燃料噴射弁
【課題】 燃料噴霧角度や噴射距離を可変にすることができる燃料噴射弁を提供すること。
【解決手段】 ポンプ制御手段によって内燃機関の状態に応じて供給する前記燃料の圧力を可変にする可変圧ポンプと、燃料が弁部材側から燃焼室側に通過する第1噴射通路および第2噴射通路を1組みとする複数組みの噴射通路を有し、第1噴射通路および第2噴射通路の燃焼室側開口部は、ぞれぞれの開口方向が燃焼室側で交わるとともに、燃料が第1噴射通路を通過するときの圧力損失抵抗と、第2噴射通路を通過するときの圧力損失抵抗とを異なるように形成したノズルプレートとを設けた。
【解決手段】 ポンプ制御手段によって内燃機関の状態に応じて供給する前記燃料の圧力を可変にする可変圧ポンプと、燃料が弁部材側から燃焼室側に通過する第1噴射通路および第2噴射通路を1組みとする複数組みの噴射通路を有し、第1噴射通路および第2噴射通路の燃焼室側開口部は、ぞれぞれの開口方向が燃焼室側で交わるとともに、燃料が第1噴射通路を通過するときの圧力損失抵抗と、第2噴射通路を通過するときの圧力損失抵抗とを異なるように形成したノズルプレートとを設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの燃料噴射弁として用いられる燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、下記の特許文献1に記載の技術が開示されている。この公報には、2つの燃料噴射孔が互いに交差するように設定され、各孔から噴射された燃料を衝突させることで燃料の微粒化を図るものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−74440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンの状態に応じて、微粒化した燃料の噴霧の拡散角度や噴射距離を可変にすることでより良い燃焼の制御ができる。しかしながら上記従来技術では、燃料噴霧角度や燃料噴射距離を可変にすることができない問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、燃料噴霧角度や噴射距離を可変にすることができる燃料噴射弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明では、ポンプ制御手段によって内燃機関の状態に応じて供給する前記燃料の圧力を可変にする燃料ポンプと、燃料が弁部材側から燃焼室側に通過する第1噴射通路および第2噴射通路を1組みとする複数組みの噴射通路を有し、第1噴射通路および第2噴射通路の燃焼室側開口部は、ぞれぞれの開口方向が燃焼室側で交わるとともに、燃料が第1噴射通路を通過するときの圧力損失抵抗と、第2噴射通路を通過するときの圧力損失抵抗とを異なるように形成したノズルプレートとを設けた。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、燃料噴霧角度や噴射距離を可変にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1の燃料噴射弁の軸方向断面図である。
【図2】実施例1の燃料噴射弁のノズルプレート付近の拡大断面図である。
【図3】実施例1の中間プレートとオリフィスプレートを軸方向から見た図である。
【図4】実施例1の液膜生成のイメージ図である。
【図5】実施例1の燃料噴霧のイメージ図である。
【図6】実施例1の燃料噴霧の拡散方向を示す図である。
【図7】実施例1の第1噴射通路と第2噴射通路における圧力損失を求めるための図である。
【図8】実施例1の燃料圧力と圧力損失との関係の概略図である。
【図9】実施例1の燃料圧力の高低による燃料噴霧角度の変化を示す図である。
【図10】実施例1の吸気ポート内の燃料噴霧状態のイメージ図である。
【図11】実施例2のノズルプレートの一部を拡大した図である。
【図12】実施例2の燃料圧力の高低による燃料噴霧角度の変化を示す図である。
【図13】実施例3のノズルプレートの一部を拡大した図である。
【図14】他の実施例の燃料噴射弁のノズルプレート付近の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施例1〕
実施例1の燃料噴射弁1について説明する。
[燃料噴射弁の構成]
図1は燃料噴射弁1の軸方向断面図である。この燃料噴射弁1は、自動車用エンジン等に用いられるものである。
燃料噴射弁1は、磁性筒体2と、磁性筒体2内に収容されるコア筒体3と、軸方向に摺動可能な弁体4と、弁体4と一体に形成された弁軸5と、閉弁時に弁体4により閉鎖される弁座6を有する弁座部材7と、開弁時に燃料が噴射される噴射孔を有するノズルプレート8と、通電時に弁体4を開弁方向に摺動させる電磁コイル9と、磁束線を誘導するヨーク10とを有している。
磁性筒体2は、例えば電磁ステンレス鋼等の磁性金属材料により形成された金属パイプ等からなり、深絞り等のプレス加工、研削加工等の手段を用いることにより、図1に示すように段付き筒状をなして一体に形成されている。磁性筒体2は、一端側に形成された大径部11と、大径部11よりも小径であって他端側に形成された小径部12とを有している。
小径部12には、一部を薄肉化した薄肉部13が形成されている。小径部12は、薄肉部13より一端側にコア筒体3を収容するコア筒体収容部14と、薄肉部13より他端側に弁部材15(弁体4、弁軸5、弁座部材7)を収容する弁部材収容部16とに分けられている。薄肉部13は、後述するコア筒体3と弁軸5が磁性筒体2に収容された状態で、コア筒体3と弁軸5との間の隙間部分を取り囲むように形成されている。薄肉部13は、コア筒体収容部14と弁部材収容部16との間の磁気抵抗を増大させ、コア筒体収容部14と弁部材収容部16間を磁気的に遮断している。
大径部11は弁部材15に燃料を送る燃料通路17を構成しており、大径部11の一端部には燃料を濾過する燃料フィルタ18が設けられている。燃料通路17には燃料ポンプ47が接続されている。この燃料
ポンプ47は、ポンプ制御装置54により燃料噴射弁に要求される必要燃料量に応じて、燃料の吐出圧を可変に制御されている。 コア筒体3は、中空部19を有する円筒形に形成されており、磁性筒体2のコア筒体収容部14に圧入等により固定されている。中空部19には、圧入等の手段により固定されたばね受20が収容されている。
【0009】
弁体4の外形は略球体状に形成されており、周上に燃料噴射弁1の軸方向に対して並行に削られた燃料通路面21を有している。弁軸5は大径部22と、外形が大径部22より小径に形成された小径部23とを有している。
小径部23の先端には弁体4が溶接により一体に固定されている。なお図中の黒半円や黒三角は溶接箇所を示している。大径部22の端部にはばね挿入孔24が穿設されている。このばね挿入孔24の底部は、ばね挿入孔24よりも小径に形成されたばね座り部25が形成されるとともに、段部のばね受け部26が形成されている。小径部23の端部には燃料通路孔27が形成されている。この燃料通路孔27はばね挿入孔24と連通している。小径部23の外周と燃料通路孔27とは貫通した燃料流出孔28が形成されている。
弁座部材7は、燃焼室側に燃料を噴射する燃料噴射孔29と、燃料噴射孔29を取り囲んで形成された略円錐状の弁座6と、弁座6より一端側に弁体4の径とほぼ同径に形成された弁体保持孔30と、一端開口側に向かうにつれて大径に形成された開口部31とが設けられている。
