説明

熱電モジュールの製造方法及び熱電モジュール

【課題】より薄い熱電モジュールを提供する。
【解決手段】フレキシブル熱電モジュールは、1組のフレキシブル基板12,13と、各フレキシブル基板の片方の側面に設けられた複数の導電接点20と、複数の導電接点を有する1組のフレキシブル基板の対向面間に電気接続された複数のPタイプ14およびNタイプ16熱電素子であって、複数の導電接点が隣接するPタイプおよびNタイプ素子を互いに直列に接続し、各PタイプおよびNタイプ素子が一方の基板の複数の導電接点の1つに接続された第1端部および他方の基板の複数の導電接点の1つに接続された第2端部を有する、複数のPタイプおよびNタイプ熱電素子とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して熱電デバイスに関する。本発明は、特に、熱電デバイスおよび熱電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのタイプの工業装置は、運転中に冷却あるいは加熱を必要とする。典型的な例には、半導体処理装置、製薬および生物工学における発酵/分離バット、工作機械、エアコン、プラスチックの成形/押出成形装置、分析装置、溶接装置、レーザなどが含まれる。所要の冷却あるいは加熱を行う方法の一般的な方法のひとつとして、再循環冷却材の温度制御ユニットあるいは冷却装置が挙げられる。代表的な冷却装置は、熱交換器を経由して再循環冷却回路に接続されたフロンベースの冷却回路から構成される。しかし、国際社会においてオゾン層破壊および地球温暖化が次第に配慮されるようになるにつれ、標準的なフロンベースの冷却技術に替わるものが必要とされている。熱電変換技術は、クリーンで、環境にやさしい、堅実な代替品を提供する。
【0003】
熱電冷却は、1834年に、ジーン・チャールズ・アタナーゼ ペルチェが、2つの類似しない導体の接合点を通る電流が、その接合点において、電流の流れの方向によって加熱あるいは冷却を誘発するということを観察した際に、初めて発見された。これはペルチェ効果と呼ばれる。熱電変換は、1960年代の初めに、最も強い熱電効果を発揮すると判明された熱電半導体材料が発達するまで、実用的には使用されなかった。今日の熱電材料のほとんどは、ビスマス、テルル、セレンおよびアンチモンの結晶合金を備える。
【0004】
熱電デバイスは、ヒートポンプとして機能する半導体装置である。熱電デバイスは、機械的ヒートポンプ、冷却装置、あるいは熱エネルギーを伝達するその他の装置と同様、熱力学の法則に従っている。主要な相違点は、従来の機械/流動式の加熱および冷却装置と比較すると、熱電デバイスは半導体電気素子と共に機能するという点である。
【0005】
単純な熱電変換装置のための回路は、概してNタイプおよびPタイプの熱電半導体素子といった2つの類似しない材料を含んでいる。これらの熱電素子は、通常、Nタイプ素子とPタイプ素子とが交互に配列されるように配置されている。多くの熱電変換装置において、類似しない特性を有する熱電半導体材料は電気的には直列に、熱的には並列に接続されている。電圧がNタイプ素子とPタイプ素子とに加えられ、電流が直列の電気接続を流れ、並列の熱接続においてNタイプおよびPタイプの素子間で熱伝達が起った際に、ペルチェ効果が発生する。
【0006】
熱電モジュールは通常、電気的に絶縁している1組の基板間の熱電素子のマトリックスを電気的に接続することで構成される。モジュールの運転によって、加熱側の基板と冷却側の基板の両方が作り出される。モジュールは通常、水冷板、定盤あるいはヒートシンクといった吸熱と放熱との間に配置されている。最も一般的なタイプの熱電素子は、ビスマス−テルル(Bi2Te3)合金で構成される。最も一般的なタイプの基板はアルミナ(96%)である。これらの基板の厚さは、通常約0.010インチ(0.25ミリ)〜約0.040インチ(1.0ミリ)に及ぶ。従来の熱電モジュール及び技術の解説は、H.J.ゴールドシュミッド著、「熱電変換学および電子冷蔵に関するCRCハンドブック」にも記載されている。
