説明

熱電変換材料およびその製造方法

【課題】製造が容易であり、且つ大量生産に適し、低コストで良好な熱電変換性能を有する熱電変換材料を提供する。
【解決手段】粒子とその表面を被覆する粒界相とよりなり、該粒子がペロブスカイト型酸化物、例えば、SrTiO等の絶縁体であり、該粒界相がペロブスカイト型酸化物、例えば、SrTiO等に金属をドープした半導体であり、粒子の平均一次粒径が2〜100nmであり、粒界相の厚みが0.2〜8nmである熱電変換材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゼーベック効果を利用した熱電変換材料は、排熱利用による省エネルギー技術として、近年大きな期待が寄せられている。熱電変換材料としては、例えば、ビスマス・テルル系、鉛・テルル系、シリコン・ゲルマニウム系、スクッテルダイト系、ハーフホイスラー系等の化合物半導体、混晶(固溶体)、金属間化合物等や酸化亜鉛系、酸化ナトリウム・酸化コバルト系、酸化カルシウム・酸化コバルト系等の酸化物半導体等の各種材料が知られている。しかし、これらは大気中・高温下での使用が困難であること、湿気に対する耐性がないことや希少な元素を含む材料であるか、又は毒性のある材料である等の理由で実用化には難点があった。
【0003】
そこで、本発明者らの一人は、身近で毒性のない熱電変換材料の開発を行った結果、チタン酸ストロンチウムというありふれた材料を用いることにより、熱電変換性能指数(ZT)が室温で2.4という極めて高い値を実現し、従来の材料系に比べて優れた熱電変換材料を見出すことに成功した(非特許文献1)。即ち、上記の熱電変換材料は、ニオブをドープして半導体としたチタン酸ストロンチウムの薄膜を絶縁体のチタン酸ストロンチウムで上下に挟んだサンドイッチ構造にすることによって薄膜内に電子を局在化せしめ、量子閉じ込め効果により性能の向上を達成したものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「Nature Materials(ネイチャー・マテリアルズ)」,6巻、129ページ、2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の薄膜材料は熱電変換材料としては良好な効果が期待できるが、実用的な用途に用いる場合には、素子自体が小型で大量熱回収には適さない、製造が容易ではなく高コストである、大量生産が困難等の問題を克服する必要がある。そこで、本発明者らは、量産性の良好な熱電変換材料を開発することを目的として、種々検討を行った。その結果、粒子とその粒界を埋める粒界相よりなり、該粒子がSrTiO等の絶縁体や周期律表5族、6族元素ないし希土類元素等をドーパントとして含む半導体等であり、該粒界相がSrTiO等に周期律表5族、6族元素ないし希土類元素等をドープした半導体や導体とすることによってバルク材料を作製することに成功し、上記目的を達成することを見出して本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、粒子とその粒界を埋める粒界相とよりなり、該粒子が絶縁体又は半導体であり、該粒界相が半導体又は導体であることを特徴とする熱電変換材料である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱電変換材料は、比較的単純な構造をしているために、製造が容易であり、且つ大量生産にも適しているため、低コストで熱電変換材料を提供することができる。しかも、本発明の熱電変換材料は、良好な熱電変換効率を示すため、排熱の有効利用を可能にすることによって、化石燃料による発電にとって代わることで地球温暖化の原因となるCOの排出を抑制することに寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の熱電変換材料の構造を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の熱電変換材料の他の態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の熱電変換材料は、粒子とその粒界を埋める粒界相とよりなり、粒子は集合体を形成しており、粒子と粒子の間を粒界相が占める構造となっている。ここで、粒子は絶縁体又は半導体であり、粒界相は半導体又は導体である。
【0010】
本発明の熱電変換材料は、図1に示すように粒子1と粒子1の間を粒界相2が占める構造であればよい。粒子は最密充填であることが好ましいが、必ずしもそうである必要はない。また、本発明の熱電変換材料は、図2に示すように粒子1の表面が被覆層3によって覆われており、被覆層3が粒界相を形成していてもよい。