弁軸5および弁体4は、弁軸5のばね受け部26とばね受け20との間にコイルばね56が設けられるとともに、磁性筒体2に軸方向摺動可能に収装されている。弁座部材7は、弁座6に弁体4が座るように磁性筒体2に挿入され、磁性筒体2に溶接により固定されている。
弁座部材7の燃料噴射孔29開口側にはノズルプレート8が設けられ、このノズルプレート8は弁座部材7と溶接により固定されている。ノズルプレート8については後で詳述する。
磁性筒体2のコア筒体3の外周には電磁コイル9が挿嵌されている。すなわち、電磁コイル9はコア筒体3の外周に配置されることとなる。電磁コイル9は、樹脂材料により形成されたボビン32と、このボビン32に巻回されたコイル33とから構成されている。コイル33は、コネクタピン34を介して制御装置55に接続されている。制御装置55は、クランク角を検出するクランク角センサからの情報に基づいて計算した燃焼室側に燃料を噴射するタイミングに応じて、電磁コイル9のコイル33に通電して燃料噴射弁1を開弁させている。
【0010】
ヨーク10は中空の貫通孔を有し、一端開口側に形成された大径部35と、大径部35より小径に形成された中径部36と、中径部36より小径に形成され他端開口側に形成された小径部37から構成されている。小径部37は、弁部材収容部16の外周に嵌合されている。中径部36の内周には電磁コイル9が収装されている。大径部35の内周には連結コア38が配置されている。
連結コア38は磁性金属材料等により略C字状に形成されている。ヨーク10は、小径部37および連結コア38を介した大径部35において磁性筒体2と接続しており、すなわち電磁コイル9の両端部で磁性筒体2と磁気的に接続されていることとなる。ヨーク10の他端側先端には、Oリング40の保持と燃料噴射弁1のノズルプレート8側先端部を保護するためのアダプタ52が取り付けられている。
コネクタピン34を介して電磁コイル9に給電されると磁界が発生し、この磁界の磁力によって、弁体4および弁軸5をコイルばね56の付勢力に抗して開弁させる。
燃料噴射弁1の図1に示すように、磁性筒体2の大径部11の一端部を除いた部分、小径部12の電磁コイル9設置位置まで、電磁コイル9とヨーク10の中径部36との間、連結コア38の外周と大径部35との間、大径部35の外周、中径部36の外周、およびコネクタピン34の外周は樹脂カバー53により被服されている。コネクタピン34の先端部分は樹脂カバー53が開口して形成されており、コントロールユニットのコネクタがハーネスを介して差し込まれるようになっている。
磁性筒体2の一端部外周にはOリング39が、ヨーク10の小径部37の外周にはOリング40が設けられている。
【0011】
[ノズルプレートの構成]
図2は燃料噴射弁1のノズルプレート8付近の拡大断面図である。ノズルプレート8は、円盤状の中間プレート41とオリフィスプレート42の2枚から構成されている。一端側から順に中間プレート41、オリフィスプレート42が重ねられて、弁座部材7の溶接により固定されている。
中間プレート41には、一端側に開口する縦通路43と、他端側に開口するとともに縦通路43と連通する横通路44とが複数組み形成されている。オリフィスプレート42には、一端側から他端側に軸方向に斜めに貫通する第1貫通孔45と第2貫通孔46とが複数組み形成されている。中間プレート41とオリフィスプレート42を重ねた状態で、第1貫通孔45、第2貫通孔46の一端側開口部は、横通路44と連通されている。
縦通路43から横通路44を経由して第1貫通孔45を通る通路が第1噴射通路48を、縦通路43から横通路44を経由して第2貫通孔46を通る通路が第2噴射通路49を構成している。すなわち第1噴射通路48と第2噴射通路49の弁座部材7側の開口部は1つとなっている。また、第1噴射通路48の距離は、第2噴射通路49の距離よりも短く形成されている。
【0012】
図3は、中間プレート41とオリフィスプレート42を軸方向から見た図である。図3において太点線Bは弁座部材7の燃料噴射孔29の内径を示し、細点線Cは弁座部材7の弁座6の延長線A(図2参照)と中間プレート41の弁座部材7側表面が交わる位置を示している。また図3は、中間プレート41とオリフィスプレート42の中心付近を拡大したものである。
図3(a)は中間プレート41を一端側から見た図であり、図3(b)は中間プレート41を他端側から見た図である。図3(c)はオリフィスプレート42を一端側から見た図であり、図3(d)はオリフィスプレート42を他端側から見た図であり、図3(e)はオリフィスプレート42を一端側から見たときの透視図である。図3(f)は中間プレート41とオリフィスプレート42を一端側から見た透視図である。
図3(a)に示すように、縦通路43の開口部は細点線Cの内周側に形成されている。図3(b)に示すように、横通路44の開口部は太点線Bの外周側まで形成されている。
図3(c)に示すように、第2貫通孔の一端側開口部46aは太点線Bをはみ出して形成されている。また図3(d)に示すように、第1貫通孔45の他端側開口部45bと第2貫通孔46の他端側開口部46bは細点線Cの外周側に亘って形成されている。
また図2および図3(c)〜(e)に示すように、第1貫通孔45と第2貫通孔46は、一端側開口部45a,46aから他端側開口部45b,46bに向けて互いの軸線の幅が狭くなっており、第1貫通孔45の軸線と第2貫通孔46の軸線とが他端側で交わるように形成されている。また、第1貫通孔45と第2貫通孔46の軸線方向は、オリフィスプレート42の外周側に向くように形成されている。なお第1貫通孔45、第2貫通孔46は、第1貫通孔45と第2貫通孔46との間の中心線に対して、ほぼ対称に形成されている。
図3(f)に示すように、第1噴射通路48、第2噴射通路49は、細点線Cの内周側に形成された縦通路43から、細点線Cや太点線Bの外周側に亘って形成されている第1貫通孔45や第2貫通孔46へと連通するように形成されている。
上記のような構成により、第1噴射通路48や第2噴射通路49から噴射する燃料は、細点線C外側に発生する燃料の渦流を避け、点線C内側の安定した燃料を燃焼室側に噴射することができる。ノズルプレート8の作用の詳細については後述する。
[燃料ポンプの制御]
エンジンの冷機始動時には、燃料ポンプ47により燃料圧力を高く制御する。一方、エンジン始動後、安定してくると燃料圧力を低下させるように制御する。
【0013】
[作用]
次に実施例1の燃料噴射弁1の作用について説明する。
(燃料噴霧)
図4は液膜生成のイメージ図、図5は燃料噴霧のイメージ図である。
第1貫通孔45と第2貫通孔46の軸線は交わっているため、第1噴射通路48から噴射された燃料と第2噴射通路49から噴射された燃料とが衝突して液膜が生成される。この液膜が分裂して燃料が微細化し噴霧状態となって、燃料が吸気ポート内を漂うこととなる。これにより燃料の気化を促進することができ、特に低温始動時の窒素酸化物等の発生を低減することができる。
また第1貫通孔45と第2貫通孔46の軸線方向D1,D2はオリフィスプレート42の外周側に向いているため、燃料噴霧はオリフィスプレート42の外周側に広がることとなる。これにより、微細化した燃料同士が接合して肥大化することを防止することができる。
(燃料噴霧角度)
図6は燃料噴霧の拡散方向を示す図である。
第1噴射通路48の距離L1は、第2噴射通路49の距離L2よりも短く形成されている。すなわち、第1噴射通路48における燃料の圧力損失は、第2噴射通路49における圧力損失よりも小さいものとなる。そのため、第1噴射通路48から噴射される燃料の速度は、第2噴射通路49から噴射される燃料の速度よりも大きくなる。これにより、衝突後の燃料噴霧角度θは、第1貫通孔45の他端側開口部45bと第2貫通孔46の他端側開口部46bと間の中心線よりも第2噴射通路49側にずれることとなる。よって、第1噴射通路48、第2噴射通路49における燃料の圧力損失を調整することで、燃料噴霧角度を任意の方向に設定することができる。
