説明

燃料性状検出装置

【課題】燃料中に含まれる気泡が、燃料性状検出用の測定通路内に流入することを阻止して高い燃料性状検出精度を維持可能な燃料性状検出装置を提供する。
【解決手段】バイパス通路23を3個設けるとともに、測定通路22を、燃料の流動方向と直交する方向の断面において、互いに隣接するバイパス通路23の共通接線とそれに接続するバイパス通路23の輪郭線の一部とにより形成される閉輪郭線Cの内側に配置している。これにより、燃料性状センサ1の姿勢が燃料流動方向を軸として回転することがあっても、燃料中に含まれる気泡が測定通路22内に流入することを確実に阻止して、高い燃料性状検出精度を維持可能な燃料性状センサ1を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料中に照射された測定光の液体中の透過光量に基づいて燃料の性状を検出する、いわゆる光学式の燃料性状検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料性状検出装置として、たとえば、燃料中に発光ダイオードが発する光を照射し、燃料中を透過した透過光量をフォトダイオードにより検出し、検出した透過光量に基づいて、燃料性状、たとえばガソリンに含まれるエタノール濃度を検出する構成としたものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−133886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
燃料の温度上昇、圧力変動等により、配管内を流れる燃料中に気泡が発生することがある。この気泡が、燃料性状検出装置の測定通路内に流入し、測定通路の壁面、特に測定光が燃料中に出射される出射窓および燃料中を透過した測定光が受光素子へ入射するための受光窓の少なくとも一方に付着することがある。上述した部位に気泡が付着すると、燃料と気泡との界面で測定光が屈折するため、燃料性状が変化せずに一定であっても、受光素子に入射する透過光量が変化してしまい、その結果、燃料性状検出精度が低下するという問題が発生する。
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたもので、その目的は、燃料中に含まれる気泡が、燃料性状検出用の測定通路内に流入することを阻止する、あるいは気泡が測定通路内に流入しても測定通路壁面に気泡が付着しにくくすることにより、高い燃料性状検出精度を維持可能な燃料性状検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成する為、以下の技術的手段を採用する。
【0006】
本発明の請求項1に記載の燃料性状検出装置は、燃料が流れる配管途中に設置されて配管内を流れる燃料の性状を検出する燃料性状検出装置であって、配管に接続するための接続部を両端に備えたハウジングと、その内部に燃料が流動可能且つ両接続部に連通するようにハウジングに形成された測定通路と、測定通路内へ測定光を照射可能にハウジングに取付けられた発光部と、測定通路を透過した測定光を受光可能にハウジングに取付けられた受光部と、その内部に燃料が流動可能に両接続部に開口する貫通孔としてハウジングに形成されたバイパス通路とを備え、ハウジングが配管に取付けられ状態では、測定通路の燃料の流動方向と直交する方向のハウジングの断面においてバイパス通路は測定通路よりも鉛直方向上方に位置することを特徴としている。
【0007】
燃料性状検出装置が配管に取付けられた状態では、測定通路の燃料の流動方向と直交する方向のハウジングの断面においてバイパス通路は測定通路よりも鉛直方向上方に位置することから、燃料性状検出装置の上流側接続部において、バイパス通路の入口は測定通路の入口よりも鉛直方向上方に位置している。
【0008】
一方、燃料の温度上昇、圧力変動等により、配管内を流れる燃料中に気泡が発生することがある。この気泡は燃料に比べて比重量が小さいので、配管内の鉛直方向上方に移動して燃料とともに流れ、やがて燃料性状検出装置へ到達し、燃料性状検出装置へ流入する。ここで、上述したように、燃料性状検出装置の入口において、バイパス通路の入口は測定通路の入口よりも鉛直方向上方に位置している。したがって、気泡を含む燃料はバイパス通路へ流入し、測定通路内へは気泡を含まない燃料が流入する。これにより、燃料中の気泡が測定通路の壁面、特に測定光が燃料中に出射される出射窓および燃料中を透過した測定光が受光素子へ入射するための受光窓の少なくとも一方に付着して、燃料性状検出精度が低下することを防止することができる。
