熱管理システムおよび方法
ガスタービンエンジン(14)における熱伝達を管理するためのシステム(10)は、エンジン(14)との動作連通状態に置かれた発熱サブシステムと、燃料を供給するように構成された燃料源(18)と、燃料源(18)から燃料を受け取るとともにエンジン(14)へ燃料を提供するように構成された燃料安定処理ユニット(16)と、発熱サブシステムから燃料への熱の伝達を実施するため燃料との熱連通状態に置かれた熱交換器とを含む。このような熱伝達を管理する方法は、燃料安定処理ユニット(16)において燃料から酸素を除去し、発熱サブシステムから燃料へ熱を伝達し、ガスタービンエンジン(14)において燃料を燃焼させることを含む。システム(10)は、航空機の熱管理に使用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、熱伝達の管理のためのシステム、方法、および装置、より詳しくは、エネルギー変換装置とその隣接環境との間の熱の伝達を管理するためのシステム、方法、および装置に関連する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その内容の全体が本願に取り入れられている2003年4月4日に出願された「平面膜脱酸素装置(Planer Membrane Deoxygenator)」という名称の米国特許出願第10/407,004号の一部継続出願である。
【背景技術】
【0003】
ヒートシンクとして大気を使用する結果として重大な性能上の不利が生じる、特に航空機や他の機上搭載システムにおいては、エネルギー変換装置の熱管理システムで燃料を冷却媒体として利用することが多い。さらに、廃熱を回収して、それを燃料を加熱するため燃料流へ転送すると、運転効率の向上を生む。このようなシステムに関して特定燃料の利用可能な冷却能力に悪影響を与える要因の一つは、不要な酸化反応生成物の形成速度と、これらの生成物の燃料システム装置表面への付着である。このような生成物の形成速度は少なくとも部分的に、燃料中に存在する溶存酸素の量に左右される。存在する溶存酸素の量は、空気への燃料の露出、より詳しくは燃料ポンプ供給動作中の空気への燃料の露出など、多様な要因による。溶存酸素が存在すると結果的にヒドロペルオキシドが形成されることがあり、このヒドロペルオキシドは加熱されると遊離基を形成し、この遊離基は重合して、一般に燃料に不溶性である高分子重量の酸化反応生成物を形成する。このような生成物は次いで、エネルギー変換装置の燃料供給・噴射システムの内部に、またその他の表面に付着して、エネルギー変換装置の性能と動作に有害な影響を与えることがある。エネルギー変換装置で使用される燃料は通常炭化水素系であるため、付着物は炭素を含み、一般に「コークス」と呼ばれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エネルギー変換装置へ送られる燃料の温度が上昇すると、発生する酸化反応の速度が上昇する。コークス形成に対する耐性が向上した現在入手可能な燃料は一般に、より高価であるかまたは添加剤を必要とする。燃料添加剤は、ハードウェアの追加と、供給システムの搭載と、高価な供給インフラストラクチャを必要とする。さらに、コークス形成に対する耐性が向上したこのような現在入手可能な燃料は、入手が必ずしも容易でない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一態様において、ガスタービンエンジンにおける熱伝達を管理するためのシステムに関連する。このようなシステムは、エンジンとの動作連通状態に置かれた発熱サブシステム(または複数のサブシステム)と、燃料を供給するように構成された燃料源と、燃料源から燃料を受け取るとともに燃料をエンジンへ提供するように構成された燃料安定処理ユニットと、発熱サブシステムから燃料への熱の伝達を実施するため燃料との熱連通状態に置かれた熱交換器とを含む。
【0006】
別の態様において、熱伝達の管理のためのシステムは、エネルギー変換装置と、エネルギー変換装置へ燃料を供給するように構成された燃料システムとを含む。燃料システムは、発熱サブシステムから燃料への熱の伝達を実施するため燃料システムからの燃料との熱連通状態に置かれた少なくとも一つの発熱サブシステムを含む。燃料は実質的に無コークスで、約550°Fより高い温度まで加熱される。
【0007】
別の態様において、航空機における熱伝達を管理する方法は、航空機を駆動するのに使用されるエンジンへ送られる燃料流から酸素を除去し、航空機の発熱サブシステムから燃料へ熱を伝達し、燃料を燃焼させることを含む。
【0008】
また別の態様において、航空機の熱管理のためのシステムは、航空機に動力を供給する手段と、航空機に動力を供給する手段に燃料を供給する手段と、燃料の脱酸素を行う手段と、航空機の発熱サブシステムと燃料との間の熱の伝達を実施する手段とを含む。
【0009】
さらに別の態様において、航空機における熱伝達の管理のためのシステムは、航空機エンジンと、航空機エンジンとの動作連通状態に置かれた発熱サブシステム(または複数のサブシステム)と、燃料を供給するように構成された燃料源と、燃料源から燃料を受け取るとともに航空機エンジンへ流出燃料流を提供するように構成された燃料安定処理ユニットと、発熱サブシステムから流出燃料流への熱の伝達を実施するため発熱サブシステムおよび燃料安定処理ユニットからの流出燃料流との熱連通状態に置かれた熱交換器とを含む。
【0010】
上記のシステムおよび方法の長所の一つは、燃料の利用可能冷却能力が上昇することである。利用可能冷却能力を上昇させることにより、エネルギー変換装置は、低級燃料を利用しながら高い温度で作動できる。高い温度で装置が作動すると、システムの発熱部品からの廃熱の回収の機会が多くなる。予熱燃料の燃焼は、非加熱燃料の燃焼よりも必要なエネルギー入力が小さいため、廃熱の回収は次には、装置の動作に関連する燃費コストを低下させる。冷却能力の上昇(従って、高い動作温度、廃熱の回収、および燃費の低下)は、装置の全体的な運転効率も高める。
【0011】
別の長所は、エネルギー変換装置内でのコークス形成の減少である。温度が上昇するにつれて燃料中に存在する溶存酸素の量が減少すると、酸化反応の速度を遅らせ、これが次にはコークスの形成とエネルギー変換装置の表面へのその付着とを減少させることにより、メンテナンス要件を低くする。燃料の完全なまたは部分的な脱酸素は、様々な等級の航空機燃料にわたってコークス形成を抑制する。燃料に溶解した酸素の量が減少すると、コークス付着の速度が低下するとともに、これに対応して、エネルギー変換装置の動作中に燃料が耐えられる最高許容温度が上昇する。言い換えると、燃料中に存在する溶存酸素の量が減少すると、燃料が吸収できる熱エネルギーが多くなることにより、結果的に、エネルギー変換装置へのコークス付着が望ましくない状態になるまで、エネルギー変換装置がより高い燃料温度で作動する。
【0012】
FSUへの燃料の流入に先立ってコークスの形成を防止、制限、または最小にする温度まで燃料を予熱することの動作面での長所も存在する。特に、燃料中の酸素溶解度と、燃料中の酸素の拡散率と、膜中の酸素の拡散率とが、温度の上昇にともなって向上するのである。こうして、燃料を予熱することによってFSUの性能が向上し得る。これによって結果として、FSU容量の減少(大きさと重量の減少)またはFSU性能の上昇が達成されることになり、さらにFSUから流出する燃料酸素レベルの減少が達成されることになる。さらに、FSU容量が減少すると、燃料システム内でのFSUの(低級熱負荷の上流かまたは下流への)配置において、そして熱負荷と燃料システム熱伝達ハードウェアを縦続接続する能力において、システム設計の自由度が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1を参照すると、熱伝達の管理のためのシステムが全体として10で示され、以下では「システム10」と呼ばれる。ここで使用される場合に、「熱伝達の管理」という用語は、関連のサブシステムとワークサイクルの様々な化学的・物理的パラメータを調整することによる熱伝達の制御を示すものとする。サブシステムは、炭化水素系燃料をワークサイクルへ提供する燃料システムを含むが、これに限定されない。ワークサイクルは、エネルギー変換装置とすることができる。以下では航空機の部品であるものとしてシステム10の説明を行うが、システム10は、他の用途、例えば公益事業電力発電、地上輸送システム、海上・淡水域輸送システム、産業機器システムなどに関連性を持つことを理解すべきである。さらに、「航空機」という用語は、すべての種類の有翼航空機、回転翼機、有翼・回転翼混合機、宇宙船、小型無人飛行機および他の無人機、兵器発射システムなどを含む。
【0014】
システム10の一実施例では、燃料システム12は、燃料源18から燃料を受け取って、エネルギー変換装置(以下「エンジン14」という)へ燃料を提供する燃料安定処理ユニット(fuel stabilization unit)(FSU)16を含む。動作中にシステム10の様々な部品の間での熱連通を実施する、様々な発熱サブシステム(例えば、低温熱源24、ポンプ・計量システム20、高温熱源22、上記熱源とシステムの組合せなど)は、FSU16の上流または下流で燃料との熱連通状態に置かれることにより燃料システム12に統合される。FSU16に受け取られる燃料の温度を上昇させるため、さらに、燃料予熱器13がFSU16の前で燃料システム12に設けられることができる。バルブ25を有する選択操作自在な燃料ラインバイパス23は、様々なサブシステム、特に高温熱源22を迂回する燃料のバイパスとなるように、燃料システム12に設けられることが好ましい。
【0015】
エンジン14は、様々な発熱サブシステムとの動作連通状態に置かれ、圧縮機30と、燃焼器32と、タービン34とを有するガスタービンエンジンを含むことが好ましい。燃料システム12からの燃料は燃料噴射ノズル36を介して燃焼器32へ噴射され、点火される。エンジン14の出力シャフト38は、航空機を推進させる複数のブレードを駆動する出力パワーを提供する。
【0016】
FSU16を伴うシステム10の動作は、上述した利点と長所を提供するように、様々な熱源とシステムにより発生した熱の制御を可能にする。燃料中でコークスの形成が開始する温度は、約260°Fである。約325°Fまでの燃料温度でエンジン14(例えばガスタービンエンジン)が作動すると、一般に、大部分の軍事用途では許容できる量のコークス堆積物が発生する。しかし、燃料中の酸素含有量を減少させるためFSU16とともにシステム10を作動させると、重大なコークス化の影響が見られずに、約325°Fを超える、好ましくは約550°Fを超える、より好ましくは約700°Fから約800°Fの燃料温度でエンジン14が作動できる。動作の上限は約900°Fであり、これはほぼ燃料が熱分解する温度である。
【0017】
さて図2〜図7を参照すると、FSU16が図示されている。FSU16は、燃料源から直接的または間接的に燃料を受け取る燃料脱酸素装置である。FSU16が作動すると、燃料中の溶存酸素の量が減少して脱酸素燃料となる。ここで使用する場合、「脱酸素燃料」という用語は、大気と平衡状態にある燃料の酸素含有量と比較して低い酸素含有量を有する燃料を示すものとする。大気と平衡状態にある燃料の酸素含有量は、約70百万分率(ppm)である。FSU16の特定用途(例えば、図1のシステム10の動作温度)に応じて、脱酸素燃料の酸素含有量は約5ppmとすることができるか、動作温度が約900°Fに近づく用途では約5ppm未満とすることができる。燃料中の溶存酸素量の減少によって、燃料が吸収する熱エネルギーの量を増大できる一方で、不溶性反応生成物を形成する遊離基の成長を減少させることにより、実質的に無コークスの燃料とすることができる。ここで使用する場合に、「実質的に無コークス」という用語は、高い温度でエンジンを作動させるのに使用された時に、FSU16が組み込まれた様々な装置のメンテナンスおよび/またはオーバーホールの予定を引き延ばすことのできる速度でコークスを付着させる燃料を指すものとする。