【0014】
(燃料噴霧角度の可変化)
図7は第1噴射通路48と第2噴射通路49における圧力損失差ΔPを求めるための図である。
第1貫通孔45の径と第2貫通孔46の径、第1貫通孔45の長さと第2貫通孔46の長さはそれぞれ等しいとして計算する。第1噴射通48と第2噴射通路49における圧力損失差ΔPは、図7に示す長さL、断面積S(=幅×高さ)の通路の圧力損失よって発生する。圧力損失差ΔPは、次の式で求めることができる。
P=λ・(L/De)・(d/2)・U2
ここで、De等価径、Uは長さL、等価径Deの通路を流れる燃料の流量(燃料圧力によって変動)、dは燃料の密度、λは燃料密度dと等価径Deに関する定数である。
図8は燃料圧力と圧力損失との関係の概略図である。図8の太線は流路抵抗が高いときの燃料圧力に対する圧力損失、細線は流路抵抗が低いときの燃料圧力に対する圧力損失である。実施例1では第1噴射通路48は流路抵抗の小さい通路、第2噴射通路49は流路抵抗の大きい通路に相当する。
図8に示すように、燃料圧力が高いほど流路抵抗が小さい通路と大きい通路との圧力損失の差が大きくなっている。この燃料圧力は、燃料ポンプ47の吐出圧により制御することが可能である。
図9は燃料圧力の高低による燃料噴霧角度の変化を示す図である。図9では燃料の噴射速度をベクトルで表しており、燃料圧力が高いときの第1噴射通路48からの燃料噴射速度を矢印Dh、第2噴射通路49からの燃料噴射速度を矢印Ehで、燃料圧力が低いときの第1噴射通路48からの燃料噴射速度を矢印Dl、第2噴射通路49からの燃料噴射速度をElで示している。また燃料圧力が高いときの燃料噴霧角度を直線Fhで、燃料圧力が低いときの燃料噴霧角度を直線Flで示している。
図9に示すように、燃料圧力が高いときには、低いときに比べて燃料噴霧角度を大きくすることができる。また燃料圧力が高いときには、低いときに比べて燃料噴射距離を長くすることができる。
例えば実施例1の噴射弁では、エンジン冷機始動時には燃料圧力が高く制御され、エンジン暖機運転時は、燃料圧力が低く制御される。
図10は吸気ポート50内の燃料噴霧状態のイメージ図である。図10の実線は燃料圧力が高いときの燃料噴霧Gh、一点鎖線は燃料圧力が低いときの燃料噴霧Glを表している。燃料噴射弁1は、燃料圧力が高いとき(燃料噴霧Gh)には低いとき(燃料噴霧Gl)に比べて広角化するとともに、燃料噴射距離が長くなる。そのため燃料噴霧Ghは、吸気ポート50の壁側、吸気バルブ51側に広がることとなる。
よって、燃料ポンプ47による燃料圧力制御によって、燃料噴霧角度および燃料噴射距離を可変に制御することができる。
【0015】
(可変圧制御)
実施例1の燃料噴射弁1では、エンジンの冷機始動時において、燃料ポンプ47により燃料圧力を高く制御する場合には、燃料の衝突時の微細化を促進することができる一方、燃料噴射距離の長距離化(図9のFh)が進む。そのため吸気ポート50内面や吸気バルブ51に形成されるリキッドフィルム(付着燃料液層)が厚くなるおそれがある。しかし、図9に示す如く第1噴射通路からの燃料流れDhが第2噴射通路からの燃料流れEhより燃料圧力が高いため、燃料噴霧の広角化が図れ、リキッドフィルムの増加を抑制することができ、特に冷機始動時の炭化水素の低減を図ることができる。また衝突噴霧では、噴射距離を非衝突噴霧に比べて短縮できる特性があるため、高燃圧時でもリキッドフィルムの増加の抑制を図ることができる。
【0016】
(中間プレートの設置)
図3に示す細点線Cの外周側は弁座6の形状により渦流が発生し易い領域(渦流領域)である。渦流領域内では燃料圧力の制御が困難である上、領域の内と外では燃料圧力が異なる。つまり、第1噴射通路48および第2噴射通路49の弁部材15側開口部は、渦流領域を避けて設置することが望ましい。
実施例1では、縦通路43の開口部を図3(a)に示すように細点線Cの内周側に形成するようにした。これにより、第1噴射通路48、第2噴射通路49には安定した燃料圧力が作用することとなり、燃料噴霧角度の制御精度を向上させることができる。
中間プレート41を用いない場合、第1貫通孔45、第2貫通孔46の一端側開口部45a,46aが弁部材15側に開口することなる。しかしながら、1組の噴射通路48,49につき2つの開口部が形成されることとなり、渦流領域を避けて開口部を形成することが困難であった。更に実施例1の燃料噴射弁1では、第1貫通孔45、第2貫通孔46は、一端側開口部45a,46aから他端側開口部45b,46bに向けて互いの軸線の幅が狭くなるように形成されているため(図3(c)の軸線D1,D2)、一端側開口部45a,46a間の距離が長い。そのため、渦流領域を避けて開口部を形成することは更に困難であった。
実施例1の燃料噴射弁1では、ノズルプレート8の弁座部材7側の開口部を、1組の噴射通路48,49につき1つの縦通路43の開口部しか形成されないため、渦流領域を避けて開口部を形成することが容易となる。
【0017】
[効果]
次に実施例1の燃料噴射弁1の効果について以下に列記する。
(1)燃料を供給する燃料ポンプ47と、開弁時に燃料ポンプ47から供給された燃料を通過させる弁部材15と、弁部材15を通過した燃料を内燃機関の燃焼室側に噴射するノズルプレート8と、を備えた燃料噴射弁1において、燃料ポンプ47は、供給する燃料の圧力を可変にすることが可能な可変圧ポンプ47であって、ノズルプレート8は、燃料が弁部材15側から燃焼室側に通過する第1噴射通路48および第2噴射通路49を1組みとする複数組みの噴射通路48,49を有し、第1噴射通路48および第2噴射通路49の燃焼室側開口部(他端側開口部45b,46b)は、ぞれぞれの開口方向が燃焼室側で交わるとともに、燃料が第1噴射通路48を通過するときの圧力損失抵抗と、第2噴射通路49を通過するときの圧力損失抵抗とを異なるように形成した。
よって、燃料ポンプ47による燃料圧力制御によって、燃料噴霧角度および燃料噴射距離を可変に制御することができる。
(2)第1噴射通路48と第2噴射通路49の弁部材15側の開口部(縦通路43)を1つとした。
よって、ノズルプレート8上の渦流領域を避けて開口部を形成することが容易となる。
(3)第1噴射通路48と第2噴射通路49を、可変圧ポンプ47が供給する燃料の圧力が高いほど、燃料噴霧角度が大きくなるように形成した。
よって、燃料噴霧の広角化により吸気ポート50内面や吸気バルブ51に形成されるリキッドフィルムの増加を抑制することができ、特に冷機始動時の炭化水素の低減を図ることができる。
【0018】
〔実施例2〕
実施例2の燃料噴射弁1について説明する。実施例1と同じ構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
実施例1の燃料噴射弁1では、第1噴射通路48と第2噴射通路49を、燃料ポンプ47が供給する燃料の圧力が高いほど、燃料噴霧角度が大きくなるように形成していた。これに対して実施例2の燃料噴射弁1では、第1噴射通路48と第2噴射通路49を、燃料ポンプ47が供給する燃料の圧力が高いほど、燃料噴霧角度が小さくなるように形成した。
[ノズルプレートの構成]
図11は、ノズルプレート8の一部を拡大した図である。
縦通路43から横通路44を経由して第1貫通孔45を通る通路は第1噴射通路48を、縦通路43から横通路44を経由して第2貫通孔46を通る通路は第2噴射通路49を構成している。第1噴射通路48の距離は、第2噴射通路49の距離よりも長く形成されている。
