説明

燃料タンク及びその製造方法

【課題】簡易且つ安全に製造される構造強度の高い燃料タンクを提供する。
【解決手段】上下ハウジング31,32が互いに対向するように結合されていて内部に燃料を蓄える空間35を形成しており、また、上ハウジング31に空間35と連通している給油孔313と、給油孔313と連通していて給油する燃料を空間35内に案内することができる案内管33とを有する燃料タンク3において、上ハウジング31に、給油孔313の周縁から空間35外へと突出した筒状の突起314が形成されており、案内管33は両端を有し、その一端が突起314に嵌合しながら、突起314との間に形成された接着層303を介して接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料タンク及びその製造方法に関し、特にオートバイに用いられる燃料タンク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からのオートバイ用燃料タンク1は、図1及び図2に示すように、上下ハウジング11,12が互いに対向するようにアルゴン溶接(TIG溶接,イナートガスタングステンアーク溶接)によって結合され、内部に燃料を蓄える空間14を備えている。また、前記上ハウジング11は、前記空間14と連通している給油孔111と、該給油孔111と連通していて給油した燃料を前記空間14内に案内することができる案内管13とを有する。
【0003】
また、この案内管13は、その一端が前記給油孔111に挿入された後、アルゴン溶接によって前記給油孔111の孔縁と結合されている。
【0004】
しかしながら、前記案内管13は前記給油孔111に挿入されているので、前記案内管13と前記給油孔111の孔縁との接触箇所の外側だけにアルゴンアーク溶接が行われ、その接触箇所の内部には何ら結合手段を施すことができず、前記案内管13と前記給油孔111の孔縁との接触箇所の構造強度はあまり強くない。このため、強大な外力や衝撃を受けた場合、前記案内管13は容易に前記給油孔111の孔縁との接触箇所から割れ、給油した燃料がその割れた箇所から漏れる欠点がある。なお、アルゴン溶接に使用されるアーク(電弧)は人体の目や皮膚に悪影響を与える。
【0005】
また、オートバイ用燃料タンクの製造には、他に微細精密レーザ溶接が使用されているが、レーザ溶接加工が激しく複雑であるうえ、レーザ溶接を行う設備はコストが高いので、加工業では、まだ広く使用されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に鑑みて、本発明の第1の目的は、簡易且つ安全に製造される構造強度の高い燃料タンクを提供しようとすることにある。
そして、本発明の第2の目的は、簡易且つ安全な工程で、オートバイ用燃料タンクを製造することができるオートバイ用燃料タンクの製造方法を提供しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記第1の目的を達成するために、本発明は、上下ハウジングが互いに対向するように結合されて内部に燃料を蓄える空間を形成しており、また、前記上ハウジングに前記空間と連通している給油孔と、前記給油孔と連通していて給油する燃料を前記空間内に案内することができる案内管とを有する燃料タンクにおいて、前記上ハウジングに、前記給油孔の周縁から前記空間外へと突出してなる筒状の突起が形成されており、前記案内管は両端を有し、その一端が前記突起に嵌合しながら、前記突起との間に形成された接着層を介して接着されていることを特徴とする燃料タンクを提供する。
【0008】
また、本発明は、上下ハウジングが互いに対向するように結合されて内部に燃料を蓄える空間を形成しており、また、前記上ハウジングに前記空間と連通している給油孔が形成されている燃料タンクにおいて、前記上ハウジングの外周縁に沿って上フランジが張り出して形成され、また、前記上ハウジングの下面の周縁近傍に沿って環状の接合用突起が下向きに延伸突出しており、前記下ハウジングの上端縁に沿って下フランジが張り出して形成され、前記上フランジとの間に形成された接着層を介して接着されており、前記接合用突起が前記下ハウジングの前記上端縁から該下ハウジング内に挿入して前記下ハウジングの内周面との間に形成された接着層をして接着されていることを特徴とする燃料タンクを提供する。
【0009】
