説明

熱間圧延設備

【課題】被圧延材のウェッジ比率を変化させる仕上圧延スタンドを特定し、適切に被圧延材の蛇行を防止することができる熱間圧延設備を提供する。
【解決手段】熱間圧延ラインの各仕上圧延スタンド間で、被圧延材8の尾端平面形状をそれぞれ検出し、検出した尾端平面形状から各仕上圧延スタンド出側での被圧延材8のウェッジ比率を算出する。そして、入側と出側とでウェッジ比率が許容値以上変化している仕上圧延スタンドを特定し、そのウェッジ比率変化量に基づいて、ウェッジ比率を抑制すべく、特定した仕上圧延スタンド及び当該仕上圧延スタンドよりも下流側に配置された仕上圧延スタンドの少なくとも1つの作業側と駆動側とのロール開度差を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延ラインでの圧延時における被圧延材の蛇行を防止する熱間圧延設備に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延においては、仕上圧延機での圧延時に被圧延材の蛇行がしばしば問題になる。被圧延材の尾端が蛇行すると、圧延スタンドの入側に設置されているサイドガイドに被圧延材が接触し、被圧延材が折れ重なって圧延されてしまう、所謂絞り込みという現象が起こる場合がある。絞り込みによってワークロールが損傷してしまうと、後続の別の被圧延材にその疵が転写されて表面欠陥となるため、当該ワークロールを交換する必要があり、これがライン稼働率の低下を誘発する。このように、仕上圧延機における蛇行は、生産性や表面品質の大きな悪化要因となっている。
【0003】
このような蛇行を防止する技術として、例えば特許文献1の蛇行防止方法がある。この技術は、仕上圧延機の中間スタンド間にて、被圧延材の長手方向における端部の平面形状を測定し、該平面形状からウェッジ比率(幅方向両端の板厚差/幅方向中央位置での板厚)を求め、次材の端部において当該ウェッジ比率を抑制すべく、上記中間スタンド間よりも上流側にある仕上圧延スタンドのレベリング量(左右の圧下量差)を制御するものである。すなわち、ここでは、クロップシャーでのカットにより仕上圧延機入側では長手方向の伸び量が作業側と駆動側で線対称であるという仮定の下、中間スタンド間にて測定した平面形状をもとに作業側もしくは駆動側の形状が変化していることを認識した場合に、ウェッジ比率が変化したと認識している。
【0004】
また、仕上圧延機における圧延方法として、例えば特許文献2に記載の技術がある。この技術は、第1圧延機において、ウェッジ比率が0となるように作業側と駆動側とでレベリングの値を調整すると共に、入側のサイドガイドで幅方向の調整を行い、第2圧延機以降では、ウェッジ比率がなくなったものとして、作業側と駆動側とで実質的に等しいワークロールの間隙に調整するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−285695号公報
【特許文献2】特開2008−43977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術にあっては、中間スタンド間にてウェッジ比率が変化していることを認識しても、当該変化を認識した圧延機間よりも上流側のどの圧延機でウェッジ比率が変化したかは特定することができない。そのため、次材の圧延時に、ウェッジ比率を抑制すべくレベリング量を制御する際には、上流圧延機のレベリング開度を等分して設定するしかない。したがって、当材では該圧延機の入側と出側でウェッジ比率が変化していなかった圧延機において、次材では入側と出側でウェッジ比率が変化し、蛇行発生による通板トラブルが生じるおそれがあった。
【0007】
また、上記特許文献2に記載の技術にあっては、被圧延材の蛇行量・ウェッジ量、幅方向の温度差等の被圧延材による要因や、作業側と駆動側のミル剛性差等の圧延機による要因を完全に網羅することは困難であり、第2圧延機以降において蛇行が発生しても、どの圧延機で蛇行が発生したかを特定することができず、次材の圧延において蛇行を抑止するレベリングを設定することができなかった。
そこで、本発明は、被圧延材のウェッジ比率を変化させる仕上圧延スタンドを特定し、適切に被圧延材の蛇行を防止することができる熱間圧延設備を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る熱間圧延設備は、複数の仕上圧延スタンド出側を検出位置として、熱間圧延ライン外から各検出位置を通過する被圧延材の長手方向端部の平面形状をそれぞれ検出する平面形状検出手段と、前記平面形状検出手段で検出した各平面形状に基づいて、前記各検出位置での前記被圧延材のウェッジ比率を算出するウェッジ比率算出手段と、前記ウェッジ比率算出手段で算出したウェッジ比率に基づいて、隣り合う2つの検出位置間でのウェッジ比率の変化量を算出し、当該ウェッジ比率の変化量が許容値以上であるとき、当該ウェッジ比率の変化量に基づいて、次材において前記ウェッジ比率を抑制すべく、前記2つの検出位置間に配置された仕上圧延スタンド及び当該仕上圧延スタンドよりも下流側に配置された仕上圧延スタンドの少なくとも1つの作業側と駆動側とのロール開度差を制御するロール開度制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0009】
