説明

熱電対含有織物

【課題】消防衣服などの耐熱防護服用の生地として好適であり、環境温度を定量的に測定することが可能な熱電対含有織物を提供する。
【解決手段】複数の経糸11と複数の緯糸12とが交差して織られ、前記経糸同士の間および/または前記緯糸同士の間に、緯糸12同士の間に第一の熱電対素線13と第二の熱電対素線14が隣接して織り込まれ、第一の熱電対素線13と第二の熱電対素線14が電気的に接合されて、第一の熱電対素線13と第二の熱電対素線14からなる熱電対15が形成され、この熱電対15の接合部16が表面に露出してなる熱電対含有織物10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の熱電対素線が電気的に接合されてなる熱電対を備えた熱電対含有織物に関し、さらに詳しくは、一対の熱電対素線が織物を形成する経糸同士の間および/または緯糸同士の間に織り込まれてなる熱電対含有織物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、環境測定などの多くの分野において、温度測定が行われている。例えば、製鋼作業、精錬作業、消防作業などの高熱環境における作業では、作業者が火傷の危険を避けるために、耐熱防護服を着用するだけでなく、環境温度を測定することによって危険を感知する必要がある。
【0003】
特に、作業に神経が集中していると、高温による危険を感じ取るのが鈍くなったり、耐熱防護服の断熱効果により高温を感じ取るのが遅れて、作業者が危険に陥ることがある。
そこで、例えば、火災現場から発生する熱によって変色し、この変色によって、いち早く視覚により危険を感知するために、40〜60℃で可逆的に変退色する温感変色性粒状物がバインダーを介して付与された布からなる温感変色センサと、この温感変色センサを衣服の一部として用いた消防衣服が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−92231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された温感変色センサを用いた消防衣服は、衣服としての断熱性や耐熱性に優れているものの、温感変色センサは、40〜60℃にて、単に可逆的に変退色するだけであるから、環境温度を定量的に測定することができなかった。したがって、作業者は、その環境温度の危険度を正確に把握することができなかった。
そのため、環境温度を定量的に測定し、実際の温度を正確に把握するためには、作業者が温度センサを持ったまま作業を行わなければならず、作業性が悪いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、消防衣服などの耐熱防護服用の生地として好適であり、環境温度を定量的に測定することが可能な熱電対含有織物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱電対含有織物は、複数の経糸と複数の緯糸とが交差して織られ、前記経糸同士の間および/または前記緯糸同士の間に、少なくとも一対の第一の熱電対素線と第二の熱電対素線が織り込まれてなる熱電対含有織物であって、前記第一の熱電対素線と前記第二の熱電対素線が電気的に接合されて、これらの熱電対素線からなる熱電対が形成され、該熱電対の接合部が表面に露出していることを特徴とする。
【0007】
本発明の熱電対含有織物において、前記第一の熱電対素線および前記第二の熱電対素線の線径は、10μm以上、100μm以下であることが好ましい。
【0008】
本発明の熱電対含有織物において、前記第一の熱電対素線および前記第二の熱電対素線において、前記接合部と開放端との間の部分の外周に断熱性被覆層が設けられたことが好ましい。
【0009】
本発明の熱電対含有織物において、前記第一の熱電対素線および前記第二の熱電対素線において、前記断熱性被覆層が設けられている部分の外径は、30μm以上、300μm以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の熱電対含有織物において、前記第一の熱電対素線および前記第二の熱電対素線は、撚線であることが好ましい。
【0011】
本発明の熱電対含有織物において、前記熱電対の接合部が耐熱性樹脂または耐熱性繊維により被覆されたことが好ましい。
【0012】