第1貫通孔45と第2貫通孔46は、一端側開口部45a,46aから他端側開口部45b,46bに向けて互いの軸線の幅(D1,D2)が狭くなっており、第1貫通孔45の軸線と第2貫通孔46の軸線とが他端側で交わるように形成されている。また、第1貫通孔45と第2貫通孔46の軸線方向は、オリフィスプレート42の外周側に向くように形成されている。なお第1貫通孔45の軸方向は、第2貫通孔46の軸方向よりも大きな角度θをなして形成されている。
[燃料ポンプの制御]
エンジンの冷機始動時には、燃料ポンプ47により燃料圧力を低く制御する。一方、エンジン始動後、安定してくると燃料圧力を上昇させるように制御する。
【0019】
[作用]
次に実施例2の燃料噴射弁1の作用について説明する。
(燃料噴霧角度の可変化)
図12は燃料圧力の高低による燃料噴霧角度の変化を示す図である。図12では燃料の噴射速度をベクトルで表しており、燃料圧力が高いときの第1噴射通路48からの燃料噴射速度を矢印Hh、第2噴射通路49からの燃料噴射速度を矢印Jhで、燃料圧力が低いときの第1噴射通路48からの燃料噴射速度を矢印Hl、第2噴射通路49からの燃料噴射速度をJlで示している。また燃料圧力が高いときの燃料噴霧角度を直線Khで、燃料圧力が低いときの燃料噴霧角度を直線Klで示している。図12に示すように、燃料圧力が低いときには、高いときに比べて燃料噴霧角度を大きくすることができる。また燃料圧力が低いときには、高いときに比べて燃料噴射距離を短くすることができる。
よって、燃料ポンプ47による燃料圧力制御によって、燃料噴霧角度および燃料噴射距離を可変に制御することができる。
(可変圧制御)
実施例2の燃料噴射弁1では、エンジンの冷機始動時には、燃料ポンプ47により燃料圧力を低く制御するようにしている。燃料圧力が低くなると、燃料噴射距離を抑制することができるとともに、燃料噴霧を広角化することができる。そのため吸気ポート50内面や吸気バルブ51に形成されるリキッドフィルムの増加を抑制することができ、特に冷機始動時の炭化水素の低減を図ることができる。
【0020】
[効果]
次に実施例2の燃料噴射弁1の効果について以下に記載する。
(4)第1噴射通路48と第2噴射通路49を、燃料ポンプ47が供給する燃料の圧力が低いほど、燃料噴霧角度が大きくなるように形成した。
よって、燃料噴霧の広角化により吸気ポート50内面や吸気バルブ51に形成されるリキッドフィルムの増加を抑制することができ、特に冷機始動時の炭化水素の低減を図ることができる。
【0021】
〔実施例3〕
実施例3の燃料噴射弁1について説明する。実施例1,2と同じ構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
実施例1,2の燃料噴射弁1では、ノズルプレート8を中間プレート41とオリフィスプレート42から構成していた。これに対して実施例3の燃料噴射弁1では、ノズルプレート8をオリフィスプレート42のみから構成するようにした。
[ノズルプレートの構成]
図13は、ノズルプレート8の一部を拡大した図である。
オリフィスプレート42には、一端側から他端側に軸方向に斜めに貫通する第1貫通孔45と第2貫通孔46とが複数組み形成されている。第1貫通孔45の径は、第2貫通孔46の径よりも大きく形成されている。
実施例3では、第1貫通孔45を通る通路が第1噴射通路48を、第2貫通孔46を通る通路が第2噴射通路49を構成している。すなわち第1噴射通路48の径は、第2噴射通路49の径よりも大きく形成されている。
【0022】
[作用]
第1噴射通路48の径は、第2噴射通路49の径よりも大きく形成されている。すなわち、第1噴射通路48における燃料の圧力損失は、第2噴射通路49における圧力損失よりも小さいものとなる。そのため、第1噴射通路48から噴射される燃料の速度は、第2噴射通路49から噴射される燃料の速度よりも大きくなる。これにより、衝突後の燃料噴霧角度は、第1貫通孔45の他端側開口部45bと第2貫通孔46の他端側開口部46bと間の中心線よりも第2噴射通路49側にずれることとなる。よって、第1噴射通路48、第2噴射通路49における燃料の圧力損失を調整することで、燃料噴霧角度を任意の方向に設定することができる。
【0023】
[効果]
(5)第1噴射通路48の径は、第2噴射通路49の径よりも大きく形成した。
よって、第1噴射通路48、第2噴射通路49における燃料の圧力損失を調整することで、燃料噴霧角度を任意の方向に設定することができる。
【0024】
〔他の実施例〕
以上、本願発明を実施例1ないし実施例3に基づいて説明してきたが、各発明の具体的な構成は各実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
実施例1,2では第1噴射通路48と第2噴射通路49の長さを変え、実施例3では第1噴射通路48と第2噴射通路49の径の大きさを変えていた。これらの構成に限らず、第1噴射通路48と第2噴射通路49の一部にオリフィスを設ける、第1噴射通路48と第2噴射通路49の通路断面積を変える、または曲り形状を変えるようにしても良い。すなわち、燃料が第1噴射通路48を通過するときの圧力損失抵抗と、第2噴射通路49を通過するときの圧力損失抵抗とを異なるように形成していれば特に限定しない。
また、燃焼室側の開口位置によって第1噴射通路48と第2噴射通路49における圧力損失抵抗の差を変えるようにしても良い。
また図14の如く弁座部材7に縦通路43を形成する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 燃料噴射弁
8 ノズルプレート
15 弁部材
41 中間プレート
42 オリフィスプレート
47 可変圧ポンプ
48 第1噴射通路
49 第2噴射通路
54 ポンプ制御装置(ポンプ制御手段)
55 電磁コイル制御装置(電磁コイル制御手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの燃料噴射弁として用いられる燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、下記の特許文献1に記載の技術が開示されている。この公報には、2つの燃料噴射孔が互いに交差するように設定され、各孔から噴射された燃料を衝突させることで燃料の微粒化を図るものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−74440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンの状態に応じて、微粒化した燃料の噴霧の拡散角度や噴射距離を可変にすることでより良い燃焼の制御ができる。しかしながら上記従来技術では、燃料噴霧角度や燃料噴射距離を可変にすることができない問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、燃料噴霧角度や噴射距離を可変にすることができる燃料噴射弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明では、ポンプ制御手段によって内燃機関の状態に応じて供給する前記燃料の圧力を可変にする燃料ポンプと、燃料が弁部材側から燃焼室側に通過する第1噴射通路および第2噴射通路を1組みとする複数組みの噴射通路を有し、第1噴射通路および第2噴射通路の燃焼室側開口部は、ぞれぞれの開口方向が燃焼室側で交わるとともに、燃料が第1噴射通路を通過するときの圧力損失抵抗と、第2噴射通路を通過するときの圧力損失抵抗とを異なるように形成したノズルプレートとを設けた。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、燃料噴霧角度や噴射距離を可変にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1の燃料噴射弁の軸方向断面図である。
