説明

熱転写プリンタ装置

【課題】 少ない部品点数で複数の動作ポジションに設定することができ且つ良好な印刷を可能とする熱転写プリンタ装置を提供すること。
【解決手段】 カム部材11には、サーマルヘッド2を覆うヘッドガイド8に設けられた第1の係止突起8aおよび第2の係止突起8bに係合する第1の設定部11a,第2の設定部11bおよび第3の設定部11cがそれぞれ設けられている。一つのカム部材11で複数のポジションに設定できるため、部品点数を削減することができる。また印刷時には、ヘッド支持部材3とヘッドガイド8とを同期させながらアップダウンさせることができるため、記録用紙をヘッドガイド8とプラテンローラ15で挟むタイミングと、サーマルヘッド2がヘッドダウンして印画するタイミングとの間のずれを解消することができ、良好な印刷を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱転写プリンタ装置に係わり、部品点数を削減するとともに良好な印刷を可能とする熱転写プリンタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1ないし3には熱転写型のプリンタ装置が記載されている。
特許文献1に記載のサーマルプリンタでは、第1カム部11aが反時計回り方向に回動すると、第1ギア11bに噛み合う第2ギア13aが時計回り方向に回転して、第2カム部14が時計回り方向に回動する。このとき、第2カム部14の押圧部14aによって操作ピン15cが押されるため、ガイド部材15が独立して降下して記録用紙19をプラテンローラ2に圧接する。
【0003】
その後、第1カム部11aが圧接板9の圧接部9aを下方に押圧することにより、第1弾性部材8を介してヘッド支持部材5のヘッド取付部5aが下方に押される。この時、ヘッド支持部材5と圧接板9とが支持軸6を支点として反時計回り方向に回動するため、サーマルヘッド3がヘッドダウンしてインクリボンと記録用紙19を介してプラテンローラ2に圧接するようになっている。
【0004】
また特許文献2には、第1のカム駆動部42bと第2のカム駆動部42cが一体に形成されたカム駆動部42を有するプリンタが記載されている。カム駆動部42が時計回り方向に回動させられると、第1のカム部38eを介してサーマルヘッド保持部材38が回動させられてサーマルヘッド37がプラテンローラ35に圧接させられる。同時に、第2のカム駆動部42cが時計回り方向に回動させられ、押圧ローラ40が搬送用ローラに密着するようになっている。
【0005】
さらに特許文献3に記載の熱転写プリンタは、サーマルヘッド4とサーマルヘッド4を取り囲むように配設されたヘッドガイド11が回動自在に支持されたガイド支持部材6に取り付けられており、このヘッド支持部材6が支持軸7を支点に回動することで、サーマルヘッド4がプラテンローラ3に対して接離可能となっている。
【0006】
この熱転写プリンタ1では、ヘッド支持部材6に第1のコイルバネ8が支持されており、その上端には圧接板9aを有する圧接部材9が設けられている。圧接部材9の上部の側版2aには、カム部材10を有する支持軸10aが回動自在に支持されている。
【0007】
支持軸10aが駆動源により正転方向に回動させられ、カム部材10が圧接板9aを押圧すると、圧接部材9が第1のコイルバネ8に抗して下降する。このとき、ガイド支持部材6がヘッドダウンする方向に回動させられため、サーマルヘッド4がプラテンローラ3を圧接する。一方、支持軸10aが駆動源により逆転方向に回動させられ、カム部材10による圧接板9aの圧接が解除されると、ヘッド支持部材6と圧接部材9とは上方に回動し、サーマルヘッド4がヘッドアップするというものである。
【特許文献1】特開2006−116714号公報
【特許文献2】特開2001−260462号公報
【特許文献3】特開2006−142568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載のプリンタでは、圧接板9を押し下げる動作は、駆動軸12に設けられた第1カム部11aの加圧により行われるのに対し、サーマルヘッド3によるプラテンローラ2への圧接は、第2カム部14に形成された押圧部14aが操作ピン15cを押すことにより行われる構成であり、第1カム部11aと第2カム部14とは別個に構成されるため、部品点数が多く機構が複雑であるという問題があった。