【0018】
FSU16は、流れ板27と、透過性複合膜42と、多孔質基板39とによるアッセンブリを含む。流れ板27と、透過性複合膜42と、多孔質基板39とは、透過性複合膜42が流れ板27との界面係合状態に置かれるように、そして多孔質基板39が透過性複合膜42との界面係合状態に置かれるように、積層体で配置されることが好ましい。流れ板27は、燃料が流通する通路50を画定する構造を持つ。
【0019】
流れ板27のアッセンブリは、真空ハウジング60内に取り付けられる。透過性複合膜42において酸素の部分的な圧力差を発生させることにより流れ板27のアッセンブリを流れる燃料から酸素出口35へ溶存酸素を移動させるように、真空ハウジング60に真空が印加される。部分的な圧力差を発生させる真空の供給源は、真空ポンプ、無酸素循環ガスなどでよい。無酸素循環ガスの場合には、酸素の部分的な圧力差を発生させて酸素を燃料から吸引するように、ストリップガス(例えば窒素)がFSU16内を循環し、ストリップガスから酸素を除去するように、吸着剤またはフィルタなどが回路内に設けられる。
【0020】
特に図2を参照すると、FSU16の入口57が示されている。FSU16へ入る燃料は矢印47で示された方向に入口57から流れて、通路50の各々へ分散される。積層状態の流れ板27の間のシール45は、燃料が多孔質基板39と接触して基板内へ流入するのを防止する。
【0021】
特に図3を参照すると、FSU16の出口が図示されている。多孔質基板39を通して除去された酸素は、矢印51で示されたように真空源を介して酸素出口35から除去される。流れ板27を流れる脱酸素燃料は、矢印49で示されたように燃料出口59から除去されて、一つまたは複数の下流サブシステム(例えば、ポンプ、計量システム、高温熱源など)へ、そしてエンジンへ送られる。
【0022】
さて図4を参照すると、流れ板27と、透過性複合膜42と、多孔質基板39とのアッセンブリが図示されている。上述したように、FSU16は、界面係合した流れ板27と、透過性複合膜42と、多孔質基板39とのアッセンブリを含む。図5を参照して後述する流れ板27は、燃料が流れる通路50を画定する平面構造を含む。透過性複合膜42は、多孔質裏材43に支持されたフルオロポリマーコーティング48を含むことが好ましく、一方、多孔質裏材43は、多孔質基板39によって流れ板27に支持されている。アッセンブリに真空を印加すると、透過性複合膜42を介して(特に、フルオロポリマーコーティング48と、多孔質裏材43と、多孔質基板39とを介して)、溶存酸素を通路50内の燃料から酸素出口35へ引き出す部分的な圧力勾配が発生する。
【0023】
透過性複合膜42は、多孔質裏材43に支持された無定形フルオロポリマーコーティング48によって画定される。フルオロポリマーコーティング48は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)族のコーティングから誘導されることが好ましく、約0.5マイクロメートルから約20マイクロメートル、好ましくは約2マイクロメートルから約10マイクロメートル、より好ましくは約2マイクロメートルから約5マイクロメートルの厚さに多孔質裏材43上に形成される。多孔質裏材43は、約0.001インチから約0.02インチ、好ましくは約0.002インチから約0.01インチ、より好ましくは約0.005インチの厚さを有する二フッ化ポリビニリデン(polyvinylidene difluoride)(PVDF)またはポリエーテルイミド(polyetherimide)(PEI)の基板を含むことが好ましい。多孔質裏材43の多孔度は、約40%開放空間よりも高く、好ましくは約50%開放空間よりも高い。多孔質裏材43の細孔の公称細孔径は、約0.25マイクロメートル未満、好ましくは約0.2マイクロメートル未満、より好ましくは約0.1マイクロメートル未満である。無定形ポリテトラフルオロエチレンは、デラウェア州ウィルミントンを所在地とするデュポン社(DuPont)からテフロン AF(Teflon AF)(登録商標)の商品名で販売されている。フルオロポリマーコーティング48として利用可能な他のフルオロポリマーとしては、ペルフッ素化(perfluorinated)ガラス状ポリマーおよびポリペルフルオロブテニルビニルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。二フッ化ポリビニリデンは、ペンシルヴェニア州フィラデルフィアを所在地とするアトフィナ・ケミカルズ社(Atofina Chemicals,Inc.)からカイナー(Kynar)(登録商標)の商品名で販売されている。
【0024】
多孔質基板39は、炭化水素系燃料との適合性を有する軽量プラスチック材料(例えばPVDF、PEI、ポリエチレンなど)を含む。このような材料は、印加される真空により透過性複合膜42において適当な酸素の部分的圧力差を発生させることができる、選択された多孔度のものである。多孔質基板39の細孔径、多孔度、および厚さは、燃料の質量流量の関数である酸素の質量流束条件によって決定される。ポリエチレンから製造される多孔質基板39では、基板は約0.03インチから約0.09インチの厚さ、好ましくは約0.04インチから約0.085インチの厚さ、より好ましくは約0.070インチから約0.080インチの厚さである。あるいは、多孔質基板は、約0.01インチから約0.03インチの厚さを有する織プラスチックメッシュまたはスクリーンのより薄くてより軽量の真空透過を含む。
【0025】
さて図5と図6を参照すると、流れ板27は、うち1本が31で図示された流路と、透過性複合膜42とともに組み立てられると通路50を画定する構造を形成するように流路31に配置されたリブまたはバッフル52とを有する平面構造を含む。バッフル52は、流路31を横切るように配置されている。通路50は、入口57および出口59と流体連通状態にある。真空は、酸素出口35(図3)を介して多孔質基板39と連通状態にある。
【0026】
通路50に設けられたバッフル52は、FSU16を通過する間に燃料の大部分がフルオロポリマーコーティング48と接触して溶存酸素を燃料から拡散させるように、燃料の混合を促進する。通路における高い圧力差は概して低い圧力差よりも好都合ではないため、バッフル52は、通路50に層流、結果的に低レベルの混合(乱流と対照的に)を起こすように構成されるのが好ましい。他方、乱流によって混合が所望のレベルであって圧力損失が許容可能である時には、付随して起こる圧力降下にも関わらず乱流が好ましい。乱流流路の流れは、層流よりも高い圧力降下が見られるにもかかわらず、充分な混合と酸素輸送の向上を促進できるので、バッフルの大きさと数を減少させるか、皆無としてもよい。バッフル52は、燃料の流れの方向に対して通路50の横方向に少なくとも部分的に延在して、流れ板27を流れる間に燃料を混合させるとともにフルオロポリマーコーティング48と均一に接触させる。
【0027】
図5を参照すると、動作時に矢印47の方向に流れ板の通路50を流れる燃料は、バッフル52によって混合され、フルオロポリマーコーティング48と接触する。図のように、バッフル52は流れ板の上下の面に交互に配置されている。この実施例では、バッフル52は、物質移動を高めて、燃料中の酸素拡散率を効果的に上昇させる垂直(上方および下方)の速度成分を誘発する。これにより、酸素/フルオロポリマー接触、ひいてはFSUから除去される酸素の量が増大する。燃料がフルオロポリマーコーティング48とより均一に接触して、多孔質裏材43を通り多孔質基板39内へ、そしてFSUから出るより均一な拡散を提供するように、バッフル52を流れる燃料の混合が促進される。図6を参照すると、流れ板の片側に配置されたバッフル52を含む流れ板の別の実施例が図示されている。特定用途のパラメータに応じて所望の量の混合および/または物質移動を達成するように乱流形態または層流形態を誘発するため、バッフル52、または限定される訳ではないが慣性装置、機械装置、音響装置などを含む混合促進装置の任意の構成を含むことが本発明の概念に含まれることを理解すべきである。
【0028】
図7を参照すると、流れ板27の積層体の一実施例が図示されている。流れ板27は、流れ板27の数を調整することにより様々な用途に適したFSUの調整を容易にするため、矩形であることが好ましい。あるいは、流れ板27を円形の構造とすることにより、積層構成の構造的一体性を高めてもよい。流れ板27の形状に関係なく、多孔質基板39との真空連通状態を提供するため真空開口部を画定する入口62を含む真空フレーム60の中に積層体が支持される。
【0029】
さて図2〜図7を参照すると、FSU16に使用するための流れ板27と、透過性複合膜42と、多孔質基板39の固有の量は、燃料の種類、燃料温度、およびエンジンからの質量流量要求など、システム10の特定用途向け要件によって決定される。さらに、溶存酸素の含有量が異なる燃料により、システム10の動作を最適化するため、およびシステム10の熱管理を最適化するために、所望の量の溶存酸素を除去するのに必要なろ過の量が異なってもよい。
【0030】
FSU16の性能は、透過性複合膜42の透過性と、ここを流れる酸素の拡散速度とに関連する。透過性複合膜42の透過性は、フルオロポリマーコーティング48における酸素の溶解度と、多孔質裏材43における酸素の移動との関数である。透過性複合膜42(フルオロポリマーコーティング48と多孔質裏材43との組合せ)は、真空またはストリップガス(例えば窒素)の特定の印加について燃料から多孔質基板39への溶存酸素の所望の拡散を可能にするように選択された厚さを有する。
【0031】
燃料から透過性複合膜42の表面を介した酸素の拡散速度は、燃料と透過性複合膜42との接触時間と、透過性複合膜42における部分的な圧力差に影響を受ける。燃料から除去される酸素の量を最大化するため、FSU16への真空の安定した印加と、透過性複合膜42と燃料との間の一定した接触を維持することが望ましい。溶存酸素の拡散の最適化は、燃料の流れ、燃料温度、真空レベル、および混合/移動の量を釣り合わせること、さらに、圧力損失最小化に対処すること、および製造公差と運転コストに対処することを伴う。
【0032】
再び図1を参照すると、燃料源18は、燃料を選択的に引き出すことができる複数の容器を含むことができる。有翼航空機では、航空機の翼に収納されるようにこのような容器は不規則な形状であってもよい。各容器は、容器の一方または両方から燃料を選択的に引き出してFSU16へ燃料をポンプ供給するように、手動または自動で制御されるポンプとの流体連通状態に置かれている。
【0033】
やはり再び図1を参照すると、システム10の熱管理の一態様は、燃料源18に貯蔵された燃料と低温熱源24の少なくとも一つとの間における熱の伝達を具体例とすることができる。特に、低温熱源24が燃料のコークス化限界を下回るため、燃料源18から流れる燃料は、低温熱源24の一部または全部から熱を吸収する低級ヒートシンクとして機能し得る。このような低温熱源24としては、油圧熱負荷、発電機熱負荷、エンジン補助歯車ボックス熱負荷、燃料ポンプ熱負荷、ファンド駆動歯車システム熱負荷、およびエンジン油系統負荷が挙げられるが、これらに限定されない。燃料源18から流れる燃料は、熱交換のためこれらの負荷の任意の一つまたはその組合せへ循環されることができる。燃料により吸収可能な熱の量は、燃料がFSU16に吸収されることのできる温度限界より下に燃料の温度が維持されるようなものである。
【0034】
