説明

熱酸化安定性が改良されたポリエステル溶融相組成物およびその製造方法、ならびにその使用方法

2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマーの残基がその内部に取り込まれた溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル、およびチタンを含有するポリエステル組成物を開示する。さらに、開示されるポリエステル組成物を含有する物品や、そのようなポリエステル組成物を製造する方法であって、エチレングリコール、テレフタル酸およびテレフタル酸の誘導体から選択される少なくとも1つの酸、ならびに2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマーを含んでなる混合物を形成する工程と、この混合物を、チタンの存在下で反応させて、溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルを得る工程とを含む製造方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2008年9月18日出願の米国特許仮出願第61/098,043号の優先権を主張するものであり、参照することによって、その開示事項の全体が本明細書の一部とされる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ポリエステル組成物に関し、より詳細には、2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマーの残基がその内部に取り込まれた溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルを含有するポリエステル組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
成型に適する特定のポリエステル組成物は、飲料容器の製造などのパッケージングに有用である。例えば、いくつかのポリ(エチレンテレフタレート)ポリマー(「PET」)は、この目的に有用であり、PETは、その軽量性、透明性、および化学的に不活性であるため、よく用いられるようになってきた。
【0004】
PETは、通常、2段階の工程を経て製造されるものであり、最初の溶融相の段階、およびこれに続く固相の段階である。溶融相の段階には、通常、3フェーズのプロセスである。第一に、エステル化ステージでは、エチレングリコールを、陽圧および250〜280℃の温度下にて、スラリー中でテレフタル酸と反応させて、PETオリゴマーを得る。次に、このオリゴマーを僅かに高い温度、通常は260〜290℃の温度まで加熱し、陽圧を緩やかな減圧、通常は20〜100mmに変更して、プレポリマーを得る。最後に、圧力を0.5〜3.0mmまで低下させながら、場合によっては温度を上昇させることにより、このプレポリマーを最終ポリマーへと変換する。この3フェーズの溶融プロセスが完了後、ポリマーステージの終了時のペレットは、通常、固相プロセスによって分子量が高められる。通常、溶融相および固相プロセスステージは共に、アンチモン触媒の存在下にて実施される。
【0005】
しかし、アンチモンは問題となる場合がある。アンチモンをポリエステルのための重縮合触媒として用い、例えば、このポリエステルをボトルへ成型する場合、一般的にボトルは濁ってしまい、金属アンチモンへ還元されるアンチモン触媒によって、多くの場合暗い外観を有する。
【0006】
アンチモンを用いることの欠点、およびその他の要因により、アンチモンを用いない溶融相のみのプロセスの開発が行われた。しかし、そのような方法で製造されたPETは、酸化安定性が低下する場合があり、PETを約165℃またはこれを超える温度の空気に接触させると、分子量が低下する可能性がある。これは、PETは加工前に乾燥させなければならず、PETの乾燥が通常165℃以上で行われることから、問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本技術分野では、溶融相のみのプロセスによって製造可能であり、より高い酸化安定性を持つPETが依然として求められている。安定性が高まれば、より高い温度での乾燥が可能となるであろう。さらに、続いての分子量低下を相殺するためにより高い分子量のPETを製造するという必要性がなくなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある実施態様においては、本発明は、溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル中の100モル%を構成するジカルボン酸残基の総量に対して約0.1モル%から約10モル%の量で2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマー残基がその内部に取り込まれた溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル、およびチタンを含有するポリエステル組成物に関する。
【0009】
別の実施態様においては、本発明は、100モル%を構成する溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル中のジカルボン酸残基の総量に対して約0.1モル%から約3モル%の量で2,6‐ナフタレンジカルボン酸の残基がその内部に取り込まれた溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル、およびポリエステル組成物の総重量に対して約3ppmから約100ppmのチタン原子の量で存在するチタン、を含有するポリエステル組成物に関する。
【0010】
さらに別の実施態様においては、本発明は、100モル%を構成する溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル中のジカルボン酸残基の総量に対して約0.1モル%から約3モル%の量で2,6‐ナフタレンジカルボン酸の残基がその内部に取り込まれた溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル、および、物品の総重量に対して約3ppmから約100ppmのチタン原子の量で存在するチタン、を含有する物品に関する。
【0011】