【0009】
しかも第1カム部11aと第2カム部14とはギヤを介して駆動される構成であるところ、ギヤには常にバックラッシュが形成されるため、ヘッドユニットとヘッドガイドが完全に同期してアップダウンさせることが難しく、搬送された用紙をヘッドガイドで挟むタイミングと、サーマルヘッドがヘッドダウンして印画するタイミングとの間にずれが発生し、印刷精度を高めにくいという問題があった。
【0010】
この点、特許文献2には、第1のカム駆動部42bと第2のカム駆動部42cが一体に形成されたカム駆動部42を有するプリンタが記載されている。
【0011】
しかし、特許文献2に記載されたプリンタでは、カム駆動部42がサーマルヘッド保持部材38から略T字形状に延びるアーム部38bの先端に設けられたカム部38eを介して間接的に押圧する構成であり、サーマルヘッド保持部材38を直接的に押圧する構成ではないため、サーマルヘッド37とプラテンローラ35との間の圧接力が不足しやすく、やはり良質な印刷を実現し難い。
【0012】
一方、特許文献3に記載されたプリンタでは、支持軸10aが回動してカム部材10が圧接板9aを押圧する際に、圧接部材9が第1のコイルバネ8に抗して下降し、ガイド支持部材6がヘッドダウンする方向に回動させられため、サーマルヘッド4が直接的にプラテンローラ3を加圧することが可能である。
【0013】
ところで、熱転写プリンタでは、インクリボンの一方の下面には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)色のインクが塗布されたインク面が形成されており、記録用紙に対する熱転写工程は一色ごとに行われるが、印刷時には記録用紙を順方向および逆方向に何度か送るため、ヘッドアップ及びヘッドダウン動作を何度か繰り返して行う必要がある。
【0014】
しかし、特許文献3(特許文献1、2も同様)に記載のプリンタでは、サーマルヘッドがプラテンローラから離れるヘッドアップポジションと、サーマルヘッドがプラテンローラを加圧するヘッドダウンポジションの2つのポジションしか有しない構成である。
【0015】
このため、特許文献3に記載のプリンタでは、サーマルヘッドからプラテンローラヘッドを完全に離したアップポジションにおいて、用紙搬送とリボンセンシングを行わなければならならず、用紙の送り精度が低下しやすく、印刷精度が低いという問題がある。
【0016】
本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、少ない部品点数で複数の動作ポジションに設定することができると共に、良好な印刷を可能とする熱転写プリンタを提供することを目的としている。
【0017】
また本発明を削減してもサーマルヘッドとプラテンローラとの間に必要な圧接力を確保し、且つ用紙の送り精度を高めることにより良好な印刷を可能とする熱転写プリンタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、少なくともサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドに対向して配置されたプラテンローラと、前記サーマルヘッドと前記プラテンローラとの間で引き回しされるインクリボンと、用紙を搬送する紙送りローラと、前記サーマルヘッドを搭載するとともに前記サーマルヘッドを前記プラテンローラに対して接離自在に支持するヘッド支持部材と、前記ヘッド支持部材の所定のポジションに移行させるカム部材と、を備えた熱転写プリンタ装置において、
前記所定のポジションとして、前記サーマルヘッドを前記プラテンローラから離すヘッドアップポジションと、前記サーマルヘッドを前記プラテンローラに圧接させるヘッドダウンポジションと、前記ヘッドアップポジションと前記ヘッドダウンポジションとの中間に位置するバックフィードポジションの3つのポジションが設けられており、