また、本発明は、上下ハウジングが互いに対向するように結合されていて内部に燃料を蓄える空間を形成しており、また、前記上ハウジングに、前記空間から給油した燃料を吸引するポンプを搭載するためのポンプ用固定座が設けられている燃料タンクにおいて、前記上ハウジングに、前記固定座を取り付けるための取付け孔が形成されており、該取付け孔の内壁の内径が、孔外から孔内へ段々小さくなるように複数の階段状に形成されており、前記ポンプ用固定座は前記取付け孔の内壁の複数の階段部分と対応する階段部が形成されており、前記ポンプ用固定座は、前記階段部と前記取付け孔の各階段との間に形成された接着層を介して前記上ハウジングに接着されていることを特徴とする燃料タンクを提供する。
【0010】
そして、上記第2の目的を達成するために、本発明は、その外周縁に沿って張り出した上フランジと、その下面の周縁近くに沿って下向きに延伸突出した環状の接合用突起とを有する上ハウジング、及び、その上端縁に沿って張り出した下フランジを有する下ハウジングを成形する上下一対のハウジングの成形工程と、前記上フランジと前記下フランジとの間のいずれかの一方に、及び、前記接合用突起と前記下ハウジングの内周面との間のいずれかの一方に接着剤を塗布して前記上下一対のハウジングを接着する塗布結合工程と、前記上ハウジングと前記下ハウジングとの組合せを150℃〜190℃まで加熱して接着剤を硬化させる加熱工程とを有することを特徴とする燃料タンクの製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、その内壁の内径が、孔外から孔内へ段々小さくなるように複数の階段状に形成された取付け孔が設けられ該取付け孔に複数の階段部分と対応する階段部を有するポンプ用固定座が設けられる上ハウジングと、前記上ハウジングと結合してタンク体を形成する下ハウジングとを成形する上下一対のハウジングの成形工程と、前記上ハウジングと前記下ハウジングとの間の予定の接着箇所のいずれかの一方に接着剤を塗布してそれらを接着する工程、及び、前記取付け孔における複数の階段部分と前記ポンプ用固定座における階段部との間の予定の接着箇所のいずれかの一方に接着剤を塗布して前記ポンプ用固定座の階段部を前記取付け孔の内壁に接着して前記ポンプ用固定座を前記上ハウジングに固定する工程とを含む塗布結合工程と、前記上ハウジングと前記下ハウジングとの組合せを150℃〜190℃まで加熱して接着剤を硬化させる加熱工程とを有することを特徴とする燃料タンクの製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、給油孔と、該給油孔の周縁から突出した筒状の突起が形成されている上ハウジングと、前記上ハウジングと結合してタンク体を形成する下ハウジングとを成形する上下一対のハウジングの成形工程と、前記上ハウジングと前記下ハウジングとの間の予定の接着箇所のいずれかの一方に接着剤を塗布してこれらを接着する工程、及び、前記突起と該突起に接着して給油する燃料を案内するための案内管との間の予定の接着箇所のいずれかの一方に接着剤を塗布して該案内管を前記突起に接着する工程とを含む塗布結合工程と、前記上ハウジングと前記下ハウジングとの組合せを150℃〜190℃まで加熱して接着剤を硬化させる加熱工程とを有することを特徴とする燃料タンクの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
上記構成による本発明のオートバイ用の燃料タンクは、前記上ハウジングに、前記給油孔の周縁から前記空間外へと突出した筒状の突起が形成されていて、前記案内管は前記突起との間に形成された接着層を介して接着され、即ち、前記案内管と前記突起との接触箇所全体に接着剤によって結合されているので、従来のようなアルゴン溶接やレーザ溶接を行わず、簡易且つ安全に製造されるうえ、構造強度が従来の燃料タンクより強い。
【0014】
また、前記上ハウジングと下ハウジングとをそれらの間に形成された接触層を介して結合してもよい。この場合、本発明のオートバイ用の燃料タンクは、前記上ハウジングの外周縁に沿って上フランジが張り出しになっており、また、前記上ハウジングの下面の周縁近くに沿って環状の接合用突起が下へ延伸突出しており、前記下ハウジングの上端縁に沿って下フランジが張り出しになっていて前記上フランジとの間に形成された接着層を介して接着されており、前前記接合用突起が前記下ハウジングの前記上端縁から該下ハウジング内に挿入して前記下ハウジングの内周面との間に形成された接着層を介して接着されているように構成される。これにより、本発明の構造強度が一層強くなる。