【0007】
典型的な熱電デバイスには、熱電素子を一定方向に流れる基本的な電流の流れを形成するためにDC電源が必要とされる。電流の流れの方向が熱電素子への熱伝達の方向を決定する。熱電素子を流れる基本的なゼロではない電流の流れの方向が、熱電デバイスが冷却器あるいは加熱器のどちらとして機能するかを決定する。
【0008】
米国特許第6,222,243(2001年、岸ら)には、それぞれが1つの表面を有する1組の基板と、該1組の基板間に配置されたPタイプおよびNタイプの熱電材料チップと、各基板の表面に配置され、隣接するPタイプおよびNタイプの熱電材料チップを互いに接続する電極と、1組の基板間に配置された各電極上に熱電材料チップを支持、整列させるよう各基板の表面の上方に配置された支持素子とを備える熱電デバイスが開示されている。各熱電材料チップは、一方の基板の一方の電極に接続された第1端部と、他方の基板の一方の電極に接続された第2端部とを有する。電極によって接続された隣接するPタイプおよびNタイプの熱電材料チップは、隣接するPタイプおよびNタイプの熱電材料チップの中心を連結するラインが、隣接する各PタイプおよびNタイプの熱電材料チップの対角線に一致するよう、1組の基板間に配置されている。岸らの装置で使用された基板は、シリコンウェファーである。シリコンウェファーを基板として使用することの不利な点は、ウェファーの脆性と、基板と熱電材料チップとの接合点において発生する熱応力である。
【0009】
米国特許第5,362,983(1994年、山村ら)には、直列接続を有する熱電変換モジュールが開示されている。その熱電変換モジュールは、横列する同種の熱電半導体チップの列、あるいは縦列する同種の熱電半導体チップの列で構成される。この配置は誤配列を防ぐと共に、組立の作業性を向上させる。山村らの装置で使用された基板は、セラミック基板である。セラミック基板を使用することの不利な点は、セラミックの脆性と、基板と熱電材料チップとの接合点において発生する熱応力である。
【0010】
現在の熱電モジュール技術におけるその他の不利な点から、基板には亀裂に耐えるのに十分な厚さを持たせる必要がある。モジュールが厚くなるほど、熱電モジュールは重くなる。また、基板が厚くなるほど材料費が高くなる。加えて、シリコンあるいはセラミック基板の使用によって、熱電モジュールのサイズや形が制限される。例えば、スペースの関係から、パッドのエッジとモジュールのエッジとの通常0.025インチ(0.64ミリ)の境目が大きすぎる場合、境目を小さくするために特別な研磨工程が必要になる。しかし基板の脆性から、研磨によってセラミック基板に欠けが生じる可能性がある。
【0011】
また、セラミック基板の剛性と、モジュールの冷却側が収縮しようとしている時にモジュールの加熱側が膨張しようとする熱電モジュールの温度サイクリングとが、「ポテトチップ現象」を引き起こす。この現象は、熱電チップにストレスをかけ、結果的に異なる媒体間の接合に不具合を生じさせる。これらのストレスは、モジュールのサイズが大きくなるほど増加する。さらに、現在の熱電モジュール技術では、このようなデバイスが使用可能な装置が限られている。例えば、現在の熱電モジュール技術は、不整で非平坦な表面を有する装置への応用には実用的ではない。
【0012】
従って、現在入手可能な熱電モジュールよりも、より薄い熱電モジュールが必要とされる。さらに、不整で非平坦な表面を有する装置での使用が可能な熱電モジュールも必要とされる。またさらに、適用させる装置の形やサイズに加工可能な熱電モジュールも必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
現在入手可能な熱電モジュールよりも、より薄い熱電モジュールの提供が本発明の目的である。不整で非平坦な表面を有する装置での利用が可能な熱電モジュールの提供が本発明のもう一つの目的である。特殊な形状に形成することが可能な熱電モジュールと、現在可能とされるものよりもさらに大型のデバイスを製造する方法の提供が本発明のまたもう1つの目的である。薄く、柔軟な基板を有する熱電モジュールの提供が本発明のまた更なる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
