説明

燃料油の供給方法及び燃料油の供給システム

【課題】ガソリンスタンド等の給油所において、車両側の要望に応じて、燃料油における硫黄成分を調整することが可能な燃料油の供給方法及び燃料油の供給システムを提供すること。
【解決手段】ガソリンスタンドにて自動車に燃料油を供給するに際し、自動車から発される燃料油に対する脱硫処理を行うか否かの情報に応じて、燃料油通過経路選定手段が脱硫フィルタを備えた燃料油通過経路あるいは脱硫フィルタを備えない燃料油通過経路を選定した上で、当該燃料油通過経路を通過させて燃料油を自動車に供給する。そして、供給する燃料油の脱硫処理を行う場合には、燃料油貯蔵タンクから送り出される燃料油を、脱硫剤を備えた脱硫フィルタを通過させて自動車に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両から発される、燃料油に対して脱硫処理を行うか否かの情報に応じて、燃料油における硫黄成分の含有量を調整することが可能な燃料油の供給方法及び燃料油の供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原油の蒸留や分解によって得られる各油留分は、通常、硫黄成分を含み、これらの油を燃料油として使用する場合には、この硫黄成分に起因する硫黄 酸化物等の大気汚染物質が大気中に放出されることとなる。
【0003】
一方、近年、硫黄成分による自動車の排ガスによる大気汚染が深刻化しており、その燃料面からの対策として、ガソリン中の硫黄成分の低減が強く要望されている。加えて、このような環境問題に対する高まりに伴い、全世界的にガソリン中の硫黄成分が規制されるようになってきており、わが国においても、2005年にはガソリン中の硫黄成分量が50ppm以下に規制され、その後、硫黄成分量の規制は10ppm以下、そして将来的には1ppm以下とされることが予想されている。
【0004】
これに対し、ガソリン、特に接触分解ガソリン(FCCガソリン)の硫黄成分を低く抑えるためには、減圧軽油や常圧残油を脱硫触媒の存在下で水素化脱硫した後、接触分解の原料油として用いるのが一般的であり、燃料油中の硫黄成分の低減のために種々の技術が提供されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−286493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、燃料油の硫黄成分を製造の段階で10ppm以下、ひいては1ppm以下とすることは非常に困難であるとともに、製造された燃料油は輸送段階において他場所で製造された硫黄成分の含有量の高い燃料油とタンクローリ内で混合されてしまうこともある。その場合にあっては、タンクローリから給油所に送り出す時点には燃料油の硫黄成分の含有量が10ppmを超えてしまうことがあった。
【0007】
また、給油対象の車両には、排ガス浄化システムなどの硫黄成分低減装置を搭載したものもあり、そのような車両にあっては燃料油側で低硫黄化を図ることが必ずしも必要とはされなかった。そして、このような場合も含めて、給油所において車両側の要望により燃料油の低硫黄化の選択ができ、また、かかる選択に対応して給油所で燃料油中の硫黄成分の含有量の調整が実施できれば、給油所に貯蔵された状態での燃料油における硫黄成分の含有量が高くても、車両側の要望に応じて低硫黄燃料油を供給できることとなるため好都合である。
【0008】
従って、本発明の目的は、給油所において、車両側の要望に応じて、燃料油における硫黄成分を簡便に調整することが可能な燃料油の供給方法及び燃料油の供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決すべく、本発明の燃料油の供給方法は、給油所にて車両に燃料油を供給する燃料油の供給方法であって、車両から発される燃料油に対して脱硫処理を行うか否かの情報に応じて、供給する燃料油に脱硫処理を行うか否かを選択し、前記脱硫処理を行う場合には、燃料油貯蔵手段から送り出された燃料油を、脱硫剤を備えた脱硫手段を通過させて前記車両に供給することを特徴とする。
【0010】
本発明の燃料油の供給方法は、給油所にて車両に燃料油を供給するに際し、燃料油の供給先である車両から発される燃料油に対して脱硫処理を行うか否かの情報に応じて、供給する燃料油に脱硫処理を行うか否かを選択するようにしているので、車両側の顧客の要望に応じて、燃料油の低硫黄化の選択を行うことができる。
また、供給する燃料油の脱硫処理を行う場合には、燃料油貯蔵手段から送り出される燃料油を、脱硫剤を備えた脱硫手段を通過させて前記車両に供給するようにしているので、燃料油貯蔵手段に貯蔵された段階では燃料油について低硫黄化がなされていない場合であっても、給油所における供給過程で硫黄成分を効率よく脱着して、硫黄成分の含有量が少ない燃料油を効率よく供給でき、硫黄成分の含有量の低い燃料油の供給を低コストで実施することができることとなる。更には、脱硫剤により硫黄成分を吸着除去するので、燃料油が変質することもない。
【0011】
本発明の燃料油の供給方法は、前記脱硫処理が行われる場合の車両に供給される燃料油における硫黄成分の含有量が10ppm以下であることが好ましく、1ppm以下であることが特に好ましい。
