説明

熱間割れ感受性を減じるためのアルミニウム合金配合物

本発明は、低い熱間割れ感受性を持つように改善された合金組成物に係り、ここで該アルミニウム合金は、0.01〜0.025質量%なる範囲のSr;及び硼素含有率で測定された、0.001〜0.005質量%なる範囲のBに相当する量のTiB2を含む。本発明は、またアルミニウム合金における熱間割れを防止し、あるいはこれを排除する方法にも係わり、該方法は、アルミニウムを、0.010〜0.025質量%なる範囲のSr;及び硼素含有率で測定して、0.001〜0.005質量%のBなる範囲の量のTiB2を化合させる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間割れ感受性を減じるための、改善された合金組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間割れは、カスト工程中に起こり、そこでは、脆い樹枝状組織間の割れが、固化過程中に開始する。一般的に熱間割れを起し易いと考えられている合金は、比較的長い、その液相線温度と固相線温度との温度差として定義される、凝固/固化範囲を持つ。更に、凝固の最終的段階において、これらの合金は、残留する極めて少量の共融混合液体を含み、また限定された量のこの共融混合液体が、固化された結晶粒間に残された狭い空間を通過する必要がある。この固化の最終段階における貧弱な供給量が、該熱間割れ現象に、大いに寄与している。
【0003】
熱間割れを減じる一つの方法が、WO2005/056846に記載されている。このWO2005/056846先行技術は、本発明のストロンチウムとチタン二硼化物との組合せについて何も記載しておらず、また純アルミニウムの配合物を第一の指定された温度にて鋳造し、及び銅、亜鉛又はマグネシウムと混合された第二のアルミニウム合金を、第二の指定された温度にて鋳造するによって、主として熱間割れの問題を処理している。これら二種の合金の温度制御は、WO2005/056846に記載された方法の中心的な局面である。
US 4,681,152は、5xxx合金の二本ロール鋳造を目的としている。この組成物は、0.05%までのSrを含むことができ、また約5質量%のチタン及び0.2質量%のホウ素を含有する、アルミニウムワイヤを含む結晶微細化剤を使用している。該ホウ素の含有率は、1質量%ほどであり得る。十分に結晶微細化された合金を添加して、該チタンの含有率を約0.02質量%までとする。US 4,681,152は、熱間割れを低下することを目的としていない。US 4,681,152の合金は、ストリップカスト法により鋳造される。
【0004】
US 5,453,244は、Al-Zn基材を含む軸受合金(7xxx)を目的としている。この合金は、広い意味で、0.05〜0.5%なる範囲のSr及び0.03〜0.5%なる範囲のTi+Bを含むものとして記載されている。US 5,453,244は、熱間割れの低下を目的としていない。
US 5,211,910は、2xxx合金の構成成分として、Zn、Ge、Sn、Cd、In、Be、Sr、Sc、Y、及びCaからなるリストから、Srが全体として約0.5〜約4質量%なる範囲の量で存在すべきであり、またZr、Cr、Mn、Ti、Hf、V、Nb、B及びTiB2を含むリストから、Ti及び/又はTiB2が0.01〜2%なる範囲の量で存在すべきことを述べている。しかし、本発明の添加剤の特定の組合せは、記載されていないし、また本発明の範囲内で使用されてもいない。US 5,211,910は、熱間割れの低下を目的としていない。
EP 0432184は、Zn、Ge、Sn、Cd、In、Be、Sr、Sc、Y、及びCaからなるリストから、Srが約0.01〜1.5なる範囲の量で存在すべきであり、またZr、Cr、Mn、Ti、Hf、V、Nb、B及びTiB2を含むリストから、Ti及び/又はTiB2が0.01〜1.5%なる範囲の量で存在すべきことを述べている。しかし、本発明の添加剤の特定の組合せは、記載されていないし、また本発明の範囲内で使用されてもいない。EP 0432184は、熱間割れの低下を目的としていない。
【0005】
WO 96/10099は、可能な合金の広い範囲を開示し、また結晶微細化剤(Ti及びTiB2)及び改良剤(Srを含む)を含んでいる。該合金の主合金元素はScである。これら合金は、造形カストにとって有用であり、また錬合金に匹敵する諸特性を与えるものとされている。
US 6,562,165は、Al-Si合金を記載しており、該合金は、球状化組織を持つ、半-固体加工に適したものであり、0.005〜0.5%なる範囲のTi及び0.005〜0.030なる範囲のSrを含んでいる。US 6,562,165は、過度のTiの添加が、大きく、有害なTiB2結晶の生成に導く恐れがあることを述べており、またTiB2の濃度については何ら記載していない。US 6,562,165の該添加物は、熱間割れの低下を目的としていない。
【発明の概要】
【0006】
本発明者等は、狭い特定範囲の、ストロンチウム及びチタン二硼化物を、添加物として含む、アルミニウム基合金が、驚く程に低い熱間割れの発生率を持ち、そのためにこれら合金のダイカストを可能とすることを見出した。
本発明は、添加物の選択的な使用によって、熱間割れを制御するために、アルミニウム合金に対して適用可能な、改良された合金組成を提供し、結果としてこれら合金をダイカストし得るものとすることを目的としており、ここで、本発明の該合金は、従来のアルミニウム合金には存在しない、強度及び延性を持つ。これら諸特性は、該合金の液相線以上又は該合金の半-固体領域における、該合金の造形カストを可能にする。