【図2】実施例1の燃料噴射弁のノズルプレート付近の拡大断面図である。
【図3】実施例1の中間プレートとオリフィスプレートを軸方向から見た図である。
【図4】実施例1の液膜生成のイメージ図である。
【図5】実施例1の燃料噴霧のイメージ図である。
【図6】実施例1の燃料噴霧の拡散方向を示す図である。
【図7】実施例1の第1噴射通路と第2噴射通路における圧力損失を求めるための図である。
【図8】実施例1の燃料圧力と圧力損失との関係の概略図である。
【図9】実施例1の燃料圧力の高低による燃料噴霧角度の変化を示す図である。
【図10】実施例1の吸気ポート内の燃料噴霧状態のイメージ図である。
【図11】実施例2のノズルプレートの一部を拡大した図である。
【図12】実施例2の燃料圧力の高低による燃料噴霧角度の変化を示す図である。
【図13】実施例3のノズルプレートの一部を拡大した図である。
【図14】他の実施例の燃料噴射弁のノズルプレート付近の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施例1〕
実施例1の燃料噴射弁1について説明する。
[燃料噴射弁の構成]
図1は燃料噴射弁1の軸方向断面図である。この燃料噴射弁1は、自動車用エンジン等に用いられるものである。
燃料噴射弁1は、磁性筒体2と、磁性筒体2内に収容されるコア筒体3と、軸方向に摺動可能な弁体4と、弁体4と一体に形成された弁軸5と、閉弁時に弁体4により閉鎖される弁座6を有する弁座部材7と、開弁時に燃料が噴射される噴射孔を有するノズルプレート8と、通電時に弁体4を開弁方向に摺動させる電磁コイル9と、磁束線を誘導するヨーク10とを有している。
磁性筒体2は、例えば電磁ステンレス鋼等の磁性金属材料により形成された金属パイプ等からなり、深絞り等のプレス加工、研削加工等の手段を用いることにより、図1に示すように段付き筒状をなして一体に形成されている。磁性筒体2は、一端側に形成された大径部11と、大径部11よりも小径であって他端側に形成された小径部12とを有している。
小径部12には、一部を薄肉化した薄肉部13が形成されている。小径部12は、薄肉部13より一端側にコア筒体3を収容するコア筒体収容部14と、薄肉部13より他端側に弁部材15(弁体4、弁軸5、弁座部材7)を収容する弁部材収容部16とに分けられている。薄肉部13は、後述するコア筒体3と弁軸5が磁性筒体2に収容された状態で、コア筒体3と弁軸5との間の隙間部分を取り囲むように形成されている。薄肉部13は、コア筒体収容部14と弁部材収容部16との間の磁気抵抗を増大させ、コア筒体収容部14と弁部材収容部16間を磁気的に遮断している。
大径部11は弁部材15に燃料を送る燃料通路17を構成しており、大径部11の一端部には燃料を濾過する燃料フィルタ18が設けられている。燃料通路17には燃料ポンプ47が接続されている。この燃料
ポンプ47は、ポンプ制御装置54により燃料噴射弁に要求される必要燃料量に応じて、燃料の吐出圧を可変に制御されている。 コア筒体3は、中空部19を有する円筒形に形成されており、磁性筒体2のコア筒体収容部14に圧入等により固定されている。中空部19には、圧入等の手段により固定されたばね受20が収容されている。
【0009】
弁体4の外形は略球体状に形成されており、周上に燃料噴射弁1の軸方向に対して並行に削られた燃料通路面21を有している。弁軸5は大径部22と、外形が大径部22より小径に形成された小径部23とを有している。
小径部23の先端には弁体4が溶接により一体に固定されている。なお図中の黒半円や黒三角は溶接箇所を示している。大径部22の端部にはばね挿入孔24が穿設されている。このばね挿入孔24の底部は、ばね挿入孔24よりも小径に形成されたばね座り部25が形成されるとともに、段部のばね受け部26が形成されている。小径部23の端部には燃料通路孔27が形成されている。この燃料通路孔27はばね挿入孔24と連通している。小径部23の外周と燃料通路孔27とは貫通した燃料流出孔28が形成されている。
弁座部材7は、燃焼室側に燃料を噴射する燃料噴射孔29と、燃料噴射孔29を取り囲んで形成された略円錐状の弁座6と、弁座6より一端側に弁体4の径とほぼ同径に形成された弁体保持孔30と、一端開口側に向かうにつれて大径に形成された開口部31とが設けられている。
弁軸5および弁体4は、弁軸5のばね受け部26とばね受け20との間にコイルばね56が設けられるとともに、磁性筒体2に軸方向摺動可能に収装されている。弁座部材7は、弁座6に弁体4が座るように磁性筒体2に挿入され、磁性筒体2に溶接により固定されている。
弁座部材7の燃料噴射孔29開口側にはノズルプレート8が設けられ、このノズルプレート8は弁座部材7と溶接により固定されている。ノズルプレート8については後で詳述する。
磁性筒体2のコア筒体3の外周には電磁コイル9が挿嵌されている。すなわち、電磁コイル9はコア筒体3の外周に配置されることとなる。電磁コイル9は、樹脂材料により形成されたボビン32と、このボビン32に巻回されたコイル33とから構成されている。コイル33は、コネクタピン34を介して制御装置55に接続されている。制御装置55は、クランク角を検出するクランク角センサからの情報に基づいて計算した燃焼室側に燃料を噴射するタイミングに応じて、電磁コイル9のコイル33に通電して燃料噴射弁1を開弁させている。
【0010】
ヨーク10は中空の貫通孔を有し、一端開口側に形成された大径部35と、大径部35より小径に形成された中径部36と、中径部36より小径に形成され他端開口側に形成された小径部37から構成されている。小径部37は、弁部材収容部16の外周に嵌合されている。中径部36の内周には電磁コイル9が収装されている。大径部35の内周には連結コア38が配置されている。
連結コア38は磁性金属材料等により略C字状に形成されている。ヨーク10は、小径部37および連結コア38を介した大径部35において磁性筒体2と接続しており、すなわち電磁コイル9の両端部で磁性筒体2と磁気的に接続されていることとなる。ヨーク10の他端側先端には、Oリング40の保持と燃料噴射弁1のノズルプレート8側先端部を保護するためのアダプタ52が取り付けられている。
コネクタピン34を介して電磁コイル9に給電されると磁界が発生し、この磁界の磁力によって、弁体4および弁軸5をコイルばね56の付勢力に抗して開弁させる。
燃料噴射弁1の図1に示すように、磁性筒体2の大径部11の一端部を除いた部分、小径部12の電磁コイル9設置位置まで、電磁コイル9とヨーク10の中径部36との間、連結コア38の外周と大径部35との間、大径部35の外周、中径部36の外周、およびコネクタピン34の外周は樹脂カバー53により被服されている。コネクタピン34の先端部分は樹脂カバー53が開口して形成されており、コントロールユニットのコネクタがハーネスを介して差し込まれるようになっている。
磁性筒体2の一端部外周にはOリング39が、ヨーク10の小径部37の外周にはOリング40が設けられている。
【0011】
[ノズルプレートの構成]
図2は燃料噴射弁1のノズルプレート8付近の拡大断面図である。ノズルプレート8は、円盤状の中間プレート41とオリフィスプレート42の2枚から構成されている。一端側から順に中間プレート41、オリフィスプレート42が重ねられて、弁座部材7の溶接により固定されている。
