説明

熱転写記録装置及びその制御方法

【課題】 トルクリミッタを最適に動作させ、印刷部から搬送される用紙に張力を働かせながら、用紙を巻取りロールに巻き取ることができる熱転写記録装置を提供する。
【解決手段】 用紙に印刷を行うサーマルヘッド2と、給紙ロール5に巻かれた用紙をサーマルヘッド2との接触位置へと搬送するプラテンローラ3と、印刷された用紙を巻き取る巻取りロール7と、巻取りロール11を回転駆動する巻取りモータ11と、巻き取った用紙を含む巻取りロール7の径を算出する制御部20と巻取りロール7の回転軸にかかるトルクが設定値以上になると、巻取りロール7の回転軸にかかるトルクを低減させるトルクリミッタギア10とを有し、制御部20は、算出した巻取りロール7の径に基づいて、トルクリミッタギア10が動作するように、巻取りモータ11の回転速度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写記録装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱転写記録装置は、発熱素子を具備するサーマルヘッドと、用紙ロールに巻き取られた用紙を搬送するプラテンローラとを対向配置した構成を備えている。用紙ロールに巻き取られた用紙をプラテンローラの回転によってサーマルヘッドとの接触位置まで搬送し、サーマルヘッドの具備する発熱素子を選択的に駆動することで、プラテンローラとの間に挟み込まれた用紙に画像を形成する。画像を形成された用紙は、巻取りロールに巻き取られる。
【0003】
熱転写記録装置には、搬送される用紙に適正な張力がかかっていないと、サーマルヘッドとプラテンローラとの間に挟まれた用紙が滑り、形成される画像の品質が悪くなる、用紙の走行と巻取性能の保証ができないという課題がある。そこで、特許文献1及び2には、巻取りロールのロール径を算出し、算出したロール径に基づいて巻取りロールを駆動するモータの出力を制御することで、巻取りロールに巻き取られる用紙に適正な張力が働くようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−20812号公報
【特許文献2】特開2007−302468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2には、巻取りロールにトルクリミッタを設けた場合に、巻取りローラを駆動するモータの回転速度を最適に制御する技術について開示されていない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、トルクリミッタを最適に動作させ、印刷部から搬送される用紙に張力を働かせながら、用紙を巻取りロールに巻き取ることができる熱転写記録装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の熱転写記録装置は、用紙に印刷を行う印刷部と、用紙ロールに巻かれた用紙を前記印刷部へと搬送する搬送ローラと、前記印刷部で印刷され、前記搬送ローラで搬送された用紙を巻き取る巻取りロールと、前記巻取りロールを回転駆動する巻取りロール駆動モータと、巻き取った用紙を含む前記巻取りロールの径を算出するロール径算出手段と、前記巻取りロールの回転軸にかかるトルクが設定値以上になると、前記巻取りロールの回転軸にかかるトルクを低減させるトルクリミッタと、前記ロール径算出手段の算出した前記巻取りロールの径に基づいて、前記巻取りロール駆動モータの回転速度を、前記トルクリミッタが動作する、前記巻取りロール駆動モータの最低回転速度となるように制御する駆動制御手段とを備えている。
【0008】
