説明

燃料供給システム

【課題】高圧液体燃料を気化させる際の気化潜熱によって熱交換対象物を冷却可能に構成された燃料供給システムにおいて、エネルギ出力手段へ充分な供給流量の燃料を供給することを目的とする。
【解決手段】高圧液体燃料を気化させる気化手段として第1、第2気化器12、13の2つを設ける。そして、第1気化器12にて気化する燃料の気化潜熱によって車室内に送風区される送風空気を冷却するとともに、第1、第2気化器12、13の双方にて気化した燃料をエンジンEGへ供給する。この際、第2気化器13では、エンジンEGが要求出力を出力するために必要な供給流量から第1気化器12の気化流量を減算した値を気化させることで、エンジンEGに対して充分な供給流量の燃料を供給できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧液体燃料を気化させて、気化された燃料をエネルギ出力手段へ供給する燃料供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に、高圧液体燃料である液化天然ガスを気化手段にて気化させて、気化させた天然ガスを内燃機関、すなわち機械的エネルギを出力するエネルギ出力手段へ供給する燃料供給システムが開示されている。
【0003】
より具体的には、この特許文献1の燃料供給システムは、気化手段にて気化する天然ガスと蒸気圧縮式の冷凍サイクルの高温高圧冷媒(熱交換対象物)とを熱交換させる熱交換手段を備えており、気化手段にて気化する天然ガスの温度が高温高圧冷媒の温度よりも低い時に、高温高圧冷媒を熱交換手段へ流入させて、気化手段にて気化する天然ガスと高温高圧冷媒とを熱交換させるようにしている。
【0004】
これにより、特許文献1の燃料供給システムでは、気化手段にて気化する天然ガスの気化潜熱によって冷凍サイクルの高温高圧冷媒を冷却するとともに、高温高圧冷媒が放熱する熱量を利用して天然ガスの気化を促進させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−264568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の燃料供給システムでは、冷凍サイクルの高温高圧冷媒が放熱する熱量を利用して天然ガスの気化を促進させているので、内燃機関が要求される出力(以下、要求出力という)を出力するために必要な流量の天然ガスを気化させることができなくなってしまうことがある。
【0007】
例えば、内燃機関の高負荷時には、内燃機関への天然ガスの供給流量を増加させる必要があるにも関わらず、冷凍サイクルの冷却負荷が小さいと高温高圧冷媒が放熱する総放熱量が少なくなる。その結果、充分な流量の天然ガスを気化させることができなくなり、内燃機関に対して、要求出力を出力するために必要な供給流量の天然ガスを供給できなくなってしまう。
【0008】
上記点に鑑み、本発明では、高圧液体燃料を気化させる際の気化潜熱によって熱交換対象物を冷却可能に構成された燃料供給システムにおいて、エネルギ出力手段へ充分な供給流量の燃料を供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、高圧液体燃料を貯蔵する液体燃料貯蔵手段(11)と、液体燃料貯蔵手段(11)から流出した高圧液体燃料を気化させる第1燃料気化手段(12)および第2燃料気化手段(13)と、第1燃料気化手段(12)にて気化する燃料の気化潜熱によって熱交換対象物を冷却する冷却手段(21b)と、第1燃料気化手段(12)にて気化された気体燃料および第2燃料気化手段(13)にて気化された気体燃料のうち、少なくとも一方の気体燃料を消費してエネルギを出力するエネルギ出力手段(EG)とを備える燃料供給システムを特徴とする。
【0010】
これによれば、第1、第2燃料気化手段(12、13)の2つの燃料気化手段を備えているので、双方の燃料気化手段(12、13)にて気化させる高圧液体燃料の気化流量を異なる流量とすることができる。従って、第1燃料気化手段(12)では、エネルギ出力手段(EG)が要求されたエネルギを出力するために必要な燃料の流量によらず、熱交換対象物を充分に冷却可能な流量の燃料を気化させることができる。
【0011】
また、第1燃料気化手段(12)にて気化された気体燃料がエネルギ出力手段(EG)へ供給されるので、第2燃料気化手段(13)では、エネルギ出力手段(EG)が要求されたエネルギを出力できる燃料の供給流量から第1燃料気化手段(12)にて気化された気化流量を減算した流量の燃料を気化させることで、エネルギ出力手段(EG)へ充分な供給流量の燃料を供給することができる。
【0012】
なお、本請求項における「熱交換対象物」は、固体のみを意味するものではなく、液体、気体等、燃料の気化潜熱によって冷却可能なものの全てが含まれる意味である。さらに、熱交換対象物には、冷却手段(21b)において気化潜熱によって直接的に冷却されるもの、および、間接的に冷却されるものの双方が含まれる。また、本請求項における「エネルギ」には、機械的エネルギ、電気エネルギ、熱エネルギ等が含まれる。
【0013】
例えば、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の燃料供給システムにおいて、熱交換対象物は、空調対象空間に送風される送風空気であってもよい。
【0014】
請求項3に記載の発明のように、車両に適用される請求項1または2に記載の燃料供給システムであって、車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成するケーシング(23)を備え、熱交換対象物は、送風空気であり、冷却手段は、第1燃料気化手段(12)にて気化する燃料の気化潜熱によって冷却された熱媒体と送風空気とを熱交換させる冷却用熱交換器(21b)で構成されており、さらに、第1燃料気化手段(12)は、ケーシング(23)の外部に配置されていてもよい。