前記カム部材に、前記ヘッド支持部材及び前記ヘッド支持部材に搭載された前記サーマルヘッドを、前記ヘッドアップポジションに設定する第1の設定部と、前記バックフィードポジションに設定する第2の設定部と、前記ヘッドダウンポジションに設定する第3の設定部とが一体的に形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
より詳しくは、前記ヘッド支持部の先端には、サーマルヘッドの周囲を覆う状態で、前記サーマルヘッドと前記プラテンローラとが接離する方向に沿って移動自在に支持されたヘッドガイドが設けられており、
前記ヘッドガイドには前記カム部材に形成された第1ないし第3の設定部に係合可能な係止突起が形成されているものである。
【0020】
本発明の熱転写プリンタ装置では、ヘッドアップポジション、バックフィードポジションおよびヘッドダウンポジションを有し、各ポジション間の移動は一つのカム部材で行うことができるため、部品点数を削減することができる。
【0021】
しかも、ヘッド支持部材とサーマルヘッドとを同期させながらアップダウンさせることができるため、搬送された用紙をヘッドガイドで挟むタイミングと、サーマルヘッドがヘッドダウンして印画するタイミングとを一致させることが可能となり、良好な印刷を実現できる。
【0022】
さらに、印刷時にはヘッドガイドを用紙搬送用のガイドとして使用することが可能となるため、この点でも良好な印刷を行うことができる。
【0023】
上記において、前記カム部材には、半径の異なる第1カム部と第2カム部が板厚方向に段差を有して形成されており、この第1カム部と第2カム部の双方に前記第1ないし第3の設定部がそれぞれ設けられているものが好ましく、さらには前記係止突起は2つ設けられており、前記2つの係止突起は第1カム部と第2カム部の外周面をそれぞれ摺動するものが好ましい。
【0024】
上記手段では、一種類のカム部の場合や係止突起が一つの場合に比較して、各ポジションの設定を確実に行うことができる。
【0025】
また前記ヘッド支持部材には、付勢部材に付勢された圧接板が設けられており、
前記カム部材は、長手方向に延びる支持軸の両端に一対設けられており、前記圧接板の長手方向の両端に設けられた両側部に対して加圧力を与えるものが好ましい。
【0026】
上記手段では、カム部材に押圧された圧接板からサーマルヘッドに対して直接的に押圧力を与えることができるため、サーマルヘッドとプラテンローラとの間に必要な圧接力を確保することができる。
【0027】
例えば、前記ヘッドアップポジションでは印刷指示を待つ待機位置に設定され、前記バックフィードポジションでは記録用紙を前記紙送りローラによって順方向又は逆方向に紙送りすると共に前記インクリボンの頭出しを行うセッティング位置に設定され、前記ヘッドダウンポジションでは、前記サーマルヘッドを前記プラテンローラに圧接して印刷を行う印刷位置に設定されるものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、サーマルヘッドとプラテンローラとの間を圧接させる部品点数を削減することができると共に、良好な印刷を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下本発明の熱転写プリンタ装置について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施の形態としての熱転写プリンタ装置の内部構造の主要部を示す斜視図、図2ないし図3は熱転写プリンタの各動作にけるポジションを示しており、図2(A)はヘッドアップポジションを示す側面図、図2(B)はヘッドアップポジションを示す断面図、図3(A)はバックフィードポジションを示す側面図、図3(B)はバックフィードポジションを示す断面図、図4(A)はヘッドダウンポジションを示す側面図、図4(B)はヘッドダウンポジションを示す側面図、図5は熱転写プリンタ装置の主要部分を拡大して示す斜視図である。なお、図1はヘッドアップポジションを示し、図5はバックフィードポジションを示している。
【0030】
本実施の形態に示す熱転写プリンタ1はインクリボン式であり、内部には先端にサーマルヘッド2が設けられたヘッド支持部材3を有している。
