説明

熱硬化性多糖

多糖熱硬化性システム及び、このようなシステムを利用する複合材料には、少なくとも1種類の多糖及び少なくとも1種類の多糖架橋剤から形成される、ホルムアルデヒドを含まない結合剤が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非デンプン多糖及び架橋剤に基づくホルムアルデヒドを含まない結合剤系を用いて製造される複合材料に関する。本発明はまた、これらの複合材料を製造するためのプロセスにも関する。
【0002】
本出願は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる、2007年12月21日出願の米国特許仮出願第61/016,370号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
合成ポリマーは、幅広い種類の用途で使用されている。多くの用途において、これらの合成ポリマーは、必要とされる性能特性を達成するために架橋されている。60年間以上の間、多くの種類の商業的に重要な熱硬化性ポリマーにおいてホルムアルデヒド系架橋剤が利用されてきた。このようなホルムアルデヒドに基づく架橋剤は、昔から多様な複合材料を製造するための効率的で費用効率の高い結合剤を提供してきた。ホルムアルデヒド系架橋剤の例としては、メラミン−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド、フェノール−ホルムアルデヒド及びアクリルアミド−ホルムアルデヒド付加物が挙げられる。毒性及び環境に対する関心の高まりと共に、ホルムアルデヒドに基づく架橋系に取って代わるものが探求され続けている。しかし、これらの代替系は、高いコスト、低いもしくは遅い硬化、最終使用者がその市販されている高速適用装置を変えることの必要性、ホルムアルデヒド以外の有毒成分又は揮発性有機化合物の放出、耐湿性の欠如、結合剤と基材との間の適切な結合の欠如、及び、製造設備の腐食という問題を引き起こす、結合剤を硬化させるために必要なpHが低いこと、をはじめとする重大な欠陥に悩まされてきた。
【0004】
現行のホルムアルデヒドを含まない結合剤系は、ホルムアルデヒドに基づく熱硬化性樹脂と同様に機能せず、はるかに高価となる傾向がある。さらに、ホルムアルデヒドに基づく結合剤系とホルムアルデヒドを含まない結合剤系は両方とも石油起源に由来し、再生可能でも持続可能でもない。ホルムアルデヒドに基づく熱硬化性樹脂系の性能を妥当な経済で供給し、持続可能かつ再生可能な原料に基づく、ホルムアルデヒドを含まない結合剤系が必要とされている。
【0005】
好ましくは、ホルムアルデヒドを含まない結合剤系は、比較的低い温度(200°未満)で硬化するべきである。さらに、ホルムアルデヒドを含まない結合剤系、特にポリアクリル酸を含有する結合剤系は、硬化するために低いpH(例えば、3未満)を必要とし、その結果加工用機器において腐食の問題を引き起こす。そのために、3より大きいpH、好ましくは中性のpH範囲内で硬化することのできるホルムアルデヒドを含まない結合剤系が必要とされている。
【0006】
ホルムアルデヒドに基づく結合剤系は、それらが製造された直後に架橋し始めるので輸送中は冷蔵する必要がある。それ故に、これらの系は使用する必要のある期間が非常に短い、すなわち、ポットライフが短い。故に、良好なポットライフを有する、ホルムアルデヒドを含まない結合剤系が必要とされている。最終的に、耐水性に優れたホルムアルデヒドを含まない結合剤系が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ホルムアルデヒドを含まない結合剤系及びミネラルウール(mineral wool)又はリグノセルロース(lignocellulosic)基材を使用して製造される複合材料(composite)を提供する。これらのホルムアルデヒドを含まない結合剤は、非デンプン多糖(non-starch polysaccharide)と架橋剤(crosslinker)の混合物である。もう一つの態様では、本発明は、非デンプン多糖及び架橋剤をミネラルウール又はリグノセルロース基材の上に付着させ、硬化させることによる、これらの複合材料を製造するためのプロセスである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
もう一つの態様では、本発明は、「環境に優しい(green)」ホルムアルデヒドを含まない結合剤系及びミネラルウール又はリグノセルロース基材を用いて製造される複合材料を提供する。これらのホルムアルデヒドを含まない結合剤は、無アミロースデンプン(non-amylose starch)と架橋剤の混合物である。もう一つの態様では、本発明は、無アミロースデンプン及び架橋剤をミネラルウール又はリグノセルロース基材の上に付着させ、硬化させることによる、これらの複合材料を製造するためのプロセスである。
【0009】
もう一つの態様では、これらのホルムアルデヒドを含まない結合剤は、安定化された低アミロースデンプンと架橋剤の混合物である。もう一つの態様では、本発明は、安定化された低アミロースデンプン(low amylose starch)及び架橋剤をミネラルウール又はリグノセルロース基材の上に付着させ、硬化させることによる、これらの複合材料を製造するためのプロセスである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、添付の図面と併せて読むと以下の詳細な説明から最も良く理解される。図面には以下の図が含まれる。
【図1】実施例14に従って行ったTGA結合剤残率試験(Binder Retention Test)についての結合剤耐水性の定量的測定を表すグラフである。
【図2】実施例15に従うTGA法により試験したガラス繊維マットの結合剤残率の定量的測定を表すグラフである。
【図3】実施例16に従って行った湿潤強度試験の結果の定量的測定を表すグラフである。
【図4】実施例17に従って行ったTGA結合剤残率試験の結果の定量的測定を表すグラフである。
【図5】実施例18に従うデンプンBについてTGA法により試験したガラス繊維マットの結合剤残率の結果の定量的測定を表すグラフである。
【図6】実施例18に従うデンプンAについてTGA法により試験したガラス繊維マットの結合剤残率の結果の定量的測定を表すグラフである。
【図7】実施例19に従うデンプンBについてTGA法を使用するガラス繊維基材の結合剤残率の結果の定量的測定を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の目的において、「複合材料」は、ホルムアルデヒドを含まない結合剤で基材を処理することにより形成される製造品又は生成物である。本発明において有用な基材としては、材料、例えばミネラルウール及びリグノセルロース基材などが挙げられる。ホルムアルデヒドを含まない結合剤は通常水溶液の形態で基材に適用され、硬化されて複合材料を形成する。
【0012】
本発明の目的において、「ミネラルウール」とは、合成であっても天然であってもよい、無機物又は金属酸化物から製造される繊維を意味し、それには、ガラス繊維、セラミック繊維、ミネラルウール及び、ストーンウール(stone wool)としても公知のロックウール(rock wool)が含まれる。ミネラルウールは、絶縁及び濾過に使用される無機物質である。ガラス繊維及びセラミック繊維などの物質は、それらが無機物もしくは金属酸化物で構成されることからミネラルウールである。
【0013】
基材がガラス繊維である場合、製造したガラス繊維複合材料は、ロール又はバットの形状の断熱材又は遮音材あるいはルースフィル断熱材として;屋根材及びフローリング製品、天井タイル、床タイルのための補強マットとして、プリント基板及び電池隔離板のためのマイクロガラスベースの基材として;フィルターストック及びテープストックのために、かつ、非セメント性及びセメント性の両方における石造コーティングのための補強材のために、有用でありうる。
【0014】
本発明の目的において、「リグノセルロース基材」は、リグノセルロース複合材料、例えば木材、亜麻、麻、及び藁などを製造するためのリグノセルロース原料と定義され、それには、小麦、米及び大麦藁が含まれるが、製紙に使用されるものなどのセルロース系繊維ではない。一態様では、リグノセルロース基材は、粒子又は断片の形の木材である。リグノセルロース基材は、あらゆる適した形及び大きさに加工することができ、それには、様々な粒子又は断片、例えば、チップ、フレーク、ファイバー、ストランド、ウエハー、トリミング屑、削り屑、おが屑、及びそれらの組合せなどが含まれる。結合剤は、リグノセルロース基材の上に付着し、硬化して、リグノセルロース複合材料を形成し得る。本発明のホルムアルデヒドを含まない結合剤を用いて製造されるリグノセルロース複合材料には、パーティクルボード、オリエンテッドストランドボード(OSB)、ウエハーボード、ファイバーボード(中密度及び高密度ファイバーボードを含む)、パラレルストランドランバー(PSL)、ラミネーテッドストランドランバー(LSL)、ラミネーテッドベニアランバー(LVL)、及び類似する製品が含まれる。当業者であれば、本発明の結合剤が、合板又はその他の積層品を製造するために一般に使用される接着剤とは異なることを理解するであろう。