このように、複数の仕上圧延スタンド出側にて被圧延材の平面形状を検出し、検出した平面形状から仕上圧延スタンド出側でのウェッジ比率をそれぞれ算出するので、入側と出側とで被圧延材のウェッジ比率が変化する、即ち被圧延材の蛇行を発生させている仕上圧延スタンドを特定することができる。そして、特定した仕上圧延スタンド及び当該仕上圧延スタンドよりも下流側に配置された仕上圧延スタンドの少なくとも1つのロール開度差を調整するので、もともと蛇行を発生させていない仕上圧延スタンドのロール開度差を変更することなく、ウェッジ比率を抑制することができる。したがって、適切に被圧延材の蛇行を防止することができる。
【0010】
さらに、上記において、前記検出位置は、各仕上圧延スタンドの出側にそれぞれ設定することを特徴としている。
これにより、入側と出側とで被圧延材のウェッジ比率が変化する仕上圧延スタンドを正確に特定することができる。そのため、より適切に被圧延材の蛇行を防止することができる。
【0011】
また、上記において、前記平面形状検出手段は、前記平面形状として、前記被圧延材の幅方向中央位置での長手方向の長さと、前記被圧延材の長手方向端部における作業側と駆動側との長手方向の伸び差を検出し、前記ウェッジ比率算出手段は、前記被圧延材の幅方向所定位置での長手方向の長さに対する、前記被圧延材の長手方向端部における作業側と駆動側との長手方向の伸び差の比率を、前記ウェッジ比率として算出することを特徴としている。
このように、被圧延材の長手方向の片伸び量とウェッジ比率との間に相関関係があることを利用するので、比較的簡易な方法で精度良くウェッジ比率を算出することができる。
【0012】
さらに、上記において、前記平面形状検出手段は、前記熱間圧延ライン外で且つ該熱間圧延ラインに沿う位置に配置され、前記各検出位置を通過する前記被圧延材の表面画像を連続的に撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した前記被圧延材の連続的な表面画像から、前記被圧延材の長手方向端部を撮像した端部画像を検出する端部検出手段と、前記端部検出手段で検出した端部画像内におけるエッジ部を抽出するエッジ部抽出手段と、を備え、前記エッジ部抽出手段で抽出したエッジ部に基づいて、前記被圧延材の前記平面形状を検出することを特徴としている。
【0013】
このように、熱間圧延ライン外に撮像手段を配置するので、熱間圧延ライン内に配置する場合のように撮像手段に耐熱及び耐蒸気等の対策を講ずる必要がなく、安価な装置で被圧延材の平面形状を検出することができる。さらに、熱間圧延ライン外で撮像手段のメンテナンスが可能であるため、ライン稼働中もメンテナンス作業を行うことができる。したがって、メンテナンス作業のためにラインを長時間停止させる必要がなくなり、ライン稼働率を確保することができる。
【0014】
また、上記において、前記端部検出手段は、前記撮像手段で撮像した前記被圧延材の連続的な表面画像を2値化処理した2値化連続画像における白色画素の分布が、前記端部画像の条件を満足する分布となっている領域を前記端部画像として検出することを特徴としている。
これにより、被圧延材の連続表面画像から精度良く端部画像を検出することができるので、精度良くウェッジ比率を算出することができる。
【0015】
さらにまた、上記において、前記撮像手段は、前記熱間圧延ラインの圧延方向での配置位置が、前記検出位置に対して所定距離オフセットした位置となるように配置されており、前記平面形状検出手段は、前記エッジ部抽出手段で抽出したエッジ部に対応するエッジ画像を、前記撮像手段の配置位置と前記検出位置との関係に基づいて補正する補正手段を備えることを特徴としている。
【0016】
これにより、被圧延材の端部を圧延方向に対して斜め方向から見たエッジ画像を、圧延方向に対して直交する方向から見たエッジ画像に変換することができる。したがって、実際にはクロップが発生していないにもかかわらず、撮像手段の配置位置と被圧延材の撮像位置との関係によって被圧延材の幅方向の一端側が伸びているように見える場合であっても、ウェッジ比率を誤算出してしまうのを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の仕上圧延スタンド出側でのウェッジ比率をそれぞれ算出するので、入側と出側とでウェッジ比率が変化する仕上圧延スタンドを特定することができる。そのため、ウェッジ比率を抑制すべく作業側と駆動側とのロール開度差を補正する仕上圧延スタンドを適切に選定することができる。したがって、被圧延材の蛇行を適切に防止し、生産性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態における熱間圧延設備の構成を示す図である。
【図2】画像処理装置で実行する尾端平面形状検出処理手順を示すフローチャートである。
【図3】尾端検出原理を説明する図である。
【図4】エッジ検出原理を説明する図である。
【図5】尾端平面形状の長手方向の定義を示す図である。
【図6】被圧延材の厚さ方向の定義を示す図である。
【図7】長手方向の体積変化を示す図である。
【図8】厚さ方向の体積変化を示す図である。
【図9】長手方向の伸び差とウェッジ比率との相関関係を示す図である。
【図10】制御装置で実行するロール開度制御処理手順を示すフローチャートである。
【図11】本実施形態の動作を説明する図である。
【図12】画角合わせ前後の視点を示す図である。