上記熱転写記録装置において、前記ロール径算出手段は、前記駆動制御手段に、前記搬送ローラの駆動モータを所定ステップ駆動させて、前記搬送ローラに、前記用紙ロールに巻かれた用紙を前記印刷部へと搬送させ、前記搬送ローラの駆動モータの1ステップ当たりの回転角度と、前記搬送ローラの駆動モータを駆動したステップ数と、前記搬送ローラの駆動モータと前記搬送ローラとの回転数の比とに基づいて、前記搬送ローラの搬送した用紙長を、前記搬送ローラの周長を基準長さとして求める第1算出手段と、前記巻取りロール駆動モータを前記駆動制御手段に駆動させて、搬送された用紙を前記巻取りロールに巻取ると共に、前記巻取りロールの所定角度の回転ごとにパルス信号を出力するセンサの出力パルス信号数をカウントするカウント手段と、前記センサが1パルス信号を出力する前記巻取りロールの回転角度と、前記センサの出力パルス信号数とに基づいて、前記搬送ローラの搬送した用紙長を、前記巻取りロールの周長を基準長さとして求める第2算出手段と、前記第1算出手段で算出した用紙長と前記第2算出手段で算出した用紙長とに基づいて、前記巻取りロールの径を算出する第3算出手段とをさらに有し、前記駆動制御手段により、前記第3算出手段で算出した前記巻取りロールの径に基づいて前記巻取りロール駆動モータの回転速度を制御させるとよい。
【0009】
上記熱転写記録装置において、前記ロール径算出手段は、前記トルクリミッタが動作する、前記巻取りロール駆動モータの最低回転速度となるように、前記第3算出手段で算出した前記巻取りロールの径に基づいて前記巻取りロール駆動モータの最低回転速度を算出し、算出した最低回転速度に基づいて、前記駆動制御手段に、前記巻取りロール駆動モータの駆動を制御させる回転速度算出手段をさらに有するとよい。
【0010】
本発明の熱転写記録装置の制御方法は、用紙を搬送する搬送ローラの駆動モータを駆動させて、前記搬送ローラに、用紙ロールに巻かれた用紙を印刷部へと搬送させるステップと、前記搬送ローラに搬送された用紙を巻取る巻取りロールの駆動モータを駆動させて、前記印刷部を通過した用紙を前記巻取りロールに巻き取るステップと、巻き取った用紙を含む前記巻取りロールの径を算出するステップと、前記巻取りロールの回転軸にかかるトルクが設定値以上になると、前記巻取りロールの回転軸にかかるトルクを低減させるトルクリミッタが動作する前記巻取りロールの駆動モータの最低回転速度となるように、算出した前記巻取りロールの径に基づいて、前記巻取りロールの駆動モータの回転速度を設定するステップとを備えている。
【0011】
上記熱転写記録装置の制御方法において、前記巻取りロールの径を算出するステップは、前記搬送ローラの駆動モータを所定ステップ駆動させて、前記搬送ローラに、前記用紙ロールに巻かれた用紙を搬送させる搬送ステップと、前記搬送ローラの駆動モータの1ステップ当たりの回転角度と、前記搬送ローラの駆動モータを駆動したステップ数と、前記搬送ローラの駆動モータと前記搬送ローラとの回転数の比とに基づいて、前記搬送ローラの搬送した用紙長を、前記搬送ローラの周長を基準長さとして求める第1算出ステップと、前記巻取りロールの駆動モータを駆動させて、搬送された用紙を前記巻取りロールに巻取ると共に、前記巻取りロールの所定角度の回転ごとにパルス信号を出力するセンサの出力パルス信号数をカウントするカウントステップと、前記センサが1パルス信号を出力する前記巻取りロールの回転角度と、前記センサの出力パルス信号数とに基づいて、前記搬送ローラの搬送した用紙長を、前記巻取りロールの周長を基準長さとして求める第2算出ステップと、前記第1算出ステップで算出した用紙長と前記第2算出ステップで算出した用紙長とに基づいて、前記巻取りロールの径を算出する第3算出ステップと、前記第3算出ステップで算出した前記巻取りロールの径に基づいて、前記巻取りロールの駆動モータの回転速度を制御する駆動制御ステップとを有している。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トルクリミッタを最適に動作させ、印刷部から搬送される用紙に張力を働かせながら、用紙を巻取りロールに巻き取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】熱転写記録装置の構成を示す構成図である。
【図2】制御部のハードウェア構成を示す図である。
【図3】制御部の機能ブロックを示す図である。
【図4】巻取りロールの外径と巻取りモータの回転速度との関係を示す図である。
【図5】制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例を説明する。
【0015】