【0015】
本発明の目的において、「ホルムアルデヒドを含まない結合剤」とは、その結合剤が、実質的にホルムアルデヒドを含まず、総ホルムアルデヒド含量が約100ppm又はそれ以下である配合剤を含むことを意味する。本発明の実施形態では、ホルムアルデヒドを含まない結合剤は、ホルムアルデヒドを有する配合剤を全く含まず、その場合、このホルムアルデヒドを含まない結合剤は、「全くホルムアルデヒドを含まない結合剤」と呼ばれる。本発明に従う「ホルムアルデヒドを含まない結合剤」は、少なくとも1つ又はそれ以上の多糖及び少なくとも1つ又はそれ以上の多糖架橋剤を有する。多糖は、植物、動物及び微生物起源を含む天然物に由来するものであってもよい。多糖の例としては、デンプン、セルロース、ガム(gums)(例えばグアー(guar)及びキサンタン(xanthan))、アルギナート(alginates)、ペクチン及びゲラン(gellan)が挙げられる。一態様では、これらの多糖はデンプンである。多糖デンプンには、メイズ又はトウモロコシ、ワキシーメイズ、高アミロースメイズ、ジャガイモ、タピオカ及び小麦デンプンが含まれる。その他のデンプンには、多様な米、もち米、エンドウ豆、サゴ、オート麦、大麦、ライ麦、アマランス、サツマイモ、及び従来の植物育種から入手可能なハイブリッドデンプンが含まれる。また、遺伝子操作されたデンプン、例えば高アミロースジャガイモ及びジャガイモアミロペクチンデンプンなども有用である。多糖は、例えばエーテル化、エステル化、酸加水分解、デキストリン化、酸化又は酵素処理(例えば、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、又はグルコアミラーゼによって)により、修飾されているか又は誘導体化されていてもよい。好ましくは、ホルムアルデヒドを含まない結合剤は、少なくとも1種類の多糖を有し、それは、少なくとも1種類の非デンプン多糖、少なくとも1種類の無アミロースデンプン、少なくとも1種類の低アミロースデンプン又はそれらの組合せである。
【0016】
本発明の目的において、「非デンプン多糖」は、デンプン以外のあらゆる多糖として定義される。非デンプン多糖の例としては、限定されるものではないが、セルロース、ガム(例えばグアー及びキサンタン)、アルギナート、ペクチン及びゲランならびにそれらの誘導体が挙げられる。好ましい非デンプン多糖はセルロース及びその誘導体、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸塩及びグアーである。その上、非デンプン多糖の低分子量形は、それらが適用しやすいことから好ましい。市販の非デンプン多糖は、一般にレオロジー改質剤として使用される。それ故に、その溶液粘度は高くなる傾向がある。非デンプン多糖は、10%溶液の粘度が、25℃で10,000cps未満、好ましくは5,000cps未満、より好ましくは1,000cps未満であるように解重合される。本発明の目的において、ホルムアルデヒドを含まない結合剤という用語と結合剤という用語は同義的に使用される。非デンプン多糖を解重合するためのあらゆる方法が使用されてもよい。非デンプン多糖を解重合する一方法は、その物質の水溶液を加熱し、フリーラジカル発生剤を導入することである。過酸化物は優れたフリーラジカル発生系である。特に優れた系は、過酸化水素とFeの混合物である。しかし、非デンプン多糖を解重合する任意のその他の方法、例えば強酸又は強塩基の添加を用いてもよく、それも本発明の範囲内である。
【0017】
本発明の目的において、「無アミロースデンプン」は、5重量%未満のアミラーゼを有するデンプンとして定義され、ワキシーデンプンとしても公知である。これらの非アミロースデンプンの例としては、限定されるものではないが、ワキシータピオカ、ワキシージャガイモ、ワキシーメイズ、及びデキストリン、例えばピロデキストリン、マルトデキストリン及びβ−リミットデキストリンなどが挙げられる。これらの無アミロースデンプンは、例えばエーテル化、エステル化、酸加水分解、デキストリン化、酸化又は酵素処理(例えば、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、又はグルコアミラーゼによって)により、修飾されていても誘導体化されていてもよい。さらに、無アミロースデンプンを誘導体化して、カチオン性、アニオン性、両性、又は非イオン性物質を製造することができる。アミロース含有デンプンとは違って、無アミロースデンプンは、逆行の傾向が少なく、より良好なポットライフを結合剤系にもたらす。本発明者らは、無アミロースデンプンと架橋剤の組合せが24時間を超えるポットライフを有することを見出した。このことは、25℃の10%結合剤溶液の粘度が24時間の間に500%を上回って増加しないことを意味する。
【0018】
本発明において有用な無アミロースデンプンは水溶性であり、20又はそれ以上の水流動度を有する。水流動度(「WF」)は、本明細書において、0〜90の尺度で測定される粘度の経験的試験であり、この際、流動度は粘度に反比例する。デンプンの水流動度は、一般に、24.73cpsの粘度の標準油を用いて30℃で標準化された、トーマス回転剪断型粘度計(Arthur A.Thomas Co.,Philadelphia,Pennsylvaniaより市販されている)を用いて測定される(この油は100回転あたり23.12±0.05秒を要する)。水流動度の正確かつ再現可能な測定は、そのデンプンの転化の程度に応じて異なる固体レベルで100回転する間の経過時間を測定することにより得られる、つまり、転化が増大するにつれ、粘度は低下し、WF値は増加する。デンプンの分子量が高くなるほど、又はWF値が低くなるほど、物理的特性、例えばその結合剤の引張り強度は改善される。しかし、デンプンの分子量が高くなるほど、又はWF値が低くなるほど、特に噴霧適用においてその結合剤を適用させることは困難になる。それ故に、これらの2つの対立する要因間で妥協がなされる必要がある。一態様では、無アミロースデンプンは、40又はそれ以上の水流動度を有してもよい。もう一つの態様では、無アミロースデンプンは、60又はそれ以上の水流動度を有してもよい。さらにもう一つの態様では、無アミロースデンプンは、70又はそれ以上の水流動度を有してもよい。
【0019】
本発明の目的において、「低アミロースデンプン」は、5〜40重量%の間のアミロースを有するデンプンとして定義される。これらの低アミロースデンプンの典型的な供給源は、穀類、塊茎、根、豆果及び果実である。天然源は、トウモロコシ、エンドウ、ジャガイモ、サツマイモ、バナナ、大麦、小麦、米、サゴ、アマランス、タピオカ、クズウコン、カンナ及びソルガムでありうる。本発明の目的において、「安定化された低アミロースデンプン」は、デンプンが加熱処理(cooked)された後に少なくとも12時間25℃で保存した場合に、その10%溶液がゲルを形成しない低アミロースデンプンとして定義される。化学的に未修飾の低アミロースデンプンは、デンプンが加熱処理された後に24時間に満たないうちに25℃で10%溶液として保存した場合に、逆行し、ゲルを形成するか又は粘度が著しく増加する。このゲル又は粘度形成によりこれらのデンプンはスプレーするのに非常に困難となり、そのために、これらのデンプンは、結合剤溶液のためのこれらの用途に適用されてこなかった。本発明の安定化された低アミロースデンプンは、化学的又は物理的に修飾されている低アミロースデンプンである。低アミロースデンプンは、化学的に修飾されて、アニオン性、非イオン性及びカチオン性誘導体を製造することができる。これらの安定化された低アミロースデンプンの例としては、限定されるものではないが、エーテル及びエステル誘導体が挙げられる。エーテル誘導体は通常エステル誘導体よりもよく逆行に抵抗するが、両方の種類とも機能する。実際に、デンプン溶液は、基材に適用するために十分に長い間(12時間以上)安定な状態を保つことができ、その後に有用な特性、例えば耐水性及び耐湿性をもたらす一部の逆行を可能にするので、スターチアセテートのようなエステルに関連する「限定された」安定性が望ましいであろう。エーテル誘導体の具体例は、ヒドロキシアルキル化デンプン、例えばヒドロキシプロピル化及びヒドロキシエチル化デンプンであり、それらが好ましい。適したエステル誘導体としては、酢酸塩、及び半エステル、例えば、それぞれ無水酢酸、無水コハク酸と、アルケニル無水コハク酸との反応により調製される、スクシネート及びアルケニルスクシネート;ナトリウムもしくはカリウムオルトホスフェート又はナトリウムもしくはカリウムトリポリホスフェートとの反応により調製されるリン酸塩誘導体が挙げられる。デンプンエステル及び半エステル、特にアルケニル無水コハク酸で置換されている、デンプンアルケニル(例として:オクテニル及びドデシル)スクシネート誘導体は本発明において特に有用である。好ましい置換度(DS)は、0.001〜1.0の範囲内、好ましくは0.005〜0.5の範囲内、最も好ましくは0.01〜0.1の範囲内である。
【0020】