モジュールの片方あるいは両方の側面に柔軟な薄膜基板を熱電モジュールに備え付けることによって、本発明はこれら、およびその他の目的を達成する。薄膜基板は、PタイプおよびNタイプの熱電素子間を電気接続し、熱源あるいは放熱板から電気的に絶縁する。
【0015】
また薄膜基板は、熱伝達媒体としても機能する。薄膜材料として使用する材料は、好ましくは比較的良好な熱伝達性と、広範な動作温度範囲と、比較的高い絶縁耐力と、温度サイクリングによる疲労に対する比較的高い耐性とを有する材料である。薄膜材料として使用するのに適している材料の例として、ポリイミドが挙げられる。同様の特性を有する他の薄膜材料も使用可能である。このような材料の例として、エポキシベースのフィルムが挙げられる。
【0016】
柔軟な薄膜は、銅または他の導電材料にラミネートあるいは接着される。銅を柔軟な薄膜に接着あるいはラミネートする方法の例には、基板の表面に導電材料をスパッタする方法、あるいは銅材料を基板の表面に接着する接着剤の使用も含まれる。導電材料は、モジュールの半導体素子間の電気的な接合点を形成する。また薄膜材料は、電気接続と熱源あるいは放熱板とを電気的に絶縁する。
【0017】
熱電モジュールと熱源あるいは放熱板との間の熱伝達を高めるための伝熱材料の外層は、典型的ではあるが、必要というわけではない。また外層は、薄膜基板の反対側の表面にラミネートあるいは接着される。外側の伝熱材料は、薄膜基板の外表全体を覆っていてもよいし、あるいは熱電モジュールの半導体素子の接合点を形成する電気接続パッドを反映させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】フレキシブル基板間の熱電素子の配置を示した、本発明の断面図である。
【図2】フレキシブル基板を有する熱電モジュールの別の構成要素を示した、本発明の一部分の拡大断面図である。
【図3】フレキシブル基板を用いた大型の熱電モジュールを示した本発明の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施例は図1〜3に示されている。図1は本発明に基づく熱電デバイス10の側面図である。熱電デバイス10の基本構造には、フレキシブル基板12および13に狭持されたPタイプ熱電素子14と、Nタイプ熱電素子16とが備えられている。
【0020】
正常に機能する熱電モジュールの技術的原理であるペルチェ効果をもたらすため、Pタイプ熱電素子14およびNタイプ熱電素子16は、直列に電気接続され、熱的には並列に接続されている。なお、熱電デバイス10の一方の側面のみに薄いフレキシブル基板を用い、他方の側面では従来の基板、すなわちセラミック(アルミナ)あるいはシリコン基板を用いることが可能である。薄いフレキシブル基板を1つのみ用いる時には、熱電モジュールの熱い側面にフレキシブル基板を用いることが好ましい。熱い側面は、熱サイクリングの間に生じる大きな温度差によって、大きな熱応力を受ける傾向にある。フレキシブル基板はその柔軟な性質から、より少ない抑制力と圧力で膨張と収縮を可能にする。
【0021】
フレキシブル基板12および13は、柔軟な薄膜材料から成る。その薄膜材料は、熱伝達媒体として機能するほか、熱源あるいは放熱板から電気を絶縁する。特に、この薄膜材料は、熱サイクリング疲労に対する比較的高い耐性と、比較的高い絶縁耐力と、広範な動作温度範囲と、比較的良好な熱伝特性とを有することが好ましい。本発明で使用される好ましい材料は、約0.0005インチ(0.01ミリ)〜約0.002インチ(0.051ミリ)の厚さを有するポリイミドシート材料である。その他に使用可能な材料としては、薄膜エポキシと、所与の装置に必須の個々の詳細を満たした材料とがある。柔軟な薄膜材料の厚さは、その材料の特定の特性を高め、その他の特性を弱めるが、フレキシブル基板12および13の好ましい厚さを決定する一般的な基準は、材料の抗張力、熱電素子の重量に対する剪断応力への耐性、伝熱性、つまり熱を伝達する能力と、熱電デバイスの熱サイクリングによる熱応力への耐性である。