まず、図1を参照しながら本実施例の構成について説明する。図1は、本発明を適用したサーマルプリンタ1の構成の一例を模式的に示す図である。
【0016】
サーマルプリンタ1は、サーマルヘッド2、プラテンローラ3、印字モータ4、給紙ロール5、巻取りロール7、巻取りモータ11、回転センサ12、制御部20を備える。
【0017】
サーマルヘッド2は、印刷部として機能し、例えば、多数の発熱体がライン状に配列された構成を有する。サーマルヘッド2の各発熱体には、印刷イメージに応じて選択的に電流が制御部20から供給される。
【0018】
プラテンローラ3は、印字モータ4によって回転駆動される。プラテンローラ3は、給紙ロール5から引き出された用紙6を、プラテンローラ3とサーマルヘッド2との接触位置である印刷位置へと搬送する。
【0019】
印字モータ4は、制御部20の制御に基づいて、プラテンローラ3を回転駆動する。印字モータ4には、単位時間当たりの駆動ステップ数に応じて回転速度が制御されるステッピングモータを用いる。
【0020】
巻取りモータ11は、制御部20の制御に基づいて、巻取りロール7を回転駆動する。巻取りロール7は、巻取りモータ11によって回転駆動され、プラテンローラ3の回転によって印刷位置から搬送された用紙6を巻き取る。
【0021】
回転センサ12は、巻取りロール7が2π/K(Kは任意の整数)回転するごとに、パルス信号を制御部20に送る。すなわち、巻取りロール7が1回転すると、回転センサ12は、K個のパルス信号を制御部20に送る。
【0022】
巻取りロール7は、用紙を巻き取る巻取りロール本体9と、巻取りロール本体9を回転させる回転軸8とを備える。巻取りロール本体9と、回転軸8との間には、トルクリミッタギア10が組み込まれている。トルクリミッタギア10は、一定以上のトルクが巻取りロール7の回転軸8にかかると、このトルクリミッタギア10でトルクを調整して、巻取りロール7に巻き取られる用紙6にかかる張力が最適になるように動作する。
【0023】
制御部20は、サーマルプリンタ1の全体を制御する。制御部20は、印字モータ4及び巻取りモータ11の駆動を制御して用紙6を搬送すると共に、サーマルヘッド2の発熱素子を選択的に駆動して用紙6に画像を記録する。
【0024】
次に、図2を参照しながら制御部20のハードウェア構成について説明する。図2は、制御部20のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0025】
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23及び入出力部24を備える。
【0026】
CPU21は、サーマルプリンタ1の全体を制御する。ROM22は、CPU21を動作させるための制御プログラムや、その他各種のプログラムを記憶している。RAM(Random Access Memory)23は、CPU21が演算に使用するデータや、演算結果のデータなどを記憶する。なお、RAM23に、フラッシュメモリやEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)を使用し、サーマルプリンタ1の電源がオフされたときに、CPU21が算出した計算値(例えば、後述する巻取りロール7の外径Db等)をRAM23に保存しておくこともできる。
【0027】
次に、制御部(ローラ径算出手段)20の具備する機能について説明する。図3は、制御部20の機能ブロック図である。この機能ブロックは、CPU21やRAM23などのハードウェアと、ROM22に記録されたプログラムとが協働することによって実現される。
【0028】
制御部20は、駆動制御手段31、第1算出手段32、カウント手段33、第2算出手段34、第3算出手段35、回転速度算出手段36を備える。
【0029】
駆動制御手段31は、印字モータ4の駆動を制御して、プラテンローラ3に、給紙ロール5に巻き取られた用紙をサーマルヘッド2との接触位置(印刷位置)まで搬送させる。また、駆動制御手段31は、巻取りモータ11の駆動を制御して、サーマルヘッド2で印字された用紙を巻取りロール7に巻取らせる。
【0030】