本発明において有用な安定化された低アミロースデンプンは、水溶性であり、20又はそれ以上の水流動度を有する。一態様では、安定化された低アミロースデンプンは、40又はそれ以上の水流動度を有し得る。もう一つの態様では、安定化された低アミロースデンプンは、60又はそれ以上の水流動度を有し得る。さらにもう一つの態様では、安定化された低アミロースデンプンは、70又はそれ以上の水流動度を有し得る。
【0021】
本発明において有用な架橋剤は、多糖架橋剤と称される。本発明の目的において、「多糖架橋剤」とは、多糖又はその誘導体と反応して2又はそれ以上の結合を形成することのできるあらゆる物質をさす。このような結合には、共有結合、イオン結合、水素結合又はその任意の組合せが含まれる。本開示の目的において、多糖架橋剤という用語と架橋剤という用語は同義的に使用されうる。多糖は、多糖架橋剤上の官能基と反応することのできる多数のヒドロキシル基を有する。適した架橋剤の例としては、アジピン酸/酢酸混合無水物、エピクロロヒドリン、トリメタリン酸ナトリウム、トリメタリン酸ナトリウム/トリポリリン酸ナトリウム、アクロレイン、オキシ塩化リン、ポリアミド−エピクロロヒドリン架橋剤(例えば、Herculesより入手可能なPOLYCUP(登録商標)1884架橋樹脂)、無水物含有ポリマー(例えば、SCRIPSET(登録商標)740、Herculesより入手可能なエステル化スチレン無水マレイン酸共重合体のアンモニウム溶液)、ポリカルボン酸塩(例えば、Alco Chemical製のAlcosperse 602A)環状アミド凝縮物(例えば、Omnovaより入手可能なSUNREZ(登録商標)700C)、ジルコニウム錯体とチタン錯体、例えば、アンモニウムジルコニウムカルボネート、カリウムジルコニウムカルボネート、チタンジエタノールアミン錯体、チタントリエタノールアミン錯体、チタンラクテート、チタンエチレングリコラート、アジピン酸ジヒドラジド、ジエポキシド、例えば、グリセロールジグリシジルエーテル及び1,4ブタンジオールジグリシジルエーテル、ならびにポリエポキシド化合物、例えば、ポリアミン/ポリエポキシド樹脂(1,2−ジクロロエタンとエピクロロヒドリンの反応生成物である)、二官能性モノマー、例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート及びエチレングリコールジアクリレート、二無水物、アセタール、シラン及び多官能性シラン、ブロックトアルデヒド(例えば、米国特許第4,625,029号、同第4,656,296号及び同第4,695,606号を参照のこと)、例えば、グリオキサールとポリオールの反応生成物、例えば、グリセロール、ホウ素化合物、例えば、ホウ酸ナトリウム又はホウ砂、及びそれらの組合せが挙げられる。本発明の例となる実施形態では、多糖架橋剤は、少なくとも1種類の非デンプン多糖架橋剤、少なくとも1種類の無アミロースデンプン架橋剤、少なくとも1種類の低アミロースデンプン架橋剤又はそれらの組合せであってもよい。
【0022】
多糖架橋剤が多糖誘導体と反応することは本発明の範囲内である。例えば、非デンプン多糖が、カルボン酸基で官能化される場合(CMCがこのような化合物の一例である)、これらのカルボン酸基は、ポリオール、例えばグリセロールなどと反応して架橋系を形成することができる。
【0023】
一実施形態では、本発明において有用な架橋剤は、中性前後のpHで非デンプン多糖と反応する。さらなる態様において、この架橋剤は、周囲温度で非デンプン多糖と反応せず、高温下で、例えば100℃超で活性化される。架橋剤と非デンプン多糖との間の反応が周囲温度で起こらないことにより、この水性結合剤系により長いポットライフがもたらされる、これは複合材料製造中の利点である。
【0024】
別の例では、無アミロースデンプンがカルボン酸基で官能化される場合、それらのカルボン酸基は、ポリオール、例えばグリセロールなどと反応して架橋系を形成することができる。その上、この無アミロースデンプン誘導体はそれ自体と架橋することができる。例えば、無アミロースデンプンがカルボン酸基で官能化される場合、これらのカルボン酸基はデンプンのヒドロキシル基と反応して架橋系を形成する可能性がある。これらの無アミロースデンプン架橋剤には、分子量が1000又はそれ以上のカルボン酸基を含有する合成ポリマー、及び、3又はそれより低いpHでデンプンと反応する必要のあるポリマーは除外される。この種類の架橋剤に必要とされる低いpHは、装置において腐食の問題を引き起こすので好ましくない。
【0025】
一実施形態では、本発明において有用な架橋剤は、中性前後のpHで無アミロースデンプンと反応する。さらなる態様において、この架橋剤は周囲温度で無アミロースデンプンと反応せず、高温下、例えば100℃超で活性化される。架橋剤と無アミロースデンプンとの間の反応が周囲温度で起こらないことにより、この水性結合剤系により長いポットライフがもたらされる、これは複合材料製造中の利点である。
【0026】
さらに別の例では、もし安定化された低アミロースデンプンがカルボン酸基で官能化される場合、これらのカルボン酸基は、ポリオール、例えばグリセロールなどと反応して架橋系を形成することができる。その上、安定化された低アミロースデンプン誘導体はそれ自体と架橋する可能性がある。例えば、安定化された低アミロースデンプンがカルボン酸基で官能化される場合、これらのカルボン酸基はデンプンのヒドロキシル基と反応して架橋系を形成する可能性がある。これらの安定化された低アミロースデンプン架橋剤には、分子量が1000又はそれ以上のカルボン酸基を含有する合成ポリマー、及び、3又はそれより低いpHでデンプンと反応する必要のあるポリマーは除外される。この種類の架橋剤に必要とされる低いpHは、装置において腐食の問題を引き起こすので好ましくない。
【0027】
一実施形態では、本発明において有用な架橋剤は、中性前後のpHで安定化された低アミロースデンプンと反応する。さらなる態様において、この架橋剤は周囲温度で安定化された低アミロースデンプンと反応せず、高温下、例えば100℃超で活性化される。架橋剤と安定化された低アミロースデンプンとの間の反応が周囲温度で起こらないことにより、この水性結合剤系により長いポットライフがもたらされる、これは複合材料製造中の利点である。
【0028】
有用な架橋剤は、結合剤に長期安定性をもたらす不可逆的結合を形成することができる。一態様では、架橋剤は、アジピン酸/酢酸混合無水物、トリメタリン酸ナトリウム、トリメタリン酸ナトリウム/トリポリリン酸ナトリウム、ポリアミド−エピクロロヒドリン架橋剤、ポリアミン/ポリエポキシド樹脂、環状アミド凝縮物、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、アンモニウムジルコニウムカルボネート、カリウムジルコニウムカルボネート、チタンジエタノールアミン錯体、チタントリエタノールアミン錯体、チタンラクテート、チタンエチレングリコラート、ブロックトアルデヒド、例えば、グリオキサールとグリセロールの反応生成物など、ホウ酸ナトリウム、二無水物及び/又は多官能性シランであってもよい。
【0029】
デンプンの架橋は当分野で周知である。架橋剤及び反応条件の記載は、例えば、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる、Rutenberg, M. W. and D. Solarek, Starch Derivatives: Production and Uses, Acad. Press Inc., pp. 324-332 (1984)、に見出すことができる。また、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる、Wurzburg, O.B., Modified Starches: Properties and Uses. CRC Press pp. 42-45 and 245-246 (1986), and Hullinger, C. H., "Production and uses of crosslinked starch" in Starch, Chemistry and Technology, Whistler and Paschall Eds, Academic Press, New York, Chpt. 19 (1967) も参照されたい。
【0030】
結合剤の量は、複合材料の最終使用用途に依存する。結合剤の量は、複合材料の重量で0.1から50重量%まで変動してもよく、一般に複合材料の重量で1〜30重量%である。
【0031】
ホルムアルデヒドを含まない結合剤溶液中の架橋剤の量は、架橋剤の種類、及びその結合剤を中で使用している用途によって決まる。ホルムアルデヒドを含まない結合剤中の架橋剤の重量%は、約0.1〜約70%であってもよい。もう一つの態様では、それは約1〜約50%であってもよい。さらに別の態様では、架橋剤重量%は、約2〜約40%であってもよい。
【0032】
本発明のホルムアルデヒドを含まない結合剤は、多数の方法で基材に適用することができる。基材がガラス繊維であるならば、結合剤は一般に、ガラス繊維で形成された基材、例えばガラス繊維マットの全体にわたって均一に結合剤を分布させるために適したスプレーアプリケーターを用いて、水溶液の形態で適用される。水溶液の典型的な固形物は、約1〜50%であってもよい。一態様では、固形分は、2〜40%であってもよい。さらに別の態様では、固形分は、結合剤水溶液の5〜25重量%であってもよい。結合剤溶液がスプレーされる場合、結合剤溶液の粘度は、結合剤溶液中の固形物の最大レベルを決定しうる。また、結合剤は、当分野で公知のその他の手段、例えば、エアレススプレー、エアスプレー、パジング、含浸及びロール塗布などにより適用されてもよい。