中間プレート41には、一端側に開口する縦通路43と、他端側に開口するとともに縦通路43と連通する横通路44とが複数組み形成されている。オリフィスプレート42には、一端側から他端側に軸方向に斜めに貫通する第1貫通孔45と第2貫通孔46とが複数組み形成されている。中間プレート41とオリフィスプレート42を重ねた状態で、第1貫通孔45、第2貫通孔46の一端側開口部は、横通路44と連通されている。
縦通路43から横通路44を経由して第1貫通孔45を通る通路が第1噴射通路48を、縦通路43から横通路44を経由して第2貫通孔46を通る通路が第2噴射通路49を構成している。すなわち第1噴射通路48と第2噴射通路49の弁座部材7側の開口部は1つとなっている。また、第1噴射通路48の距離は、第2噴射通路49の距離よりも短く形成されている。
【0012】
図3は、中間プレート41とオリフィスプレート42を軸方向から見た図である。図3において太点線Bは弁座部材7の燃料噴射孔29の内径を示し、細点線Cは弁座部材7の弁座6の延長線A(図2参照)と中間プレート41の弁座部材7側表面が交わる位置を示している。また図3は、中間プレート41とオリフィスプレート42の中心付近を拡大したものである。
図3(a)は中間プレート41を一端側から見た図であり、図3(b)は中間プレート41を他端側から見た図である。図3(c)はオリフィスプレート42を一端側から見た図であり、図3(d)はオリフィスプレート42を他端側から見た図であり、図3(e)はオリフィスプレート42を一端側から見たときの透視図である。図3(f)は中間プレート41とオリフィスプレート42を一端側から見た透視図である。
図3(a)に示すように、縦通路43の開口部は細点線Cの内周側に形成されている。図3(b)に示すように、横通路44の開口部は太点線Bの外周側まで形成されている。
図3(c)に示すように、第2貫通孔の一端側開口部46aは太点線Bをはみ出して形成されている。また図3(d)に示すように、第1貫通孔45の他端側開口部45bと第2貫通孔46の他端側開口部46bは細点線Cの外周側に亘って形成されている。
また図2および図3(c)〜(e)に示すように、第1貫通孔45と第2貫通孔46は、一端側開口部45a,46aから他端側開口部45b,46bに向けて互いの軸線の幅が狭くなっており、第1貫通孔45の軸線と第2貫通孔46の軸線とが他端側で交わるように形成されている。また、第1貫通孔45と第2貫通孔46の軸線方向は、オリフィスプレート42の外周側に向くように形成されている。なお第1貫通孔45、第2貫通孔46は、第1貫通孔45と第2貫通孔46との間の中心線に対して、ほぼ対称に形成されている。
図3(f)に示すように、第1噴射通路48、第2噴射通路49は、細点線Cの内周側に形成された縦通路43から、細点線Cや太点線Bの外周側に亘って形成されている第1貫通孔45や第2貫通孔46へと連通するように形成されている。
上記のような構成により、第1噴射通路48や第2噴射通路49から噴射する燃料は、細点線C外側に発生する燃料の渦流を避け、点線C内側の安定した燃料を燃焼室側に噴射することができる。ノズルプレート8の作用の詳細については後述する。
[燃料ポンプの制御]
エンジンの冷機始動時には、燃料ポンプ47により燃料圧力を高く制御する。一方、エンジン始動後、安定してくると燃料圧力を低下させるように制御する。
【0013】
[作用]
次に実施例1の燃料噴射弁1の作用について説明する。
(燃料噴霧)
図4は液膜生成のイメージ図、図5は燃料噴霧のイメージ図である。
第1貫通孔45と第2貫通孔46の軸線は交わっているため、第1噴射通路48から噴射された燃料と第2噴射通路49から噴射された燃料とが衝突して液膜が生成される。この液膜が分裂して燃料が微細化し噴霧状態となって、燃料が吸気ポート内を漂うこととなる。これにより燃料の気化を促進することができ、特に低温始動時の窒素酸化物等の発生を低減することができる。
また第1貫通孔45と第2貫通孔46の軸線方向D1,D2はオリフィスプレート42の外周側に向いているため、燃料噴霧はオリフィスプレート42の外周側に広がることとなる。これにより、微細化した燃料同士が接合して肥大化することを防止することができる。
(燃料噴霧角度)
図6は燃料噴霧の拡散方向を示す図である。
第1噴射通路48の距離L1は、第2噴射通路49の距離L2よりも短く形成されている。すなわち、第1噴射通路48における燃料の圧力損失は、第2噴射通路49における圧力損失よりも小さいものとなる。そのため、第1噴射通路48から噴射される燃料の速度は、第2噴射通路49から噴射される燃料の速度よりも大きくなる。これにより、衝突後の燃料噴霧角度θは、第1貫通孔45の他端側開口部45bと第2貫通孔46の他端側開口部46bと間の中心線よりも第2噴射通路49側にずれることとなる。よって、第1噴射通路48、第2噴射通路49における燃料の圧力損失を調整することで、燃料噴霧角度を任意の方向に設定することができる。
【0014】
(燃料噴霧角度の可変化)
図7は第1噴射通路48と第2噴射通路49における圧力損失差ΔPを求めるための図である。
第1貫通孔45の径と第2貫通孔46の径、第1貫通孔45の長さと第2貫通孔46の長さはそれぞれ等しいとして計算する。第1噴射通48と第2噴射通路49における圧力損失差ΔPは、図7に示す長さL、断面積S(=幅×高さ)の通路の圧力損失よって発生する。圧力損失差ΔPは、次の式で求めることができる。
P=λ・(L/De)・(d/2)・U2
ここで、De等価径、Uは長さL、等価径Deの通路を流れる燃料の流量(燃料圧力によって変動)、dは燃料の密度、λは燃料密度dと等価径Deに関する定数である。
図8は燃料圧力と圧力損失との関係の概略図である。図8の太線は流路抵抗が高いときの燃料圧力に対する圧力損失、細線は流路抵抗が低いときの燃料圧力に対する圧力損失である。実施例1では第1噴射通路48は流路抵抗の小さい通路、第2噴射通路49は流路抵抗の大きい通路に相当する。
図8に示すように、燃料圧力が高いほど流路抵抗が小さい通路と大きい通路との圧力損失の差が大きくなっている。この燃料圧力は、燃料ポンプ47の吐出圧により制御することが可能である。
図9は燃料圧力の高低による燃料噴霧角度の変化を示す図である。図9では燃料の噴射速度をベクトルで表しており、燃料圧力が高いときの第1噴射通路48からの燃料噴射速度を矢印Dh、第2噴射通路49からの燃料噴射速度を矢印Ehで、燃料圧力が低いときの第1噴射通路48からの燃料噴射速度を矢印Dl、第2噴射通路49からの燃料噴射速度をElで示している。また燃料圧力が高いときの燃料噴霧角度を直線Fhで、燃料圧力が低いときの燃料噴霧角度を直線Flで示している。
図9に示すように、燃料圧力が高いときには、低いときに比べて燃料噴霧角度を大きくすることができる。また燃料圧力が高いときには、低いときに比べて燃料噴射距離を長くすることができる。
例えば実施例1の噴射弁では、エンジン冷機始動時には燃料圧力が高く制御され、エンジン暖機運転時は、燃料圧力が低く制御される。
図10は吸気ポート50内の燃料噴霧状態のイメージ図である。図10の実線は燃料圧力が高いときの燃料噴霧Gh、一点鎖線は燃料圧力が低いときの燃料噴霧Glを表している。燃料噴射弁1は、燃料圧力が高いとき(燃料噴霧Gh)には低いとき(燃料噴霧Gl)に比べて広角化するとともに、燃料噴射距離が長くなる。そのため燃料噴霧Ghは、吸気ポート50の壁側、吸気バルブ51側に広がることとなる。