【0009】
以上により、燃料中に含まれる気泡が、燃料性状検出用の測定通路内に流入することを阻止して高い燃料性状検出精度を維持可能な燃料性状検出装置を提供することができる。

本発明の請求項2に記載の燃料性状検出装置は、バイパス通路を複数個備えたことを特徴としている。
【0010】
上述の構成によれば、燃料性状検出装置が配管に取付けられた状態で、燃料性状検出装置の上流側接続部においていずれかのバイパス通路が、必ずその入口が測定通路の入口よりも鉛直方向上方に位置していることになる。したがって、気泡を含む燃料が測定通路内へ流入することを確実に阻止することができる。
【0011】
この場合、本発明の請求項3に記載の燃料性状検出装置のように、測定通路における燃料の流動方向と直交する方向のハウジングの断面において測定通路は互いに隣接するバイパス通路の共通接線とそれに接続するバイパス通路の輪郭線の一部とにより形成される閉輪郭線の内側にあることを特徴としてもよい。このような構成によれば、配管に対する燃料性状センサの取付け姿勢、すなわち燃料性状センサが測定通路における燃料の流動方向を軸としたときの回転角度位置がどのようであっても、測定通路の燃料の流動方向と直交する方向のハウジングの断面において、いずれかのバイパス通路が必ず測定通路よりも鉛直方向上方にある。これにより、配管内の上方を漂いながら燃料とともに流れて燃料性状センサに到達した気泡は必ずバイパス通路に流入する。したがって、気泡を含む燃料が測定通路内へ流入することを確実に阻止して高い燃料性状検出精度を維持可能な燃料性状検出装置を提供することができる。
【0012】
本発明の請求項4に記載の燃料性状検出装置は、バイパス通路を3個以上備え、測定通路の燃料の流動方向と直交する方向のハウジングの断面において測定通路はバイパス通路の図心を頂点として形成される多角形の内側にあることを特徴としている。
【0013】
上述の構成において、たとえば、バイパス通路が3個形成されている場合、測定通路の燃料の流動方向と直交する方向のハウジングの断面において、各バイパス通路の図心を頂点とする多角形は三角形となる。ここで、2つのバイパス通路の図心を結ぶ線分が水平且つ測定通路の断面の輪郭線が上述の線分に内接している状態を考える。これは、バイパス通路と測定通路との鉛直方向の高低差が最小となるケースである。この場合においても、上述した線分の両端にあるバイパス通路の輪郭線の一部、詳しくは輪郭線の各図心よりも鉛直方向上方にある部分は、当然測定通路よりも鉛直方向上方にある。したがって、この場合においても、燃料とともに流れて燃料性状センサ1へ到達した気泡を、測定通路よりも上方にあるバイパス通路に流入させて、測定通路内に気泡が流入することを確実に阻止できる。ハウジングの配管に対する相対位置が上述した状態から変化すれば、バイパス通路と測定通路との鉛直方向の高低差は増大するので、燃料とともに流れて燃料性状センサ1へ到達した気泡を、より確実にバイパス通路に流入させることがでえきるので、測定通路内に気泡が流入することを確実に阻止できる。バイパス通路が3個の場合は、以上説明したとおりであるが、バイパス通路が4個の場合は、各バイパス通路の図心を頂点とする多角形は四角形となり、バイパス通路が5個の場合、多角形は五角形となる。いずれの場合においても、測定通路をこの多角形の内側に配置することにより、燃料性状検出装置のハウジングの配管に対する相対位置が測定通路の軸方向、すなわち燃料の流動方向を軸として如何様に回転しても、少なくとも1個のバイパス通路を必ず測定通路よりも鉛直方向上方に位置させることができるので、気泡を含む燃料が測定通路内へ流入することを確実に阻止することができる。なお、バイパス通路を4個以上備える場合、すべてのバイパス通路の図心を頂点とする多角形を考える必要はなく、3個のバイパス通路を選択し、それらの図心を頂点とする三角形内に測定通路を配置する構成としても良い。