【0011】
図1,2に示す粒子の形状は特に限定されるものではないが、例えば球状、略多面体形状、板状、針状等が挙げられ、通常は球状又は略多面体形状が一般的である。断面形状は、粒子形状が球状、略多面体形状等の場合には等方的であるのが一般的であるが、板状、針状の結晶粒子からなる場合には配向を生じる場合もある。
【0012】
粒子の大きさは、熱伝導率を小さくし、熱電変換効率を向上させるためには平均一次粒径が2〜100nm(5〜250原子層に相当する)の範囲であることが好ましく、2〜40nmの範囲であることがより好ましく、さらには2〜10nmの範囲であることが最も好ましい。
【0013】
平均一次粒子径を2〜100nmとすることによって粒界相への電子の局在化により熱電変換性能を向上させることができ、2〜40nmとすることによって熱電変換効果を有する部位の割合を高くして熱電変換効率の良い材料とすることができ、2〜10nmの場合に最も効率が良くなる。
【0014】
ここで平均粒子径の測定方法は特に限定されないが、例えば、透過型電子顕微鏡による観察等により評価することが出来る。また、粒界相2及び被覆層3についても、同様の手法により厚みを評価することが出来る。
【0015】
上記透過型電子顕微鏡による平均粒子径の測定方法としては、ASTM法、プラニメトリック法、インタセプト法、コード法、直径法等の方法を採用することが出来るが、本発明においてはインタセプト法を採用した。
【0016】
図2における被覆層3の厚みは、薄いほうが好ましく、例えば、0.2〜8nm(1〜20原子層に相当する)の範囲であることが好ましく、0.2〜2nmの範囲であることがより好ましく、さらには被覆層を形成する半導体又は導体の単原子層(通常は0.2〜0.6nmの範囲である)であることが最も好ましい。被覆層3は、8nmより薄い場合に量子閉じ込め効果による性能向上が期待され、薄ければ薄い程、さらに性能が向上する。
【0017】
上記の平均一次粒径と被覆層の厚みの比率は、通常は平均一次粒径/被覆層の厚み=2〜50であり、10〜20であることが量子効果による性能向上と熱電変換性能を有する部位の割合を一定以上に保つ観点から好ましい。
【0018】
本発明の熱電変換材料を構成する粒子は絶縁体又は半導体である。絶縁体又は半導体としては特に限定されず、公知のものを採用することができるが、電気伝導率が100S/cm以下であることが好ましい。高い熱電変換効率を求める場合には、ペロブスカイト型酸化物であることが好ましい。ペロブスカイト型酸化物としては、式ABO(但し、Aはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、Bは遷移金属である。)で表される金属酸化物等を挙げることができる。上記式中のアルカリ金属としてはLi、Na、K等を、アルカリ土類金属としてはCa、Sr及びBa等を、遷移金属としてはTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zr、Hf、Nb、Ta等を挙げることができる。これらの中でも、Aはアルカリ土類金属であることが好ましく、BはTi、Zr、Hf等の周期律表第4族元素、特にTiであることが好ましい。高い熱電変換効率を求める場合には、式ATiOであることが好ましく、特に上記式中のAがSrであることが好ましい。
【0019】
粒子が絶縁体である場合は、粒界相は半導体と導体のいずれでもよく、粒子が半導体である場合は、粒界相は導体であるか、または粒子を形成する半導体よりも電気伝導性の良好な半導体であればよい。
【0020】
本発明の熱電変換材料を構成する粒界相は半導体又は導体である。半導体又は導体としては、電気伝導率が100S/cmを超えるものであることが好ましい。高い熱電変換効率を求める場合には、(ZnO)In(mは4〜20の整数)又はペロブスカイト型酸化物に金属をドープしたものであることが好ましく、特に後者が好ましい。ペロブスカイト型酸化物としては、上記の粒子の材質として説明したものを何ら制限なく用いることができ、特に式ABO(但し、A及びBは上記と同じである。)で示されるペロブスカイト型酸化物が好適である。
【0021】
上記式のペロブスカイト型酸化物に金属をドープする場合、ドープ金属としてはBサイトに対してはNb、Ta等の周期律表第5族元素が、Aサイトに対してはY、La、Sm、Eu、Gd、Dy、Yb等の周期律表第3族元素ないし希土類元素であることが、熱電変換効率を向上させることができるために好適であり、特にNb、Ta等の周期律表第5族元素が最適である。
【0022】
