熱硬化性組成物及びそれを硬化させて得られる生分解性プラスチック
【課題】 工業的に容易に比較的低コストで製造でき、且つ、生分解性に優れた熱硬化性組成物及びそれを硬化させて得られる生分解性プラスチックを提供する。
【解決手段】 熱硬化性組成物は、下記一般式(1)で表わされるエポキシドと、酸無水物を含有する。
【化1】
(但し、(C3H4O2)は乳酸残基を表わし、Xは末端が環状エーテルとなる化合物の残基を表わし、nは1〜10の整数である。)
より具体的な態様によれば、上記エポキシドは、n=1〜10のうちの少なくとも2つの異なるn数のエポキシドからなるエポキシド混合物である。上記熱硬化性組成物を硬化させることにより、生分解性プラスチックが得られる。
【解決手段】 熱硬化性組成物は、下記一般式(1)で表わされるエポキシドと、酸無水物を含有する。
【化1】
(但し、(C3H4O2)は乳酸残基を表わし、Xは末端が環状エーテルとなる化合物の残基を表わし、nは1〜10の整数である。)
より具体的な態様によれば、上記エポキシドは、n=1〜10のうちの少なくとも2つの異なるn数のエポキシドからなるエポキシド混合物である。上記熱硬化性組成物を硬化させることにより、生分解性プラスチックが得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な熱硬化性組成物及びそれを硬化させて得られる生分解性プラスチックに関するものであり、接着剤、成形材、インキ等の種々の用途に使用可能である。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の観点から、生分解性プラスチックの開発が急速に進んでいる。このようなプラスチックの近年の開発としては、例えば、変性ポリ(3−ヒドロキシブチレート)から誘導される脂肪族系のジオール成分と芳香族系のジカルボン酸成分とを共重合させた生分解性ポリエステル(特許文献1参照)、ラクタイドとポリエチレングリコールとの共重合体とラクタイドとポリプロピレングリコールとの共重合体とを鎖延長剤を用いて反応させたポリエーテル共重合体(特許文献2参照)、特定の構造単位を有するポリエーテルポリエステルとラクタイドとを共重合させたポリエーテルポリエステル(特許文献3参照)、多塩基酸無水物とエポキシド化合物とをセルロース誘導体の存在下で反応させることにより得る組成物からなるセルロース誘導体成形物(特許文献4参照)などが挙げられる。
【0003】
生分解され易い構造としては、加水分解され易い脂肪族ポリエステルや、微生物により酸化され易い水酸基を有する共重合体などが挙げられる。特許文献4にも記載されているように、未置換水酸基を有するセルロース誘導体は、エポキシドと二塩基酸無水物からなるポリエステルが混在しなければ、一般には、優れた生分解性が得られていないのが現状である。しかしながら、これらが混在しても、充分な生分解性が得られていない。
即ち、従来市販のエポキシドと二塩基酸無水物を用いてポリエステルを得た場合、そのポリエステルは、生分解性であるためには充分な構造を有していない。このことは、エポキシドが、生分解性を示す構造を有していないためである。
【0004】
一方、生分解性樹脂の一つとして、ポリ乳酸はよく知られている。しかしながら、ポリ乳酸は、一般に、乳酸水溶液の脱水重縮合により乳酸オリゴマーを合成し、これを解重合によって環状化してラクチドを作り、これを開環重合して製造されるため、反応に長時間を要し、生産性や製造コストの面で問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開平9−157364号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平11−35655号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平8−295727号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平7−292001号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、工業的に容易に比較的低コストで製造でき、且つ、生分解性に優れた熱硬化性組成物及びそれを硬化させて得られる新規な生分解性プラスチックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明によれば、下記一般式(1)で表わされるエポキシドと、酸無水物を含有することを特徴とする熱硬化性組成物が提供される。
【化1】
(但し、(C3H4O2)は乳酸残基を表わし、Xは末端が環状エーテルとなる化合物の残基を表わし、nは1〜10の整数である。)
【0008】
好適な態様によれば、上記エポキシドが、下記一般式(2)で表わされるエポキシドであることを特徴とする上記熱硬化性組成物が提供される。
【化2】
(但し、(C3H4O2)は乳酸残基を表わし、Rは水素原子又はメチル基を表わし、nは1〜10の整数である。)
【0009】
さらに好適な態様によれば、上記エポキシドは、下記一般式(3)で表わされる化合物とエピハロヒドリンとを反応させて得られたものである。
【化3】
【0010】
より好適な具体的な態様によれば、上記エポキシドが、n=1〜10のうちの少なくとも2つの異なるn数のエポキシドからなるエポキシド混合物であることを特徴とする熱硬化性組成物が提供される。
前記熱硬化性組成物は、さらに他のエポキシドを含有することができる。
本発明の他の側面によれば、前記熱硬化性組成物を硬化させて得られる生分解性プラスチックが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱硬化性組成物中に含まれるエポキシドは、一方の末端にエポキシ基やオキセタニル基等の環状エーテル基を有するため、酸無水物等と反応して重合し、また、他方の末端に水酸基を有するため、微生物により酸化され易く、また、ラクチリル乳酸などの乳酸の縮合物のために、エステル結合を単量体に比べて多く有し、加水分解され易い構造を持っている。従って、このエポキシドもしくはエポキシド混合物又はこれらと他のエポキシドとの混合物と、酸無水物を含有することを特徴とする組成物の硬化物、例えばプラスチックは、生分解性に優れたものとなり、また、比較的低コストで生産性良く製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者は、前記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、前記一般式(1)で表わされるエポキシド、特に前記一般式(2)で表わされるエポキシド、好ましくは、上記エポキシドにおいてn=1〜10のうちの少なくとも2つの異なるn数のエポキシドからなるエポキシド混合物と、酸無水物を含有することを特徴とする組成物は、接着剤、成形材、インキ等の種々の用途に有用であり、またその硬化物が優れた生分解性を示すことを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0013】
すなわち、本発明の熱硬化性組成物の一成分であるエポキシドは、一方の末端にエポキシ基やオキセタニル基等の環状エーテル基を有するため、酸無水物等と反応して重合し、また、他方の末端に水酸基、分子内にエステル結合を有しているため、加水分解され易い構造となっている。従って、このエポキシドもしくはエポキシド混合物又はこれらと他のエポキシドとの混合物と、酸無水物を含有する熱硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物は、優れた生分解性を示すものとなる。さらに、上記エポキシドは、末端水酸基のため、各種素材への接着性に優れ、また、他の樹脂と反応させることが可能である。
【0014】
ところで、本発明者は、乳酸のエポキシドが生分解性を示す構造を与えることを見出したが、この構造のみを得ることは困難である。なぜならば、乳酸は、水溶液中では比較的安定であるが、例えば、90%水溶液では、数%〜数十パーセントの割合で、ラクチリル乳酸などの乳酸の縮合物が、50%水溶液では、数%の割合で、乳酸の縮合物が含まれ(本明細書においては、このようなラクチリル乳酸などの乳酸の縮合物を含む乳酸水溶液を、ラクチリル乳酸含有乳酸水溶液と総称することもある)、また、エポキシドを得るには、合成中に加熱されるため、乳酸はさらに縮合し、乳酸単量体のみをエポキシド化することは工業的に難しいからである。しかしながら、このように縮合したオリゴマーのエポキシドを用いて得られる硬化物も、前記した理由により優れた生分解性を示す。従って、本発明で用いるエポキシドの合成過程においては、厳密な意味では、前記一般式(1)におけるn数が異なるエポキシドからなるエポキシド混合物が得られるが、これらを分離・精製する必要はなく、混合物のまま用いることができ、工業的には安価な方法である。
【0015】
以下、本発明の熱硬化性組成物及びそれを硬化させて得られる生分解性プラスチックについて詳細に説明する。
まず、本発明の熱硬化性組成物の一成分であるエポキシドについて説明する。このエポキシドは、種々の方法によって得ることができる。例えば、(A)アルカリ金属水酸化物又はその水溶液を用いて、乳酸及びその縮合物とエピハロヒドリンとを反応させる方法、(B)アルカリ金属水酸化物又はその水溶液を用いて、乳酸及びその縮合物とエピハロヒドリンとを第4級塩基性塩化合物及び/又はクラウンエーテル化合物を触媒として反応させる方法、(C)乳酸及びその縮合物のアルカリ金属塩とオキセタンとの脱塩反応などの方法が挙げられる。
【0016】
ここで、乳酸は、下記式(A)及び(B)で示される構造のD−体、L−体などの光学活性体又はこれらの混合物であるD,L−体のいずれでもよい。また、乳酸の縮合物の構造としては、例えば、下記式(C)〜(E)で示される化合物などが挙げられる。前記一般式(1)〜(3)に表わされている乳酸残基(C3H4O2)は、(C)〜(E)の残基を含めて包括的に表わしたものである。
【化4】
【0017】