本発明の熱電対含有織物において、前記経糸および前記緯糸は、断熱性繊維からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱電対含有織物によれば、複数の経糸と複数の緯糸とが交差して織られ、前記経糸同士の間および/または前記緯糸同士の間に、少なくとも一対の第一の熱電対素線と第二の熱電対素線が織り込まれてなる熱電対含有織物であって、前記第一の熱電対素線と前記第二の熱電対素線が電気的に接合されて、これらの熱電対素線からなる熱電対が形成され、該熱電対の接合部が表面に露出しているので、消防衣服などの耐熱防護服用の生地として好適であり、熱電対を小型の温度センサデバイスに電気的に接続することによって、環境温度を定量的に測定することができる。したがって、作業者が温度センサを持ったまま、高温環境において作業を行う必要がないため、作業効率が向上するとともに、作業者は常に環境温度を正確に把握することができるので、高温環境における事故の危険を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の熱電対含有織物の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0015】
(1)第一の実施形態
図1は、本発明の熱電対含有織物の第一の実施形態を示す概略平面図である。
この実施形態の熱電対含有織物10は、複数の経糸11と複数の緯糸12とが交差して織られてなる生地と、第一の熱電対素線13と第二の熱電対素線14が電気的に接合されてなる熱電対15とから概略構成されている。
また、第一の熱電対素線13と第二の熱電対素線14は、緯糸12同士の間に隣接して織り込まれている。
さらに、第一の熱電対素線13と第二の熱電対素線14からなる熱電対15の接合部16が表面に露出している。
【0016】
より詳細には、第一の熱電対素線13と第二の熱電対素線14は、緯糸12に対して並列に、経糸11と交差するように織り込まれており、緯糸12と同様に、熱電対織物10を構成する繊維をなしている。すなわち、第一の熱電対素線13と第二の熱電対素線14は互いに並列に配置され、接合部16で接合されて熱電対15を形成している。
また、熱電対15の接合部16が、熱電対含有織物10の一端(縁)に突出して設けられ、熱電対含有織物10の一方の面10a側に露出している。
接合部16は、熱電対15において、温度を測定する部分(測温部)である。
【0017】
熱電対含有織物10は、経糸11と緯糸12を、平織り、朱子織りなどの任意の織り方により製織してなる織物である。
【0018】
経糸11および緯糸12としては、例えば、綿などの動物繊維、植物繊維、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、繊維強化プラスチック繊維などの化学繊維、セラミックス繊維からなる断熱性繊維などが挙げられる。これらの中でも、熱電対含有織物10を衣服に適用した場合、その衣服の断熱性を向上することができる点から、断熱性繊維が好ましい。
【0019】
第一の熱電対素線13および第二の熱電対素線14としては、クロメル(ニッケル(Ni)とクロム(Cr)の合金)線、アルメル(ニッケル(Ni)とアルミニウム(Al)の合金)線などが用いられる。
【0020】
第一の熱電対素線13と第二の熱電対素線14の線径(外径)は等しいことが好ましい。
また、第一の熱電対素線13および第二の熱電対素線14の線径(外径)は、10μm以上、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以上、100μm以下である。
第一の熱電対素線13および第二の熱電対素線14の線径が10μm未満では、溶接による第一の熱電対素線13と第二の熱電対素線14との接合(融着)が難しくなり、熱電対を形成することが難しくなる。また、第一の熱電対素線13および第二の熱電対素線14の線径が30μm未満では、熱電対素線同士の接合が外れやすくなる。一方、第一の熱電対素線13および第二の熱電対素線14の線径が100μmを超えると、熱電対15を用いた温度測定において、感度が悪くなる。
【0021】
また、熱電対15を構成する第一の熱電対素線13および第二の熱電対素線14において、接合部16と、それぞれの開放端13a、14aとの間の部分、すなわち、接合部16および開放端13a、14aを除いた部分の外周に断熱性被覆層が設けられていてもよい。
なお、第一の熱電対素線13の開放端13aおよび第二の熱電対素線14の開放端14aは、第一の熱電対素線13および第二の熱電対素線14と、温度センサデバイスとが電気的に接続される部位であり、開放端13a、14aは熱電対含有織物10の接合部16が配置されているのとは反対側の端(他端)に配置され、熱電対含有織物10の一方の面10a側に露出している。
【0022】
この断熱性被覆層を構成する材料としては、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)などのセラミックスからなるセラミックスコーティング剤、炭化繊維、グラスウール、ロックウール、ガラス被覆と耐熱性樹脂(エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック)の複合材などが挙げられる。