【0015】
また、前記上ハウジングに、前記空間から給油した燃料を吸引するポンプを搭載するためのポンプ用固定座が設けられ、前記ポンプ用固定座と、前記上ハウジングに形成された、前記固定座を取り付けるための取付け孔とがそれらの間に形成された接着層を介して結合されてもよい。この場合、本発明のオートバイ用の燃料タンクは、前記取付け孔の内壁の内径が、孔外から孔内へ段々小さくなるように複数の階段状に形成されており、前記ポンプ用固定座は前記取付け孔の内壁の複数の階段部分と対応する階段部が形成されており、前記ポンプ用固定座は、前記階段部と前記取付け孔の各階段との間に形成された接着層を介して前記上ハウジングに接着されているように構成される。
【0016】
また、本発明のオートバイ用の燃料タンクの製造方法によると、前記上フランジと前記フランジとの間のいずれかの一方に、及び、前記接合用突起と前記下ハウジングの内周面との間のいずれかの一方に接着剤を塗布して前記上下一対のハウジングを接着するので、従来のようなアルゴン溶接やレーザ溶接を行わず、簡易且つ安全になる。
【0017】
また、前記塗布結合工程において、前記上ハウジングと前記下ハウジングとの間の予定の接着箇所のいずれかの一方に接着剤を塗布してからそれらを接着する工程の他に、前記突起および該前記突起に接着して給油した燃料を案内するための案内管の間の予定の接着箇所のいずれかの一方に接着剤を塗布して該案内管を前記突起に接着する工程を行ってもよい。
【0018】
また、前記塗布結合工程において、前記上ハウジングと前記下ハウジングとの間の予定の接着箇所のいずれかの一方に接着剤を塗布してからそれらを接着する工程の他に、前記取付け孔における複数の階段と前記ポンプ用固定座における階段部との間の予定の接着箇所のいずれかの一方に接着剤を塗布してから前記ポンプ用固定座の階段部を前記取付け孔の内壁に接着して前記ポンプ用固定座を前記上ハウジングに固定する工程を行ってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明のオートバイ用の燃料タンク及びその製造方法を説明する。
【0020】
先ず、本発明のオートバイ用燃料タンク及びその製造方法の第1の実施形態について、図3乃至図7を用いて説明する。
【0021】
図3は本発明の第1の実施形態の燃料タンクの製造方法を示すフローチャートである。図4は、本発明のオートバイ用燃料タンクの第1の実施形態を示す分解斜視図である。図5は、前記第1の実施形態における上ハウジングと下ハウジングとの結合状態を示す部分断面図である。図6は前記第1の実施形態の案内管が突起に結合されている状態を示す部分断面図である。図7は前記第1の実施形態のポンプ用固定座が上ハウジングに取付けられた状態を示す部分断面図である。
【0022】
まず、図3を用いて本実施形態の燃料タンクの製造方法について説明する。
【0023】
まず、上下一対のハウジング31,32の成形工程を行う。図4に示すように、この上下一対のハウジング31,32の成形工程において、上ハウジング31は、その外周縁に沿って張り出した上フランジ311と、その下面の周縁近傍に沿って下向きに延伸突出してなった環状の接合用突起312と、給油孔313と、該給油孔313の周縁から突出してなった筒状の突起314とを有する。また、この上ハウジング31には、図7に示すように、その内壁の内径が孔外(上)から孔内(下)へ段々小さくなるように複数の階段状に形成された取付け孔315が設けられ、この取付け孔315に複数の階段部分と対応する階段部341を有するポンプ用固定座34が設けられるように成形する。そして、下ハウジング32は、図4に示すように、その上端縁に沿って張り出したフランジ321を有し、前記上ハウジング31と結合してタンク体を形成するように成形する。
【0024】