【0031】
ヘッド支持部材3は、基端部3Aと、サーマルヘッド2を支持するヘッド支持部3Cと、基端部3Aとヘッド支持部3Cとの間は斜めに形成された傾斜部3Bとを有しており、側面から見ると略クランク状をしている。
【0032】
基端部3AのX方向の両側には、支持穴3b,3bが形成された支持片3a,3aが形成されている。熱転写プリンタ1のX1およびX2方向の両側方には、図示しない側壁が設けられており、これら両側の側壁間には回動軸5が挿通されている。回動軸5は基端部3Aに形成れた支持片3a,3aの支持穴3b,3bに挿通されており、ヘッド支持部材3は回動軸5を中心に先端側であるヘッド支持部3Cが回動自在に支持されている。ヘッド支持部材3は、図示しない付勢部材により常に時計回り方向に付勢されている。
【0033】
ヘッド支持部3Cの上には、固定板6Aと圧接板6Bとからなる圧接部材6が設けられている。固定板6Aと圧接板6Bは、共にX方向を長手方向、Y方向を幅方向とする板状の部材から形成されている。固定板6Aはヘッド支持部材3の上面に固定されている。固定板6Aの幅方向の両側には、ほぼ直角に折り曲げられた案内片6a、6aが設けられており、これら案内片6a、6aには案内孔6a1、6a1がそれぞれ形成されている。圧接板6Bの幅(X)方向の両側には、案内凸部6b、6bが突出形成されている。各案内凸部6b、6bは、案内孔6a1、6a1にそれぞれ挿入されている。案内孔6a1、6a1には高さ(Z)方向に所定の隙間余裕を有しており、圧接板6Bはこの隙間余裕に相当する距離を移動することが可能である。
【0034】
固定板6Aの上面と圧接板6Bの下面との間には、コイルスプリングからなる一対の付勢部材7,7が設けられており、固定板6Aから離れる方向に圧接板6Bを付勢している。このため、通常、各案内凸部6b、6bは、案内孔6a1、6a1の上端に当接しており、圧接板6Bは固定板6Aから離れる方向に持ち上げられている。
【0035】
サーマルヘッド2はヘッド支持部3Cの下面側にヒートシンクHを介して取り付けられている。サーマルヘッド2の周囲には、ヘッド支持部3Cを取り囲むように、ヘッド支持部3Cとは別体で形成されたヘッドガイド8が設けられている。
【0036】
ヘッドガイド8はX方向を長手方向とするケース状または枠状の部材として形成されている。ヘッドガイド8のZ1側の上面は全面的に開放されており、内部に空洞部8Aが形成されている。またZ2側の下面は開口部8Bによって部分的に開放されている。
【0037】
図1ないし図5に示すように、ヘッドガイド8の長手(X)方向の両端の位置にて対峙する両側面8C,8Cには、図示上方(Z1方向)に突出する第1の係止突起8a,8aと第2の係止突起8b,8bと、X方向に突出する支持突起8c,8cがそれぞれ一体に形成されている。
【0038】
ヘッドガイド8の両端に設けられた支持突起8c,8cは、図示していない両側板に形成されている長穴状のガイド穴の内部にそれぞれ挿入されている。支持突起8c,8cはガイド穴に対し、上下(Z1−Z2)方向に移動自在に支持されるとともに、コイルばねからなる付勢部材S,Sによって、上側(Z1)に付勢されている(図1参照)。なお、ヘッドガイド8が移動する上下方向は、ヘッド支持部材3がプラテンローラ15に対して移動する接離方向と同じ方向である。
【0039】
図2(B)、図3(B)、図4(B)に示すように、ヘッド支持部材3が反時計回りに回動させられ、ヘッドガイド8の下面が、その下方に設けられたプラテンローラ15に当接しても、さらにヘッド支持部材3はサーマルヘッド2がプラテンローラ15に当接するまでは反時計回り方向に回動することが可能とされている。
【0040】
また第1の係止突起8aは図示Y1側に設けられ、第2の係止突起8bは図示Y2側に設けられている。また第2の係止突起8bは側面8Cの肉厚寸法内に形成されているが、第1の係止突起8aは側面8Cから外方向(X1およびY2方向)にそれぞれ突出した状態で形成されており、第1の係止突起8aの内側の面は側面8CよりもそれぞれX1またはX2側に位置している。
【0041】