別の実施態様においては、本発明は、溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルを製造する方法であって、エチレングリコール、テレフタル酸およびテレフタル酸誘導体から選択される少なくとも1つの酸、ならびに2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマー、を含んでなる混合物を形成する工程と、チタンの存在下にてこの混合物を反応させて、溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルを得る工程とを含んでなり、前記2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマーが、100モル%を構成する混合物中のジカルボン酸残基の総量に対して約0.1モル%から約3モル%の量で存在する、方法に関する。
【0012】
本発明のさらなる実施態様は、本明細書にて開示され、特許請求の範囲に記載される通りである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、添付の図面を含む以下の本発明の詳細な説明を参照し、提供される実施例を参照することにより、より容易に理解することができる。プラスチック物品を加工するための具体的なプロセスおよびプロセス条件は様々であり得ることから、本発明は、実施例で述べる具体的なプロセスおよび条件に限定されるものではないことと理解すべきである。また、用いた専門用語は、特定の態様の説明にのみ用いられるものである、限定することを意図するものではないことも理解すべきである。
【0014】
明細書および特許請求の範囲において用いられる単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈から明らかにそうでないことが示されない限りは、複数の対象物を含む。例えば、1つの「プリフォーム」、「容器」、もしくは「ボトル」、または1つの「物品」という言及は、複数のプリフォーム、容器、ボトル、または物品を含むことを意図している。
【0015】
「含んでなる(comprising)」または「含有する(containing)」は、少なくとも名称を挙げる化合物、要素、粒子などがその組成物または物品中に存在する必要があるが、その他の化合物、物質、粒子などの存在は、そのようなその他の化合物、物質、粒子などが名称を挙げたものと同一の機能を有するものである場合でも、除外されるものではないことを意味する。
【0016】
また、1または2つ以上の製造工程の言及は、これらの明確に特定される工程の前、後、または間に追加の製造工程が存在することを、そのような製造工程が請求項によって明確に除外されない限りにおいて、排除するものではないことも理解すべきである。
【0017】
範囲の表現は、その範囲内のすべての整数およびその分数を含む。製造方法における温度または温度範囲、または反応混合物もしくは溶融物の温度または温度範囲、または溶融物に適用される、またはポリマーのもしくは適用されるポリマーの温度または温度範囲の表現は、すべての場合において、示された温度、またはその範囲内の連続的もしくは不連続的ないずれかの温度に反応条件が設定されることを意味し、また、反応混合物、溶融物、またはポリマーにその特定の温度を掛けることを意味する。
【0018】
金属と共に用いられる「原子」とは、ポリマーまたは物質の組成物に添加されるか、またはそこに存在するかに関わらず、いかなる酸化状態、いかなる形態学的状態、いかなる構造状態、およびいかなる化学状態を占める金属原子をも意味する。
【0019】
「溶融相」、「溶融相生成物」、および「溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル」などの用語は、溶融相反応、およびそのような反応の生成物を意味することを意図している。溶融相生成物は、ペレットもしくはチップの形態で単離してよく、または溶融物として溶融相仕上げ機(meltーphase finishers)から押出し機へ直接供給して、ボトルプリフォームなどの成形物品を作製するための金型へ送ってもよい(例えば「成型用溶融物」または「プリフォーム用溶融物」)。溶融相生成物は、特に断りのない限り、アモルファスペレット、結晶ペレット、固体状ペレット、プリフォーム、シート、ボトル、トレイ、ジャーなどを含むいかなる形態または形状を取ってもよい。ある実施態様においては、本発明による有用である溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルは、固相での分子量増加を経ていないもの、すなわち、実質的にすべての分子量増加が溶融相で起こるものに限定され得る。当業者は、分子量増加の推定にインヘレント粘度(inherent viscosity)を用い、従って、完全に溶融相のみで作製され、続く固相処理を行わないポリエステルが、使用時に、溶融相重合で達成されるインヘレント粘度を実質的に超えないインヘレント粘度を持つようにする。このようなポリエステルは、「溶融相単独」ポリエステル("meltーphase only" polyesters)として説明するか、またはそのように見なしてよい。
【0020】
溶融相生成物で言うところの「溶融物」という用語は、ポリエステルポリマーを作製するための溶融相におけるいずれかの時点での反応を受ける流動物を意味する総合的な広い用語であり、その流動物の粘度が通常は重要ではない場合であってもエステル化の工程における流動物、ならびに、プレポリマーおよび仕上げ工程を含む重縮合工程における、各工程の間、および溶融物が固化する時点まで、の流動物も含む。「溶融物」という用語は、固相での分子量増加を受けていないポリエステル生成物を意味することを意図しているが、溶融相生成物は当然、所望により、例えばインヘレント粘度の増加によって明示される固相での分子量増加を受けてよく、その後は、もはや「溶融物」とは見なされない。
【0021】
固有粘度(intrinsic viscosity)は、ポリマーの比粘度の無限希釈における極限値である。これは、以下の式で定義される。
ηint=limC→0(ηsp/C)=limC→0ln(η/C)
(式中、
ηint=固有粘度
η=相対粘度=t/t
ηsp=比粘度=ηー1
である。)
【0022】
機器較正は、標準レファレンス物質の反復試験を行い、次に適切な数式を当てはめて「許容される」I.V.値を得ることを含む。
較正係数=(レファレンス物質の許容されるIh.V.)/(3回の反復測定の平均)
補正Ih.V.=算出Ih.V.×較正係数
固有粘度(It.V.またはηint)は、以下のビルメイヤーの式:
ηint=0.5[e0.5×補正Ih.V.−1]+(0.75×補正Ih.V.)