【図13】画角合わせ原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(構成)
図1は、本実施形態における熱間圧延設備の構成を示す図である。
図中、符号1は熱間圧延設備である。この熱間圧延設備1は、熱間圧延ライン上流側から加熱炉2、サイジングプレス3、複数の粗圧延スタンド(R1〜R3)からなる粗圧延機4、クロップシャー5、複数の仕上圧延スタンド(F1〜F7)からなる仕上圧延機6、巻き取り設備7を備えている。また、符号8は被圧延材である。
【0020】
この熱間圧延設備1は、熱間圧延ラインを搬送される被圧延材8の尾端の平面形状を検出する平面形状検出装置10と、平面形状検出装置10の検出結果をもとに所定の仕上圧延スタンドの作業側と駆動側のロール開度差を制御するロール開度制御装置20とを備える。平面形状検出装置10は、複数台のカメラ11と、画像処理装置12とを備える。
複数台のカメラ11は、それぞれ熱間圧延ラインの外部で且つ熱間圧延ラインに沿う位置に設置されており、熱間圧延ライン外から各仕上圧延スタンド間を通過する被圧延材8の表面画像を連続的に撮像し、被圧延材8の連続画像として取得する。すなわち、各仕上圧延スタンド出側をそれぞれ検出位置として、カメラ11で被圧延材8を撮像する。このカメラ11は、例えば、近赤外線対応カメラであり、仕上圧延スタンド間の被圧延材8の通過速度に応じたシャッター速度(例えば、1/1000s)に設定されている。
【0021】
各カメラ11で取得した連続画像は、画像処理装置12に入力される。画像処理装置12は、図示しないCPUやメモリ等を有するマイクロコンピュータやパーソナルコンピュータなどの計算機によって構成され、後述する尾端平面形状検出処理を実行する。この尾端平面形状検出処理により、被圧延材8の連続画像について画像処理を施し、被圧延材8の尾端の平面形状を検出する。画像処理装置12で検出された尾端平面形状はメモリに保存される。
【0022】
次に、画像処理装置12で実行する尾端平面形状検出処理について説明する。
図2は、尾端平面形状検出処理手順を示すフローチャートである。
先ずステップS1で、画像処理装置12は、カメラ11で取得した被圧延材8の連続画像を取得し、ステップS2に移行する。
ステップS2では、画像処理装置12は、前記ステップS1で取得した連続画像をもとに尾端検出処理を行う。はじめに、取得した連続画像に対して尾端検出処理の対象範囲を設定し、設定した尾端検出対象範囲の画素毎の輝度情報を得る。そして、尾端検出対象範囲に対して、予め設定した白色画素判定閾値Xを用いて2値化処理を行う。例えば、図3(a)に示す連続画像(原画像)を取得した場合、尾端検出対象範囲αに対して2値化処理を行い、図3(b)に示す2値化画像を得る。
【0023】
次に、2値化した画像において列(幅方向)毎に白色画素数を計測する。すると、例えば図3(c)に示すような、圧延方向を横軸、白色画素数を縦軸とした計測結果が得られる。そして、この尾端検出対象範囲αにおいて、圧延方向最下流(図3では右端)の白色画素数である右端白色画素数、白色画素数が“0”の列の有無、白色画素数の合計をそれぞれ求める。
【0024】
次に、ステップS3では、画像処理装置12は、前記ステップS2の尾端検出処理結果に基づいて、尾端検出対象範囲αの画像が尾端を撮像した尾端画像であるか否かを判定する。具体的には以下の3項目を確認し、すべての条件を満足する場合にその画像を尾端画像と判定する。
[1]右端白色画素数が定数(幅方向の画素数のY%)以上ある。
[2]白色画素数が0個の列がある。
[3]白色画素数の合計が定数Z以上ある。
【0025】
そして、尾端ではないと判定した場合には前記ステップS1に移行し、尾端であると判定した場合にはステップS4に移行する。
ステップS4では、画像処理装置12は、前記ステップS1で取得した連続画像をもとにエッジ検出処理を行う。先ず、取得した連続画像に対してエッジ検出処理の対象範囲を設定し、設定したエッジ検出対象範囲の画素毎の輝度情報を得る。例えば、図4(a)に示す連続画像(原画像)を取得した場合、エッジ検出対象範囲βの画素毎の輝度情報は図4(b)に示すようになる。なお、ここでは説明を簡単にするために、画素を非常に粗くして示している。また、エッジ検出対象範囲βを、上述した尾端検出対象範囲αと同一とする。
【0026】
次に、エッジ検出対象範囲βにおいて、画素毎の水平輝度差を算出する。水平輝度差は、圧延方向下流の数ピクセル(Kピクセル)の合計輝度値から、圧延方向上流の数ピクセル(Kピクセル)の合計輝度値を引くことで算出する。すなわち、K=1として図4(b)に示す輝度情報をもとに水平輝度差を算出すると、図4(c)に示す結果が得られる。そして、行(圧延方向)毎に水平輝度差の最大値を選定すると、図4(c)の網かけで示すように、エッジ検出対象範囲βにおけるエッジ部が描写できる。
【0027】
次に、ステップS5では、画像処理装置12は、前記ステップS4のエッジ検出処理結果をもとに尾端平面形状を検出する。ここでは、仕上圧延機6の第iスタンド出側での尾端平面形状として、図5に示すように、板幅Wiと、第iスタンド出側で換算したときの板幅中央位置での板の長さLiと、幅方向両端部からそれぞれ一定距離ΔWずつ内側の位置での長手方向の伸び差dLiとを検出する。この図5では、作動側(図5の下側)が駆動側(図5の上側)よりも長く伸びた例を示している。ここで、Li>>dLiであり、例えば、Liは尾端の変形が及ぶ範囲(被圧延材8の幅の1.5倍〜2倍)の長手方向の長さを用いることもできる。また、板幅Wiは長さ方向の変動に対して無視できるものとする。