【0023】
第一の熱電対素線13および第二の熱電対素線14において、接合部16と、それぞれの開放端13a、14aとの間の部分の外周に断熱性被覆層が設けられている場合、その断熱性被覆層が設けられている部分(以下、「断熱性被覆部」と言う。)の外径は、30μm以上、300μm以下であることが好ましい。
断熱性被覆部の外径が30μm未満では、断熱性被覆層の厚みが薄くなり、結果として、断熱性被覆層の断熱性が不十分となる。一方、断熱性被覆部の外径が300μmを超えると、この部分における第一の熱電対素線13および第二の熱電対素線14の可撓性が低下し、熱電対含有織物10を衣服に適用することが難しくなる。
【0024】
また、断熱性被覆部の外径が50μm以下である場合、熱電対含有織物10の製織時に、第一の熱電対素線13または第二の熱電対素線14が断線することがあるため、第一の熱電対素線13および第二の熱電対素線14は撚線であることが好ましい。
この撚線としては、(1)断熱性被覆部が設けられた熱電対素線を2本以上合わせて撚りをかけたもの、(2)断熱性被覆部が設けられた熱電対素線の2本以上と、断熱性繊維の1本または2本以上とを合わせて撚りをかけたもの、(3)断熱性被覆部が設けられた熱電対素線の1本と、断熱性繊維の1本または2本以上とを合わせて撚りをかけたもの、(4)、熱電対素線(断熱性被覆部が設けられていない)と、絶縁性繊維とを合わせて撚りをかけ、その外周に断熱性被覆層を設けたもの、などが挙げられる。
また、撚線の可撓性が低下し、熱電対含有織物10を衣服に適用することが難しくなるため、このような撚線の外径は300μm以下であることが好ましい。
【0025】
第一の熱電対素線13および第二の熱電対素線14が撚線である場合、熱電対15の接合部(測温部)16と、第一の熱電対素線13の開放端13aおよび第二の熱電対素線14の開放端14aは、撚りをかけないことが好ましい。
熱電対15の接合部16に撚りをかけないことが好ましい理由は、熱電対素線と撚りをとっている繊維が電気的接触の妨げとなるからである。
また、第一の熱電対素線13の開放端13aおよび第二の熱電対素線14の開放端14aに撚りをかけないことが好ましい理由は、この部分に撚りがかかっていると、第一の熱電対素線13の開放端13aおよび第二の熱電対素線14の開放端14aと温度センサデバイスとの接続を十分に行えないからである。
【0026】
さらに、第一の熱電対素線13および第二の熱電対素線14が撚線である場合、第一の熱電対素線13または第二の熱電対素線14を中心とし、その周囲が複数本の断熱性繊維に囲まれるようにして撚線を形成してなることが好ましい。このようにすれば、第一の熱電対素線13および第二の熱電対素線14が撚線の表面に露出することなく、その周囲が完全に断熱性繊維で囲まれているので、第一の熱電対素線13および第二の熱電対素線14が発する熱を十分に遮断することができる。さらに、接合部16から温度センサデバイス接続部間の線材の外気による温度勾配を防ぐことができる。
【0027】
熱電対15の接合部16は、耐熱性樹脂または耐熱性繊維により被覆されていることが好ましく、より好ましくは接合部16をカーボンセラミックスや繊維強化プラスチックで被覆して補強した後、耐熱性樹脂または耐熱性繊維により被覆することが好ましい。
このようにすれば、接合部16が外部からの衝撃を受けても、接合部16において、第一の熱電対素線13と第二の熱電対素線14が剥離し、熱電対15が断線することを防止できる。
【0028】
耐熱性繊維としては、例えば、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、高珪酸ガラス繊維などが挙げられる。
耐熱性樹脂としては、例えば、シンジオタクチックポリスチレン、アラミド繊維、ポリエチレンテレフタレートなどのエンジニアリングプラスチック、非晶ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、フッ素樹脂などのスーパーエンジニアリングプラスチックが挙げられる。
【0029】
この熱電対含有織物10は、緯糸12同士の間に第一の熱電対素線13と第二の熱電対素線14が隣接して織り込まれ、第一の熱電対素線13と第二の熱電対素線14が電気的に接合されて、第一の熱電対素線13と第二の熱電対素線14からなる熱電対15が形成され、この熱電対15の接合部16が熱電対含有織物10の一方の面10aに露出してなるので、消防衣服などの耐熱防護服用の生地として好適であり、熱電対15を小型の温度センサデバイスに電気的に接続することにより、環境温度を定量的に測定することができる。したがって、作業者が温度センサを持ったまま、高温環境において作業を行う必要がないため、作業効率が向上するとともに、作業者は常に環境温度を正確に把握することができるので、高温環境における事故の危険を回避することができる。