特定の理論に拘泥するものではないが、添加物としてのストロンチウム及びチタン二硼化物が、該合金に対して相乗的な様式で作用しているものと考えられ、ここで該ストロンチウムは、α-結晶中における球状結晶の生成を促進し、また該チタン二硼化物は、新たな結晶の生成を開始する。指定された量にて組合せて使用した場合、これらの合金化成分は、該液状のアルミニウム基合金を、最終的に固化するまで流動させ、結果として熱間割れを防止し、あるいはその発生を実質的に減じることを可能とする。
【0007】
本発明の第一の局面は、アルミニウム合金を目的とし、該合金は、i) 0.010〜0.025質量%なる範囲のSr;及びii) ホウ素含有率で測定して、0.001〜0.005質量%のBなる範囲の量のTiB2を含む。好ましくは、該アルミニウム合金は、更に、iii) TiB2においてBと化学量論的に結合した量を越えて、0.16質量%以下の過剰なTiをも含む。通常熱間割れを起し易い幾つかの合金が、本発明の添加物の指定された量での使用にとって、極めて適していることが分かった。
本発明の関連する局面は、アルミニウムと、i) 0.010〜0.025質量%なる範囲のSr;及びii) ホウ素含有率で測定して、0.001〜0.005質量%のBなる範囲の量のTiB2とを化合させる工程を含む、アルミニウム合金における熱間割れを防止もしくは排除する方法に関連する。
本発明の更なる目的は、上記の本発明により定義された合金から鋳造された、造形鋳造部品を提供することにある。特に、該造形鋳造部品は、ダイカスト法による鋳造品であり得、該ダイカスト法は、熱間割れを起し易いアルミニウム合金では困難である。更なる利点が本発明によって与えられ、該利点は、該合金由来の鋳造品が、半-固体状態であり得る点にある。
【0008】
本発明は、またアルミニウムと、i) 0.010〜0.025質量%なる範囲のSr;及びii) ホウ素含有率で測定して、0.001〜0.005質量%のBなる範囲の量のTiB2とを化合させる工程を含む、アルミニウム合金の製造方法を提供するものとして定義できる。
特に興味深い本発明の局面は、アルミニウム合金の加工方法に関連し、ここで該アルミニウム合金は、i) 0.010〜0.025質量%なる範囲のSr;及びii) ホウ素含有率で測定して、0.001〜0.005質量%のBなる範囲の量のTiB2を含み、また該アルミニウム合金は、液相線温度及び固相線温度を持つ。該方法は、該合金の液相線温度及び固相線温度の範囲内の半-固体を含む、合金を調製する工程;該合金を、該液相線温度以上の、高い合金の初期温度まで加熱して、該合金を完全に溶融する工程;該合金の温度を、該初期金属合金の高い温度から、該液相線温度未満であって、かつ該固相線温度を越える半-固体温度まで減じる工程;及び球状固体相が液相中に分散された状態にある該合金内に、半-固体構造を生成するのに十分な期間、該合金を該半-固体温度にて維持する工程を含む。場合により、該金属合金の該半-固体構造中に存在する該液相の全てではなく、少なくともその幾分かを除去して、該合金の、固体に富む半-固体構造を生成することも可能であり、ここで該随意の除去工程は、液相を除去する工程;及び該固体に富む半-固体構造を持つ該合金を所定形状に成形する工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、アルミニウム基合金に関する。該アルミニウム基合金は、主としてアルミニウム及び銅を含む合金、例えば2xxx及び2xx型の合金;主としてアルミニウム及びマンガンを含む合金、例えば3xxx型の合金;主としてアルミニウム及びケイ素を含む合金、例えば4xxx型の合金;主としてアルミニウム及びマグネシウムを含む合金、例えば5xxx及び5xx型の合金;主としてアルミニウム、マグネシウム及びケイ素を含む合金、例えば6xxx型の合金;及び主としてアルミニウム及び亜鉛を含む合金、例えば7xxx型の合金からなる群から選択することができる。本発明の合金に関連して、用語「主として」とは、これら元素が、該合金における最大の質量基準の含有率を与え、アルミニウムが該質量基準の含有率に対して最高に寄与していることを意味する。
上述の如く、本発明のアルミニウム合金は、固有のストロンチウム及びチタン二硼化物の組合せを含み、即ちi) 0.010〜0.025質量%なる範囲のSr及びii) ホウ素含有率で測定して、0.001〜0.005質量%のBなる範囲の量のTiB2を含む。TiB2は、公知の結晶微細化剤であるが、この特定の結晶微細化剤とストロンチウムとの組合せにおいて、該固化中の合金に残される該液状合金は、流動性において制限されていない。
【0010】
チタン、ジルコニウム及びこれらの硼化物及び炭化物は、全て公知の結晶微細化剤である。驚いたことに、ストロンチウムとの組合せで使用した場合に、チタン二硼化物、即ち結晶改良剤は、該アルミニウム合金の諸特性に、驚く程の改善を施し、熱間割れの発生を防止し、あるいは排除した。
本発明の好ましい態様において、該アルミニウム合金は、更に0.16質量%又はそれ以下の過剰量のTi、及びより好ましくは0.12質量%又はそれ以下の過剰量のTiを含む。過剰量のTiとは、TiB2を生成する量を越えるTiの量を意味する。このTiは、当業者には公知の多数の手段によって導入できるが、これは、典型的には金属チタンを添加することによって、あるいは「結晶微細化剤」ロッドの使用を通して導入され、該結晶微細化剤ロッドは、当業者には公知の如く、Tiの過剰量を含むTiB2を生成するように、化学量論的に設計された、特定濃度のTi及びBを含有する、アルミニウムロッド又はワイヤである。