また、ヘッドガイド8のY1側の端部には、剥離ローラ8Dが回転自在に支持されて、印刷時に後述する記録用紙に密着したインクリボンを剥離可能になっている。
【0042】
なお、ヘッドガイド8の空洞部8A内で開口部8Bの図示左側(後述する記録用紙の給紙方向におけるサーマルヘッド2より下流(Y1)側)には、光学式のリボンセンサ9が配設され、このリボンセンサ9によって、インクリボンのインク面を検出して印刷開始位置に位置合わせ可能なリボン頭出しが可能になっている。
【0043】
圧接部材6の上方の位置には、図示しない両側の側壁に対して回動自在に支持された支持軸10aが架設されている。支持軸10aの長手方向(X方向)の両側には一対のカム部材11,11が固定されている。また支持軸10aの一方(X2方向)の端部には歯車の一部(1/4程度)を形成する伝達ギヤ13が固定されている。一方のカム部材11と他方のカム部材11とはほぼ対称をなす形状で形成されている。図示しない駆動源から伝達ギヤ13に動力が与えられると、支持軸10aが時計回り方向または反時計回り方向に回転する。
【0044】
カム部材11は、半径の異なる外周面を有する第1カム部11Aおよび第2カム部11Bとを有し、これらの内側の面には押圧部11Cが一体形成されている。カム部材11の外側は、半径の小さな外周面を有する第1カム部11Aが、それよりも半径の大きな外周面を有する第2カム部11Bの上に形成されており、両者の間には段差が設けられている。半径の大きな外周面を有する第2カム部11Bの外側の面(X1側の面)は、ヘッドガイド8の側面8Cとほぼ同一平面で形成されている。
【0045】
第2カム部11Bの外周面の縁にはフランジ部11Dが一体形成されており、このフランジ部11Dは第2の係止突起8bの内面に対向している。または第1の係止突起8aの内面は、第2カム部11Bの外側の面に対向している。
【0046】
つまり、第1の係止突起8aはフランジ部11Dに対向しながら第1カム部11Aの外周面を摺動する。同時に、第2の係止突起8bは第2カム部11Bの外面に対向しながら第2カム部11Bの外周面を摺動する。
【0047】
ここで時計回り方向を基準とする。
このカム部材11では、図2(A)に示すように、時計回り方向の第1カム部11Aの終端部に第1の設定部11aが設けられ、図4(A)に示すように時計回り方向の第1カム部11Aおよび第2カム部11Bの始端側の端部に第3の設定部11c,11cが設けられている。そして、図3(A)に示すように、第1カム部11Aおよび第2カム部11Bの第1の設定部11aと第3の設定部11c,11cの中間には第2の設定部11b,11bがそれぞれ設けられている。
【0048】
第3の設定部11c,11cはそれぞれ一定の半径からなる円弧の一部である外周面の始端側の端部に形成されている。第2の設定部11bは、第1カム部11Aおよび第2カム部11Bの外周面が、前記一定の半径からそれよりも短い半径に至る際の転換部分に形成されている。そして、第1の設定部11aは、時計回り方向の終端部で且つ支持軸10aに対する半径が第2の設定部11bおよび第3の設定部11cよりも短い部分に短い円弧で段差状に形成されている。
【0049】
図1および図2(B)などに示すように、カム部材11の内側の面には押圧部11Cが一体的に形成されている。押圧部11Cの回動軌跡上に圧接板6Bの端部が位置している。このため、カム部材11が回動すると圧接板6BのX方向の両端をカム部材11,11に形成された押圧部11C,11Cが押圧する。このとき、ヘッド支持部3Cも下方に押されるため、ヘッド支持部材3が反時計回り方向に回動させられ、ヘッド支持部3Cに設けられたサーマルヘッド2がプラテンローラ15に圧接する。
【0050】
ヘッドガイド8の下方の位置には、両側の側壁に回転自在に支持され円柱状のプラテンローラ15が設けられている。ヘッドガイド8とプラテンローラ15との間にはインクリボン18が引き回されている。
【0051】
前記インクリボン18は、図示しないリボンカセット内に収納されている。リボンカセットは、未使用のインクリボン18を巻回した状態の供給リール19と使用済みのインクリボン18を巻回可能な巻取りリール20を有している。