【0015】
これにより、熱媒体を介して車室内へ送風される送風空気を間接的に冷却することのできる燃料供給システムが実現できる。さらに、第1燃料気化手段(12)がケーシング(23)の外部に配置されているので、何らかの理由で、第1燃料気化手段(12)から燃料が漏れても、燃料が車室内に送風されてしまうことを防止できる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明のように、車両に適用される請求項1または2に記載の燃料供給システムにおいて、車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成するケーシング(23)と、蒸気圧縮式の冷凍サイクル(30)とを備え、熱交換対象物は、送風空気であり、冷却手段は、第1燃料気化手段(12)にて気化する燃料の気化潜熱によって冷却された冷媒を蒸発させて送風空気から吸熱する冷凍サイクル(30)の蒸発器(35)にて構成されており、さらに、第1燃料気化手段(12)は、ケーシング(23)の外部に配置されていてもよい。
【0017】
これにより、蒸気圧縮式の冷凍サイクル(30)の冷媒を介して車室内へ送風される送風空気を間接的に冷却することのできる燃料供給システムが実現できる。さらに、請求項3に記載の発明と同様に、第1燃料気化手段(12)から燃料が漏れても、燃料が車室内に送風されてしまうことを防止できる。
【0018】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の燃料供給システムにおいて、第1燃料気化手段(12)から流出した気体燃料をエネルギ出力手段(EG)側へ圧送する燃料圧送手段(14)を備えることを特徴とする。
【0019】
ここで、第1燃料気化手段(12)における気化流量を、熱交換対象物を充分に冷却できるように調整し、第2燃料気化手段(13)における気化流量を、エネルギ出力手段(EG)へ充分な供給流量の燃料を供給できるように調整すると、第2燃料気化手段(13)における気化流量が、第1燃料気化手段(12)における気化流量よりも多くなりやすい。
【0020】
そのため、第2燃料気化手段(13)にて気化した気体燃料の圧力が、第1燃料気化手段(12)にて気化した気体燃料の圧力よりも高くなってしまうことがある。これに対して、第1燃料気化手段(12)から流出した気体燃料をエネルギ出力手段(EG)側へ圧送する燃料圧送手段(14)を備えることで、第1燃料気化手段(12)から流出した気体燃料を確実にエネルギ出力手段(EG)側へ供給することができる。
【0021】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態の燃料供給システムの全体構成図である。
【図2】第2実施形態の燃料供給システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、図面を用いて本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態の燃料供給システム1の全体構成図である。この燃料供給システム1は、車両に適用されており、車両走行用の駆動力を出力するエンジン(内燃機関)EGへ燃料を供給する機能を有するとともに、後述する車両用空調装置2において、車室内へ送風される送風空気を冷却する機能を有している。
【0024】
まず、燃料供給システム1は、高圧液体燃料を貯蔵する液体燃料貯蔵手段としての高圧タンク11を備えている。本実施形態では、この高圧タンク11に貯蔵される燃料として、可燃性を有し、比較的気化潜熱が高く、さらに、高圧化においては常温(15℃〜25℃程度)でも液化する燃料を採用している。
【0025】
つまり、本実施形態の燃料は、エンジンEGにて燃料として燃焼させるために可燃性が必要となる。また、後述するように、その気化潜熱によって送風空気を冷却するために比較的気化潜熱が高い燃料であることが望ましい。さらに、その製造コストを低減するとともに減圧することで容易に気化させることができるように常温でも液化しやすい燃料であることが望ましい。
【0026】
具体的には、本実施形態では、可燃性を有し、気化潜熱が水の気化潜熱の20%以上であり、常温で1.5MPa以下で液化する燃料として、ジメチルエーテルを採用している。さらに、ジメチルエーテルは水素を含有する燃料(水素化合物)であるので、改質することによって可燃性を有する水素ガスを生成することもできる。
【0027】
この他にも、例えば、水素を含有する燃料であって、同燃料の分子中に、S(硫黄)、O(酸素)、N(窒素)、及びハロゲンのうち少なくとも1種の原子が含まれるものであり、且つ、分子間にて水素結合が発現するものを同等の性質を有する燃料として採用してもよい。
【0028】
高圧タンク11から流出した液体燃料の流れは2つの流れに分岐され、分岐された一方の液体燃料は、第1気化器12の第1噴射弁12aへ流入し、分岐された他方の液体燃料は、第2気化器13の第2噴射弁13aへ流入する。第1、第2気化器12、13は、それぞれ高圧液化燃料を減圧させて気化させる第1、第2燃料気化手段を構成するものである。
【0029】
具体的には、第1気化器12は、燃料を気化させる第1気化空間12cを形成する第1気化容器12b、第1気化空間12c内に高圧液化燃料を霧状に噴射する第1噴射弁12a等を有して構成されている。この第1噴射弁12aは、分岐部から流入する高圧液化燃料の通路面積を小さく絞って燃料を減圧させて噴射するノズル、および、ノズルへ流入する燃料の通路を開閉する電磁弁等からなる。
【0030】