【0028】
次に、ステップS6では、画像処理装置12は、前記ステップS5で検出した尾端平面形状をメモリに保存し、尾端平面形状検出処理を終了する。
このように、熱間圧延ライン外に設置したカメラ11によって、熱間圧延ラインの各仕上圧延機間でそれぞれ被圧延材8を連続的に撮像し、被圧延材8の尾端通過時にはその平面形状を検出し、画像処理装置12内のメモリに保存する。
【0029】
そして、ロール開度制御装置20は、画像処理装置12で検出した各仕上圧延スタンド間での尾端平面形状をもとに、各仕上圧延スタンド出側での被圧延材8のウェッジ比率を算出し、圧延前後でウェッジ比率が変化している仕上圧延スタンドを特定する。そして、当該ウェッジ比率の変化量に基づいて、次材においてウェッジ比率が抑制されるように、特定した仕上圧延スタンド及び当該仕上圧延スタンドよりも下流側に配置された仕上圧延スタンドの少なくとも1つの作業側と駆動側のロール開度差を補正する。
【0030】
先ず、被圧延材8のウェッジ比率の算出原理について説明する。
図6は、被圧延材8の厚さ方向の定義を示す図である。この図6に示すように、第iスタンド出側での被圧延材8の厚さ方向の形状は、板幅Wi、板幅中央位置での板厚Hi、幅方向両端部からそれぞれ一定距離ΔWずつ内側の位置での板厚差dHiによって表される。なお、この図6は、作動側(図6の左側)が駆動側(図6の右側)よりも厚い例を示している。また、Hi>>dHiであり、板幅Wiは長さ方向の変動に対して無視できるものとする。
【0031】
図7に示すように、長手方向において伸び差のある部分(網掛け部分)の体積VLは、次式で表すことができる。
VL=Hi・Wi・dLi・1/2 ………(1)
同様に、図8に示すように、厚さ方向の差がある部分(網掛け部分)の体積VHは、次式で表すことができる。
VH=dHi・Wi・Li・1/2 ………(2)
ここで、図7に示す板全体の体積は(Hi・Wi・Li+VL)、図8に示す板全体の体積は(Hi・Wi・Li+VH)と表すことができるため、次式が成り立つ。
VL=VH ………(3)
上記(3)式に、上記(1)及び(2)式を代入して変形すると、次式が成り立つ。
dLi/Li=dHi/Hi ………(4)
上記(4)式は、被圧延材8の端部における長手方向の伸び差が、ウェッジ比率と同等の指標として扱えることを示している。
【0032】
仕上圧延スタンド(F5)の前後で片伸び量の変化とウェッジ比率の変化との関係を調査したところ、図9に示す結果が得られた。ここでは、試料として絞りが発生しやすい材料を用いて解析を実施した。なお、片伸び量とは、作業側の長手方向の伸び量と駆動側の長手方向の伸び量との差であり、作業側の最尾端が駆動側の最尾端に対して伸びている場合、片伸び量変化はプラスの値となる。この図9に示すように、片伸び量変化とウェッジ比率変化とは負の相関関係にあることがわかった。ここで、iスタンドにおける片伸び比率は下記により定義している。
(iスタンドにおける片伸び比率)=(iスタンド出側作業側伸び量[mm]−iスタンド駆動側出側伸び量[mm])*(iスタンド出側板厚[mm])
なお、上記において出側板厚をかけているのは、板厚による伸び量の違いを解消するためである。
【0033】
そこで、本実施形態では、ロール開度制御装置20で、被圧延材8の尾端が第iスタンドを通過したときに、画像処理装置12で第iスタンド出側の尾端平面形状として長手方向の伸び差dLi及び板の長さLiを検出し、dLi/Li(=dHi/Hi)を第iスタンド出側でのウェッジ比率ψiとして算出する。このように、各仕上圧延スタンドの出側でのウェッジ比率をそれぞれ算出する。
【0034】
そして、各仕上圧延スタンドについて、入側と出側でのウェッジ比率の変化量(ψi-1−ψi)を監視し、ウェッジ比率変化量(ψi-1−ψi)に異常がある場合には、当該異常を検出した第iスタンド及び当該第iスタンドよりも下流側に配置された仕上圧延スタンドを対象としてロール開度差を補正する。
図10は、ロール開度制御装置20で実行するロール開度制御処理手順を示すフローチャートである。
【0035】
先ずステップS11で、ロール開度制御装置20は、画像処理装置12で検出した第iスタンド出側の尾端平面形状(長手方向の伸び差dLi及び板の長さLi)を取得し、ステップS12に移行する。なお、iの初期値は“1”である。
ステップS12では、ロール開度制御装置20は、前記ステップS11で取得した尾端平面形状に基づいてdLi/Liを算出し、ステップS13に移行する。
ステップS13では、ロール開度制御装置20は、前記ステップS12で算出したdLi/Liを、第iスタンド出側での被圧延材8のウェッジ比率ψiとして算出し、ステップS14に移行する。
【0036】
ステップS14では、ロール開度制御装置20は、先ず、第(i−1)スタンド出側でのウェッジ比率ψi-1と第iスタンド出側でのウェッジ比率ψiとの差、すなわち第iスタンドの入側と出側でのウェッジ比率変化量(ψi-1−ψi)を算出する。なお、上述したように、被圧延材8の両端部はクロップシャー5によって平面形状が矩形となるように切断整形されているため、第1スタンドF1の入側でのウェッジ比率ψ0=0とする。
【0037】
