説明

熱硬化性樹脂組成物

【課題】メタルマスク又はスクリーンメッシュマスクを用いたスクリーン印刷法による穴埋め性に著しく優れ、空洞やへこみの発生が極めて少ない熱硬化性樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】穴(a)の内径より大きい開口径をもつメタルマスク又はスクリーンメッシュマスクを用いてスクリーン印刷により穴(a)に充填するための熱硬化性樹脂組成物であって、温度23℃、周波数1〜10Hzにおけるtanδが1.1〜3.0であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物を用いる。穴(a)の内径が100〜400μmであり、穴(a)同士の間隔が穴(a)の内径の1.3〜2倍であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱硬化性樹脂組成物に関する。さらに詳しくはプリント配線板の穴(スルーホール及び/又はビアホール)の充填に好適な熱硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メタルマスク又はスクリーンメッシュマスクを用いるスクリーン印刷法により、穴(スルーホール及び/又はビアホール)を充填するために用いられる熱硬化性樹脂組成物としては、25℃における粘度が2000Pa・s以下のもの(特許文献1)やtanδが1以下のもの(特許文献2)等が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−127992号公報
【特許文献2】特開2004−63104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の熱硬化性樹脂組成物は、メタルマスク又はスクリーンメッシュマスクを用いるスクリーン印刷法によりプリント配線板のスルーホール及び/又はビアホールを充填する場合、スルーホール等の穴内に空洞やへこみが高い割合で発生するという問題がある。
すなわち、本発明の目的は、メタルマスク又はスクリーンメッシュマスクを用いたスクリーン印刷法による穴埋め性に著しく優れ、空洞やへこみの発生が極めて少ない熱硬化性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果本発明に達した。すなわち、本発明の熱硬化性樹脂組成物の特徴は、穴(a)の内径より大きい開口径をもつメタルマスク又はスクリーンメッシュマスクを用いてスクリーン印刷により穴(a)に充填するための熱硬化性樹脂組成物であって、温度23℃、周波数1〜10Hzにおけるtanδが1.1〜3.0である点を要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、メタルマスク又はスクリーンメッシュマスクを用いたスクリーン印刷による穴埋め性に著しく優れており、穴に空洞やへこみの発生が極めて少ない。したがって、本発明の熱硬化性樹脂組成物をプリント配線板のスルーホール等の穴に適用すると、スルーホール等の穴に充填した樹脂の空洞やへこみの発生が極めて少なく、配線の変形、ショート、断線不良等が著しく少ない多層プリント配線板を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の熱硬化性樹脂組成物のtanδは、1.1〜3.0が好ましく、さらに好ましくは1.5〜2.8、特に好ましくは1.5〜2.7、最も好ましくは1.6〜2.6である。この範囲であると、空洞やへこみの発生がさらに少なくなる。
【0008】
なお、tanδは、「レオロジー工学とその応用技術」(株)フジ・テクノシステム、2001年1月12日 初版第1刷発行、第204〜206頁に記載の応力制御方式で測定可能な粘弾性測定装置(例えば、商品名「レオストレスRS75」(HAAKE社製)を用いて、次のようにして求められる。
測定冶具{上部コーン型円盤と下部平面円盤(図1参照、図1中の矢印は正弦振動の方向を示す)との間}に測定サンプルを挟み込み、上部コーン型円盤の上面に対して垂直な中心軸を軸として、設定した周波数(f)(単位:Hz)で回転ずり応力(σ)(単位:Pa)を正弦振動させることにより、応力(σ)(単位:Pa)とひずみ(ε)(単位:rad)との位相角(δ)(単位:rad)を測定し、tanδを算出する。
【0009】
以下に測定条件を示す。
測定治具:直径20mmアルミ製円盤(上部コーン型円盤角度2度)
サンプル量:0.5mL
回転ずり応力の周波数:1.0〜10.0Hz
温度:23℃
