説明

燃料アルコール濃度検出装置

【課題】 温度変化が生じる過渡期であっても、検出誤差を可及的に小さくする燃料アルコール濃度検出装置を提供する。
【解決手段】 サーミスタ44がちょうど収容される程度の収容部48を内側電極41が有している。収容部48の内壁とサーミスタ44との間には僅かな隙間が設けられており、この隙間には、熱伝導材481が充填されている。収容部48は、外側電極42との対向部分以外の内側電極41の先端に形成されている。段差部49には、当接するように、リード側熱伝導部材61が配置されている。リード側熱伝導部材61は、円板状の部材であり、金属製である。リード側熱伝導部材61には、リード部46,47が貫通する2つのリード穴62,63が形成されている。ここで、一方のリード部46は、熱伝導部材61に半田付けされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の内燃機関(以下「エンジン」という)に使用される燃料のアルコール濃度を検出する燃料アルコール濃度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車などのエンジンに用いられる燃料として、低公害なアルコール混合ガソリンが注目されている。このような混合ガソリンは、ガソリンのみの燃料とは、最適な空燃比が異なっている。そのため、混合ガソリンが最適な空燃比となるように制御するため、混合ガソリン中のアルコールの含有量、すなわちアルコール濃度を測定することが重要となってくる。
【0003】
アルコール濃度を精度よく測定するためには、変化比率の比較的高い物理定数を用いることが望ましい。そのため、従来、比誘電率の変化を検出する方法が開示されている。例えば、比誘電率は静電容量の変化から求められるため、コンデンサを形成して静電容量を測定する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この種の装置では、コンデンサを構成する電極の内部にサーミスタなどの感熱素子を配置し、燃料の温度を検出して、温度による補正を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3−61563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、第1図に示されるように、感熱素子5を収容するコンデンサ電極4が比較的大きくなっている。そのため、コンデンサ電極4の熱容量が大きくなっている。また、感熱素子5の周囲には充填剤6が充填されており、この充填剤6を経由して感熱素子5に熱が伝わるようになっている。これらのことから、感熱素子5への熱伝導に遅れが生じる虞がある。結果として、温度変化が生じる過渡期には、検出誤差が大きくなることが懸念される。
【0006】
なお、ここではアルコール混合ガソリンの静電容量の検出を例に挙げて説明したが、これに限られず、一対の電極を用い温度による補正を行って燃料のアルコール濃度を検出する場合には同様に生じ得る問題である。
【0007】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、その目的は、温度変化が生じる過渡期であっても、検出誤差を可及的に小さくする燃料アルコール濃度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の燃料アルコール濃度検出装置では、燃料ハウジングにて、燃料配管の途中に、燃料が通過する燃料室が形成されている。この燃料室には、筒状の内側電極が配置されている。内側電極は、外側電極に囲繞されており、外側電極と対向している。このような一対の電極により、燃料のアルコール濃度が検出される。
【0009】
また、本発明では、一対の電極によって検出される燃料のアルコール濃度を温度によって補正する。そこで、温度センサが、内側電極の内部に収容されている。温度センサは、温度を検出する検知部、及び、検知部からの導通を図るリード部を有している。
【0010】
ここで特に本発明では、内側電極が、検知部がちょうど収容される程度の収容部を有している。「ちょうど収容される程度の」とは、検知部との隙間が十分に小さいことを意味する。この隙間には、従来と同様に、熱伝導材を充填することが考えられる。
【0011】
このようにすれば、検知部が収容される収容部の体格は、検知部に合わせて小さくなる。したがって、収容部の熱容量を小さくすることができる。また、収容部と検知部との隙間も小さくなるため、例えば熱伝導材などを介した熱伝導が速やかに行われる。