【0033】
複合材料は、結合剤が基材に適用され、次いで硬化されると形成される。本開示の目的において、「硬化」とは、多糖と架橋剤との間の架橋反応を促進することのできるあらゆるプロセスをさす。硬化は一般に、温度と圧力の組合せによって達成される。硬化を達成する簡単な方法は、結合剤と基材を高温のオーブンの中に入れることである。一般に、硬化オーブンは、110℃〜325℃の温度で動作する。本発明のホルムアルデヒドを含まない結合剤系の一つの利点は、それが比較的低い温度、例えば200℃未満の温度で硬化することである。もう一つの態様では、ホルムアルデヒドを含まない結合剤系は、180℃未満で、より好ましくは150℃未満で硬化する。この複合材料は、5秒〜15分で硬化することができる。もう一つの態様では、この複合材料は、30秒〜3分の時間で硬化することができる。硬化温度及び圧力は、架橋剤の種類及び量、用いる触媒の種類及びレベルならびに基材の性質に依存する。例えば、断熱材と比較して、より大きい圧力(1000ポンド/インチより大きい)が、中密度ファイバーボード(MDF)のボードの製造に利用されている。
【0034】
基材の重量%に基づく、結合剤の重量%は、用途によって様々であり得、基材の種類に依存するであろう。一般に、基材の重量に基づく、結合剤の重量%は、1〜50の範囲内、より好ましくは2〜40の範囲内、最も好ましくは3〜20の範囲内である。
【0035】
結合剤は、水溶液の形態で適用することができる。一般に、結合剤水溶液のpHは約3より大きい、より好ましくは約3〜約12である。非デンプン多糖結合剤系に関して特に、もう一つの態様では、結合剤溶液のpHは、好ましくは約4〜約11、より好ましくは約7〜約10である。無アミロース及び低アミロース結合剤系に関して、さらに別の態様では、結合剤溶液のpHは、好ましくは約4〜約10、より好ましくは約6〜約9である。
【0036】
結合剤溶液は一般にスプレーされるので、粘度は比較的低い必要がある。さらに、多糖は、スプレーすることができるように、粒状の形態ではなく、溶液の形態であるべきである。一態様では、10%結合剤水溶液の粘度は、25℃で10,000cPs未満である必要がある。もう一つの態様では、10%結合剤水溶液の粘度は、25℃で1,000cPs未満である必要がある。なお一層さらなる態様では、10%結合剤水溶液の粘度は、25℃で200cPs未満である必要がある。また、結合剤溶液は、結合剤系に長い十分なポットライフをもたらす周囲温度で架橋するべきでない。しかし、25℃の10%結合剤水溶液の粘度の上昇が24時間の間500%以下であるならば、少量の架橋が結合剤溶液中で起こることは本発明の範囲内である。さらなる態様において、25℃の10%結合剤水溶液の粘度の上昇は、24時間の間100%以下である。なお一層さらなる態様では、25℃の10%結合剤水溶液の粘度の上昇は、24時間の間50%以下である。当業者であれば、本来の粘度が低いほど、24時間後の粘度の上昇が大きい可能性があることを理解するであろう。その上、当業者であれば、多糖は、多糖及び架橋剤を含有する水溶液が基材に適用された後、かつ硬化プロセスの後に架橋される必要があることを理解するであろう。しかし、好ましくはないが、上記の粘度制限を満たすのであれば、多糖の製造中に少量の架橋が起こることは本発明の範囲内である。
【0037】
ホルムアルデヒドを含まない結合剤溶液中の架橋剤の量は、架橋剤の種類、及びその結合剤を中で使用している用途によって決まる。ホルムアルデヒドを含まない結合剤中の架橋剤の重量%は、約0.1〜約70%であってもよい。もう一つの態様では、それは約1〜約50%であってもよい。さらに別の態様では、架橋剤の重量%は、約2〜約40%であってもよい。
【0038】
任意選択の触媒をこの結合剤配合物に添加して、結合剤をより速い速度又はより低い温度又は中性に近いpH範囲で硬化させてもよい。当業者であれば、選択される触媒が使用する架橋剤によって決まることを理解するであろう。同様に、必要な触媒の量は、使用する架橋剤によって決まる。例えば、もし架橋剤がカルボン酸基を含有する場合、リン系触媒、例えば、次亜リン酸ナトリウムなどを用いてもよい。この場合、次亜リン酸ナトリウム触媒は、結合剤の総重量の約1〜10重量%で添加されてもよい。さらなる例として、もし架橋剤がトリメタリン酸ナトリウム(STMP)又はトリポリリン酸ナトリウムである場合、尿素を触媒として使用することができる。この場合、尿素触媒は、結合剤の総重量の約1〜50重量%で添加されてもよい。
【0039】
添加剤を前記ホルムアルデヒド結合剤に添加してもよい。本発明の目的において、「添加剤」は、結合剤の性能を改良するために結合剤に添加されてもよいあらゆる配合剤として定義される。これらの添加剤には、耐湿性、耐水性又は耐薬品性、ならびにその他の環境上の影響に対する抵抗性を付与する配合剤;及び、耐蝕性を付与する添加剤、ならびに最終使用用途を決定付ける可能性のある、基材又はその他の表面に結合剤を付着させることを可能にする添加剤が含まれてもよい。例えば、もし複合材料が、床仕上げ材の製造で使用されるガラス繊維マットである場合、そのガラス繊維マットは床仕上げ材に付着することが必要でありうる。適した疎水性添加剤はこの表面付着に役立ちうる。これらの添加剤の例としては、官能性例えば腐食阻害などをもたらす結合剤に添加することのできる材料、湿分及び撥水性(moisture and water repellency)を与えるための疎水性添加剤、ガラスの浸出を減少させるための添加剤、剥離剤、pHを低下させるための酸、抗酸化剤/還元剤、乳化剤、染料、色素、オイル、充填剤、着色剤、硬化剤、移行防止助剤(anti-migration aids)、殺生物剤、抗真菌剤、可塑剤、ワックス、消泡剤、カップリング剤、熱安定剤、難燃剤、酵素、湿潤剤、及び滑沢剤、が挙げられる。これらの添加剤は、結合剤の総重量の約20重量%又はそれ以下であってもよい。
【0040】
基材がガラス繊維である場合、多糖は、シランもしくはシラノール官能性を多糖に導入する試薬で誘導体化されてもよい。逆に、添加剤、例えば、小分子シランなどを硬化前に結合剤配合物に導入してもよい。この小分子シランは、該シランの有機部分が硬化条件下で多糖と反応し、一方、シランもしくはシラノール部分がガラス繊維基材と反応するように選択される。これにより結合剤と基材との間に化学結合が導入され、その結果、より大きな強度及びより良好な長期性能がもたらされる。また、シランは結合剤系において添加剤として使用することができるが、該シランは単独で架橋剤として使用することができる。
【0041】
好ましい添加剤は、防湿性、耐湿性及び耐水性をもたらす疎水性添加剤である。本発明の目的において「疎水性添加剤」には、あらゆる撥水材料が含まれ得る。それは、疎水性エマルジョンポリマー、例えば、スチレン−アクリレート、エチレン−酢酸ビニル、ポリシロキサン、フッ素化ポリマー、例えば、ポリテトラフルオロエチレンエマルジョン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンエマルジョン及びポリエステルであってもよい。その上、それは、シリコーン又はシリコーンエマルジョン、ワックス又は乳化ワックス又は界面活性剤であってもよい。界面活性剤はそれ自体が疎水性をもたらしてもよいし、界面活性剤を用いて疎水性不水溶性材料を供給してもよい。界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性又は両性であってもよい。一態様では、界面活性剤は、非イオン性及び/又はアニオン性である。非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルコールエトキシレート、エトキシル化ポリアミン及びエトキシル化ポリシロキサンが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、アルキルカルボキシレート及びアルキルアリールスルホネート、α−オレフィンスルホネート及びアルキルエーテルスルホネートが挙げられる。好ましい疎水性添加剤は、ポリビニルアルコール又はシリコーンが挙げられる。
【0042】
実施例
以下の限定されない例は、本発明を例証するために紹介される。
【0043】
実施例1
ヒドロキシエチルセルロース(Dowより入手可能なQP300)を、次の方法で解重合した。30グラムのQP300を、270gの脱イオン(deionized to)水に導入した。次に、指定された量(表1参照)の硫酸第一鉄アンモニウム六水和物及び過酸化水素(H)溶液(35%活性)を添加した。一例では、過硫酸ナトリウムを解重合剤として使用した。混合物を示された温度まで加熱し(表1参照)、その温度を示された時間保持した(表1参照)。これらの溶液を室温まで冷却し、粘度を最初に、そして24時間後に測定した。
【0044】
【表1】