さて図1と図8〜図13を参照すると、燃料と、様々な高温熱源22との間の熱伝達の管理が図示されている。図8において、高温熱源22は高温油系統76を含む。高温油系統76は、少なくとも一つの軸受および/または歯車装置78から受け取られた油流73から、FSU16からの脱酸素燃料へ熱を伝達するように構成された熱交換器77を含む。したがって、軸受および/または歯車装置78の温度はかなり低下し、熱交換器77からの燃料流の温度は、最高オイル温度に近く、約325°Fのコークス化限界より高いが熱分解が発生する温度(約900°F)より低い温度まで上昇する。
【0035】
高温熱源22はさらに、図9に図示されているように、冷却タービン冷却空気ユニット80を含むことができる。冷却タービン冷却空気ユニット80は、エンジン14の圧縮機30から約1,200°Fの温度の空気流を、FSU16から脱酸素燃料流を受け取ることにより、FSU16からの脱酸素燃料とエンジン14との間の熱伝達を実施する。受け取られた空気流と燃料流との間で熱が伝達され、こうして脱酸素燃料を加熱するとともに空気を冷却する。加熱燃料の温度は、約325°Fのコークス化限界より高く、熱分解が発生する温度(約900°F)より低い。特に、加熱燃料の温度は、約700°Fから約800°Fであることが好ましい。加熱された燃料は燃焼器32へ送られ、冷却された空気は圧縮機39へ送られる。圧縮機39からの低温出口流は3本の流れに分割され、圧縮機30、燃焼器32、およびタービン34へ戻される。冷却空気を圧縮機30、燃焼器32、およびタービン34へ送る際に、これら3部品の表面で冷却空気の緩衝層が形成されることにより、圧縮機30と、燃焼器32と、タービン34とを流れるガスの温度が一層高くなる。
【0036】
高温熱源22は、図10に見られるようにタービン排気復熱器86を含む。タービン排気復熱器86は、タービン34から排出された高温ガスを利用して燃焼器32へ送られる燃料を加熱することにより、熱伝達の管理を行う。タービン排気復熱器86の動作時には、約1,200°Fのタービン排気が熱交換器88へ送られ、FSU16から受け取られた脱酸素燃料を加熱するのに使用される。このような熱交換の際には、冷却された排気が熱交換器88から排出される。加熱燃料は燃焼器32へ送られる。燃焼器32へ送られる燃料の温度は、最低約550°F、好ましくは約550°Fから約900°F、より好ましくは約700°Fから約800°Fである。
【0037】
タービン排気復熱器の二つの類似した用途は、燃料冷却エンジンケースと、燃料冷却エンジン排気ノズルである。これらはともに、タービン排気復熱器と類似した高温熱源である。このような用途では、小型の燃料熱交換器、コイル、またはジャケットがエンジンケースまたは排気ノズルの周りに巻き付けられて、これらの供給源から燃料へ直接に、または最初に中間冷却材へ、次に中間冷却材から燃料へ、熱を伝達する。加熱された燃料は次に、燃焼器32へ送られる。
【0038】
図11において、高温熱源は、燃料冷却予冷器70とすることができ、この燃料冷却予冷器70、航空機へ組み込まれることが最も多く、以下では「予冷器70」と呼ぶ。予冷器70は、エンジン14の圧縮機30からは約1,000°Fの温度の空気流を、FSU16からは燃料を受け取る熱交換器72を含む。流入する空気流と燃料流との間で熱が伝達されて、約450°Fの温度の出口空気流と、約900°Fまで、好ましくは約400°Fから約800°Fの温度の出口燃料流を提供する。出口空気流は、航空機へ送られて一つまたは複数の供給空気となる。出口空気流は、環境制御システムに動力を供給して航空機の機室74へ加圧冷却空気を提供するのに利用できる。あるいは、またはこれに加えて、空気流は様々な機体構造(例えば翼、胴体壁)内を案内されて、除氷動作など、一つまたは複数の熱関連機能を提供できる。出口燃料流は燃焼器32へ送られる。
【0039】
図12を参照すると、高温熱源22は、一体型空気サイクル環境制御システム(integrated air cycle environmental control system)94(以下「IACECS94」)と呼ぶ)を含むことができる。図11を参照して上述した燃料冷却ECS予冷器70の変形例であるIACECS94は、航空機機室ECSへのヒートシンクとして機能する。IACECS94は、第2の燃料/空気熱交換器98との直列流体連通状態に置かれた第1の燃料/空気熱交換器96を含む。第1の燃料/空気熱交換器96は、エンジン14の圧縮機30から抽気された高温(約1,000°F)空気流101と、FSU16からの燃料流とを受け取る。熱の交換時には、最低約325°F、好ましくは約550°Fから約900°F、より好ましくは約700°Fから約800°Fの燃料が燃焼器32へ送られる。第1の燃料/空気熱交換器96から排出された冷却空気は、IACECS94の圧縮機95へ送られる。圧縮機95からの空気抽気流103からの熱は次に、FSU16からの燃料流と交換され、加熱された燃料は第1の燃料/空気熱交換器96へ送られる一方で、冷却された空気はIACECS94のタービン105へ送られ、そこで膨張して所望の機室圧力の低温空気となる。次にタービン105から低温空気が受け取られて、機室へ送られる。
【0040】
さて図13を参照すると、航空機用途の別の高温熱源22はヒートポンプ100を含むことができる。ヒートポンプ100は、低温源から、高温ヒートシンクとして作用する脱酸素燃料へ熱を伝達する。低温源から脱酸素燃料へ熱伝達が行われるので、ヒートポンプ100によって、低温の熱源から高温の燃料ヒートシンクへ脱酸素燃料への熱の伝達が可能である。約900°Fまでの温度のヒートポンプ100から排出された燃料は、燃焼器32へ送られる。
【0041】
さて、上記の開示で指摘された図すべてを参照すると、システム10は、様々なパラメータ、すなわちエンジン14へ送られる燃料の酸素含有量とエンジン14への燃料の温度の調整によって、エンジン14とシステム10のさまざまな他の関連部品との間における熱伝達の管理を行う。このようなパラメータを調整すると、結果的にエンジンの熱力学的効率が向上する。
【0042】
実施例に関連して本発明を説明したが、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更を行うことができること、要素に代わる均等物を使用してもよいことは、当該技術の熟練者には理解できるだろう。そのうえ、本発明の本質的な範囲から逸脱せずに、特定の状況または材料を本発明の教示に合わせるため多くの変形が可能である。そのため本発明は、本発明を実施するために考案された最良の態様として開示された特定実施例に限定されず、添付された請求項の範囲に包含されるあらゆる実施例を本発明は含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】エネルギー変換装置と燃料システムとの間における熱伝達の管理のためのシステムの概略図。
【図2】燃料入口を示す燃料安定処理ユニットの概略図。
【図3】燃料出口と酸素出口とを示す燃料安定処理ユニットの概略図。
【図4】燃料安定処理ユニットを成す流れ板と、透過性複合膜と、多孔質基板とのアッセンブリの断面図。
【図5】流れ板により画定される燃料通路の概略図。
【図6】流れ板により画定される燃料通路の代替実施例を示す図。
【図7】流れ板/膜/基板アッセンブリの分解図。
【図8】高温熱源が高温油系統である、熱伝達の管理のためのシステムを示す図。
【図9】高温熱源が冷却タービン冷却空気ユニットである、熱伝達の管理のためのシステムを示す図。
【図10】高温熱源がタービン排気復熱器である、熱伝達の管理のためのシステムを示す図。
【図11】高温熱源が燃料冷却環境制御システム予冷器である、熱伝達の管理のためのシステムを示す図。
【図12】高温熱源が一体型空気サイクル環境制御システムである、熱伝達の管理のためのシステムを示す図。
【図13】高温熱源がヒートポンプである、熱伝達の管理のためのシステムを示す図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、熱伝達の管理のためのシステム、方法、および装置、より詳しくは、エネルギー変換装置とその隣接環境との間の熱の伝達を管理するためのシステム、方法、および装置に関連する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その内容の全体が本願に取り入れられている2003年4月4日に出願された「平面膜脱酸素装置(Planer Membrane Deoxygenator)」という名称の米国特許出願第10/407,004号の一部継続出願である。
【背景技術】
【0003】
ヒートシンクとして大気を使用する結果として重大な性能上の不利が生じる、特に航空機や他の機上搭載システムにおいては、エネルギー変換装置の熱管理システムで燃料を冷却媒体として利用することが多い。さらに、廃熱を回収して、それを燃料を加熱するため燃料流へ転送すると、運転効率の向上を生む。このようなシステムに関して特定燃料の利用可能な冷却能力に悪影響を与える要因の一つは、不要な酸化反応生成物の形成速度と、これらの生成物の燃料システム装置表面への付着である。このような生成物の形成速度は少なくとも部分的に、燃料中に存在する溶存酸素の量に左右される。存在する溶存酸素の量は、空気への燃料の露出、より詳しくは燃料ポンプ供給動作中の空気への燃料の露出など、多様な要因による。溶存酸素が存在すると結果的にヒドロペルオキシドが形成されることがあり、このヒドロペルオキシドは加熱されると遊離基を形成し、この遊離基は重合して、一般に燃料に不溶性である高分子重量の酸化反応生成物を形成する。このような生成物は次いで、エネルギー変換装置の燃料供給・噴射システムの内部に、またその他の表面に付着して、エネルギー変換装置の性能と動作に有害な影響を与えることがある。エネルギー変換装置で使用される燃料は通常炭化水素系であるため、付着物は炭素を含み、一般に「コークス」と呼ばれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エネルギー変換装置へ送られる燃料の温度が上昇すると、発生する酸化反応の速度が上昇する。コークス形成に対する耐性が向上した現在入手可能な燃料は一般に、より高価であるかまたは添加剤を必要とする。燃料添加剤は、ハードウェアの追加と、供給システムの搭載と、高価な供給インフラストラクチャを必要とする。さらに、コークス形成に対する耐性が向上したこのような現在入手可能な燃料は、入手が必ずしも容易でない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一態様において、ガスタービンエンジンにおける熱伝達を管理するためのシステムに関連する。このようなシステムは、エンジンとの動作連通状態に置かれた発熱サブシステム(または複数のサブシステム)と、燃料を供給するように構成された燃料源と、燃料源から燃料を受け取るとともに燃料をエンジンへ提供するように構成された燃料安定処理ユニットと、発熱サブシステムから燃料への熱の伝達を実施するため燃料との熱連通状態に置かれた熱交換器とを含む。
【0006】
別の態様において、熱伝達の管理のためのシステムは、エネルギー変換装置と、エネルギー変換装置へ燃料を供給するように構成された燃料システムとを含む。燃料システムは、発熱サブシステムから燃料への熱の伝達を実施するため燃料システムからの燃料との熱連通状態に置かれた少なくとも一つの発熱サブシステムを含む。燃料は実質的に無コークスで、約550°Fより高い温度まで加熱される。
【0007】
別の態様において、航空機における熱伝達を管理する方法は、航空機を駆動するのに使用されるエンジンへ送られる燃料流から酸素を除去し、航空機の発熱サブシステムから燃料へ熱を伝達し、燃料を燃焼させることを含む。
【0008】