【0052】
例えば、供給リール19はヘッド支持部材3の基端部3Aの下部に設けられたスペース内に設けられており、巻取りリール20はヘッドガイド8のY1側の位置に設けられている。供給リール19から送られたインクリボン18は前記サーマルヘッド2とプラテンローラ15との間で熱転写され、使用後のインクリボン18が巻取りリール20において巻き取られる。
【0053】
なお、プラテンローラ15のY1側には、図示しない紙送りローラと、前記紙送りローラに圧接可能な圧接ローラとが配設されている。給紙された記録用紙は、紙送りローラと圧接ローラとの間に挟持された状態で、紙送りローラの回転方向に応じて紙送りされる。このとき、記録用紙はヘッドガイド8とプラテンローラ15との間で、且つインクリボン18の下側の位置をAまたはB方向(図4(B)参照)に移動する。
【0054】
次に、上記熱転写プリンタ装置の動作を説明する。
(ヘッドアップポジション)
図2(A)(B)に示す状態では、支持軸10aは反時計回り方向に回転させられており、第1の係止突起8aがカム部材11の第1の設定部11aに位置している。
【0055】
第1の設定部11aは、第1カム部11Aの外周面のうちで支持軸10aからの半径が最も短い。ヘッド支持部材3は、図示しない付勢部材により時計回り方向の付勢されている。このため、サーマルヘッド2が設けられたヘッド支持部3Cは、図示上方に持ち上げられたヘッドアップポジション(HU)にあり、サーマルヘッド2はプラテンローラ15から上方に離間している。
【0056】
このヘッドアップポジション(HU)では、ヘッドガイド8もプラテンローラ15から離れており、両者の間には比較的大きな隙間が形成されるため、例えば紙詰まり時における記録用紙の除去やインクリボンの交換などの作業が可能である。
【0057】
(バックフィードポジション)
図3(A)(B)に示すように、図示しない駆動源から伝達ギヤ13に動力を与えて支持軸10aを時計回り方向に所定の回転角度だけ回転させると、第1の係止突起8aおよび第2の係止突起8bが、カム部材11の第1カム部11Aおよび第2カム部11Bの外周面を摺動して第2の設定部11b,11bに至る。
【0058】
第2の設定部11b,11bの半径は、第1の設定部11aの半径よりも長いため、第1の係止突起8aおよび第2の係止突起8bが第2の設定部11b,11bで押され、ヘッドガイド8がプラテンローラ15に接近する図示下方(Z2方向)に移動させられる。同時に、ヘッド支持部材3も反時計回り方向に回動させられる。
【0059】
ただし、図3(B)に示すように、このときカム部材11の内側の押圧部11Cは圧接板6Bを押圧可能な位置には達していない。このため、サーマルヘッド2が設けられたヘッド支持部3Cは、ヘッドガイド8がプラテンローラ15からわずかに離れていると共に、サーマルヘッド2もプラテンローラ15から離れたバックフィードポジション(BF)に設定される。
【0060】
このバックフィードポジション(BF)では、ヘッドガイド8とプラテンローラ15と間にわずかな隙間が形成されるため、ヘッドアップポジション(HU)のような紙詰まり記録用紙の除去やインクリボンの交換などの作業を行うことはできない。
【0061】
しかしながら、ヘッドガイド8とプラテンローラ15との間のわずかな隙間を利用して記録用紙17をフィード(順送り)またはバックフィード(逆送り)すると、ヘッドガイド8が記録用紙を送る際の搬送用ガイド部材として機能させることが可能とされている。さらには巻取りリール20を回転させてインクリボン18を巻取り、このときリボンセンサ9のインク面に形成されているマーカー(図示せず)を検出し、インク面18aの頭出しなどのリボンセンシングを高精度に行うことが可能である。このため、前記バックフィードポジション(BF)を、記録用紙17の給紙とリボンセンシングを高精度に行うセッティング位置として利用できる。
【0062】
(ヘッドダウンポジション)
図4(A)(B)に示すように、さらに支持軸10aを時計回り方向に所定の回転角度だけ回転させると、第1の係止突起8aおよび第2の係止突起8bが、カム部材11の第1カム部11Aおよび第2カム部11Bの外周面を摺動して第3の設定部11c,11cに至る。