【0014】
本発明の請求項5に記載の燃料性状検出装置は、測定光を受光部へ向けて反射可能に測定通路内に配置された反射部材を備えたことを特徴としている。
【0015】
反射部材を用いない場合は、発光部および受光部の位置関係を、発光部から出射した測定光が燃料中を透過して直接受光部へ入射するような位置関係、言い換えると発光部および受光部が測定通路を挟んで対向する位置関係に設定する必要がある。したがって、ハウジングにおける発光部および受光部取付け位置が制限されてしまう。
【0016】
そこで、本発明の請求項5に記載の燃料性状検出装置の構成とすれば、発光部に対する受光部の位置設定の自由度を高めることができる。たとえば、発光部と受光部を測定通路の同一側に配置することにより、発光部および受光部を外部の電気回路と接続するための電気接続コネクタを1箇所にまとめることが可能となる。
【0017】
本発明の請求項6に記載の燃料性状検出装置は、測定通路の壁面に濡れ性を高める(親燃料性を高める)処理を施したことを特徴としている。
【0018】
気泡を含む燃料が配管内を流れる際、配管内壁面の濡れ性が低い(撥燃料性が高い)場合、燃料は配管内壁面に弾かれるが気泡は配管内壁面に付着し易く、配管内壁面の濡れ性が高い(親燃料性が高い)場合、燃料は配管内壁面に密着するが気泡は配管内壁面に付着し難くなる。したがって、本発明の請求項6に記載の燃料性状検出装置の構成とすれば、万が一気泡を含む燃料が測定通路内に流入することがあっても、気泡は測定通路の壁面に付着せずに測定通路を通過して流出する可能性が高まる。したがって、気泡が測定通路内に流入しても、測定通路壁面に気泡が付着して燃料性状検出精度が低下することを防止可能な燃料性状検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る燃料性状検出装置の実施の形態について、自動車に搭載される燃料性状センサ1に適用した場合を例に図を参照して説明する。
【0020】
(第1実施形態)
燃料性状センサ1は、図3に示すように、燃料タンク101内の燃料を燃料タンク101内に設置された燃料ポンプ103により加圧圧送してエンジン100へ供給する燃料配管102の途中に取付けられ、その内部を燃料が通過する。燃料性状センサ1は、エンジン100における燃料噴射制御を司るエンジン制御装置104に電気的に接続されている。エンジン制御装置104は、マイクロコンピュータ等から構成されている。
【0021】
ここで、エンジン100の燃料について説明する。エンジン100の燃料としてはガソリンとエタノールの混合液が用いられている。エンジン100は、ガソリン100%、エタノール100%、および任意の混合比のガソリンとエタノールとの混合液のいずれによっても運転可能である。燃料性状センサ1は、燃料性状であるエタノール濃度を検出するものである。エンジン制御装置104は、燃料性状センサ1によって検出されたエタノール濃度に対応して、エンジンのトルク特性を所望の値とし同時に排出ガス中の有害成分量が少なくなるように、燃料噴射量、噴射時期等を制御している。
【0022】
以下に、本発明に係る燃料性状センサ1の構成について説明する。
【0023】
燃料性状センサ1は、燃料配管102に接続される接続部としての両端面21を有するハウジング2、その内部に燃料が流動可能且つ両端面21に連通するようにハウジング2に形成された測定通路22、測定通路22内へ測定光を照射可能にハウジング2に取付けられた発光部としての発光ダイオード3、測定通路22を透過した測定光を受光可能にハウジング2に取付けられた受光部としてのフォトトランジスタ4、その内部に燃料が流動可能且つ両端面21に連通するようにハウジング2に形成されたバイパス通路23等から構成されている。
【0024】