回転ずり応力の振幅:10Pa
【0010】
このような熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂とフィラーとを含有してなることが好ましい。
熱硬化性樹脂としては加熱により硬化する樹脂であれば特に制限なく、例えば、特開平9−263681号公報等に記載されたフェノール樹脂、特開平8−311242号公報等に記載された不飽和ポリエステル樹脂、特開平6−207104号公報等に記載されたシリコーン樹脂等、及び特開2004−149758号公報等に記載されたエポキシ樹脂やポリイミド樹脂等が使用できる。これら熱硬化性樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0011】
熱硬化性樹脂のうち、エポキシ樹脂が好ましく、さらに好ましくは液状エポキシ樹脂(液状エポキシド(A)及び硬化剤(B)から構成される)である。
液状エポキシド(A)としては25℃で液状のエポキシド(EA)であれば、特に限定されるものではない。また、25℃で固状のエポキシド(KA)であっても、液状のエポキシド(EA)と共に用いて全体として液状となれば固状のエポキシド(KA)を用いてもよい。
なお、液状とは、25℃の粘度(Pa・s)が0.02〜400である状態を意味し、好ましくは0.1〜100、さらに好ましくは0.3〜50、特に好ましくは0.4〜30、最も好ましくは3〜25である状態を意味する。また、固状とは、液状の粘度を超える状態を意味する。なお、粘度は、JIS K7233−1986、4.2単一円筒回転粘度計法に準拠して測定される。
【0012】
液状のエポキシド(EA)のうち、ビスフェノールF型エポキシド、ビスフェノールA型エポキシド及びグリシジルアミン型エポキシドが好ましく、さらに好ましくはビスフェノールF型エポキシド及びビスフェノールA型エポキシド、特に好ましくはビスフェノールF型エポキシドである。これらの液状エポキシドは1種又は2種以上の混合物でもよい。
【0013】
液状のエポキシド(EA)と共に用いることのできる固状のエポキシド(KA)としては、ビスフェノールA型エポキシド(エポキシ当量300〜5000)、ビスフェノールF型エポキシド(エポキシ当量500〜10000)、クレゾールノボラック型エポキシド(エポキシ当量195〜240)、フェノールノボラック型エポキシド(エポキシ当量163〜215)、ビフェニル型エポキシド(エポキシ当量158〜198)、ナフタレン骨格型エポキシド(エポキシ当量135〜170)、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシド(エポキシ当量162〜176)及びジシクロペンタジェンフェノール型エポキシド(エポキシ当量250〜300)等が使用できる。これらのエポキシ樹脂は1種又は2種以上の混合物でもよい。
なお、エポキシ当量は、JIS K7236−2001「5.1電位差滴定法」に準拠して測定される。
【0014】
固状のエポキシド(KA)を使用する場合、この含有量(重量%)は、液状エポキシド(A)の重量に基づいて、5〜60が好ましく、さらに好ましくは10〜50、特に好ましくは15〜40、最も好ましくは18〜22である。
【0015】
硬化剤(B)のうち、フェノール、有機酸無水物、アミン、ジシアンジアミド、イミダゾール、有機酸ヒドラジド及び固体分散型アミンアダクト(潜在性硬化剤)が好ましく、さらに好ましくはジシアンジアミド、イミダゾール及び固体分散型アミンアダクトが好ましく、特に好ましくはイミダゾール、次に特に好ましくは2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1H)]−エチル−S−トリアジン、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウム・トリメリテート及び2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、最も好ましくは2,4−ジアミノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1H)]−エチル−S−トリアジンである。
硬化剤(B)の形状は粉体状が好ましい。
硬化剤(B)の体積平均粒子径(μm)は、1〜10が好ましく、さらに好ましくは2〜8、特に好ましくは3〜6である。なお、体積平均粒子径は、JIS Z8825−1−2001に記載された測定原理を有するレーザー回折式粒度分布測定装置(例えば島津製作所製 商品名 SALD-1100型等)で測定される。