【0063】
第3の設定部11c,11cの半径は、第2の設定部11b,11bよりもさらに長い。このため、ヘッドガイド8はさらに図示下方に移動させられる。
【0064】
このとき、カム部材11の内側に形成されている押圧部11Cが圧接板6Bを押圧するため、ヘッド支持部材3も反時計回り方向に回動させられ、ヘッド支持部3Cに設けられたヘッドガイド8がプラテンローラ15に接近する。
【0065】
同時に、圧接板6Bが付勢部材7,7に抗しながら固定板6Aに向かって押し下げられ、このときガイド支持部3Cの下面に設けられたサーマルヘッド2がプラテンローラ15を圧接するヘッドダウンポジションとなる。
【0066】
(印刷モード)
サーマルヘッド2がプラテンローラ15を圧接した状態で、サーマルヘッド2の複数の発熱素子を印刷情報に基づいて選択的に発熱させると共に記録用紙17を矢印A方向に搬送することにより、記録用紙17に、インクリボン18の最初のイエロー(Y)の色のインク面18aのインクが転写されて記録用紙17にイエロー(Y)の色の画像が印刷される。
【0067】
その後、支持軸10aを回転させて図3(A)(B)に示すバックフィードポジション(BF)に戻す。すると、サーマルヘッド2がプラテンローラ15から離れると共に、付勢部材S,Sにより僅かに持ち上げられてヘッドガイド8が上昇する。このとき、紙送りローラを回転させて、記録用紙17を矢印D方向にバックフィードさせる。
【0068】
そして、再度記録用紙17の頭出しを行うと共に、サーマルヘッド2をヘッドダウンポジション(HD)に移行させて、イエロー(Y)の色の画像の上にマゼンダ(M)の色のインク面18aのインクを印刷することにより、イエロー(Y)の色の画像の上にマゼンダ(M)の色の画像が重ね印刷される。
【0069】
このような印刷動作を、次のシアン(C)についても繰り返し、すなわちバックフィードポジション(BF)とヘッドダウンポジション(HD)との間で同じような動作を繰り返し、イエロー(Y)およびマゼンダ(M)の色の画像の上にシアン(C)の色のインク面18aのインクを印刷することにより、記録用紙17に所望のカラー画像が印刷される。
【0070】
このように、本発明の熱転写プリンタ1では、ヘッド支持部材3のアップダウンのタイミングとヘッドガイド8のアップダウンのタイミングとを一致させることができる。このため、記録用紙17をヘッドガイド8とプラテンローラ15で挟むタイミングと、サーマルヘッド2がヘッドダウンして印画するタイミングとの間のずれを解消することができ、良好な印刷を実現することができる。
【0071】
なお、印刷時に、サーマルヘッド2をヘッドダウンポジション(HD)とヘッドアップポジション(HU)との間を移動させるのではなく、それよりも近いヘッドダウンポジション(HD)とバックフィードポジション(BF)との間で移動させることができるため、ポジションチェンジに要する時間が短縮され、印刷スピードを速めることも可能となる。
【0072】
また一つのカム部材11に第1ないし第3の設定部11a,11bおよび11cを設けることにより、一つのカム部材11だけで3つのポジションを設定することができ、従来のように2つ以上のカム部材をギヤを介して駆動する必要がないため、バックラッシュに起因する印刷精度の低下という問題がなくなり、良好な印刷を実現することができる。しかも、圧接板6Bの押し下げと、サーマルヘッド2によるプラテンローラ15への圧接とを前記カム部材11により行うことができ、従来に比較して部品点数を削減することができる。
【0073】
また押圧部11C,11Cはサーマルヘッド2の上面を真下(Z2方向)から直接的に加圧することができるため、サーマルヘッド2とプラテンローラ15との間の圧接力を高めることが可能となり、この点でも印刷の品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態としての熱転写プリンタ装置の内部構造の主要部を示す斜視図、
【図2】熱転写プリンタの動作の一つであるヘッドアップポジションを示し、(A)は側面図、(B)は断面図、