【0012】
また、本発明では、内側電極の内部に、リード部と内側電極とを連結するリード側熱伝導部材を有している。これにより、リード側熱伝導部材を介して内側電極の熱がリード部へ速やかに伝導し、さらにその熱がリード部から検知部へ速やかに伝導する。
【0013】
これによって、温度変化が生じる過渡期であっても、検出誤差を可及的に小さくすることができる。
【0014】
収容部は、具体的には、請求項2に示すように、外側電極との対向部分以外の内側電極の先端に一体形成することが考えられる。このようにすれば、外側電極との対向面積も確保できる。
【0015】
また、請求項3に示すようにリード側熱伝導部材を金属製とすれば、リード側熱伝導部材を介して内側電極の熱がリード部へ速やかに伝導するという上記効果が際立つ。
【0016】
さらにまた、熱伝導を促進するという観点からは、請求項4に示すように、内側電極の内部に、検知部と内側電極とを連結する検知側熱伝導部材を設けることが考えられる。このようにすれば、検知側熱伝導部材を介して内側電極の熱が検知部へ速やかに伝導する。その結果、温度変化が生じる過渡期であっても、検出誤差を可及的に小さくすることができる。このとき、請求項5に示すように、リード側熱伝導部材を金属製とすれば、上記の効果が際立つ。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態の燃料アルコール濃度センサの全体構成を示す概略断面図である。
【図2】一実施形態の燃料アルコール濃度センサの特徴部分を示す説明図である。
【図3】別実施形態の燃料アルコール濃度センサの特徴部分を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
本形態の燃料アルコール濃度センサは、車両の燃料タンクとインジェクタとを接続する燃料配管の途中に設けられ、燃料中のエタノール濃度を測定するものである。
【0019】
図1に示すように、燃料アルコール濃度センサ1は、左右に延びる上流側配管11及び下流側配管12と、両配管11、12の間に配置される配管構成部20と、配管構成部20の上方に配置される回路構成部30と、配管構成部20の内部に配置される電極構成部40とを備えている。
【0020】
上流側配管11は、燃料タンク側の配管に接続される。一方、下流側配管12は、インジェクタ側の配管と接続される。
【0021】
配管構成部20は、燃料ハウジング21を中心に構成されている。燃料ハウジング21は、金属製の容器部材であり、上部が開口している。この上部開口に蓋部22が取り付けられ、蓋部22の中央部の開口に、電極構成部40が上方から係止されている。これにより、燃料ハウジング21の内部に、燃料室23が形成される。
【0022】
また、燃料ハウジング21は、下部をブラケット24で覆われており、その側壁に、円形状の開口部211、212を有している。一方の開口部211は、上流側配管11に合わせて設けられている。これにより、上流側配管11から燃料室23に燃料が供給される。また、他方の開口部212は、下流側配管12に合わせて設けられている。これにより、燃料室23から下流側配管12へ燃料が送出される。
【0023】
回路構成部30は、主として、収容ハウジング31、及び、カバー32からなる。
収容ハウジング31及びカバー32は、樹脂材料で形成されている。収容ハウジング31は、凹部311を有している。この凹部311の開口を覆うように、カバー32が取り付けられている。これにより、収容室33が形成されている。この収容室33には、電気回路のプリントされた基板34が収容されている。基板34は、ネジ35により収容ハウジング31に対し螺着されている。
【0024】
電極構成部40は、円筒状の内側電極41と、内側電極41を囲繞する外側電極42とを有している。これら内側電極41及び外側電極42は、外側電極42の径方向内側に内側電極41が配置されるように、硝子部43によってハーメチック固定(硝子封止)されている。これにより、内側電極41と外側電極42とは一つのユニットとして構成され、両電極41,42が対向する。
【0025】
内側電極41は、その側部に、端子411を有している。この端子411は、基板34に半田付けされている。また、外側電極42は、その上部に、端子421を有している。端子421も、端子411と同様、基板34に半田付けされている。これにより、両電極41,42間の電圧値が検出可能となっている。また、外側電極42の側壁には、U字状の切り欠き422が設けられている。これにより、燃料室を流れる燃料が両電極41,42間を満たすことになる。