適当には、本発明の該アルミニウム合金は、広範囲の目的で、ストロンチウム及びチタン二硼化物、及び場合によりチタン以外の添加物、例えば強度を改善するためのMg、Cu及びZn、強度改善及びダイカストにおけるダイの癒着を減じるためのMn及びFe、並びに結晶性改善のためのCa、Na及びSbを含むことができる。
【0011】
以下の実施例から理解できるように、TiB2(ホウ素含有率によって測定した)の含有率が0.001質量%未満である合金においては、結晶核生成に関する効果は見られない。逆に、TiB2(ホウ素含有率によって測定した)の含有率が0.005質量%を越える合金においては、熱間割れに関する測定可能な利益は見られないが、0.005質量%を越えるTiB2(ホウ素含有率によって測定した)レベルは、幾つかの半-固体法に対して、負の効果を持つことが予想される。過剰量のチタン二硼化物は、該半-固体法の幾つかの態様における、制御性の程度に負の作用を及ぼし、また得られる鋳造部品の強度を減じる恐れがある。従って、本発明は、0.001〜0.005質量%なる範囲のBに相当する量のTiB2(ホウ素含有率によって測定した)、好ましくは0.002〜0.004質量%なる範囲のTiB2(ホウ素含有率によって測定した)を含有する合金を目的とする。
同様に以下の実施例から理解できるように、Srの含有率が0.010%未満である合金においては、球状化又は球形化が不十分である(あまりに多くの尖った又は針状形の結晶が残される)。0.025%を越えた場合、該Srは、最終的な鋳造部品の強度に負の効果を及ぼす。従って、本発明は、0.010〜0.025質量%なる範囲のSr、好ましくは0.010〜0.020質量%なる範囲のSrを含む、アルミニウム合金に関する。
【0012】
更に、以下の実施例から理解できるように、過剰量(TiB2の形状にあるもの以外の)チタンの使用は、このものが過度に大きくかつ長い結晶の形成に寄与することから、熱間割れ作用の制御に関しては有利ではない。過剰量のTiは、熱間割れに対して負の作用を有し、また該過剰量が0.16%を越えると、Al-Ti金属間化合物の生成をもたらし、これは尖った結晶形にあり、また該鋳造部品の熱間割れ並びにその脆弱性の増大に寄与する。本発明の合金は、好ましくは0.16質量%又はそれ以下の過剰量のTi、より好ましくは0.12質量%又はそれ以下の過剰量のTiを含む。
本発明のこれら添加物は、主としてアルミニウム、マグネシウム及びケイ素を含むアルミニウム合金にとって極めて適している。従って、本発明の興味深い態様の一つは、主としてアルミニウム、マグネシウム及びケイ素を含み、更に0.010〜0.025質量%なる範囲のSr及び0.001〜0.005質量%なる範囲のBに相当する量のTiB2(ホウ素含有率によって測定した)を含む、アルミニウム合金に関するものである。本発明の更なる興味深い態様は、主としてアルミニウム、マグネシウム及びケイ素、0.010〜0.025質量%なる範囲のSr、0.001〜0.005質量%なる範囲のBに相当する量のTiB2(ホウ素含有率によって測定した)及び好ましくはTiB2中でBと化学量論的に結合する量を越える、0.16%又はそれ以下の過剰量のTiを含む、アルミニウム合金に関するものである。
【0013】
更に、本発明の添加剤は、主としてアルミニウム及び銅を含むアルミニウム合金にとって著しく適している。従って、本発明の興味深い態様の一つは、0.010〜0.025質量%なる範囲のSr、及び0.001〜0.005質量%なる範囲のBに相当する量のTiB2(ホウ素含有率によって測定した)を含む、アルミニウム合金に関する。更に興味深い本発明の態様の一つは、主としてアルミニウム及び銅を含み、また0.010〜0.025質量%なる範囲のSr、0.001〜0.005質量%なる範囲のBに相当する量のTiB2(ホウ素含有率によって測定した)及び好ましくはTiB2中でBと化学量論的に結合する量を越える、0.16%又はそれ以下の過剰量のTiを含む、アルミニウム合金に関する。
更に適切な態様の一つにおいて、本発明の該添加剤は、主としてアルミニウム及びマグネシウムを含むアルミニウム合金にとって著しく適している。従って、本発明の興味深い態様の一つは、主としてアルミニウム及びマグネシウムを含み、更に0.010〜0.025質量%なる範囲のSr、及び0.001〜0.005質量%なる範囲のBに相当する量のTiB2(ホウ素含有率によって測定した)を含む、アルミニウム合金に関する。更に興味深い本発明の態様の一つは、主としてアルミニウム及びマグネシウムを含み、また0.010〜0.025質量%なる範囲のSr、0.001〜0.005質量%なる範囲のBに相当する量のTiB2(ホウ素含有率によって測定した)及び好ましくはTiB2中でBと化学量論的に結合する量を越える、0.16%又はそれ以下の過剰量のTiを含む、アルミニウム合金に関する。
【0014】