【0016】
フィラーとしては無機フィラー及び有機フィラーのいずれでもよいが、無機フィラー(C)が好ましい。
無機フィラー(C)としては、シリカ{球状シリカ(C2)を含む}、沈降性硫酸バリウム、タルク、アルミナ、ジルコニア、銅紛、銀紛及び炭酸カルシウム等(特許第3375835号公報に記載された無機フィラー)の他に、有機チタネート処理炭酸カルシウム、有機チタネート処理シリカ及び有機チタネート処理アルミナ等が使用できる。これらの無機フィラーは単独又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
これらのうち、シリカ、沈降性硫酸バリウム、有機チタネート処理炭酸カルシウム及び銅紛が好ましく、さらに好ましくはシリカ、沈降性硫酸バリウム及び有機チタネート処理炭酸カルシウム、特に好ましくはシリカ及び有機チタネート処理炭酸カルシウム、最も好ましくは有機チタネート処理炭酸カルシウム(C1)及び球状シリカ(C2)である。
【0017】
有機チタネート処理炭酸カルシウム(C1)は重質炭酸カルシウムの粉体を有機チタネートで処理して製造され得るものである。重質炭酸カルシウムの粉体としては加熱減量が0.4重量%以下のものが好ましい。有機チタネート処理シリカ及び有機チタネート処理アルミナ等も同様に、シリカ又はアルミナ等の粉体を有機チタネートで処理して製造され得るものである。
なお、加熱減量は、JIS K5101−1991「23.加熱減量」に準拠して測定される。
【0018】
有機チタネートとしては、特開2004−238371号公報に記載されたものが使用でき、これらのうち、炭素数8〜24のアルキル基を有するチタネート(長鎖カルボン酸型のアルキルチタネート)が好ましく、さらに好ましくはイソプロピルトリイソステアロイルチタネートである。
重質炭酸カルシウムの粉体に有機チタネートを処理する方法としては、特開2004−238371号公報に記載された方法等が適用できる。重質炭酸カルシウムの粉体(C)と有機チタネート(T)との使用重量比(C:T)としては、90:10〜99.9:0.1が好ましく、さらに好ましくは95:5〜99:1である。
【0019】
有機チタネート処理炭酸カルシウム(C1)は市場から容易に入手でき、商品名として、TSS#1000、TSS#600及びTSS#400(日東紛化工業株式会社製);トップフローS(味の素ファインテクノ株式会社製)等が挙げられる。
【0020】
球状シリカ(C2)は市場から容易に入手することができ、商品名としてTSS−3(体積平均粒子径3μm)、TSS−6(体積平均粒子径5μm)及びPLV−6(体積平均粒子径5μm)(株式会社龍森社製);アドマファインSO−C5(体積平均粒子径1.5μm)(株式会社アドマテックス社製);FB−6D(体積平均粒子径6μm)、FB−35(体積平均粒子径9μm)及びFB−105(体積平均粒子径12μm)(電気化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0021】
フィラー{無機フィラー(C)}の体積平均粒子径(μm)は、0.3〜26が好ましく、さらに好ましくは0.5〜11、特に好ましくは0.7〜10である。
なお、球状シリカ(C2)の体積平均粒子径(μm)は、3〜15が好ましく、さらに好ましくは4〜12、特に好ましくは5〜10である。
体積平均粒子径は、JIS Z8825−1−2001に記載された測定原理を有するレーザー回折式粒度分布測定装置(例えば島津製作所製 商品名 SALD-1100型等)で測定される。
【0022】
フィラー{無機フィラー(C)}の形状は、球状、涙滴状、角状、樹枝状、片状、粒状、不規則形状、針状、繊維状(JIS Z2500:2000「粉末や金用語」4.用語および定義、4)粉末の粒子形状)等のいずれでもよいが、tanδを調整の観点等から、球状、涙滴状、片状及び粒状が好ましく、さらに好ましくは粒状である。
【0023】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂及びフィラーを含んでなる場合、熱硬化性樹脂の含有量(重量%)は、熱硬化性樹脂及びフィラーの合計重量に基づいて、15〜80が好ましく、さらに好ましくは20〜60、特に好ましくは22〜50である。
また、この場合、フィラーの含有量(重量%)は、熱硬化性樹脂及びフィラーの合計重量に基づいて、15〜80が好ましく、さらに好ましくは38〜78、特に好ましくは48〜76である。