また、前記一般式(1)〜(3)において、nは1〜10の整数を表わすが、好ましくは、nは1〜7の整数である。混合物においても、nは1〜10の整数を表わし、好ましくは、nは1〜7の整数である。nが10を超えると、ジエポキシになる恐れがあるので、nが10を超えることは好ましくない。
さらに、工業的にはn=1〜10のうちの少なくとも2つの異なるn数からなるエポキシドの混合物が製造されるが、それらの混合物からn数が1、2、又は3などのエポキシドを個々に分離・精製することは難しい。それ故、一般的には、エポキシド混合物として製品化される。
【0018】
前記製造方法(A)では、反応容器に50〜90%ラクチリル乳酸含有乳酸水溶液とエピハロヒドリンとを仕込み、攪拌しながら、反応温度を室温〜80℃に保持しながらアルカリ金属水酸化物を添加し、常圧あるいは減圧下で、40〜80℃で反応系内の水を系外に留去しながら反応させる。 しかし、副反応を抑制する点から、20〜100mmHg程度の減圧下で反応を進めることが好ましい。反応温度が上記の範囲外、すなわち80℃を超える場合は、原料エポキシ化合物の高分子量化が起こり、良好な目的物が得られない。一方、室温よりも低い場合には反応が進行し難くなるので好ましくない。反応は、例えば下記反応式(4)で示すように進行する。
【化5】
【0019】
上記反応は、溶媒中又は無溶媒で行うことができるが、エピハロヒドリンが反応溶剤としての機能を有するので、従来一般的に使用されている反応溶剤は使用する必要がない。しかし、必要に応じてシクロヘキサン、n−ヘキサンなどの低級脂肪族炭化水素、あるいはベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などの反応に対して不活性の有機溶剤をエピハロヒドリンと混合して使用することができる。但し、これらの溶剤(エピハロヒドリンを除く)を多量に使用することは、反応釜の容積効率を低下させることになり、また高分子量化物が生成し易くなる要因ともなるので好ましくない。
【0020】
上記エピハロヒドリンとしては、たとえば、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、エピヨードヒドリン、エピフルオロヒドリン等が例示されるが、工業的にはエピクロルヒドリンが使用される。エピハロヒドリンの使用量は、乳酸及びその縮合物のカルボキシル基1当量に対して、2〜15当量、好ましくは5〜10当量の範囲が好ましい。エピハロヒドリンの使用量が2当量未満の場合、反応が遅くなり、一方、15当量を超える範囲では容積効率が悪くなるので好ましくない。
【0021】
上記アルカリ金属水酸化物は、エピハロヒドリンのグリシジル基とカルボキシル基との付加反応と、付加反応後の閉環反応の触媒としての機能を有する。アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が例示される。これらのアルカリ金属水酸化物は固体又は水溶液として使用することができる。固体状で使用する場合、粉砕物が、反応率が高くなるので好ましい。アルカリ金属水酸化物の使用量は、グリシジルエーテル化する水酸基1当量に対し、1.0〜2.0当量であることが好ましい。
【0022】
反応終了後、濾過し、又はメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カチオン交換樹脂等で残アルカリ金属水酸化物を中和した後、濾過し、副生塩を分離除去し、次いで、減圧下に過剰のエピハロヒドリンを留去し、目的とするエポキシドを得る。
【0023】
前記製造方法(B)では、反応容器に50〜90%ラクチリル乳酸含有乳酸水溶液とエピハロヒドリンとを仕込み、攪拌しながら、溶媒中又は無溶媒で、反応温度を室温〜80℃に保持しながら、触媒として第4級アンモニウムハイドロオキサイド、第4級ホスホニウムハイドロオキサイド、第4級アンモニウムハライドなどの第4級塩基性塩化合物及び/又はクラウンエーテル化合物を添加し、同温度で0.1〜3時間攪拌混合した後、アルカリ金属水酸化物を添加し、常圧あるいは減圧下で、40〜80℃で反応系内の水を系外に留去しながら反応させる。 しかし、副反応を抑制する点から、20〜100mmHg程度の減圧下で反応を進めることが好ましい。
【0024】
反応温度が上記範囲外、すなわち80℃を超える場合は、原料エポキシ化合物の高分子量化が起こり、良好な目的物が得られなくなる。一方、室温よりも低い場合には、反応が進行し難くなるので好ましくない。また、反応時間(攪拌混合時間)が0.1時間未満では、第4級アンモニウムハイドロオキサイド、第4級ホスホニウムハイドロオキサイド、第4級アンモニウムハライドなどの第4級塩基性塩化合物及び/又はクラウンエーテル化合物とカルボキシル基との間での錯塩形成が不充分になるために、グリシジルエーテル化率が低くなるので好ましくない。一方、3時間を超えても錯塩形成が平衡状態となり、長時間の反応(攪拌混合)は生産性の面から好ましくない。
【0025】
上記第4級塩基性塩化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等のテトラアルキルアンモニウムハライド類;トリメチルベンジルアンモニウムハライド、トリエチルベンジルアンモニウムブロマイド等のトリアルキルベンジルアンモニウムハライド類;テトラメチルアンモニウムバイカーボネート、テトラエチルアンモニウムバイカーボネート等のテトラアルキルアンモニウムバイカーボネート類;テトラメチルアンモニウムベンゾエート、テトラエチルアンモニウムベンゾエート等のテトラアルキルアンモニウムベンゾエート類;ビス(テトラメチルアンモニウム)フタレート等のビス(テトラアルキルアンモニウム)フタレート類などの第4級アンモニウム塩や、テトラエチルホスホニウムクロライド、ジメチルジシクロヘキシルホスホニウムクロライド、トリフェニルメチルホスホニウムヨーダイド等の第4級ホスホニウムハライド塩、さらに、例えばテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド等のテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド類や、テトラメチルホスホニウムハイドロオキサイド、テトラエチルホスホニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルホスホニウムハイドロオキサイド、テトラブチルホスホニウムハイドロオキサイド等のテトラアルキルホスホニウムハイドロオキサイド類を挙げることができる。これらは単独であるいは2種以上を混合して使用することができる。また、これらは固体又は液体の状態で使用される。
【0026】
上記第4級塩基性塩化合物のうちでも、第4級アンモニウムハライド、第4級アンモニウムハイドロオキサイド、又は第4級ホスホニウムハイドロオキサイドが好ましい。第4級アンモニウムハライドとしては、例えば、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイドが反応収率の面から好ましく、第4級アンモニウムハイドロオキサイドとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイドが好ましく、また第4級ホスホニウムハイドロオキサイドとしては、テトラメチルホスホニウムハイドロオキサイド、テトラエチルホスホニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルホスホニウムハイドロオキサイド、テトラブチルホスホニウムハイドロオキサイドが好ましい。さらには、これらの第4級塩基性塩化合物のうち、第4級アンモニウムハイドロオキサイド類又は第4級ホスホニウムハイドロオキサイド類が、反応後に容易に分解除去でき、高品質の製品が得られるので特に好ましい。
【0027】
第4級塩基性塩化合物は、前記一般式(3)で表わされる化合物又はそれらの混合物のカルボキシル基1当量に対して、0.001〜2当量、好ましくは0.05〜0.2当量の範囲で使用される。0.001当量未満の場合はその効果が発現し難く、一方、2当量を超える量を添加してもそれ以上の格別な効果の向上は見られない。
【0028】
上記反応は、溶媒中又は無溶媒で行うことができるが、エピハロヒドリンが反応溶剤としての機能を有するので、従来一般的に使用されている反応溶剤は使用する必要がない。しかし、必要に応じてシクロヘキサン、n−ヘキサンなどの低級脂肪族炭化水素、あるいはベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などの反応に対して不活性の有機溶剤をエピハロヒドリンと混合して使用することができる。但し、これらの溶剤(エピハロヒドリンを除く)を多量に使用することは、反応釜の容積効率を低下させることになり、また高分子量化物が生成し易くなる要因ともなるので好ましくない。
【0029】
上記エピハロヒドリン及びアルカリ金属水酸化物については、前記製造方法(A)について説明した通りである。従って、前記製造方法(A)と同様に、エピハロヒドリンの使用量は、乳酸及びその縮合物のカルボキシル基1当量に対して、2〜15当量、好ましくは5〜10当量の範囲が好ましく、アルカリ金属水酸化物の使用量は、グリシジルエーテル化する水酸基1当量に対し、1.0〜2.0当量であることが好ましい。
【0030】
反応終了後、濾過し、又はメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カチオン交換樹脂等で残アルカリ金属水酸化物などを中和した後、濾過し、副生塩を分離除去し、次いで、減圧下に過剰のエピハロヒドリンを留去し、目的とするエポキシドを得る。
【0031】
一方、前記製造方法(C)では、反応容器に乳酸及びその縮合物のアルカリ金属塩の50〜90%水溶液とオキセタン、例えば、3−アルキル−3−ハロゲン化メチル−オキセタンとを仕込み、攪拌しながら、溶媒中又は無溶媒下、触媒として第3級アミンや前記第4級塩基性塩化合物及び/又はクラウンエーテル化合物を添加し、常圧あるいは減圧下で、反応系内の水を系外に留去しながら、70〜130℃で30分〜30時間反応させる。反応は、例えば下記反応式(5)で示すように進行する。
【化6】