かかる本発明によれば、脱硫処理が行われる場合の車両に供給される燃料油における硫黄成分の含有量が10ppm以下であるので、車両側における脱硫処理の要求がある場合にあっては、低硫黄燃料油を好適に供給可能とし、硫黄成分による自動車の排ガスによる大気汚染をより一層好適に防止することができる。また、燃料油における硫黄成分の含有量が10ppm以下であれば、将来的な規制にも十分対応できる。
そして、脱硫処理が行われる場合の車両に供給される燃料油における硫黄成分の含有量が1ppm以下であれば、これらの効果の他、将来的な規制が、仮に燃料油中の硫黄成分の含有量が1ppm以下と制定された場合にあっても、十分対応できることとなる。
【0012】
本発明の燃料油の供給方法は、前記燃料油が、ガソリン、軽油、灯油、ナフサのいずれかであることが好ましい。
このように、かかる本発明の燃料油の供給方法は、燃料油として、ガソリン、軽油、灯油、ナフサを選択することができ、これら多岐にわたる燃料油に対して幅広く適用可能であり、車両側の要求に応じた燃料油を好適に供給することができる。
なお、本発明に適用されるこれらに例示される各燃料油は、狭義の意味(例えば、JIS規格に則ったものなど)に限定されるものではなく、例えば水素化分解軽油(HCGO)、分解軽油(LCO)などを除外するものではない。
【0013】
本発明の燃料油の供給システムは、給油所にて車両に燃料油を供給する燃料油の供給システムであって、燃料油を貯蔵する燃料油貯蔵手段と、前記車両に燃料油を供給する給油機と、前記燃料油貯蔵手段と前記給油機との間に、燃料油が通過可能に配され、脱硫剤を備えた脱硫手段を備えた第1の燃料油通過経路と、前記脱硫手段を備えない第2の燃料油通過経路の少なくとも2つの燃料油通過経路と、前記車両から発される燃料油に対する脱硫処理を行うか否かの情報に応じて、前記燃料油通過経路を選択する燃料油通過経路選定手段を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の燃料油の供給システムは、車両から発される燃料油に対する脱硫処理を行うか否かの情報に応じて、燃料油通過経路選定手段が脱硫手段を備えた燃料油通過経路あるいは脱硫手段を備えない燃料油通過経路を選定した上で、当該燃料油通過経路を通過させて燃料油を車両側に供給するので、給油所にて燃料油を車両に供給する際の燃料油の低硫黄化の選択が車両側の顧客の要望に応じて簡便に実施される。
また、給油所にて、脱硫剤を備えた脱硫手段により燃料油の低硫黄化を図るようにしているので、燃料油貯蔵手段に貯蔵された段階では燃料油について低硫黄化がなされていない場合であっても、給油所における供給過程で硫黄成分を効率よく脱着することができる。これにより、硫黄成分の含有量が少ない燃料油を効率よく供給でき、硫黄成分の含有量の低い燃料油の供給を低コストで実施することができることとなる。更には、脱硫剤により硫黄成分を吸着除去するので、燃料油が変質することもない。
【0015】
本発明の燃料油の供給システムは、前記第1の燃料油通過経路が、通過後の燃料油における硫黄成分の含有量を0〜1ppmとする脱硫手段を備えた燃料油通過経路と、通過後の燃料油における硫黄成分の含有量を3〜10ppmとする脱硫手段を備えた燃料油通過経路を含む少なくとも2つの燃料油通過経路からなることが好ましい。
かかる本発明によれば、経路内に、通過後の燃料油における硫黄成分の含有量を異なる2種類以上のものとすることができる燃料油通過経路を備えるようにしているので、車両側の顧客に対して、供給される燃料油における硫黄成分の含有量の選択性を多岐にわたらせることができる。
【0016】
本発明の燃料油の供給システムは、前記車両からの情報が、当該情報を無線通信により送信可能な遠隔操作手段により発されることが好ましい。
かかる本発明によれば、車両からの情報が、当該情報を無線通信により送信可能な遠隔操作手段により発されるため、情報伝達が簡便かつ確実に行われるとともに、顧客が脱硫処理についての要否の選択のために車両から降りる必要もなく、車両側の顧客の負荷も低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図1ないし図8を用いて、本発明の燃料油の供給システムを実施する一態様を説明する。
図1は、給油所であるガソリンスタンドにおける本発明の燃料油の供給システム7を実施する一態様を示す概略図である。図1に示すように、燃料油の供給対象である自動車2には、遠隔操作手段となるナビゲーション装置9が搭載されており、また、ガソリンスタンド1に設置され、自動車2に燃料油を供給するための給油機10は、サーバ装置8に接続されている。
そして、自動車2がガソリンスタンド1に入ると、このナビゲーション装置9とガソリンスタンド1に設置された給油機10(サーバ装置8)とが無線通信により交信可能となる。
【0018】
図2は、遠隔操作手段であるナビゲーション装置9の概略を示したブロック図である。図2に示されるように、自動車2に搭載されるナビゲーション装置9は、給油機10との間で情報を送受信する送受信部91と、送受信部91で受信した情報を画面に表示する表示部92と、この表示部92で表示された情報を操作する操作部93と、これらの情報を処理する制御部94とを基本構成として備える。
【0019】