第1算出手段32は、印字モータ4の1ステップ当たりの回転角度と、印字モータ4を駆動したステップ数と、印字モータ4とプラテンローラ3との回転数比とに基づいて、印字モータ4を所定ステップ駆動した場合にプラテンローラ3が搬送する用紙長Lを、プラテンローラ3の周長を基準長さにして求める。なお、詳細については後述する。
【0031】
カウント手段33は、回転センサ12から出力されるパルス信号の出力数をカウントする。
例えば、カウント手段33が回転センサ12から入力したパルス信号のパルス数がn(nは任意の整数)である場合、巻取りロール7の回転量θ(単位はラジアン)は、次のように計算できる。
θ=(2π/K)×n・・・(1)
【0032】
第2算出手段34は、回転センサ12から出力されるパルス信号を入力する。第2算出手段34は、用紙長Lの用紙を巻取りロール7に巻き取ったときの巻取りロール7の回転量θを、回転センサ12の出力パルス信号数に基づいて算出する。さらに、第2算出手段34は、算出した巻取りロール7の回転量θを用いて、巻取りロール7に巻き取った用紙長Lを、巻取りロール7の周長を基準長さにして求める。すなわち、第2算出手段34は、巻取りロール7に巻き取った用紙長Lが巻取りロール7の周長の何倍になっているかを求める。この詳細についても後述する。
【0033】
第3算出手段35は、第1算出手段32で算出した用紙長と第2算出手段34で算出した用紙長とに基づいて、巻取りロール7の外径を算出する。この詳細についても後述する。また、第3算出手段35は算出した巻取りロール7の外径を回転速度算出手段36に送る。
【0034】
回転速度算出手段36は、第3算出手段が算出した巻取りロール7の外径に基づいて、巻取りモータ11の目標回転速度を算出し、算出した目標回転速度を駆動制御手段31に通知する。駆動制御手段31は、回転速度算出手段36から通知された目標回転速度となるように巻取りモータ11を制御する。
【0035】
次に、巻取りロール7の外径を算出して、巻取りモータ11の目標回転速度を設定するまでの制御部20の処理について、具体的に説明する。まず、図4を参照しながら、巻取りロール7の外周の変化に応じて巻取りモータ11の回転速度を変更する理由について説明する。
図4には、巻取りロール7の外径と、巻取りモータ11の回転速度との関係を示す。巻取りロール7に巻き取られる用紙6の量が多くなるに従って、巻取りロール7の外径も大きくなるので、図4に示すように、巻取りモータ11に必要な回転速度は、巻取りロール7に巻き取られる用紙6の量が多くなるに従って小さくなる。特に、本実施例では、巻取りロール7にトルクリミッタギア10を設けているので、巻取りロール7に巻き取られる用紙6の増加に伴って巻取りモータ11の回転速度を最適に制御しないと、巻取りモータ11に無駄な回転が生じ、消費電力の無駄となる。このため、制御部20は、巻取りロール7の外径を算出して、巻取りモータ11の回転速度が最適な回転速度となるように制御する。
【0036】
まず、制御部20は、サーマルヘッド2と巻取りロール7との間で用紙6にたるみができないように、巻取りモータ11を逆回転させて巻取りロール7に用紙を巻き取る。次に、制御部20は、印字モータ4を所定ステップ駆動して、プラテンローラ3に、一定長さの用紙6を搬送させる。用紙6は、サーマルヘッド2とプラテンローラ3との接触位置から巻取りロール7側に搬送される。このとき搬送された用紙長をLとする(ここまでが、駆動制御手段31の処理動作)。また、制御部20は、巻取りモータ11を駆動して巻取りロール7に用紙6を巻取りながら、回転センサ12から出力されるパルス信号のパルス数nをカウントする。制御部20は、用紙長Lの用紙を巻取りロール7に巻き取ったときのパルス信号のカウント数nをRAM23に記録する。
【0037】
印字モータ4の1ステップ当たりの回転角をM(ラジアン)とし、用紙長Lの用紙を搬送するための印字モータ4のステップ数をm1とする。プラテンローラ3の外径Da(RAM23に記録している)は既知であるので、制御部20は、用紙長Lを以下に示す式(2)に従って算出する。なお、式(2)に従って、用紙長Lを算出する処理が第1算出手段32の処理動作に該当する。
2π:πDa=Q1×(M×m1):L