【0030】
なお、この実施形態では、緯糸12同士の間に第一の熱電対素線13と第二の熱電対素線14が隣接して織り込まれた熱電対含有織物10を例示したが、本発明の熱電対含有織物はこれに限定されない。本発明の熱電対含有織物にあっては、複数の経糸同士の間に第一の熱電対素線と第二の熱電対素線が隣接して織り込まれていてもよい。
また、この実施形態では、第一の熱電対素線13と第二の熱電対素線14からなる熱電対15を1つ備えた熱電対含有織物10を例示したが、本発明の熱電対含有織物はこれに限定されない。本発明の熱電対含有織物にあっては、第一の熱電対素線と第二の熱電対素線からなる熱電対を2つ以上備えていてもよい。
【0031】
(2)第二の実施形態
図2は、本発明の熱電対含有織物の第二の実施形態を示す概略平面図である。
この実施形態の熱電対含有織物20は、複数の経糸21と複数の緯糸22とが交差して織られてなる生地と、第一の熱電対素線23と第二の熱電対素線24が電気的に接合されてなる熱電対25とから概略構成されている。
また、第一の熱電対素線23と第二の熱電対素線24は、緯糸22同士の間に同列に織り込まれている。
さらに、第一の熱電対素線23と第二の熱電対素線24からなる熱電対25の接合部26が表面に露出している。
【0032】
より詳細には、第一の熱電対素線23と第二の熱電対素線24を、それらの一端部で電気的に接続してなる帯状(線状)の熱電対25が、緯糸22に対して並列に、経糸21と交差するように織り込まれており、緯糸22と同様に、熱電対織物20を構成する繊維をなしている。
また、熱電対25の接合部26が、熱電対含有織物20の一方の面20aに突出して設けられ、その一方の面20a側に露出している。
接合部26は、熱電対25において、温度を測定する部分(測温部)である。
【0033】
また、第一の熱電対素線23の開放端23aおよび第二の熱電対素線24の開放端24aは、第一の熱電対素線23および第二の熱電対素線24と、温度センサデバイスとが電気的に接続される部位であり、開放端23aは熱電対含有織物20の一端(縁)に配置されるとともに、開放端24aは熱電対含有織物20の他端(縁)に配置され、熱電対含有織物20の一方の面20a側に露出している。
【0034】
経糸21、緯糸22、第一の熱電対素線23、第二の熱電対素線24としては、上述の第一の実施形態と同様のものが用いられる。
【0035】
この熱電対含有織物20は、第一の熱電対素線23と第二の熱電対素線24を、それらの一端部で電気的に接続してなる帯状(線状)の熱電対25が、緯糸22に対して並列に、経糸21と交差するように織り込まれ、この熱電対25の接合部26が熱電対含有織物20の一方の面20aに露出してなるので、上述の熱電対含有織物10と同様の効果に加えて、熱電対25の熱電対含有織物20に占める割合(面積)を小さくすることができるとともに、熱電対25の接合部26が熱電対含有織物20の端部に配置されないので、熱電対含有織物20の縫製作業を容易に行うことができる。
【0036】
なお、この実施形態では、帯状(線状)の熱電対25が緯糸22に対して並列に、経糸21と交差するように織り込まれた熱電対含有織物20を例示したが、本発明の熱電対含有織物はこれに限定されない。本発明の熱電対含有織物にあっては、帯状(線状)の熱電対が経糸に対して並列に織り込まれていてもよい。
また、この実施形態では、第一の熱電対素線23と第二の熱電対素線24からなる帯状(線状)の熱電対25を1つ備えた熱電対含有織物20を例示したが、本発明の熱電対含有織物はこれに限定されない。本発明の熱電対含有織物にあっては、第一の熱電対素線と第二の熱電対素線からなる帯状(線状)の熱電対を2つ以上備えていてもよい。
【0037】
(3)第三の実施形態
図3は、本発明の熱電対含有織物の第三の実施形態を示す概略平面図である。
この実施形態の熱電対含有織物30は、複数の経糸31と複数の緯糸32とが交差して織られてなる生地と、第一の熱電対素線33と第二の熱電対素線34が電気的に接合されてなる熱電対35とから概略構成されている。
また、第一の熱電対素線33が経糸31同士の間に織り込まれ、第二の熱電対素線34が緯糸32同士の間に織り込まれている。
さらに、第一の熱電対素線33と第二の熱電対素線34が互いに交差する部分で電気的に接合されて、第一の熱電対素線33と第二の熱電対素線34からなる熱電対35の接合部36が表面に露出している。
【0038】