本特許出願において、合金は、アルミニウム協会(Aluminum Association)の国際合金命名法(International Alloy Designations)に依拠する。従って、2xxx合金は、主な合金元素としてCuを含む、アルミニウムを主成分とする錬合金(wrought alloy)を意味し(ここで、該Cuは、例えば約7質量%までの量で存在し得る)、また2xx合金は、主な合金元素としてCuを含む、アルミニウムを主成分とする鋳造用合金(foundry alloy)を意味する(ここで、該Cuは、例えば約9質量%までの量で存在し得る)。アルミニウム-Cu合金の一例は、206合金であり、これは質量%単位で表して、0.1未満のSi、0.15未満のFe、4.2〜5.0なる範囲のCu、0.20〜0.50なる範囲のMn、0.15〜0.35なる範囲のMg、0.05未満のNi、0.10未満のZn、0.05未満のSn、及び残部のAlなる組成を持ち、各々0.05未満であり、かつ全体として0.15未満の偶発的な不純物、及び0.010〜0.025質量%なる範囲のSr、0.001〜0.005質量%なる範囲のBに相当する量のTiB2(ホウ素含有率によって測定した)及び好ましくはTiB2中でBと化学量論的に結合する量を越える、0.16%又はそれ以下の過剰量のTiを含む。アルミニウム-Cu合金のもう一つの例は、2024合金であり、これは質量%単位で表して、0.5未満のSi、0.5未満のFe、3.8〜4.9なる範囲のCu、0.30〜0.9なる範囲のMn、1.2〜1.8なる範囲のMg、0.10未満のCr、0.25未満のZn、及び残部のAlなる組成を持ち、各々0.05未満であり、かつ全体として0.15未満の偶発的な不純物、及び0.010〜0.025質量%なる範囲のSr、0.001〜0.005質量%なる範囲のBに相当する量のTiB2(ホウ素含有率によって測定した)及び好ましくはTiB2中でBと化学量論的に結合する量を越える、0.16%又はそれ以下の過剰量のTiを含む。
【0015】
3xxx合金は錬合金と呼ばれ、これはアルミニウムを主成分とし、約1.5質量%までの主な合金元素としてMnを含む。4xxx合金は錬合金と呼ばれ、これはアルミニウムを主成分とし、約14質量%までの主な合金元素としてSiを含む。
5xxx合金は錬合金と呼ばれ、これはアルミニウムを主成分とし、約6質量%までの主な合金元素としてMgを含む。5xx合金は鋳造用合金と呼ばれ、これはアルミニウムを主成分とし、約11質量%までの主な合金元素としてMgを含む。アルミニウム-Mn合金の一例は、5182合金であり、これは質量%単位で表して、0,2未満のSi、0.35未満のFe、0.15未満のCu、0.20〜0.50なる範囲のMn、4.0〜5.0なる範囲のMg、0.1未満のCr、0.25未満のZn、及び残部のAlなる組成を持ち、各々0.05未満であり、かつ全体として0.15未満の偶発的な不純物、及び0.010〜0.025質量%なる範囲のSr、0.001〜0.005質量%なる範囲のBに相当する量のTiB2(ホウ素含有率によって測定した)及び好ましくはTiB2中でBと化学量論的に結合する量を越える、0.16%以下の過剰量のTiを含む。
【0016】
6xxx合金は錬合金と呼ばれ、これはアルミニウムを主成分とし、Mg及びSiを主な合金元素として、約1.6質量%までのMg及び約1.7質量%までのSiを含み、ここでは固化中にマグネシウムケイ化物を生成する。アルミニウム-Mg-Si合金の一例は、6061合金であり、これは質量%単位で表して、0.40〜0.80なる範囲のSi、0.7未満のFe、0.15〜0.40なる範囲のCu、015未満のMn、0.8〜1.2なる範囲のMg、0.04〜0.35なる範囲のCr、0.25未満のZn、及び残部のAlなる組成を持ち、各々0.05未満であり、かつ全体として0.15未満の偶発的な不純物、及び0.010〜0.025質量%なる範囲のSr、0.001〜0.005質量%なる範囲のBに相当する量のTiB2(ホウ素含有率によって測定した)及び好ましくはTiB2中でBと化学量論的に結合する量を越える、0.16%又はそれ以下の過剰量のTiを含む。
7xxx合金は錬合金と呼ばれ、これはアルミニウムを主成分とし、典型的には約9質量%までの量で存在する、主な合金元素としてのZnを含む。
上記の合金は、明示された元素に加えて、上述の範囲内で、TiB2、Sr、及び随意のTiを含み、低減された熱間割れをもたらす。これら合金は、またSi、Fe、Cu、Mn、Mg、Cr、Ni、Zn及びVを包含する追加の合金元素をも含むことができる。
【0017】
本発明の添加物、即ち0.010〜0.025質量%なる範囲のSr、及び0.001〜0.005質量%なる範囲のBに相当する量のTiB2(ホウ素含有率によって測定した)は、また2xxx及び2xxアルミニウム-銅合金にとって著しく適したものであると考えられる。2xxx及び2xx型のAl-Cu合金は、亀裂発生傾向を持つものとして知られている。該Sr及びTiB2添加物は、各指定された量において、該2xxx及び2xx合金のダイカストを可能とし、またその結果として複雑な部品形状及び設計を可能とする。アルミニウム-銅合金(2xxx及び2xx合金)における熱間割れを制御することにより、通常は、従来の合金の使用が難しいとされているダイカスト法が、2xxx及び2xx合金について可能となった。本発明のこれらの合金は、ダイカスト法においてさえ、改善されていない合金と同様な、強度及び延性を保持する。本発明の一態様において、該合金は、造形カスト法又はダイカスト法等により鋳造される。
【0018】