また別の態様において、航空機の熱管理のためのシステムは、航空機に動力を供給する手段と、航空機に動力を供給する手段に燃料を供給する手段と、燃料の脱酸素を行う手段と、航空機の発熱サブシステムと燃料との間の熱の伝達を実施する手段とを含む。
【0009】
さらに別の態様において、航空機における熱伝達の管理のためのシステムは、航空機エンジンと、航空機エンジンとの動作連通状態に置かれた発熱サブシステム(または複数のサブシステム)と、燃料を供給するように構成された燃料源と、燃料源から燃料を受け取るとともに航空機エンジンへ流出燃料流を提供するように構成された燃料安定処理ユニットと、発熱サブシステムから流出燃料流への熱の伝達を実施するため発熱サブシステムおよび燃料安定処理ユニットからの流出燃料流との熱連通状態に置かれた熱交換器とを含む。
【0010】
上記のシステムおよび方法の長所の一つは、燃料の利用可能冷却能力が上昇することである。利用可能冷却能力を上昇させることにより、エネルギー変換装置は、低級燃料を利用しながら高い温度で作動できる。高い温度で装置が作動すると、システムの発熱部品からの廃熱の回収の機会が多くなる。予熱燃料の燃焼は、非加熱燃料の燃焼よりも必要なエネルギー入力が小さいため、廃熱の回収は次には、装置の動作に関連する燃費コストを低下させる。冷却能力の上昇(従って、高い動作温度、廃熱の回収、および燃費の低下)は、装置の全体的な運転効率も高める。
【0011】
別の長所は、エネルギー変換装置内でのコークス形成の減少である。温度が上昇するにつれて燃料中に存在する溶存酸素の量が減少すると、酸化反応の速度を遅らせ、これが次にはコークスの形成とエネルギー変換装置の表面へのその付着とを減少させることにより、メンテナンス要件を低くする。燃料の完全なまたは部分的な脱酸素は、様々な等級の航空機燃料にわたってコークス形成を抑制する。燃料に溶解した酸素の量が減少すると、コークス付着の速度が低下するとともに、これに対応して、エネルギー変換装置の動作中に燃料が耐えられる最高許容温度が上昇する。言い換えると、燃料中に存在する溶存酸素の量が減少すると、燃料が吸収できる熱エネルギーが多くなることにより、結果的に、エネルギー変換装置へのコークス付着が望ましくない状態になるまで、エネルギー変換装置がより高い燃料温度で作動する。
【0012】
FSUへの燃料の流入に先立ってコークスの形成を防止、制限、または最小にする温度まで燃料を予熱することの動作面での長所も存在する。特に、燃料中の酸素溶解度と、燃料中の酸素の拡散率と、膜中の酸素の拡散率とが、温度の上昇にともなって向上するのである。こうして、燃料を予熱することによってFSUの性能が向上し得る。これによって結果として、FSU容量の減少(大きさと重量の減少)またはFSU性能の上昇が達成されることになり、さらにFSUから流出する燃料酸素レベルの減少が達成されることになる。さらに、FSU容量が減少すると、燃料システム内でのFSUの(低級熱負荷の上流かまたは下流への)配置において、そして熱負荷と燃料システム熱伝達ハードウェアを縦続接続する能力において、システム設計の自由度が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1を参照すると、熱伝達の管理のためのシステムが全体として10で示され、以下では「システム10」と呼ばれる。ここで使用される場合に、「熱伝達の管理」という用語は、関連のサブシステムとワークサイクルの様々な化学的・物理的パラメータを調整することによる熱伝達の制御を示すものとする。サブシステムは、炭化水素系燃料をワークサイクルへ提供する燃料システムを含むが、これに限定されない。ワークサイクルは、エネルギー変換装置とすることができる。以下では航空機の部品であるものとしてシステム10の説明を行うが、システム10は、他の用途、例えば公益事業電力発電、地上輸送システム、海上・淡水域輸送システム、産業機器システムなどに関連性を持つことを理解すべきである。さらに、「航空機」という用語は、すべての種類の有翼航空機、回転翼機、有翼・回転翼混合機、宇宙船、小型無人飛行機および他の無人機、兵器発射システムなどを含む。
【0014】
システム10の一実施例では、燃料システム12は、燃料源18から燃料を受け取って、エネルギー変換装置(以下「エンジン14」という)へ燃料を提供する燃料安定処理ユニット(fuel stabilization unit)(FSU)16を含む。動作中にシステム10の様々な部品の間での熱連通を実施する、様々な発熱サブシステム(例えば、低温熱源24、ポンプ・計量システム20、高温熱源22、上記熱源とシステムの組合せなど)は、FSU16の上流または下流で燃料との熱連通状態に置かれることにより燃料システム12に統合される。FSU16に受け取られる燃料の温度を上昇させるため、さらに、燃料予熱器13がFSU16の前で燃料システム12に設けられることができる。バルブ25を有する選択操作自在な燃料ラインバイパス23は、様々なサブシステム、特に高温熱源22を迂回する燃料のバイパスとなるように、燃料システム12に設けられることが好ましい。
【0015】
エンジン14は、様々な発熱サブシステムとの動作連通状態に置かれ、圧縮機30と、燃焼器32と、タービン34とを有するガスタービンエンジンを含むことが好ましい。燃料システム12からの燃料は燃料噴射ノズル36を介して燃焼器32へ噴射され、点火される。エンジン14の出力シャフト38は、航空機を推進させる複数のブレードを駆動する出力パワーを提供する。
【0016】
FSU16を伴うシステム10の動作は、上述した利点と長所を提供するように、様々な熱源とシステムにより発生した熱の制御を可能にする。燃料中でコークスの形成が開始する温度は、約260°Fである。約325°Fまでの燃料温度でエンジン14(例えばガスタービンエンジン)が作動すると、一般に、大部分の軍事用途では許容できる量のコークス堆積物が発生する。しかし、燃料中の酸素含有量を減少させるためFSU16とともにシステム10を作動させると、重大なコークス化の影響が見られずに、約325°Fを超える、好ましくは約550°Fを超える、より好ましくは約700°Fから約800°Fの燃料温度でエンジン14が作動できる。動作の上限は約900°Fであり、これはほぼ燃料が熱分解する温度である。
【0017】
さて図2〜図7を参照すると、FSU16が図示されている。FSU16は、燃料源から直接的または間接的に燃料を受け取る燃料脱酸素装置である。FSU16が作動すると、燃料中の溶存酸素の量が減少して脱酸素燃料となる。ここで使用する場合、「脱酸素燃料」という用語は、大気と平衡状態にある燃料の酸素含有量と比較して低い酸素含有量を有する燃料を示すものとする。大気と平衡状態にある燃料の酸素含有量は、約70百万分率(ppm)である。FSU16の特定用途(例えば、図1のシステム10の動作温度)に応じて、脱酸素燃料の酸素含有量は約5ppmとすることができるか、動作温度が約900°Fに近づく用途では約5ppm未満とすることができる。燃料中の溶存酸素量の減少によって、燃料が吸収する熱エネルギーの量を増大できる一方で、不溶性反応生成物を形成する遊離基の成長を減少させることにより、実質的に無コークスの燃料とすることができる。ここで使用する場合に、「実質的に無コークス」という用語は、高い温度でエンジンを作動させるのに使用された時に、FSU16が組み込まれた様々な装置のメンテナンスおよび/またはオーバーホールの予定を引き延ばすことのできる速度でコークスを付着させる燃料を指すものとする。
【0018】
FSU16は、流れ板27と、透過性複合膜42と、多孔質基板39とによるアッセンブリを含む。流れ板27と、透過性複合膜42と、多孔質基板39とは、透過性複合膜42が流れ板27との界面係合状態に置かれるように、そして多孔質基板39が透過性複合膜42との界面係合状態に置かれるように、積層体で配置されることが好ましい。流れ板27は、燃料が流通する通路50を画定する構造を持つ。
【0019】
流れ板27のアッセンブリは、真空ハウジング60内に取り付けられる。透過性複合膜42において酸素の部分的な圧力差を発生させることにより流れ板27のアッセンブリを流れる燃料から酸素出口35へ溶存酸素を移動させるように、真空ハウジング60に真空が印加される。部分的な圧力差を発生させる真空の供給源は、真空ポンプ、無酸素循環ガスなどでよい。無酸素循環ガスの場合には、酸素の部分的な圧力差を発生させて酸素を燃料から吸引するように、ストリップガス(例えば窒素)がFSU16内を循環し、ストリップガスから酸素を除去するように、吸着剤またはフィルタなどが回路内に設けられる。
【0020】
特に図2を参照すると、FSU16の入口57が示されている。FSU16へ入る燃料は矢印47で示された方向に入口57から流れて、通路50の各々へ分散される。積層状態の流れ板27の間のシール45は、燃料が多孔質基板39と接触して基板内へ流入するのを防止する。
【0021】
特に図3を参照すると、FSU16の出口が図示されている。多孔質基板39を通して除去された酸素は、矢印51で示されたように真空源を介して酸素出口35から除去される。流れ板27を流れる脱酸素燃料は、矢印49で示されたように燃料出口59から除去されて、一つまたは複数の下流サブシステム(例えば、ポンプ、計量システム、高温熱源など)へ、そしてエンジンへ送られる。
【0022】
さて図4を参照すると、流れ板27と、透過性複合膜42と、多孔質基板39とのアッセンブリが図示されている。上述したように、FSU16は、界面係合した流れ板27と、透過性複合膜42と、多孔質基板39とのアッセンブリを含む。図5を参照して後述する流れ板27は、燃料が流れる通路50を画定する平面構造を含む。透過性複合膜42は、多孔質裏材43に支持されたフルオロポリマーコーティング48を含むことが好ましく、一方、多孔質裏材43は、多孔質基板39によって流れ板27に支持されている。アッセンブリに真空を印加すると、透過性複合膜42を介して(特に、フルオロポリマーコーティング48と、多孔質裏材43と、多孔質基板39とを介して)、溶存酸素を通路50内の燃料から酸素出口35へ引き出す部分的な圧力勾配が発生する。
【0023】
透過性複合膜42は、多孔質裏材43に支持された無定形フルオロポリマーコーティング48によって画定される。フルオロポリマーコーティング48は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)族のコーティングから誘導されることが好ましく、約0.5マイクロメートルから約20マイクロメートル、好ましくは約2マイクロメートルから約10マイクロメートル、より好ましくは約2マイクロメートルから約5マイクロメートルの厚さに多孔質裏材43上に形成される。多孔質裏材43は、約0.001インチから約0.02インチ、好ましくは約0.002インチから約0.01インチ、より好ましくは約0.005インチの厚さを有する二フッ化ポリビニリデン(polyvinylidene difluoride)(PVDF)またはポリエーテルイミド(polyetherimide)(PEI)の基板を含むことが好ましい。多孔質裏材43の多孔度は、約40%開放空間よりも高く、好ましくは約50%開放空間よりも高い。多孔質裏材43の細孔の公称細孔径は、約0.25マイクロメートル未満、好ましくは約0.2マイクロメートル未満、より好ましくは約0.1マイクロメートル未満である。無定形ポリテトラフルオロエチレンは、デラウェア州ウィルミントンを所在地とするデュポン社(DuPont)からテフロン AF(Teflon AF)(登録商標)の商品名で販売されている。フルオロポリマーコーティング48として利用可能な他のフルオロポリマーとしては、ペルフッ素化(perfluorinated)ガラス状ポリマーおよびポリペルフルオロブテニルビニルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。二フッ化ポリビニリデンは、ペンシルヴェニア州フィラデルフィアを所在地とするアトフィナ・ケミカルズ社(Atofina Chemicals,Inc.)からカイナー(Kynar)(登録商標)の商品名で販売されている。