図3は、本発明の燃料油の供給システム7の概略を示したブロック図である。図3に示されるように、燃料油の供給システム7を実施する、給油機10に設置されたサーバ装置8は、前記したナビゲーション装置9と情報を交信する送受信部81と、情報を処理し、給油機10から供給される燃料油の量や硫黄成分の含有量を制御する制御部82と、燃料油の供給量に応じて料金を算出する料金算出手段83と、燃料油や売上の情報を蓄積する記憶部84と、燃料油通過経路(図4参照)を設定する燃料油通過経路選定手段85を基本構成として備える。
また、ガソリンスタンド1に設置される給油機10は、自動車2の燃料タンク21に燃料油を供給する給油手段101と、サーバ装置8からの情報を表示する表示部105を備える。
【0020】
また、供給される燃料油としては、例えば、ガソリン、軽油、灯油、ナフサ等が挙げられる。本発明の燃料油の供給システム7は、これら多岐にわたる燃料油に対して幅広く適用可能であり、自動車2側からの要求に応じた硫黄成分の含有量の少ない燃料油を好適に供給することができる。
なお、これらの燃料油は、燃料油貯蔵手段である燃料油貯蔵タンク(図4参照)に貯蔵される段階では、一般に、硫黄成分を50ppm程度含んでいる。
【0021】
サーバ装置8を構成する記憶部84には、燃料油の情報を蓄積する燃料油情報蓄積手段841と、売上情報を蓄積する売上情報蓄積手段842を備える。燃料油情報蓄積手段841は、燃料油販売会社によって定められた燃料油の種類やその単価などの燃料油の諸情報が、あらかじめ入力されて蓄積されている。また、売上情報蓄積手段842は、燃料油を販売した際の売上情報を蓄積する。
【0022】
一方、自動車2に搭載されるナビゲーション装置9からは、自動車2へ燃料油の供給をするにあたり、燃料油に脱硫処理を施すか否かの情報を、給油機10に配設されたサーバ装置8に送信する。また、脱硫処理を希望する場合にあっては、超低硫黄燃料油とするか低硫黄燃料油(ともに後記)とするかを併せて送信する。サーバ装置8はこれらの情報を、制御部82に連絡する。
【0023】
制御部82と接続される燃料油通過経路選定手段85は、ナビゲーション装置9から発信された情報により、燃料油が通過する燃料油通過経路(図4参照)を選定する。
すなわち、ナビゲーション装置9から送信された情報が、燃料油の供給に際し脱硫処理を必要としない場合には、燃料油が通過する燃料油通過経路として脱硫手段が設置されていないものを選択するようにし、一方、ナビゲーション装置9から送信された情報が、燃料油の供給に際し脱硫処理を必要とする場合にあっては、燃料油通過経路として脱硫手段が設置されたものを選択することとなる。
また、この燃料油通過経路選定手段85と接続された切換弁851は、燃料油通過経路選定手段85からの情報をもとに、燃料油貯蔵手段である燃料油貯蔵タンク(図4参照)から送り出されてくる燃料油が通過する燃料油通過経路を切り換える。
【0024】
図4は、燃料油貯蔵手段である燃料油貯蔵タンク3と給油機10との間の燃料油通過経路4の一態様を示した概略図である。ガソリンスタンド1においては、地底に燃料油貯蔵タンク3が設置され、この燃料油貯蔵タンク3に貯蔵されている燃料油は、サーバ装置8が備える制御部82からの指示により、図示しないポンプ等により燃料油を汲み上げて、燃料油通過経路4を通過させた後に自動車2の燃料タンク21に対して給油ノズル104により供給できるようになっている。
また、図4に示すように、本実施形態にあっては、燃料油通過経路4は切換弁851から燃料油供給方向(図4の矢印方向)に向かって三方に分かれており、燃料油通過経路41,42には脱硫手段である脱硫フィルタ5(51,52)が設置されている一方、燃料油通過経路43には脱硫フィルタが設置されていない構成を採用している。
【0025】
ここで、燃料油通過経路41に設置される脱硫フィルタ5は、通過後の燃料油の硫黄成分の含有量を0〜1ppm程度とする(超低硫黄燃料油とする)超低硫黄燃料油用脱硫フィルタ51であり、燃料油通過経路42に設置される脱硫フィルタ5は、通過後の燃料油の硫黄成分の含有量を3〜10ppm程度とする(低硫黄燃料油とする)低硫黄燃料油用脱硫フィルタ52である。
なお、超低硫黄燃料油用脱硫フィルタ51及び低硫黄燃料油用脱硫フィルタ52が備える脱硫剤としては、後記する脱硫剤を、所望の含有量の燃料油となるように適宜調整して使用すればよい。
【0026】
このように、燃料油に対して脱硫処理を行う場合には、燃料油通過経路41,42を通過させることにより、自動車2に供給される燃料油における硫黄成分の含有量を10ppm以下とすることができ、特に、燃料油通過経路41を通過させることにより当該含有量は1ppm以下となるため、低硫黄燃料油ないしは超低硫黄燃料油を好適に供給可能とし、硫黄成分による自動車2の排ガスによる大気汚染をより一層好適に防止することができる。
更には、このように、燃料油貯蔵タンク3と給油機10との間の経路内に、通過後の燃料油における硫黄成分の含有量を異なる2種類のものとすることができる燃料油通過経路41,42を備えるようにしているので、自動車2側の顧客に対して、供給される燃料油における硫黄成分の含有量の選択性を多岐にわたらせることができる。
【0027】
なお、図3に示すように、自動車2に対する燃料油の供給量(吸油量)は、燃料油流量検出手段102により、自動車2に供給される燃料油における硫黄成分の含有量は、硫黄成分含有量検出手段103により、それぞれ検出されるようになっている。また、検出されたデータは、サーバ装置8の図示しない表示部に表示されることになる。