よって、燃料ポンプ47による燃料圧力制御によって、燃料噴霧角度および燃料噴射距離を可変に制御することができる。
【0015】
(可変圧制御)
実施例1の燃料噴射弁1では、エンジンの冷機始動時において、燃料ポンプ47により燃料圧力を高く制御する場合には、燃料の衝突時の微細化を促進することができる一方、燃料噴射距離の長距離化(図9のFh)が進む。そのため吸気ポート50内面や吸気バルブ51に形成されるリキッドフィルム(付着燃料液層)が厚くなるおそれがある。しかし、図9に示す如く第1噴射通路からの燃料流れDhが第2噴射通路からの燃料流れEhより燃料圧力が高いため、燃料噴霧の広角化が図れ、リキッドフィルムの増加を抑制することができ、特に冷機始動時の炭化水素の低減を図ることができる。また衝突噴霧では、噴射距離を非衝突噴霧に比べて短縮できる特性があるため、高燃圧時でもリキッドフィルムの増加の抑制を図ることができる。
【0016】
(中間プレートの設置)
図3に示す細点線Cの外周側は弁座6の形状により渦流が発生し易い領域(渦流領域)である。渦流領域内では燃料圧力の制御が困難である上、領域の内と外では燃料圧力が異なる。つまり、第1噴射通路48および第2噴射通路49の弁部材15側開口部は、渦流領域を避けて設置することが望ましい。
実施例1では、縦通路43の開口部を図3(a)に示すように細点線Cの内周側に形成するようにした。これにより、第1噴射通路48、第2噴射通路49には安定した燃料圧力が作用することとなり、燃料噴霧角度の制御精度を向上させることができる。
中間プレート41を用いない場合、第1貫通孔45、第2貫通孔46の一端側開口部45a,46aが弁部材15側に開口することなる。しかしながら、1組の噴射通路48,49につき2つの開口部が形成されることとなり、渦流領域を避けて開口部を形成することが困難であった。更に実施例1の燃料噴射弁1では、第1貫通孔45、第2貫通孔46は、一端側開口部45a,46aから他端側開口部45b,46bに向けて互いの軸線の幅が狭くなるように形成されているため(図3(c)の軸線D1,D2)、一端側開口部45a,46a間の距離が長い。そのため、渦流領域を避けて開口部を形成することは更に困難であった。
実施例1の燃料噴射弁1では、ノズルプレート8の弁座部材7側の開口部を、1組の噴射通路48,49につき1つの縦通路43の開口部しか形成されないため、渦流領域を避けて開口部を形成することが容易となる。
【0017】
[効果]
次に実施例1の燃料噴射弁1の効果について以下に列記する。
(1)燃料を供給する燃料ポンプ47と、開弁時に燃料ポンプ47から供給された燃料を通過させる弁部材15と、弁部材15を通過した燃料を内燃機関の燃焼室側に噴射するノズルプレート8と、を備えた燃料噴射弁1において、燃料ポンプ47は、供給する燃料の圧力を可変にすることが可能な可変圧ポンプ47であって、ノズルプレート8は、燃料が弁部材15側から燃焼室側に通過する第1噴射通路48および第2噴射通路49を1組みとする複数組みの噴射通路48,49を有し、第1噴射通路48および第2噴射通路49の燃焼室側開口部(他端側開口部45b,46b)は、ぞれぞれの開口方向が燃焼室側で交わるとともに、燃料が第1噴射通路48を通過するときの圧力損失抵抗と、第2噴射通路49を通過するときの圧力損失抵抗とを異なるように形成した。
よって、燃料ポンプ47による燃料圧力制御によって、燃料噴霧角度および燃料噴射距離を可変に制御することができる。
(2)第1噴射通路48と第2噴射通路49の弁部材15側の開口部(縦通路43)を1つとした。
よって、ノズルプレート8上の渦流領域を避けて開口部を形成することが容易となる。
(3)第1噴射通路48と第2噴射通路49を、可変圧ポンプ47が供給する燃料の圧力が高いほど、燃料噴霧角度が大きくなるように形成した。
よって、燃料噴霧の広角化により吸気ポート50内面や吸気バルブ51に形成されるリキッドフィルムの増加を抑制することができ、特に冷機始動時の炭化水素の低減を図ることができる。
【0018】
〔実施例2〕
実施例2の燃料噴射弁1について説明する。実施例1と同じ構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
実施例1の燃料噴射弁1では、第1噴射通路48と第2噴射通路49を、燃料ポンプ47が供給する燃料の圧力が高いほど、燃料噴霧角度が大きくなるように形成していた。これに対して実施例2の燃料噴射弁1では、第1噴射通路48と第2噴射通路49を、燃料ポンプ47が供給する燃料の圧力が高いほど、燃料噴霧角度が小さくなるように形成した。
[ノズルプレートの構成]
図11は、ノズルプレート8の一部を拡大した図である。
縦通路43から横通路44を経由して第1貫通孔45を通る通路は第1噴射通路48を、縦通路43から横通路44を経由して第2貫通孔46を通る通路は第2噴射通路49を構成している。第1噴射通路48の距離は、第2噴射通路49の距離よりも長く形成されている。
第1貫通孔45と第2貫通孔46は、一端側開口部45a,46aから他端側開口部45b,46bに向けて互いの軸線の幅(D1,D2)が狭くなっており、第1貫通孔45の軸線と第2貫通孔46の軸線とが他端側で交わるように形成されている。また、第1貫通孔45と第2貫通孔46の軸線方向は、オリフィスプレート42の外周側に向くように形成されている。なお第1貫通孔45の軸方向は、第2貫通孔46の軸方向よりも大きな角度θをなして形成されている。
[燃料ポンプの制御]
エンジンの冷機始動時には、燃料ポンプ47により燃料圧力を低く制御する。一方、エンジン始動後、安定してくると燃料圧力を上昇させるように制御する。
【0019】
[作用]
次に実施例2の燃料噴射弁1の作用について説明する。
(燃料噴霧角度の可変化)
図12は燃料圧力の高低による燃料噴霧角度の変化を示す図である。図12では燃料の噴射速度をベクトルで表しており、燃料圧力が高いときの第1噴射通路48からの燃料噴射速度を矢印Hh、第2噴射通路49からの燃料噴射速度を矢印Jhで、燃料圧力が低いときの第1噴射通路48からの燃料噴射速度を矢印Hl、第2噴射通路49からの燃料噴射速度をJlで示している。また燃料圧力が高いときの燃料噴霧角度を直線Khで、燃料圧力が低いときの燃料噴霧角度を直線Klで示している。図12に示すように、燃料圧力が低いときには、高いときに比べて燃料噴霧角度を大きくすることができる。また燃料圧力が低いときには、高いときに比べて燃料噴射距離を短くすることができる。
よって、燃料ポンプ47による燃料圧力制御によって、燃料噴霧角度および燃料噴射距離を可変に制御することができる。
(可変圧制御)
実施例2の燃料噴射弁1では、エンジンの冷機始動時には、燃料ポンプ47により燃料圧力を低く制御するようにしている。燃料圧力が低くなると、燃料噴射距離を抑制することができるとともに、燃料噴霧を広角化することができる。そのため吸気ポート50内面や吸気バルブ51に形成されるリキッドフィルムの増加を抑制することができ、特に冷機始動時の炭化水素の低減を図ることができる。
【0020】
[効果]
次に実施例2の燃料噴射弁1の効果について以下に記載する。
(4)第1噴射通路48と第2噴射通路49を、燃料ポンプ47が供給する燃料の圧力が低いほど、燃料噴霧角度が大きくなるように形成した。
よって、燃料噴霧の広角化により吸気ポート50内面や吸気バルブ51に形成されるリキッドフィルムの増加を抑制することができ、特に冷機始動時の炭化水素の低減を図ることができる。
【0021】
〔実施例3〕
実施例3の燃料噴射弁1について説明する。実施例1,2と同じ構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