そして、ウェッジ比率変化量|ψi-1−ψi|が許容値δi以上であるか否かを判定する。ここで、許容値δiは、被圧延材8の蛇行が発生しない程度のウェッジ比率変化量に設定する。|ψi-1−ψi|<δiである場合には後述するステップS16に移行し、|ψi-1−ψi|≧δiである場合にはステップS15に移行する。
ステップS15では、ロール開度制御装置20は、第iスタンド以降のロール開度設定について、以下の補正を行う。
dSk=dSk0−gk(ψi-1−ψi) ………(5)
ここで、i≦k≦N(Nは、仕上圧延スタンドの台数(図1ではN=7))であり、dSkは第kスタンドの補正後の左右圧下量差指令値、dSk0は第kスタンドの補正前の左右圧下量差指令値である。
【0038】
また、gkは、第kスタンドのウェッジ比率変化(ψi-1−ψi)に対する影響係数であり、0≦gk≦1である。第kスタンドをロール開度の補正対象とする場合にはgk>0とし、第kスタンドをロール開度の補正対象としないときはgk=0とする。特に、ウェッジ比率変化(ψi-1−ψi)が生じている第iスタンドについては、当該ウェッジ比率変化(ψi-1−ψi)を無くしたいため、gk=1とする。
【0039】
ステップS16では、ロール開度制御装置20は、仕上圧延スタンド番号iをインクリメントしてからステップS17に移行する。
ステップS17では、ロール開度制御装置20は、仕上圧延スタンド番号iが、仕上圧延スタンドの総数に相当する所定値Nに達しているか否かを判定する。そして、i=Nでない場合には前記ステップS11に移行し、i=Nである場合にはステップS18に移行する。
【0040】
ステップS18では、ロール開度制御装置20は、補正後の左右圧下量差指令値dSkをもとに、第iスタンドから第Nスタンドまでのロール開度を調整し、ロール開度制御処理を終了する。
なお、図1において、カメラ11が撮像手段に対応し、カメラ11及び画像処理装置12が平面形状検出手段に対応し、ロール開度制御装置20がロール開度制御手段に対応している。また、図2において、ステップS2が端部検出手段に対応し、ステップS4がエッジ部抽出手段に対応している。
【0041】
(動作)
次に、本実施形態の動作について説明する。
熱間圧延設備1において、加熱炉2によって数百〜千数百℃に加熱された被圧延材8は、サイジングプレス3によって所定幅にプレスされた後、粗圧延機4により圧延されて帯状に延ばされる。そして、その被圧延材8は、クロップシャー5によって先端及び尾端のクロップが切断除去され、先端平面形状及び尾端平面形状が矩形に整形された後、仕上圧延機6により圧延される。このとき、図11に示すように、熱間圧延ライン外に設置された7台のカメラ11は、仕上圧延機6の各仕上圧延スタンドの出側を通過する被圧延材8を連続的に撮像する。
【0042】
各カメラ11で撮像した被圧延材8の表面画像は一定周期で画像処理装置12に入力され、画像処理装置12で尾端検出処理が行われる。例えば、第3スタンドF3出側を撮像対象としたカメラ11が、第3スタンドF3と第4スタンドF4との間で被圧延材8の中央部を撮像しているときは、撮像した表面画像における尾端検出対象範囲αを2値化処理しても(図2のステップS2)、白色画素数が“0”となる列は存在しない。そのため、画像処理装置12は、このとき撮像した画像は尾端画像ではないと判断する(ステップS3でNo)。
【0043】
その後、被圧延材8の尾端が、第3スタンドF3と第4スタンドF4との間を通過し、第3スタンドF3出側を撮像対象としたカメラ11がこれを撮像すると、2値化画像において、[1]右端白色画素数が定数(幅方向の画素数のY%)以上あり、[2]白色画素数が0個の列があり、[3]白色画素数の合計が定数Z以上あることになる。そのため、画像処理装置12は、このとき撮像した表面画像は尾端画像であると判断する(ステップS3でYes)。
【0044】
このように、本実施形態では、被圧延材8を熱間圧延ライン外からカメラ11によって連続的に撮像し、得られた連続画像の輝度情報を解析することで、熱間圧延ライン上の各仕上圧延スタンド間を通過する被圧延材8の尾端を検出する。その際、連続画像を所定の白色画素判定閾値Xを用いて2値化処理し、2値化画像における白色画素の分布が尾端画像の条件(上記条件[1]〜[3])を満足するときに尾端であると判断する。
【0045】
本実施形態のように、熱間圧延ラインの各仕上圧延スタンド間を通過する被圧延材8を撮像する場合、その画像はライン内の温度や水蒸気によって輝度変動が比較的小さいものとなる。そのため、2値化処理を行わずに尾端を検出しようとすると見逃しが発生してしまう。2値化処理を用いて尾端検出処理を行うことで、連続画像から精度良く尾端検出を行うことができる。
【0046】
画像処理装置12は、撮像した表面画像が尾端画像であると判断すると、この画像のエッジ部を抽出する(ステップS4)。そして、このとき得られたエッジ画像から、被圧延材8の尾端平面形状の指標となる板の長さLi(第3スタンドF3出側の場合、L3)と長手方向の伸び差dLi(第3スタンドF3出側の場合、dL3)とを検出し(ステップS5)、これをメモリに記憶する(ステップS6)。
【0047】
第3スタンドF3出側において、図11中に示すように、被圧延材8の尾端の平面形状が矩形状となっている場合、被圧延材8の駆動側及び作業側の何れにおいても伸びは発生していない。そのため、この場合には、伸び差dL3=0となる。