【0022】
Pタイプ熱電素子14は、熱を電流の方向に伝え、Nタイプ熱電素子16は、熱を電流とは逆の方向に伝える。PタイプおよびNタイプ熱電素子14、16を交互に配置することによって、電流が熱電デバイス10に供給された時に、熱い結合点と冷たい結合点とが形成される。よって熱交換器(図示なし)は、単に熱電デバイス10を流れる電流の方向を変えるだけで、熱が熱交換器から除去される/熱交換器に加えられるよう設定されている。
【0023】
反対に、熱電デバイス10の中に温度格差を形成することによって、モジュールの物理的な設計と温度格差の大きさの両方によって決定されるあるレベルの直流の電流を発生させる。Pタイプ熱電素子14およびNタイプ熱電素子16の製造に用いられる最も一般的な熱電材料は、ビスマス−テルル合金で構成される。
【0024】
次に図2を参照すると、図1の選択された部分の拡大側面図が示されており、熱電デバイス10の詳細が表示されている。熱電デバイス10は、柔軟な薄膜基板12、13にそれぞれ狭持されたPタイプおよびNタイプ熱電素子14、16を含んでいる。PタイプおよびNタイプの熱電素子14、16の各側面にフレキシブル基板が図示されているが、先述のように、熱電デバイス10がフレキシブル基板を片方にしか有していない場合もある。PタイプおよびNタイプの熱電素子14、16の各端部は、拡散バリア18でコーティングされている。拡散バリア18は、銅がPタイプおよびNタイプ熱電素子14、16に拡散/移動するのを防ぐ。PタイプおよびNタイプ熱電素子14、16への銅の拡散/移動は、これらの構成要素の熱電素子としての可使時間を縮める。熱電モジュールのコストが決定的要素となる装置においては、それでもよい場合もある。そのようなタイプの装置においては、拡散バリア18は不要である。一般的に、拡散バリア材料に使用可能な材料は、ニッケル、あるいはチタン/タングステン混合物、あるいはモリブデンである。本発明において使用される好ましい材料はニッケルである。
【0025】
フレキシブル基板12、13は、導電材料、好ましくは銅、の層でコーティング、ラミネート、あるいは接合しており、導電パッド20を形成している。導電材料はフレキシブル基板12、13の表面全体を覆うよう形成され、後に余分な導電材料を取り除いて、所望の電気接続パッドの型にエッチングされるか、あるいは所望の導電パッドの型は、所望の形状にフレキシブル基板12、13にコーティング、ラミネート、あるいは接合して形成してもよい。
【0026】
PタイプおよびNタイプ熱電素子14、16は、導電パッドに直列にはんだ付され、導電パッドに狭持されたマトリクスを形成していることが好ましい。PタイプおよびNタイプ熱電素子14、16を直列に接続する所望の導電パッドの形成に使用可能な導電性の材料として、導電性エポキシも挙げられる。熱電デバイス10と熱電デバイス10が接する表面との間の伝熱性を高めるため、フレキシブル基板14、16の反対側の表面に、導電材料のパッド20の鏡像型のパッド22を設けてもよい。代わりに、伝熱性のエポキシを用いて、フレキシブル基板12、13の外面に所望のパッド22を形成してもよい。
【0027】
PタイプおよびNタイプ熱電素子14、16の端部に拡散バリア18を設けると記載されているが、代わりに、拡散バリア18をフレキシブル基板12、13上の導電パッド20に設けてもよい。
【0028】
図3は、従来のモジュール構造で実用されていたものよりも大型の熱電デバイス10の一例の縮小上面図である。図3には、直径8インチ(20.32センチ)、モジュールの厚さ約0.100インチ(2.54ミリ)の熱電デバイス10が示されている。
【0029】