【0024】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が液状エポキシド(A)、硬化剤(B)及び無機フィラー(C)を含んでなる場合、液状エポキシド(A)の含有量(重量%)は、(A)、(B)及び(C)の合計重量に基づいて、15〜80が好ましく、さらに好ましくは20〜60、特に好ましくは22〜50、最も好ましくは25〜35である。
また、この場合、硬化剤(B)の含有量(重量%)は、(A)、(B)及び(C)の合計重量に基づいて、0.5〜5が好ましく、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは1.2〜3、最も好ましくは1.5〜2.5である。
また、この場合、無機フィラー(C)の含有量(重量%)は、(A)、(B)及び(C)の合計重量に基づいて、15〜80が好ましく、さらに好ましくは38〜78、特に好ましくは48〜76、最も好ましくは63〜73である。
特に、体積平均粒子径が1〜2μmである有機チタネート処理炭酸カルシウム(C1)を含むことが好ましく、この場合、(C1)の含有量(重量%)は、無機フィラー(C)の重量に基づいて、5〜100が好ましく、さらに好ましくは8〜70、特に好ましくは10〜50である。
さらに、tanδの調整しやすさの観点等から、有機チタネート処理炭酸カルシウム(C1)と球状シリカ(C2)とを含むことが最も好ましい。
有機チタネート処理炭酸カルシウム(C1)と球状シリカ(C2)とを含む場合、(C1)の含有量(重量%)は、無機フィラー(C)の重量に基づいて、5〜80が好ましく、さらに好ましくは8〜70、特に好ましくは10〜50である。また、(C2)の含有量(重量%)は、無機フィラー(C)の重量に基づいて、20〜95が好ましく、さらに好ましくは30〜92、特に好ましくは50〜90である。
【0025】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、さらに添加剤(D){消泡剤、分散剤、有機・無機着色剤、難燃剤及び/又は揺変剤等}を添加し、これらの機能を付与することができる。 消泡剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、本発明の熱硬化性樹脂組成物の重量に基づいて、0.05〜5が好ましく、さらに好ましくは0.5〜3、特に好ましくは1〜2である。分散剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、本発明の熱硬化性樹脂組成物の重量に基づいて、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.03〜2、特に好ましくは0.05〜1である。有機・無機着色剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、本発明の熱硬化性樹脂組成物の重量に基づいて、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.03〜2、特に好ましくは0.05〜1である。難燃剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、本発明の熱硬化性樹脂組成物の重量に基づいて、0.5〜10が好ましく、さらに好ましくは0.8〜8、特に好ましくは1〜5である。揺変剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、本発明の熱硬化性樹脂組成物の重量に基づいて、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.03〜2、特に好ましくは0.05〜1である。
【0026】
消泡剤としては、「コーティング用添加剤の最新技術」(株)シーエムシー、2001年2月27日 第1刷発行、第73〜82、252〜256頁に記載の消泡剤等が使用でき、シリコーン消泡剤が好ましい。
【0027】
分散剤としては、特許第2603053号公報に記載の分散剤等が使用でき、リン酸エステル化合物、プロピレンオキシド付加エステル化合物及び高級脂肪酸等が挙げられる。
【0028】
有機・無機着色剤としては、酸化チタン、カーボンブラック及びフタロシアニンブルー等が挙げられる。
【0029】
難燃剤としては、「コーティング用添加剤の最新技術」(株)シーエムシー、2001年2月27日 第1刷発行、第191〜199、275頁に記載の難燃剤等が使用でき、シリコーン化合物、水酸化アルミニウム及びトリアジン化合物が好ましく、さらに好ましくはシリコーン化合物及びトリアジン化合物である。