【0045】
表1中のこれらのデータは、上に詳述される手順を受けてCMCの粘度が大いに低下することを示す。CMCの粘度は、未処理材料の10%溶液に関して200,000cPsより大きい。しかし、解重合されたCMC溶液の粘度は、10,000cps未満であり、10%溶液の粘度に対して大部分が1000cPs未満である。
【0046】
実施例2
カルボキシメチルセルロース(Hercules,Inc.,Wilmington,Delawareより入手可能なAqualon CMC 9M3ICT)を、次の方法で解重合した。30グラムのAqualon CMCを、270gの脱イオン(deionized to)水に導入した。0.03gの硫酸第一鉄アンモニウム六水和物及び1〜3gの過酸化水素(H)溶液(35%活性)を添加した(表1参照)。この混合物を60℃まで加熱し、その温度で30分間保持した。この溶液を室温まで冷却し、粘度を最初に、そして24時間後に測定した。
【0047】
【表2】

【0048】
表2中のこれらのデータは、溶液粘度が極めて低い(1000cps未満)ことを示し、これにより、材料を容易に適用させることができる。
【0049】
実施例3
実施例2の解重合されたCMCを多数の異なる架橋剤と組み合わせて、ガラス繊維用の結合剤として試験した。試験プロトコールには、非デンプン多糖及び架橋剤の溶液を調製することが含まれた。ガラスマイクロファイバーフィルターペーパーシート(20.3×25.4cm、カタログ番号66227、Pall Corporation.,Ann Arbor,Michigan)を、次に結合剤溶液に浸漬し、ロールパダー(roll padder)に通した。次に、コーティングされたシートを180℃にて20分間オーブン内で硬化させた。硬化前後のシートの重量を測定し、それを用いて、乾燥した結合剤の重量を濾紙重量又はマットに対する百分率として計算する。
【0050】
試験した系は全て、優れた常態引張り強度を有した(ホルムアルデヒドに基づく系の常態引張り強度に相当)。湿潤引張り強度は、以下の方法で推定した。硬化したシートを、次に水中に10分間浸した後、手で引き離すことにより試験した。この湿潤引張り強度に1〜5の尺度で定性的な等級付けを行った。等級1は、そのサンプルが湿潤引張り強度を全く有さないことを示し、等級5は、その引張り強度が常態引張り強度と同様であることを示す(湿潤状態で引張り強度は低下しない)。ホルムアルデヒドに基づく樹脂系は、この試験で3〜5の等級を得ると予測される。表3中のこれらのデータは、特にスチレン無水マレイン酸共重合体及びポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂を架橋剤として使用する場合に、これらの系が良好な湿潤引張り強度を有することを示す。
【0051】
【表3】

【0052】
実施例4
非デンプン多糖を多数の異なる架橋剤と組み合わせて、ガラス繊維用の結合剤として試験した。この非デンプン多糖は2つの異なる分子量のヒドロキシエチルセルロース(HEC)であった。粉末のHECを、水(5%溶液としてQP−300及び9%溶液としてQP−09−L)中で混合すること、ならびに60℃で30〜60分間透明な溶液が得られるまで加熱処理することにより溶解させた。シートをこれらの非デンプン多糖でコーティングし、コーティングしたシートを180℃の代わりに165℃で20分間オーブンの中で硬化させたことを除いて、実施例3に記載される通り試験した。
【0053】
試験した系は全て、優れた常態引張り強度を有した(ホルムアルデヒドに基づく系の常態引張り強度に相当)。表4及び表5中のデータは、これらの系が、特により高い架橋剤レベルで良好な湿潤引張強度を有することを示す。
【0054】
【表4】

【0055】
【表5】

【0056】
実施例5
2種類の異なるカルボキシメチルセルロース(CMC)を、実施例3に記載されるプロトコールに従って試験した。粉末のCMCを、水(5%溶液としてFinnfix WRM及び4%溶液としてAqualon CMC 9M3ICT)中で混合すること、ならびに60℃で30〜60分間透明な溶液が得られるまで加熱処理することにより溶解させた。
【0057】
【表6】

【0058】
【表7】

【0059】
表6及び7中のデータは、試験したCMCと架橋剤の組合せが、ホルムアルデヒドを含まない結合剤に非常によく適したことを示す。
【0060】
実施例6
非デンプン多糖、つまり、アルギン酸塩を実施例3に記載されるプロトコールに従って試験した。粉末のアルギン酸塩を、水(5%溶液としてKelgin A5C542)中で混合すること、ならびに60℃で30〜60分間透明な溶液が得られるまで加熱処理することにより溶解させた。
【0061】
【表8】