【0024】
多孔質基板39は、炭化水素系燃料との適合性を有する軽量プラスチック材料(例えばPVDF、PEI、ポリエチレンなど)を含む。このような材料は、印加される真空により透過性複合膜42において適当な酸素の部分的圧力差を発生させることができる、選択された多孔度のものである。多孔質基板39の細孔径、多孔度、および厚さは、燃料の質量流量の関数である酸素の質量流束条件によって決定される。ポリエチレンから製造される多孔質基板39では、基板は約0.03インチから約0.09インチの厚さ、好ましくは約0.04インチから約0.085インチの厚さ、より好ましくは約0.070インチから約0.080インチの厚さである。あるいは、多孔質基板は、約0.01インチから約0.03インチの厚さを有する織プラスチックメッシュまたはスクリーンのより薄くてより軽量の真空透過を含む。
【0025】
さて図5と図6を参照すると、流れ板27は、うち1本が31で図示された流路と、透過性複合膜42とともに組み立てられると通路50を画定する構造を形成するように流路31に配置されたリブまたはバッフル52とを有する平面構造を含む。バッフル52は、流路31を横切るように配置されている。通路50は、入口57および出口59と流体連通状態にある。真空は、酸素出口35(図3)を介して多孔質基板39と連通状態にある。
【0026】
通路50に設けられたバッフル52は、FSU16を通過する間に燃料の大部分がフルオロポリマーコーティング48と接触して溶存酸素を燃料から拡散させるように、燃料の混合を促進する。通路における高い圧力差は概して低い圧力差よりも好都合ではないため、バッフル52は、通路50に層流、結果的に低レベルの混合(乱流と対照的に)を起こすように構成されるのが好ましい。他方、乱流によって混合が所望のレベルであって圧力損失が許容可能である時には、付随して起こる圧力降下にも関わらず乱流が好ましい。乱流流路の流れは、層流よりも高い圧力降下が見られるにもかかわらず、充分な混合と酸素輸送の向上を促進できるので、バッフルの大きさと数を減少させるか、皆無としてもよい。バッフル52は、燃料の流れの方向に対して通路50の横方向に少なくとも部分的に延在して、流れ板27を流れる間に燃料を混合させるとともにフルオロポリマーコーティング48と均一に接触させる。
【0027】
図5を参照すると、動作時に矢印47の方向に流れ板の通路50を流れる燃料は、バッフル52によって混合され、フルオロポリマーコーティング48と接触する。図のように、バッフル52は流れ板の上下の面に交互に配置されている。この実施例では、バッフル52は、物質移動を高めて、燃料中の酸素拡散率を効果的に上昇させる垂直(上方および下方)の速度成分を誘発する。これにより、酸素/フルオロポリマー接触、ひいてはFSUから除去される酸素の量が増大する。燃料がフルオロポリマーコーティング48とより均一に接触して、多孔質裏材43を通り多孔質基板39内へ、そしてFSUから出るより均一な拡散を提供するように、バッフル52を流れる燃料の混合が促進される。図6を参照すると、流れ板の片側に配置されたバッフル52を含む流れ板の別の実施例が図示されている。特定用途のパラメータに応じて所望の量の混合および/または物質移動を達成するように乱流形態または層流形態を誘発するため、バッフル52、または限定される訳ではないが慣性装置、機械装置、音響装置などを含む混合促進装置の任意の構成を含むことが本発明の概念に含まれることを理解すべきである。
【0028】
図7を参照すると、流れ板27の積層体の一実施例が図示されている。流れ板27は、流れ板27の数を調整することにより様々な用途に適したFSUの調整を容易にするため、矩形であることが好ましい。あるいは、流れ板27を円形の構造とすることにより、積層構成の構造的一体性を高めてもよい。流れ板27の形状に関係なく、多孔質基板39との真空連通状態を提供するため真空開口部を画定する入口62を含む真空フレーム60の中に積層体が支持される。
【0029】
さて図2〜図7を参照すると、FSU16に使用するための流れ板27と、透過性複合膜42と、多孔質基板39の固有の量は、燃料の種類、燃料温度、およびエンジンからの質量流量要求など、システム10の特定用途向け要件によって決定される。さらに、溶存酸素の含有量が異なる燃料により、システム10の動作を最適化するため、およびシステム10の熱管理を最適化するために、所望の量の溶存酸素を除去するのに必要なろ過の量が異なってもよい。
【0030】
FSU16の性能は、透過性複合膜42の透過性と、ここを流れる酸素の拡散速度とに関連する。透過性複合膜42の透過性は、フルオロポリマーコーティング48における酸素の溶解度と、多孔質裏材43における酸素の移動との関数である。透過性複合膜42(フルオロポリマーコーティング48と多孔質裏材43との組合せ)は、真空またはストリップガス(例えば窒素)の特定の印加について燃料から多孔質基板39への溶存酸素の所望の拡散を可能にするように選択された厚さを有する。
【0031】
燃料から透過性複合膜42の表面を介した酸素の拡散速度は、燃料と透過性複合膜42との接触時間と、透過性複合膜42における部分的な圧力差に影響を受ける。燃料から除去される酸素の量を最大化するため、FSU16への真空の安定した印加と、透過性複合膜42と燃料との間の一定した接触を維持することが望ましい。溶存酸素の拡散の最適化は、燃料の流れ、燃料温度、真空レベル、および混合/移動の量を釣り合わせること、さらに、圧力損失最小化に対処すること、および製造公差と運転コストに対処することを伴う。
【0032】
再び図1を参照すると、燃料源18は、燃料を選択的に引き出すことができる複数の容器を含むことができる。有翼航空機では、航空機の翼に収納されるようにこのような容器は不規則な形状であってもよい。各容器は、容器の一方または両方から燃料を選択的に引き出してFSU16へ燃料をポンプ供給するように、手動または自動で制御されるポンプとの流体連通状態に置かれている。
【0033】
やはり再び図1を参照すると、システム10の熱管理の一態様は、燃料源18に貯蔵された燃料と低温熱源24の少なくとも一つとの間における熱の伝達を具体例とすることができる。特に、低温熱源24が燃料のコークス化限界を下回るため、燃料源18から流れる燃料は、低温熱源24の一部または全部から熱を吸収する低級ヒートシンクとして機能し得る。このような低温熱源24としては、油圧熱負荷、発電機熱負荷、エンジン補助歯車ボックス熱負荷、燃料ポンプ熱負荷、ファンド駆動歯車システム熱負荷、およびエンジン油系統負荷が挙げられるが、これらに限定されない。燃料源18から流れる燃料は、熱交換のためこれらの負荷の任意の一つまたはその組合せへ循環されることができる。燃料により吸収可能な熱の量は、燃料がFSU16に吸収されることのできる温度限界より下に燃料の温度が維持されるようなものである。
【0034】
さて図1と図8〜図13を参照すると、燃料と、様々な高温熱源22との間の熱伝達の管理が図示されている。図8において、高温熱源22は高温油系統76を含む。高温油系統76は、少なくとも一つの軸受および/または歯車装置78から受け取られた油流73から、FSU16からの脱酸素燃料へ熱を伝達するように構成された熱交換器77を含む。したがって、軸受および/または歯車装置78の温度はかなり低下し、熱交換器77からの燃料流の温度は、最高オイル温度に近く、約325°Fのコークス化限界より高いが熱分解が発生する温度(約900°F)より低い温度まで上昇する。
【0035】
高温熱源22はさらに、図9に図示されているように、冷却タービン冷却空気ユニット80を含むことができる。冷却タービン冷却空気ユニット80は、エンジン14の圧縮機30から約1,200°Fの温度の空気流を、FSU16から脱酸素燃料流を受け取ることにより、FSU16からの脱酸素燃料とエンジン14との間の熱伝達を実施する。受け取られた空気流と燃料流との間で熱が伝達され、こうして脱酸素燃料を加熱するとともに空気を冷却する。加熱燃料の温度は、約325°Fのコークス化限界より高く、熱分解が発生する温度(約900°F)より低い。特に、加熱燃料の温度は、約700°Fから約800°Fであることが好ましい。加熱された燃料は燃焼器32へ送られ、冷却された空気は圧縮機39へ送られる。圧縮機39からの低温出口流は3本の流れに分割され、圧縮機30、燃焼器32、およびタービン34へ戻される。冷却空気を圧縮機30、燃焼器32、およびタービン34へ送る際に、これら3部品の表面で冷却空気の緩衝層が形成されることにより、圧縮機30と、燃焼器32と、タービン34とを流れるガスの温度が一層高くなる。
【0036】
高温熱源22は、図10に見られるようにタービン排気復熱器86を含む。タービン排気復熱器86は、タービン34から排出された高温ガスを利用して燃焼器32へ送られる燃料を加熱することにより、熱伝達の管理を行う。タービン排気復熱器86の動作時には、約1,200°Fのタービン排気が熱交換器88へ送られ、FSU16から受け取られた脱酸素燃料を加熱するのに使用される。このような熱交換の際には、冷却された排気が熱交換器88から排出される。加熱燃料は燃焼器32へ送られる。燃焼器32へ送られる燃料の温度は、最低約550°F、好ましくは約550°Fから約900°F、より好ましくは約700°Fから約800°Fである。
【0037】
タービン排気復熱器の二つの類似した用途は、燃料冷却エンジンケースと、燃料冷却エンジン排気ノズルである。これらはともに、タービン排気復熱器と類似した高温熱源である。このような用途では、小型の燃料熱交換器、コイル、またはジャケットがエンジンケースまたは排気ノズルの周りに巻き付けられて、これらの供給源から燃料へ直接に、または最初に中間冷却材へ、次に中間冷却材から燃料へ、熱を伝達する。加熱された燃料は次に、燃焼器32へ送られる。
【0038】
図11において、高温熱源は、燃料冷却予冷器70とすることができ、この燃料冷却予冷器70、航空機へ組み込まれることが最も多く、以下では「予冷器70」と呼ぶ。予冷器70は、エンジン14の圧縮機30からは約1,000°Fの温度の空気流を、FSU16からは燃料を受け取る熱交換器72を含む。流入する空気流と燃料流との間で熱が伝達されて、約450°Fの温度の出口空気流と、約900°Fまで、好ましくは約400°Fから約800°Fの温度の出口燃料流を提供する。出口空気流は、航空機へ送られて一つまたは複数の供給空気となる。出口空気流は、環境制御システムに動力を供給して航空機の機室74へ加圧冷却空気を提供するのに利用できる。あるいは、またはこれに加えて、空気流は様々な機体構造(例えば翼、胴体壁)内を案内されて、除氷動作など、一つまたは複数の熱関連機能を提供できる。出口燃料流は燃焼器32へ送られる。
【0039】
図12を参照すると、高温熱源22は、一体型空気サイクル環境制御システム(integrated air cycle environmental control system)94(以下「IACECS94」)と呼ぶ)を含むことができる。図11を参照して上述した燃料冷却ECS予冷器70の変形例であるIACECS94は、航空機機室ECSへのヒートシンクとして機能する。IACECS94は、第2の燃料/空気熱交換器98との直列流体連通状態に置かれた第1の燃料/空気熱交換器96を含む。第1の燃料/空気熱交換器96は、エンジン14の圧縮機30から抽気された高温(約1,000°F)空気流101と、FSU16からの燃料流とを受け取る。熱の交換時には、最低約325°F、好ましくは約550°Fから約900°F、より好ましくは約700°Fから約800°Fの燃料が燃焼器32へ送られる。第1の燃料/空気熱交換器96から排出された冷却空気は、IACECS94の圧縮機95へ送られる。圧縮機95からの空気抽気流103からの熱は次に、FSU16からの燃料流と交換され、加熱された燃料は第1の燃料/空気熱交換器96へ送られる一方で、冷却された空気はIACECS94のタービン105へ送られ、そこで膨張して所望の機室圧力の低温空気となる。次にタービン105から低温空気が受け取られて、機室へ送られる。
