説明

燃料アルコール濃度検出装置

【課題】検出精度の高い燃料アルコール濃度検出装置を提供する。
【解決手段】筒状の外側電極20は、取付部材10から突出し、燃料室の燃料を流出入可能な開口25を有する。筒状の内側電極30は、外側電極20の内部に収容され、外側電極20と対向するように取付部材10から突出する。サーミスタ40は、内側電極30の内部に収容され、燃料室内の燃料の温度を検出する。シール部材50は、外側電極20と内側電極30との間に配置される。シール部材50よりも先端側であって燃料に浸漬される濃度検出領域における電極間ギャップL1は、濃度検出領域よりも基端側である非濃度検出領域における電極間ギャップL2より小さい。これにより、非濃度検出領域の電極間で発生する浮遊容量が小さくなり、燃料中のアルコール濃度の検出精度が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料中のアルコール濃度を検出する燃料アルコール濃度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車などのエンジンに用いられる燃料として、一般的なガソリンより低公害であるアルコールを混合したアルコール混合ガソリンが注目されている。アルコール混合ガソリンを用いる場合、ガソリンのみの燃料を用いる場合とは最適な空燃比が異なる。そのため、最適な空燃比となるように制御するため、アルコール混合ガソリン中のアルコール濃度を測定することが必要である。
アルコール混合ガソリン中のアルコール濃度を精度よく測定するためには、変化比率の比較的高い物理定数を用いることが望ましい。そのため、従来、比誘電率の変化を検出する方法が開示されている。例えば、比誘電率は静電容量の変化から求められるため、コンデンサを形成して静電容量を測定する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、アルコールは、温度により静電容量が異なるため、燃料の温度を測定し、測定した燃料の温度に基づき、静電容量に対するアルコール濃度を補正することが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平01−163862号公報
【特許文献2】特開平05−93703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電極間の静電容量は、検出部おける静電容量と検出部以外の静電容量との並列回路で示される。検出部以外の静電容量である浮遊容量は、外乱である。そのため検出精度を向上するためには、浮遊容量をできるだけ小さくする必要がある。また、検出精度を向上するためには、浮遊容量のばらつきをできるだけ小さくすることが好ましい。しかしながら、特許文献1では、検出部以外の電極間の間隔が検出部と同様に小さい。そのため、浮遊容量が大きく、また、製造公差による浮遊容量のばらつきが大きくなり、検出精度が悪くなるという問題点があった。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、検出精度の高い燃料アルコール濃度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の燃料アルコール濃度検出装置は、取付部材と、外側電極と、内側電極と、温度センサと、シール部材とを備える。取付部材は、燃料を貯留する燃料室を有する貯留部材に取付可能である。筒状の外側電極は、取付部材から突出し、燃料室の燃料を流出入可能な開口を有する。筒状の内側電極は、外側電極の内部に収容され、外側電極と対向するように取付部材から突出する。温度センサは、内側電極の内部に収容され、燃料室内の燃料の温度を検出する。シール部材は、外側電極と内側電極との間に配置される。
【0006】
本発明では、シール部材よりも先端側であって燃料に浸漬される濃度検出領域における外側電極と内側電極との電極間ギャップは、濃度検出領域よりも基端側である非濃度検出領域における外側電極と内側電極との電極間ギャップより小さい。換言すると、燃料に浸漬されない非濃度検出領域における電極間ギャップは、濃度検出領域における電極間ギャップより大きい。浮遊容量は電極間距離に反比例するため、非濃度検出領域の電極間ギャップを相対的に大きくすることにより非濃度検出領域の電極間で発生する浮遊容量が小さくなり、燃料中のアルコール濃度の検出精度が向上する。また、製造公差による浮遊容量のばらつきが小さくなるので、燃料中のアルコール濃度の検出精度が向上する。なお、外側電極および内側電極が取付部材から突出する突出方向を「先端側」とし、先端側と反対方向を「基端側」とする。