【0032】
上記オキセタンの使用量は、乳酸及びその縮合物のアルカリ金属塩1モルに対して、1〜10モルの範囲が好ましい。また、トリエチルアミンなどの第3級アミンや前記第4級塩基性塩化合物などの触媒は、乳酸及びその縮合物のアルカリ金属塩1モルに対して、0.001〜0.1モルの範囲が好ましい。
【0033】
反応終了後、濾過し、副生塩を分離除去し、次いで、減圧下に過剰の3−アルキル−3−ハロゲン化メチル−オキセタンを留去し(溶剤を含む場合には、溶剤も留去し)、目的とするエポキシドを得る。
【0034】
本発明の熱硬化性組成物は、さらに他のエポキシドを含有することができる。他のエポキシドとしては、例えば、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブトキシポリエレングリコールグリシジルエーテル、グリシドール、高級アルコールグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、N−グリシジルフタルイミド、メタクリル酸グリシジル、o−フェニルフェノールグリシジルエーテル、スチレンオキサイドなどが挙げられるが、乳酸及び/又は他のモノカルボン酸及び/又はアルコール類を配合して、エポキシド化しても構わない。
【0035】
他のモノカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸などの飽和脂肪酸、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、オレイン酸などの不飽和脂肪酸、酢酸n−プロピル、ベンジル酸、p−メトキシフェニル酢酸、イソニコチン酸、ジフェニル−4−カルボン酸、安息香酸などが挙げられる。
【0036】
アルコール類としては、メタノール、エタノール、ブタノール、イソブタノール、オクタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、シクロヘキサノール、シクロペンタノールなどが挙げられる。
【0037】
本発明の熱硬化性組成物で用いる他の成分である酸無水物としては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸等の脂環式二塩基酸無水物;無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸等の脂肪族又は芳香族二塩基酸無水物;あるいはビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は芳香族四塩基酸二無水物などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、脂環式二塩基酸無水物、特に生分解性の観点から無水コハク酸、無水マレイン酸が好ましい。
【0038】
上記エポキシドもしくはエポキシド混合物又はこれらと他のエポキシドとの混合物と、酸無水物とを含有する熱硬化性組成物を硬化させて、本発明の生分解性プラスチックが得られるが、上記エポキシドもしくはエポキシド混合物又はこれらと他のエポキシドとの混合物と酸無水物との仕込み割合は、モル比で(エポキシドもしくはエポキシド混合物又はこれらと他のエポキシドとの混合物)/酸無水物=0.3〜3の範囲が好ましい。この比率が0.3未満の場合は、高分子化できない恐れがあり、また3を超えると、低分子量のものができ、軟化点が低くなる可能性がある。
【0039】
上記硬化反応は、常圧、加圧又は減圧下で、50〜280℃、好ましくは100〜250℃で、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、ペンタクロルエタン、1,2−ジクロルベンゼン、1,2,4−トリクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素類などの有機溶剤、及びこれらの混合溶剤の存在下又は非存在下、トリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、3−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物、塩化リチウム等のリチウム化合物、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属化合物、などの触媒を添加して、又は無触媒で行われる。
【0040】
本発明の熱硬化性組成物には、必要に応じて、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、マイカ等の公知慣用の無機フィラーや、ゴム微粒子、粉体エポキシ樹脂(例えば、日産化学工業社製TEPIC等)、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂(例えば、日本触媒社製M−30、S、MS等)、尿素樹脂、架橋アクリルポリマー(例えば、綜研化学社製MR−2G、MR−7G等、積水化成品社製テクポリマー等)などの有機フィラーを、単独で又は2種以上配合することができる。フィラーの配合量は、上記組成物100質量部に対して、1〜200質量部、好ましくは10〜50質量部の割合が適当である。
【0041】
本発明の熱硬化性組成物は、さらに必要に応じてフタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の公知慣用の着色剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0042】
さらに本発明の熱硬化性組成物は、難燃性を得る目的で、必要に応じて、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤等の難燃剤を配合することができる。難燃剤の配合量は、上記組成物100質量部に対して、通常1〜100質量部、好ましくは5〜50質量部の割合が適当である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を示して本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、以下において「部」とあるのは、特に断りのない限り全て「質量部」を意味するものとする。
【0044】
合成例1
2リットルの四つ口フラスコに、90%ラクチリル乳酸含有乳酸水溶液184.1部、エピクロロヒドリン920.52部、及びテトラエチルアンモニウムブロマイド42.1部を仕込み、40〜50℃で1時間攪拌した。次いで、40〜50℃で攪拌しながら、48%水酸化ナトリウム水溶液167部を2〜3時間かけて滴下した。その後、フラスコ内の圧力を80mmHgまで減圧し、40〜50℃で6時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を濾過し、未反応のエピクロロヒドリンをエバポレーターを用いて除去し、無色の液体263部を得た。
この反応生成物は、エポキシ当量(JIS K 7236に準拠して求めた)は約170g/eq、水酸基価(基準油脂分析試験法(日本油脂化学協会出版)に準拠して求めた)は約330mgKOH/g、酸価(基準油脂分析試験法(日本油脂化学協会出版)に準拠して求めた)は1mgKOH/g以下であり、前記一般式(2)において、nは平均して1.33であった。得られたエポキシド混合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)及び核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))をそれぞれ図1及び図2に示す。尚、参考のために、90%ラクチリル乳酸含有乳酸水溶液の核磁気共鳴スペクトル(溶媒DMSO−d6、基準物質TMS(テトラメチルシラン))及びゲル浸透クロマトグラフィーによるクロマトグラムをそれぞれ図3及び図4に示す。また、ゲル浸透クロマトグラフィーによるクロマトグラムのピークが現れてから消えるまでの装置の読み取りデータを下記表1に示す。
【表1】
【0045】
合成例2
2リットルの四つ口フラスコに、90%ラクチリル乳酸含有乳酸水溶液183.3部及びエピクロロヒドリン922.4部を仕込み、40〜50℃で1時間攪拌した。次いで、40〜50℃で攪拌しながら、48%水酸化ナトリウム水溶液167部を2〜3時間かけて滴下した。その後、フラスコ内の圧力を80mmHgまで減圧し、40〜50℃で6時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を濾過し、未反応のエピクロロヒドリンをエバポレーターを用いて除去し、無色の液体227部を得た。
この反応生成物は、エポキシ当量(JIS K 7236に準拠して求めた)は約200g/eq、水酸基価(基準油脂分析試験法(日本油脂化学協会出版)に準拠して求めた)は約280mgKOH/g、酸価(基準油脂分析試験法(日本油脂化学協会出版)に準拠して求めた)は約1mgKOH/g以下であり、前記一般式(2)において、nは平均して1.75であった。得られたエポキシド混合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)及び核磁気共鳴スペクトル(溶媒DMSO−d6、基準物質TMS(テトラメチルシラン))をそれぞれ図5及び図6に示す。
【0046】
実施例1
1リットルの四つ口フラスコに、合成例1で得られたエポキシド混合物246部、無水マレイン酸142.1部、及びイミダゾール0.99部を仕込み、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、140〜150℃で3時間、さらに、180〜190℃で90分間反応を行った。反応終了後、アセトンを加えて、反応物を膨潤させフラスコより取り出し、濾過した。次いで、濾過物をアセトンで洗浄後、真空乾燥器で乾燥して、重合物71.27部を得た。得られた重合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)及び熱重量測定(TG)によるTG曲線をそれぞれ図7及び図8に示す。