したがって、このとき画像処理装置12が第3スタンドF3出側で検出した尾端平面形状をロール開度制御装置20が取得すると(図10のステップS11)、ロール開度制御装置20は、第3スタンドF3出側でのウェッジ比率ψ3=dL3/L3=0を算出する(ステップS12及びS13)。
【0048】
その後、被圧延材8の尾端が第4スタンドF4を通過すると、第4スタンドF4と第5スタンドF5との間でカメラ11が尾端画像を撮像する。すると、画像処理装置12は、その尾端画像から、尾端平面形状として第4スタンドF4出側での板の長さL4と長手方向の伸び差dL4とを検出する。この第4スタンドF4出側においても、図11中に示すように、被圧延材8の尾端の平面形状が矩形状となっている場合、伸び差dL4=0となる。したがって、このとき画像処理装置12が第4スタンドF4出側で検出した尾端平面形状をロール開度制御装置20が取得すると(ステップS11)、ロール開度制御装置20は、第4スタンドF4出側でのウェッジ比率ψ4=dL4/L4=0を算出する(ステップS12及びS13)。
【0049】
上記の例では、第3スタンドF3出側でのウェッジ比率ψ3と、第4スタンドF4出側でのウェッジ比率ψ4とは共に“0”であるため、第4スタンドF4前後でのウェッジ比率の変化量(ψ3−ψ4)は“0”となる(ステップS14でNo)。したがって、この場合には、第4スタンドF4の前後でウェッジ比率の変化が正常であるとして、第4スタンドF4〜第7スタンドF7のロール開度差の調整は行わない。
【0050】
その後、被圧延材8の尾端が第5スタンドF5を通過すると、第5スタンドF5と第6スタンドF6との間でカメラ11が尾端画像を撮像する。すると、画像処理装置12は、その尾端画像から、尾端平面形状として第5スタンドF5出側での板の長さL5と長手方向の伸び差dL5とを検出する。この第5スタンドF5出側において、図11中に示すように、被圧延材8の尾端の平面形状が矩形状となっていない場合、伸び差dL5≠0となる。したがって、このとき画像処理装置12が第5スタンドF5出側で検出した尾端平面形状をロール開度制御装置20が取得すると(ステップS11)、ロール開度制御装置20は、第5スタンドF5出側でのウェッジ比率ψ5=dL5/L5≠0を算出する(ステップS12及びS13)。
【0051】
この第5スタンドF5の前後で、被圧延材8が蛇行していると判断できる程度のウェッジ比率変化が生じている場合、|ψ4−ψ5|は許容値δ5以上となる(ステップS14でYes)。したがって、この場合には、第5スタンドF5の前後でウェッジ比率の変化が異常であるとして、第5スタンドF5〜第7スタンドF7のロール開度差の調整を行う。
このとき、ウェッジ比率の変化量(ψ4−ψ5)に基づいて、当該ウェッジ比率変化が無くなるように、ウェッジ比率変化が異常となっている仕上圧延スタンド以降の第5スタンドF5〜第7スタンドF7の左右圧下量差指令値dS5〜dS7を補正する(ステップS15)。その際、左右圧下量差指令値dS5〜dS7は、第5スタンドF5〜第7スタンドF7の、第5スタンド前後でのウェッジ比率変化(ψ4−ψ5)に対する影響を考慮して補正する。
【0052】
その後、被圧延材8の尾端が第6スタンドF6及び第7スタンドF7を通過しても、第6スタンドF6及び第7スタンドF7の出側における尾端平面形状が、図11中に示すように、第5スタンドF5出側における尾端平面形状と同じである場合、ウェッジ比率ψ6及びψ7は、それぞれウェッジ比率ψ5と等しくなる。そのため、第6スタンドF6前後でのウェッジ比率の変化量(ψ5−ψ6)及び第7スタンドF7前後でのウェッジ比率の変化量(ψ6−ψ7)は、それぞれ“0”となる(ステップS14でNo)。したがって、この場合には、第6スタンドF6及び第7スタンドF7のロール開度差の調整は行わない。
【0053】
すなわち、上記の例では、ロール開度制御装置20は、最終的に第5スタンドF5〜第7スタンドF7に対して、第5スタンドF5前後でのウェッジ比率変化量(ψ4−ψ5)に基づいた左右圧下量差指令値dS5〜dS7が設定される。そのため、ロール開度制御装置20は、当材の仕上圧延が完了した後、次材の先端が第1スタンドF1に達するまでに、第5スタンドF5〜第7スタンドF7の左右圧下量差を補正する(ステップS18)。これにより、次材では、第5スタンドF5の前後でウェッジ比率変化が生じなくなり、被圧延材8は蛇行せずに熱間圧延ラインを搬送されることになる。
【0054】
ところで、熱間圧延ラインを搬送される被圧延材の尾端平面形状を認識する際には、熱間圧延ライン内に設置したカメラ等を用いるのが一般的であったが、熱間圧延ライン内は熱や蒸気等の問題により設置環境が悪いため、当該ライン内にカメラを設置するには、カメラに耐熱及び耐蒸気等様々な対策を講ずる必要がある。そのため、その分高いコストを必要とする。また、ライン内でカメラのメンテナンスを行う必要があるため、ライン稼働中はメンテナンス作業を行うことができない。すなわち、メンテナンス作業にはラインの長時間停止が伴うため、生産性が低下する。
【0055】
これに対して、本実施形態では、熱間圧延ライン外に設置したカメラ11によって熱間圧延ラインを搬送される被圧延材8を撮像することで、被圧延材8の尾端平面形状を検出することができる。このように、被圧延材8を撮像するカメラ11を設置環境の良い熱間圧延ライン外に設置するので、カメラに耐熱及び耐蒸気等の対策を講ずる必要がなく、その分のコストを削減することができる。また、熱間圧延ライン外でカメラ11のメンテナンス作業を行うことができるので、ライン稼働中もメンテナンスが可能となる。このように、費用面とメンテナンス面とで好適な構成とすることができる。