【0030】
揺変剤としては、「コーティング用添加剤の最新技術」(株)シーエムシー、2001年2月27日 第1刷発行、第59〜71、249〜251頁に記載の揺変剤等が使用でき、合成微紛シリカ、有機ポリアマイドワックス及び水添ヒマシ油ワックスが好ましく、さらに好ましくは有機ポリアマイドワックスである。
【0031】
本発明の熱硬化性樹脂組成物のtanδは、フィラー{無機フィラー(C)}や揺変剤の含有量等によって制御できる。すなわち、フィラーや揺変剤の含有量を増やすことによりtanδを容易に小さくできる。レオロジー挙動(tanδ)に影響を及ぼす因子は、フィラー等の粒子間相互作用であり、粒子間相互作用が小さいとtanδは大きく、粒子間相互作用が大きいとtanδが小さくなる{「レオロジー工学とその応用技術」(株)フジ・テクノシステム、2001年1月12日 初版第1刷発行、第170〜198頁}。フィラーや揺変剤等を含有しない場合はtanδは10000以上の値となり、フィラーや揺変剤を多量に含有する場合はtanδは0に近い値まで下げることができる。フィラーによる制御の場合、同じ含有量でもフィラーの形状や表面の状態により、tanδへの影響が異なる。例えば球状のフィラーは含有量を増やしてもtanδが小さくなりにくいが、樹枝状等のフィラーは少量でtanδが小さくなる。揺変剤は水素結合や吸着等の化学的な作用によりtanδが小さくなるが、フィラーとの併用で少量でtanδが小さくなる。
揺変剤の含有量の僅かな変動でtanδが大きく変化しやすいため、フィラー{無機フィラー(C)}の含有量により制御することが好ましく、さらに好ましくは無機フィラーとして有機チタネート処理炭酸カルシウムを用いて制御することである。
【0032】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂及びフィラーを含んでなる場合、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂及びフィラーが均一になるように撹拌混合することにより得られる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物が液状エポキシド(A)、硬化剤(B)、無機フィラー(C)及び必要により添加剤(D)を含んでなる場合、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)、(B)、(C)及び(D)を均一になるように撹拌混合することにより得られる。
この場合、混合順に制限はないが、(A)と(C)とを混合してから、(B)及び必要により(D)の順に混合することが好ましい。
混合機としては、プラネタリーミキサー及び3本ロールミル、2本ロールミル、ニーダー、エクストルーダー及びハイスピードディスパーサー等が挙げられる。
【0033】
撹拌・混合温度としては、熱硬化性樹脂の異常硬化やゲル化の防止の観点等から、5〜40℃が好ましく、さらに好ましくは10〜35℃、特に好ましくは20〜30℃である。
混合時間としては、混合機の種類や大きさなどによって適宜決定でき、均一混合できれば制限がないが、30〜200分が好ましく、さらに好ましくは45〜120分、特に好ましくは60〜90分である。なお、混合の際、減圧しながら混合してもよい。
【0034】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、穴(a)の内径より大きい開口径をもつメタルマスク又はスクリーンメッシュマスクを用いてスクリーン印刷により穴(a)に充填するための熱硬化性樹脂組成物として好適である。
穴(a)の内径としては、10μm〜1mmが好ましく、さらに好ましくは50〜800μm、特に好ましくは80μm〜500μm、最も好ましくは100〜400μmである。
穴(a)同士の間隔は特に制限されないが、穴(a)の内径の1.1倍以上が好ましく、さらに好ましくは1.2〜3倍、特に好ましくは1.2〜2.5倍、最も好ましくは1.3〜2倍である。
このような穴(a)は、プリント配線板用コア基板のスルホール及び/又はビアホールであることが好ましい。すなわち、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、プリント配線板用コア基板のスルホール及び/又はビアホールを充填するための熱硬化性樹脂組成物として最適である。
【0035】
