前記第一比較器が判定している時に前記第二領域抽出部から得られる第二トリガ信号が来たことを検出するゲートと、
前記ゲートが発するトリガ信号を外部に送信する通信部と
を具備することを特徴とする熱画像撮影装置。
【請求項5】
前記第一発熱体検出部は、
前記第一の部分温度データを所定の第三閾値と比較して二値化し、前記第三閾値を越える前記ドットの占有率を算出する第一温度データ弁別部と、
前記占有率を所定の第四閾値と比較し、前記占有率が前記第四閾値を越えるか否かを判定する第三比較器と
よりなり、
前記第二発熱体検出部は、
前記第二の部分温度データを所定の第五閾値と比較して二値化し、前記第五閾値を越える前記ドットの占有率を算出する第二温度データ弁別部と、
前記占有率を所定の第六閾値と比較し、前記占有率が前記第六閾値を越えるか否かを判定する第四比較器と
よりなることを特徴とする、請求項4記載の熱画像撮影装置。
【請求項6】
前記第一発熱体検出部は、前記部分温度データの前記ドット毎の温度の平均値を算出し、前記平均値が所定の第七閾値を越えるか否かを判定することを特徴とする、請求項4記載の熱画像撮影装置。
【請求項1】
移動する発熱体を撮影する第一の熱画像撮影装置と、
前記第一の熱画像撮影装置と等しい構成を有し、移動する前記発熱体を撮影する第二の熱画像撮影装置と、
前記第一の熱画像撮影装置及び前記第二の熱画像撮影装置と接続される制御コンピュータと
よりなる熱画像撮影システムであって、
前記第一及び第二の熱画像撮影装置は、
発熱体が発する赤外線の強度をドット毎に計測してドット毎の信号を出力する赤外線検出器と、
前記赤外線検出器が出力する前記ドット毎の信号をデジタル値に変換するA/D変換器と、
前記デジタル値をドット毎の二次元温度データに変換する温度変換部と、
前記二次元温度データを保存する温度データ一時メモリと、
前記温度データ一時メモリに保存されている前記二次元温度データから所定領域の部分を示す部分温度データを抽出する領域抽出部と、
前記部分温度データに演算処理を行った後に所定の第一閾値と比較して前記発熱体の存在の有無を判定する発熱体検出部と、
前記発熱体検出部が前記発熱体を検出した結果のトリガ信号を外部に送信する第一通信部と
を具備し、
前記制御コンピュータは、
前記第一通信部と通信を行う第二通信部と、
前記第一の熱画像撮影装置の前記発熱体検出部から前記第二通信部を通じて得られる第一トリガ信号を受けて起動するタイマと、
前記タイマが計測する時間が所定の規定時間を越えたか否かを判定する第一比較器と、
前記タイマが計測する時間が所定の規定時間を越えていないことを前記第一比較器が判定している時に前記第二の熱画像撮影装置の前記発熱体検出部から前記第二通信部を通じて得られる第二トリガ信号が来たことを検出するゲートと、
前記ゲートが発する検出信号を受けて前記第一の熱画像撮影装置から前記二次元温度データをダウンロードする温度データ受信部と
を具備することを特徴とする熱画像撮影システム。
【請求項2】
前記発熱体検出部は、
前記部分温度データを所定の第二閾値と比較して二値化し、前記第二閾値を越える前記ドットの占有率を算出する温度データ弁別部と、
前記占有率を所定の第三閾値と比較し、前記占有率が前記第三閾値を越えるか否かを判定する第二比較器と
よりなることを特徴とする、請求項1記載の熱画像撮影システム。
【請求項3】
前記発熱体検出部は、前記部分温度データの前記ドット毎の温度の平均値を算出し、前記平均値が所定の第四閾値を越えるか否かを判定することを特徴とする、請求項1記載の熱画像撮影システム。
【請求項4】
発熱体が発する赤外線の強度をドット毎に計測して前記ドット毎の信号を出力する赤外線検出器と、
前記赤外線検出器が出力する前記ドット毎の信号をデジタル値に変換するA/D変換器と、
前記デジタル値を前記ドット毎の二次元温度データに変換する温度変換部と、
前記二次元温度データを保存する温度データ一時メモリと、
前記温度データ一時メモリに保存されている前記二次元温度データから第一の所定領域の部分を示す第一部分温度データを抽出する第一領域抽出部と、
前記第一部分温度データに演算処理を行った後に所定の第一閾値と比較して前記発熱体の存在の有無を判定する第一発熱体検出部と、
前記温度データ一時メモリに保存されている前記二次元温度データから第二の所定領域の部分を示す第二部分温度データを抽出する第二領域抽出部と、
前記第二部分温度データに演算処理を行った後に所定の第二閾値と比較して前記発熱体の存在の有無を判定する第二発熱体検出部と、
前記第一発熱体検出部から得られる第一トリガ信号を受けて起動するタイマと、
前記タイマが計測する時間が所定の規定時間を越えたか否かを判定する第一比較器と、
前記タイマが計測する時間が所定の規定時間を越えていないことを前記第一比較器が判定している時に前記第二領域抽出部から得られる第二トリガ信号が来たことを検出するゲートと、
前記ゲートが発するトリガ信号を外部に送信する通信部と
を具備することを特徴とする熱画像撮影装置。
【請求項5】
前記第一発熱体検出部は、
前記第一の部分温度データを所定の第三閾値と比較して二値化し、前記第三閾値を越える前記ドットの占有率を算出する第一温度データ弁別部と、
前記占有率を所定の第四閾値と比較し、前記占有率が前記第四閾値を越えるか否かを判定する第三比較器と
よりなり、
前記第二発熱体検出部は、
前記第二の部分温度データを所定の第五閾値と比較して二値化し、前記第五閾値を越える前記ドットの占有率を算出する第二温度データ弁別部と、
前記占有率を所定の第六閾値と比較し、前記占有率が前記第六閾値を越えるか否かを判定する第四比較器と
よりなることを特徴とする、請求項4記載の熱画像撮影装置。
【請求項6】
前記第一発熱体検出部は、前記部分温度データの前記ドット毎の温度の平均値を算出し、前記平均値が所定の第七閾値を越えるか否かを判定することを特徴とする、請求項4記載の熱画像撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−198254(P2009−198254A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38967(P2008−38967)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(596118600)NEC Avio赤外線テクノロジー株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(596118600)NEC Avio赤外線テクノロジー株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
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