ドープ金属の含有量は、熱電変換効率を考慮するとAサイトに対しては、ドープを行わないか、行う場合でも0.01〜20原子%、Bサイトに対しては0.1〜40原子%、さらには10〜30原子%の範囲であることが好ましい。
【0023】
本発明の熱電変換材料は、ドープ金属以外の不純物金属はできるだけ含まないことが好ましく、通常、ドープ金属以外の不純物金属は、1000ppm以下、さらには100ppm以下であることが好ましい。また、本発明の熱電変換材料の相対密度は、通常、90〜100%、さらに95〜100%であることが好ましい。
【0024】
本発明の熱電変換材料は、どのような方法で製造してもよいが、一般的には、以下に述べるような方法で好適に製造することができる。
【0025】
例えば、(1)絶縁体又は半導体よりなる粒子と半導体又は導体よりなる粒界相を構成する微細粒子とを製造した後に両者を混合し焼成する方法、(2)絶縁体又は半導体よりなる粒子の表層に半導体又は導体よりなる被覆層をコーティングし、次いで焼成する方法を挙げることができる。
【0026】
上記(1)及び(2)の方法における粒子及び微細粒子を製造する具体的な方法には、公知の製造方法が制限なく採用できる。例えば、コロイド法、均一沈殿法、ゾル−ゲル法、水熱合成法、マイクロエマルジョン法、溶媒蒸発法等の方法を挙げることが出来る。
【0027】
上記した(2)の方法における粒子に被覆層をコーティングする方法としては、ゾル−ゲル法、メッキ法、表面処理法、真空プロセス、イオン交換法等を挙げることができ、好ましくはゾル−ゲル法を採用することができる。
【0028】
さらに上記(1)及び(2)の方法における焼成方法としては、放電プラズマ焼結法、エアロゾルデポジション法等の焼成方法を好適に採用することができる。
【0029】
本発明において特に好適な熱電変換材料の製造方法として、ゾル−ゲル法を用いる方法を具体的に説明すると、以下のとおりである。
【0030】
即ち、本発明における粒子の構成成分の原料となるアルコキシド又は塩を含む有機溶媒、必要に応じてさらに弱酸を含む水を添加した溶液を、塩基性化合物を含む有機溶媒、必要に応じてさらに水を含む溶液に滴下し、次いで粒界相の構成成分の原料となるアルコキシド又は塩を含む有機溶媒、必要に応じてさらに弱酸を含む水を添加した溶液を滴下し、2層構造を有するゲル状物を製造する。該ゲル状物を乾燥後、有機物を除去するために仮焼し、焼成することにより一体化することで製造することが出来る。
【0031】
原料となるアルコキシドとしては、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド、カルシウムメトキシド、ジイソプロポキシストロンチウム、バリウムエトキシド、テトライソプロポキシチタン、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、ハフニウムイソプロポキシド、バナジウムエトキシド、テトラエトキシニオブ、タンタルイソプロポキシド、イットリウムイソプロポキシド、ランタンメトキシド、ランタンエトキシド、ランタンイソプロポキシド、サマリウムイソプロポキシド、ユーロピウムイソプロポキシド、ガドリニウムイソプロポキシド、ジスプロシウムイソプロポキシド、イッテルビウムイソプロポキシド、イッテルビウムエトキシド、イッテルビウムイソプロポキシドを挙げることができる。
【0032】
また、原料として使用可能な塩としては、クロムアセチルアセトナート、マンガンアセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート、ニッケルアセチルアセトナート等を挙げることができる。
【0033】
ゾル−ゲル法を用いる場合に用いる有機溶媒としては、公知の有機溶媒を制限されることなく用いることが可能であるが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、イソブチルアルコール等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトニトリル、プロピオニトリル等の窒素化合物類等が挙げられ、中でも取扱のし易さや入手のし易さから、メタノール、エタノール、2−プロパノール、イソブチルアルコール等のアルコール類が好適である。
【0034】
ゾル−ゲル法を用いる場合に用いる弱酸としては、公知の弱酸を制限されることなく用いることが可能であるが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸や硝酸、硫酸、塩酸等の無機酸が挙げられる。
【0035】