熱電デバイス10の製造方法は、両面に導電コーティングを有する薄く柔軟なシート材料を使用することを含む。このような基板は、ミネソタ州ノースフィールドのシェルダール社の、商品名/商標GOULDFLEXで入手可能である。この基板は通常、厚さ約0.0028インチ(0.071ミリ)の厚さの銅コーティングを両面に有する。導電パッドの所望の型は、既知のマスキング技法を用いて基板上にエッチング処理される。そして導電パッド型の銅は、ダイス(Pタイプ素子14およびNタイプ素子16)を表面にはんだ付するため、表面を予め錫メッキ加工する。Pタイプ熱電素子14およびNタイプ熱電素子16を形成するのに適した熱電対半導体材料(Bi2Te3合金)は、所望のサイズに切断される。PタイプおよびNタイプ素子のサイズは、熱電デバイス10に必要なヒートポンプの容量によるが、このヒートポンプの容量は当業者によって容易に判断可能である。
【0030】
各PタイプおよびNタイプ素子の端部は、好ましくはニッケルの、拡散バリア18と接合されている。熱電デバイス10製造のコスト削減のため、拡散バリアのステップを除外してもよい。しかし、PタイプおよびNタイプ素子14、16への銅の移動により、熱電デバイス10の耐用年数が縮小されることを理解しておく必要がある。そして、PタイプおよびNタイプ熱電素子14、16は、好ましくは配置グリッドあるいはスクリーンを用いて手作業でピック・アンド・プレイスされ、予め錫メッキ処理されたフレキシブル基板12の導電パッド20に、好ましくははんだ付で取り付けられる。あるいは、PタイプおよびNタイプ熱電素子14、16は、配置、配列およびはんだ付を行う自動システムを用いたり、あるいは構成要素のはんだ付を行う半自動のピック・アンド・プレイスシステムを用いて取り付けられる。第2基板13は、同様にPタイプおよびNタイプ素子の反対側の端部に取り付けられる。第2基板13は薄いフレキシブル基板でもよいし、あるいは従来のセラミック基板でもよい。
【0031】
セラミックベース基板を有する熱電モジュールの動作特性と同等、あるいはそれ以上の動作特性を持つフレキシブル基板を有する熱電デバイス10を得るには、導電パッド20を形成する導電材料が、現在入手可能なフレキシブル基板に施されている導電コーティングの厚さよりも、厚くなければならないということが判明した。現在の導電コーティングの厚みは、4アンペアの熱電モジュールに耐え得る。導電材料の厚さは、熱電デバイス10の所望のヒートポンプ容量、熱電デバイス10のサイズ、そして熱電デバイス10で用いられるPタイプおよびNタイプ熱電素子のサイズによる。より大きな出力密度を可能にするには、より厚みのある導電コーティングが所望される。より大きな出力密度は、延いては、ある一定の範囲により大きなヒートポンプ容量をもたらす。通常、導電体の断面デザインはMil規格275Eに基づくものである必要がある。
【0032】
しかし、現在入手可能なフレキシブル基板上の導電層の厚さでは、6〜15アンペアの電流が使用可能な熱電モジュールの製造には使用できない。このような熱電モジュールには、0.003インチ(0.076ミリ)以上で、一般的には0.008インチ(0.20ミリ)〜0.015インチ(0.38ミリ)の範囲の導電層の厚さが必要とされる。好ましい厚さは0.012インチ(0.30ミリ)である。
【0033】
また、6〜15アンペアの熱電モジュールを製造するための、より厚い導電パッド20を有するフレキシブル基板の生産は困難であることが判明した。導電層をフレキシブル基板上に配置する技術における当業者による従来の技術では、より厚みのある導電層は現行の最新の工程によっても配置不可能であった。電流密度の定格が6〜15アンペアであるフレキシブル基板を有する熱電モジュールに使用する所用の特性を有するフレキシブル基板を製造するため、用途によって、さまざまな工程が開発された。より厚みのある導電コーティングを有する絶縁基板は、ニューハンプシャー州ナシュアのフェローテックUSA社で入手可能である。
【0034】