図3に示すように、続いて、塗布結合工程を行う。この塗布結合工程において、図5に示すように、前記上フランジ311と前記フランジ321との間のいずれかの一方に、及び、前記接合用突起312と前記下ハウジング32の内周面322との間のいずれかの一方に接着剤を塗布して前記上下一対のハウジング31,32を接着する。それに加えて、図7に示すように、前記取付け孔315における複数の階段部分と前記ポンプ用固定座34における階段部341との間の予定の接着箇所のいずれかの一方に接着剤を塗布して、前記ポンプ用固定座34の階段部341を前記取付け孔315の内壁に接着して前記ポンプ用固定座34を前記上ハウジング31に固定する。そして、図6に示すように、前記突起314と、前記突起314に接着して給油する燃料を案内するための案内管33との間の予定の接着箇所のいずれかの一方に接着剤を塗布して、該案内管33を前記突起314に接着する。本実施形態では、前記案内管33を前記突起314に外嵌させ、且つ、前記接着剤を前記突起314の外周面と前記案内管33の内周面の間に塗布して前記案内管33を前記突起315に接着する。なお、前記接着剤として構造用接着剤を使用する。
【0025】
図3に示すように、それから、加熱工程を行う。この加熱工程において、前記上ハウジング31と前記下ハウジング32とを組合せた状態で、これらを150℃〜190℃まで加熱して接着剤を硬化させる。
【0026】
このような製造方法によって製造されたオートバイ用燃料タンク3は、図4に示すように、上ハウジング31と、下ハウジング32と、案内管33と、ポンプ用固定座34とを備えている。
【0027】
前記上ハウジング31と前記下ハウジング32とはSPCEN鋼板からなっており、これらは互いに対向するように結合されていて、内部に燃料を蓄える空間35を形成している。
【0028】
もっと詳しく説明すると、図5に示すように、前記上ハウジング31には、外周縁に沿って上フランジ311が張り出して形成されている。また、前記上ハウジング31の下面の周縁近傍に沿って環状の接合用突起312が下へ延伸突出して形成されている。前記下ハウジング32には、上端縁に沿って下フランジ321が張り出して形成されており、前記上フランジ311との間に形成された接着層301を介して接着されている。前記接合用突起312は、前記下ハウジング32の前記上端縁から該下ハウジング32内に挿入され、前記下ハウジング32の内周面322との間に形成された接着層302を介して接着されている。
【0029】
また、前記上ハウジング31には、前記空間35と連通している給油孔313が形成されている。そして、前記上ハウジング31には、前記給油孔313の周縁から前記空間35の外部へと突出してなった円筒状の突起314が形成されている。前記案内管33には、前記突起314と接着された箇所に近い外周面に、環状突起331が形成されている。
【0030】
図6に示すように、前記案内管33は、前記給油孔313と連通していて給油する燃料を前記空間35内に案内することができるものであって、両端を有し、その一端が前記突起314に外嵌しながら、その内周面と前記突起314の外周面との間に形成された接着層303を介して接着されている。前記突起314の外周面と前記上ハウジング31との境界は面取されているため、前記突起314と前記案内管33との接触面積が大きくなっている。また、前記ポンプ用固定座34は前記空間35から給油した燃料を吸引するポンプ(図示せず)を搭載するためのものであって前記上ハウジング31に設けられている。もっと詳しく説明すると、図7に示すように、前記上ハウジング31には、前記固定座34を取り付けるための取付け孔315が形成されている。該取付け孔315の内壁は、その内径が孔外から孔内へと段々小さくなるように複数の階段状に形成されている。前記ポンプ用固定座34は、前記取付け孔315の内壁の複数の階段部分と対応する階段部341が形成されており、前記階段部341と前記取付け孔315の各階段部分との間に形成された接着層304を介して前記上ハウジング31に接着されている。
【0031】
以下、図12から図16を参照しながら、本実施形態の燃料タンクの産業上の利用価値を裏付けるための試験及び結果を説明する。
【0032】
まず、図12に示すように、本実施形態の燃料タンクと同様に、接着剤によって結合した複数の鋼板I〜Vに対して、引張試験を行って引張り強度を測定した。その結果、全ての鋼板I〜Vの引張強度が400kg/cm以上になった。特に、鋼板III及び鋼板IVの割れが生じた箇所はそれらの接触した箇所ではないので、本実施形態の製造方法によって製造された燃料タンクの引張強度が好ましい。
【0033】
そして、図13乃至図16は、本実施形態の燃料タンクに対して衝撃試験を行った結果を示す写真である。この衝撃試験は、前記空間35内に水を満たしたままで、案内管33及びポンプ用固定座34の耐衝撃エネルギーを測定した。
【0034】