【0007】
具体的には、以下のように構成することができる。
請求項2に記載の外側電極は、基端側よりも先端側において径が小さくなるように形成される段差部を有する。また、請求項3に記載の発明では、段差部は、環状に形成される。これにより、基端側である非濃度検出部における電極間ギャップを先端側である濃度検出部における電極間ギャップよりも大きく形成できるので、浮遊容量およびそのばらつきを小さくすることができ、燃料中のアルコール濃度の検出精度が向上する。
【0008】
請求項4に記載の発明では、外側電極に形成される開口は、側壁に形成される第1の開口および第2の開口と、先端に形成される第3の開口とから構成される。これにより、濃度検出領域に効率よく燃料を行き渡らせることができる。請求項5に記載の発明では、内側電極の先端側の端部は、第3の開口よりも基端側に位置する。
【0009】
請求項6に記載の内側電極は、有底筒状に形成される。有底筒状の内側電極の内部に温度センサが収容されるので、装置全体を小型化することができる。請求項7に記載の発明では、温度センサの温度検出部は、内側電極を挟んで外側電極の側壁に形成される開口に対向する位置に設けられる。これにより、燃料の温度を精度よく検出することができる。
【0010】
ところで、内側電極と外側電極との間に比誘電率の大きい材料、例えばゴム材料、で形成されたシール部材を設けると、浮遊容量が大きくなることが懸念される。
請求項8に記載のシール部材は、濃度検出領域における外側電極と内側電極との間の電極間ギャップよりも電極間ギャップが大きい箇所に配置される。これにより、電極間ギャップが小さく形成された箇所にシール部材を配置する場合と比較して、浮遊容量を小さくすることができ、燃料中のアルコール濃度の検出精度が向上する。
【0011】
また、シール部材の静電容量である浮遊容量が温度により異なる場合、浮遊容量の温度特性により、計測誤差が生じる虞がある。
そこで、請求項9に記載の発明では、静電容量取得手段と、温度取得手段と、濃度算出手段と、をさらに備える。静電容量取得手段は、濃度検出領域における外側電極と内側電極との間の静電容量を取得する。温度取得手段は、温度センサから出力されるセンサ値に基づき、燃料の温度を取得する。濃度算出手段は、静電容量取得手段により取得された静電容量、および前記温度取得手段により取得された燃料の温度に基づき、燃料中のアルコール濃度を算出する。濃度算出手段により検出される燃料中のアルコール濃度は、シール部材の静電容量である浮遊容量に基づいて補正される。これにより、シール部材の浮遊容量が温度により異なる場合であっても、燃料中のアルコール濃度を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による燃料アルコール濃度検出装置が適用される燃料供給系統を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施形態の燃料アルコール濃度検出装置を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による燃料アルコール濃度検出装置の回路の構成図である。
【図4】本発明の一実施形態のシール部材の温度特性および静電容量の相関関係を示す特性図である。
【図5】本発明の一実施形態による燃料の温度変化時の温度、静電容量、エタノール濃度の相関関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による燃料アルコール濃度検出装置を図面に基づいて説明する。
(一実施形態)
本発明の一実施形態による燃料アルコール濃度検出装置は、車両の燃料タンクに設けられ、燃料中のアルコール濃度を測定するものである。なお、本実施形態においては、燃料中のエタノール濃度が測定される。
【0014】