同様に、上記5xxx及び5xx型合金等の主としてアルミニウム及びマグネシウムを含む合金は、亀裂発生傾向を持つものとして知られている。該5xxx及び5xx型合金等の、アルミニウム及びマグネシウム合金における、0.010〜0.025質量%なる範囲のSr、及び0.001〜0.005質量%なる範囲のBに相当する量のTiB2(ホウ素含有率によって測定した)の使用は、該5xxx及び5xx型合金のダイカスト鋳造を可能とし、またその結果として複雑な部品形状及び設計を可能とする。該5xxx及び5xx型合金等の、主としてアルミニウム及びマグネシウムを含む合金における、熱間割れを制御することにより、通常は、従来の合金の使用が難しいとされているダイカスト鋳造が、5xxx及び5xx合金について可能となった。本発明のこれらの合金は、ダイカスト法においてさえ、改善されていない合金と同様な、強度及び延性を保持する。本発明の一態様において、該合金は、造形カスト法又はダイカスト法等により鋳造される。
【0019】
本発明の合金配合物は、砂型鋳造、永久型鋳造及びダイカスト法を含むが、これらに限定されないあらゆる造形カスト法において利用するのに適している。鋳造法の例は、重力永久型鋳造、低圧永久型鋳造、及び真空永久型鋳造法を含む。最も顕著なことは、これら合金配合物が、従来の高圧ダイカスト法及び高結着型(high integrity)ダイカスト法、例えば高真空ダイカスト、半-固体成形、及びスキーズカスト法両者を含む、高圧ダイカスト法に対しても適したものである。
熱間割れは、勿論ネット-様(near-net)の部品の造形カスト法に固有の現象ではなく、ビレット、ブルーム、又はT-型インゴット部分を、半-連続的又は連続的鋳造法(例えば、D.C.鋳造又は水平連続鋳造法)を通して鋳造する際に、しばしば遭遇する制限を持つ。本発明の配合物は、勿論これらの型の製品を鋳造する際にも、熱間割れを減じる上で適用可能である。
【0020】
注目すべきことに、Al-Mg-Si合金(6xxx合金)における熱間割れを制御することにより、6xxx合金を、通常は従来の合金を用いることが困難な、ダイカスト鋳造することが可能となった。本発明の合金は、ダイカスト鋳造の場合においてさえ、改良されていない合金と同様な強度及び延性を維持しており、しかも従来のアルミニウム造形カスト合金には、通常見られない諸特性を与える。本発明の一態様において、該合金は、造形カスト又はダイカスト法等で鋳造される。
該鋳造は、該合金の液相線温度以上の領域にて、又はその半-固体領域のいずれかにおいて行うことができることを見出した。驚くべきことに、アルミニウム合金に関して、本発明は、一態様において、該半-固体領域における鋳造を意図している。というのは、熱間割れ耐性が観測されたばかりか、該半-固体領域における鋳造が、更にダイの充填性における改良及び鋳造に対する一般的な適性をも与えることを見出した。該半-固体構造は、幾つかの加工条件下で、球状固体相を持つことができ、またこれは特に鋳造に関して好ましいことである。
【0021】
液相線以上の温度(ここでは、該合金は十分に溶融状態にある)から出発する、本発明の合金の、有用な造形品への鋳造は、当業者には公知の任意の技術によって行うことができる。
本発明の合金の殆どは、該合金が部分的に固体でありかつ部分的に液体であるような温度(該合金の「固相線」温度と「液相線」温度との間の温度)において、半-固体形状で鋳造することも可能である。
【0022】
半-固体又は完全溶融法により鋳造するのに特に適した6xxx合金は、質量%表示で、0.6〜0.8なる範囲のSi、0.12までのFe、0.15〜0.40なる範囲のCu、0.8〜1.2なる範囲のMg、0.04〜0.10なる範囲のCr、0.006〜0.025なる範囲のSr、0.005 to 0.025質量%なる範囲のTiB2(そのホウ素含有率によって測定した)、0.001〜0.005質量%なる範囲のB及び好ましくはTiB2においてBと化学量論的に結合している量を越える、0.16%又はそれ以下の過剰量のTiなる組成を持つ。半-固体法により加工するために、特に好ましい6xxx合金は、その残部としてAlを含み、また各々0.05未満であり、かつ全体として0.15未満の偶発的な不純物を含み、一方で、完全な溶融状態で加工するためには、該特に好ましい6xxx合金は、付随的に0.45質量%までのMnを含み、但し和:Mn+Feは、0.55〜0.65%なる範囲にあることを条件とし、残部としてのAlを含み、また各々0.05未満であり、かつ全体として0.15未満の偶発的な不純物を含む。半-固体加工法は、有利には低レベルのFe及びMnを使用できる。というのは、この方法は、ダイ-粘着に対して感受性が低いからである。該液相線以上の温度における加工に関しては、全Mn+Fe量の制御が、ダイ-粘着を減じるために有利である。
【0023】
幾つかの態様において、特別に鋳造して、その固相内に微細な球状構造を持たせることのできる、中実のロッド又はインゴットを、固相線温度及び液相線温度間の温度まで再度加熱し、次いで造形カスト鋳造用金型に移す。
他の態様において、十分に液体状態にある合金を、固相線温度及び液相線温度間の温度まで冷却して、半-固体スラリーを生成し、次いでこのスラリーを鋳造する。一般に、この方法は、該固体画分が、樹枝状構造ではなく寧ろ確実に球状構造を持つように制御される。これは、迅速に冷却し、場合により固体核を添加し、あるいは予め決められた温度まで冷却する際に、(例えば、電磁的攪拌により)激しく攪拌することにより達成できる。該半-固体混合物をこの温度にて維持して(数秒乃至数分間)、該固体粒子が球状構造体に成長することを可能とすることができる。球状構造を持つ該半-固体スラリーは、一般的にチキソトロピー性であって、これは該スラリーの金型充填能力を高める。