【0028】
また、燃料油貯蔵タンク3と給油機10との間の燃料油通過経路4に設置される脱硫フィルタ5は、燃料油の硫黄成分を吸着除去する脱硫剤を備えることができ、燃料油通過経路4に対して燃料油を通過可能に配設することができるものであれば、その形状や仕様は特に限定されない。
例えば、脱硫剤を充填可能な筒状の充填体を、燃料油通過経路4に対して燃料油が通過できるように設置して、その内部に脱硫剤を充填して脱硫フィルタ5とすればよい。なお、形状は筒状だけでなく、箱状、円盤状等の任意の形状とすることができる。
【0029】
また、脱硫フィルタ5が備える脱硫剤としては、燃料油に含まれる硫黄成分を、常温〜120℃の温度範囲で吸着、反応などにより除去でき、かつ、燃料に対して悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されない。
【0030】
具体的には、従来公知の脱硫剤として、活性炭や活性炭素繊維等の炭素材料、シリカゲル、疎水性シリカ等のケイ素酸化物、ゼオライトや金属交換ゼオライト等のゼオライト類や、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の酸化物、亜硫酸塩水和物又は水酸化物や、担体にアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を担持したものや、鉛、錫、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、銅、亜鉛の金属あるいは酸化物や、これらの混合物又はこれらの複合酸化物や、鉛、錫、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、銅、亜鉛を単独あるいは二種以上を組み合わせて担体に担持したものや、これらにさらに、アルカリ金属,アルカリ土類金属や希土類金属(セレン、ランタニウム、イットリウム等)等を添加したものが挙げられる。また、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等の貴金属を担体に担持したものを使用してもよい。
なお、前記した担体として、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、白土、珪藻土、粘土類などを使用することができる。
【0031】
燃料油貯蔵タンク3から送り出される燃料油は、このような脱硫剤を備えた脱硫フィルタ5を通過することにより、燃料油中に存在する硫黄成分が吸着除去され、硫黄成分の含有量が少ない燃料油を供給することができる。燃料被供給体である自動車2に供給される燃料油における硫黄成分の含有量は、10ppm以下であることが好ましく、1ppm以下であることが特に好ましい。供給される燃料油における硫黄成分の含有量が10ppm以下であれば、将来的な規制にも十分対応でき、硫黄成分による自動車の排ガスによる大気汚染をより一層好適に防止することができる。
一方、燃料油の硫黄成分の含有量は、脱硫剤の性能に大きく左右されるが、硫黄成分の含有量を10ppm以下、更には1ppm以下とするためには、下記の脱硫剤を使用することが好ましい。
【0032】
まず、脱硫剤として、担体に銀を担持させた脱硫剤を適用することが好ましい、この脱硫剤にあっては、担体として、多孔質担体を使用することが好ましく、具体的には、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、チタニア、ジルコニア、マグネシア、酸化亜鉛、白土、粘土、珪藻土、活性炭などを挙げることができ、単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、特に、シリカ−アルミナ、アルミナを使用することが好ましい。
【0033】
銀の担持量は、脱硫剤全量に対して、金属銀として0.5〜50質量%が好ましい。0.5質量未満であると、充分な脱硫性能が発揮されないおそれがある。50質量%を超えると、担持した銀の粒子径が増大し充分な脱硫性能が発揮されないおそれがあり好ましくない。より好ましくは、3〜30質量%の範囲である。
【0034】
担体への銀の担持方法については特に制限はなく、含浸法、共沈法、混練法、物理混合法、蒸着法、イオン交換法などの公知の方法を採用することができる。中でも、含浸法、共沈法が好ましい。
【0035】
また、ニッケル、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、パラジウム、イリジウム、白金、ルテニウム、ロジウム及び金から選ばれる少なくとも一種を含むものを挙げることができ、中でもそれらの金属が前記の多孔質担体に担持されたものを脱硫剤として使用してもよい。特に、少なくともニッケルを含む金属が多孔質担体に担持されたものが好ましい。これらの脱硫剤は予め水素還元することにより、脱硫性能を向上させることができる。
【0036】
また、脱硫剤として、比表面積が600m/g以上の活性炭を少なくとも50質量%以上含む担体に対して、酸化ニッケルおよび酸化亜鉛を担持させ、脱硫剤全体に対する酸化ニッケルおよび酸化亜鉛の担持量がそれぞれ1〜49質量%であり、かつ酸化ニッケルと酸化亜鉛の担持量の和が5〜50質量%であることとしたものを使用してもよい。
【0037】