従って、L=Q1×(M×m1)×Da/2・・・(2)
なお、Q1は、印字モータ4とプラテンローラ3との回転数の比を示す。
Q1=(プラテンローラ3の回転数/印字モータ4の回転数)
【0038】
また、制御部20は、用紙長Lの用紙を巻取りロール7に巻き取ったときの回転センサ12の出力パルス数nを用いて、用紙長Lを以下に示す式(3)から求める。なお、カウント手段33のカウントしたカウント数nを使用し、式(3)に従って用紙長Lを算出する処理が、第2算出手段34の処理動作に該当する。
2π:πDb=(2π/K)×n:L
従って、L=n×πDb/K・・・(3)
なお、Dbは、巻取りロール7の外径を示す。また、πDbは、巻取りロール7の周長を表す。従って、(3)式は、巻取りロール7の周長を基準長さとし、巻取りロール7の巻き取った用紙長Lがこの基準長さの何倍になっているかを示している。
【0039】
式(2)及び式(3)から、巻取りロール7の外径は、以下に示す式(4)のように求めることができる。なお、式(4)を求める処理が、第3算出手段35の処理となる。
Db={(Q1×M×m1×Da)/(2π×n)}×K・・・(4)
【0040】
また、印字モータ4とプラテンローラ3との回転数の比をQ1、巻取りモータ11と巻取りロール7の回転数の比をQ2とすると、印字モータ4の回転速度V1で搬送した用紙6を巻き取るための巻取りモータ11の回転速度V2は、以下に示す式(5)で求めることができる。
V2={(Q1×Da)/(Q2×Db)}×V1・・・(5)
なお、Q2=(巻取りロール7の回転数/巻取りモータ11の回転数)とする。また、巻取りモータ11の回転速度V2で巻取りモータ11を駆動しても、トルクリミッタギア10は動作しない。
【0041】
用紙6に張力を働かせたまま巻取りロール7に巻き取られるようにするためには、巻取りモータ11の回転速度(s-1)を、式(5)に示す巻取りモータ11の回転速度よりも少し大きく設定し、トルクリミッタギア10を動作させた状態で、巻取りロール7に用紙6を巻取るようにすればよい。そこで、制御部20は、算出した巻取りモータ11の回転速度V2よりも所定値(=α)だけ大きく設定した値を、巻取りモータ11の目標回転速度VT[s-1]に設定する。なお、式(6)に従って巻取りモータ11の目標回転速度VT[s-1]を算出する処理が、回転速度算出手段36の処理となる。
VT=V2+α={(Q1×Da)/(Q2×Db)}×V1+α・・・(6)
なお、αの値は、任意に設定することができるが、巻取りモータ11の回転速度が大きすぎると、巻取りモータ11で消費する電力が大きくなってしまうので、トルクリミッタギア10が動作する最低の値に設定するとよい。
【0042】
巻取りモータ11の回転速度が、式(6)に示す目標回転速度VTとなるように制御部20が制御することで、用紙6に張力を働かせながら、巻取りロール7に用紙6を巻取ることができる。また、制御部20が巻取りロール7の外径Dbに応じて、巻取りモータ11の回転速度が最適となるように制御することで、巻取りモータ11の無駄な回転を無くすことができる。なお、制御部20は、印字モータ4を、予め設定されたステップ数(以下、Cとする)駆動すると、上述した処理により、再度、巻取りモータ11の目標回転速度VTを設定する。
【0043】
なお、巻取りモータ11と印字モータ4とを停止させた状態で、印字モータ4を逆回転させて用紙6を逆送することで、巻取りロール7の外径Dbを算出してもよい。この場合、まず、巻取りモータ11を停止させた状態で、印字モータ4を逆方向に回転させ、サーマルヘッド2と巻取りロール7の間で用紙の緩みがないようにする。続けて、印字モータ4を逆方向に回転させ、所定長の用紙を給紙ロール5側へ搬送すると、巻取りロール7に巻き取られた用紙がサーマルヘッド2の方向に引っ張られるため、巻取りロール7が回転する。そして、回転センサ12が出力する巻取りロール7のパルス数と、印字モータ4のステップ数m1とを用いて、上記の式(4)から巻取りロール7の外径Dbを算出する。
【0044】
次に、図5に示すフローチャートを参照しながら、本実施例の処理手順を説明する。