ハウジング2は、金属材料あるいは樹脂材料から形成されている。樹脂材料が用いられる場合は、自動車における燃料性状センサ1取付け部位の環境温度および燃料の最高温度に耐えうる耐熱性および耐燃料性を備え且つ遮光性を有するものが用いられている。ハウジング2は、図1に示すように、燃料配管102に接続される接続部としての両端面21に連通する測定通路22を備えている。測定通路22は、燃料の流動方向、すなわち図1の左右方向と直交する方向の断面において、すなわち図2に示す断面において、その断面が円形に形成されており、エンジン運転中において、燃料は、測定通路22内を図1中の矢印で示す方向に流れている。ハウジング2には、図1に示すように、3個のバイパス通路23が形成されている。3個のバイパス通路23は、図2に示すようにその断面が同一直径の円形に形成されている。3個バイパス通路23および測定通路22は、その軸方向が互いに平行であるように形成されている。測定通路22は、燃料の流動方向、つまり図1の左右方向と直交する方向の断面である図2において、互いに隣接するバイパス通路23の共通接線とそれに接続するバイパス通路23の輪郭線の一部とにより形成される閉輪郭線Cの内側に配置されている。さらに、測定通路22は、燃料の流動方向、つまり図1の左右方向と直交する方向の断面である図2において、3個のバイパス通路23の各図心Pを頂点として形成される多角形である三角形Tの内側に配置されている。なお、本発明の一実施形態による燃料性状センサ1は、測定通路22内における燃料の流れる方向が図1中の矢印と反対向きであっても、燃料の性状を検出可能である。
【0025】
ハウジング2には、図2に示すように、測定通路22の軸方向と直交し且つ測定通路22の中心を通る同軸上に配置された貫通孔24A、24Bが形成されている。ハウジング2には、図2に示すように、直径が貫通孔24A、24Bよりも大きい孔部25A、25Bが貫通孔24A、24Bと同軸上に形成されている。貫通孔24Aおよび孔部25Aには、図2に示すように、窓部材5が、貫通孔24Bおよび孔部25Bには、図2に示すように、および窓部材6が、それぞれ嵌合固定されている。窓部材5および窓部材6は透光性材質、たとえば樹脂材料あるいはガラス等から形成されている。
【0026】
窓部材5の背後の孔部25A内には、図2に示すように、発光ダイオード3が発光面を窓部材5に密着させて配置されている。発光ダイオード3のリード31は、孔部25Aを介してハウジング2の外方へ延出されている。孔部25A内にはポッティング樹脂7が充填され、それにより発光ダイオード3が気密的に保持固定されるとともに、発光ダイオード3の複数のリード31が互いに絶縁されて保持されている。窓部材6の背後の孔部25B内には、図2に示すように、フォトトランジスタ4が発光面を窓部材6に密着させて配置されている。フォトトランジスタ4のリード41は、孔部25Bを介してハウジング2の外方へ延出されている。孔部25B内にはポッティング樹脂7が充填され、それによりフォトトランジスタ4が気密的に保持固定されるとともに、フォトトランジスタ4の複数のリード41が互いに絶縁されて保持されている。なお、各リード31、41の先端には図示しない電気コネクタ等が装着され、これらの電気コネクタを介して外部の電気配線に接続されている。
【0027】
ハウジング2の両端面21の外周には、図1に示すように、フランジ26が形成されている。一方、燃料配管102の端部にもフランジ102aが形成されており、ハウジング2のフランジ26を各燃料配管102のフランジ102aに結合させることにより、燃料性状センサ1が、燃料配管102に固定される。
【0028】
次に、本発明の第1実施形態による燃料性状センサ1の作動について説明する。
【0029】
発光ダイオード3は、エンジン制御装置104により常に一定発光輝度であるように点灯駆動されている。発光ダイオード3から発せられた光は、窓部材5に入射し、窓部材5の出射面51から測定光として測定通路22中、すなわち燃料中に出射する。燃料中を透過した測定光は、窓部材6の受光面61から窓部材6内に入射しフォトトランジスタ4に入射する。フォトトランジスタ4は、受光した測定光量に応じた大きさの検出信号を出力する。発光ダイオード3から発せられる光量はエンジン制御装置104により常に一定に制御されているので、燃料中に出射される測定光量も常に一定である。一方、フォトトランジスタ4の受光量、すなわち燃料中を透過してフォトトランジスタ4に入射する光量は、燃料性状であるエタノール濃度の変化に応じて変化する。したがって、フォトトランジスタ4からの検出信号に基づいて、燃料性状であるエタノール濃度を検出することができる。
【0030】