そして、この電磁弁を開く時間を調整することによって、ノズルから噴射される燃料の噴射流量が調整される。なお、電磁弁は、後述するシステム制御装置から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。さらに、第1気化器12の第1気化空間12cの内部には、後述する車両用空調装置2の熱媒体循環回路21を循環する熱媒体を流通させる熱媒体通路21aが配置されている。なお、熱媒体循環回路21および熱媒体通路21aについては後述する。
【0031】
第1気化器12の気体燃料出口には、圧縮機14の燃料吸入口が接続されている。圧縮機14は、第1気化器12にて気化した気体燃料をエンジンEGの吸入ポート側へ圧送する燃料圧送手段であり、本実施形態では、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構14aを電動モータ14bにて駆動する電動圧縮機を採用している。
【0032】
固定容量型圧縮機構14aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ローリングピストン型圧縮機構、プランジャ型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。電動モータ14bは、システム制御装置から出力される制御信号によって、その回転数が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれの形式を採用してもよい。そして、この回転数制御によって、圧縮機14の吐出能力が変更される。
【0033】
圧縮機14の燃料吐出口は、図示しない逆止弁を介して、第2気化器13の気体燃料出口側に接続されている。従って、圧縮機14から吐出された気体燃料は、第2気化器13から流出した気体燃料と合流する。
【0034】
次に、第2気化器13の基本的構成は、第1気化器12と同様である。従って、第2気化器13も、燃料を気化させる第2気化空間13cを形成する第2気化容器13b、第2気化空間13c内に高圧液化燃料を噴射する第2噴射弁13a等を有して構成されている。従って、第2噴射弁13aの電磁弁を開く時間を調整することによって、第2噴射弁13aのノズルから噴射される燃料の噴射流量を調整することができる。
【0035】
また、第2気化器13の第2気化空間13cの内部には、後述する冷却水循環回路40を循環するエンジン冷却水を流通させる冷却水通路41が配置されている。冷却水循環回路40および冷却水通路41については後述する。
【0036】
第2気化器13の気体燃料出口から流出した気体燃料は、前述の如く、圧縮機14吐出燃料と合流した後、2つの流れに分岐され、分岐された一方の気体燃料は、気体燃料をエンジンEGの燃焼室内へ噴射供給する燃料噴射弁(インジェクタ)15へ流入し、分岐された他方の気体燃料は、気体燃料を改質して水素ガスを発生させる改質器(リフォーマ)16へ流入する。
【0037】
本実施形態のエンジンEGは、いわゆるレシプロ型エンジンで構成されており、第2気化器13から供給される気体燃料を燃焼させることによって、車両走行用の駆動力となる機械的エネルギを出力するエネルギ出力手段を構成している。
【0038】
インジェクタ15は、エンジンEGのシリンダヘッドに固定されて、エンジンEGの吸気ポートに向けて気体燃料を噴射するものである。これにより、気体燃料と燃焼用空気(吸気)が混合された混合気が燃焼室内へ供給される。より具体的には、インジェクタ15は、吸気経路内に燃料を供給する燃料供給通路を開閉する電磁弁によって構成されている。
【0039】
さらに、この電磁弁は、システム制御装置から出力される制御電圧によってその作動が制御される。従って、インジェクタ15は、第1、第2気化器12、13の第1、第2噴射弁12a、13aと同様に、電磁弁を開く時間を調整することによって、燃焼室内へ供給される燃料の供給流量を調整することができる。
【0040】
なお、図1では、図示の明確化のため、エンジンEGの1つの気筒のみを図示しているが、このエンジンEGは、多気筒型(例えば、4気筒)のエンジンであり、インジェクタ15は、各気筒に対して1個づつ設けられている。
【0041】
リフォーマ16は、気体燃料を触媒下で改質可能温度まで加熱して改質反応させることによって、水素ガスを発生させるものである。具体的には、本実施形態では、燃料として炭化水素系燃料であるジメチルエーテルを採用しているので、燃料を250℃以上となるまで加熱して、触媒下にて水蒸気改質反応をさせて水素ガスを発生させている。リフォーマ16にて発生した水素ガスは、補助燃料として吸気に混合されてエンジンEGの吸気ポートより燃焼室へ供給される。
【0042】
次に、車両用空調装置2について説明する。本実施形態の車両用空調装置2は、前述した熱媒体循環回路21に配置された冷却用熱交換器21b、この冷却用熱交換器21bを収容するケーシング23等を有して構成されている。
【0043】
ケーシング23は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、内部に車室内に向けて送風される送風空気の空気通路を形成するもので、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング23の送風空気流れ最上流側には、車室内空気(内気)と外気とを切替導入する図示しない内外気切替装置が配置されている。
【0044】
内外気切替装置の空気流れ下流側には、内外気切替装置を介して吸入された空気を車室内へ向けて送風する送風機24が配置されている。この送風機24は、システム制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される電動送風機である。送風機24の空気流れ下流側には、熱媒体循環回路21の冷却用熱交換器21bが配置されている。