ここで、活性炭の種類は特に限定するものではなく、例えば石炭系活性炭、ヤシ殻系活性炭、木質系活性炭などを用いることができる。活性炭の形状も特に限定するものではなく、例えば、粉末炭、破砕炭、顆粒炭、円柱状炭、球状炭などを用いることができる。活性炭の粒径も特に限定するものではなく、通常、1〜10mmのものを用いることができる。更には、活性炭のかさ密度も特に限定するものではなく、通常、0.1〜0.8g/cmのものを用いることができる。
【0038】
活性炭の比表面積は600m/g以上であることが好ましく、800m/g以上であることがより好ましい。活性炭の比表面積が600m/g未満であると、金属の分散性が低下し、脱硫活性が劣化する。比表面積の上限は特に限定されないが、通常3500m/g以下であることが好ましく、3000m/g以下であることがより好ましい。なお、ここでいう「比表面積」とは、公知の窒素吸着法により測定したBET比表面積のことをいう。
【0039】
担体中の活性炭の量は、50質量%以上あることが好ましく、特に好ましくは70質量%以上である。50質量%未満であると、担体の比表面積が低下し、脱硫活性が低下する。上限は100質量%である。なお、担体中には活性炭以外にバインダー等を含むことができる。
【0040】
担体の形状、大きさ、成型方法は特に限定するものではない。また、成形時には適度なバインダーを添加して成形性を高めてもよい。バインダーとしては、特に限定するものではないが、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、もしくはそれらの複合酸化物などを用いることができる。
担体におけるバインダーの添加量は50質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下である。下限はバインダーとしての機能が発揮される限り特に限定されるものではなく、通常1質量%以上であり、好ましくは5質量%以上である。
【0041】
また、酸化ニッケルおよび酸化亜鉛を担体に担持する方法に関しては特に制限はなく、通常の含浸法、イオン交換法など公知の方法を用いることができる。例えば含浸法においては、ニッケルおよび亜鉛の金属塩あるいは金属錯体を、水、エタノールもしくはアセトンなどの溶媒、特に好ましくは水に溶解させ、担体に含浸させる。しかるのち、乾燥、焼成等の処理を行って酸化ニッケルおよび酸化亜鉛を形成させることにより、酸化ニッケルおよび酸化亜鉛を担持した触媒を得ることができる。
【0042】
更には、ニッケルや亜鉛の金属塩あるいは金属錯体は、溶媒に溶解するものあれば、特に制限はなく、各種の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、有機酸塩等があげられ、具体的には硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛などを用いることができる。
【0043】
乾燥方法は特に限定されるものではなく、例えば、空気中での乾燥、減圧下での脱気乾燥等を用いることができる。乾燥温度としては、通常、室温〜150℃で行うことができるが、50〜140℃が好ましく、80〜120℃が特に好ましい。また焼成方法も特に限定されるものではなく、通常、窒素雰囲気で行うことが望ましい。焼成温度としては250〜450℃が好ましく、300〜400℃がより好ましい。また焼成時間としては0.1〜10時間が好ましく、0.5〜5時間がより好ましい。
【0044】
酸化ニッケルや酸化亜鉛を担持する順序については特に制限はなく、同時に担持させても良く、また酸化亜鉛を担持させた後酸化ニッケルを担持させても良いし、酸化ニッケルを担持させた後酸化亜鉛を担持させても良いが、酸化ニッケルおよび酸化亜鉛を同時に担持させるか、酸化亜鉛を担持させた後に酸化ニッケルを担持させるのが好ましい。
【0045】
酸化ニッケルや酸化亜鉛の触媒に対する担持量はそれぞれ1〜49質量%であり、5〜45質量%が好ましく、特に10〜40質量%が好ましい。担持量が1質量%未満では、触媒性能が発揮されず、また担持量が49質量%を越える場合は、分散性が低下するだけでなく、経済的な面からも好ましくない。触媒に対する酸化ニッケルと酸化亜鉛の担持量の和は5〜50質量%であり、8〜47質量%が好ましく、特に10〜45質量%が好ましい。担持量の和が5質量%未満では、触媒性能が発揮されず、また担持量の和が50質量%を超える場合は、酸化ニッケルおよび酸化亜鉛の分散性が低下するだけでなく、経済的な面からも好ましくない。
【0046】
なお、上記の方法で調製された脱硫剤を使用する場合にあっては、そのまま反応に供することもできるが、前処理として水素等による還元処理を行ってもよい。その条件として温度は150〜500℃、好ましくは250〜400℃が望ましく、時間は0.1〜10時間、好ましくは0.5〜5時間が望ましい。
【0047】
そして、アルミナを担体とし、銅及びパラジウムから選ばれる少なくとも1種の金属を2〜20質量%含有し、かつ塩素を2〜20質量%含有し、その比表面積が200m2/g以上とした脱硫剤を使用してもよい。
【0048】
ここで、担体であるアルミナは、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、σ−アルミナ等の種々のアルミナを使用することができるが、多孔質で高比表面積であるアルミナが好ましく、中でもγ−アルミナが適している。