該スラリーが生成された容器を、外的な手段により加熱及び/又は冷却して、該正確な予め決められた温度の維持を保証することができる。特に好ましい態様において、完全に液体状態にある合金の温度及び質量を調節し、結果として既知質量、熱容量及び温度をもつ容器に添加された場合に、該合金は、該半-固体領域における所定の予め決められた温度を達成し、また該構造の球状化を可能とする所定の期間中、そこで安定化される。
【0024】
幾つかの好ましい態様において、該固化されなかった液状合金の幾分かは、該予め決められた温度に維持している間又はその期間の経過後に、(例えば、フィルタ又はオリフィスを介して排除することによって)除去することができる。これは、該半-固体合金の構造における更なる改善をもたらし、また該半-固体材料を取出し、該鋳造装置に移すことをより容易にする。
調製後の該半-固体スラリーは、公知の造形カスト鋳造技術により鋳造することができる。ダイカスト鋳造法は、特に好ましい方法の一つである。
本発明は、熱間割れの低い発生率を持つ、アルミニウム合金を提供する。特定の理論に拘泥するものではないが、改良剤及び結晶微細化剤の、述べられた量での組合せによる添加は、該合金の一次α-相及び二次相両者を制御する。本発明によってもたらされる該結晶粒径及び形態上の、高い制御度は、好ましくは該メルト内に十分に分散された、チタン二硼化物を、狭い範囲にて使用して達成される。該一次α-相の高度の制御は、該共晶液体が、該固化中の網状組織内で、より一層自由に(チタン二硼化物の存在しない場合に比して)運動することを可能とする。更に、金属間化合物(例えば、6xxx合金におけるMg2Si)を含む、該二次相の析出は、該球状構造間の該共晶液体の流動性に影響を与え、またあらゆる初期熱間割れの供給を防止するものと考えられる。
【0025】
前に述べた如く、該結晶微細化剤及び改良剤は、該二次及び一次相両者の粒径及び形態を制御する。該一次α-相は、一般に固化中に形成される最後の相であるので、本発明は、特に該α-相の粒径及び形状を制御して、該共晶液体が、該固化中の網状組織内を自由に運動することを保証する。該α-結晶間の該二次相は、共晶流体の流動性に影響を及ぼし、結果として該二次相の調質及び改善も、十分な合金の供給及び初期熱間割れの防止を確実にするために、重要である。
結晶微細化が、あまり効果的でない場合には、熱間割れが開始され易く、また容易に伝播する。他方、該合金が過度に調質された場合には、該熱間割れの開始は困難であるが、これが一旦起こってしまうと、一層容易に伝播する。結局、調質を適切に行った場合、該熱間割れの開始は、より困難となり、またこれらの伝播も困難となる。
【実施例】
【0026】
実施例1
Al-Mg-Si型の二種の基合金、Al-Cu型の二種の合金及びAl-Mg型の一種の合金を、以下のようにして調製した(質量%単位で表した組成)。
【0027】
【表1】

【0028】
これら基合金に、様々な量のSr、TiB2及び過剰量のTiを添加した。該Ti及びSrは、アルミニウムマスターアロイとして、鋳造炉に添加した。該TiB2は、TiB2の沈降を回避するために、鋳造用の取鍋内に、鋳造の直前に、Al-5Ti-1B結晶微細化剤ロッドとして添加した。これは、またTiの量を僅かに増大する。というのは、該結晶微細化剤ロッド中に過剰量のTiが存在するからであり、またこの量は上で述べた合金組成におけるTiに加えられる。これらの合金を、完全な液体状態から、拘束ロッド鋳造(Constrained Rod Casting; CRC)金型内で鋳造した。熱間割れ感受性指数を、以下の方法を用いて、各場合において測定した。
該CRC鋳造バー上の割れを、肉眼で検査した。熱間割れの重度に関する5区分を、以下に説明し、該割れに対する指標数Cjを割り当てた:
・割れなし:割れを持たないと思われる鋳造体(Cj=0);
・細い割れ:該バーの周囲の半分に拡がっている、細い割れ(Cj=1);
・軽度の割れ:該バーの周囲全体に渡り拡がっている、細い割れ(Cj=2);
・重度の割れ:該バーの周囲全体に渡り拡がっている、割れ(Cj=3);
・完全な割れ:該バーを完全に又は殆ど分離(Cj=4)。
2つの異なるCRC金型を、異なる長さを持つ鋳造用バー(A〜D)と共に使用し、これらに、以下の表に示すような、長さパラメータを割り当てた:
【0029】
【表2】

【0030】
次に、サンプルに関するHTSの値は、以下の式で与えられる:

ここで、「C」は、該バーにおける該割れの重度に対して割り当てられた数値であり、「L」は、該バーの長さに相当する、割り当てられた数値であり、また「i」は、該バーA、B、C及びDを表す。特定の合金組成物に関する該HTSの値は、該CRC金型を用いて鋳造されたこれら5つの鋳造品の平均値であった。
以下のような結果が得られた:
【0031】
【表3】











【0032】
上記表において、該ホウ素は、TiB2として存在する。全Tiは、あらゆる源由来のTiの全量であり、またTi(過剰量)は、TiB2において結合されていないTiの量である。
合金A15〜A19、B7〜B12、C10〜C19、D9〜D18及びE10〜E18は、添加剤が本発明の範囲内にある合金を表し、一方で残りの合金はその範囲外にある。合金A1、B1、C1、D1及びE1は、添加剤元素を含まない上記の基合金を表す。
本発明の範囲内にある合金に関する該熱間割れ感受性指数は、該範囲外のものの指数よりも低い。この変化は、実際の鋳造において、本発明の合金における熱間割れに起因する割れの存在を、実質的に減じるのに十分である。
実施例2