【0040】
さて図13を参照すると、航空機用途の別の高温熱源22はヒートポンプ100を含むことができる。ヒートポンプ100は、低温源から、高温ヒートシンクとして作用する脱酸素燃料へ熱を伝達する。低温源から脱酸素燃料へ熱伝達が行われるので、ヒートポンプ100によって、低温の熱源から高温の燃料ヒートシンクへ脱酸素燃料への熱の伝達が可能である。約900°Fまでの温度のヒートポンプ100から排出された燃料は、燃焼器32へ送られる。
【0041】
さて、上記の開示で指摘された図すべてを参照すると、システム10は、様々なパラメータ、すなわちエンジン14へ送られる燃料の酸素含有量とエンジン14への燃料の温度の調整によって、エンジン14とシステム10のさまざまな他の関連部品との間における熱伝達の管理を行う。このようなパラメータを調整すると、結果的にエンジンの熱力学的効率が向上する。
【0042】
実施例に関連して本発明を説明したが、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更を行うことができること、要素に代わる均等物を使用してもよいことは、当該技術の熟練者には理解できるだろう。そのうえ、本発明の本質的な範囲から逸脱せずに、特定の状況または材料を本発明の教示に合わせるため多くの変形が可能である。そのため本発明は、本発明を実施するために考案された最良の態様として開示された特定実施例に限定されず、添付された請求項の範囲に包含されるあらゆる実施例を本発明は含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】エネルギー変換装置と燃料システムとの間における熱伝達の管理のためのシステムの概略図。
【図2】燃料入口を示す燃料安定処理ユニットの概略図。
【図3】燃料出口と酸素出口とを示す燃料安定処理ユニットの概略図。
【図4】燃料安定処理ユニットを成す流れ板と、透過性複合膜と、多孔質基板とのアッセンブリの断面図。
【図5】流れ板により画定される燃料通路の概略図。
【図6】流れ板により画定される燃料通路の代替実施例を示す図。
【図7】流れ板/膜/基板アッセンブリの分解図。
【図8】高温熱源が高温油系統である、熱伝達の管理のためのシステムを示す図。
【図9】高温熱源が冷却タービン冷却空気ユニットである、熱伝達の管理のためのシステムを示す図。
【図10】高温熱源がタービン排気復熱器である、熱伝達の管理のためのシステムを示す図。
【図11】高温熱源が燃料冷却環境制御システム予冷器である、熱伝達の管理のためのシステムを示す図。
【図12】高温熱源が一体型空気サイクル環境制御システムである、熱伝達の管理のためのシステムを示す図。
【図13】高温熱源がヒートポンプである、熱伝達の管理のためのシステムを示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジンにおける熱伝達を管理するためのシステムであって、
前記エンジンとの動作連通状態に置かれた発熱サブシステムと、
燃料を供給するように構成された燃料源と、
前記燃料源から前記燃料を受け取るとともに該燃料を前記エンジンへ提供するように構成された燃料安定処理ユニットと、
前記発熱サブシステムから前記燃料への熱の伝達を実施するため該燃料との熱連通状態に置かれた熱交換器と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記燃料安定処理ユニットが前記発熱サブシステムの上流にあることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記燃料安定処理ユニットが前記発熱サブシステムの下流にあることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項4】
さらに、前記燃料が前記燃料安定処理ユニットに受け取られる前に該燃料を加熱する予熱器を含むことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記エンジンへ供給される前記燃料が約325°Fより高い温度であることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記エンジンへ供給される前記燃料が約550°Fから約900°Fの温度であることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記エンジンへ供給される前記燃料が約700°Fから約800°Fの温度であることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記燃料安定処理ユニットが、
平面構造に設けられた流路を有する流れ板であって、該流路が前記燃料の流れを収容するように構成された、流れ板と、
前記流れ板との界面係合状態に置かれた膜であって、流通する前記燃料から引き出された酸素の流れを受け取るように構成された膜と、
を含むことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記発熱サブシステムが、高温油系統、冷却タービン冷却空気ユニット、タービン排気復熱器、燃料冷却排気ノズル、燃料冷却エンジンケース、およびこれら発熱サブシステムの組合せから成る発熱サブシステムの群より選択されることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項10】
前記高温油系統が、軸受および/または歯車装置から油流を、前記燃料安定処理ユニットから前記燃料を受け取るように構成された熱交換器を含み、該熱交換器が該油流から該燃料への熱の伝達を実施するように構成されることを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項11】
前記冷却タービン冷却空気ユニットが、前記航空機エンジンから空気流を、前記燃料安定処理ユニットから前記燃料を受け取るように構成された熱交換器を含み、該熱交換器が、該空気流から該燃料への熱の伝達を実施するように構成されることを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項12】
前記タービン排気復熱器が、前記航空機エンジンのタービンから排出された空気流を、前記燃料安定処理ユニットから前記燃料を受け取るように構成された熱交換器を含み、該熱交換器が、該タービンから排出された該空気流から該燃料への熱の伝達を実施するように構成されることを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項13】
さらに、前記発熱サブシステムを迂回して設けられた選択操作自在な燃料バイパスを含み、該選択操作自在な燃料バイパスが、該発熱サブシステムを迂回する燃料のバイパスを実施するように構成されることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項14】
前記ガスタービンエンジンが航空機に組み込まれることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項15】
熱伝達を管理するためのシステムであって、
エネルギー変換装置と、
前記エネルギー変換装置へ燃料を供給するように構成された燃料システムであって、該燃料が実質的に無コークスであり、前記発熱サブシステムから該燃料への熱の伝達を実施するため該燃料システムからの該燃料との熱伝達状態に置かれた少なくとも一つの発熱サブシステムを含む燃料システムと、
を含み、
前記燃料が約550°Fより高い温度まで加熱される、
ことを特徴とするシステム。
【請求項16】
前記燃料が約550°Fから約900°Fの温度まで加熱されることを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項17】
前記燃料が約700°Fから約800°Fの温度まで加熱されることを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項18】
前記エネルギー変換装置がガスタービンエンジンであることを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項19】
前記燃料システムがさらに、前記燃料の脱酸素を行う燃料安定処理ユニットを含むことを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項20】
前記燃料安定処理ユニットが、
平面構造に設けられた流路を有する流れ板であって、該流路が前記燃料の流れを収容するように構成された、流れ板と、
前記流れ板との界面係合状態に置かれた膜であって、流通する前記燃料から引き出された酸素の流れを受け取るように構成された膜と、
を含むことを特徴とする請求項19記載のシステム。
【請求項21】
さらに、前記流れ板における燃料の混合を促進するため前記流路に設けられたバッフルを含むことを特徴とする請求項20記載のシステム。
【請求項22】
前記燃料の混合が乱流形態で実施されることを特徴とする請求項21記載のシステム。
【請求項23】
前記燃料の混合が層流形態で実施されることを特徴とする請求項21記載のシステム。
【請求項24】
前記膜が、多孔質裏材に設けられたフルオロポリマーコーティングを含むことを特徴とする請求項20記載のシステム。
【請求項25】
さらに、前記膜との界面係合状態に置かれた多孔質基板を含むことを特徴とする請求項20記載のシステム。
【請求項26】
前記少なくとも一つの発熱サブシステムが、燃料冷却環境制御システム予冷器、冷却タービン冷却空気ユニット、タービン排気復熱器、ヒートポンプ、燃料冷却排気ノズル、燃料冷却エンジンケース、およびこれら発熱サブシステムの組合せから成る発熱サブシステムの群より選択されることを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項27】
前記燃料システムがさらに、前記燃料が貯蔵される容器を含み、該貯蔵燃料が、少なくとも一つの発熱サブシステムから熱を受け取るように構成されることを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項28】
前記少なくとも一つの発熱サブシステムと前記燃料との間の前記熱連通が、熱交換器を用いて実施されることを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項29】
さらに、前記発熱サブシステムを迂回して設けられた選択操作自在な燃料バイパスを含み、該選択操作自在な燃料バイパスが、該発熱サブシステムを迂回する燃料のバイパスを実施するように構成されることを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項30】
航空機における熱伝達を管理する方法であって、
前記航空機を駆動するのに使用されるエンジンへ送られる燃料流から酸素を除去し、
前記航空機の発熱サブシステムから前記燃料へ熱を伝達し、
前記燃料を燃焼させる、
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
前記燃料流からの前記酸素の除去が、
透過膜の表面へ前記燃料を送り、