【0045】
ここで、熱媒体循環回路21について説明する。熱媒体循環回路21は、熱媒体(例えば、エチレングリコール水溶液)を循環させる回路で、前述した第1気化器12の第1気化空間12cに配置された熱媒体通路21a、冷却用熱交換器21b、熱媒体循環用の熱媒体ポンプ21cを環状に接続したものである。
【0046】
熱媒体ポンプ21cは、熱媒体通路21aへ熱媒体を圧送する電動式のポンプであり、システム制御装置から出力される制御信号によって回転数(流量)が制御される。そして、システム制御装置が、熱媒体ポンプ21cを作動させると、熱媒体は、熱媒体ポンプ21c→熱媒体通路21a→冷却用熱交換器21b→熱媒体ポンプ21cの順に循環する。
【0047】
熱媒体通路21aは、蛇行状の熱媒体配管によって構成されており、第1噴射弁12aから噴射された燃料が吹き付けられるように、第1気化空間12c内に配置されている。このため、吹き付けられた燃料が気化する際に、熱媒体通路21aを流通する熱媒体から気化潜熱分の熱量が吸熱され、熱媒体が冷却される。換言すると、熱媒体の有する熱量を吸熱することによって燃料が加熱されて、燃料の気化が促進される。
【0048】
冷却用熱交換器21bは、熱媒体通路21aにて冷却された熱媒体と送風機24によって送風された送風空気とを熱交換させて、送風空気を冷却する冷却手段である。つまり、本実施形態では、熱媒体を介して、燃料の気化潜熱によって送風空気を間接的に冷却することができる。従って本実施形態では、送風空気が特許請求の範囲に記載された熱交換対象物となる。
【0049】
冷却用熱交換器21bの送風空気流れ下流側には、ヒータ22が配置されている。ヒータ22は、送風機24から送風されて冷却用熱交換器21bを通過して冷却された送風空気(冷風)を加熱する空気加熱手段である。本実施形態では、ヒータ22として電力を供給されることによって発熱する電気ヒータを採用しており、ヒータ22の加熱能力は、システム制御装置から出力される制御電圧によって制御される。
【0050】
もちろん、ヒータ22として、高温流体と送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する加熱用熱交換器を採用してもよい。このような高温流体としては、具体的に、冷却水循環回路40を循環するエンジン冷却水のうち、エンジンEGから流出した高温の冷却水、ヒートポンプサイクルの高温高圧冷媒等を採用することができる。
【0051】
ケーシング23の空気流れ最下流部には、ヒータ22にて加熱された空調風を、空調対象空間である車室内へ吹き出す吹出口が配置されている。具体的には、この吹出口としては、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)が設けられている。
【0052】
さらに、フェイス吹出口、フット吹出口、およびデフロスタ吹出口の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口の開口面積を調整するフェイスドア、フット吹出口の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ吹出口の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
【0053】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、リンク機構等を介して、システム制御装置から出力される制御信号によって作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0054】
次に、冷却水循環回路40について説明する。冷却水循環回路40は、エンジンEGを冷却する冷却水(例えば、エチレングリコール水溶液)を循環させる回路で、前述した第2気化器13の第2気化空間13cに配置された冷却水通路41、エンジンEG内に形成されたエンジンEGの冷却用通路42、冷却水ポンプ43を環状に接続したものである。
【0055】
冷却水ポンプ43は、冷却用通路42へ冷却水を圧送する電動式のポンプであり、システム制御装置から出力される制御信号によって回転数(流量)が制御される。そして、システム制御装置が、冷却水ポンプ43を作動させると、冷却水は、冷却水ポンプ43→エンジンEG内の冷却用通路42→第2気化器13内の冷却水通路41→冷却水ポンプ43の順に循環する。
【0056】
冷却水通路41の基本的構成は、第1熱媒体回路21の熱媒体通路21aと同様である。従って、第2噴射弁13aから第2気化空間13c内に噴射された燃料が気化する際に、冷却水通路41を流通する冷却水から気化潜熱分の熱量が吸熱され、冷却水が冷却される。換言すると、冷却水の有する熱量を吸熱することによって燃料が加熱されて、燃料の気化が促進される。
【0057】
そして、冷却された熱媒体がエンジンEG内の冷却用通路42を通過することで、エンジンEGが冷却される。なお、エンジンEGの廃熱が多く、第2気化器13にて冷却水を充分に冷却することができない場合は、冷却水循環回路40に、外気と熱媒体とを熱交換させるラジエータを追加してもよい。
【0058】
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。システム制御装置は、制御処理や演算処理を行うCPUおよびプログラムやデータ等を記憶するROMおよびRAM等の記憶回路を含む周知のマイクロコンピュータ、各種制御対象機器への制御信号あるいは制御電圧を出力する出力回路、各種センサの検出信号が入力される入力回路、並びに、電源回路等から構成されている。
【0059】