また、得られた重合物を2〜10kgf/cm2、180℃で熱プレスし、厚さ約0.5mm、長さ約5cm、幅約2cmのフィルムを作製し、水に浸漬したところ、水に不溶であったため、太陽インキ製造(株)嵐山事業所内の土壌に1ヶ月間埋めたところ、虫に食われたように生分解されていることが目視で確認された。
【0047】
実施例2
1リットルの四つ口フラスコに、合成例2で得られたエポキシド混合物218.9部及び無水マレイン酸124.9部を仕込み、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、140〜150℃で3時間、さらに、190〜200℃で90分間反応を行った。反応終了後、ジメチルホルムアミドを加えて、反応物を膨潤させフラスコより取り出し、濾過した。次いで、濾過物をジメチルホルムアミドで洗浄後、さらにアセトンで洗浄し、真空乾燥器で乾燥して、重合物150部を得た。得られた重合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)及び熱重量測定(TG)によるTG曲線をそれぞれ図9及び図10に示す。
また、得られた重合物を2〜10kgf/cm2、180℃で熱プレスし、厚さ約0.5mm、長さ約5cm、幅約2cmのフィルムを作製し、水に浸漬したところ、水に不溶であったため、太陽インキ製造(株)嵐山事業所内の土壌に1ヶ月間埋めたところ、虫に食われたように生分解されていることが目視で確認された。
【0048】
実施例3
1リットルの四つ口フラスコに、合成例2で得られたエポキシド混合物170.6部、無水マレイン酸88.5部、及び1,2,4−トリクロロベンゼン496部を仕込み、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、160〜170℃で90分間反応を行った。反応終了後、メタノール及びアセトンを加えて、反応物を膨潤させフラスコより取り出し、濾過した。次いで、濾過物をアセトンで洗浄し、真空乾燥器で乾燥して、水酸基価約180mgKOH/gの重合物25部を得た。得られた重合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)、熱重量測定(TG)によるTG曲線、ゲル浸透クロマトグラフィーによるクロマトグラム、及び核磁気共鳴スペクトル(溶媒重水、基準物質Sodium 3−(trimethylsilyl)propionate−2,2,3,3−D4)をそれぞれ図11、図12、図13、及び図14に示す。
また、得られた重合物を2〜10kgf/cm2、180℃で熱プレスし、厚さ約0.5mm、長さ約5cm、幅約2cmのフィルムを作製し、水に浸漬したところ、水に溶けた。
【0049】
実施例4
1リットルの四つ口フラスコに、合成例2で得られたエポキシド混合物226.9部及び無水マレイン酸76.8部を仕込み、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、140〜150℃で6時間反応を行った。反応終了後、水を加えて、反応物を膨潤させフラスコより取り出し、濾過した。次いで、濾過物をメタノールで洗浄し、真空乾燥器で乾燥して、水酸基価約200mgKOH/gの重合物50部を得た。得られた重合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)及び熱重量測定(TG)によるTG曲線をそれぞれ図15及び図16に示す。
また、得られた重合物を2〜10kgf/cm2、180℃で熱プレスし、厚さ約0.5mm、長さ約5cm、幅約2cmのフィルムを作製し、水に浸漬したところ、水に溶けた。
【0050】
実施例5
1リットルの四つ口フラスコに、合成例2で得られたエポキシド混合物324.5部及び無水マレイン酸110部を仕込み、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、140〜150℃で15時間、さらに170〜180℃で3時間反応を行った。反応終了後、テトラヒドロフランを加えて、反応物を膨潤させフラスコより取り出し、濾過した。次いで、濾過物をテトラヒドロフランで洗浄し、真空乾燥器で乾燥して、重合物52部を得た。得られた重合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)及び熱重量測定(TG)によるTG曲線をそれぞれ図17及び図18に示す。
また、得られた重合物を2〜10kgf/cm2、180℃で熱プレスし、厚さ約0.5mm、長さ約5cm、幅約2cmのフィルムを作製し、水に浸漬したところ、水に不溶であったため、太陽インキ製造(株)嵐山事業所内の土壌に1ヶ月間埋めたところ、虫に食われたように生分解されていることが目視で確認された。
【0051】
実施例6
1リットルの四つ口フラスコに、合成例2で得られたエポキシド混合物124.3部、無水マレイン酸72.06部、及び塩化リチウム0.31部を仕込み、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、140〜150℃で15時間、さらに170〜180℃で8時間反応を行った。反応終了後、テトラヒドロフランを加えて、反応物を膨潤させフラスコより取り出し、濾過した。次いで、濾過物をアセトンで洗浄し、真空乾燥器で乾燥して、重合物55.6部を得た。得られた重合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)及び熱重量測定(TG)によるTG曲線をそれぞれ図19及び図20に示す。
また、得られた重合物を2〜10kgf/cm2、180℃で熱プレスし、厚さ約0.5mm、長さ約5cm、幅約2cmのフィルムを作製し、水に浸漬したところ、水に不溶であったため、太陽インキ製造(株)嵐山事業所内の土壌に1ヶ月間埋めたところ、虫に食われたように生分解されていることが目視で確認された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明の熱硬化性組成物の一成分であるエポキシドは、熱反応性に優れているため、酸無水物とは容易に反応して重合し、また、得られたプラスチックは、末端に水酸基を有し、さらに分子中にエステル結合を多数有しているため、優れた生分解性を示すものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】合成例1で得られたエポキシド混合物の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図2】合成例1で得られたエポキシド混合物の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【図3】90%ラクチリル乳酸含有乳酸水溶液の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【図4】90%ラクチリル乳酸含有乳酸水溶液のゲル浸透クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【図5】合成例2で得られたエポキシド混合物の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図6】合成例2で得られたエポキシド混合物の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【図7】実施例1で得られたプラスチックの赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図8】実施例1で得られたプラスチックの熱重量測定(TG)によるTG曲線を示すグラフである。
【図9】実施例2で得られたプラスチックの赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図10】実施例2で得られたプラスチックの熱重量測定(TG)によるTG曲線を示すグラフである。
【図11】実施例3で得られたプラスチックの赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図12】実施例3で得られたプラスチックの熱重量測定(TG)によるTG曲線を示すグラフである。
【図13】実施例3で得られたプラスチックのゲル浸透クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【図14】実施例3で得られたプラスチックの核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【図15】実施例4で得られたプラスチックの赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図16】実施例4で得られたプラスチックの熱重量測定(TG)によるTG曲線を示すグラフである。
【図17】実施例5で得られたプラスチックの赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図18】実施例5で得られたプラスチックの熱重量測定(TG)によるTG曲線を示すグラフである。
【図19】実施例6で得られたプラスチックの赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図20】実施例6で得られたプラスチックの熱重量測定(TG)によるTG曲線を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な熱硬化性組成物及びそれを硬化させて得られる生分解性プラスチックに関するものであり、接着剤、成形材、インキ等の種々の用途に使用可能である。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の観点から、生分解性プラスチックの開発が急速に進んでいる。このようなプラスチックの近年の開発としては、例えば、変性ポリ(3−ヒドロキシブチレート)から誘導される脂肪族系のジオール成分と芳香族系のジカルボン酸成分とを共重合させた生分解性ポリエステル(特許文献1参照)、ラクタイドとポリエチレングリコールとの共重合体とラクタイドとポリプロピレングリコールとの共重合体とを鎖延長剤を用いて反応させたポリエーテル共重合体(特許文献2参照)、特定の構造単位を有するポリエーテルポリエステルとラクタイドとを共重合させたポリエーテルポリエステル(特許文献3参照)、多塩基酸無水物とエポキシド化合物とをセルロース誘導体の存在下で反応させることにより得る組成物からなるセルロース誘導体成形物(特許文献4参照)などが挙げられる。