【0062】
表8中のこれらのデータは、アルギン酸塩と一連の架橋剤が非常に良好なホルムアルデヒドを含まない結合剤系であることを示す。
【0063】
実施例7
中密度ファイバーボード(MDF)サンプルを、実験室内で以下のプロトコールを用いて製造する:
850gの木材パルプを、ロータリーミキサーに入れた。結合剤溶液をこの一定に混合している木材パルプの上にスプレーする。この結合剤は、実施例2aの多糖、多糖の重量に基づいて10重量%の活性Polycup 6130(Herculesより入手可能な架橋剤)及び5重量%の活性シリコーン(Dow Corning 75SFシリコーンエマルジョン)の混合物である。混合した木材パルプと結合剤を、篩に通して、サイズが35×25×10cmの型に入れ、木材パルプが型の中で均一に分配されるようにする。次に、150ポンドのおもりを予成形された中密度ファイバーボードの上に5分間置く。次に、この中密度ファイバーボードを、加圧チャンバの加温板と加温板との間に入れて硬化させる。このチャンバ内の圧力は2300〜2800ポンド/インチに設定され、温度は160℃に維持される。本発明の結合剤を用いて硬化させた中密度ファイバーボードは、許容される物理的特性を有することが見出された。
【0064】
上記実施例1〜7は、非デンプン多糖と架橋剤が、ホルムアルデヒドに基づく結合剤系と同様の性能を有することを例証する。
【0065】
実施例8
結合剤系の有効性は、下の試験手順を用いて測定される。
1.結合剤(Ultimate)を有する市販のグラスウールを小片に切断した。およそ15〜20gのグラスウールを、アルミウム製鍋の中で秤量し、450℃のオーブンに少なくとも3時間、又はその重量が一定になるまで入れ、結合剤を除去した(重量減少は5〜7%前後)。グラスウールの色は黄色から灰色に変わった。
2.グラスウール繊維を、500gのアルミナボールの入っている1000mlのジャーの中に入れた。このジャーをボールミルに約2分間設置することにより、グラスウールから粉末を製造した。この繊維は、100倍の倍率を用いる顕微鏡で目に見えた。
3.粉末を篩い分けした。
4.結合剤溶液を、100mLビーカー中で1グラムの結合剤と2グラムの水及び10gの上で調製した粉末とを混合することにより調製し、十分に混合し、結果として流れない加工可能なペーストがもたらされた。
5.ごく一部のペーストから、コルクドリル(cork drill)の後部を用いて5mmのペレットを製造した。これらのペレットを、500Wの電子レンジに入れ、20分間乾燥させることにより硬化させた。あるいは、これらのペレットを150℃のオーブン中2時間で硬化させてもよい。
6.硬化したペレットを、100mlの水の入ったプラスチック製ボトルの中に入れた。次に、このボトルを70℃に設定した水浴中に入れた。ペレットをボトルから取り出し、最初にペーパータオルで乾かし、次に、再度100℃のオーブン中で2時間乾燥させることにより、サンプルを24時間おきに試験した。もし乾燥したペレットが強固で、指の間で押しつぶすことができない場合は、その結合剤系はさらに効果的であるとみなされる。この試験でペレットがより長く存続するほど、その結合剤系の性能はより優れている。
【0066】
標準的なホルムアルデヒドに基づく結合剤(フェノール樹脂)は、上記試験の1〜4日存続する。優れた結合剤系は11日まで存続する。もし結合性能が標準以下であるならば、サンプルは直ちに分解する。
【0067】
架橋剤と架橋した多数の無アミロースデンプンを、上に詳述されるプロトコールに従って試験した。これらのサンプルに関するデータを下の表9に列挙する。
【0068】
【表9】

【0069】
ワキシーメイズは、0%のアミロースを含むので、無アミロースデンプンである。これらのデータは、無アミロースデンプンを用いるホルムアルデヒドを含まない結合剤が優れた結合剤系を形成することを示す。
【0070】
実施例9
米国特許第5,895,804号に記載されるデンプン系を、ガラス繊維マット用の結合剤としてpH8で試験し、本発明のホルムアルデヒドを含まない結合剤系と比較した。試験プロトコールには、結合剤を12.5%固形分まで希釈することが含まれる。ガラスマイクロファイバーフィルターペーパーシート(20.3×25.4cm、カタログ番号66227、Pall Corporation.,Ann Arbor,Michigan)を、次に結合剤溶液に浸漬し、ロールパダーに通した。次に、コーティングされたシートを175℃にて10分間オーブンで硬化させる。典型的なアドオン値は40%であり、濾紙重量の百分率としての乾燥結合剤重量である。次に、硬化したシートを水に60分間浸し、自己識別型テンションロードセル(sclf idcntifying tcnsion load ccll)を装備したInstronを用いて引張り強度を測定する。
【0071】
【表10】

【0072】
上記の表10中のデータは、ポリアクリレート結合剤を含むデンプン系が、pH8で硬化された場合に弱い湿潤引張り強度を有することを示す。比較すると、本発明に従う無アミロースデンプン架橋剤と組み合わせた無アミロースデンプンは、8〜10のpH範囲で硬化された場合に優れた湿潤引張り強度を有する。このことは、本発明の結合剤系が良好な耐湿性及び優れた長期特性を有することを示す。その上、前記結合剤は3より大きいpHで硬化するので、本発明のシステム(米国特許第5,895,804号のシステムとは異なる)は、腐食性でない。
【0073】
実施例10
多数の結合剤系の湿潤引張り強度を、実施例9に詳述されるプロトコールを用いて試験した。60分浸漬した後、硬化したシートを手で引き離すことにより試験した。この湿潤引張り強度に1〜5の尺度で定性的な等級付けを行った。1は、湿潤引張り強度がなく、5は常態引張り強度に類似する湿潤引張り強度である。
【0074】
【表11】

【0075】
表11中のデータは、ポリビニルアルコール及びシリコーンが、湿潤引張り強度を改良する適した疎水性添加剤であることを示す。
【0076】
実施例11
多数の無アミロースデンプン(National Starch and Chemicalより入手可能)を、ストーンウールを基材として使用することを除いて実施例8の手順を用いて試験した。ペレットが水浴中で存続した日数を、下の表12に列挙する。
【0077】
【表12】

【0078】
表12中のデータは、この結合剤は水に5日間又はそれ以上浸された場合でさえ崩壊しないので、これらの無アミロースデンプン結合剤が優れた耐水性を有することを示す。
【0079】
実施例12
中密度ファイバーボード(MDF)サンプルを、実験室内で以下のプロトコールを用いて製造した:
850gの木材パルプを、ロータリーミキサーに入れた。結合剤溶液をこの一定に混合している木材パルプの上にスプレーする。この結合剤は、酸分解アミオカデンプン WF60、デンプンの重量に基づいて10重量%の活性Polycup 6130(Herculesより入手可能な架橋剤)及び5重量%の活性シリコーン(Dow Corning 75SFシリコーンエマルジョン)の混合物である。混合した木材パルプと結合剤を、篩に通して、サイズが35×25×10cmの型に入れ、木材パルプが型の中で均一に分配されるようにする。次に、150ポンドのおもりを予成形された中密度ファイバーボードの上に5分間置く。次に、この中密度ファイバーボードを、加圧チャンバの加温板と加温板との間に入れて硬化させる。このチャンバ内の圧力は2300〜2800ポンド/インチに設定され、温度は160℃に維持される。本発明の結合剤を用いて硬化させた中密度ファイバーボードは、許容される物理的特性を有することが見出された。
【0080】
実施例13
一連のホルムアルデヒドを含まない結合剤溶液を、デンプン水溶液と架橋剤の水溶液とを混合することにより調製した。これらの溶液には、デンプンの重量に基づいて20重量%の架橋剤が含まれた。次に、これらの溶液を水で希釈して、10%固形分を含有する最終溶液を得た。これらのホルムアルデヒドを含まない結合剤溶液の粘度(下の表13参照)を、25℃にて直ちに、そして24時間後に測定した。
【0081】
【表13】

【0082】
表13中のデータは、無アミロースデンプンと架橋剤の組合せが、10%溶液として25℃で200cPs未満の粘度を有することを示す。さらに、溶液が粘度の著しい上昇(>100%)を示さないのでこれらの粘度は24時間にわたって安定である。一方、高アミロースデンプンは(たとえ架橋剤が存在していなくても)25℃でゲルを形成し、それによりこれらの材料を従来手段、例えばスプレーなどで適用することが困難となる。それ故に、無アミロースデンプンと架橋剤の組合せは、低い粘度を有し、それにより従来手段、例えばスプレーなどで適用することができる。その上、粘度は時間と共に変化しないので良好なポットライフを可能にする。
【0083】
実施例14
流動性ワキシーメイズを、一連のシランを架橋剤として用いて、実施例10に詳述されるプロトコールを用いて湿潤強度について試験した。シランを、それぞれデンプンの1及び3重量%で添加した。ガラス繊維マットは、180℃で20分間オーブン中で硬化させた。全ての結合剤は3より大きいpHで硬化したので、本発明のシステムは腐食性ではない。
【0084】
【表14】