部分的な圧力差を発生させるため前記透過膜へ真空を印加し、
前記燃料に溶解した拡散酸素に前記透過膜を移動させる、
ことを含むことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記熱の伝達が、
前記エンジンの圧縮機からの圧縮空気流を熱交換器で受け取り、
前記圧縮空気流から前記燃料へ熱が伝達されるように、前記燃料を前記熱交換器で受け取る、
ことを含むことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項33】
さらに、前記熱交換器から前記航空機の機室へ前記圧縮空気流を送ることを含むことを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
さらに、前記熱交換器から前記エンジンのタービンへ前記圧縮空気流を送ることを含むことを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項35】
前記熱の伝達が、
前記エンジンのタービンからの空気流を熱交換器で受け取り、
前記タービンからの前記空気流から前記燃料へ熱が伝達されるように、該燃料を前記熱交換器で受け取る、
ことを含むことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項36】
前記熱の伝達が、
高温油系統からの高温油流を熱交換器で受け取り、
前記高温油系統から前記燃料へ熱が伝達されるように、該燃料を該熱交換器で受け取る、
ことを含むことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項37】
前記高温油流が軸受および/または歯車装置であることを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記燃料を燃焼させることが、
前記燃料を最低約550°Fまで加熱し、
燃料噴射ノズルを介して前記加熱燃料を前記エンジンへ噴射し、
前記加熱燃料に点火する、
ことを含むことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項39】
前記燃料を燃焼させることが、
前記燃料を約550°Fから約900°Fまで加熱し、
燃料噴射ノズルを介して前記加熱燃料を前記エンジンへ噴射し、
前記加熱燃料に点火する、
ことを含むことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項40】
前記燃料を燃焼させることが、
前記燃料を約700°Fから約800°Fまで加熱し、
燃料噴射ノズルを介して前記加熱燃料を前記エンジンへ噴射し、
前記加熱燃料に点火する、
ことを含むことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項41】
さらに、前記燃料流からの酸素の除去に先立って前記燃料流を予熱することを含むことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項42】
航空機の熱管理のためのシステムであって、
前記航空機に動力を供給する手段と、
前記航空機に動力を供給する前記手段に燃料を供給する手段と、
前記燃料の脱酸素を行う手段と、
前記航空機の発熱サブシステムと前記燃料との間で熱の伝達を実施する手段と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項43】
前記熱の伝達を実施する前記手段が熱交換器を含むことを特徴とする請求項42記載のシステム。
【請求項44】
前記発熱サブシステムが、燃料冷却環境制御システム予冷器、高温油系統、冷却タービン冷却空気ユニット、タービン排気復熱器、ヒートポンプ、およびこれら発熱サブシステムの組合せから成る発熱サブシステムの群より選択されることを特徴とする請求項42記載のシステム。
【請求項45】
航空機における熱伝達の管理のためのシステムであって、
航空機エンジンと、
前記航空機エンジンとの動作連通状態に置かれた発熱サブシステムと、
燃料を供給するように構成された燃料源と、
前記燃料源から前記燃料を受け取るとともに前記航空機エンジンへ流出燃料流を提供するように構成された燃料安定処理ユニットと、
前記発熱サブシステムから前記流出燃料流への前記熱の伝達を実施するため該発熱サブシステムおよび前記燃料安定処理ユニットからの該流出燃料流との熱連通状態に置かれた熱交換器と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項46】
前記発熱サブシステムが、燃料冷却環境制御システム予冷器、高温油系統、冷却タービン冷却空気ユニット、一体型空気サイクル環境制御システム、タービン排気復熱器、ヒートポンプ、およびこれら発熱サブシステムの組合せから成る発熱サブシステムの群より選択されることを特徴とする請求項45記載のシステム。
【請求項47】
前記燃料冷却環境制御システム予冷器が、前記航空機エンジンから空気流を、前記燃料安定処理ユニットから前記燃料を受け取るように構成された熱交換器を含み、該熱交換器が、該空気流から該燃料への熱の伝達を実施するように構成されることを特徴とする請求項46記載のシステム。
【請求項48】
前記ヒートポンプが、前記燃料安定処理ユニットからの前記燃料へ低温源から熱を伝達するように構成されることを特徴とする請求項46記載のシステム。
【請求項49】
さらに、前記燃料安定処理ユニットへ供給される前記燃料を加熱するように構成された予熱器を含むことを特徴とする請求項45記載のシステム。
【請求項50】
前記発熱サブシステムが燃料冷却エンジンケースを含むことを特徴とする請求項42記載のシステム。
【請求項51】
前記燃料冷却エンジンケースが、前記燃料へ熱を伝達するため前記エンジンケースとの連通状態に置かれた装置を含み、該装置が、燃料熱交換器、コイル、およびジャケットから成る装置の群より選択されることを特徴とする請求項50記載のシステム。
【請求項52】
前記発熱サブシステムが燃料冷却エンジン排気ノズルを含むことを特徴とする請求項42記載のシステム。
【請求項53】
前記燃料冷却排気ノズルが、前記燃料へ熱を伝達するため前記排気ノズルとの連通状態に置かれた装置を含み、該装置が、燃料熱交換器、コイル、およびジャケットから成る装置の群より選択されることを特徴とする請求項52記載のシステム。
【請求項54】
前記発熱サブシステムが燃料冷却エンジンケースを含むことを特徴とする請求項45記載のシステム。
【請求項55】
前記燃料冷却エンジンケースが、前記燃料へ熱を伝達するため前記エンジンケースとの連通状態に置かれた装置を含み、該装置が、燃料熱交換器、コイル、およびジャケットから成る装置の群より選択されることを特徴とする請求項54記載のシステム。
【請求項56】
前記発熱サブシステムが燃料冷却エンジン排気ノズルを含むことを特徴とする請求項45記載のシステム。
【請求項57】
前記燃料冷却排気ノズルが、前記燃料へ熱を伝達するため前記排気ノズルとの連通状態に置かれた装置を含み、該装置が、燃料熱交換器、コイル、およびジャケットから成る装置の群より選択されることを特徴とする請求項56記載のシステム。
【請求項1】
ガスタービンエンジンにおける熱伝達を管理するためのシステムであって、
前記エンジンとの動作連通状態に置かれた発熱サブシステムと、
燃料を供給するように構成された燃料源と、
前記燃料源から前記燃料を受け取るとともに該燃料を前記エンジンへ提供するように構成された燃料安定処理ユニットと、
前記発熱サブシステムから前記燃料への熱の伝達を実施するため該燃料との熱連通状態に置かれた熱交換器と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記燃料安定処理ユニットが前記発熱サブシステムの上流にあることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記燃料安定処理ユニットが前記発熱サブシステムの下流にあることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項4】
さらに、前記燃料が前記燃料安定処理ユニットに受け取られる前に該燃料を加熱する予熱器を含むことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記エンジンへ供給される前記燃料が約325°Fより高い温度であることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記エンジンへ供給される前記燃料が約550°Fから約900°Fの温度であることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記エンジンへ供給される前記燃料が約700°Fから約800°Fの温度であることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記燃料安定処理ユニットが、
平面構造に設けられた流路を有する流れ板であって、該流路が前記燃料の流れを収容するように構成された、流れ板と、
前記流れ板との界面係合状態に置かれた膜であって、流通する前記燃料から引き出された酸素の流れを受け取るように構成された膜と、
を含むことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記発熱サブシステムが、高温油系統、冷却タービン冷却空気ユニット、タービン排気復熱器、燃料冷却排気ノズル、燃料冷却エンジンケース、およびこれら発熱サブシステムの組合せから成る発熱サブシステムの群より選択されることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項10】
前記高温油系統が、軸受および/または歯車装置から油流を、前記燃料安定処理ユニットから前記燃料を受け取るように構成された熱交換器を含み、該熱交換器が該油流から該燃料への熱の伝達を実施するように構成されることを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項11】
前記冷却タービン冷却空気ユニットが、前記航空機エンジンから空気流を、前記燃料安定処理ユニットから前記燃料を受け取るように構成された熱交換器を含み、該熱交換器が、該空気流から該燃料への熱の伝達を実施するように構成されることを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項12】
前記タービン排気復熱器が、前記航空機エンジンのタービンから排出された空気流を、前記燃料安定処理ユニットから前記燃料を受け取るように構成された熱交換器を含み、該熱交換器が、該タービンから排出された該空気流から該燃料への熱の伝達を実施するように構成されることを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項13】
さらに、前記発熱サブシステムを迂回して設けられた選択操作自在な燃料バイパスを含み、該選択操作自在な燃料バイパスが、該発熱サブシステムを迂回する燃料のバイパスを実施するように構成されることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項14】
前記ガスタービンエンジンが航空機に組み込まれることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項15】
熱伝達を管理するためのシステムであって、
エネルギー変換装置と、
前記エネルギー変換装置へ燃料を供給するように構成された燃料システムであって、該燃料が実質的に無コークスであり、前記発熱サブシステムから該燃料への熱の伝達を実施するため該燃料システムからの該燃料との熱伝達状態に置かれた少なくとも一つの発熱サブシステムを含む燃料システムと、