次に、本発明の第1実施形態による燃料性状センサ1の特徴である、バイパス通路23の作用・効果について説明する。
【0031】
本発明の第1実施形態による燃料性状センサ1は、エンジン100の燃料配管102途中に取付けられると、その姿勢はほぼ水平、すなわち測定通路22内における燃料流動方向、言い換えると測定通路22の軸方向が水平となっている。つまり、図1および図2の上方が燃料性状センサ1の上方である。
【0032】
燃料タンク101内の燃料が燃料ポンプ103により加圧圧送される際には、燃料ポンプ103駆動用モータ(図示せず)の熱を受けて、燃料温度が上昇し、また圧力が変動する。これにより、燃料配管102内を流れる燃料中に気泡が発生することがある。この気泡が燃料性状センサ1の測定通路22内に流入し、発光面51および受光面61の少なくとも一方に付着すると、燃料と気泡との界面で測定光が屈折するため、受光面61に入射する測定光量が変動し、その結果、燃料性状検出精度が低下する可能性がある。
【0033】
本発明の第1実施形態による燃料性状センサ1では、測定通路22の他に、燃料の通路となるバイパス通路23を3個備えている。そして、3個のバイパス通路23と測定通路22との位置関係を以下のように設定している。測定通路22は、燃料の流動方向、つまり図1の左右方向と直交する方向の断面である図2において、互いに隣接するバイパス通路23の共通接線とそれに接続するバイパス通路23の輪郭線の一部とにより形成される閉輪郭線Cの内側に配置されている。さらに、測定通路22は、燃料の流動方向、つまり図1の左右方向と直交する方向の断面である図2において、3個のバイパス通路23の各図心Pを頂点として形成される多角形である三角形Tの内側に配置されている。
【0034】
測定通路22と3個のバイパス通路23との位置関係を上述したように設定したことにより、燃料性状センサ1および燃料配管102の取付け位置ばらつきにより、燃料性状センサ1の姿勢が燃料流動方向を軸として回転することがあっても、3個のバイパス通路23の内少なくとも1個は必ず、ハウジング2の燃料流動方向に直交する方向の断面において測定通路22よりも鉛直方向上方に位置することになる。
【0035】
ところで、燃料中に含まれる気泡は、それに作用する浮力を受けて燃料配管102内の鉛直方向上方側に移動しつつ燃料とともに流動していく。このため、気泡を含む燃料が燃料性状センサ1に到達すると、気泡を含む燃料は、測定通路22よりも上方に位置するバイパス通路23内に流入し、測定通路22へは気泡を含まない燃料が流入する。すなわち、3個のバイパス通路23と測定通路22との位置関係を上述したように設定したことにより、測定通路22内へ燃料中の気泡が流入することを阻止できる。これにより、燃料中に含まれる気泡が、燃料性状センサ1の測定通路22内に流入することを阻止して、高い燃料性状検出精度を維持可能な燃料性状センサ1を提供することができる。
【0036】
(第2実施形態)
図4に、本発明の第2実施形態による燃料性状センサ1の断面図を示す。本発明の第2実施形態による燃料性状センサ1は、本発明の第1実施形態による燃料性状センサ1に対して、バイパス通路23の個数を3個から2個に変更している。以下に、本発明の第2実施形態による燃料性状センサ1の構成について説明する。
【0037】
測定通路22の断面形状およびバイパス通路23の断面形状は、図4に示すように円形であるが、バイパス通路23の直径は測定通路22の直径よりも大きく設定されている。そして、2個のバイパス通路23と測定通路22との位置関係を以下のように設定している。すなわち、測定通路22は、燃料の流動方向と直交する方向の断面である図4において、互いに隣接するバイパス通路23の共通接線とそれに接続するバイパス通路23の輪郭線の一部とにより形成される閉輪郭線Cの内側に配置されている。これにより、燃料性状センサ1の姿勢が燃料流動方向を軸として回転することがあっても、2個のバイパス通路23の内少なくとも1個は必ず、ハウジング2の燃料流動方向に直交する方向の断面において測定通路22よりも鉛直方向上方に位置することになる。したがって、燃料中に含まれる気泡が、燃料性状センサ1の測定通路22内に流入することを阻止して、高い燃料性状検出精度を維持可能な燃料性状センサ1を実現することができる。