U-字型形材形状にあるダイカスト部品(人工懸垂アーム)を、ベースアロイA及びB並びに本特許出願の好ましい組成を持つ幾つかの改良品から製造した。
【0033】
サンプルを、液状合金ダイカスト法及び上記した好ましい半-固体法両者を用いて製造した。ここで、該液相線を越える合金素材を、該半-固体領域の温度、該素材同士によって決定される温度及び該合金の温度まで迅速に冷却し、所定期間坩堝に保持して、該金属素材を維持し、次いで鋳造前に、該坩堝から、残留液体の一部を排除した。鋳造前に該半-固体素材から排除された液状合金の量は、15〜18%なる範囲内にあった。これらカスト鋳造部品を、2種の異なる方法によって熱処理した。
処理I:熱処理:530℃にて3時間+急冷+160℃にて18時間。
処理II:熱処理:530℃にて3時間+急冷+170℃にて8時間。
【0034】
浸透ダイ探傷(liquid die penetrant)分析を利用して、該カスト部品に関する熱間割れ指数を決定した。該U-字型形材の真直ぐな側部部分を検査し、またこれらの位置について熱間割れ指数を決定した。同一のこれら部分から切り出したサンプルにつき、引張試験を行った。該熱間割れ指数は、検査した位置において見出された各欠陥に対するスコアを割り当てた、半-定量的な指数である。スコア0は、欠陥がないことを意味し、スコア1は、点欠陥(伝播のない)を意味し、スコア2は、欠陥の伝播長さが、該側部部分の幅以下であることを意味し、またスコア3は、欠陥の伝播長さが、該側部部分の幅を越えることを意味する。該指数は、該U-字型形材の真直ぐな側部部分に沿った4つの位置に関する、これらスコアの和であった。
【0035】
【表4】

【0036】
上記表の結果は、基合金A1に比して、本発明の合金A19、A16及びB9に関する熱間割れ感受性が低いことを示している。一般的に、半-固体法を利用して鋳造した部品は、液体カスト合金よりも良好な熱間割れ性能を示し、また半-固体法は、液体法により製造されたものよりも、該熱処理に対して感受性の低い引張特性をもたらした。
実施例3
ダイカスト部品を、本発明の合金A16から製造した。サンプルは、上記した好ましい半-固体法を利用して製造した。ここでは、該液相線を越える合金素材を、該半-固体領域の温度、該素材同士によって決定される温度及び該合金の温度まで迅速に冷却し、鋳造前に、該坩堝から、如何なる残留液体をも排除せずに、所定期間坩堝に保持して、該金属素材を維持した。これらカスと部品を、以下の方法によって熱処理した。
処理III:熱処理:540℃にて8時間+急冷+170℃にて6時間。
引張試験を行い、結果を以下の表に示す。
【0037】
【表5】

【0038】
上記表の結果は、基合金A1に比して、本発明の合金A16に関する熱間割れ感受性が低いことを示している。更に、これらの結果は、本発明の合金A16が、錬合金6061に関する典型的な値を、5〜15%越える、弾性限界及び機械的強さを持つことを、明らかにしているまた、実施された疲労試験から、半-固体状態における本発明の合金A16が。該錬合金6061と同様な疲労寿命長さを持つことも分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i) 0.010〜0.025質量%なる範囲のSr、及び
ii) ホウ素含有率で測定して、0.001〜0.005質量%のBなる範囲の量のTiB2
を含むことを特徴とする、アルミニウム合金。
【請求項2】
更に、i) TiB2においてBと化学量論的に結合した量を越えて、0.16質量%以下の過剰なTiをも含む、請求項1記載のアルミニウム合金。
【請求項3】
主としてアルミニウムと銅とを含む合金;主としてアルミニウムとマンガンとを含む合金;主としてアルミニウムとケイ素とを含む合金;主としてアルミニウムとマグネシウムとを含む合金;主としてアルミニウム、マグネシウム及びケイ素を含む合金;主としてアルミニウム、マグネシウム、亜鉛及び銅を含む合金からなる群から選択される、請求項1又は2記載のアルミニウム合金。
【請求項4】
アルミニウム、マグネシウム及びケイ素を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金。
【請求項5】
更に、0.010〜0.020質量%なる範囲のSr、及びホウ素含有率で測定して、0.002〜0.004質量%のBなる範囲の量のTiB2を含む、請求項4記載のアルミニウム合金。
【請求項6】
造形カスト用の合金である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金。
【請求項7】
ダイカスト用の合金である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金。
【請求項8】
前記合金が、半-固体カスト法を利用して製造された、合金鋳造品である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金。
【請求項9】
質量%単位で表して、0.6〜0.8のSi、0.12までのFe、0.15〜0.40のCu、0.8〜1.2のMg、0.04〜0.10のCr、0.006〜0.025のSr、ホウ素含有率で測定して0.001〜0.005質量%のなる範囲のBに相当する、0.005〜0.025%のTiB2、TiB2においてBと化学量論的に結合した量を越えて、0.16%以下の過剰なTi、各々0.05未満であり、全体として0.15未満の偶発的な不純物、及び残部のAlなる組成を持つ、請求項1又は2記載のアルミニウム合金。
【請求項10】