【0049】
担体に担持させる金属化合物としては、銅及びパラジウムの塩化物が適しており、具体的には塩化第一銅(CuCl)、塩化第二銅(CuCl)、一塩化パラジウム(PdCl)、二塩化パラジウム(PdCl)、四塩化パラジウム(PdCl)があるが、なかでも、塩化第一銅及び二塩化パラジウムが最も適している。
【0050】
これらの担体に金属化合物を担持する方法は、含浸法、混練法、イオン交換法、共沈法など公知の方法を用いることができるが、所定量の担体に、各金属の塩化物を水に溶解した溶液を含浸させる方法が適している。この時、溶液に塩酸を加えることにより、金属塩化物が溶解しやすくなり、金属の分散性を向上でき、担持量を多くできるので好ましい。
【0051】
含浸した後の脱硫剤は、90℃で10〜15時間以上乾燥するか、あるいは、酸素の存在する雰囲気で300〜400℃の温度で2時間程度焼成し、水分を十分除くことが重要である。乾燥が十分でないと吸着能が低下する。焼成すると、金属塩化物の一部は酸化物等に変化する場合もあるが、上記条件で乾燥あるいは焼成を行えば、その割合は僅かである。さらに、一度、硫黄成分を吸着し、吸着能が低下した脱硫剤も、上記条件で焼成することにより再生が可能である。
【0052】
脱硫剤の比表面積は200m2/g以上、より好ましくは250m2/g以上であることが好ましい。比表面積が200m2/g未満では、硫黄成分を吸着する活性点の数が少なくなり、吸着能力が低下する。また脱硫剤の平均細孔直径は、1nm以上が好ましい、細孔直径が小さすぎる場合、硫黄成分の細孔内への拡散が阻害され、吸着能力が低下する。尚、通常、比表面積、平均細孔直径は、窒素吸着法により測定される。
【0053】
また、脱硫剤は、銅及びパラジウムから選ばれる少なくとも1種を2〜20質量%、より好ましくは2〜15質量%含有し、かつ、塩素を2〜20質量%含有することが好ましい。金属及び塩素の担持量が少ないと、吸着活性点の数が少なくなるため、硫黄成分の吸着能が低くなり、逆に多すぎても担持した金属及び塩素、即ち吸着活性点の分散性が低下し、担持した金属及び塩素が無駄になるばかりでなく、比表面積、細孔直径が低下するなど物性の面へも悪影響を与える。脱硫剤における比表面積、また金属及び塩素の担持量が上記範囲に含まれるように、使用される担体の種類、また金属化合物及び金属化合物を含浸させる際に使用される塩酸の量は、適宜選択されるが、特に脱硫剤における比表面積については、担体の種類の選択が重要である。
【0054】
前記した脱硫剤の形状は、特に限定されず、通常、この種の脱硫剤に用いられている種々の形状、例えば、球形、円柱状、四葉型、ハニカム状等を採用することができる。また、脱硫剤の大きさは、脱硫剤の形状に応じて適宜決定すればよい。
【0055】
また、このような脱硫剤を備えた脱硫フィルタ5は、燃料油貯蔵タンク3から自動車2との間の燃料油通過経路4に、燃料油が通過可能に設置すればよい。
なお、図4では、1つの燃料油通過経路4(41,42)に1つの脱硫フィルタ5を設置した例を示しているが、例えば、図5(A)に示すように、脱硫フィルタ5a,5bを直列に2つ備えるようにして、それぞれの脱硫フィルタ5に異なる脱硫剤を備えるようにすれば、燃料油中の硫黄成分を段階的に吸着することができ、燃料油に対してより効率的な脱硫を実施できる。
ここで、この図5(A)及び後記する図5(B)にあっては、図5の矢印方向に(下から上に向かって)燃料油が送り出されていく。
【0056】
また、図5(B)のように、脱硫フィルタ5c,5dを並列に2つ備えるようにして、弁511により一方の脱硫フィルタ(例えば脱硫フィルタ5c)を通過可能なようにして、燃料油を供給するにつれて当該脱硫フィルタ5c内の脱硫剤の脱硫効果が低下したときには、使用していない他方の脱硫フィルタ5dに切り換えるようにして、これを順次繰り返すようにすれば、脱硫性能を維持した状態で燃料油の供給を継続することができる。
【0057】
次に、本発明の燃料油の供給システム7を利用して、燃料油を供給する方法を実施する手順を、図6のフローチャートを用いて説明する。
図1に示すように、自動車2がガソリンスタンド1へ入車して、燃料油(ここではハイオクガソリン)を供給する給油機10に接近すると、自動車2内に搭載されたナビゲーション装置9が、送受信部91において給油機10に接続されるサーバ装置8から発信される無線信号を受信して通信を開始する。
【0058】
ナビゲーション装置9が給油のメインメニューにアクセスすると(S1)、サーバ装置8ではこのアクセスしたという信号を受信して、図7に示されるような、脱硫処理適用要否選択画面をナビゲーション装置9に送信する(S2)。
ここで、ナビゲーション装置9を操作する顧客は、供給される燃料油(ハイオクガソリン)に対して、脱硫処理を適用するか否かの選択をする。加えて、燃料油に対する脱硫処理を行う場合には、供給される燃料油における硫黄成分の含有量を0〜1ppm程度とするか(超低硫黄燃料油とするか)否かを併せて選択するようにする。自動車2側の顧客が超低硫黄燃料油を選択しない場合には、供給される燃料油における硫黄成分の含有量を3〜10ppm程度とする(低硫黄燃料油とする)ことになる。そして、これらの結果について、ナビゲーション装置9を操作して操作部93から入力すると、制御部94が送受信部91から選択結果の情報をサーバ装置8に送信するようにする(S3)。
【0059】