図13及び図14は前記燃料タンク3に対して衝撃試験を行って前記ポンプ用固定座34が水漏れを起こさない限界に達する前後の燃料タンク写真である。結果として、衝撃時速の限界値は53.4km/hであり、即ち、前記ポンプ用固定座34の耐衝撃エネルギーは681.2Jと測定された。
【0035】
図15及び図16は前記燃料タンク3に対して衝撃試験を行った後、前記案内管33が水漏れを起こさない限界に達する前後の写真である。結果として、衝撃時速の限界値は28.5km/hであり、即ち、前記案内管34の耐衝撃エネルギーは194.6Jと測定された。
【0036】
上述した説明及び試験例から分かるように、本実施形態の燃料タンク3は、前記上ハウジング31に、前記給油孔313の周縁から前記空間35外へと突出してなる突起314が形成されている。そして、前記案内管33は前記突起314との間に形成された接着層303を介して接着され、即ち、前記案内管33と前記突起314との接触箇所全体が接着剤によって結合されているので、構造強度が従来の燃料タンクより強い。また、前記上ハウジング31と前記下ハウジング32との接触箇所及び前記ポンプ用固定座34と前記取付け孔315との接触箇所も、接着剤によって結合されているので、その製造作業がより簡易且つ安全であるうえ、構造強度が一層強くなった。
【0037】
また、本実施形態では、従来の溶接工程に代えて、前記案内管33と前記突起314との結合、前記上ハウジング31と前記下ハウジング32との結合及び前記ポンプ用固定座34と前記取付け孔315との結合は塗布結合工程により行うことができるので、従来の製造方法より簡易かつ安全であるうえ、コストを低減することができる。
【0038】
次に、図8に示すのは本発明の第2の実施形態である。本実施形態において前記第1の実施形態と異なる点は、塗布結合工程において、案内管33aを突起314aに内嵌させ、且つ、接着剤を前記突起314aの内周面と前記案内管33aの外周面との間に塗布して前記案内管33aを前記突起314aに接着することにある。このように製造された燃料タンクは、前記案内管33aが前記突起314aに内嵌しており、接着層303aは前記案内管33aの外周面と前記突起314aの内周面との間に介在している。
【0039】
そして、図9に示すのは、本発明の第3の実施形態である。本実施形態において、前記第1の実施形態と異なる点は、上ハウジング31bの前記給油孔313bの周りに環状の補強部材36が接着剤で固着されていることにある。これにより、案内管33bと突起314bとの接触箇所の構造強度を補強(向上)することができる。
【0040】
図10及び図11に示すのは前記第3の実施形態の変形例である。これらの変形例において、前記第3の実施形態と異なる点は、補強部材36aは、前記案内管33bに外嵌して接着されている環状の本体部361と、前記本体部361の前記上ハウジング31bに近い周縁から前記上ハウジング31bの外表面上に延伸してなってそこに接着された延伸部362とからなっていることにある。図10における補強部材36aの本体部361は円管状で、延伸部362は円環状であるが、図11における補強部材36aの本体部361は円環状で、延伸部362は上ハウジング31bの形状に沿ったカーブ状(円弧状)である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
上記のように、本発明は簡易且つ安全に製造される構造強度の高い燃料タンクを提供することができ、オートバイなどに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】従来のオートバイ用燃料タンクを示す斜視図
【図2】従来のオートバイ用燃料タンクにおける案内管が給油孔の孔縁と結合された状態を示す断面図
【図3】本発明の第1の実施形態の燃料タンクの製造方法を示すフローチャート
【図4】本発明のオートバイ用燃料タンクの第1の実施形態を示す分解斜視図
【図5】第1の実施形態における上ハウジングと下ハウジングとの結合状態を示す部分断面図
【図6】第1の実施形態の案内管が突起に結合されている状態を示す部分断面図
【図7】第1の実施形態のポンプ用固定座が上ハウジングに取付けられた状態を示す部分断面図
【図8】本発明の第2の実施形態の案内管と突起との結合状態を示す部分断面図
【図9】本発明の第3の実施形態の案内管と突起との結合状態を示す部分断面図
【図10】第3の実施形態の変形例を示す部分断面図
【図11】第3の実施形態の他の変形例を示す部分断面図