【0038】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態による燃料性状センサ1について、図5に基づいて説明する。
【0039】
本発明の第3実施形態による燃料性状センサ1は、本発明の第1実施形態による燃料性状センサ1に対して、ハウジング2の測定通路22に対する発光ダイオード3およびフォトトランジスタ4の位置関係を変更している。以下に、本発明の第3実施形態による燃料性状センサ1の構成について、特に発光ダイオード3およびフォトトランジスタ4の取付け位置関係について説明する。それ以外の構成は本発明の第1実施形態による燃料性状センサ1と同一であるので説明を省略する。
【0040】
本発明の第3実施形態による燃料性状センサ1では、発光ダイオード3およびフォトトランジスタ4は、図4に示すように、測定通路22の周方向において同一角度位置に配置されている。すなわち、ハウジング2には、図4に示すように、測定通路22の周方向において同一角度位置に、貫通孔24A、24B、孔部25A、25Bが設けられている。貫通孔24Aおよび孔部25Aには窓部材5が嵌合固定され、発光ダイオード3が窓部材5の背面に密着させて配置されている。発光ダイオード3のリード31は、孔部25Aを介してハウジング2の外方へ延出されている。孔部25A内にはポッティング樹脂7が充填され、それにより発光ダイオード3が気密的に保持固定されるとともに、発光ダイオード3の複数のリード31が互いに絶縁されて保持されている。貫通孔24Bおよび孔部25Bには窓部材6が嵌合固定され、フォトトランジスタ4が窓部材5の背面に密着させて配置されている。フォトトランジスタ4のリード41は、孔部25Bを介してハウジング2の外方へ延出されている。孔部25B内にはポッティング樹脂7が充填され、それによりフォトトランジスタ4が気密的に保持固定されるとともに、フォトトランジスタ4の複数のリード41が互いに絶縁されて保持されている。
【0041】
発光ダイオード3から出射した光は、窓部材5の出射面51から測定光として測定通路22中、すなわち燃料中に出射する。この測定光は、図4中において矢印で示すように測定通路22の壁面で反射して、窓部材6の受光面61から窓部材6内に入射しフォトトランジスタ4に入射する。フォトトランジスタ4は、受光した測定光量に応じた大きさの検出信号を出力する。
【0042】
以上説明した本発明の第3実施形態による燃料性状センサ1においても、先に説明した本発明の第1実施形態による燃料性状センサ1の場合と同じ効果、すなわち、燃料中に含まれる気泡が、燃料性状センサ1の測定通路22内に流入することを阻止して、燃料性状センサ1の高い燃料性状検出精度を維持できるという効果が得られる。
【0043】
また、以上説明した本発明の第3実施形態による燃料性状センサ1では、測定光を測定通路22の壁面で反射させているため、出射面51から受光面61へ至る測定光の光路長さ、つまり、測定光が燃料中を通過する透過長さを長くできる。これにより、発光ダイオード3からフォトトランジスタ4へ至る光路長さに対する燃料中を通過する透過長さの割合を大きくして、燃料性状検出精度を高めることができる。
【0044】
また、以上説明した本発明の第3実施形態による燃料性状センサ1では、発光ダイオード3およびフォトトランジスタ4を、測定通路22の周方向において同一角度位置に配置しているため、各リード31およびリード41もハウジング2側面の同一角度位置に近接して延出されている。これにより、発光ダイオード3およびフォトトランジスタ4を外部の電気回路、つまりエンジン制御装置104へ接続するための電気接続コネクタを1箇所にまとめることが可能となる。
【0045】
なお、以上説明した本発明の第3実施形態による燃料性状センサ1において、測定通路22の内壁面の少なくとも測定光が入射する部分(すなわち測定光を反射する部分)に対して、反射率を高めるような処理、たとえば研磨加工、めっき加工、コーティング等を施しても良い。
【0046】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態による燃料性状センサ1について、図6に基づいて説明する。
【0047】