を用いて算出することができる。
【0023】
インヘレント粘度(I.V.)は、測定された溶液粘度から算出される。このような溶液粘度測定は、以下の式で表される。
IV=ηinh=[ln(t/t)]/C
(式中、
ηinh=60%フェノールおよび40%1,1,2,2−テトラクロロエタンの100mL中0.50gのポリマー濃度にて25℃でのインヘレント粘度
ln=自然対数
=キャピラリー管を通るサンプルのフロー時間
=キャピラリー管を通る溶媒ブランクのフロー時間
C=溶媒100mLあたりのグラム数で表したポリマー濃度(0.50%)
である。)
本明細書において、インヘレント粘度(IV)測定は、上述の条件下で行った(25℃、60%フェノールおよび40%1,1,2,2−テトラクロロエタンの100mL中0.50gのポリマー濃度)。
【0024】
、a、およびbの色座標は、以下の方法に従い、透明射出成型ディスクで測定する。MiniーJectorモデル55−1を用いて直径40mm、厚さ2.5mmの円形ディスクを成型する。成型前に、ペレットの乾燥を120分以上150分以下の時間、170℃に設定した強制空気機械対流オーブン(forced air mechanical convection oven)で行う。MiniーJectorの設定は以下の通りである:リアヒーターゾーン=275℃;2つのフロントヒーターゾーン=285℃;サイクル時間=32秒;および射出タイマー30秒。透明射出成型ディスクの色は、HunterLab UltraScan XE(登録商標)分光光度計を用いて測定する。HunterLab UltraScan XE(登録商標)分光光度計の操作は、D65発光光源を用い、観測角10°、積分球(integrating sphere geometry)によって行う。HunterLab UltraScan XE(登録商標)分光光度計は、ゼロ点合わせ、標準化、UV較正、およびコントロールによる確認を行う。色測定は、全透過(TTRAN)モードで行う。L値は、サンプルの透明度/不透明度を表す。「a」値は、サンプルの赤味(+)/緑味(−)を表す。「b」値は、サンプルの黄味(+)/青味(−)を表す。
【0025】
別の実施態様として、色値は、結晶化ポリエステルペレット、または3mmスクリーンを透過する粉末へ粉砕された結晶化ポリマーで測定される。ポリエステルペレットまたは粉末へ粉砕されたポリマー試料は、15%の最小結晶化度を有する。HunterLab UltraScan XE(登録商標)分光光度計の操作は、D65発光光源を用い、観測角10°、積分球によって行う。HunterLab UltraScan XE(登録商標)分光光度計は、ゼロ点合わせ、標準化、UV較正、およびコントロールによる確認を行う。色測定は、反射(RSIN)モードで行う。結果は、CIE1976 L、a、b(CIELAB)カラースケールで表す。「L」値は、サンプルの明度/暗度を表す。「a」は、サンプルの赤味(+)/緑味(ー)を表す。「b」は、サンプルの黄味(+)/青味(−)を表す。
【0026】
ある実施態様においては、本発明は、溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル中の100モル%を構成するジカルボン酸残基の総量に対して約0.1モル%から約10モル%の量で2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマー残基がその内部に取り込まれた溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルを含有するポリエステル組成物に関する。別の選択肢として、2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマー残基の量は、約0.1モル%から約3モル%、または約0.5モル%から約2.5モル%であってよく、いずれの場合も、溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル中の100モル%を構成するジカルボン酸残基の総量に基づく。
【0027】
他の実施態様においては、2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマー残基の量は、少なくとも0.05モル%、または少なくとも0.1モル%、または少なくとも0.25モル%であってよい。さらに、2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマー残基の量は、約3モル%まで、または5モル%まで、または10モル%までであってよく、いずれの場合も、溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル中の100モル%を構成するジカルボン酸残基の総量に基づく。
【0028】
本発明によると、溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルは、例えば、溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル中の100モル%を構成するジカルボン酸残基の総量に対して少なくとも90モル%の量で存在するテレフタル酸の残基、および溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル中の100モル%を構成するジオール残基の総量に対して少なくとも90モル%の量で存在するエチレングリコールの残基を含んでなっていてよい。別の実施態様においては、テレフタル酸の残基は、溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル中の100モル%を構成するジカルボン酸残基の総量に対して、少なくとも92モル%、または少なくとも95モル%の量で存在してよく、また、エチレングリコールの残基は、溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル中の100モル%を構成するジカルボン酸残基の総量に対して、少なくとも92モル%、または少なくとも95モル%の量で存在してよい。
【0029】
本発明による有用な溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルは、2または3つ以上の縮合芳香環を有する1または2つ以上のモノマーを含有し、例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸;2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル;9−アントラセンカルボン酸;2,6−アントラセンジカルボン酸;2,6−アントラセンジカルボン酸ジメチル;1,5−アントラセンジカルボン酸;1,5−アントラセンジカルボン酸ジメチル;1,8−アントラセンジカルボン酸;または1,8−アントラセンジカルボン酸ジメチルである。従って、ある実施態様では、本発明は、2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマーが、例えば約0.1モル%から約3モル%の量で存在する2,6−ナフタレンジカルボン酸を含んでなるポリエステル組成物に関する。別の態様として、2,6−ナフタレンジカルボン酸は、例えば約0.5モル%から約2.5モル%の量で存在してよく、または2もしくは3つ以上の縮合芳香環を有する1もしくは2つ以上のモノマーに関して本明細書の他所で開示するような量で存在してよい。
