説明

熱電素子を利用した不凝縮ガスセンサー

【課題】凝縮への影響を直接的に計測すると共にリアルタイムで正確な相変化状態を知ることができる小型化された不凝縮ガスセンサーを実現する。
【解決手段】所定の容器6内の蒸気中に存在する微量な不凝縮ガスの濃度を計測する不凝縮ガスセンサー1において、蒸気に接触する熱電素子3を設け、熱電素子3に、一定の周期で連続的に変化する電流を電源4にて印加して蒸気の加熱及び冷却を繰り返し、蒸気の蒸発及び凝縮を行わせるとともに、熱電素子3における蒸気との接触表面の温度変化を熱電対8で測定し、印加した電流の周期的な変化の位相と、温度測定素子8(熱電対、サーミスター、測温抵抗体など)の温度の周期的な変化の位相との差により、蒸気中の不凝縮ガスの濃度を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電素子を利用した不凝縮ガスセンサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
管や容器内のガスをサンプリングし、このサンプリング試料をガスクロマトグラフィーで分析する手段は、従来、いろいろな分野に利用されている(特許文献1参照)。
【0003】
図1は、従来のガス測定装置の一例を示す図である。1bは凝縮器、1a、2a、3aはガスクロマトグラフィーである。1c、2c、3cはガス試料をサンプリングするためのパイプである。
【0004】
この不凝縮ガス測定装置では、凝縮器1bは、ガス試料を入れるガス収容容器として機能しており、この中には試料と水蒸気が入っている。この水蒸気のうちの不凝縮ガス(空気)の濃度が小さいと、不凝縮ガスセンサーによる不凝縮ガスの検出がしにくくなり、高精度で大がかりな装置を必要とし、さらに、また測定には、数十分の時間と多数のサンプリングが必要である。
【0005】
凝縮器内では蒸気状態は凝縮面近傍で変化し、完全混合状態にないため、各サンプリング点で同一の値を得ることは難しく、1の点のサンプリング値から不凝縮ガス量を得ても実際の凝縮への影響を推定しにくく、数多くのサンプリングが必要という問題がある。
【特許文献1】特開2002−39925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来装置の問題を解決することを目的とするものであり、凝縮への影響を直接的に計測すると共にリアルタイムで正確な相変化状態を知ることができる小型化された不凝縮ガスセンサーを実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために、所定の容器内の蒸気中に存在する微量な不凝縮ガスの濃度を計測する不凝縮ガスセンサーであって、前記蒸気に接触する熱電素子を設け、
該熱電素子に、一定の周期で連続的に変化する電流を印加して前記蒸気の加熱及び冷却を繰り返し、前記蒸気の蒸発及び凝縮を行わせるとともに、該熱電素子における前記蒸気との接触表面の温度変化を測定し、前記印加した電流の周期的な変化の位相と、前記熱電素子表面温度の周期的な変化の位相との差により、蒸気中の不凝縮ガスの濃度を計測することを特徴とする熱電素子を利用した不凝縮ガスセンサーを提供する。
【発明の効果】
【0008】
従来、微量な不凝縮ガスの測定は多くの時間と大がかりな装置を必要としたが、本発明によれば、熱電素子の冷却、加熱特性を用いることで、相変化状態を直接的かつ即時的に得ることができ、同時に小型化、低価格化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る熱電素子を利用した不凝縮ガスセンサーの実施の形態を実施例に基づいて図面を参照して、以下に説明する。
【0010】
図2は、本発明に係る熱電素子を利用した不凝縮ガスセンサーの実施例を説明する図である。不凝縮ガスセンサー1は、全体が筒状に形成されており、その先端ヘッド2には熱電素子3を備えている。この熱電素子3には、電源4から、一定の周期で連続的に変化する電流が加えられ、周期的に加熱及び冷却されるように構成されている。
【0011】
ここで、一定の周期で連続的に変化する電流とは、「断続された連続的な電流」または「交番的な電流」である。
【0012】
また、凝縮ガスセンサー1内には、ヒータ5及び冷却水路10が設けられている。ヒータ5及び冷却水路10は、温度制御部を構成するものであり、この温度制御部は、熱電素子3がジュール熱による温度上昇を抑え一定温度を保つための恒温手段として設けられている。
【0013】
このような構成の不凝縮ガスセンサー1が、試料ガス容器(凝縮器)6の壁7を貫通し、その先端ヘッド2の熱電素子3を不凝縮ガスセンサー1の内に露出するように装着される。試料ガス容器6内には、試料ガスと水蒸気が存在する。水蒸気は、熱電素子3の表面(熱電素子3の試料ガス容器6側の面)に触れている。水蒸気は、不凝縮ガスである空気と水からなる。
【0014】
熱電素子3の表面の温度が、水蒸気の飽和温度より高い温度のとき蒸発が生じ、低い温度のとき蒸気の凝縮が生じる。よって、熱電素子3で加熱及び冷却を繰り返し、その表面温度を変化させることで、凝縮した水を蒸発させ、水蒸気の水成分は凝縮したりする。
【0015】
このような熱電素子3の表面には、その表面温度を測定するための第1の温度測定用の温度測定素子8(熱電対、サーミスター、測温抵抗体など)が付設されている。そして、熱電素子3の裏面(熱電素子3のヒータ5側の面)にも、第2の温度測定用の温度測定素子9(熱電対、サーミスター、測温抵抗体など)が設けられている。
【0016】
この熱電素子3の裏面側は、一定温度となるように、ヒータ5及び冷却水路10を流れる冷却水によりコントロールされている。ヒータ5は、熱電素子3がその裏面側の温度を恒温状態となるようにするものであり、第2の温度測定素子9で熱電素子3の裏面側を測定し、モニタリングしている。