図1に示すように、燃料アルコール濃度検出装置1は、車両のエンジンの燃料供給系統に設けられる。燃料アルコール濃度検出装置1は、貯留部材としての燃料タンク2の蓋部材に設けられる。燃料タンク2内の燃料は、燃料ポンプ3によって燃料配管4を通りデリバリパイプ5へ圧送され、インジェクタ6から図示しない吸気管またはシリンダ内へ噴射される。燃料アルコール濃度検出装置1の検出したエタノール濃度は、エンジンの電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という。)7に伝送される。エンジンECU7は、燃料中のエタノール濃度に応じ、インジェクタ6から噴射される燃料噴射量および点火時期等を制御する。
【0015】
図2に示すように、燃料アルコール濃度検出装置1は、取付部材10、外側電極20、内側電極30、温度センサとしてのサーミスタ40、シール部材50、および、制御部60を備えている。
取付部材10は、燃料を貯留する燃料室を有する燃料タンク2に取り付け可能に構成される。取付部材10は、ハウジング11およびホルダ19から構成されている。
樹脂製のハウジング11は、円筒部12および基板収容部13を有している。基板収容部13の内部には、電気回路のプリントされた基板15が収容されている。基板15には、制御部60を構成する電子部品等が実装される。基板15は、ネジ等によりハウジング11に固定されている。基板収容部13の開口131は、図示しないカバー部材によって覆われている。また、基板収容部13には、端子17を有するコネクタ16が形成されている。端子17は、一方の端部が基板15に挿通されてはんだ等により電気的に接続され、中間部がハウジング11に埋設されている。
樹脂製のホルダ19は、略円筒状に形成され、ハウジング11の円筒部12の径方向内側に設けられる。
【0016】
外側電極20および内側電極30は、いずれも薄板状の金属板をプレス加工することにより略円筒状に形成されている。外側電極20と内側電極30とは、同心状となるように設けられる。
【0017】
外側電極20は、ハウジング11の円筒部12に一方の端部がインサート成形されている。以下、ハウジング11にインサート成形されている側を「基端側」といい、ハウジング11から突出している側を「先端側」という。外側電極20は、基端側において、ハウジング11とホルダ19との間に配置される。外側電極20は、基端側よりも先端側において径が小さくなるように形成される段差部21を有している。段差部21は、プレス加工により環状に形成されている。外側電極20は、段差部21の径方向外側に突出して形成される屈曲部22を有している。屈曲部22は、外側電極20の径方向外側であって屈曲部22より基端側に設けられる図示しないOリングの脱落を防止する。このOリングにより、燃料タンク2の取付部との間がシールされる。段差部21および屈曲部22は、外側電極20の軸に対して垂直となるように形成されている。
【0018】
外側電極20は、燃料タンク2内に貯留された燃料を流出入可能な開口25を有している。開口25は、側壁に形成された第1の開口26と第2の開口29、および、先端側に形成された第3の開口27から構成される。第1の開口26と第2の開口29とは、軸対称であって略同じ大きさに形成される。これにより、シール部材50よりも先端側において、外側電極20と内側電極30との間に効率よく燃料を行き渡らせることができる。
外側電極20は、基端側に突出する突起部28を有している。突起部28は、基板15と電気的に接続される。
【0019】
内側電極30は、有底円筒状に形成され、底部31と反対側の端部がホルダ19にインサート成形されている。以下、ホルダ19にインサート成形されている側を「基端側」といい、底部31側を「先端側」という。内側電極30の底部31は、外側電極20の第3の開口27よりも基端側に位置している。本実施形態では、底部31が「内側電極の先端側の端部」を構成している。
内側電極30は、基端側に突出する突起部33を有している。突起部33は、基板15と電気的に接続される。
【0020】
サーミスタ40は、内側電極30の内部に収容され、燃料タンク2内に貯留された燃料の温度を検出する。サーミスタ40は、有底円筒状に形成された内側電極30の内部に収容されているので、燃料アルコール濃度検出装置1の体格を小型化することができる。サーミスタ40は、断面視略楕円形状に形成された温度検出部41を有する。温度検出部41は、内側電極30を挟んで外側電極20に形成された第1の開口26およびまたは第2の開口29と対向する位置となるように配置される。これにより、燃料タンク2内の燃料の温度を精度よく検出することができる。またサーミスタ40は、端子43を介して基板15と電気的に接続される。なお、サーミスタ40のグランド端子は、外側電極20のグランド端子と共通端子となっている。