【図3】熱転写プリンタの動作の一つであるバックフィードポジションを示し、(A)は側面図、(B)は断面図、
【図4】熱転写プリンタの動作の一つであるヘッドダウンポジションを示し、(A)は側面図、(B)は断面図、
【図5】熱転写プリンタ装置の主要部分を拡大して示す斜視図、
【符号の説明】
【0075】
1 熱転写プリンタ装置
2 サーマルヘッド
3 ヘッド支持部材
3C ヘッド支持部
5 回動軸
6 圧接部材
6A 固定板
6B 圧接板
7 付勢部材
8 ヘッドガイド
8a 第1の係止突起
8b 第2の係止突起
8c 支持突起
10a 支持軸
11 カム部材
11A 第1カム部
11B 第2カム部
11a 第1の設定部
11b 第2の設定部
11c 第3の設定部
15 プラテンローラ
17 記録用紙
18 インクリボン
19 供給リール
20 巻取りリール
S 付勢部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドに対向して配置されたプラテンローラと、前記サーマルヘッドと前記プラテンローラとの間で引き回しされるインクリボンと、用紙を搬送する紙送りローラと、前記サーマルヘッドを搭載するとともに前記サーマルヘッドを前記プラテンローラに対して接離自在に支持するヘッド支持部材と、前記ヘッド支持部材の所定のポジションに移行させるカム部材と、を備えた熱転写プリンタ装置において、
前記所定のポジションとして、前記サーマルヘッドを前記プラテンローラから離すヘッドアップポジションと、前記サーマルヘッドを前記プラテンローラに圧接させるヘッドダウンポジションと、前記ヘッドアップポジションと前記ヘッドダウンポジションとの中間に位置するバックフィードポジションの3つのポジションが設けられており、
前記カム部材に、前記ヘッド支持部材及び前記ヘッド支持部材に搭載された前記サーマルヘッドを、前記ヘッドアップポジションに設定する第1の設定部と、前記バックフィードポジションに設定する第2の設定部と、前記ヘッドダウンポジションに設定する第3の設定部とが一体的に形成されていることを特徴とする熱転写プリンタ装置。
【請求項2】
前記ヘッド支持部の先端には、サーマルヘッドの周囲を覆う状態で、前記サーマルヘッドと前記プラテンローラとが接離する方向に沿って移動自在に支持されたヘッドガイドが設けられており、
前記ヘッドガイドには前記カム部材に形成された第1ないし第3の設定部に係合可能な係止突起が形成されている請求項1記載の熱転写プリンタ装置。
【請求項3】
前記カム部材には、半径の異なる第1カム部と第2カム部が板厚方向に段差を有して形成されており、この第1カム部と第2カム部の双方に前記第1ないし第3の設定部がそれぞれ設けられている請求項1または2記載の熱転写プリンタ装置。
【請求項4】
前記係止突起は2つ設けられており、前記2つの係止突起は第1カム部と第2カム部の外周面をそれぞれ摺動する請求項2または3記載の熱転写プリンタ装置。
【請求項5】
前記ヘッド支持部材には、付勢部材に付勢された圧接板が設けられており、
前記カム部材は、長手方向に延びる支持軸の両端に一対設けられており、前記圧接板の長手方向の両端に設けられた両側部に対して加圧力を与えるものである請求項1ないし4のいずれかに記載の熱転写プリンタ装置。
【請求項6】
前記ヘッドアップポジションでは印刷指示を待つ待機位置に設定され、前記バックフィードポジションでは記録用紙を前記紙送りローラによって順方向又は逆方向に紙送りするとともに前記インクリボンの頭出しを行うセッティング位置に設定され、前記ヘッドダウンポジションでは、前記サーマルヘッドを前記プラテンローラに圧接して印刷を行う印刷位置に設定される請求項1ないし5のいずれかに記載の熱転写プリンタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−184156(P2009−184156A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24384(P2008−24384)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】