サーバ装置8では、前記したナビゲーション装置9の選択結果から、自動車2側の顧客が脱硫処理を必要とするかを判断して(S4)、また、脱硫処理を選択する場合には、超低硫黄燃料油とするか否かについても併せて判断する(S5)。
制御部82は、顧客が脱硫処理を必要とし、供給される燃料油として超低硫黄燃料油を選択する場合にあっては、燃料油通過経路4として燃料油通過経路41を、脱硫処理を必要とするが、供給される燃料油として超低硫黄燃料油を選択しない場合には、低硫黄燃料油を供給することができる燃料通過経路42を、顧客が脱硫処理を必要としない場合には、燃料油通過経路43をそれぞれ選定する(S6〜S8)。
また、制御部82は、燃料油通過経路選定手段85に対して、選定した燃料油通過経路41,42,43の情報を伝達し、かかる情報を受けた燃料油通過経路選定手段85の指示により、切換弁851は、燃料油が通過する経路について燃料油通過経路選定手段85が選定したものとなるように適宜切り換わる。
【0060】
燃料油通過経路4が選定され、燃料油が所望の当該経路4を通過するように切換弁851が切り換えられたら、給油ノズル104が自動車2の燃料タンク21に接続された後に、給油機10は自動車2に対して燃料油の供給を行う(S9)。なお、燃料油貯蔵タンク3から燃料タンク21に供給される燃料の流量は、燃料油流量検出手段102により、また、燃料油中の硫黄成分の含有量は、硫黄成分含有量検出手段103によりそれぞれ検出されることになる。
【0061】
燃料油の供給(給油)が終わると、料金算出手段83は、燃料油流量検出手段102によって検出された流量をもとに給油量を算出し、また、燃料油情報蓄積手段841から取り込んだ燃料および添加剤の単価の情報から料金を算出する(S10)。
【0062】
そして給油量および料金情報が表示された料金情報画面をナビゲーション装置9に送信すると(S11)、顧客は、ナビゲーション装置9に表示された料金情報を確認し、料金を支払って、ガソリンスタンド1から出車する。一方、サーバ装置8は、図8に示されるように売上日付、脱硫処理の要否、燃料油の種類(低硫黄燃料油か超低硫黄燃料油)、給油量、料金などの売上情報を売上情報蓄積手段842に記録する(S12)。
【0063】
前記した本発明によれば、ガソリンスタンド1にて自動車2に燃料油を供給するに際し、自動車2から発される、燃料油に対する脱硫処理を行うか否かの情報に応じて、燃料油通過経路選定手段85が脱硫フィルタ5を備えた燃料油通過経路41,42あるいは脱硫フィルタを備えない燃料油通過経路43を選定した上で、当該燃料油通過経路41、42,43を通過させて燃料油を自動車2に供給するようにしている。よって、ガソリンスタンド1にて燃料油を自動車2に供給する際の燃料油の低硫黄化の選択が、自動車2側の顧客の要望に応じて簡便に実施される。
【0064】
加えて、供給する燃料油の脱硫処理を行う場合には、燃料油貯蔵タンク3から送り出される燃料油を、脱硫剤を備えた脱硫フィルタ5を通過させて自動車2に供給するようにしている。よって、燃料油貯蔵タンク3に貯蔵された段階では、燃料油について低硫黄化(超低硫黄化含む)がなされていない場合であっても、ガソリンスタンド1における供給過程で硫黄成分を効率よく脱着して、硫黄成分の含有量が少ない燃料油を効率よく供給できるため、硫黄成分の含有量の低い燃料油の供給を低コストで実施することができることとなる。更には、脱硫剤により硫黄成分を吸着除去するので、燃料油が変質することもない。
【0065】
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。
例えば、前記した実施形態では、燃料油の供給対象の車両として自動車2を例に挙げて説明したが、これには限定されず、バイク、トラックバス、トラクター等の燃料油をエンジンの燃料とする車両や、燃料油を搭載して移動する車両(灯油輸送車)としてもよい。
【0066】
前記した実施形態では、燃料油通過経路4として、通過後の燃料油の硫黄成分の含有量を0〜1ppm程度とする(超低硫黄燃料油とする)超低硫黄燃料油用脱硫フィルタ51が設置された燃料油通過経路41と、通過後の燃料油の硫黄成分の含有量を3〜10ppm程度とする(低硫黄燃料油とする)低硫黄燃料油用脱硫フィルタ52が設置された燃料油通過経路42、及び脱硫フィルタを設置しない燃料油通過経路43を備えた例を示したが、これには限定されず、例えば、顧客側における通過後の燃料油の硫黄成分の含有量の選択性をより多岐に渡るようにするため、脱硫フィルタ5を設置した燃料油通過経路を3つまたはそれ以上として、それぞれの燃料油通過経路4に対して通過後の燃料油における硫黄成分の含有量が異なるように調整された脱硫フィルタ5を設置するようにしてもよい。一方、脱硫フィルタ5が設置された燃料油通過経路を1つとしても問題はない。
【0067】
前記した実施形態では、ナビゲーション装置9の脱硫処理適用要否選択画面では、脱硫処理する場合にあっては、超低硫黄燃料油とするか否かの二者択一的な選択ができるものであったが、これには限定されず、ナビゲーション装置9から、供給される燃料油についての硫黄成分の含有量を具体的に指示できるようにしてもよい。
【0068】