【0003】
生分解され易い構造としては、加水分解され易い脂肪族ポリエステルや、微生物により酸化され易い水酸基を有する共重合体などが挙げられる。特許文献4にも記載されているように、未置換水酸基を有するセルロース誘導体は、エポキシドと二塩基酸無水物からなるポリエステルが混在しなければ、一般には、優れた生分解性が得られていないのが現状である。しかしながら、これらが混在しても、充分な生分解性が得られていない。
即ち、従来市販のエポキシドと二塩基酸無水物を用いてポリエステルを得た場合、そのポリエステルは、生分解性であるためには充分な構造を有していない。このことは、エポキシドが、生分解性を示す構造を有していないためである。
【0004】
一方、生分解性樹脂の一つとして、ポリ乳酸はよく知られている。しかしながら、ポリ乳酸は、一般に、乳酸水溶液の脱水重縮合により乳酸オリゴマーを合成し、これを解重合によって環状化してラクチドを作り、これを開環重合して製造されるため、反応に長時間を要し、生産性や製造コストの面で問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開平9−157364号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平11−35655号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平8−295727号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平7−292001号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、工業的に容易に比較的低コストで製造でき、且つ、生分解性に優れた熱硬化性組成物及びそれを硬化させて得られる新規な生分解性プラスチックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明によれば、下記一般式(1)で表わされるエポキシドと、酸無水物を含有することを特徴とする熱硬化性組成物が提供される。
【化1】
(但し、(C3H4O2)は乳酸残基を表わし、Xは末端が環状エーテルとなる化合物の残基を表わし、nは1〜10の整数である。)
【0008】
好適な態様によれば、上記エポキシドが、下記一般式(2)で表わされるエポキシドであることを特徴とする上記熱硬化性組成物が提供される。
【化2】
(但し、(C3H4O2)は乳酸残基を表わし、Rは水素原子又はメチル基を表わし、nは1〜10の整数である。)
【0009】
さらに好適な態様によれば、上記エポキシドは、下記一般式(3)で表わされる化合物とエピハロヒドリンとを反応させて得られたものである。
【化3】
【0010】
より好適な具体的な態様によれば、上記エポキシドが、n=1〜10のうちの少なくとも2つの異なるn数のエポキシドからなるエポキシド混合物であることを特徴とする熱硬化性組成物が提供される。
前記熱硬化性組成物は、さらに他のエポキシドを含有することができる。
本発明の他の側面によれば、前記熱硬化性組成物を硬化させて得られる生分解性プラスチックが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱硬化性組成物中に含まれるエポキシドは、一方の末端にエポキシ基やオキセタニル基等の環状エーテル基を有するため、酸無水物等と反応して重合し、また、他方の末端に水酸基を有するため、微生物により酸化され易く、また、ラクチリル乳酸などの乳酸の縮合物のために、エステル結合を単量体に比べて多く有し、加水分解され易い構造を持っている。従って、このエポキシドもしくはエポキシド混合物又はこれらと他のエポキシドとの混合物と、酸無水物を含有することを特徴とする組成物の硬化物、例えばプラスチックは、生分解性に優れたものとなり、また、比較的低コストで生産性良く製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者は、前記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、前記一般式(1)で表わされるエポキシド、特に前記一般式(2)で表わされるエポキシド、好ましくは、上記エポキシドにおいてn=1〜10のうちの少なくとも2つの異なるn数のエポキシドからなるエポキシド混合物と、酸無水物を含有することを特徴とする組成物は、接着剤、成形材、インキ等の種々の用途に有用であり、またその硬化物が優れた生分解性を示すことを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0013】
すなわち、本発明の熱硬化性組成物の一成分であるエポキシドは、一方の末端にエポキシ基やオキセタニル基等の環状エーテル基を有するため、酸無水物等と反応して重合し、また、他方の末端に水酸基、分子内にエステル結合を有しているため、加水分解され易い構造となっている。従って、このエポキシドもしくはエポキシド混合物又はこれらと他のエポキシドとの混合物と、酸無水物を含有する熱硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物は、優れた生分解性を示すものとなる。さらに、上記エポキシドは、末端水酸基のため、各種素材への接着性に優れ、また、他の樹脂と反応させることが可能である。
【0014】
ところで、本発明者は、乳酸のエポキシドが生分解性を示す構造を与えることを見出したが、この構造のみを得ることは困難である。なぜならば、乳酸は、水溶液中では比較的安定であるが、例えば、90%水溶液では、数%〜数十パーセントの割合で、ラクチリル乳酸などの乳酸の縮合物が、50%水溶液では、数%の割合で、乳酸の縮合物が含まれ(本明細書においては、このようなラクチリル乳酸などの乳酸の縮合物を含む乳酸水溶液を、ラクチリル乳酸含有乳酸水溶液と総称することもある)、また、エポキシドを得るには、合成中に加熱されるため、乳酸はさらに縮合し、乳酸単量体のみをエポキシド化することは工業的に難しいからである。しかしながら、このように縮合したオリゴマーのエポキシドを用いて得られる硬化物も、前記した理由により優れた生分解性を示す。従って、本発明で用いるエポキシドの合成過程においては、厳密な意味では、前記一般式(1)におけるn数が異なるエポキシドからなるエポキシド混合物が得られるが、これらを分離・精製する必要はなく、混合物のまま用いることができ、工業的には安価な方法である。
【0015】
以下、本発明の熱硬化性組成物及びそれを硬化させて得られる生分解性プラスチックについて詳細に説明する。
まず、本発明の熱硬化性組成物の一成分であるエポキシドについて説明する。このエポキシドは、種々の方法によって得ることができる。例えば、(A)アルカリ金属水酸化物又はその水溶液を用いて、乳酸及びその縮合物とエピハロヒドリンとを反応させる方法、(B)アルカリ金属水酸化物又はその水溶液を用いて、乳酸及びその縮合物とエピハロヒドリンとを第4級塩基性塩化合物及び/又はクラウンエーテル化合物を触媒として反応させる方法、(C)乳酸及びその縮合物のアルカリ金属塩とオキセタンとの脱塩反応などの方法が挙げられる。
【0016】
ここで、乳酸は、下記式(A)及び(B)で示される構造のD−体、L−体などの光学活性体又はこれらの混合物であるD,L−体のいずれでもよい。また、乳酸の縮合物の構造としては、例えば、下記式(C)〜(E)で示される化合物などが挙げられる。前記一般式(1)〜(3)に表わされている乳酸残基(C3H4O2)は、(C)〜(E)の残基を含めて包括的に表わしたものである。
【化4】
【0017】
また、前記一般式(1)〜(3)において、nは1〜10の整数を表わすが、好ましくは、nは1〜7の整数である。混合物においても、nは1〜10の整数を表わし、好ましくは、nは1〜7の整数である。nが10を超えると、ジエポキシになる恐れがあるので、nが10を超えることは好ましくない。
さらに、工業的にはn=1〜10のうちの少なくとも2つの異なるn数からなるエポキシドの混合物が製造されるが、それらの混合物からn数が1、2、又は3などのエポキシドを個々に分離・精製することは難しい。それ故、一般的には、エポキシド混合物として製品化される。
【0018】
前記製造方法(A)では、反応容器に50〜90%ラクチリル乳酸含有乳酸水溶液とエピハロヒドリンとを仕込み、攪拌しながら、反応温度を室温〜80℃に保持しながらアルカリ金属水酸化物を添加し、常圧あるいは減圧下で、40〜80℃で反応系内の水を系外に留去しながら反応させる。 しかし、副反応を抑制する点から、20〜100mmHg程度の減圧下で反応を進めることが好ましい。反応温度が上記の範囲外、すなわち80℃を超える場合は、原料エポキシ化合物の高分子量化が起こり、良好な目的物が得られない。一方、室温よりも低い場合には反応が進行し難くなるので好ましくない。反応は、例えば下記反応式(4)で示すように進行する。
【化5】
【0019】
上記反応は、溶媒中又は無溶媒で行うことができるが、エピハロヒドリンが反応溶剤としての機能を有するので、従来一般的に使用されている反応溶剤は使用する必要がない。しかし、必要に応じてシクロヘキサン、n−ヘキサンなどの低級脂肪族炭化水素、あるいはベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などの反応に対して不活性の有機溶剤をエピハロヒドリンと混合して使用することができる。但し、これらの溶剤(エピハロヒドリンを除く)を多量に使用することは、反応釜の容積効率を低下させることになり、また高分子量化物が生成し易くなる要因ともなるので好ましくない。
【0020】