ゾル−ゲル法を用いる場合に用いる塩基性化合物としては、公知の塩基性化合物を制限されることなく用いることが可能であるが、例えば、アンモニア、プロピルアミン、ブチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、中でもアンモニア、プロピルアミン、ブチルアミン等の金属元素を含まない塩基性化合物が不純物混入のリスクを下げられるために好適である。
【0036】
ゲル状物の乾燥は、特に限定されず適宜設定された条件で行えば良いが、一般的には50〜250℃の範囲で加熱した状態で、空気や窒素ガス等を送りながら乾燥する送風乾燥、或いは真空ポンプで減圧させながら乾燥する真空乾燥等の方法で行うことが出来る。
【0037】
ゲル状物の仮焼条件は、製造するものに応じて適宜設定すれば良いが、一般に空気又は酸素雰囲気下、電気炉等で400〜700℃、5〜100時間程度加熱すれば良い。
【0038】
焼成方法としては、常圧焼結法、加熱加圧法、超高圧下加熱法、放電プラズマ焼結法、エアロゾルデポジション等を採用することが出来るが、中でも放電プラズマ焼結法は短時間の加熱で緻密な焼結体が得られることから、本発明の熱電変換材料の微細構造を崩さずに一体化することが出来、好適である。
【0039】
本発明のナノ微細構造を制御した材料は、熱電変換以外の用途にもその特性に応じて用いることができ、例えば、光触媒、イオン伝導性材料、強誘電材料、磁性材料、触媒材料、酸素電極材料、圧電材料、焦電材料、非線形光学材料等の用途にも用いることが出来る。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明はこれら実施例によって何等限定されるものではない。実施例および比較例で実施した熱電変換材料の物性測定方法は、透過型電子顕微鏡(TEM)、電子線エネルギー損失スペクトル分光装置(EELS)、熱電特性測定装置を用いて分析を行った。各種分析の詳細を以下に示す。
(1)透過型電子顕微鏡(TEM)観察
〔TEMによる断面観察〕
透過型電子顕微鏡(日本電子社製「JEOL−2100F」)にて、観察倍率2,000,000倍にて観察を行った。
(2)電子線エネルギー損失スペクトル分光装置(EELS)分析
透過型電子顕微鏡(日本電子社製「JEOL−2100F」)に付属の電子線エネルギー損失スペクトル分光装置を用い、各部位の組成分析を行った。
(3)熱電性能評価
熱電特性測定装置(オザワ科学社製「RZ2001i」)により導電率σ、ゼーベック係数Sを測定した。また、レーザフラッシュ法熱定数測定装置(アルバック社製「TC-9000シリーズ」)及び熱容量測定装置(TAインスツルメンツ社製「DSC2910」)を用いて熱伝導率κを測定した。
【実施例1】
【0041】
チタンイソプロポキシド100gとストロンチウムイソプロポキシド72.4gをイソブタノール500mlに溶かし、溶液(A1)とした。
【0042】
テトライソプロポキシチタン11.0gとジイソプロポキシストロンチウム10.0gとテトラエトキシニオブ1.8gとをイソブタノール500mlに溶かし、溶液(B1)とした。
【0043】
次に撹拌機能付きの内容量3lのガラス製容器にメタノール350ml、イソブタノール750ml、28%アンモニア水280mlを入れ、この容器を40℃に保ち、撹拌しながら上記溶液(A1)を6時間かけて滴下し、終了後30分間の熟成時間を経過した後、溶液(B1)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、析出した白色の生成物をろ過によって分取し更に乾燥して粉末を得た。
【0044】
得られた粉末を大気雰囲気中600℃で24時間仮焼し、放電プラズマ焼結装置(住友石炭鉱業製「DR.SINTER Model SPS−3.20MK−IV」)により、焼成温度950℃、焼成保持時間20分、焼成圧力50MPaで焼成し、20mmφ×2mm厚の焼結体を得た。
【0045】
得られた焼結体の微細構造を透過型電子顕微鏡により観察したところ、平均粒径10nmの粒子の表面に、平均1nm厚の被覆層が形成された粒子からなる焼結体であることがわかった。
【0046】
透過型電子顕微鏡に付属のEELSで測定したところ、被覆層ではSr、Ti、Nbが1:0.8:0.2(原子比)の割合で検出され、粒子中心部ではSr、Tiが1:1(原子比)の割合で検出された。この結果から、被覆層はドープ金属としてNbをTiに対して20原子%含有するSrTiO(該組成の電気伝導度は500S/cmである)であり、粒子部分はSrTiO(該組成の電気伝導度は0.05S/cmである)であることがわかった。焼結体のドープ金属以外の不純物金属濃度は、Feが10ppmであり、相対密度は98%であった。