本発明の第4実施形態による燃料性状センサ1は、本発明の第3実施形態による燃料性状センサ1に対して、ハウジング2の測定通路22に、発光ダイオード3から発せられた測定光をフォトトランジスタ4へ向けて反射する反射部材としての反射板8を設けた点が異なっている。以下に、本発明の第4実施形態による燃料性状センサ1の構成、特に反射板8に係る構成について説明する。それ以外の構成は本発明の第3実施形態による燃料性状センサ1と同一であるので説明を省略する。
【0048】
反射板8は、樹脂材料、あるいは金属材料から形成され、その表面、少なくとも発光ダイオード3およびフォトトランジスタ4と対向する側の表面は、高反射率を有するように鏡面状に仕上げられている。反射板8は、本発明の第4実施形態による燃料性状センサ1においては、その断面形状が測定通路22の断面形状に合わせた円弧状に形成されている。反射板8は、図6に示すように、測定通路22内且つ発光ダイオード3からの光が確実に入射する位置に設置されている。反射板8をハウジング2の測定通路22へ固定する方法は、接着、圧入等による。または、ハウジング2を樹脂材料、金属材料から成型加工により作る際に、型内にインサート成型することにより固定してもよい。
【0049】
上述したように、測定光を反射板8でフォトトランジスタ4へ向けて反射する構成とすれば、フォトトランジスタ4へ入射する測定光量を多くすることができ、それにより燃料性状検出精度を高めることができる。
【0050】
なお、以上説明した、本発明の第1〜第4実施形態による燃料性状センサ1では、測定通路22の燃料の流動方向と直交する方向における断面形状を円形としているが他の形状であっても良い。
【0051】
また、以上説明した、本発明の第1〜第4実施形態による燃料性状センサ1では、測定通路22の燃料の流動方向と直交する方向におけるバイパス通路23の断面形状を円形としているが他の形状であっても良い。
【0052】
また、以上説明した、本発明の第1、第3、第4実施形態による燃料性状センサ1ではバイパス通路23の個数を3個とし、本発明の第2実施形態による燃料性状センサ1ではバイパス通路23の個数を2個としているが、バイパス通路23の個数を4個以上としてもよい。その場合、燃料の流動方向と直交する方向におけるハウジング2の断面において、測定通路22と複数のバイパス通路22との位置関係を、各実施形態において説明したように設定すれば、燃料性状センサ1の姿勢が燃料流動方向を軸として回転することがあっても、燃料中に含まれる気泡が測定通路22内に流入することを確実に阻止して、高い燃料性状検出精度を維持可能な燃料性状センサ1を実現することができる。
【0053】
また、以上説明した、本発明の第1〜第4実施形態による燃料性状センサ1では、受光部としてフォトトランジスタ4を用いているが、他の種類の受光素子、たとえばフォトダイオード等を用いてもよい。
【0054】
また、以上説明した、本発明の第1〜第4実施形態のいずれか一つの燃料性状センサ1に対して、測定通路22を濡れ性が高い(親燃料性が高い)材質により形成してもよい。たとえば、ハウジング2を樹脂材料を成型加工して形成するとともに、ハウジング2にタイル等の親燃料性の高い材質から形成したパイプを装着して、このパイプを測定通路22としてもよい。一般的に、気泡を含む燃料が配管内を流れる際、配管内壁面の濡れ性が低い(撥燃料性が高い)場合、燃料は配管内壁面に弾かれるが気泡は配管内壁面に付着し易く、配管内壁面の濡れ性が高い(親燃料性が高い)場合、燃料は配管内壁面に密着するが気泡は配管内壁面に付着し難くなる。したがって、測定通路22を濡れ性が高い(親燃料性が高い)材質により形成すれば、万が一気泡を含む燃料が測定通路22内に流入することがあっても、流入した気泡が測定通路の壁面に付着せずに流出し易くなる。これにより、気泡が測定通路内に流入しても、測定通路壁面に気泡が付着して燃料性状検出精度が低下することを防止可能な燃料性状検出装置を提供することができる。
【0055】
