説明

燃料タンクの給油構造

【課題】燃料給油口から不慮にこぼれた油を確実に回収すると共に、燃料給油口を蓋する燃料キャップによって熱風の吹き出しを防止する燃料タンクの給油構造を提供する。
【解決手段】燃料タンクの燃料給油口16を、エンジンを覆うボンネット5に形成した給油開口部19に、該給油開口部19の周縁との間に隙間19aを設けて臨ませると共に、該給油開口部19の下方に燃料給油口16から漏れた燃料を回収させる油受トレイ22を設置し、また燃料給油口16を蓋する燃料キャップ20に鍔状のリップ30を設けて、当該リップ30によって隙間19aを塞ぐようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給油時に燃料タンクからオーバーフローした燃料を油受トレイに導いて排出することができる燃料タンクの給油構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタに設置される燃料タンクは、その燃料給油口をダッシュボードに形成した給油開口部(穴)に臨ませ、該給油開口部の周縁と燃料給油口の外周との間に設けられる隙間に、環状ゴム蓋を設けて塞ぐ給油構造が知られている(例えば特許文献1。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭52−128214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示される燃料タンクの給油構造は、エンジン冷却後の熱風の吹出しを環状ゴム蓋によって防止すると共に、燃料タンクに給油するときに燃料給油口から外部にこぼれ出た燃料を、環状ゴム蓋によって内部への流れ込みを阻止しボンネット上に流すことができる。
然しながら、給油時にこぼれ出た燃料は、環状ゴム蓋を伝ってダッシュボード上に流れるので、これを後から拭き取らねばならず面倒であるという欠点がある。また給油開口部に環状ゴム蓋を装着する必要があり、コストアップになるという問題がある。
またこれを改善すべく従来図5に示すように、大きな直径の給油開口部19の周縁にゴム材からなるドーナツ盤状のシールSを接合し、その内周縁と給油口筒21との間の隙間19aを狭くすることも知られている。
然し、このこの場合にはシールSによって隙間19aから入り込む塵埃等を少なくすることができるものの、燃料が一挙多量にオーバーフローした場合に、隙間19a内に入りきれずにシールSを伝わってボンネット5上に流れて汚すこと、及び給油開口部19から熱風の吹き出しを防止できないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は係る課題を解決するために、燃料タンク9の燃料給油口16を、エンジン13を覆うボンネット5に形成した給油開口部19に、該給油開口部19の周縁との間に隙間19aを設けて臨ませると共に、該給油開口部19の下方に燃料給油口16から漏れた燃料を回収させる油受トレイ22を設置し、また燃料給油口16を蓋する燃料キャップ20に鍔状のリップ30を設けて、当該リップ30によって隙間19aを塞ぐことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ボンネットの給油開口部と燃料給油口との間の隙間を、燃料キャップに設けたリップが塞ぐので、隙間から熱風の吹き出し防止をすることができる。
また燃料キャップを外すことにより、この隙間を開放することができるので、給油時に燃料給油口からこぼれた油を、下方に設けた油受トレイで受けて排出することができ、後からこぼれた燃料を拭き取るといった面倒がない。
また隙間を塞ぐリップは、燃料キャップ自体に設けるので、コストアップになることもない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】トラクタの側面図である。
【図2】トラクタの平面図である。
【図3】燃料タンクの給油構造を示す斜視図である。
【図4】給油構造の要部を示す側断面図である。
【図5】従来の給油構造を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。符号1は農業用のトラクタ(作業車両)を示し、トラクタ1は前輪2と後輪2aとを前後左右に有する走行機体3に、前側からエンジン4を配設してボンネット5で覆い、その後方にハンドル及び座席等からなる操縦部6を配設し、機体後部に耕耘装置等の作業機を装着する連結部7を備えている。
このトラクタ1は、エンジン4に燃料を供給する燃料タンク9を、エンジン4の後方でボンネット5に後続するダッシュボード10内に配置しており、燃料タンク9に燃料の給油を行なう給油部11をボンネット5の後部に設けている。上記ボンネット5は、エンジン4の上方を覆い後部のヒンジを中心に前部を開くことができる。
【0009】
図3,図4に示すように燃料タンク9は、ボンネット6に後続するダッシュボード10の下方において、エンジン4に取付けられた門型の取付フレーム15に取付けており、燃料タンク9の前壁の上部にはエルボ状の給油パイプ17の基部を取付けている。