半-固体法によって鋳造するための、請求項9記載のアルミニウム合金。
【請求項11】
質量%単位で表して、0.6〜0.8のSi、0.12までのFe、0.15〜0.40のCu、0.8〜1.2のMg、0.04〜0.10のCr、0.006〜0.025のSr、ホウ素含有率で測定して0.001 to 0.005質量%なる範囲のBに相当する、0.005〜0.025%のTiB2、TiB2においてBと化学量論的に結合した量を越えて、0.16%以下の過剰なTi、0.45質量%までのMn、但し全Mn+Feは0.55〜0.65質量%なる範囲にあり、各々0.05未満であり、全体として0.15未満の偶発的な不純物、及び残部のAlなる組成を持つ、請求項1記載のアルミニウム合金。
【請求項12】
完全な溶融状態において加工するための、請求項1記載のアルミニウム合金。
【請求項13】
アルミニウム合金における熱間割れを防止又は排除する方法であって、
アルミニウムを、
i) 0.010〜0.025質量%なる範囲のSr、及び
ii) ホウ素含有率で測定して、0.001〜0.005質量%のBなる範囲の量のTiB2と、
化合させる工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項14】
更に、iii) TiB2においてBと化学量論的に結合した量を越えて、0.16%以下の過剰なTiを化合させる工程をも含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の合金から鋳造した、造形鋳造品。
【請求項16】
ダイカスト法による鋳造品である、請求項15記載の造形鋳造品。
【請求項17】
半-固体状態にある前記合金由来の鋳造品である、請求項15記載の造形鋳造品。
【請求項18】
アルミニウム合金の製造方法であって、
アルミニウムを、
i) 0.010〜0.025質量%なる範囲のSr、及び
ii) ホウ素含有率で測定して、0.001〜0.005質量%のBなる範囲の量のTiB2と、
化合させる工程を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項19】
更に、iii) TiB2においてBと化学量論的に結合した量を越えて、0.16%以下の過剰なTiを化合させる工程をも含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記合金が、主としてアルミニウム、マグネシウム及びケイ素含む、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記合金を鋳造する工程を含む、請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記合金をダイカストする工程を含む、請求項18記載の方法。
【請求項23】
半-固体状態にある前記合金を鋳造する工程を含む、請求項18記載の方法。
【請求項24】
鋳造前に、前記合金を、その液相線状態から、その半-固体状態にまで冷却する、請求項18記載の方法。
【請求項25】
溶融状態にある前記合金を、該合金内に半-固体状態を生成するのに十分な期間、所定温度に維持できる、請求項18記載の方法。
【請求項26】
前記期間が、1秒〜約2分間である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記合金が、球状の固相が液相中に分散された状態に対応する、その半-固体状態にある際に、鋳造前に、該液相の全部ではなく、その少なくとも幾分かを除去する、請求項23記載の方法。
【請求項28】
液相線温度及び固相線温度を持つ、請求項1〜12のいずれか1項に記載のアルミニウム合金を加工する方法であって、
該合金の液相線温度及び固相線温度の範囲内の半-固体を含む、合金を調製する工程、
該合金を、該液相線温度以上の、高い合金の初期温度まで加熱して、該合金を十分に溶融する工程、
該合金の温度を、該初期金属合金の高い温度から、該液相線温度未満であって、かつ該固相線温度を越える半-固体温度まで減じる工程、
球状固体相が液相中に分散された状態にある該合金内に、半-固体構造を生成するのに十分な期間、該合金を該半-固体温度に維持する工程であって、該半-固体構造は、約50質量%未満の固相を含む工程、
該金属合金の該半-固体構造中に存在する該液相の全てではなく少なくともその幾分かを除去して、該合金の、固体に富む半-固体構造を生成する工程であって、該除去工程は、該固体に富む半-固体構造が、約35〜約55質量%の固相を含むようになるまで、液相を除去する工程を含む工程、及び
該固体に富む半-固体構造を持つ該合金を、所定形状に成形する工程、
を含むことを特徴とする、方法。

【公表番号】特表2010−528187(P2010−528187A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509649(P2010−509649)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際出願番号】PCT/CA2008/001051
【国際公開番号】WO2008/144935
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(591094930)アルカン・インターナショナル・リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】ALCAN INTERNATIONAL LIMITED