プリント配線板用コア基板とは、プリント配線板を製造するための材料であり、プリント配線板の土台となる絶縁基板を含むものであり、絶縁基板に回路を形成した回路形成基板、又はJIS C5603:1993「プリント回路用語」3.用語、定義(2)基板材料に記載の金属張基板又は銅張積層板において、スルーホール及び/又はビアホールが形成され、かつスルーホール及び/又はビアホールの内壁も金属はくで被覆された構造のものに熱硬化性樹脂組成物を用いてスルホール及び/又はビアホールを充填してなるものを意味する。
【0036】
絶縁基板は、JIS C5603:1993「プリント回路用語」3.用語、定義(2)基板材料に記載の積層板、メタルコア基板が挙げられ、他に、セラミック(アルミナ、窒化アルミナ、ジルコニア等)基板等が挙げられる。積層板の基材と樹脂はJIS C6480「プリント配線板用銅張積層板通則」表1に記載のもの等が挙げられる。メタルコア基板の金属としては銅、アルミニウム等が挙げられる。
金属はくとしては、金属(銅、クロム、ニッケル、銀、金等)はく等が挙げられる。
【0037】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、プリント配線板等のスルーホール又はビアホール等への樹脂充填において、スキージを用いてスクリーン印刷法で充填する方法で、各スルーホールの径より大きい開口径を開けたメタルマスク版を用いて充填すると、スルーホール等の穴内に空洞やへこみの発生が極めて少なくなる。
【0038】
メタルマスクの材質としては、金属製であれば特に制限はなく、ステンレス、ニッケル及びニッケル合金等が挙げられる。
メタルマスクの厚み(μm)は、30〜200が好ましく、さらに好ましくは70〜150、特に好ましくは90〜120である。
スクリーンメッシュマスクの材質としては、特に制限はなく、ステンレスメッシュ、ポリエステルメッシュを用い感光性乳剤で開口部を形成したもの等が挙げられる。 メッシュの目開き(μm)は30〜150が好ましく、さらに好ましくは、40〜120、特に好ましくは50〜100である。メッシュの目開きはJIS G3556−2002「工業用織金網 7.2試験方法 目開き」に準拠して測定される。
スクリーンメッシュマスクの厚み ( メッシュと感光性乳剤の合計厚み )(μm)は、30〜200が好ましく、さらに好ましくは70〜150、特に好ましくは90〜120である。
メタルマスク及びスクリーンメッシュマスクの開口径は穴(a)の内径より大きければ制限がないが、15μm〜1.1mmが好ましく、さらに好ましくは90μm〜650μm、特に好ましくは120μm〜550μmである。
【0039】
スクリーン印刷に用いるスキージとしては、シリコンゴム及びポリウレタン等の樹脂製スキージやメタル製スキージのいずれもが使用できる。
スキージ硬度は、55〜95度が好ましく、さらに好ましくは60〜90度、特に好ましくは70〜80度である。
スキージ硬度はJIS K6253−1997「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法 5.デュロメーター硬さ試験(タイプA)」に準拠して測定される。
スキージのヘッド形状は特に限定はされないが、特開2004−042644号公報に記載された形状等が使用でき、平形、剣形、角形及び平形をカットした形状等のいずれでもよい。
【0040】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いてスルホール及び/又はビアホールを充填し、熱硬化性樹脂組成物を硬化後、使用する印刷マスクの厚みに相当する膜厚10〜200μm程度の樹脂が金属張基板等の表面に残るため、これを取り除いて平坦化してもよい。平坦化には、ベルトサンダー、セラミックロールバフ及び不繊布ロールバフ等が使用できる。
【0041】
平坦化する場合、仮硬化し平坦化後にさらに強い条件で本硬化することもできる。
仮硬化の温度(℃)は、80〜150が好ましく、さらに好ましくは90〜150、特に好ましくは100〜150、最も好ましくは120〜140である。仮硬化の時間(分)は、10〜100が好ましく、さらに好ましくは20〜90、特に好ましくは25〜60、最も好ましくは30〜40である。
本硬化の温度(℃)は、100〜200が好ましく、さらに好ましくは120〜180、特に好ましくは130〜170、最も好ましくは130〜150である。本硬化の時間(分)は、20〜300が好ましく、さらに好ましくは30〜200、特に好ましくは45〜180、最も好ましくは60〜120である。
なお、仮硬化しない場合、本硬化の条件で硬化できる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特記しない限り、部は重量部を、%は重量%を意味する。