【0047】
さらに、各種物性の測定を行ったところ、導電率σは250S/cm、ゼーベック係数Sは0.29mV/K、熱伝導率κは3.0W/mKとなり、300Kにおける熱電性能指数ZTは0.21となった。
【実施例2】
【0048】
チタンイソプロポキシド25gとストロンチウムイソプロポキシド18.1gをイソブタノール500mlに溶かし、溶液(A2)とした。
【0049】
テトライソプロポキシチタン4.4gとジイソプロポキシストロンチウム4.0gとテトラエトキシニオブ0.72gとをイソブタノール500mlに溶かし、溶液(B2)とした。
【0050】
溶液(A2)、溶液(B2)を実施例1と同様の製造方法により合成・焼結処理を行い、2mm×2mm×5mmの焼結体とした。
【0051】
得られた焼結体の微細構造を透過型電子顕微鏡により観察したところ、平均粒径2nmの粒子の表面に平均0.4nm厚の被覆層が形成された粒子からなる焼結体であることが分かった。
【0052】
透過型電子顕微鏡に付属のEELSで測定したところ、被覆層ではSr、Ti、Nbが1:0.8:0.2(原子比)の割合で検出され、粒子中心部ではSr、Tiが1:1(原子比)の割合で検出された。この結果から、被覆層はドープ金属としてNbをTiに対して20原子%含有するSrTiO(該組成の電気伝導度は500S/cmである)であり、粒子部分はSrTiO(該組成の電気伝導度は0.05S/cmである)であることがわかった。焼結体のドープ金属以外の不純物金属濃度は、Niが5ppmであり、相対密度は98%であった。
【0053】
さらに、各種物性の測定を行ったところ、導電率σは400S/cm、ゼーベック係数Sは0.32mV/K、熱伝導率κは2.5W/mKとなり、300Kにおける熱電性能指数ZTは0.49となった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の熱電変換材料は、廃棄物燃焼炉、セメント燃焼炉等の各種燃焼炉からの排熱や自動車の燃焼ガス排熱を電気に変換することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1・・・粒子
2・・・粒界相
3・・・被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子とその粒界を埋める粒界相とよりなり、該粒子が絶縁体又は半導体であり、該粒界相が半導体又は導体であることを特徴とする熱電変換材料。
【請求項2】
粒界相が粒子の表面を被覆する被覆層である請求項1記載の熱電変換材料。
【請求項3】
粒子がペロブスカイト型酸化物である請求項1又は2記載の熱電変換材料。
【請求項4】
粒界相がペロブスカイト型酸化物に金属をドープしたものである請求項1又は2記載の熱電変換材料。
【請求項5】
ペロブスカイト型酸化物がABO(但し、Aはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、Bは遷移金属である。)である請求項3又は4記載の熱電変換材料。
【請求項6】
ドープ金属が周期律表第3族又は第5族の金属である請求項4記載の熱電変換材料。
【請求項7】
ドープ金属の含有量がABO(但し、Aはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、Bは遷移金属である。)のBサイトに対し0.1〜40原子%である請求項4又は6記載の熱電変換材料。
【請求項8】
粒子の平均一次粒径が2〜100nmである請求項1又は2記載の熱電変換材料。
【請求項9】
被覆層の厚みが0.2〜8nmである請求項2記載の熱電変換材料。
【請求項10】
絶縁体又は半導体よりなる粒子と半導体又は導体よりなる粒界相を形成する微細粒子とを製造した後に両者を混合し、焼成することを特徴とする請求項1記載の熱電変換材料の製造方法。
【請求項11】
絶縁体又は半導体よりなる粒子の表面に、半導体又は導体よりなる被覆層をコーティングし、次いで焼成することを特徴とする請求項2記載の熱電変換材料の製造方法。
【請求項12】
粒子とその表面を被覆する被覆層とよりなり、該粒子が絶縁体又は半導体であり、該被覆層が半導体又は導体であることを特徴とする熱電変換材料用粒子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−161213(P2010−161213A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2604(P2009−2604)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】