システム制御装置の出力側には、前述した各種制御対象機器12a、13a、14b、15、21c、24、43等が接続され、システム制御装置はこれらの制御対象機器の作動を制御する。システム制御装置の入力側には、エンジンEGの作動を制御するために用いられる物理量を検出するエンジン制御用のセンサ群、車両用空調装置2の作動を制御するために用いられる物理量を検出する空調制御用のセンサ群等が接続されている。
【0060】
具体的には、エンジン制御用のセンサ群としては、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ、エンジンEGの回転数を検出する回転数センサ、インジェクタ15へ流入する燃料圧力を検出する燃圧センサ、エンジンEGの吸気経路に配置されて吸気流量を調整するスロットルバルブの弁開度を検出するスロットルポジションセンサ(いずれも図示せず)等が設けられている。
【0061】
また、空調制御用のセンサ群としては、車室内温度を検出する内気温センサ、車室外気温を検出する外気温センサ、車室内の日射量を検出する日射センサ、冷却用熱交換器21bから吹き出される送風空気(冷風)の温度を検出する冷風温度センサ、ヒータ22にて加熱された空調風の温度を検出する空調風温度センサ(いずれも図示せず)等が設けられている。
【0062】
さらに、システム制御装置の入力側には、車両を起動あるいは停止させるスタートスイッチ、エンジンEGを始動させるイグニションスイッチ等のエンジン操作用のスイッチ群の操作信号が入力されるとともに、車両用空調装置2の作動スイッチ、車両用空調装置2の自動制御を設定あるいは解除するオートスイッチ、車室内の目標温度を設定する目標温度設定手段としての車室内温度設定スイッチ等の空調操作用のスイッチ群の操作信号が入力される。
【0063】
なお、上述の如く、本実施形態のシステム制御装置は、エンジン制御および空調制御の双方を司る制御装置として構成されているが、もちろん、主にエンジン制御を行うエンジン制御用の制御装置と、主に空調制御を行う空調制御用の制御装置とを別体の制御装置として構成してもよい。
【0064】
また、システム制御装置は、上述した各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、システム制御装置のうち各制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が各制御対象機器の制御手段を構成している。例えば、第1、第2気化器12、13の第1、第2噴射弁12a、13aの作動を制御する構成が第1、第2噴射弁制御手段を構成している。
【0065】
次に、上記構成における本実施形態の燃料供給システム1の作動について説明する。まず、イグニションスイッチが投入されてエンジンEGが始動すると、システム制御装置が、その記憶回路に記憶されたエンジン制御プログラムを実行する。このエンジン制御プログラムでは、エンジンの運転状態に応じて、インジェクタ15からエンジンEGへ供給される燃料の供給流量等を決定して、インジェクタ15等の作動を制御する。
【0066】
具体的には、エンジン制御プログラムが実行されると、システム制御装置が、予め定めた基準回転数(基準冷却水圧送能力)となるように、冷却水ポンプ43を作動させる。さらに、システム制御装置は、所定の制御周期毎にエンジン制御用のセンサ群の各種検出値を読み込み、読み込まれたエンジン回転数、アクセル開度信号、スロットルバルブの弁開度等に基づいて、予め記憶回路に記憶されている制御マップを参照して、エンジンEGに要求されている駆動トルクを発生させるために必要な目標供給流量を決定する。
【0067】
そして、決定した目標供給流量、エンジン回転数、インジェクタ15入口側の燃料圧力等に基づいて、予め記憶回路に記憶されている制御マップを参照して、インジェクタ15から燃焼室へ供給される供給流量が目標供給流量となるインジェクタ15の開弁時間を決定する。
【0068】
ここで、本実施形態のエンジンEGには、第1気化器12にて気化された燃料と第2気化器13にて気化された燃料とを合流させた燃料が供給される。さらに、合流された燃料は、エンジンEGのみならず改質器16にも供給される。
【0069】
そのため、第1気化器12にて気化された燃料の第1気化流量(質量流量)と第2気化器13にて気化された燃料の第2気化流量(質量流量)の和は、インジェクタ15から燃焼室へ供給される燃料の供給流量(質量流量)より多くなっている必要がある。さらに、第1気化流量は、送風空気を充分に冷却できるように決定されている必要がある。
【0070】
そこで、システム制御装置では、上述したインジェクタ15の開弁時間と同様に、目標供給流量、第1噴射弁12aの開弁時間、第2噴射弁13a入口側の燃料圧力等に基づいて、予め記憶回路に記憶されている制御マップを参照して、第2気化流量(すなわち、第2噴射弁13aから噴射される燃料の噴射流量)が、目標供給流量から第1気化流量を減算した値よりも所定量多くなるように、第2噴射弁13aの開弁時間を決定する。
【0071】
つまり、第2気化流量は、エンジンEGに要求される出力に応じて決定され、具体的に、エンジンEGに要求出力を出力させるために必要な気化流量から第1気化流量を減算した値よりも所定量多くなるように決定される。
【0072】
この際、第1気化流量が、エンジンEGが要求出力を出力するために必要な供給流量およびリフォーマ16にて改質される燃料流量の合計流量よりも多い場合は、第2気化流量を0として、第1気化器12のみにて燃料を気化させればよいし、送風空気を冷却する必要がない場合は、第1気化流量を0として、第2気化器13のみにて燃料を気化させてもよい。
【0073】
従って、エンジンEGは、第1気化器12にて気化された気体燃料および第2気化器13にて気化された気体燃料のうち、少なくとも一方の気体燃料を消費して機械的エネルギを出力することになる。そして、システム制御装置は、出力回路あるいは駆動回路(EDU)を介して、決定された開弁時間の間だけ燃料を供給するように、インジェクタ15および第2噴射弁13aに対して制御電圧を出力する。