制御部20は、起動すると、まず、変数m1、m2、nの値を初期化する(ステップS1)。変数m1は、印字モータ4のステップ数をカウントする変数である。また、変数m2は、巻取りモータ11のステップ数をカウントする変数である。変数nは、回転センサ12から送られるパルス信号のパルス数をカウントする変数である。
【0045】
次に、制御部20は、RAM23から巻取りロール7の外径値Dbを読み出す(ステップS2)。この巻取りロール7の外径Dbは、前回の印字動作の終了時にRAM23に記録しておいたものである。
【0046】
次に、制御部20は、この巻取りロール7の外径Dbと、印字モータ4の回転速度V1とに基づいて、巻取りモータ11の目標回転速度VTを設定し、印字モータ4を駆動すると共に、設定した目標回転速度VTで巻取りモータ11を駆動する(ステップS3)。制御部20は、巻取りモータ11の目標回転速度VTを上述した式(6)によって求める。
【0047】
次に、制御部20は、印字モータ4及び巻取りモータ11を駆動しながら、印字モータ4及び巻取りモータ11のステップ数m1,m2と、回転センサ12から送られるパルス信号のパルス数nとをカウントする(ステップS4)。
【0048】
制御部20は、印字モータ4のステップ数m1が予め設定された設定値Cよりも大きくなると(ステップS5/YES)、現在の巻取りロール7の外径Dbを算出する(ステップS6)。巻取りロール7の外径Dbは、上述した(4)によって求めることができる。巻取りロール7の外径Dbを求めると、制御部20は、巻取りモータ11の目標回転速度VTを上述した式(6)によって求める。
【0049】
次に、制御部20は、変数m1、m2、nの値を初期化すると共に(ステップS8)、巻取りモータ11の回転速度が目標回転速度VTとなるように制御する(ステップS9)。
【0050】
その後、制御部20は、印刷が終了したか否かを判定し(ステップS10)、印刷が終了していない場合には(ステップS10/NO)、ステップS4からの処理を繰り返す。また、印刷が終了したと判定すると、制御部20は、終了直前に算出した巻取りロール7の外径DbをRAM23に記録する(ステップS11)。
【0051】
以上のように本実施例は、巻取りモータ11の回転速度を、トルクリミッタギア10が動作する最低限の回転速度に設定することで、用紙6に張力を働かせながら巻取りロール7に用紙6を巻取ることができる。また、巻取りロール7の外径Dbに合わせて、最適な巻取りモータ11の回転速度に設定しているので、巻取りモータ11の無駄な回転を無くすことができる。
【0052】
上述した実施例は、本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 サーマルプリンタ
2 サーマルヘッド(印刷部)
3 プラテンローラ(搬送ローラ)
4 印字モータ(搬送ローラの駆動モータ)
5 給紙ロール(用紙ロール)
6 用紙
7 巻取りロール
10 トルクリミッタギア
11 巻取りモータ(巻取りロールの駆動モータ)
12 回転センサ
20 制御部(駆動制御手段、ロール径算出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に印刷を行う印刷部と、
用紙ロールに巻かれた用紙を前記印刷部へと搬送する搬送ローラと、
前記印刷部で印刷され、前記搬送ローラで搬送された用紙を巻き取る巻取りロールと、
前記巻取りロールを回転駆動する巻取りロール駆動モータと、
巻き取った用紙を含む前記巻取りロールの径を算出するロール径算出手段と、
前記巻取りロールの回転軸にかかるトルクが設定値以上になると、前記巻取りロールの回転軸にかかるトルクを低減させるトルクリミッタと、
前記ロール径算出手段の算出した前記巻取りロールの径に基づいて、前記巻取りロール駆動モータの回転速度を、前記トルクリミッタが動作する、前記巻取りロール駆動モータの最低回転速度となるように制御する駆動制御手段と、
を有することを特徴とする熱転写記録装置。
【請求項2】
前記ロール径算出手段は、前記駆動制御手段に前記搬送ローラの駆動モータを所定ステップ駆動させて、前記搬送ローラに、前記用紙ロールに巻かれた用紙を前記印刷部へと搬送させ、