実施例1,2の燃料噴射弁1では、ノズルプレート8を中間プレート41とオリフィスプレート42から構成していた。これに対して実施例3の燃料噴射弁1では、ノズルプレート8をオリフィスプレート42のみから構成するようにした。
[ノズルプレートの構成]
図13は、ノズルプレート8の一部を拡大した図である。
オリフィスプレート42には、一端側から他端側に軸方向に斜めに貫通する第1貫通孔45と第2貫通孔46とが複数組み形成されている。第1貫通孔45の径は、第2貫通孔46の径よりも大きく形成されている。
実施例3では、第1貫通孔45を通る通路が第1噴射通路48を、第2貫通孔46を通る通路が第2噴射通路49を構成している。すなわち第1噴射通路48の径は、第2噴射通路49の径よりも大きく形成されている。
【0022】
[作用]
第1噴射通路48の径は、第2噴射通路49の径よりも大きく形成されている。すなわち、第1噴射通路48における燃料の圧力損失は、第2噴射通路49における圧力損失よりも小さいものとなる。そのため、第1噴射通路48から噴射される燃料の速度は、第2噴射通路49から噴射される燃料の速度よりも大きくなる。これにより、衝突後の燃料噴霧角度は、第1貫通孔45の他端側開口部45bと第2貫通孔46の他端側開口部46bと間の中心線よりも第2噴射通路49側にずれることとなる。よって、第1噴射通路48、第2噴射通路49における燃料の圧力損失を調整することで、燃料噴霧角度を任意の方向に設定することができる。
【0023】
[効果]
(5)第1噴射通路48の径は、第2噴射通路49の径よりも大きく形成した。
よって、第1噴射通路48、第2噴射通路49における燃料の圧力損失を調整することで、燃料噴霧角度を任意の方向に設定することができる。
【0024】
〔他の実施例〕
以上、本願発明を実施例1ないし実施例3に基づいて説明してきたが、各発明の具体的な構成は各実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
実施例1,2では第1噴射通路48と第2噴射通路49の長さを変え、実施例3では第1噴射通路48と第2噴射通路49の径の大きさを変えていた。これらの構成に限らず、第1噴射通路48と第2噴射通路49の一部にオリフィスを設ける、第1噴射通路48と第2噴射通路49の通路断面積を変える、または曲り形状を変えるようにしても良い。すなわち、燃料が第1噴射通路48を通過するときの圧力損失抵抗と、第2噴射通路49を通過するときの圧力損失抵抗とを異なるように形成していれば特に限定しない。
また、燃焼室側の開口位置によって第1噴射通路48と第2噴射通路49における圧力損失抵抗の差を変えるようにしても良い。
また図14の如く弁座部材7に縦通路43を形成する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 燃料噴射弁
8 ノズルプレート
15 弁部材
41 中間プレート
42 オリフィスプレート
47 可変圧ポンプ
48 第1噴射通路
49 第2噴射通路
54 ポンプ制御装置(ポンプ制御手段)
55 電磁コイル制御装置(電磁コイル制御手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を供給するポンプと、
前記ポンプを制御するポンプ制御手段と、
電磁コイルの電磁力によって開弁し、開弁時に前記ポンプから供給された前記燃料を通過させる弁部材と、
前記電磁コイルを制御する電磁コイル制御手段と、
前記弁部材を通過した前記燃料を内燃機関の燃焼室側に噴射するノズルプレートと、
を備えた燃料噴射弁において、
前記ポンプは、前記ポンプ制御手段によって前記内燃機関の状態に応じて供給する前記燃料の圧力を可変にする燃料ポンプであって、
前記ノズルプレートおよび/または前記弁部材は、前記燃料が前記弁部材から前記燃焼室側に通過する第1噴射通路および第2噴射通路を1組みとする複数組みの噴射通路を有し、
前記第1噴射通路および前記第2噴射通路の燃焼室側開口部は、ぞれぞれの開口方向が燃焼室側で交わるとともに、前記燃料が前記第1噴射通路を通過するときの圧力損失抵抗と、前記第2噴射通路を通過するときの圧力損失抵抗とを異なるように形成したことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射弁において、
前記第1噴射通路と前記第2噴射通路の前記弁部材側の開口部を1つとしたことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料噴射弁において、
前記第1噴射通路と前記第2噴射通路を、前記燃料ポンプが供給する燃料の圧力が高いほど、燃料噴霧角度が大きくなるように形成したことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の燃料噴射弁において、
前記第1噴射通路と前記第2噴射通路を、前記燃料ポンプが供給する燃料の圧力が低いほど、燃料噴霧角度が大きくなるように形成したことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項1】
燃料を供給するポンプと、
前記ポンプを制御するポンプ制御手段と、
電磁コイルの電磁力によって開弁し、開弁時に前記ポンプから供給された前記燃料を通過させる弁部材と、
前記電磁コイルを制御する電磁コイル制御手段と、
前記弁部材を通過した前記燃料を内燃機関の燃焼室側に噴射するノズルプレートと、
を備えた燃料噴射弁において、
前記ポンプは、前記ポンプ制御手段によって前記内燃機関の状態に応じて供給する前記燃料の圧力を可変にする燃料ポンプであって、
前記ノズルプレートおよび/または前記弁部材は、前記燃料が前記弁部材から前記燃焼室側に通過する第1噴射通路および第2噴射通路を1組みとする複数組みの噴射通路を有し、
前記第1噴射通路および前記第2噴射通路の燃焼室側開口部は、ぞれぞれの開口方向が燃焼室側で交わるとともに、前記燃料が前記第1噴射通路を通過するときの圧力損失抵抗と、前記第2噴射通路を通過するときの圧力損失抵抗とを異なるように形成したことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射弁において、
前記第1噴射通路と前記第2噴射通路の前記弁部材側の開口部を1つとしたことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料噴射弁において、
前記第1噴射通路と前記第2噴射通路を、前記燃料ポンプが供給する燃料の圧力が高いほど、燃料噴霧角度が大きくなるように形成したことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の燃料噴射弁において、
前記第1噴射通路と前記第2噴射通路を、前記燃料ポンプが供給する燃料の圧力が低いほど、燃料噴霧角度が大きくなるように形成したことを特徴とする燃料噴射弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図5】
【公開番号】特開2011−196326(P2011−196326A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66538(P2010−66538)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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