【0074】
その後、スタートスイッチによって車両の停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、上述の検出信号および操作信号の読み込み→インジェクタ15および第2噴射弁13aの開弁時間等の決定→決定された開弁時間となる制御電圧の出力といった制御ルーチンを繰り返す。これにより、要求されている駆動トルクを発生させながらエンジンEGを作動させることができる。
【0075】
さらに、本実施形態のシステム制御装置は、エンジンEGの始動に伴って、改質器16に設けられた改質用加熱手段としての電気ヒータ(図示せず)に通電し、改質可能な温度以上となるまで燃料を加熱する。これにより、エンジンEGの燃焼室に水素ガスを補助燃料として供給することができる。
【0076】
次に、エンジンEGの始動中に、車両用空調装置2の作動スイッチが投入された状態で、オートスイッチが投入されると、システム制御装置が、その記憶回路に記憶された空調制御プログラムを実行する。この空調制御プログラムでは、空調負荷に応じて、システム制御装置の出力側に接続された空調用の制御対象機器の作動状態を決定し、決定された作動状態となるように、制御対象機器の作動を制御する。
【0077】
具体的には、空調制御プログラムが実行されると、システム制御装置が、予め定めた基準回転数(基準熱媒体圧送能力)となるように、第1、第2水ポンプ21c、22cを作動させる。さらに、システム制御装置は、車室内温度、車室外気温、日射量等に基づいて、各吹出口から車室内に吹き出される送風空気の目標吹出温度TAOを決定する。
【0078】
そして、この目標吹出温度TAOおよび空調制御用のセンサ群の検出信号に基づいて、制御対象機器の作動を制御する。例えば、送風機24の目標送風量、すなわち送風機24の電動モータに出力する制御電圧については、目標吹出温度TAOに基づいて予め記憶回路に記憶されている制御マップを参照して、目標吹出温度TAOが高温時および低温時に中間温度時よりも高くなるように決定される。
【0079】
また、第1気化器12の第1噴射弁12aの開弁時間については、目標吹出温度TAOに基づいて予め記憶回路に記憶されている制御マップを参照して、目標吹出温度TAOの低下に伴って増加するように決定される。なお、目標吹出温度TAOは、車室内温度設定スイッチによって設定された目標温度に基づいて決定される値であるから、第1気化流量は、目標温度に応じて決定されることになる。
【0080】
また、圧縮機14の燃料吐出能力、すなわち圧縮機14の電動モータ14bに出力される制御信号については、圧縮機14から吐出された燃料の燃圧が、第2気化器13にて気化された燃料の燃圧と略同等となるように決定される。
【0081】
また、ヒータ22に出力される制御電圧については、ヒータ22に加熱された空調風の温度と車室内温度設定スイッチによって設定された目標温度との偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いてヒータ22から吹き出される空調風の温度が目標冷風温度TEOに近づくように決定される。
【0082】
そして、システム制御装置は、出力回路あるいは駆動回路を介して、制御対象機器に対して上記の如く決定された制御信号あるいは制御電圧を出力する。その後、車両用空調装置2の作動停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、上述の検出信号および操作信号の読み込み→制御対象機器の制御状態の決定→決定された制御状態が得られる制御信号あるいは制御電圧の出力といった制御ルーチンを繰り返す。
【0083】
これにより、送風機24から送風された送風空気は、冷却用熱交換器21bにて冷却される。さらに、冷却用熱交換器21bにて冷却された冷風は、ヒータ22によって乗員の所望の温度に温度調整されて、各吹出口を介して車室内へ吹き出される。そして、車室内に吹き出される空調風によって、車室内温度が車室外気温より低く冷やされる場合には車室内の冷房が実現され、車室内温度が車室外気温より高く加熱される場合には、車室内の暖房が実現される。
【0084】
本実施形態の燃料供給システム1は、上記の如く作動するので、以下のような優れた効果を得ることができる。
【0085】
本実施形態の燃料供給システム1では、第1、第2燃料気化手段12、13の2つの燃料気化手段を備えているので、双方の燃料気化手段12、13にて気化させる高圧液体燃料の気化流量を異なる流量とすることができる。つまり、第1気化器12では、エンジンEGが要求出力を出力するために必要な供給流量によらず、車室内へ送風される送風空気を充分に冷却可能な流量の燃料を気化させることができる。
【0086】
また、第2気化器13では、エンジンEGに供給される燃料の供給流量から第1気化器12にて気化された気化流量を減算した流量より多い流量の燃料を気化させているので、エンジンEGおよびリフォーマ16へ充分な供給流量の燃料を供給することができる。従って、本実施形態の燃料供給システム1によれば、送風空気を充分に冷却しつつ、エンジンEGに対して充分な供給流量の燃料を供給することができる。
【0087】
もちろん、第1気化器12における気化流量が、エンジンEGが要求出力を出力するために必要な供給流量およびリフォーマ16にて改質される燃料流量よりも多い場合は、第2気化器13の第2噴射弁13aの作動を停止させてもよい。さらに、送風空気を冷却する必要がない場合は、第1気化器12の第1噴射弁12aの作動を停止させてもよい。
【0088】