【0030】
本発明のポリエステル組成物は、チタンをさらに含んでなる。
【0031】
本発明のポリエステル組成物は、リン酸の残基をさらに含んでいてもよい。
【0032】
本発明のある実施態様においては、ポリエステル組成物は、触媒効果を有するチタン以外の金属を含んでいてもよく、また、例えば、アンチモンまたはゲルマニウムを含んでいなくてもよい。そのような組成物およびその中のポリエステルは、従って、アンチモン、もしくはゲルマニウムまたはその両方の非存在下で製造してよい。
【0033】
ポリエステル組成物のチタンは、本明細書の他の箇所で述べるように、種々の形態で提供されてよく、また、種々の量で提供されてよい。例えば約1ppmから約150ppmのチタン原子、または3ppmから約100ppmのチタン原子、または5ppmから60ppmのチタン原子の量である。これらの量はいずれの場合もポリエステル組成物の総重量に対する量である。
【0034】
別の実施態様においては、チタンは、ポリエステル組成物の総重量に対して約5ppmから約100ppmのチタン原子の量で存在してよい。
【0035】
さらに別の実施態様においては、本発明のポリエステル組成物は、いずれの場合もポリエステル組成物の総重量に対して、約10ppmから約300ppmのリン原子、または12ppmから250ppm、または15ppmから200ppmの量で存在するリンをさらに含んでいてもよい。別の実施態様として、存在するリンの量は、チタンに対するリンのモル比で規定してよい。従って、例えば、チタンの1モルに対して約0.25モルのリンから、チタンの1モルに対して約3モルのリンの範囲であってよい。
【0036】
リンは、1または2つ以上のリン原子を有するリン化合物として提供されてよく、特に、リン酸トリエステル、酸性リン化合物またはそのエステル誘導体、および酸性リン含有化合物のアミン塩である。
【0037】
リン化合物の具体例としては、リン酸、ピロリン酸、亜リン酸、ポリリン酸、カルボキシホスホン酸、アルキルホスホン酸、ホスホン酸誘導体、ならびにその酸性塩および酸性エステルおよび誘導体の各々が挙げられ、リン酸モノ−およびジ−エステルなどの酸性リン酸エステル、ならびにリン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリブトキシエチル、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)、リン酸トリエステルオリゴマー、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリトリル、リン酸(トリス)エチレングリコール、ホスホノ酢酸トリエチル、ホスホン酸ジメチルメチル、メチレンジホスホン酸テトライソプロピル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、もしくは2−エチルヘキサノールとリン酸とのモノ−、ジ−、およびトリエステル、または各々の混合物などの非酸性リン酸エステル(例:リン酸トリエステル)、が含まれる。
【0038】
さらに別の実施態様においては、溶融相重合反応から得られた本発明の溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルのI.V.は、少なくとも0.72dL/g、または少なくとも0.75dL/g、または少なくとも0.78dL/g、または少なくとも0.80dL/g、または本明細書の他の箇所で述べるような値であってよい。このようなポリエステルは、この後、インヘレント粘度の上昇で示される固相でのさらなる分子量増加を受けてよく、または、別の実施態様として、その分子量増加の実質的にすべてが溶融相で行われてもよい。従って、溶融相重合中に達成された本発明の溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルのI.V.は、少なくとも0.72dL/g、または少なくとも0.75dL/g、または少なくとも0.78dL/g、または少なくとも0.80dL/g、または本明細書の他の箇所で述べるような値であってよい。インヘレント粘度はこの後、続いての処理に起因して、特に温度を上昇させた場合に低下する場合があり、従って、この続いての分子量の低下を相殺するために、より高いインヘレント粘度が望ましいであろう。
【0039】
さらに別の実施態様においては、100モル%を構成する溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル中のジカルボン酸残基の総量に対して約0.1モル%から約3モル%の量で2,6−ナフタレンジカルボン酸の残基がその内部に取り込まれた溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル、ポリエステル組成物の総重量に対して約5ppmから約60ppmのチタン原子の量で存在するチタン、を含有するポリエステル組成物が提供される。
【0040】
さらに別の実施態様においては、100モル%を構成する溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル中のジカルボン酸残基の総量に対して約0.1モル%から約3モル%の量で2,6−ナフタレンジカルボン酸の残基がその内部に取り込まれた溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル、物品の総重量に対して約5ppmから約60ppmのチタン原子の量で存在するチタン、を含有する物品が提供される。このような物品は、例えば、ボトル、プレフォーム、ジャー、またはトレイの形態であってよい。
【0041】
さらに別の実施態様においては、本発明は、溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルを製造する方法であって、エチレングリコール、テレフタル酸およびテレフタル酸誘導体から選択される少なくとも1つの酸、ならびに2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマー、を含んでなる混合物を形成する工程と、チタンの存在下にてこの混合物を反応させて溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルを得る工程とを含んでなり、であって、ここで、2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマーが、100モル%を構成する混合物中のジカルボン酸残基の総量に対して約0.1モル%から約3モル%の量で存在する、方法に関する。別の実施態様として、2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマーは、約0.5モル%から約2.5モル%の量で存在してよい。