【図12】複数の鋼板に対して引張試験を行って引張り強度を測定した結果を示す写真
【図13】燃料タンクに対して衝撃試験を行ってポンプ用固定座が水漏れを起こさない限界に達する前後の写真
【図14】燃料タンクに対して衝撃試験を行ってポンプ用固定座が水漏れを起こさない限界に達する前後の他の写真
【図15】燃料タンクに対して衝撃試験を行って案内管が水漏れを起こさない限界に達する前後の写真
【図16】燃料タンクに対して衝撃試験を行って案内管が水漏れを起こさない限界に達する前後の他の写真
【符号の説明】
【0043】
3 燃料タンク
301 接着層
302 接着層
303 接着層
303a 接着層
304 接着層
31 上ハウジング
311 上フランジ
312 接合用突起
313 給油孔
313b 給油孔
314 突起
314a 突起
314b 突起
315 取付け孔
32 下ハウジング
321 下フランジ
322 内周面
33 案内管
33a 案内管
33b 案内管
331 環状突起
34 ポンプ用固定座
341 階段部
35 空間
36 補強部材
36a 補強部材
361 本体部
362 延伸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下ハウジングが互いに対向するように結合されて内部に燃料を蓄える空間を形成しており、また、前記上ハウジングに前記空間と連通している給油孔と、前記給油孔と連通していて給油する燃料を前記空間内に案内することができる案内管とを有する燃料タンクにおいて、
前記上ハウジングに、前記給油孔の周縁から前記空間外へと突出してなる筒状の突起が形成されており、
前記案内管は両端を有し、その一端が前記突起に嵌合しながら、前記突起との間に形成された接着層を介して接着されていることを特徴とする燃料タンク。
【請求項2】
前記突起は円筒状であって、
前記案内管は前記突起に内嵌しており、
前記接着層は前記案内管の外周面と前記突起の内周面との間に介在していることを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項3】
前記突起は円筒状であって、
前記案内管は前記突起に外嵌しており、
前記接着層は、前記突起の外周面と前記案内管の内周面との間に介在していることを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項4】
前記案内管の前記突起と接着された箇所に近い外周面に、環状突起が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項5】
前記上ハウジングの前記給油孔の周りに環状の補強部材が接着剤で固着されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項6】
前記案内管の前記一端が前記上ハウジングの外表面に接触しており、
前記上ハウジングの前記給油孔の周りに環状の補強部材が固定されており、該補強部材は、前記案内管に外嵌して接着されている環状の本体部と、前記本体部の前記上ハウジングに近い周縁から前記上ハウジングの外表面上に延伸して接着された延伸部とからなっていることを特徴とする請求項3に記載の燃料タンク。
【請求項7】
前記突起の外周面と前記上ハウジングとの境界を面取したことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項8】
上下ハウジングが互いに対向するように結合されて内部に燃料を蓄える空間を形成しており、また、前記上ハウジングに前記空間と連通している給油孔が形成されている燃料タンクにおいて、
前記上ハウジングの外周縁に沿って上フランジが張り出して形成され、
また、前記上ハウジングの下面の周縁近傍に沿って環状の接合用突起が下向きに延伸突出しており、
前記下ハウジングの上端縁に沿って下フランジが張り出して形成され、前記上フランジとの間に形成された接着層を介して接着されており、
前記接合用突起が前記下ハウジングの前記上端縁から該下ハウジング内に挿入して前記下ハウジングの内周面との間に形成された接着層をして接着されていることを特徴とする燃料タンク。
【請求項9】
前記給油孔に給油する燃料を前記空間内に案内する案内管が接合されていることを特徴とする請求項8に記載の燃料タンク。
【請求項10】
前記上ハウジングに、前記空間から給油した燃料を吸引するポンプを搭載するためのポンプ用固定座が設けられていること特徴とする請求項8または請求項9に記載の燃料タンク。