【0021】
シール部材50は、本実施形態ではOリングである。シール部材50は、外側電極20と内側電極30との間であって、段差部21よりも基端側に配置される。シール部材50は、燃料耐性のある材質のものが用いられるが、例えば誘電率が比較的小さいフロロシリコン等が好適に用いられる。また、本実施形態では、シール部材50の浮遊容量は、温度と関連付けられて図4に示す如く、燃料の温度として想定するのに十分な−40℃〜80℃の領域について、マップとして記憶されている。シール部材50は、燃料に接しているため、シール部材50の温度は、サーミスタ40により検出される燃料の温度として測定可能である。したがって、燃料の温度に基づき、シール部材50の浮遊容量を取得可能である。なお、シール部材50の浮遊容量の温度特性は、材質に規定されるものであり、材質が同じであれば個体間のバラツキは殆どない。
【0022】
図3に示すように、制御部60は、静電容量取得手段としての静電容量取得回路61、温度取得手段としての温度取得回路62、マイクロコンピュータ63、出力回路64等から構成される。
静電容量取得回路61は、後述する濃度検出領域Aにおける外側電極20と内側電極30との間の静電容量を取得する。温度取得回路62は、サーミスタ40への通電により出力されるセンサ値に基づき、燃料の温度を取得する。
【0023】
マイクロコンピュータ63は、CPU、ROM、RAM等から構成され、ROM等に記憶されたプログラムをCPUが実行することで、静電容量補正回路65、温度補正回路66、濃度算出手段としての濃度算出回路67として機能する。
静電容量補正回路65は、濃度算出回路67による濃度算出処理に先立ち、静電容量取得回路61にて取得された静電容量を補正する。温度補正回路66は、濃度算出回路67による濃度算出処理に先立ち、温度取得回路62により検出された燃料の温度を補正する。静電容量補正回路65および温度補正回路66により実行される補正処理は、所謂フィルタ処理である。
【0024】
濃度算出回路67では、静電容量取得回路61により取得され静電容量補正回路65により補正された静電容量(以下、「補正後静電容量」という。)、および、温度取得回路62により取得され温度補正回路66により補正された燃料の温度に基づき、燃料中のエタノール濃度を算出する。また、エタノール濃度は、シール部材50の浮遊容量によって補正される。
【0025】
具体的には、図5に示すように、燃料の静電容量、燃料の温度、および燃料中のエタノール濃度が関連付けられてマップとして記憶されている。燃料の静電容量、燃料の温度、および燃料中のエタノール濃度は、一定のエタノール濃度において燃料の温度と燃料の静電容量とが相関関係を有し、一定の温度において燃料中のエタノール濃度と燃料の静電容量とが相関関係を有している。本実施形態では、燃料の温度として想定するのに十分な−40℃〜80℃の領域で、一定のエタノール濃度において燃料の温度が高くなるに従い燃料の静電容量は小さくなり、一定の温度においてエタノール濃度が高くなるに従い燃料の静電容量は大きくなる。
【0026】
本実施形態では、上述の通り、シール部材50の温度は燃料の温度と略等しいとみなせるので、燃料の温度をシール部材50の温度とし、当該温度における浮遊容量を図4に示すマップから取得する。そして、補正後静電容量から浮遊容量を減算した値を算出し、この減算値と燃料の温度とに基づき、図5に示すマップを参照して燃料中のアルコール濃度を算出する。これにより、例えばガラスハーメチックシールを用いた場合と同等の測定精度が得られる。本実施形態では、補正後静電容量から浮遊容量を減算する処理が、シール部材50の浮遊容量に基づく燃料中のエタノール濃度の補正処理に対応する。なお、図4のグラフと図5のグラフでは、縦軸の大きさに相関がないことを付け加えておく。
検出された燃料中のアルコール濃度は、出力回路64を経由してエンジンECU7へ伝送される。
【0027】
図2に戻り、段差部21からホルダ19の先端側端部とで規定される領域をシール部材収容領域とし、シール部材収容領域よりも先端側を濃度検出領域とし、シール部材収容領域よりも基端側を電極保持領域とする。本実施形態では、段差部21と外側電極20の先端側の端部との間を濃度検出領域とし、ホルダ19の先端側の端部と内側電極30の基端側の端部との間を電極保持領域とした。図2中においては、シール部材収容領域を記号S、濃度検出領域を記号A、電極保持領域を記号Hで示した。なお、シール部材収容領域Sおよび電極保持領域Hが「非濃度検出領域」を構成している。