フレキシブル基板12、13を使用することによって、本発明では、先行技術を超え、いくつかの有利な点が得られている。以前には非実用的であった比較的大型の熱電モジュールが製造可能となった。本発明は、型押しされた表面の外形に沿った柔軟な熱電モジュールの製造を可能にし、熱電モジュールを不整および/あるいは非平坦な表面を有する装置に取り付け可能な代替装置にする。熱電モジュールに柔軟な薄膜基板を使用することにより、熱電モジュール全体の重量と、製造コストとが削減される。熱電モジュールは通常、熱電モジュールをONにしたりOFFにしたりする装置において使用されるため、柔軟な薄膜基板の使用は、熱電モジュールのサイクル寿命を延ばす。基板の柔軟性は、熱サイクリングによって引き起こされる全体のストレスを減少させる。さらに、本発明に基づいて縮小された熱電モジュールの厚みは、現存する熱電モジュール技術では実用的でなかった新たな応用の機会を提供する。また、本発明は従来のモジュール構造技術を用いては非実用的であった特殊な形状の熱電モジュールの製造を可能にする熱電モジュール技術を提供する。
【0035】
本発明の好ましい実施例がここに記載されているが、その記述は単に実例に過ぎない。各分野に精通した者には、ここに開示されている発明の更なる改良点が考えられるであろう。そのような改良点の全ては、添付の請求項によって定義された発明の範囲であると思われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電モジュールであって、
少なくとも1つの基板がフレキシブル基板である1組の基板と、前記1組の基板の対向面に接合された複数の導電パッドを有し、前記複数の導電パッドは前記熱電モジュールの組立前に前記1組の基板に接合され、前記1組の基板間に配置された複数のPタイプおよびNタイプの熱電素子を有し、各前記複数の導電パッドが隣接するPタイプおよびNタイプ熱電素子を互いに直列に接続し、各前記PタイプおよびNタイプ素子が一方の前記基板の前記導電パッドの1つに接続された第1端部と、他方の前記基板の前記導電パッドの1つに接続された第2端部とを有し、各前記導電パッドは1組の前記PタイプおよびNタイプの熱電素子にのみ接続された、複数のPタイプおよびNタイプの熱電素子を備えることを特徴とする熱電モジュール。
【請求項2】
各前記1組の基板の外表面に配置された伝熱層をさらに備える請求項1に記載のモジュール。
【請求項3】
前記伝熱層が該フレキシブル基板を柔軟に保つことが可能な厚さを有することを特徴とする請求項2に記載のモジュール。
【請求項4】
前記伝熱層が、前記1組の基板の前記対向面上の前記複数の導電パッドにより覆われた部分と場所的に一致する複数の伝熱接続点を形成することを特徴とする請求項2に記載のモジュール。
【請求項5】
前記導電パッドが前記伝熱層よりも厚いことを特徴とする請求項1に記載のモジュール。
【請求項6】
前記導電パッドが0.003インチ(0.076ミリメートル)以上の厚さを有することを特徴とする請求項5に記載のモジュール。
【請求項7】
前記導電パッドが約0.012インチ(0.30ミリメートル)の厚さを有することを特徴とする請求項6に記載のモジュール。
【請求項8】
前記フレキシブル基板が約500V以上の絶縁耐力を有することを特徴とする請求項1に記載のモジュール。
【請求項9】
前記フレキシブル基板がポリイミドおよびエポキシ樹脂で構成される材料の群から選ばれたものであることを特徴とする請求項1に記載のモジュール。
【請求項10】
前記複数の導電パッドが、前記モジュールを約6〜15アンペアの範囲の電流を用いて作動させるのに十分な厚さを有することを特徴とする請求項1に記載のモジュール。
【請求項11】
前記フレキシブル基板が、前記複数の導電パッドと前記伝熱層とを絶縁させるに十分な厚さを有し、前記複数のPタイプおよびNタイプ素子と前記伝熱層間に伝熱性をもたらすに足る厚さを有することを特徴とする請求項2に記載のモジュール。
【請求項12】
前記フレキシブル基板が約0.0005インチ(0.01ミリメートル)〜約0.002インチ(0.051ミリメートル)の範囲の厚さを有することを特徴とする請求項11に記載のモジュール。
【請求項13】
前記複数の導電パッドと、前記複数の前記PタイプおよびNタイプ素子の前記第1および第2端部との間に、拡散バリアをさらに備える請求項1に記載のモジュール。
【請求項14】