【請求項11】
上下ハウジングが互いに対向するように結合されていて内部に燃料を蓄える空間を形成しており、また、前記上ハウジングに、前記空間から給油した燃料を吸引するポンプを搭載するためのポンプ用固定座が設けられている燃料タンクにおいて、
前記上ハウジングに、前記固定座を取り付けるための取付け孔が形成されており、該取付け孔の内壁の内径が、孔外から孔内へ段々小さくなるように複数の階段状に形成されており、
前記ポンプ用固定座は前記取付け孔の内壁の複数の階段部分と対応する階段部が形成されており、
前記ポンプ用固定座は、前記階段部と前記取付け孔の各階段との間に形成された接着層を介して前記上ハウジングに接着されていることを特徴とする燃料タンク。
【請求項12】
その外周縁に沿って張り出した上フランジと、その下面の周縁近くに沿って下向きに延伸突出した環状の接合用突起とを有する上ハウジング、及び、その上端縁に沿って張り出した下フランジを有する下ハウジングを成形する上下一対のハウジングの成形工程と、
前記上フランジと前記下フランジとの間のいずれかの一方に、及び、前記接合用突起と前記下ハウジングの内周面との間のいずれかの一方に接着剤を塗布して前記上下一対のハウジングを接着する塗布結合工程と、
前記上ハウジングと前記下ハウジングとの組合せを150℃〜190℃まで加熱して接着剤を硬化させる加熱工程とを有することを特徴とする燃料タンクの製造方法。
【請求項13】
その内壁の内径が、孔外から孔内へ段々小さくなるように複数の階段状に形成された取付け孔が設けられ該取付け孔に複数の階段部分と対応する階段部を有するポンプ用固定座が設けられる上ハウジングと、前記上ハウジングと結合してタンク体を形成する下ハウジングとを成形する上下一対のハウジングの成形工程と、
前記上ハウジングと前記下ハウジングとの間の予定の接着箇所のいずれかの一方に接着剤を塗布してそれらを接着する工程、及び、前記取付け孔における複数の階段部分と前記ポンプ用固定座における階段部との間の予定の接着箇所のいずれかの一方に接着剤を塗布して前記ポンプ用固定座の階段部を前記取付け孔の内壁に接着して前記ポンプ用固定座を前記上ハウジングに固定する工程とを含む塗布結合工程と、
前記上ハウジングと前記下ハウジングとの組合せを150℃〜190℃まで加熱して接着剤を硬化させる加熱工程とを有することを特徴とする燃料タンクの製造方法。
【請求項14】
給油孔と、該給油孔の周縁から突出した筒状の突起が形成されている上ハウジングと、前記上ハウジングと結合してタンク体を形成する下ハウジングとを成形する上下一対のハウジングの成形工程と、
前記上ハウジングと前記下ハウジングとの間の予定の接着箇所のいずれかの一方に接着剤を塗布してこれらを接着する工程、及び、前記突起と該突起に接着して給油する燃料を案内するための案内管との間の予定の接着箇所のいずれかの一方に接着剤を塗布して該案内管を前記突起に接着する工程とを含む塗布結合工程と、
前記上ハウジングと前記下ハウジングとの組合せを150℃〜190℃まで加熱して接着剤を硬化させる加熱工程とを有することを特徴とする燃料タンクの製造方法。
【請求項15】
前記塗布工程において、前記接着剤として構造用接着剤を使用することを特徴とする請求項12乃至請求項14のいずれか1項に記載の燃料タンクの製造方法。
【請求項16】
前記塗布工程において、前記案内管を前記突起に外嵌させ、且つ、前記接着剤を前記突起の外周面と前記案内管の内周面の間に塗布して前記案内管を前記突起に接着することを特徴とする請求項14に記載の燃料タンクの製造方法。
【請求項17】
前記塗布工程において、前記案内管を前記突起に内嵌させ、且つ、前記接着剤を前記突起の内周面と前記案内管の外周面との間に塗布して前記案内管を前記突起に接着することを特徴とする請求項14に記載の燃料タンクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−1365(P2006−1365A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178445(P2004−178445)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(504232217)財團法人金属工業研究発展中心 (1)
【出願人】(597127029)光陽工業股▲分▼有限公司 (18)
【Fターム(参考)】