【0056】
また、仕上圧延機6の各仕上圧延スタンド前後での被圧延材のウェッジ比率変化を監視するので、ウェッジ比率変化量が異常となる仕上圧延スタンドを正確に特定することができる。したがって、特定した仕上圧延スタンドと当該仕上圧延スタンドよりも下流側に配置した仕上圧延スタンドとの左右圧下量差を、上記ウェッジ比率変化量に基づいて、ウェッジ比率を抑制するように補正すれば、次材の圧延において確実に被圧延材の蛇行を抑止することができる。さらに、もともと蛇行を発生させていなかった上流側の仕上圧延スタンドのレベリングは変更しないようにすることができるので、新たな蛇行を発生させてしまうおそれがない。
【0057】
(効果)
このように、上記実施形態では、各仕上圧延スタンド間で被圧延材の平面形状を検出し、検出した平面形状から各仕上圧延スタンド出側でのウェッジ比率をそれぞれ算出するので、各仕上圧延スタンドの前後でのウェッジ比率の変化量を監視することができる。そして、ウェッジ比率の変化量が許容値以上となる仕上圧延スタンドを特定することで、被圧延材の蛇行を発生させている仕上圧延スタンドを正確に特定することができる。
【0058】
また、特定した仕上圧延スタンド及び当該仕上圧延スタンドよりも下流側に配置された仕上圧延スタンドのロール開度差を、当該ウェッジ比率の変化量に基づいて補正するので、もともと蛇行を発生させていない上流側の仕上圧延スタンドのロール開度差を変更することなく、適切にウェッジ比率を抑制することができる。したがって、次材において適切に被圧延材の蛇行を防止することができる。
さらに、ウェッジ比率の算出に際し、被圧延材の長手方向の片伸び量の変化とウェッジ比率の変化との間に相関関係があることを利用するので、比較的簡易な方法で精度良くウェッジ比率を算出することができる。
【0059】
また、熱間圧延ライン外に撮像手段を配置して熱間圧延ラインを搬送される被圧延材を撮像するので、撮像手段に耐熱及び耐蒸気等の対策を講ずる必要がなく、安価に構成することができると共に、熱間圧延ラインの稼動時においても撮像手段のメンテナンスが可能となる。さらに、温度や水蒸気等の撮像手段への外乱を排除することができるので、精度よく尾端平面形状を検出することができる。
【0060】
また、尾端平面形状検出処理に際し、撮像手段で撮像した被圧延材の連続的な表面画像から、被圧延材の尾端を撮像した尾端画像を検出した後、検出した尾端画像内におけるエッジ部を検出するエッジ検出処理を行う。このとき、撮像手段で撮像した前記被圧延材の連続的な表面画像を2値化処理した2値化連続画像における白色画素の分布に基づいて尾端画像を検出するので、熱間圧延ラインを搬送される被圧延材の尾端を精度良く検出することができる。また、尾端画像に対してエッジ検出処理を行うので、尾端平面形状を正確に描写することができる。
以上のように、精度良く尾端平面形状を検出することができるので、検出した尾端平面形状から精度良くウェッジ比率を算出することができる。その結果、被圧延材の蛇行を適切に防止し、絞りトラブルの発生を抑止することができる。
【0061】
(応用例)
なお、上記実施形態においては、カメラ11の圧延方向での配置位置が、尾端平面形状の検出位置と一致している場合について説明したが、設備上の制約がある場合には、カメラ11の圧延方向での配置位置を、尾端平面形状の検出位置に対して所定距離オフセットさせて配置する場合がある。この場合には、図2のステップS5でエッジ画像に対して画角合わせ処理を行ってから、尾端平面形状を検出するようにする。画角合わせ処理は、圧延方向に対して斜め方向(図12の実線で示す位置)から撮像したオリジナル画像を、圧延方向に対して直交する方向(図12の破線で示す位置)から撮像した画像に変換する処理である。
【0062】
図13は、画角合わせ原理を示す図である。図13に示すように、先ず、オリジナル画像の圧延方向(x方向)両端のエッジ延長線の交点Pを求める。次に、交点Pを通り画像に対して垂直な直線L1を計算する。次に、交点Pとオリジナル画像の圧延方向最上流で幅方向最も手前の点(引き伸ばし点)Qとを通る直線L2を計算する。最後に、オリジナル画像の各ラインについて、直線L1と直線L2との間の画像を引き伸ばす。なお、画角合わせ処理に際し、正方形等のサンプル板を撮像したサンプル画像から、予め画角合わせ処理のための各ラインの補正量(引き伸ばし量)を決定しておき、当該補正量を用いて上記エッジ画像の画角合わせ処理を行うものとする。
【0063】
このように、エッジ検出処理により得られたエッジ画像を、カメラ11の配置位置と被圧延材8の尾端平面形状の検出位置との関係に基づいて補正する画角合わせ処理を行い、その結果を被圧延材8の尾端平面形状を示すエッジ画像とする。そのため、被圧延材8の尾端を圧延方向に対して斜め方向から見たエッジ画像を、圧延方向に対して直交する方向から見たエッジ画像に変換して、片伸び量を検出することができる。したがって、尾端平面形状を正確に認識してウェッジ比率を正確に算出することができる。
【0064】
(変形例)
なお、上記実施形態においては、被圧延材8の尾端平面形状の検出位置に対応させて複数台のカメラ11を設ける場合について説明したが、カメラ11の台数は検出位置の数に対して少なく設定してもよい。この場合、例えば、仕上圧延スタンドF1−F2間を撮像した後、カメラ11を移動して仕上圧延スタンドF2−F3間を撮像するなど、1台のカメラ11で複数の検出位置を撮像するようにする。これにより、カメラ11を多数設けなくて済むので、安価な設備とすることができる。