【0028】
本実施形態では、濃度検出領域Aにおける外側電極20と内側電極30との電極間ギャップL1は、シール部材収容領域Sおよび電極保持領域Hにおける外側電極20と内側電極30との電極間ギャップL2よりも小さく形成されている。
【0029】
本実施形態の燃料アルコール濃度検出装置1は、燃料タンク2に取り付けられ、外側電極20および内側電極30の先端側が燃料に浸漬される。外側電極20には、開口25が形成されているので、シール部材50よりも先端側における外側電極20と内側電極30との間は、燃料で満たされる。これにより、燃料アルコール濃度検出装置1では、燃料の比誘電率に対応する静電容量を検出し、サーミスタ40にて検出される燃料の温度により補正して、燃料中のエタノール濃度を算出する。燃料中のエタノール濃度の算出方法は、上述した通りである。
【0030】
本実施形態では、シール部材収容領域Sおよび電極保持領域Hにおける外側電極20と内側電極30との電極間ギャップL2は、濃度検出領域Aにおける外側電極20と内側電極30と電極間ギャップL1よりも大きく形成されている。これにより、濃度検出領域A以外の電極間で発生する浮遊容量は、相対的に小さくなり、エタノール濃度の検出精度が向上する。また、シール部材収容領域Sおよび電極保持領域Hにおける電極間ギャップL2が大きく形成されているので、寸法ばらつきによる浮遊容量のばらつきが小さくなり、エタノール濃度の検出精度が向上する。
【0031】
以上詳述したように、シール部材50よりも先端側であって燃料に浸漬される濃度検出領域Aにおける外側電極20と内側電極30との電極間ギャップL1は、濃度検出領域Aよりも基端側である非濃度検出領域における外側電極20と内側電極30との電極間ギャップL2より小さい。これにより、非濃度検出領域の電極間で発生する浮遊容量が小さくなるので、燃料中のエタノール濃度の検出精度が向上する。また、製造公差による浮遊容量のばらつきが小さくなるので、燃料中のアルコール濃度の検出精度が向上する。
【0032】
本実施形態では、外側電極20は、基端側よりも先端側において径が小さくなるように形成される段差部21を有する。また、段差部21は、環状に形成される。これにより、基端側である非濃度検出領域における電極間ギャップL2は、濃度検出領域における電極間ギャップL1よりも大きく形成されるので、浮遊容量およびそのばらつきを小さくすることができ、燃料中のアルコール濃度検出精度が向上する。
【0033】
また本実施形態では、シール部材50は、濃度検出領域Aにおける電極間ギャップL1よりも電極間ギャップが大きいシール部材収容領域Sに配置される。これにより、電極間ギャップが小さく形成された箇所にシール部材を配置する場合と比較して、浮遊容量を小さくすることができ、燃料中のアルコール濃度の検出精度が向上する。
【0034】
さらに、本実施形態では、静電容量取得回路61は、濃度検出領域Aにおける外側電極20と内側電極30との間の静電容量を取得する。温度取得回路62は、サーミスタ40から出力されるセンサ値に基づき、燃料の温度を取得する。濃度算出回路67は、静電容量取得回路61により取得された静電容量、および温度取得回路62により取得された燃料の温度に基づき、燃料中のアルコール濃度を算出する。濃度算出手段により算出される燃料中のアルコール濃度は、シール部材50の静電容量である浮遊容量に基づいて補正される。本実施形態では、シール部材50の浮遊容量は、燃料の温度に基づいて取得される。これにより、シール部材50の浮遊容量が温度により異なる場合であっても、燃料中のアルコール濃度を精度よく検出することができる。
【0035】
(他の実施形態)
上記実施形態では、燃料アルコール濃度検出装置は、燃料タンクに設けられたが、濃度検出領域が燃料に浸漬可能であれば、燃料タンク以外の装置に設けてもよい。
また、上記実施形態では、燃料アルコール濃度検出装置は、燃料中のエタノールの濃度を検出するものであったが、エタノールに限らず、メタノール、プロパノール等の他のアルコールを検出するものであってもよい。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0036】