【0026】
また、内側電極41は、その内部に、サーミスタ44を有している。サーミスタ44は、内側電極41に対し固定される樹脂製のホルダ45に支持されている。また、サーミスタ44の2つのリード部46,47は、ホルダ45の内部を通り、基板34に半田付けされている。これにより、内側電極41を介して燃料の温度が検出可能となっている。
【0027】
配管構成部20と回路構成部30とは、弾性部材51を介在させて組み付けられる。弾性部材51は、エラストマ材料で形成されており、中央部に円形穴が設けられている。これにより、弾性部材51は、組み付け時において、外側電極42の周縁部と、収容ハウジング31の底部とで挟み込まれる。
【0028】
ここで本形態の特徴部分について説明する。
本形態の燃料アルコール濃度センサ1では、サーミスタ44がちょうど収容される程度の収容部48を内側電極41が有している。収容部48の内壁とサーミスタ44との間には僅かな隙間が設けられており、この隙間には、熱伝導材481が充填されている。収容部48は、外側電極42との対向部分以外の内側電極41の先端に形成されており、外側電極42との対向部分と比較して径の小さなドーム状となっている。この径の変化により、内側電極41は、収容部48の形成部分に、段差部49を有している。
【0029】
図2(a)に示すように、段差部49には、当接するように、リード側熱伝導部材61が配置されている。リード側熱伝導部材61は、図2(b)に示すように円板状の部材であり、金属製である。リード側熱伝導部材61には、リード部46,47が貫通する2つのリード穴62,63が形成されている。ここで、一方のリード部46は、熱伝導部材61に半田付けされている。他方のリード部47は、熱伝導部材61に接触することなく熱伝導部材61を貫通している。
【0030】
かかる構成により、本形態の燃料アルコール濃度センサ1では、燃料室23を通過する燃料の比誘電率に対応する静電容量を検出し、サーミスタ44にて検出される燃料の温度で補正して、燃料中のエタノール濃度を測定する。
【0031】
次に、本形態の燃料アルコール濃度センサ1が発揮する効果を説明する。
本形態では、サーミスタ44がちょうど収容される程度の収容部48を内側電極41が有しており、収容部48の内壁とサーミスタ44との隙間が熱伝導材481で充填されている。これにより、サーミスタ44が収容される収容部48の体格は、サーミスタ44に合わせて小さくなる。したがって、収容部48の熱容量を小さくすることができる。また、収容部48の内壁とサーミスタ44との隙間も小さくなっているため、熱伝導材481を介して熱伝導が速やかに行われる。これにより、温度変化が生じる過渡期であっても、検出誤差を可及的に小さくすることができる。
【0032】
なお、収容部48は外側電極42との対向部分以外の内側電極41の先端に形成されているため、収容部48を設けた場合でも内側電極41と外側電極42との対向面積を十分に確保することができる。
【0033】
また、本形態では、段差部49にリード側熱伝導部材61が配置されており、一方のリード部46が、熱伝導部材61に半田付けされている。また、リード側熱伝導部材61は、金属製である。これにより、リード側熱伝導部材61を介して内側電極41の熱が一方のリード部46へ速やかに伝導し、さらにその熱がリード部46からサーミスタ44へ速やかに伝導する。その結果、温度変化が生じる過渡期であっても、検出誤差を可及的に小さくすることができる。
【0034】
なお、本形態における燃料アルコール濃度センサ1が「燃料アルコール濃度検出装置」を構成し、燃料室23が「燃料室」を構成し、燃料ハウジング21が「燃料ハウジング」を構成し、内側電極41が「内側電極」を構成し、外側電極42が「外側電極」を構成し、サーミスタ44が「検知部」を構成し、リード部46,47が「リード部」を構成し、サーミスタ44及びリード部46,47が「温度センサ」を構成し、リード側熱伝導部材61が「リード側熱伝導部材」を構成する。
【0035】
以上、本発明は、上記実施形態に何等限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々なる形態で実施可能である。
(イ)上記形態は、内側電極41が、その段差部49に、リード側熱伝導部材61を有する構成であった。これに対し、図3に示すように、リード側熱伝導部材61に加え、「検知側熱伝導部材」としての検知側熱伝導部材64を備える構成としてもよい。なお、上記形態と同様の部材には、同一の符号を付して説明する。