【0085】
表14中のデータは、シランが架橋剤として使用できること、及び、湿潤強度が劇的に改良されるので、結合剤とガラス繊維基材との接着を増大させることを示す。
【0086】
ガラス繊維マットを水に浸した後の「結合剤残率(Binder Retention)」を、TGAランプ試験により測定した(ランプ速度=10℃/分、室温から600℃まで傾斜をつけ、Nをパージガスとする)。ガラスマットを脱イオン水に10分間浸した後、周囲条件で一晩乾燥させる。TGA試験を、元の未浸漬のガラス繊維マットで、さらに、浸漬/再乾燥したガラス繊維マットで行った。600CでのTGA重量減少を、各々のガラス繊維マットに対する「結合剤含量」として記録した。ガラス繊維マットの「結合剤残率」は、次の通り定義される:
結合剤残率=(浸漬したマットの結合剤含量/未浸漬マットの結合剤含量)×100%
【0087】
このTGA結合剤残率試験により、結合剤耐水性の定量的測定が得られた。実施例14TGA結合剤残率試験
【0088】
図1のデータは、より高い結合剤残率に示されるように、結合剤とガラス繊維基材との接着をシランが劇的に増大させることを示す。
【0089】
実施例15
OSA修飾されているワキシーメイズデンプンを、架橋剤(デンプンの20重量%)としてSTMP及びトリポリ−ホスフェート、ならびに湿潤強度の触媒として尿素を用いて、実施例10に詳述されるプロトコールを用いて試験した。ガラス繊維マットを180℃にて20分間硬化させた。全ての結合剤は3より大きいpHで硬化したので、本発明のシステムは腐食性ではない。
【0090】
【表15】

【0091】
表15中のデータは、STMP及びトリポリホスフェートを架橋剤として使用する場合には尿素が良好な触媒であることを示す。
【0092】
ガラス繊維マットの結合剤残率は、実施例14に記載されるTGA法により試験した。図2中のデータは、STMP及びトリポリホスフェートを架橋剤として使用する場合に尿素が良好な触媒であるという上記の結論を裏付けた。
【0093】
実施例16
流動性ワキシートウモロコシデンプンを、架橋剤を用いずに、かつ、SC740及びPC6130を架橋剤として、実施例10に詳述されるプロトコールを用いて湿潤強度について試験し、かつ、実施例14に詳述されるTGA法を用いて結合剤残率について試験した。架橋剤を、それぞれデンプンの1及び10重量%で添加した。ガラス繊維マットは180℃にて20分間オーブン中で、3より大きいpHで硬化させた。図3及び4にそれぞれ説明されるように、湿潤強度試験及びTGA結合剤残率試験の両方が、外部架橋剤を含まないデンプンはガラス繊維基材への良好な結合を有さなかったことを示した。SC740及びPC6130を添加すると、より高い湿潤強度及びより高い結合剤残率値により実証されるように、デンプンのガラス繊維基材への結合はかなり増大した。
【0094】
【表16】

【0095】
実施例17
2種類の無アミロースデンプン(流動性ワキシーメイズ及びOSA修飾ワキシーメイズ)を、実施例10に詳述されるプロトコールを用いて湿潤強度について、及び実施例14に詳述されるTGA法を用いて結合剤残率について、外部から添加した架橋剤を含まずに試験した。ガラス繊維マットは180℃にて20分間オーブン中で、3より大きいpHで硬化させた。外部から添加した架橋剤を含まずに、OSA修飾ワキシーメイズは、図4に示される、高い値の湿潤強度及び高い値の結合剤残率で示されるように、ガラス繊維への良好な結合を示した。一方、流動性ワキシーメイズは、より弱い結合(低い湿潤強度及び低い結合剤残率)を示した。可能性のある説明の一つは、水の加工の際、現場に存在する二価のカチオン、例えば、Ca2+及びMg2+などが、イオン性架橋剤の役割を果たしてOSA修飾ワキシーメイズのアニオン性部位間を架橋するが、流動性ワキシーメイズは架橋しないことである。
【0096】
【表17】

【0097】
上記の実施例8〜17は、架橋剤を含まない無アミロースデンプンがホルムアルデヒドに基づく結合剤系と同様の性能を有することを例証する。無アミロースデンプンはホルムアルデヒドを含まない結合剤系の主原料である、そのために、この結合剤は経済的で、環境に優しく(green)、再生可能かつ持続可能である。さらに、この結合剤は中性のpHで硬化することができ、その他のホルムアルデヒドを含まない結合剤系に見られる腐食問題を解消する。さらに、本発明の水性のホルムアルデヒドを含まない結合剤は低い粘度及び優れたポットライフを有する。このホルムアルデヒドを含まない結合剤は、多様な基材と混合して、放出問題のない複合材料を製造することができる。
【0098】
実施例18
2種類の安定化されたデンプンを、結合剤溶液の一連の架橋剤と混合し、下に記載されるプロトコールを用いてガラスマットに適用した。この2種類のデンプンは、WFが70のヒドロキシプロピル化レギュラーコーン(regular corn)(デンプンA)及び、National Starch and Chemical,Bridgewater,New Jerseyより入手可能なWFが80のヒドロキシプロピル化タピオカ(デンプンB)であった。これらのデンプンを、80gの乾燥粉末を取り出し、320gの水中に分散させ、90℃で1時間加熱処理することにより加熱処理して20%水溶液を作製した。これらのデンプン溶液と、下の表18に列挙される架橋剤の希釈溶液を混合することにより結合剤溶液を調製した。
【0099】
【表18】

【0100】
試験プロトコールは、上の表18に列挙されるように11〜13%の間の固形分に結合剤を希釈することを伴う。ガラスマイクロファイバーフィルターペーパーシート(20.3×25.4cm、カタログ番号66227、Pall Corporation.,Ann Arbor,Michigan)を、次に結合剤溶液に浸漬し、ロールパダーに通した。次に、コーティングされたシートを180℃にて20分間オーブンで硬化させる。典型的なアドオン値は40%であり、濾紙重量の百分率としての乾燥結合剤重量である。次に、硬化したシートを水に10分間浸した。硬化したシートを、手で引き離すことにより試験した。この湿潤引張り強度に1〜5の尺度で定性的な等級付けを行った。1は、湿潤引張り強度がなく、5は常態引張り強度に類似する湿潤引張り強度である。ホルムアルデヒドに基づく結合剤は、この試験において1〜2の湿潤強度を有すると予期された。表18中のデータは、架橋剤と混合した安定化された低アミロースデンプンが、4.5〜10.5の範囲のpHで硬化させた場合に、良好なホルムアルデヒドを含まない結合剤であることを示す。
【0101】
ガラス繊維マットを水に浸漬した後の「結合剤残率」を、TGAランプ試験により試験した(ランプ速度=10℃/分、室温から600℃まで傾斜をつけ、Nをパージガスとする)。ガラスマット(glass amts)を脱イオン水に10分間浸した後、周囲条件で一晩乾燥させた。TGA試験は、元の未浸漬のガラス繊維マットで、さらに、浸漬/再乾燥したガラス繊維マットで行った。600CでのTGA重量減少を、各々のガラス繊維マットに対する「結合剤含量」として記録した。ガラス繊維マットの「結合剤残率」は、実施例14に定義されるとおりである。
【0102】
実施例18のガラス繊維マットの結合剤残率を、このTGA法を用いて測定した。結果を図5及び図6にまとめる。架橋剤SC740及びPC6130による架橋デンプンB及び架橋デンプンAが、高い結合剤残率値により示されるように、ガラス繊維に対して強い結合を有したことは明らかに見て取ることができる。架橋剤STMP及びホウ酸ナトリウムも、安定化された低アミロースデンプンのガラス繊維に対する結合剤を、特にUnipure GAに対して改良することができた。
【0103】
実施例19
安定化したデンプン(デンプンB)を、一連の架橋剤及び添加剤と表19に詳述される量で混合して結合剤溶液を形成し、実施例18に記載されるプロトコールを用いてガラスマットに適用した。デンプンは、80gの乾燥粉末を取り出し、320gの水中に分散させ、90℃で1時間加熱処理することにより加熱処理して20%水溶液を作製した。
【0104】
【表19】