また、以上説明した、本発明に係る燃料性状検出装置の各実施形態では、燃料性状検出装置を自動車に搭載される燃料性状センサ1に適用した場合を例に説明しているが、燃料性状検出装置の用途を燃料性状センサ1に限る必要は無く、燃料以外の他の液体、たとえば潤滑油あるいは自動変速機用作動液等に含まれる粒子濃度検出用途に適用してもよい。さらに、その用途を自動車用に限る必要は無く、他の用途、例えば各種民生用機器に適用してもよい。たとえば、燃焼式暖房装置の燃料中粒子濃度検出用に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態による燃料性状センサ1の断面図であり、図2中のI−I線断面図である。
【図2】図1中のII−II線断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による燃料性状センサ1が装着されたエンジンの燃料回路を説明する模式図である。
【図4】本発明の第2実施形態による燃料性状センサ1の断面図であり、図2に相当する。
【図5】本発明の第3実施形態による燃料性状センサ1の断面図であり、図1に相当する。
【図6】本発明の第4実施形態による燃料性状センサ1の断面図であり、図1に相当する。
【符号の説明】
【0057】
1 燃料性状センサ(燃料性状検出装置)
2 ハウジング
21 端面(接続部)
22 測定通路
23 バイパス通路
24A、24B 貫通孔
25A、25B 孔部
26 フランジ
3 発光ダイオード(発光部)
31 リード
4 フォトトランジスタ(受光部)
41 リード
5 窓部材(発光部)
51 発光面
6 窓部材(受光部)
61 受光面
7 ポッティング樹脂
8 反射板(反射部材)
100 エンジン
101 燃料タンク
102 燃料配管
102a フランジ
103 燃料ポンプ
104 エンジン制御装置
C 閉輪郭線
P 図心
T 三角形(多角形)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料が流れる配管途中に設置されて前記配管内を流れる前記燃料の性状を検出する燃料性状検出装置であって、
前記配管に接続するための接続部を両端に備えたハウジングと、
その内部に前記燃料が流動可能且つ両前記接続部に連通するように前記ハウジングに形成された測定通路と、
前記測定通路内へ測定光を照射可能に前記ハウジングに取付けられた発光部と、
前記測定通路を透過した前記測定光を受光可能に前記ハウジングに取付けられた受光部と、
その内部に前記燃料が流動可能に両前記接続部に開口する貫通孔として前記ハウジングに形成されたバイパス通路とを備え、
前記ハウジングが前記配管に取付けられ状態では、前記測定通路の前記燃料の流動方向と直交する方向の前記ハウジングの断面において前記バイパス通路は前記測定通路よりも鉛直方向上方に位置することを特徴とする燃料性状検出装置。
【請求項2】
前記バイパス通路を複数個備えたことを特徴とする請求項1に記載の燃料性状検出装置。
【請求項3】
前記測定通路における前記燃料の流動方向と直交する方向の前記ハウジングの断面において前記測定通路は互いに隣接する前記バイパス通路の共通接線とそれに接続する前記バイパス通路の輪郭線の一部とにより形成される閉輪郭線の内側にあることを特徴とする請求項2に記載の燃料性状検出装置。
【請求項4】
前記バイパス通路を3個以上備え、
前記測定通路の前記燃料における流動方向と直交する方向の前記ハウジングの断面において前記測定通路は前記バイパス通路の図心を頂点として形成される多角形の内側にあることを特徴とする請求項1に記載の燃料性状検出装置。
【請求項5】
前記測定光を前記受光部へ向けて反射可能に測定通路内に配置された反射部材を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一つに記載の燃料性状検出装置。
【請求項6】
前記測定通路の壁面に濡れ性を高める(親燃料性を高める)処理を施したことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一つに記載の燃料性状検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−286645(P2008−286645A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132076(P2007−132076)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】