前記搬送ローラの駆動モータの1ステップ当たりの回転角度と、前記搬送ローラの駆動モータを駆動したステップ数と、前記搬送ローラの駆動モータと前記搬送ローラとの回転数の比とに基づいて、前記搬送ローラの搬送した用紙長を、前記搬送ローラの周長を基準長さとして求める第1算出手段と、
前記巻取りロール駆動モータを前記駆動制御手段に駆動させて、搬送された用紙を前記巻取りロールに巻取ると共に、前記巻取りロールの所定角度の回転ごとにパルス信号を出力するセンサの出力パルス信号数をカウントするカウント手段と、
前記センサが1パルス信号を出力する前記巻取りロールの回転角度と、前記センサの出力パルス信号数とに基づいて、前記搬送ローラの搬送した用紙長を、前記巻取りロールの周長を基準長さとして求める第2算出手段と、
前記第1算出手段で算出した用紙長と前記第2算出手段で算出した用紙長とに基づいて、前記巻取りロールの径を算出する第3算出手段とをさらに有し、
前記駆動制御手段により、前記第3算出手段で算出した前記巻取りロールの径に基づいて前記巻取りロール駆動モータの回転速度を制御させることを特徴とする請求項1記載の熱転写記録装置。
【請求項3】
前記ロール径算出手段は、前記トルクリミッタが動作する、前記巻取りロール駆動モータの最低回転速度となるように、前記第3算出手段で算出した前記巻取りロールの径に基づいて前記巻取りロール駆動モータの最低回転速度を算出し、算出した最低回転速度に基づいて、前記駆動制御手段に、前記巻取りロール駆動モータの駆動を制御させる回転速度算出手段をさらに有することを特徴とする請求項2記載の熱転写記録装置。
【請求項4】
用紙を搬送する搬送ローラの駆動モータを駆動させて、前記搬送ローラに、前記用紙ロールに巻かれた用紙を印刷部へと搬送させるステップと、
前記搬送ローラに搬送された用紙を巻取る巻取りロールの駆動モータを駆動させて、前記印刷部を通過した用紙を前記巻取りロールに巻き取るステップと、
巻き取った用紙を含む前記巻取りロールの径を算出するステップと、
前記巻取りロールの回転軸にかかるトルクが設定値以上になると、前記巻取りロールの回転軸にかかるトルクを低減させるトルクリミッタが動作する前記巻取りロールの駆動モータの最低回転速度となるように、算出した前記巻取りロールの径に基づいて、前記巻取りロールの駆動モータの回転速度を設定するステップと、
を有することを特徴とする熱転写記録装置の制御方法。
【請求項5】
前記巻取りロールの径を算出するステップは、前記搬送ローラの駆動モータを所定ステップ駆動させて、前記搬送ローラに、用紙ロールに巻かれた用紙を搬送させる搬送ステップと、
前記搬送ローラの駆動モータの1ステップ当たりの回転角度と、前記搬送ローラの駆動モータを駆動したステップ数と、前記搬送ローラの駆動モータと前記搬送ローラとの回転数の比とに基づいて、前記搬送ローラの搬送した用紙長を、前記搬送ローラの周長を基準長さとして求める第1算出ステップと、
前記巻取りロールの駆動モータを駆動させて、搬送された用紙を前記巻取りロールに巻取ると共に、前記巻取りロールの所定角度の回転ごとにパルス信号を出力するセンサの出力パルス信号数をカウントするカウントステップと、
前記センサが1パルス信号を出力する前記巻取りロールの回転角度と、前記センサの出力パルス信号数とに基づいて、前記搬送ローラの搬送した用紙長を、前記巻取りロールの周長を基準長さとして求める第2算出ステップと、
前記第1算出ステップで算出した用紙長と前記第2算出ステップで算出した用紙長とに基づいて、前記巻取りロールの径を算出する第3算出ステップと、
前記第3算出ステップで算出した前記巻取りロールの径に基づいて、前記巻取りロールの駆動モータの回転速度を制御する駆動制御ステップと、
を有することを特徴とする請求項4記載の熱転写記録装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−88394(P2011−88394A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−245028(P2009−245028)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】