上記エピハロヒドリンとしては、たとえば、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、エピヨードヒドリン、エピフルオロヒドリン等が例示されるが、工業的にはエピクロルヒドリンが使用される。エピハロヒドリンの使用量は、乳酸及びその縮合物のカルボキシル基1当量に対して、2〜15当量、好ましくは5〜10当量の範囲が好ましい。エピハロヒドリンの使用量が2当量未満の場合、反応が遅くなり、一方、15当量を超える範囲では容積効率が悪くなるので好ましくない。
【0021】
上記アルカリ金属水酸化物は、エピハロヒドリンのグリシジル基とカルボキシル基との付加反応と、付加反応後の閉環反応の触媒としての機能を有する。アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が例示される。これらのアルカリ金属水酸化物は固体又は水溶液として使用することができる。固体状で使用する場合、粉砕物が、反応率が高くなるので好ましい。アルカリ金属水酸化物の使用量は、グリシジルエーテル化する水酸基1当量に対し、1.0〜2.0当量であることが好ましい。
【0022】
反応終了後、濾過し、又はメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カチオン交換樹脂等で残アルカリ金属水酸化物を中和した後、濾過し、副生塩を分離除去し、次いで、減圧下に過剰のエピハロヒドリンを留去し、目的とするエポキシドを得る。
【0023】
前記製造方法(B)では、反応容器に50〜90%ラクチリル乳酸含有乳酸水溶液とエピハロヒドリンとを仕込み、攪拌しながら、溶媒中又は無溶媒で、反応温度を室温〜80℃に保持しながら、触媒として第4級アンモニウムハイドロオキサイド、第4級ホスホニウムハイドロオキサイド、第4級アンモニウムハライドなどの第4級塩基性塩化合物及び/又はクラウンエーテル化合物を添加し、同温度で0.1〜3時間攪拌混合した後、アルカリ金属水酸化物を添加し、常圧あるいは減圧下で、40〜80℃で反応系内の水を系外に留去しながら反応させる。 しかし、副反応を抑制する点から、20〜100mmHg程度の減圧下で反応を進めることが好ましい。
【0024】
反応温度が上記範囲外、すなわち80℃を超える場合は、原料エポキシ化合物の高分子量化が起こり、良好な目的物が得られなくなる。一方、室温よりも低い場合には、反応が進行し難くなるので好ましくない。また、反応時間(攪拌混合時間)が0.1時間未満では、第4級アンモニウムハイドロオキサイド、第4級ホスホニウムハイドロオキサイド、第4級アンモニウムハライドなどの第4級塩基性塩化合物及び/又はクラウンエーテル化合物とカルボキシル基との間での錯塩形成が不充分になるために、グリシジルエーテル化率が低くなるので好ましくない。一方、3時間を超えても錯塩形成が平衡状態となり、長時間の反応(攪拌混合)は生産性の面から好ましくない。
【0025】
上記第4級塩基性塩化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等のテトラアルキルアンモニウムハライド類;トリメチルベンジルアンモニウムハライド、トリエチルベンジルアンモニウムブロマイド等のトリアルキルベンジルアンモニウムハライド類;テトラメチルアンモニウムバイカーボネート、テトラエチルアンモニウムバイカーボネート等のテトラアルキルアンモニウムバイカーボネート類;テトラメチルアンモニウムベンゾエート、テトラエチルアンモニウムベンゾエート等のテトラアルキルアンモニウムベンゾエート類;ビス(テトラメチルアンモニウム)フタレート等のビス(テトラアルキルアンモニウム)フタレート類などの第4級アンモニウム塩や、テトラエチルホスホニウムクロライド、ジメチルジシクロヘキシルホスホニウムクロライド、トリフェニルメチルホスホニウムヨーダイド等の第4級ホスホニウムハライド塩、さらに、例えばテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド等のテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド類や、テトラメチルホスホニウムハイドロオキサイド、テトラエチルホスホニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルホスホニウムハイドロオキサイド、テトラブチルホスホニウムハイドロオキサイド等のテトラアルキルホスホニウムハイドロオキサイド類を挙げることができる。これらは単独であるいは2種以上を混合して使用することができる。また、これらは固体又は液体の状態で使用される。
【0026】
上記第4級塩基性塩化合物のうちでも、第4級アンモニウムハライド、第4級アンモニウムハイドロオキサイド、又は第4級ホスホニウムハイドロオキサイドが好ましい。第4級アンモニウムハライドとしては、例えば、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイドが反応収率の面から好ましく、第4級アンモニウムハイドロオキサイドとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイドが好ましく、また第4級ホスホニウムハイドロオキサイドとしては、テトラメチルホスホニウムハイドロオキサイド、テトラエチルホスホニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルホスホニウムハイドロオキサイド、テトラブチルホスホニウムハイドロオキサイドが好ましい。さらには、これらの第4級塩基性塩化合物のうち、第4級アンモニウムハイドロオキサイド類又は第4級ホスホニウムハイドロオキサイド類が、反応後に容易に分解除去でき、高品質の製品が得られるので特に好ましい。
【0027】
第4級塩基性塩化合物は、前記一般式(3)で表わされる化合物又はそれらの混合物のカルボキシル基1当量に対して、0.001〜2当量、好ましくは0.05〜0.2当量の範囲で使用される。0.001当量未満の場合はその効果が発現し難く、一方、2当量を超える量を添加してもそれ以上の格別な効果の向上は見られない。
【0028】
上記反応は、溶媒中又は無溶媒で行うことができるが、エピハロヒドリンが反応溶剤としての機能を有するので、従来一般的に使用されている反応溶剤は使用する必要がない。しかし、必要に応じてシクロヘキサン、n−ヘキサンなどの低級脂肪族炭化水素、あるいはベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などの反応に対して不活性の有機溶剤をエピハロヒドリンと混合して使用することができる。但し、これらの溶剤(エピハロヒドリンを除く)を多量に使用することは、反応釜の容積効率を低下させることになり、また高分子量化物が生成し易くなる要因ともなるので好ましくない。
【0029】
上記エピハロヒドリン及びアルカリ金属水酸化物については、前記製造方法(A)について説明した通りである。従って、前記製造方法(A)と同様に、エピハロヒドリンの使用量は、乳酸及びその縮合物のカルボキシル基1当量に対して、2〜15当量、好ましくは5〜10当量の範囲が好ましく、アルカリ金属水酸化物の使用量は、グリシジルエーテル化する水酸基1当量に対し、1.0〜2.0当量であることが好ましい。
【0030】
反応終了後、濾過し、又はメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カチオン交換樹脂等で残アルカリ金属水酸化物などを中和した後、濾過し、副生塩を分離除去し、次いで、減圧下に過剰のエピハロヒドリンを留去し、目的とするエポキシドを得る。
【0031】
一方、前記製造方法(C)では、反応容器に乳酸及びその縮合物のアルカリ金属塩の50〜90%水溶液とオキセタン、例えば、3−アルキル−3−ハロゲン化メチル−オキセタンとを仕込み、攪拌しながら、溶媒中又は無溶媒下、触媒として第3級アミンや前記第4級塩基性塩化合物及び/又はクラウンエーテル化合物を添加し、常圧あるいは減圧下で、反応系内の水を系外に留去しながら、70〜130℃で30分〜30時間反応させる。反応は、例えば下記反応式(5)で示すように進行する。
【化6】
【0032】
上記オキセタンの使用量は、乳酸及びその縮合物のアルカリ金属塩1モルに対して、1〜10モルの範囲が好ましい。また、トリエチルアミンなどの第3級アミンや前記第4級塩基性塩化合物などの触媒は、乳酸及びその縮合物のアルカリ金属塩1モルに対して、0.001〜0.1モルの範囲が好ましい。
【0033】
反応終了後、濾過し、副生塩を分離除去し、次いで、減圧下に過剰の3−アルキル−3−ハロゲン化メチル−オキセタンを留去し(溶剤を含む場合には、溶剤も留去し)、目的とするエポキシドを得る。
【0034】
本発明の熱硬化性組成物は、さらに他のエポキシドを含有することができる。他のエポキシドとしては、例えば、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブトキシポリエレングリコールグリシジルエーテル、グリシドール、高級アルコールグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、N−グリシジルフタルイミド、メタクリル酸グリシジル、o−フェニルフェノールグリシジルエーテル、スチレンオキサイドなどが挙げられるが、乳酸及び/又は他のモノカルボン酸及び/又はアルコール類を配合して、エポキシド化しても構わない。
【0035】
他のモノカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸などの飽和脂肪酸、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、オレイン酸などの不飽和脂肪酸、酢酸n−プロピル、ベンジル酸、p−メトキシフェニル酢酸、イソニコチン酸、ジフェニル−4−カルボン酸、安息香酸などが挙げられる。
【0036】
アルコール類としては、メタノール、エタノール、ブタノール、イソブタノール、オクタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、シクロヘキサノール、シクロペンタノールなどが挙げられる。