【0017】
以上の構成の不凝縮ガスセンサー1を使用する場合には、電源4により熱電素子3に一定の周期で繰り返し電流を加える。すると、熱電素子3は、加熱、冷却され、熱電素子3の表面に付着されている水は蒸発、凝縮し、そのような相変化に伴い、熱電素子3の表面温度は変化する。
【0018】
このように熱電素子3に周期的に加えられる電流を電流計(図示せず)で測定するととともに、電流の変化に応答して変化する熱電素子3の表面における温度(表面温度)を測定する。熱電素子3の表面温度は、電流の変化に応答し、電流の変化と同じ周期(同期)で変化するが、電流の周期的な変化から時間的な遅れが生じ、即ち位相がずれて、熱電素子3の表面温度は変化する。
【0019】
即ち、水蒸気と水の間で相変化が起こると、熱電素子3の表面において熱量変化が生じるために、熱電素子3の表面の温度に変化が起こる。飽和温度から少し高くずれた温度になるまで電流を増加させ、一定時間後電流を減少させる。
【0020】
このように、周期的に変化する電流(断続された連続的に変化する電流または交番的な電流)を加えることで、水蒸気と水の間での相変化により熱電素子3表面の温度は周期的な変化となって現れる。即ち、電流の周期的な変化に対する熱電素子3の表面温度の周期的な変化は、時間的な遅れ、即ち、位相のずれを生じる。
【0021】
ところで、試料ガス容器6内の水蒸気の水成分が多い場合(不凝縮ガス濃度が低い場合)は、熱電素子3の表面への水の付着量が多いので、熱電素子3の表面に付着した水を蒸発するために要する時間が多くかかる。
【0022】
即ち、不凝縮ガス濃度が低い場合(水成分が多い場合)は、電流の周期的な変化に対する熱電素子3の表面温度の周期的な変化の時間的遅れ、即ち、位相のずれ幅は大きくなる。
【0023】
本発明は、熱電素子3に一定周期で付加される電流を測定するとともに、熱電素子3の試料ガス容器6内での表面温度を測定し、電流と表面温度の周期的な変化の位相差を検出することにより、試料ガス容器6内の水蒸気量に対する空気の割合(不凝縮ガス濃度)の大小が把握できることとなる。
【0024】
予め、試料ガス容器6内の不凝縮ガス濃度と温度測定素子8の温度変化の位相差の対応について、関係曲線を作成しておけば、位相差を検出することで、不凝縮ガス濃度を測定することができる。
【0025】
即ち、予め、試料ガス容器6内の不凝縮ガス濃度をいくつか変えて、それらのそれぞれについて、熱電素子3に加えられる電流の変化と温度測定素子8の温度変化の位相差を検出し、関係曲線を作成しておけば、その関係曲線を利用することにより、蒸気内部に存在する不凝縮ガスの濃度を容易かつ正確に計測できる。
【0026】
本発明に係る熱電素子3を利用した不凝縮ガスセンサー1は、以上のような構成であるから、熱電素子3に印加する電流及び熱電素子3の表面温度を計測することで、直接的な相変化乃至不凝縮ガス濃度計測が可能であり、従来の装置に比べ、リアルタイムで不凝縮ガス濃度を計測でき、しかも、装置の小型化を図ることが可能となる。
【0027】
換言すると、本発明によれば、熱電素子3表面での相変化において不凝縮ガスの影響による熱抵抗(別の観点からすると、熱伝達)を電流変化と温度変化として計測可能であり、蒸気中に含まれる不凝縮ガスによる相変化への影響を感知、計測がリアルタイムで可能である。
【0028】
以上、本発明に係る熱電素子を利用した凝縮ガスセンサーの最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されることなく、特許請求の範囲記載の技術的事項の範囲内で、いろいろな実施例があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る熱電素子を利用した不凝縮ガスセンサーは、以上のような構成であるから、冷却、加熱装置と、その表面の温度測定装置に関し、不凝縮ガス測定ばかりでなく、飽和蒸気温度計測による相変化現象観測装置として利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来のガス測定装置を説明する図である。
【図2】本発明に係る熱電素子を利用した凝縮ガスセンサーの実施例を説明する図である。
【符号の説明】
【0031】
1 不凝縮ガスセンサー
2 先端ヘッド
3 熱電素子
4 電源
5 ヒータ
6 試料ガス容器(凝縮器)
7 試料ガス容器の壁
8 第1の温度測定用の温度測定素子(熱電対、サーミスター、測温抵抗体など)
9 第2の温度測定用の温度測定素子(熱電対、サーミスター、測温抵抗体など)
10 冷却水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の容器内の蒸気中に存在する微量な不凝縮ガスの濃度を計測する不凝縮ガスセンサーであって、
前記蒸気に接触する熱電素子を設け、
該熱電素子に、一定の周期で連続的に変化する電流を印加して前記蒸気の加熱及び冷却を繰り返し、前記蒸気の蒸発及び凝縮を行わせるとともに、該熱電素子における前記蒸気との接触表面の温度変化を測定し、
前記印加した電流の周期的な変化の位相と、前記熱電素子の表面温度の周期的な変化の位相との差により、蒸気中の不凝縮ガスの濃度を計測することを特徴とする熱電素子を利用した不凝縮ガスセンサー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−97919(P2009−97919A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267998(P2007−267998)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】