表1及び表2に示す構成成分を同表に示す配合量(重量部)で、プラネタリーミキサー(商品名「PLM−50」、株式会社井上製作所製、公転回転数を20rpm、22℃で20分間)にて攪拌混合(プレミックス)し、次いで、3本ロールミル(商品名「HHC−178X356」、株式会社井上製作所製、ロール間圧力をすべて2MPa)にて混練(22℃で1回通過)した。さらに、プラネタリーミキサーにて60分攪拌混合して、実施例1〜11の熱硬化性樹脂組成物(表1)及び比較例1〜3の熱硬化性樹脂組成物(表2)を得た。なお、表1及び表2で記載する略号の意味は次の通りである。
【0043】
EA :ビスフェノールF型エポキシド{エポキシ当量169、粘度3.6Pa・s、商品名「エピコート807」(ジャパンエポキシレジン株式会社製)}
EA+KA1 :EA20部と、KA1[ビスフェノールA型エポキシド{エポキシ当量469、25℃で固体、商品名「エピコート1001」(ジャパンエポキシレジン株式会社製)}]80部とを、空気雰囲気下70℃で1時間攪拌混合したエポキシド混合物{エポキシ当量229、粘度26Pa・s}
EA+KA2 :EA80部と、KA2[トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシド{エポキシ当量170、25℃で固体、商品名「エピコート1032H60」(ジャパンエポキシレジン株式会社製)}]20部とを、空気雰囲気下70℃で1時間攪拌混合したエポキシド混合物{エポキシ当量169、粘度24Pa・s}
B :2,4−ジアミノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1H)]−エチル−S−トリアジン(体積平均粒子径3μm){商品名「キュアゾール」(四国化成工業株式会社製)}
C1−1 :有機チタネート処理炭酸カルシウム(イソプロピルトリイソステアロイルチタネート処理、体積平均粒子径1.17μm){商品名「TSS#1000」(日東紛化工業株式会社製)}
C1−2 :有機チタネート処理炭酸カルシウム(イソプロピルトリイソステアロイルチタネート処理、体積平均粒子径1.71μm){商品名「TSS#400」(日東紛化工業株式会社製)}
C−3 :重質炭酸カルシウム(体積平均粒子径0.74μm){商品名「NS#3000」(日東紛化工業株式会社製)}
C2−4 :シリカ(球状シリカ、体積平均粒子径6μm){商品名「TSS−6」(株式会社龍森製)}
C−5 :シリカ(粒状のシリカ、体積平均粒子径25.1μm){商品名「YXK−35」(株式会社龍森製)}
D1 :揺変剤{合成微紛シリカ、商品名「AEROSIL300」(日本アエロジル株式会社製)}
D2 :難燃剤{シリコーン化合物、商品名「DC4−7081」(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)}
D3 :消泡剤{シリコーン消泡剤(ポリジメチルポリシロキサン)、商品名「KF−96」(信越化学工業株式会社製)}
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
実施例及び比較例で得た熱硬化性樹脂組成物のtanδを測定し、表1及び表2に示した。
また、以下の方法によりスルーホール穴埋め後のスルーホール内の空洞やへこみの数数え、表1に示した。
【0047】
<スルーホール内の空洞やへこみの数>
内壁が銅張りされたスルーホールを設けた両面銅張積層基板(縦横それぞれ30cm、全厚2.0mm、銅膜厚20μm、スルーホールの穴数360個、スルホール内径とスルホール間隔は表3の通り)の片面に、ステンレス製メタルマスク(全てのスルホールに充填(印刷)できるように、表3に記載した内経の円形穴を有し、厚みが100μm、大きさが75cm×75cmのステンレス版)又はスクリーンメッシュマスク(全てのスルホールに充填(印刷)できるように、表3に記載した内経の円形穴を有し、乳剤厚みが120μm、大きさが75cm×75cmのポリエステル製目開き53μmメッシュ版)を配置(印刷ギャップ:1.5mm)し、硬度70°、長さ40cm、厚さ2cmの角形スキージーにてマスク印刷(スキージー角度15°、移動速度30mm/sec、スキージ圧{スキージ押しつけ荷重)40kg(kgf)}して、スルーホールを充填して、充填積層基板を得た。
【0048】
【表3】

【0049】