【0037】
本発明の熱硬化性組成物で用いる他の成分である酸無水物としては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸等の脂環式二塩基酸無水物;無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸等の脂肪族又は芳香族二塩基酸無水物;あるいはビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は芳香族四塩基酸二無水物などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、脂環式二塩基酸無水物、特に生分解性の観点から無水コハク酸、無水マレイン酸が好ましい。
【0038】
上記エポキシドもしくはエポキシド混合物又はこれらと他のエポキシドとの混合物と、酸無水物とを含有する熱硬化性組成物を硬化させて、本発明の生分解性プラスチックが得られるが、上記エポキシドもしくはエポキシド混合物又はこれらと他のエポキシドとの混合物と酸無水物との仕込み割合は、モル比で(エポキシドもしくはエポキシド混合物又はこれらと他のエポキシドとの混合物)/酸無水物=0.3〜3の範囲が好ましい。この比率が0.3未満の場合は、高分子化できない恐れがあり、また3を超えると、低分子量のものができ、軟化点が低くなる可能性がある。
【0039】
上記硬化反応は、常圧、加圧又は減圧下で、50〜280℃、好ましくは100〜250℃で、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、ペンタクロルエタン、1,2−ジクロルベンゼン、1,2,4−トリクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素類などの有機溶剤、及びこれらの混合溶剤の存在下又は非存在下、トリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、3−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物、塩化リチウム等のリチウム化合物、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属化合物、などの触媒を添加して、又は無触媒で行われる。
【0040】
本発明の熱硬化性組成物には、必要に応じて、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、マイカ等の公知慣用の無機フィラーや、ゴム微粒子、粉体エポキシ樹脂(例えば、日産化学工業社製TEPIC等)、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂(例えば、日本触媒社製M−30、S、MS等)、尿素樹脂、架橋アクリルポリマー(例えば、綜研化学社製MR−2G、MR−7G等、積水化成品社製テクポリマー等)などの有機フィラーを、単独で又は2種以上配合することができる。フィラーの配合量は、上記組成物100質量部に対して、1〜200質量部、好ましくは10〜50質量部の割合が適当である。
【0041】
本発明の熱硬化性組成物は、さらに必要に応じてフタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の公知慣用の着色剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0042】
さらに本発明の熱硬化性組成物は、難燃性を得る目的で、必要に応じて、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤等の難燃剤を配合することができる。難燃剤の配合量は、上記組成物100質量部に対して、通常1〜100質量部、好ましくは5〜50質量部の割合が適当である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を示して本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、以下において「部」とあるのは、特に断りのない限り全て「質量部」を意味するものとする。
【0044】
合成例1
2リットルの四つ口フラスコに、90%ラクチリル乳酸含有乳酸水溶液184.1部、エピクロロヒドリン920.52部、及びテトラエチルアンモニウムブロマイド42.1部を仕込み、40〜50℃で1時間攪拌した。次いで、40〜50℃で攪拌しながら、48%水酸化ナトリウム水溶液167部を2〜3時間かけて滴下した。その後、フラスコ内の圧力を80mmHgまで減圧し、40〜50℃で6時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を濾過し、未反応のエピクロロヒドリンをエバポレーターを用いて除去し、無色の液体263部を得た。
この反応生成物は、エポキシ当量(JIS K 7236に準拠して求めた)は約170g/eq、水酸基価(基準油脂分析試験法(日本油脂化学協会出版)に準拠して求めた)は約330mgKOH/g、酸価(基準油脂分析試験法(日本油脂化学協会出版)に準拠して求めた)は1mgKOH/g以下であり、前記一般式(2)において、nは平均して1.33であった。得られたエポキシド混合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)及び核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))をそれぞれ図1及び図2に示す。尚、参考のために、90%ラクチリル乳酸含有乳酸水溶液の核磁気共鳴スペクトル(溶媒DMSO−d6、基準物質TMS(テトラメチルシラン))及びゲル浸透クロマトグラフィーによるクロマトグラムをそれぞれ図3及び図4に示す。また、ゲル浸透クロマトグラフィーによるクロマトグラムのピークが現れてから消えるまでの装置の読み取りデータを下記表1に示す。
【表1】
【0045】
合成例2
2リットルの四つ口フラスコに、90%ラクチリル乳酸含有乳酸水溶液183.3部及びエピクロロヒドリン922.4部を仕込み、40〜50℃で1時間攪拌した。次いで、40〜50℃で攪拌しながら、48%水酸化ナトリウム水溶液167部を2〜3時間かけて滴下した。その後、フラスコ内の圧力を80mmHgまで減圧し、40〜50℃で6時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を濾過し、未反応のエピクロロヒドリンをエバポレーターを用いて除去し、無色の液体227部を得た。
この反応生成物は、エポキシ当量(JIS K 7236に準拠して求めた)は約200g/eq、水酸基価(基準油脂分析試験法(日本油脂化学協会出版)に準拠して求めた)は約280mgKOH/g、酸価(基準油脂分析試験法(日本油脂化学協会出版)に準拠して求めた)は約1mgKOH/g以下であり、前記一般式(2)において、nは平均して1.75であった。得られたエポキシド混合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)及び核磁気共鳴スペクトル(溶媒DMSO−d6、基準物質TMS(テトラメチルシラン))をそれぞれ図5及び図6に示す。
【0046】
実施例1
1リットルの四つ口フラスコに、合成例1で得られたエポキシド混合物246部、無水マレイン酸142.1部、及びイミダゾール0.99部を仕込み、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、140〜150℃で3時間、さらに、180〜190℃で90分間反応を行った。反応終了後、アセトンを加えて、反応物を膨潤させフラスコより取り出し、濾過した。次いで、濾過物をアセトンで洗浄後、真空乾燥器で乾燥して、重合物71.27部を得た。得られた重合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)及び熱重量測定(TG)によるTG曲線をそれぞれ図7及び図8に示す。
また、得られた重合物を2〜10kgf/cm2、180℃で熱プレスし、厚さ約0.5mm、長さ約5cm、幅約2cmのフィルムを作製し、水に浸漬したところ、水に不溶であったため、太陽インキ製造(株)嵐山事業所内の土壌に1ヶ月間埋めたところ、虫に食われたように生分解されていることが目視で確認された。
【0047】
実施例2
1リットルの四つ口フラスコに、合成例2で得られたエポキシド混合物218.9部及び無水マレイン酸124.9部を仕込み、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、140〜150℃で3時間、さらに、190〜200℃で90分間反応を行った。反応終了後、ジメチルホルムアミドを加えて、反応物を膨潤させフラスコより取り出し、濾過した。次いで、濾過物をジメチルホルムアミドで洗浄後、さらにアセトンで洗浄し、真空乾燥器で乾燥して、重合物150部を得た。得られた重合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)及び熱重量測定(TG)によるTG曲線をそれぞれ図9及び図10に示す。
また、得られた重合物を2〜10kgf/cm2、180℃で熱プレスし、厚さ約0.5mm、長さ約5cm、幅約2cmのフィルムを作製し、水に浸漬したところ、水に不溶であったため、太陽インキ製造(株)嵐山事業所内の土壌に1ヶ月間埋めたところ、虫に食われたように生分解されていることが目視で確認された。
【0048】
実施例3
1リットルの四つ口フラスコに、合成例2で得られたエポキシド混合物170.6部、無水マレイン酸88.5部、及び1,2,4−トリクロロベンゼン496部を仕込み、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、160〜170℃で90分間反応を行った。反応終了後、メタノール及びアセトンを加えて、反応物を膨潤させフラスコより取り出し、濾過した。次いで、濾過物をアセトンで洗浄し、真空乾燥器で乾燥して、水酸基価約180mgKOH/gの重合物25部を得た。得られた重合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)、熱重量測定(TG)によるTG曲線、ゲル浸透クロマトグラフィーによるクロマトグラム、及び核磁気共鳴スペクトル(溶媒重水、基準物質Sodium 3−(trimethylsilyl)propionate−2,2,3,3−D4)をそれぞれ図11、図12、図13、及び図14に示す。