図3に示すように、検知側熱伝導部材64は、先端側に穴641が設けられたカップ状の部材である。基端側は径外方向へ張り出すフランジ部642を有しており、このフランジ部642が段差部49に当接するように検知側熱伝導部材64が配置されている。検知側熱伝導部材64の直上には、上記形態で説明したリード側熱伝導部材61が配置されている。
これにより、上記形態で説明したリード側熱伝導部材61による熱伝導に加え、金属製の検知側熱伝導部材64により、内側電極41の熱がサーミスタ44へ速やかに伝導する。その結果、温度変化が生じる過渡期であっても、検出誤差を可及的に小さくすることができる。
(ロ)上記(イ)に示した構成ではリード側熱伝導部材61に加え検知側熱伝導部材64を配置しているが、リード側熱伝導部材61を省略して、検知側熱伝導部材64だけを配置してもよい。この意味で、「燃料配管の途中に、燃料が通過する燃料室を形成する燃料ハウジングと、前記燃料室に配置される筒状の内側電極と、前記燃料室に配置され、前記内側電極と対向するように当該内側電極を囲繞する外側電極と、前記内側電極の内部に収容され、温度を検出する検知部、及び、検知部からの導通を図るリード部を有する温度センサと、を備え、前記内側電極は、前記検知部がちょうど収容される程度の収容部を有し、その内部に、前記検知部と自身とを連結する検知側熱伝導部材を有していること」としてもよい。
(ハ)上記形態では、エタノール濃度を測定するものとしたが、メタノールなどのアルコール濃度を測定してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1:燃料アルコール濃度センサ、11:上流側配管、12:下流側配管、20:配管構成部、21:燃料ハウジング、211:開口部、212:開口部、22:蓋部、23:燃料室、24:ブラケット、30:回路構成部、31:収容ハウジング、311:凹部、32:カバー、33:収容室、34:基板、35:ネジ、40:電極構成部、41:内側電極、411:端子、42:外側電極、421:端子、43:硝子部、44:サーミスタ、45:ホルダ、46,47:リード部、48:収容部、49:段差部、51:弾性部材、61:リード側熱伝導部材、62,63:リード穴、64:検知側熱伝導部材、641:穴、642:フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料配管の途中に、燃料が通過する燃料室を形成する燃料ハウジングと、
前記燃料室に配置される筒状の内側電極と、
前記燃料室に配置され、前記内側電極と対向するように当該内側電極を囲繞する外側電極と、
前記内側電極の内部に収容され、温度を検出する検知部、及び、検知部からの導通を図るリード部を有する温度センサと、
を備え、
前記内側電極は、
前記検知部がちょうど収容される程度の収容部を有し、
その内部に、前記リード部と自身とを連結するリード側熱伝導部材を有していること
を特徴とする燃料アルコール濃度検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料アルコール濃度検出装置において、
前記収容部は、前記外側電極との対向部分以外の内側電極の先端に一体形成されていること
を特徴とする燃料アルコール濃度検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料アルコール濃度検出装置において、
前記リード側熱伝導部材は、金属製であること
を特徴とする燃料アルコール濃度検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料アルコール濃度検出装置において、
前記内側電極は、その内部に、前記検知部と自身とを連結する検知側熱伝導部材を有していること
を特徴とする燃料アルコール濃度検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料アルコール濃度検出装置において、
前記検知側熱伝導部材は、金属製であること
を特徴とする燃料アルコール濃度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−107070(P2011−107070A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264854(P2009−264854)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】