【0065】
また、上記実施形態においては、被圧延材8の尾端部に関して説明したが、尾端部に代えて先端部にも適用可能である。
さらに、上記実施形態においては、各仕上圧延スタンドの前後でウェッジ比率変化を監視するものとし、各仕上圧延スタンドの出側を被圧延材8の平面形状の検出位置とする場合について説明したが、当該検出位置が複数の仕上圧延スタンドの出側で設定されていれば本発明を適用することができる。この場合にも、隣り合う2つの検出位置間でのウェッジ比率の変化量を算出し、当該ウェッジ比率の変化量が許容値以上であるか否かを判定する。そして、ウェッジ比率の変化量が許容値以上であるとき、当該ウェッジ比率の変化量に基づいて、次材においてウェッジ比率を抑制すべく、上記2つの検出位置間に配置された仕上圧延スタンド及び当該仕上圧延スタンドよりも下流側に配置された仕上圧延スタンドの作業側と駆動側とのロール開度差を補正すればよい。これにより、ウェッジ比率変化量が異常となる仕上圧延スタンドを絞り込むことができるので、上記実施形態に近い効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0066】
1…熱間圧延設備、2…加熱炉、3…サイジングプレス、4…粗圧延機、5…クロップシャー、6…仕上圧延機、7…巻き取り設備、8…被圧延材、10…平面形状検出装置(平面形状検出手段)、11…カメラ(撮像手段)、12…画像処理装置、20…ロール開度制御装置(ロール開度制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の仕上圧延スタンド出側を検出位置として、熱間圧延ライン外から各検出位置を通過する被圧延材の長手方向端部の平面形状をそれぞれ検出する平面形状検出手段と、
前記平面形状検出手段で検出した各平面形状に基づいて、前記各検出位置での前記被圧延材のウェッジ比率を算出するウェッジ比率算出手段と、
前記ウェッジ比率算出手段で算出したウェッジ比率に基づいて、隣り合う2つの検出位置間でのウェッジ比率の変化量を算出し、当該ウェッジ比率の変化量が許容値以上であるとき、当該ウェッジ比率の変化量に基づいて、次材において前記ウェッジ比率を抑制すべく、前記2つの検出位置間に配置された仕上圧延スタンド及び当該仕上圧延スタンドよりも下流側に配置された仕上圧延スタンドの少なくとも1つの作業側と駆動側とのロール開度差を制御するロール開度制御手段と、を備えることを特徴とする熱間圧延設備。
【請求項2】
前記検出位置は、各仕上圧延スタンドの出側にそれぞれ設定することを特徴とする請求項1に記載の熱間圧延設備。
【請求項3】
前記平面形状検出手段は、前記平面形状として、前記被圧延材の幅方向中央位置での長手方向の長さと、前記被圧延材の長手方向端部における作業側と駆動側との長手方向の伸び差を検出し、
前記ウェッジ比率算出手段は、前記被圧延材の幅方向所定位置での長手方向の長さに対する、前記被圧延材の長手方向端部における作業側と駆動側との長手方向の伸び差の比率を、前記ウェッジ比率として算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の熱間圧延設備。
【請求項4】
前記平面形状検出手段は、
前記熱間圧延ライン外で且つ該熱間圧延ラインに沿う位置に配置され、前記各検出位置を通過する前記被圧延材の表面画像を連続的に撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像した前記被圧延材の連続的な表面画像から、前記被圧延材の長手方向端部を撮像した端部画像を検出する端部検出手段と、
前記端部検出手段で検出した端部画像内におけるエッジ部を抽出するエッジ部抽出手段と、を備え、
前記エッジ部抽出手段で抽出したエッジ部に基づいて、前記被圧延材の前記平面形状を検出することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の熱間圧延設備。
【請求項5】
前記端部検出手段は、前記撮像手段で撮像した前記被圧延材の連続的な表面画像を2値化処理した2値化連続画像における白色画素の分布が、前記端部画像の条件を満足する分布となっている領域を前記端部画像として検出することを特徴とする請求項4に記載の熱間圧延設備。
【請求項6】
前記撮像手段は、前記熱間圧延ラインの圧延方向での配置位置が、前記検出位置に対して所定距離オフセットした位置となるように配置されており、
前記平面形状検出手段は、
前記エッジ部抽出手段で抽出したエッジ部に対応するエッジ画像を、前記撮像手段の配置位置と前記検出位置との関係に基づいて補正する補正手段を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の熱間圧延設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−75326(P2013−75326A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217969(P2011−217969)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】