給油パイプ17の上部に設ける口金21は、燃料給油口16を形成している。ボンネット5の後部右側寄りには給油開口部19を設け、その周縁と燃料給油口16との間には、隙間19aが設けてある。また燃料給油口16を燃料キャップ20によって蓋をするようにしている。
【0010】
口金21の中途部外周には、給油時にこぼれた燃料を回収するドーナツ盤状の油受トレイ22を設けている。この油受トレイ22は底部に排油口23を下向きに開口しており、該排油口23から回収した燃料を排油パイプ24を介して機外に排出するようにしている。また口金21は取付フレーム15に取付腕15aを介して支持している。
【0011】
上記給油開口部19は、給油時に燃料給油口16から流れ出す油をボンネット5上に流すことなく、油受トレイ22側に流すことができる十分な大きさの隙間19aを有する孔にしている。
また口金21は、筒の中途部で油受トレイ22の下部にブリーザ孔25を横向に開口しており、該ブリーザ孔25からブリーザパイプ26によって燃料給油口16内と燃料タンク9の上部内とを連通させている。また口金21は、燃料給油口16内に着脱自在に挿入される網籠状のフィルタ27を嵌挿している。
【0012】
そして、燃料キャップ20は、口金21に係合して燃料給油口16を塞ぐキャップ本体29の外周下部に、前記隙間19aを上方から覆うことができる鍔状のリップ30を一体的に形成している。これにより燃料キャップ20は図4で示すように、燃料給油口16を蓋した状態において、リップ30の外周端がボンネット5上に重なり隙間19aを覆うので、ボンネット5内で発生する熱風の吹き出しをリップ30によって防止することができる。また燃料キャップ20は、口金21との係合を解除し燃料給油口16から取り外すと、隙間19aを簡単に開放することができると共に、開放された隙間19aからこぼれた油を油受トレイ22に向けて回収することができる。
【0013】
上記燃料キャップ20の下部に突出するリップ30は、基部側から外周端に向けて徐々に肉薄になるように形成することが望ましく、この場合は同材質の合成樹脂材によってキャップ本体29とリップ30を一体的に形成することができ、またリップ30に可撓性及
び弾力性を簡単に付与することができる。尚、従来の燃料キャップを利用する場合には、その外周下部に可撓性を有する円盤状部材(シール部材)を取付けて、リップ30を形成することができる。
【0014】
以上のように構成される給油構造を備えたトラクタ1は、燃料キャップ20を取り外すことにより、隙間19aを開放することがき、この状態において燃料給油口16に給油ポンプ又は漏斗を差し込み、用意された燃料補給タンクから燃料を燃料タンク9に給油する。
このような給油作業において、燃料がオーバーフローした場合に、こぼれた油は隙間19aを介して口金21を伝わり油受トレイ22に回収されることになる。従って、こぼれた油がボンネット5を濡らしたり汚すことなく確実に回収されて、排油口23から排油パイプ24を介して機外の所定位置に排出することができる。
【0015】
そして、再び燃料キャップ20を燃料給油口16に被せて蓋をするとき、リップ30が隙間19aを同時に塞ぐことができる。これにより隙間19aから吹き出そうとする熱風は、燃料キャップ20のリップ30に遮られるため吹きだしを防止される。また隙間19aを塞ぐリップ30は、燃料キャップ20を製作する工程で簡単に設けることができるので、従来のもののように隙間19aに特別なシール部品を付加することなく簡潔で廉価な給油構造にすることができる。
【0016】
尚、ボンネット5を開放するとき、給油開口部19の周縁がリップ30に当接するが、リップ30は可撓性を有するので、湾曲して給油開口部19を通過させる。またリップ30の可撓性が少ない場合には、給油開口部19の穴より若干リップ30を小径にしておいてもよい。
【符号の説明】
【0017】
1 トラクタ(作業車両)
5ボンネット
11 燃料タンク
16 燃料給油口
19 給油開口部
19a 隙間
20 燃料キャップ
22 油受トレイ
30 リップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク(9)の燃料給油口(16)を、エンジン13を覆うボンネット(5)に形成した給油開口部(19)に、該給油開口部(19)の周縁との間に隙間(19a)を設けて臨ませると共に、該給油開口部(19)の下方に燃料給油口(16)から漏れた燃料を回収させる油受トレイ(22)を設置し、また燃料給油口(16)を蓋する燃料キャップ(20)に鍔状のリップ(30)を設けて、当該リップ(30)によって隙間(19a)を塞ぐことを特徴とする燃料タンクの給油構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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