また、本実施形態のように、車両に適用される燃料供給システム1においては、エンジンEGが要求出力を出力するために必要な燃料の供給流量が変動しやすいため、送風空気を充分に冷却しつつ、エンジンEGに対して充分な供給流量の燃料を供給できることは極めて有効である。
【0089】
ところで、第1気化器12における第1気化流量を、送風空気を充分に冷却できるように調整し、第2気化器13における第2気化流量を、エンジンEGへ充分な供給流量の燃料を供給できるように調整すると、一般的に第2気化流量が、第1気化流量よりも多くなりやすい。
【0090】
そのため、第2気化器13にて気化した気体燃料の燃圧が、第1気化器12にて気化した気体燃料の燃圧よりも高くなってしまうことがある。これに対して、本実施形態では、圧縮機14を備えているので、第1気化器12にて気化された気体燃料を確実にエンジンEGへ供給することができる。
【0091】
さらに、本実施形態の第1気化器12では、熱媒体循環回路21を循環する熱媒体を介して、間接的に熱交換対象物である送風空気を冷却しているので、第1気化器12を車両用空調装置2のケーシング23外(すなわち、送風空気の空気通路外)に配置することができる。
【0092】
従って、何らかの理由で、燃料供給システム1から燃料が漏れたとしての、可燃性を有する燃料が車室内に送風されてしまうことを防止できる。また、仮に毒性を有する燃料を採用したとしても、燃料が車室内に送風されてしまうことを防止して乗員の安全性を確保することができる。
【0093】
なお、上述の説明から明らかなように、本実施形態は、燃料供給システム1にて気化する燃料の気化潜熱によって熱交換対象物を冷却する熱管理システム、あるいは冷却システムについて説明したものと表現することができる。
【0094】
すなわち、本実施形態は、
高圧液体燃料を貯蔵する液体燃料貯蔵手段(高圧タンク11)と、
前記液体燃料貯蔵手段から流出した前記高圧液体燃料を減圧させて気化する第1燃料気化手段(第1気化器12)および第2燃料気化手段(第2気化器13)と、
前記第1燃料気化手段にて気化する燃料の気化潜熱によって熱交換対象物を冷却する冷却手段(冷却用熱交換器21b)と、
前記第1燃料気化手段にて気化された気体燃料および前記第2燃料気化手段にて気化された気体燃料のうち少なくとも一方の気体燃料を消費してエネルギを出力するエネルギ出力手段(エンジンEG)とを備えることを特徴とする熱管理システム、あるいは冷却システムについて説明したものでもある。
【0095】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図2の全体構成図に示すように、熱媒体循環回路21を廃止するとともに、冷凍サイクル30を追加した例を説明する。なお、図2では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。
【0096】
冷凍サイクル30は、冷媒を圧縮して吐出する冷媒圧縮機31、冷媒圧縮機31吐出冷媒を車室外空気と熱交換させて放熱させる室外熱交換器32、第1気化器12の第1気化空間12c内に配置された冷媒通路33、冷媒通路33から流出した冷媒を減圧膨張させる膨張弁34、膨張弁34にて減圧された冷媒を送風機24から送風された送風空気と熱交換させて蒸発させる蒸発器35を環状に接続して構成された蒸気圧縮式の冷凍サイクルである。
【0097】
この冷媒圧縮機31としては、第1実施形態の圧縮機14と同様の構成の電動圧縮機を採用できる。また、冷媒通路33としては、第1実施形態の熱媒体通路21aと同様の構成の冷媒配管を採用できる。さらに、膨張弁34としては、蒸発器35流出冷媒の過熱度が予め定めた所定範囲となるように弁開度が機械的機構によって調整される温度式膨張弁を採用することができる。
【0098】
さらに、本実施形態では、空調制御プログラムが実行されると、システム制御装置が、目標冷風温度TEOと冷却用熱交換器21bから吹き出される送風空気の温度との偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いて蒸発器35吹き出される送風空気の温度が目標冷風温度TEOに近づくように、冷媒圧縮機31の冷媒吐出能力を制御する。その他の構成および作動について第1実施形態と同様である。
【0099】
従って、本実施形態の燃料供給システムを作動させても、第1実施形態と同様に、エンジンEGへ供給される燃料の供給流量の変動によらず、送風空気を充分に冷却することができる。さらに、本実施形態では、第1気化器12にて気化する燃料の気化潜熱によって冷凍サイクル30の冷媒を冷却するので、高い成績係数(COP)を発揮させながら冷凍サイクル30作動させることができる。
【0100】
さらに、冷凍サイクル30によって送風空気を冷却するので、例えば、高圧タンク11内の燃料が減少して、第1気化器12にて気化する燃料の気化流量が減少しても、安定した車室内空調を実現することができる。また、本実施形態も、第1実施形態と同様に、燃料供給システム1にて気化する燃料の気化潜熱によって熱交換対象物を冷却する熱管理システム、あるいは冷却システムについて説明したものということもできる。
【0101】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0102】
(1)上述の実施形態では、第1、第2燃料気化手段として、第1、第2気化空間12c、13cに液体燃料を霧状に噴射する第1、第2気化器12、13を採用しているが、第1、第2燃料気化手段は、これに限定されない。例えば、高圧液化燃料と熱媒体とを熱交換させる熱交換器を採用してもよい。この場合は、高圧液化燃料を霧状に噴射する必要はなく、熱交換器へ流入させる高圧液化燃料の流量を調整すればよい。
【0103】
(2)上述の実施形態では、エネルギ出力手段として、エンジン(内燃機関)EGを採用した例を説明したが、エネルギ出力手段は、これに限定されない。例えば、燃料ガス(水素ガス)と酸化剤ガス(空気)とを電気化学反応させて、電気エネルギを出力する燃料電池を採用してもよい。