前記拡散バリアが、ニッケル、チタン/タングステン混合物、モリブデン、およびその他の既知の拡散バリア材料で構成される群から選ばれた材料から成ることを特徴とする請求項13に記載のモジュール。
【請求項15】
熱電モジュールであって、
1組のフレキシブル基板と、前記熱電モジュールの組立前に、前記1組のフレキシブル基板の対向面に接合された複数の導電パッドを有し、前記導電パッドが、前記モジュールを約6〜約15アンペアの範囲の電流を用いて作動させるのに十分な厚さを有し、前記1組の基板間に配置された複数のPタイプおよびNタイプ熱電素子を有し、各前記複数の導電パッドが隣接するPタイプおよびNタイプ熱電素子を互いに直列に接続し、各前記PタイプおよびNタイプ素子が一方の前記基板の前記導電パッドの1つに接続された第1端部と、他方の前記基板の前記導電パッドの1つに接続された第2端部とを有し、各前記複数の導電パッドは1組の前記PタイプおよびNタイプ熱電素子にのみ接続された、複数のPタイプおよびNタイプ熱電素子を備えることを特徴とする熱電モジュール。
【請求項16】
各前記1組の基板の外表面に配置された伝熱層をさらに備える請求項15記載のモジュール。
【請求項17】
前記伝熱層が、前記1組の基板の前記対向面上の前記複数の導電パッドにより覆われた部分と場所的に一致する複数の伝熱接点を形成することを特徴とする請求項16に記載のモジュール。
【請求項18】
前記伝熱層が前記導電パッドよりも薄いことを特徴とする請求項16に記載のモジュール。
【請求項19】
前記導電パッドが0.003インチ(0.076ミリメートル)以上の厚さを有することを特徴とする請求項15に記載のモジュール。
【請求項20】
前記導電パッドが約0.012インチ(0.30ミリメートル)の厚さを有することを特徴とする請求項19に記載のモジュール。
【請求項21】
前記フレキシブル基板が約500V以上の絶縁耐力を有することを特徴とする請求項15に記載のモジュール。
【請求項22】
前記フレキシブル基板がポリイミドおよびエポキシ樹脂で構成される材料の群から選ばれたものであることを特徴とする請求項15に記載のモジュール。
【請求項23】
前記伝熱層が前記フレキシブル基板を柔軟に保つことが可能な厚さを有することを特徴とする請求項16に記載のモジュール。
【請求項24】
前記複数の導電パッドと、前記複数のPタイプおよびNタイプ素子の前記第1および第2端部との間に、拡散バリアをさらに備える請求項15に記載の熱電モジュール。
【請求項25】
前記拡散バリアが、ニッケル、チタン/タングステン混合物、モリブデン、およびその他の既知の拡散バリア材料で構成される群から選ばれた材料から成ることを特徴とする請求項24に記載のモジュール。
【請求項26】
前記フレキシブル基板が約0.0005インチ(0.01ミリメートル)〜約0.002インチ(0.051ミリメートル)の範囲の厚さを有することを特徴とする請求項15に記載のモジュール。
【請求項27】
フレキシブル熱電モジュールの製造方法であって、
それぞれが一方の側面に接合された複数の導電パッドを有する1組のフレキシブル基板を獲得するステップと、
前記1組のフレキシブル基板の前記複数の導電パッドを有する対向面間の複数のPタイプおよびNタイプ熱電素子を電気接続するステップであって、一方の前記基板の前記複数の導電パッドの1つに接続された第1端部と、他方の前記基板の前記複数の導電パッドの1つに接続された第2端部とを有し、隣接するPタイプおよびNタイプ素子を、各前記複数の導電パッドが、互いに直列に接続し、各前記複数の導電パッドが1組のPタイプおよびNタイプの熱電素子にのみ接続された電気接続のステップとを備える製造方法。
【請求項28】
前記1組のフレキシブル基板を獲得するステップがさらに、前記基板の他方の側面の伝熱層の獲得を含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記方法がさらに、前記基板の一方の側面上への、前記基板の他方の側面上の前記複数の導電パッドの型と一致する伝熱接点を有するよう形成された前記伝熱層の獲得を含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記導電パッドと前記複数のPタイプおよびNタイプ素子の前記第1および第2端部との間に拡散バリアを配置するステップをさらに備える請求項27に記載の方法。