また、得られた重合物を2〜10kgf/cm2、180℃で熱プレスし、厚さ約0.5mm、長さ約5cm、幅約2cmのフィルムを作製し、水に浸漬したところ、水に溶けた。
【0049】
実施例4
1リットルの四つ口フラスコに、合成例2で得られたエポキシド混合物226.9部及び無水マレイン酸76.8部を仕込み、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、140〜150℃で6時間反応を行った。反応終了後、水を加えて、反応物を膨潤させフラスコより取り出し、濾過した。次いで、濾過物をメタノールで洗浄し、真空乾燥器で乾燥して、水酸基価約200mgKOH/gの重合物50部を得た。得られた重合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)及び熱重量測定(TG)によるTG曲線をそれぞれ図15及び図16に示す。
また、得られた重合物を2〜10kgf/cm2、180℃で熱プレスし、厚さ約0.5mm、長さ約5cm、幅約2cmのフィルムを作製し、水に浸漬したところ、水に溶けた。
【0050】
実施例5
1リットルの四つ口フラスコに、合成例2で得られたエポキシド混合物324.5部及び無水マレイン酸110部を仕込み、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、140〜150℃で15時間、さらに170〜180℃で3時間反応を行った。反応終了後、テトラヒドロフランを加えて、反応物を膨潤させフラスコより取り出し、濾過した。次いで、濾過物をテトラヒドロフランで洗浄し、真空乾燥器で乾燥して、重合物52部を得た。得られた重合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)及び熱重量測定(TG)によるTG曲線をそれぞれ図17及び図18に示す。
また、得られた重合物を2〜10kgf/cm2、180℃で熱プレスし、厚さ約0.5mm、長さ約5cm、幅約2cmのフィルムを作製し、水に浸漬したところ、水に不溶であったため、太陽インキ製造(株)嵐山事業所内の土壌に1ヶ月間埋めたところ、虫に食われたように生分解されていることが目視で確認された。
【0051】
実施例6
1リットルの四つ口フラスコに、合成例2で得られたエポキシド混合物124.3部、無水マレイン酸72.06部、及び塩化リチウム0.31部を仕込み、アルゴン雰囲気下、攪拌しながら、140〜150℃で15時間、さらに170〜180℃で8時間反応を行った。反応終了後、テトラヒドロフランを加えて、反応物を膨潤させフラスコより取り出し、濾過した。次いで、濾過物をアセトンで洗浄し、真空乾燥器で乾燥して、重合物55.6部を得た。得られた重合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)及び熱重量測定(TG)によるTG曲線をそれぞれ図19及び図20に示す。
また、得られた重合物を2〜10kgf/cm2、180℃で熱プレスし、厚さ約0.5mm、長さ約5cm、幅約2cmのフィルムを作製し、水に浸漬したところ、水に不溶であったため、太陽インキ製造(株)嵐山事業所内の土壌に1ヶ月間埋めたところ、虫に食われたように生分解されていることが目視で確認された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明の熱硬化性組成物の一成分であるエポキシドは、熱反応性に優れているため、酸無水物とは容易に反応して重合し、また、得られたプラスチックは、末端に水酸基を有し、さらに分子中にエステル結合を多数有しているため、優れた生分解性を示すものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】合成例1で得られたエポキシド混合物の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図2】合成例1で得られたエポキシド混合物の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【図3】90%ラクチリル乳酸含有乳酸水溶液の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【図4】90%ラクチリル乳酸含有乳酸水溶液のゲル浸透クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【図5】合成例2で得られたエポキシド混合物の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図6】合成例2で得られたエポキシド混合物の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【図7】実施例1で得られたプラスチックの赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図8】実施例1で得られたプラスチックの熱重量測定(TG)によるTG曲線を示すグラフである。
【図9】実施例2で得られたプラスチックの赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図10】実施例2で得られたプラスチックの熱重量測定(TG)によるTG曲線を示すグラフである。
【図11】実施例3で得られたプラスチックの赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図12】実施例3で得られたプラスチックの熱重量測定(TG)によるTG曲線を示すグラフである。
【図13】実施例3で得られたプラスチックのゲル浸透クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【図14】実施例3で得られたプラスチックの核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【図15】実施例4で得られたプラスチックの赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図16】実施例4で得られたプラスチックの熱重量測定(TG)によるTG曲線を示すグラフである。
【図17】実施例5で得られたプラスチックの赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図18】実施例5で得られたプラスチックの熱重量測定(TG)によるTG曲線を示すグラフである。
【図19】実施例6で得られたプラスチックの赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図20】実施例6で得られたプラスチックの熱重量測定(TG)によるTG曲線を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表わされるエポキシドと、酸無水物を含有することを特徴とする熱硬化性組成物。
【化1】
(但し、(C3H4O2)は乳酸残基を表わし、Xは末端が環状エーテルとなる化合物の残基を表わし、nは1〜10の整数である。)
【請求項2】
前記エポキシドが、下記一般式(2)で表わされるエポキシドであることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性組成物。
【化2】
(但し、(C3H4O2)は乳酸残基を表わし、Rは水素原子又はメチル基を表わし、nは1〜10の整数である。)
【請求項3】
前記エポキシドが、n=1〜10のうちの少なくとも2つの異なるn数のエポキシドからなるエポキシド混合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱硬化性組成物。
【請求項4】
さらに、他のエポキシドを含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物を硬化させて得られる生分解性プラスチック。
【請求項1】
下記一般式(1)で表わされるエポキシドと、酸無水物を含有することを特徴とする熱硬化性組成物。
【化1】
(但し、(C3H4O2)は乳酸残基を表わし、Xは末端が環状エーテルとなる化合物の残基を表わし、nは1〜10の整数である。)
【請求項2】
前記エポキシドが、下記一般式(2)で表わされるエポキシドであることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性組成物。
【化2】
(但し、(C3H4O2)は乳酸残基を表わし、Rは水素原子又はメチル基を表わし、nは1〜10の整数である。)
【請求項3】
前記エポキシドが、n=1〜10のうちの少なくとも2つの異なるn数のエポキシドからなるエポキシド混合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱硬化性組成物。
【請求項4】
さらに、他のエポキシドを含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物を硬化させて得られる生分解性プラスチック。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2006−16436(P2006−16436A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193244(P2004−193244)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】
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