次いで、この充填積層基板の印刷面を上にして、130℃、30分間加熱し、室温(約25℃)まで冷却した後、1軸不繊布バフ(商品名「IDB−600」石井表記株式会社製、粗さ320番バフ2回、粗さ600番バフ2回)を用い研磨して表面を平坦化した。次いで、卓上ハンドカッター(商品名「ハンドカッターPC−300」、サンハヤト株式会社製)を用いて、積層基板の印刷面に対して垂直、かつスルーホールの軸中央を通るように切断し、研磨/琢磨機(商品名「Struers Planopol-3」、丸本工業株式会社製)を用いて切断面を研磨して切断整面を調整した。そして、切断整面を目視観察し、スルーホール内の空洞やへこみの数を数えた。なお、スルホールは360個のうち、100個について評価した。
【0050】
表1から明らかなように、本発明の熱硬化性樹脂組成物(実施例1〜11)は、比較例の熱硬化性樹脂組成物に比較して、スルーホール内の空洞やへこみの数が少なく、穴埋め性に著しく優れていた。中でも、実施例1〜8の熱硬化性樹脂組成物は特に優れた穴埋め性を発揮した。
【産業上の利用可能性】
【0051】
プリント配線板(ビルドアッププリント配線板や多層積層プリント配線板、及び両面プリント配線板等)の製造過程で、スルーホール及び/又はビアホール等の穴に充填される樹脂として使用できる。これ以外に、金属、石、ガラス、コンクリート及び/又はプラスチック等で製造された板状のものに形成された穴を埋め、研磨して平面を平滑にするための穴埋め剤、補修剤として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明におけるtanδを測定するための粘弾性測定装置のうち、上部コーン型円盤及び下部平面円盤の構成部分を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1.上部コーン型円盤
2.下部平面円盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴(a)の内径より大きい開口径をもつメタルマスク又はスクリーンメッシュマスクを用いてスクリーン印刷により穴(a)に充填するための熱硬化性樹脂組成物であって、温度23℃、周波数1〜10Hzにおけるtanδが1.1〜3.0であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
穴(a)の内径が100〜400μmであり、穴(a)同士の間隔が穴(a)の内径の1.3〜2倍である請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
液状エポキシド(A)、硬化剤(B)及び無機フィラー(C)を必須成分として含んでなり、(A)、(B)及び(C)の合計重量に基づいて、(A)の含有量が15〜80重量%、(B)の含有量が0.5〜5重量%、(C)の含有量が15〜80重量%である請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
無機フィラー(C)として、体積平均粒子径が1〜2μmである有機チタネート処理炭酸カルシウム(C1)を含み、無機フィラー(C)の重量に基づいて、(C1)の含有量が5〜100重量%である請求項3に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
無機フィラー(C)として、体積平均粒子径が1〜2μmである有機チタネート処理炭酸カルシウム(C1)及び体積平均粒子径が5〜10μmの球状シリカ(C2)を含み、無機フィラー(C)の重量に基づいて、(C1)の含有量が5〜80重量%、(C2)の含有量が20〜95重量%である請求項3に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
穴(a)がスルホール及び/又はビアホールである請求項1〜5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を用いてスルホール及び/又はビアホールを充填してなるプリント配線板用コア基板。

【図1】
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【公開番号】特開2006−241449(P2006−241449A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27936(P2006−27936)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000106438)サンノプコ株式会社 (124)
【Fターム(参考)】