より詳細には、第一の熱電対素線33は、経糸31に対して並列に、緯糸32と交差するように織り込まれており、経糸31と同様に、熱電対織物20を構成する繊維をなしている。また、第二の熱電対素線34は、緯糸32に対して並列に、経糸31と交差するように織り込まれており、緯糸32と同様に、熱電対織物20を構成する繊維をなしている。これにより、第一の熱電対素線33と第二の熱電対素線34が、互いに交差する部分で電気的に接続されて、平面視十字形の熱電対35を形成している。
また、熱電対35の接合部36が、熱電対含有織物30の一方の面30aに突出して設けられ、その一方の面30a側に露出している。
接合部36は、熱電対35において、温度を測定する部分(測温部)である。
【0039】
また、第一の熱電対素線33の開放端33a、33bのいずれか一方または両方、並びに、第二の熱電対素線34の開放端34a、34bのいずれか一方または両方は、第一の熱電対素線33および第二の熱電対素線34と、温度センサデバイスとが電気的に接続される部位であり、開放端33a、33b、34a、34bは熱電対含有織物30の端部(縁部)に配置され、熱電対含有織物30の一方の面30a側に露出している。
【0040】
経糸31、緯糸32、第一の熱電対素線33、第二の熱電対素線34としては、上述の第一の実施形態と同様のものが用いられる。
【0041】
この熱電対含有織物30は、経糸31同士の間に第一の熱電対素線33が織り込まれ、緯糸32同士の間に第二の熱電対素線34が織り込まれ、第一の熱電対素線33と第二の熱電対素線34が互いに交差する部分で電気的に接合されて、第一の熱電対素線33と第二の熱電対素線34からなる熱電対35が形成され、この熱電対35の接合部36が熱電対含有織物30の一方の面30aに露出してなるので、上述の熱電対含有織物10と同様の効果に加えて、第一の熱電対素線33と第二の熱電対素線34が互いに直交する方向に織り込まれているので、熱電対35が断線し難くなる。
【0042】
なお、この実施形態では、第一の熱電対素線33と第二の熱電対素線34からなる平面視十字形の熱電対35を1つ備えた熱電対含有織物30を例示したが、本発明の熱電対含有織物はこれに限定されない。本発明の熱電対含有織物にあっては、第一の熱電対素線と第二の熱電対素線からなる平面視十字形の熱電対を2つ以上備えていてもよい。
【0043】
(4)第四の実施形態
図4は、本発明の熱電対含有織物の第四の実施形態を示す概略断面図である。
この実施形態の熱電対含有織物40は、複数の経糸と複数の緯糸とが交差して織られてなる第一の織物41、第二の織物42および第三の織物43がこの順に積層されてなる生地と、第一の熱電対素線44と第二の熱電対素線45が電気的に接合されてなる熱電対46とから概略構成されている。
また、第一の熱電対素線44と第二の熱電対素線45が、第一の織物41、第二の織物42および第三の織物43の緯糸同士の間に同列に、かつ、これらの織物を順に貫くように織り込まれている。
また、第一の熱電対素線44と第二の熱電対素線45が電気的に接合されて、第一の熱電対素線44と第二の熱電対素線45からなる熱電対46の接合部47が表面に露出している。
さらに、第一の熱電対素線44の開放端44aおよび第二の熱電対素線45の開放端45aは、第一の熱電対素線44および第二の熱電対素線45と、温度センサデバイスとが電気的に接続される部位であり、開放端44aは熱電対含有織物40の一端(縁)に配置されるとともに、開放端45aは熱電対含有織物40の他端(縁)に配置され、熱電対含有織物40の他方の面40b側に露出している。
【0044】
より詳細には、第一の熱電対素線44と第二の熱電対素線45を、それらの一端部で電気的に接続してなる帯状(線状)の熱電対46が、第一の織物41、第二の織物42および第三の織物43の緯糸に対して並列に、これらの織物の経糸と交差するように織り込まれており、これらの織物の緯糸と同様に、織物を構成する繊維をなしている。
また、第一の熱電対素線44および第二の熱電対素線45は、それぞれの開放端44a、45aから接合部47に向かって、第一の織物41、第二の織物42、第三の織物43に対して順に織り込まれており、熱電対46の接合部47が、熱電対含有織物40の一方の面40a、すなわち、第三の織物43の一方の面43aに突出して設けられ、その一方の面40a側に露出している。
接合部47は、熱電対46において、温度を測定する部分(測温部)である。
【0045】
また、熱電対46の接合部47は、耐熱性樹脂または耐熱性繊維からなる被覆層48により被覆されている。
耐熱性樹脂、耐熱性繊維としては、上述の第一の実施形態と同様のものが用いられる。
【0046】