【請求項31】
フレキシブル熱電モジュールの製造方法であって、
1組のフレキシブル基板を獲得するステップと、
厚さが0.003インチ(0.076ミリメートル)以上の導電層を、各前記1組のフレキシブル基板の少なくとも1つの側面に配置するステップと、
複数の導電パッドを形成する各前記1組のフレキシブル基板の前記導電層をエッチングするステップと、
前記複数の導電パッドを有する前記1組のフレキシブル基板の対向面間の複数のPタイプおよびNタイプ熱電素子を電気接続するステップであって、一方の前記基板の前記複数の導電パッドの1つに接続された第1端部と、他方の前記基板の前記複数の導電パッドの1つに接続された第2端部とを有し、隣接するPタイプおよびNタイプ素子を、各前記複数の導電パッドが、互いに直列に接続し、各前記複数の導電パッドが1組のPタイプおよびNタイプの熱電素子にのみ接続された電気接続のステップとを備える製造方法。
【請求項32】
各前記1組のフレキシブル基板の他方の側面に伝熱層を配置するステップをさらに備える請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記方法がさらに、前記基板の他方の側面上の前記複数の導電パッドと一致する型に前記伝熱層をエッチングするステップを備えることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記導電パッドと前記複数のPタイプおよびNタイプ素子の前記第1および第2端部との間に拡散バリアを配置するステップをさらに備える請求項31に記載の方法。
【請求項35】
フレキシブル熱電モジュールの製造方法であって、
約6〜15アンペアの範囲の電流密度に耐え得る厚さを有する複数の導電パッドを、それぞれが一方の側面に有する1組のフレキシブル基板を獲得するステップと、
前記1組のフレキシブル基板の前記複数の導電パッドを有する対向面間の複数のPタイプおよびNタイプ熱電素子を電気接続するステップであって、一方の前記基板の前記複数の導電パッドの1つに接続された第1端部と、他方の前記基板の前記複数の導電パッドの1つに接続された第2端部とを有し、隣接するPタイプおよびNタイプ素子を、各前記複数の導電パッドが、互いに直列に接続し、各前記複数の導電パッドが1組のPタイプおよびNタイプの熱電素子にのみ接続された電気接続のステップとを備える製造方法。
【請求項36】
前記獲得ステップが、他方の側面に伝熱層を有する基板の獲得を含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記方法がさらに、前記基板の一方の側面上への、前記基板の他方の側面上の前記複数の導電パッドの型と一致する伝熱接点を有するよう形成された前記伝熱層の獲得を含むことを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記導電パッドと前記複数のPタイプおよびNタイプ素子の前記第1および第2端部との間に拡散バリアを配置するステップをさらに備える請求項35に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−193013(P2011−193013A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103166(P2011−103166)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2003−513053(P2003−513053)の分割
【原出願日】平成14年4月16日(2002.4.16)
【出願人】(503093316)フェローテック(ユーエスエー)コーポレイション (4)
【Fターム(参考)】