【0104】
(3)上述の実施形態では、熱交換対象物として車室内に送風される送風空気を冷却する構成について説明したが、熱交換対象物は、これに限定されない。つまり、熱交換対象物としては、燃料の気化潜熱によって冷却可能なものの全てが採用できる。
【0105】
例えば、内燃機関や燃料電池のようなエネルギ出力手段、電動モータやこれに電力を供給するインバータ回路等の電気回路等、作動時に発熱を伴う発熱機器等を採用してもよいし、飲料水や熱媒体のような流体を採用してもよい。
【0106】
また、上述の実施形態では、熱交換対象物である送風空気を、熱媒体を介して間接的に冷却する例を説明したが、もちろん、直接的に冷却してもよい。さらに、上述の第2実施形態では、第2気化器13にて気化する燃料によって、エンジンEGを間接的に冷却する例を説明したが、第2気化器13にて気化する燃料によって、他のものを冷却してもよい。
【0107】
例えば、改質器16を冷却してもよいし、エネルギ出力手段として、燃料電池を採用する場合には、燃料電池を冷却してもよい。
【0108】
(4)上述の実施形態では、第1気化器12にて気化された気化燃料を昇圧させる圧縮機14の燃料吐出口を、第2気化器13の気体燃料出口側に接続し、圧縮機14から吐出された気体燃料と第2気化器13にて気化された気体燃料とを合流させた後に、エンジンEGおよびリフォーマ16へ供給した例を説明したが、圧縮機14の燃料吐出口の接続態様はこれに限定されない。
【0109】
例えば、圧縮機14から吐出された気体燃料を、リフォーマ16へ供給することなく、直接エンジンEGの吸入ポートに接続してもよいし、エンジンEGへ供給することなく、リフォーマ16へ流入させてもよい。
から流出した気体燃料と合流する。
【0110】
(5)上述の実施形態では、本発明の燃料供給システムを車両に適用した例を説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。例えば、エンジン駆動式の定置型空調装置あるいは冷凍装置に適用してもよいし、燃料を燃焼させて熱エネルギを出力するボイラ装置に適用して温水と冷水とを同時に作り出すシステムなどに適用してもよい。
【0111】
(6)上述の実施形態では、エンジンEGへ補助燃料としての水素ガスを供給するために、改質器16を採用した例を説明したが、この改質器16は、エンジンEGへ充分な供給流量の燃料を供給するという効果を得るための必須の構成ではないので、廃止してもよい。
【符号の説明】
【0112】
11 高圧タンク
12、13 第1、第2気化器
14 圧縮機
21b 冷却用熱交換器
23 ケーシング
30 冷凍サイクル
35 蒸発器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧液体燃料を貯蔵する液体燃料貯蔵手段(11)と、
前記液体燃料貯蔵手段(11)から流出した前記高圧液体燃料を気化させる第1燃料気化手段(12)および第2燃料気化手段(13)と、
前記第1燃料気化手段(12)にて気化する燃料の気化潜熱によって熱交換対象物を冷却する冷却手段(21b)と、
前記第1燃料気化手段(12)にて気化された気体燃料および前記第2燃料気化手段(13)にて気化された気体燃料のうち、少なくとも一方の気体燃料を消費してエネルギを出力するエネルギ出力手段(EG)とを備えることを特徴とする燃料供給システム。
【請求項2】
前記熱交換対象物は、空調対象空間に送風される送風空気であることを特徴とする請求項1に記載の燃料供給システム。
【請求項3】
車両に適用される燃料供給システムであって、
車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成するケーシング(23)を備え、
前記熱交換対象物は、前記送風空気であり、
前記冷却手段は、前記第1燃料気化手段(12)にて気化する燃料の気化潜熱によって冷却された熱媒体と前記送風空気とを熱交換させる冷却用熱交換器(21b)で構成されており、
さらに、前記第1燃料気化手段(12)は、前記ケーシング(23)の外部に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料供給システム。
【請求項4】
車両に適用される燃料供給システムであって、
車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成するケーシング(23)と、
蒸気圧縮式の冷凍サイクル(30)とを備え、
前記熱交換対象物は、前記送風空気であり、
前記冷却手段は、前記第1燃料気化手段(12)にて気化する燃料の気化潜熱によって冷却された冷媒を蒸発させて前記送風空気から吸熱する前記冷凍サイクル(30)の蒸発器(35)にて構成されており、
さらに、前記第1燃料気化手段(12)は、前記ケーシング(23)の外部に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料供給システム。
【請求項5】
前記第1燃料気化手段(12)から流出した気体燃料を前記エネルギ出力手段(EG)側へ圧送する燃料圧送手段(14)を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の燃料供給システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−17922(P2012−17922A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155857(P2010−155857)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】