【0042】
さらに別の実施態様においては、この混合物は、100モル%を構成する混合物中のジカルボン酸残基の総量に対して少なくとも90モル%の量で存在するテレフタル酸を含んでいてもよく、また、エチレングリコールは、100モル%を構成する混合物中のジオールの総量に対して少なくとも90モル%の量で混合物中に存在していてよい。
【0043】
さらに別の実施態様においては、混合物に提供される2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマーは、2,6−ナフタレンジカルボン酸;2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル;9−アントラセンカルボン酸;2,6−アントラセンジカルボン酸;2,6−アントラセンジカルボン酸ジメチル;1,5−アントラセンジカルボン酸;1,5−アントラセンジカルボン酸ジメチル;1,8−アントラセンジカルボン酸;または1,8−アントラセンジカルボン酸ジメチルの1または2つ以上を含んでよく、特には、例えば、混合物中に例えば約0.5モル%から約2.5モル%の量で存在する2,6−ナフタレンジカルボン酸であってよい。
【0044】
さらに別の実施態様においては、チタンは、いずれの場合も得られた溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルの総重量に対して、約1ppmから約200ppmのチタン原子、または1ppmから150ppmのチタン原子、または5ppmから60ppmのチタン原子の量で反応混合物中に存在していてよい。
【0045】
さらに別の実施態様においては、チタンは、得られた溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルの総重量に対して約5ppmから約60ppmのチタン原子の量で混合物へ提供してよい。
【0046】
さらに別の実施態様においては、本発明の製造方法は、得られた溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルの総重量に対して約10ppmから約300ppmのリンの量で、または本明細書の他の箇所にて述べるようにして、得られた溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルへリンを添加する工程をさらに含む。
【0047】
さらなに別の実施態様においては、得られた溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルのI.V.は、少なくとも0.72dL/g、または少なくとも0.78dL/g、または本明細書でさらに述べるような値であってよい。さらに別の実施態様においては、本発明の製造方法は、固相重合工程を除外してよく、従って、所望により、固相にて分子量が大きく増加した組成物を除外してよい。本実施態様では、I.V.は、溶融相のみで達成されていてよい。
【0048】
発明者らは、予想外なことに、ホモポリマーであってもコポリマーであっても、ポリエチレンテレフタレートポリエステルを製造するための溶融相工程において、とりわけ、触媒としてのチタンを含有する、または本願との同時係属出願に記載および請求されるようにアルミニウムおよびアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を含有することを例とするアンチモンの非存在下で行われる工程において、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの2または3つ以上の縮合芳香環を有するコモノマーを含有させることにより、このようなPET樹脂の熱酸化安定性が大きく向上することを見出した。具体的には、空気乾燥模擬実験における分子量低下の低減が見られる。
【0049】
発明者らは、アンチモンフリー触媒系を用いて作製される組成物は、通常用いられる温度における顧客の乾燥機での熱酸化安定性が悪いことを見出した。この不安定性は、信頼のおける処理および欠陥のないプレフォーム製造を確実に行うために必要である温度で乾燥した場合に、ポリマーの分子量低下、および変色を引き起こす。実施例で示すように、2または3つ以上の縮合芳香環を有するコモノマーを含有させることにより、乾燥模擬実験における分子量の低下量が大きく低減される。
【0050】
発明者らは、少なくとも1つのチタン源、および主鎖に2または3つ以上の縮合芳香環を有するコモノマーを、ポリエチレンテレフタレートポリエステルを製造するための溶融相工程に組み込むことにより、熱酸化安定性が向上したポリエステル生成物が得られることを見出した。許容されるコモノマーの例としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、9−アントラセンカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸ジメチル、1,5−アントラセンジカルボン酸、1,5−アントラセンジカルボン酸ジメチル、1,8−アントラセンジカルボン酸、1,8−アントラセンジカルボン酸ジメチル、ならびにアントラセン、ナフタレン、フェナントレン、およびピレンの同様の誘導体が挙げられる。
【0051】
本発明によるポリエステル組成物は、十分な分子量を維持したまま、標準的な乾燥温度での乾燥が可能である。
【0052】
本発明の溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルは、少なくとも1つの溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルを含有する。一態様では、溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルは、バージン(例えばリサイクルされたものではない)ポリエチレンテレフタレートポリエステルである。一実施態様では、溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルは、いずれの消費済みリサイクルポリエチレンテレフタレートも含まない。一実施態様では、この少なくとも1つのポリエチレンテレフタレートポリエステルは、いずれの消費前(pre-consumer)リサイクルポリエチレンテレフタレートも含まいない。
【0053】