を含み、
前記燃料が約550°Fより高い温度まで加熱される、
ことを特徴とするシステム。
【請求項16】
前記燃料が約550°Fから約900°Fの温度まで加熱されることを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項17】
前記燃料が約700°Fから約800°Fの温度まで加熱されることを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項18】
前記エネルギー変換装置がガスタービンエンジンであることを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項19】
前記燃料システムがさらに、前記燃料の脱酸素を行う燃料安定処理ユニットを含むことを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項20】
前記燃料安定処理ユニットが、
平面構造に設けられた流路を有する流れ板であって、該流路が前記燃料の流れを収容するように構成された、流れ板と、
前記流れ板との界面係合状態に置かれた膜であって、流通する前記燃料から引き出された酸素の流れを受け取るように構成された膜と、
を含むことを特徴とする請求項19記載のシステム。
【請求項21】
さらに、前記流れ板における燃料の混合を促進するため前記流路に設けられたバッフルを含むことを特徴とする請求項20記載のシステム。
【請求項22】
前記燃料の混合が乱流形態で実施されることを特徴とする請求項21記載のシステム。
【請求項23】
前記燃料の混合が層流形態で実施されることを特徴とする請求項21記載のシステム。
【請求項24】
前記膜が、多孔質裏材に設けられたフルオロポリマーコーティングを含むことを特徴とする請求項20記載のシステム。
【請求項25】
さらに、前記膜との界面係合状態に置かれた多孔質基板を含むことを特徴とする請求項20記載のシステム。
【請求項26】
前記少なくとも一つの発熱サブシステムが、燃料冷却環境制御システム予冷器、冷却タービン冷却空気ユニット、タービン排気復熱器、ヒートポンプ、燃料冷却排気ノズル、燃料冷却エンジンケース、およびこれら発熱サブシステムの組合せから成る発熱サブシステムの群より選択されることを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項27】
前記燃料システムがさらに、前記燃料が貯蔵される容器を含み、該貯蔵燃料が、少なくとも一つの発熱サブシステムから熱を受け取るように構成されることを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項28】
前記少なくとも一つの発熱サブシステムと前記燃料との間の前記熱連通が、熱交換器を用いて実施されることを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項29】
さらに、前記発熱サブシステムを迂回して設けられた選択操作自在な燃料バイパスを含み、該選択操作自在な燃料バイパスが、該発熱サブシステムを迂回する燃料のバイパスを実施するように構成されることを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項30】
航空機における熱伝達を管理する方法であって、
前記航空機を駆動するのに使用されるエンジンへ送られる燃料流から酸素を除去し、
前記航空機の発熱サブシステムから前記燃料へ熱を伝達し、
前記燃料を燃焼させる、
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
前記燃料流からの前記酸素の除去が、
透過膜の表面へ前記燃料を送り、
部分的な圧力差を発生させるため前記透過膜へ真空を印加し、
前記燃料に溶解した拡散酸素に前記透過膜を移動させる、
ことを含むことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記熱の伝達が、
前記エンジンの圧縮機からの圧縮空気流を熱交換器で受け取り、
前記圧縮空気流から前記燃料へ熱が伝達されるように、前記燃料を前記熱交換器で受け取る、
ことを含むことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項33】
さらに、前記熱交換器から前記航空機の機室へ前記圧縮空気流を送ることを含むことを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
さらに、前記熱交換器から前記エンジンのタービンへ前記圧縮空気流を送ることを含むことを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項35】
前記熱の伝達が、
前記エンジンのタービンからの空気流を熱交換器で受け取り、
前記タービンからの前記空気流から前記燃料へ熱が伝達されるように、該燃料を前記熱交換器で受け取る、
ことを含むことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項36】
前記熱の伝達が、
高温油系統からの高温油流を熱交換器で受け取り、
前記高温油系統から前記燃料へ熱が伝達されるように、該燃料を該熱交換器で受け取る、
ことを含むことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項37】
前記高温油流が軸受および/または歯車装置であることを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記燃料を燃焼させることが、
前記燃料を最低約550°Fまで加熱し、
燃料噴射ノズルを介して前記加熱燃料を前記エンジンへ噴射し、
前記加熱燃料に点火する、
ことを含むことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項39】
前記燃料を燃焼させることが、
前記燃料を約550°Fから約900°Fまで加熱し、
燃料噴射ノズルを介して前記加熱燃料を前記エンジンへ噴射し、
前記加熱燃料に点火する、
ことを含むことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項40】
前記燃料を燃焼させることが、
前記燃料を約700°Fから約800°Fまで加熱し、
燃料噴射ノズルを介して前記加熱燃料を前記エンジンへ噴射し、
前記加熱燃料に点火する、
ことを含むことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項41】
さらに、前記燃料流からの酸素の除去に先立って前記燃料流を予熱することを含むことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項42】
航空機の熱管理のためのシステムであって、
前記航空機に動力を供給する手段と、
前記航空機に動力を供給する前記手段に燃料を供給する手段と、
前記燃料の脱酸素を行う手段と、
前記航空機の発熱サブシステムと前記燃料との間で熱の伝達を実施する手段と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項43】
前記熱の伝達を実施する前記手段が熱交換器を含むことを特徴とする請求項42記載のシステム。
【請求項44】
前記発熱サブシステムが、燃料冷却環境制御システム予冷器、高温油系統、冷却タービン冷却空気ユニット、タービン排気復熱器、ヒートポンプ、およびこれら発熱サブシステムの組合せから成る発熱サブシステムの群より選択されることを特徴とする請求項42記載のシステム。
【請求項45】
航空機における熱伝達の管理のためのシステムであって、
航空機エンジンと、
前記航空機エンジンとの動作連通状態に置かれた発熱サブシステムと、
燃料を供給するように構成された燃料源と、
前記燃料源から前記燃料を受け取るとともに前記航空機エンジンへ流出燃料流を提供するように構成された燃料安定処理ユニットと、
前記発熱サブシステムから前記流出燃料流への前記熱の伝達を実施するため該発熱サブシステムおよび前記燃料安定処理ユニットからの該流出燃料流との熱連通状態に置かれた熱交換器と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項46】
前記発熱サブシステムが、燃料冷却環境制御システム予冷器、高温油系統、冷却タービン冷却空気ユニット、一体型空気サイクル環境制御システム、タービン排気復熱器、ヒートポンプ、およびこれら発熱サブシステムの組合せから成る発熱サブシステムの群より選択されることを特徴とする請求項45記載のシステム。
【請求項47】
前記燃料冷却環境制御システム予冷器が、前記航空機エンジンから空気流を、前記燃料安定処理ユニットから前記燃料を受け取るように構成された熱交換器を含み、該熱交換器が、該空気流から該燃料への熱の伝達を実施するように構成されることを特徴とする請求項46記載のシステム。
【請求項48】
前記ヒートポンプが、前記燃料安定処理ユニットからの前記燃料へ低温源から熱を伝達するように構成されることを特徴とする請求項46記載のシステム。
【請求項49】
さらに、前記燃料安定処理ユニットへ供給される前記燃料を加熱するように構成された予熱器を含むことを特徴とする請求項45記載のシステム。
【請求項50】
前記発熱サブシステムが燃料冷却エンジンケースを含むことを特徴とする請求項42記載のシステム。
【請求項51】
前記燃料冷却エンジンケースが、前記燃料へ熱を伝達するため前記エンジンケースとの連通状態に置かれた装置を含み、該装置が、燃料熱交換器、コイル、およびジャケットから成る装置の群より選択されることを特徴とする請求項50記載のシステム。
【請求項52】
前記発熱サブシステムが燃料冷却エンジン排気ノズルを含むことを特徴とする請求項42記載のシステム。
【請求項53】
前記燃料冷却排気ノズルが、前記燃料へ熱を伝達するため前記排気ノズルとの連通状態に置かれた装置を含み、該装置が、燃料熱交換器、コイル、およびジャケットから成る装置の群より選択されることを特徴とする請求項52記載のシステム。
【請求項54】
前記発熱サブシステムが燃料冷却エンジンケースを含むことを特徴とする請求項45記載のシステム。
【請求項55】
前記燃料冷却エンジンケースが、前記燃料へ熱を伝達するため前記エンジンケースとの連通状態に置かれた装置を含み、該装置が、燃料熱交換器、コイル、およびジャケットから成る装置の群より選択されることを特徴とする請求項54記載のシステム。
【請求項56】
前記発熱サブシステムが燃料冷却エンジン排気ノズルを含むことを特徴とする請求項45記載のシステム。
【請求項57】
前記燃料冷却排気ノズルが、前記燃料へ熱を伝達するため前記排気ノズルとの連通状態に置かれた装置を含み、該装置が、燃料熱交換器、コイル、およびジャケットから成る装置の群より選択されることを特徴とする請求項56記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2007−505260(P2007−505260A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526240(P2006−526240)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/029160
【国際公開番号】WO2005/025718
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/029160
【国際公開番号】WO2005/025718
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]