1:燃料アルコール濃度検出装置、2:燃料タンク(貯留部材)、3:燃料ポンプ、4:燃料配管、5:デリバリパイプ、6:インジェクタ、7:エンジンECU、10:取付部材、11:ハウジング、12:円筒部、13:基板収容部、15:基板、16:コネクタ、17:端子、19:ホルダ、20:外側電極、21:段差部、22:屈曲部、25:開口、26:第1の開口、27:第3の開口、28:突起部、29:第2の開口、30:内側電極、31:底部、33:突起部、40:サーミスタ(温度センサ)、41:温度検出部、43:端子、50:シール部材、60:制御部、61:静電容量取得回路(静電容量取得手段)、62:温度取得回路(温度取得手段)、67:濃度算出回路(濃度算出手段)、A:濃度検出領域、H:電極保持領域(非濃度検出領域)、S:シール部材収容領域(非濃度検出領域)、L1、L2:電極間ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を貯留する燃料室を有する貯留部材に取り付け可能な取付部材と、
前記取付部材から突出し、前記燃料室の燃料を流出入可能な開口を有する筒状の外側電極と、
前記外側電極の内部に収容され、前記外側電極と対向するように前記取付部材から突出する筒状の内側電極と、
前記内側電極の内部に収容され、前記燃料室内の燃料の温度を検出する温度センサと、
前記内側電極と前記外側電極との間に配置され、燃料をシールするシール部材と、
を備え、
前記シール部材よりも先端側であって燃料に浸漬される濃度検出領域における前記外側電極と前記内側電極との電極間ギャップは、前記濃度検出領域よりも基端側である非濃度検出領域における前記外側電極と前記内側電極との電極間ギャップよりも小さいことを特徴とする燃料アルコール濃度検出装置。
【請求項2】
前記外側電極は、前記基端側よりも前記先端側において径が小さくなるように形成される段差部を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料アルコール濃度検出装置。
【請求項3】
前記外側電極の前記段差部は、環状に形成されることを特徴とする請求項2に記載の燃料アルコール濃度検出装置。
【請求項4】
前記外側電極の前記開口は、側壁に形成される第1の開口および第2の開口と、先端に形成される第3の開口とから構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料アルコール濃度検出装置。
【請求項5】
前記内側電極の前記先端側の端部は、前記第3の開口よりも前記基端側に位置することを特徴とする請求項4に記載の燃料アルコール濃度検出装置。
【請求項6】
前記内側電極は、有底筒状に形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料アルコール濃度検出装置。
【請求項7】
前記温度センサの温度検出部は、前記内側電極を挟んで前記外部電極の側壁に形成される前記開口に対向する位置に設けられることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の燃料アルコール濃度検出装置。
【請求項8】
前記シール部材は、前記濃度検出領域における前記外部電極と前記内部電極との電極間ギャップよりも電極間ギャップが大きい箇所に配置されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の燃料アルコール濃度検出装置。
【請求項9】
前記濃度検出領域における前記外側電極と前記内側電極との間の静電容量を取得する静電容量取得手段と、
前記温度センサから出力されるセンサ値に基づき、燃料の温度を取得する温度取得手段と、
前記静電容量取得手段により取得された前記静電容量、および前記温度取得手段により取得された前記燃料の温度に基づき、燃料中のアルコール濃度を算出する濃度算出手段と、
をさらに備え、
前記濃度算出手段により算出される燃料中のアルコール濃度は、前記シール部材の静電容量である浮遊容量に基づいて補正されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の燃料アルコール濃度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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