1つの局面では、溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルは、
(a)少なくとも1つのカルボン酸成分の残基であって、少なくとも1つのカルボン酸成分の残基の100モル%に対して、この残基の少なくとも90モル%がテレフタル酸の残基である、カルボン酸成分の残基と、
(b)少なくとも1つのヒドロキシル成分の残基であって、少なくとも1つのヒドロキシル成分の残基の100モル%に対して、この残基の少なくとも90モル%がエチレングリコールの残基である、ヒドロキシル成分の残基と、
を含んでなる。一実施態様では、溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルは、イソフタル酸の残基、ジエチレングリコールの残基、1,4‐シクロヘキサンジオール(CHDM)の残基、およびこれらの誘導体の残基から選択される残基を最大10モル%までさらに含んでなる。イソフタル酸の残基についての限定されない代表的な範囲は、全二酸成分に対して0.5〜5.0モル%であり、ジエチレングリコールの残基については、ポリマーの重量に対して0.5〜4.0重量%であり、およびCHDM残基については、グリコール成分に対して0.5〜4.0モル%である。一実施態様では、ポリエステル組成物は、リン酸の残基をさらに含んでなる。
【0054】
ある実施態様では、ポリエステル組成物はチタンを含んでなる。別の実施態様では、チタンの量は、ポリエステル組成物の総重量に対して3ppmから60ppmであってよい。
【0055】
本発明の組成物および製造方法で有用であるチタンは、種々の形態および量で提供してよい。例えば、チタンは、典型的にはチタン残基として存在し、すなわち、ポリエステルポリマーを製造するための溶融相工程にチタン原子を添加した際にポリマー溶融物中に残留する部分であり、また、添加した状態のチタン化合物または組成物中に存在するその残基の酸化状態、形態学的状態、構造状態、または化学状態は限定されない。チタン残基は、溶融相反応に添加されたチタン化合物と同一の形態であってよいが、重縮合の速度を加速するとチタンが析出することから、通常、形態は変化する。
【0056】
「チタン原子」または「チタン」という用語は、チタンの酸化状態に関わらず、いずれかの適切な分析技術によって検出されるポリエステルポリマー中のチタンの存在を意味する。チタンの存在を検出する適切な方法としては、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−OES)が挙げられる。チタンの濃度は、ポリマー組成物の重量に対する金属原子のppmとして報告される。「金属」という用語は、特定の酸化状態を示すものではない。
【0057】
チタンの本発明のプロセスへの添加は、チタンが、最終的に重縮合フェーズで触媒として活性である限りにおいて、化合物として添加しても、または金属として添加してもよい。酸化チタンは、不溶性であり、ポリマー溶融物中での触媒活性があったとしてもほとんどないことから、チタン化合物または金属が意味する範囲に含まれない。揮発性および/またはポリエステル形成成分と反応性である希釈剤またはキャリアに溶解することができるチタン化合物を選択することが望ましい。チタン化合物はまた、揮発性および/またはポリエステル形成成分と反応性である液体中のスラリーまたは懸濁液として添加してもよい。チタン化合物添加のモードは、触媒混合槽への添加であり、これは、ポリエステル溶融相プロセスの設備の一部である。触媒混合槽はまた、エチレングリコールを例とする適切な溶媒を含有していてもよい。
【0058】
適切なチタン化合物の例としては、チタンテトライソプロポキシド、チタン(IV)エトキシド、トリ−イソプロピルチタン酸アセチル(acetyl tri-isopropyltitanate)、2−エチルヘキサン酸チタン(IV)、チタン(IV)2−エチルヘキソキシド、チタン(IV)n−プロポキシド、チタン(IV)n−ブトキシド、およびチタン(IV)t−ブトキシド、が挙げられる。一般式:Ti(OR)、およびTi(OR)(OR’)に対応するものを含む種々のチタンアルコキシドが、本発明に従った使用に適しており、ここで、RおよびR’は、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、およびt−ブチル等のアルコールから生じるアルコキシ種であり、x=1〜4、y=0〜2である。
【0059】
本発明に従うチタンの存在量は、場合によってポリエステル組成物の総重量または反応混合物の総重量に対して、チタン原子で、少なくとも1ppm、または少なくとも3ppm、または少なくとも5ppm、または少なくとも8ppm、または少なくとも10ppm、または少なくとも20ppm、または少なくとも30ppm、および約150ppmまで、または約100ppmまで、または約75ppmまで、または約60ppmまでであってよい。
【0060】
本発明を以下の実施例によってさらに説明することができるが、これらの実施例は、特に断りのない限り、単に説明の目的で含まれるものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことは理解されるであろう。
【実施例】
【0061】
実施例1〜7
オリゴマー合成:
以下で述べるように、ポリエチレンテレフタレートオリゴマーは、テレフタル酸とバージンエチレングリコールから、および場合によってはアルドリッチケミカル社から購入した種々の量の2,6−ナフタレンジカルボン酸(品番301353、[1141‐38‐4])と共に、またはイソフタル酸もしくはシクロヘキサンジメタノールと共に製造した。水による水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の水性混合物を各バッチに投入し、エステル化反応中に形成されるジエチレングリコールの量を低減した。TMAHは、アルドリッチケミカル社から購入し(品番328251、[75‐59‐2])、使用前に、10部の蒸留水に対して1部の割合で希釈した。すべての場合において、原料はすべて2リットルのポリエチレンビーカー中で一緒に混合し、次にParr高圧反応器に充填した。また、2モルパーセントのイソフタレート修飾を有するコントロールオリゴマーも、BP−アモコ社のイソフタル酸を出発物質として作製した。イーストマン社のシクロヘキサンジメタノールを出発物質として含めて、別のコントロールオリゴマーを調製した。
【0062】
典型的な反応物のエステル化反応器への充填量を以下の表に示す。「充填モル比」は、すべての酸1.0モルに対してグリコール1.6モルであり、推定される水の排出量は144グラムであった。エステル化の工程では触媒は存在させなかった。
【0063】
【表1】

【0064】