第一の織物41、第二の織物42および第三の織物43を構成する経糸と緯糸、第一の熱電対素線44、第二の熱電対素線45としては、上述の第一の実施形態と同様のものが用いられる。
【0047】
この熱電対含有織物40は、第一の織物41、第二の織物42および第三の織物43がこの順に積層されてなり、第一の熱電対素線44と第二の熱電対素線45が、第一の織物41、第二の織物42および第三の織物43の緯糸同士の間に同列に、かつ、これらの織物を順に貫くように織り込まれ、第一の熱電対素線44と第二の熱電対素線45からなる熱電対46が形成され、この熱電対46の接合部47が表面に露出してなるので、上述の熱電対含有織物10と同様の効果に加えて、第一の織物41、第二の織物42および第三の織物43が、第一の熱電対素線44と第二の熱電対素線45が発する熱を遮断し、さらに接合部47から温度センサデバイス接続部間の線材の外気による温度勾配を防ぐので、第一の熱電対素線44と第二の熱電対素線45の外周に断熱性被覆層を設ける必要がなくなる。
【0048】
なお、上述の熱電対含有織物の第一の実施形態、第二の実施形態、第三の実施形態および第四の実施形態を、消防衣服などの耐熱防護服に適用した場合、それぞれの熱電対を温度センサデバイスに電気的に接続するとともに、熱電対によって測定した温度を表示する表示ディスプレイを、作業者の作業の妨げにならず、かつ、作業中にも容易に視認できる位置に設ける。耐熱防護服に表示ディスプレイを設ける好ましい位置としては、上衣の袖、帽子の鍔などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の熱電対含有織物の第一の実施形態を示す概略平面図である。
【図2】本発明の熱電対含有織物の第二の実施形態を示す概略平面図である。
【図3】本発明の熱電対含有織物の第三の実施形態を示す概略平面図である。
【図4】本発明の熱電対含有織物の第四の実施形態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10,20,30,40・・・熱電対含有織物、11,21,31・・・経糸、12,22,32・・・緯糸、13,23,33,44・・・第一の熱電対素線、14,24,34,45・・・第二の熱電対素線、15,25,35,46・・・熱電対、16,26,36,47・・・接合部、41・・・第一の織物、42・・・第二の織物、43・・・第三の織物、48・・・被覆層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の経糸と複数の緯糸とが交差して織られ、前記経糸同士の間および/または前記緯糸同士の間に、少なくとも一対の第一の熱電対素線と第二の熱電対素線が織り込まれてなる熱電対含有織物であって、
前記第一の熱電対素線と前記第二の熱電対素線が電気的に接合されて、これらの熱電対素線からなる熱電対が形成され、該熱電対の接合部が表面に露出していることを特徴とする熱電対含有織物。
【請求項2】
前記第一の熱電対素線および前記第二の熱電対素線の線径は、10μm以上、100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱電対含有織物。
【請求項3】
前記第一の熱電対素線および前記第二の熱電対素線において、前記接合部と開放端との間の部分の外周に断熱性被覆層が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の熱電対含有織物。
【請求項4】
前記第一の熱電対素線および前記第二の熱電対素線において、前記断熱性被覆層が設けられている部分の外径は、30μm以上、300μm以下であることを特徴とする請求項3に記載の熱電対含有織物。
【請求項5】
前記第一の熱電対素線および前記第二の熱電対素線は、撚線であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱電対含有織物。
【請求項6】
前記熱電対の接合部が耐熱性樹脂または耐熱性繊維により被覆されたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の熱電対含有織物。
【請求項7】
前記経糸および前記緯糸は、断熱性繊維からなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の熱電対含有織物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−90492(P2010−90492A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259715(P2008−259715)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】