【0105】
表19中のデータは、ポリビニルアルコール(PVOH)及びシリコーンが湿潤引張り強度を改良する非常に優れた疎水性添加剤であることを示す。加えて、シランは、安定化された低アミロースデンプンを架橋すること、及び、優れた湿潤強度性能により証明されるように、結合剤をガラス繊維基材に接着させることの両方において優れている。
【0106】
結合剤残率は実施例14に詳述されるTGA法を用いて測定した、結果を図7にまとめる。図7中のデータは、シリコーン、シラン及びPVOHが、デンプンBのガラス繊維基材への結合を改良させたことを示す。
【0107】
実施例20
中密度ファイバーボード(MDF)サンプルを、実験室内で以下のプロトコールを用いて製造した:
850gの木材パルプを、ロータリーミキサーに入れた。結合剤溶液をこの一定に混合している木材パルプの上にスプレーする。この結合剤は、加熱処理したデンプンBの20%溶液、デンプンの重量に基づいて10重量%の活性Polycup 6130(Herculesより入手可能な架橋剤)及び5重量%の活性シリコーン(Dow Corning 75SFシリコーンエマルジョン)の混合物である。混合した木材パルプと結合剤を、篩に通して、サイズが35×25×10cmの型に入れ、木材パルプが型の中で均一に分配されるようにする。次に、150ポンドのおもりを予成形された中密度ファイバーボードの上に5分間置く。次に、この中密度ファイバーボードを、加圧チャンバの加温板と加温板との間に入れて硬化させる。このチャンバ内の圧力は2300〜2800ポンド/インチに設定され、温度は160℃に維持される。本発明の結合剤を用いて硬化させた中密度ファイバーボードは、許容される物理的特性を有することが見出された。
【0108】
実施例21
一連のホルムアルデヒドを含まない結合剤溶液を、安定化された低アミロースデンプン溶液と架橋剤の水溶液を混合することにより調製した。これらの溶液には、デンプンの重量に基づいて20重量%の架橋剤が含まれた。次に、これらの溶液を水で希釈して、10%固形分を含有する最終溶液を得た。これらのホルムアルデヒドを含まない結合剤溶液の粘度(下の表20参照)を25℃で直ちに、そして24時間後の両方に測定した。
【0109】
【表20】

【0110】
表20中のこれらのデータは、安定化された低アミロースデンプンと架橋剤の組合せが、10%溶液として25℃で200cPs未満の粘度を有することを示す。さらに、この溶液は有意な粘度の上昇を示さないので(粘度上昇は3日間にわたってさえ25℃で500%未満)、これらの粘度は72時間にわたって安定している。一方、高アミロースデンプンは(たとえ架橋剤が存在しなくても)25℃でゲルを形成し、それによりこれらの材料を従来手段、例えばスプレーなどにより適用することは困難となる。その結果、安定化された低アミロースデンプンと架橋剤の組合せは低い粘度を有するので、それらは従来手段、例えばスプレーなどにより適用することができる。その上、粘度が時間と共に急激に変化しないので良好なポットライフを可能にさせる。
【0111】
上記の実施例18〜21は、安定化された低アミロースデンプンと架橋剤がホルムアルデヒドに基づく結合剤系と同様の性能を有することを例証する。安定化された低アミロースデンプンは、ホルムアルデヒドを含まない結合剤系の主原料である、そのために、この結合剤は経済的で、環境に優しく(green)、再生可能かつ持続可能である。さらに、この結合剤は中性のpHで硬化することができ、その他のホルムアルデヒドを含まない結合剤系に見られる腐食問題を解消する。さらに、本発明の水性のホルムアルデヒドを含まない結合剤は低い粘度及び優れたポットライフを有する。これらのホルムアルデヒドを含まない結合剤は、多様な基材と混合して、放出問題のない複合材料を製造することができる。
【0112】
本発明を詳細に説明及び例証してきたが、これは単なる説明及び例であって、制限ととられるべきでないことは当然理解される。本発明の精神及び範囲は、以降に示される特許請求の範囲の用語によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の多糖及び少なくとも1種類の多糖架橋剤を含む、ホルムアルデヒドを含まない結合剤と;
ミネラルウール又はリグノセルロース基材
を含む、複合材料。
【請求項2】
少なくとも1種類の多糖が、非デンプン多糖である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
少なくとも1種類の非デンプン多糖が、セルロース、グアー、キサンタン、アルギナート、ペクチン及びゲランならびにそれらの誘導体からなる群より選択される、請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
セルロース系誘導体が、ヒドロキシプロピルセルロース又はカルボキシメチルセルロースである、請求項3に記載の複合材料。
【請求項5】
少なくとも1種類の多糖が、無アミロースデンプンである、請求項2に記載の複合材料。
【請求項6】
少なくとも1種類の多糖が、低アミロースデンプンである、請求項2に記載の複合材料。
【請求項7】
ミネラルウールが、ガラス繊維、セラミック繊維、ストーンウール又はロックウールである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項8】
リグノセルロース基材が、粒子又は断片の形の木材である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項9】
多糖架橋剤が、アジピン酸/酢酸混合無水物、エピクロロヒドリン、トリメタリン酸ナトリウム、トリメタリン酸ナトリウム/トリポリリン酸ナトリウム、、及びオキシ塩化リン、ポリアミド−エピクロロヒドリン架橋剤、無水物含有ポリマー、環状アミド凝縮物、ジルコニウム錯体とチタン錯体、アジピン酸ジヒドラジド、ジエポキシド化合物とポリエポキシド化合物、二官能性モノマー、二無水物、アセタール、多官能性シラン、ブロックトアルデヒド、ポリカルボン酸塩、ホウ素化合物及びそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の複合材料。
【請求項10】
ホルムアルデヒドを含まない結合剤中の多糖架橋剤の重量%が約0.1〜約70%である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項11】
ホルムアルデヒドを含まない結合剤が添加剤をさらに含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項12】
添加剤が湿分又は耐水性を少なくとも提供する、請求項11に記載の複合材料。
【請求項13】
ホルムアルデヒドを含まない結合剤が、触媒をさらに含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項14】
結合剤の重量%が、複合材料の重量の50重量%未満である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項15】
結合剤が水溶液として適用され、その水溶液のpHが3より大きい、請求項1に記載の複合材料。
【請求項16】
ホルムアルデヒドを含まない結合剤を1又はそれ以上の多糖及び多糖架橋剤から調製する段階と;
ホルムアルデヒドを含まない結合剤をミネラルウール又はリグノセルロース基材の上に付着させ、その結合剤を硬化させる段階とを含む、複合材料を形成する方法。
【請求項17】
多糖が非デンプン多糖である、請求項16に従って複合材料を形成する方法。
【請求項18】
非デンプン多糖が、セルロース、グアー、キサンタン、アルギナート、ペクチン及びゲランならびにそれらの誘導体からなる群より選択される、請求項17に従って複合材料を形成する方法。
【請求項19】
セルロース系誘導体が、ヒドロキシプロピルセルロース又はカルボキシメチルセルロースである、請求項18に従って複合材料を形成する方法。
【請求項20】
少なくとも1種類の多糖が無アミロースデンプンである、請求項16に従って複合材料を形成する方法。
【請求項21】
少なくとも1種類の多糖が、低アミロースデンプンである、請求項16に従って複合材料を形成する方法。
【請求項22】
基材が、ミネラルウール又はリグノセルロース基材である、請求項16に従って複合材料を形成する方法。
【請求項23】
ミネラルウールが、ガラス繊維、セラミック繊維、ストーンウール又はロックウールである、請求項16に従って複合材料を形成する方法。
【請求項24】
多糖架橋剤が、アジピン酸/酢酸混合無水物、エピクロロヒドリン、トリメタリン酸ナトリウム、トリメタリン酸ナトリウム/トリポリリン酸ナトリウム、、及びオキシ塩化リン、ポリアミド−エピクロロヒドリン架橋剤、無水物含有ポリマー、環状アミド凝縮物、ジルコニウム錯体とチタン錯体、アジピン酸ジヒドラジド、ジエポキシド化合物とポリエポキシド化合物、二官能性モノマー、二無水物、アセタール、多官能性シラン、ブロックトアルデヒド、ポリカルボン酸塩、ホウ素化合物及びそれらの組合せから選択される、請求項16に従って複合材料を形成する方法。
【請求項25】
ホルムアルデヒドを含まない結合剤中の低アミロースデンプン架橋剤の重量%が、約0.1〜70%である、請求項16に従って複合材料を形成する方法。
【請求項26】
結合剤の重量%が、複合材料の重量の50重量%未満である、請求項16に従って複合材料を形成する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−506731(P2011−506731A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538724(P2010−538724)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067868
【国際公開番号】WO2009/080696
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】