エステル化を行うために用いた反応器は、容量が2リットルであり、反応副生物の分離および除去のための加熱充填カラムを取り付けた。充填カラムは、水冷冷却管に接続し、そしてこれを圧力調整器および室内窒素源に接続した。この調整器により、系内への窒素流量を調整した。系内へ「流入」する窒素の体積は、反応器のヘッド部に位置する圧力トランスデューサーからの出力に基づいて測定した。反応から発生した蒸気は、冷却管セクションで冷却して回収し、その質量を連続的に測定して反応の進行度を推定した。このユニットは、攪拌のための「プロペラ」型スターラーを有していた。
【0065】
反応条件は、Camile(登録商標)分散型データ収集制御システム(distributed data acquisition and control system)を用いて制御、およびモニタリングした。以下の表2に示す反応パラメータを対象とした。
【0066】
【表2】

【0067】
一連の反応を完了後、反応器底部セクションに取り付けたラムシールバルブ(ram-seal valve)を通して生成物をParr反応器から取り出した。直径3インチ、深さ0.5インチのアルミニウム製パンに少量の反応混合物を取り、色の評価を行った。残りのオリゴマーをステンレス製パンに取り出し、固化させ、その後液体窒素に浸漬した。冷却したオリゴマーをハンマーを用いて粉砕し、重合に適する粗粉末を得た。
【0068】
生成オリゴマーをプロトンNMRで分析し、組成、すべての酸に対するEGのモル比、重合度、およびジエチレングリコール含有量を測定した。色の測定は、上述のようにしてアルミニウム製パンに回収したオリゴマーの冷却ディスクで行った。測定は、機器としてHunter Ultrascan XEを用いて行った。
【0069】
ポリマー合成(実施例1〜7)
Parrの1回の運転ごとの顆粒状オリゴマーのサンプルを、一連の500ml肉厚丸底フラスコに充填して重合を行った。チタンは、n−ブタノール中のチタンイソプロポキシド(アルドリッチ社 377996)の溶液としてオリゴマーに導入した。この触媒混合物の添加は、シリンジを用いて行った。
【0070】
次に、ステンレス製スターラー(直径2インチパドル)をフラスコに挿入し、続いて各フラスコにポリマーアダプターヘッド部を取り付けた。このヘッド部は、窒素パージライン接続用のニップル、添加剤注入用の隔膜ポート(septum port)、攪拌シャフト用の平滑ボア管状セクション(smooth bore tubular section)、および2つの標準テーパー24/40オス型ジョイントを有し、このジョイントのうちの1つは、フラスコのメス型ジョイントへの挿入用であり、もう1つは、1つ目に対して45°の角度で方向付けされており、真空冷却管システムに末端が接続するガラス管セクションに接続した。テフロン管ブッシュをアダプターの平滑ボアセクションに挿入した。ステンレス製攪拌シャフトをこのブッシュの内径部に通し、ゴムホースのセクションを攪拌シャフトの周囲およびガラス管の外径部上に取り付けた。この組み立て装置は、摩擦が低く、攪拌シャフトと反応フラスコのアダプターヘッド部との間の真空気密シールが得られる。この組み立てた装置を、重合「装置(rig)」に固定し、攪拌シャフトを1/8馬力の攪拌モーターに接続した。この重合装置は、上昇させてフラスコを加熱することができる溶融金属浴を有していた。攪拌モーターも上昇または下降させることができ、それによって、反応を行う際に、攪拌ブレードを確実に溶融オリゴマー/ポリマー中に完全に浸漬させた。
【0071】
典型的な溶融相重合反応条件を以下の表3に示す。エステル化の一連の反応と同様に、パラメータは、Camile(登録商標)システムを用いてモニタリングおよび制御した。
【0072】
【表3】

【0073】
上記表中に示したステージ13の終了時に、ジエチレングリコールジエチルエーテル(ジグリム、アルドリッチケミカル社 品番281662、[111‐96‐6])中のリン酸(アルドリッチケミカル社 品番452289、[7664‐38‐2])の溶液を、ステンレス製の針を備えたガラスシリンジを用いてポリマー塊に注入した。チタン充填量が7ppmの時には対象リン充填量は9ppmであり、チタン充填量が20ppmの時には対象リンレベルは26ppmであった。
【0074】
一連の反応の終了後、金属浴を下降させ、ポリマー塊を冷却した。10から15分後、ポリマーは固化し、加熱浴を上昇させてポリマーを再溶融し、フラスコ壁から引き離した。さらに15分間の冷却後、フラスコを破壊し、固体ポリマー塊を液体窒素中に浸漬した。チゼルアタッチメントを備えた水圧ラムを用いて攪拌ロッドから冷却したポリマー塊を取り除いた。回収したポリマーの「小塊(lumps)」を液体窒素中にて再度冷却し、最後にウイリーミル(Wiley mill)で粉砕した。このミルは、開口部径3mmのスクリーンを備えていた。得られた粗粉砕ポリマーを回収し、種々の分析試験に出した。
【0075】
熱酸化安定性(TOS)試験
12scfhおよび192℃にてPET粒子に乾燥加熱空気を通すことで、実施例1〜7の熱酸化安定性を評価した。実験装置は、ジャケット付ガラスフィルターフリットからなり、サンプルをフリット上に配置した。ガラスコイルを通し、還流1‐オクタノールとの間接接触で加熱した後、乾燥空気を下部からサンプルに圧入した。サンプル温度は、サンプル中に直接配置した熱電対で測定した。サンプルを、t=1、2、4、6、8、および24時間で取り出し、上述のようにしてインヘレント粘度の分析を行った。
【0076】
【表4】

【0077】
【表5】

【0078】
表4の結果は、2,6−ナフタレンジカルボン酸部分をチタン触媒によるPETに含めることにより、樹脂の熱酸化安定性が大きく向上したことを示している。具体的には、2,6−ナフタレンジカルボン酸修飾を有しないコントロールと比較して分子量減少の低減、従ってIV急減の抑制が観察される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル中に、前記溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル中の100モル%を構成するジカルボン酸残基の総量に対して約0.1モル%から約10モル%の量で2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマーの残基が取り込まれた溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル、および
チタン、
を含んでなる、ポリエステル組成物。
【請求項2】
前記2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマーの残基が、約0.5モル%から約2.5モル%の量で存在する、請求項1に記載のポリエステル組成物。
【請求項3】
前記2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマーが、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、9−アントラセンカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸ジメチル、1,5−アントラセンジカルボン酸、1,5−アントラセンジカルボン酸ジメチル、1,8−アントラセンジカルボン酸、または1,8−アントラセンジカルボン酸ジメチル、の1または2つ以上を含んでなる、請求項1に記載のポリエステル組成物。
【請求項4】
前記2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマーが、約0.1モル%から約3モル%の量で存在する2,6−ナフタレンジカルボン酸を含んでなる、請求項1に記載のポリエステル組成物。
【請求項5】
前記ポリエステル組成物が、リン酸の残基をさらに含んでなる、請求項1に記載のポリエステル組成物。
【請求項6】
前記チタンが、前記ポリエステル組成物の総重量に対して3ppmから100ppmのチタン原子の量で存在する、請求項1に記載のポリエステル組成物。
【請求項7】
前記ポリエステル組成物が、約5ppmから約300ppmの量で存在するリン原子をさらに含んでなる、請求項1に記載のポリエステル組成物。
【請求項8】
前記溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルの、溶融相重合反応から得られたI.V.が少なくとも0.72dL/gである、請求項1に記載のポリエステル組成物。
【請求項9】
溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル中に、前記溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル中の100モル%を構成するジカルボン酸残基の総量に対して約0.1モル%から約3モル%の量で2,6−ナフタレンジカルボン酸の残基が取り込まれた溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステル、および
前記ポリエステル組成物の総重量に対して約5ppmから約60ppmのチタン原子の量で存在するチタン、
を含んでなる、ポリエステル組成物。
【請求項10】
溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルを製造する方法であって、
エチレングリコール、テレフタル酸およびテレフタル酸誘導体から選択される少なくとも1つの酸、ならびに、2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマー、を含んでなる混合物を形成する工程、および
チタンの存在下にてこの混合物を反応させて前記溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルを得る工程、
を含んでなり、
前記2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマーが、100モル%を構成する前記混合物中のジカルボン酸残基の総量に対して約0.1モル%から約3モル%の量で存在する、方法。
【請求項11】
前記2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマーが、約0.5モル%から約2.5モル%の量で存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物が、100モル%を構成する前記混合物中のジカルボン酸残基の総量に対して少なくとも90モル%の量で存在するテレフタル酸を含んでなり、かつ
前記エチレングリコールが、100モル%を構成する前記混合物中のジオールの総量に対して少なくとも90モル%の量で前記混合物中に存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマーが、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、9−アントラセンカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸ジメチル、1,5−アントラセンジカルボン酸、1,5−アントラセンジカルボン酸ジメチル、1,8−アントラセンジカルボン酸、または1,8−アントラセンジカルボン酸ジメチル、の1または2つ以上を含んでなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記2または3つ以上の縮合芳香環を有するモノマーが、約0.5モル%から約2.5モル%の量で存在する2,6−ナフタレンジカルボン酸を含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記混合物が、アンチモンを含まない、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記混合物が、ゲルマニウムを含まない、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記チタンが、得られた前記溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルの総重量に対して約1ppmから約150ppmのチタン原子の量で存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
得られた前記溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルに、前記溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルの総重量に対して約5ppmから約300ppmのリンの量でリンを添加する工程をさらに含んでなる、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
得られた前記溶融相ポリエチレンテレフタレートポリエステルの、溶融相で達成されたI.V.が少なくとも0.72dL/gである、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記プロセスが、固相重合を含まない、請求項10に記載の方法。

【公表番号】特表2012−503067(P2012−503067A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527805(P2011−527805)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/005045
【国際公開番号】WO2010/033162
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(511069965)グルポ、ペトロテメックス、ソシエダッド、アノニマ、デ、カピタル、バリアブレ (6)
【氏名又は名称原語表記】GRUPO PETROTEMEX,S.A. DE C.V.
【Fターム(参考)】