前記した実施形態では、自動車2に搭載されたナビゲーション装置9によって、給油機10と接続されるサーバ装置8と無線通信していたが、これには限定されず、例えば自動車2内の顧客が口頭により、ガソリンスタンド1の従業員に燃料油への脱硫処理の必要性の有無を伝達し、従業員が給油機10を操作することによって脱硫処理をするか否かを選択して燃料油を供給するようにしてもよい。なお。この場合には、給油機10に表示部105のほか、操作部などを設けて、従業員が操作しやすいように構成することが好ましい。
【0069】
また、遠隔操作手段としてはナビゲーション装置9のほか、顧客の情報が入力されたIDタグ等や、携帯電話や携帯情報端末(PDA)などの携帯機器その他のサーバ装置8と通信可能な任意の端末を採用できる。
一方、無線通信するもの以外でも、例えば、給油機10と有線により接続された汎用コンピュータなどによって操作するようにしてもよい。
【0070】
更には、サーバ装置8の通信は、自動車2が給油所であるガソリンスタンド1に入車して、所望の燃料の給油機10に停車して行っていたが、各実施形態ではナビゲーション装置9によって無線通信が可能なので、例えばガソリンスタンド1が混雑している場合などでは順番待ちしている間に顧客がそれぞれナビゲーション装置9を操作するようにしてもよい。このようにすれば、給油機10に到達するまでに脱硫処理の可否の連絡処理が終了するので、給油機10ではすぐに給油ができ、顧客の待ち時間およびガソリンスタンド1での処理時間を短縮できることとなり好ましい。
【0071】
前記した実施形態では、脱硫手段である脱硫フィルタ5の態様を、図4または図5の例を用いて説明したが、これには限定されず、例えば、3つ以上の脱硫フィルタ5を燃料油通過経路に対して直列あるいは並列に配設するようにしてもよい。
その他、本発明の実施における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、例えば、ガソリンスタンドなどの給油所における燃料油の供給手段として有利に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の燃料油の供給システムを実施する一態様を示した概略図である。
【図2】遠隔操作手段であるナビゲーション装置の概略を示したブロック図である。
【図3】本発明の燃料油の供給システムの概略を示したブロック図である。
【図4】燃料油貯蔵部と給油機との間の燃料油通過経路の一態様を示した概略図である。
【図5】脱硫フィルタの態様を示した図であり、(A)は2つの脱硫フィルタを直列に配設した態様を示す概略図、(B)は2つの脱硫フィルタを並列に配設した態様を示す概略図である。
【図6】本発明の燃料油の供給方法を実施する手順を示したフローチャートである。
【図7】ナビゲーション装置の表示部に表示される脱硫処理適用要否選択画面の一態様を示した概略図である。
【図8】サーバ装置の表示部に表示される売上表の一態様を示した概略図である。
【符号の説明】
【0074】
1 … ガソリンスタンド(給油所)
2 … 自動車(車両)
3 … 燃料油貯蔵タンク(燃料油貯蔵手段)
4 … 燃料油通過経路
41,42,43… 燃料油通過経路
5 … 脱硫フィルタ(脱硫手段)
5a,5b,5c、5d … 脱硫フィルタ
51… 超低硫黄燃料油用脱硫フィルタ
52… 低硫黄燃料油用脱硫フィルタ
7 … 燃料油供給システム
8 … サーバ装置
9 … ナビゲーション装置
10… 給油機
85… 燃料油通過経路選定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給油所にて車両に燃料油を供給する燃料油の供給方法であって、
車両から発される燃料油に脱硫処理を行うか否かの情報に応じて、供給する燃料油に脱硫処理を行うか否かを選択し、
前記脱硫処理を行う場合には、燃料油貯蔵手段から送り出された燃料油を、脱硫剤を備えた脱硫手段を通過させて前記車両に供給することを特徴とする燃料油の供給方法。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料油の供給方法において、
前記脱硫処理が行われる場合の車両に供給される燃料油における硫黄成分の含有量が10ppm以下であることを特徴とする燃料油の供給方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料油の供給方法において、
前記脱硫処理が行われる場合の車両に供給される燃料油における硫黄成分の含有量が1ppm以下であることを特徴とする燃料油の供給方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の燃料油の供給方法において
前記燃料油が、ガソリン、軽油、灯油、ナフサのいずれかであることを特徴とする燃料油の供給方法。
【請求項5】
給油所にて車両に燃料油を供給する燃料油の供給システムであって、
燃料油を貯蔵する燃料油貯蔵手段と、
前記車両に燃料油を供給する給油機と、
前記燃料油貯蔵手段と前記給油機との間に、燃料油が通過可能に配され、脱硫剤を備えた脱硫手段を備えた第1の燃料油通過経路と、前記脱硫手段を備えない第2の燃料油通過経路の少なくとも2つの燃料油通過経路と、
前記車両から発される燃料油に対する脱硫処理を行うか否かの情報に応じて、前記燃料油通過経路を選択する燃料油通過経路選定手段を備えたことを特徴とする燃料油の供給システム。
【請求項6】
請求項5に記載の燃料油の供給システムにおいて、
前記第1の燃料油通過経路が、通過後の燃料油における硫黄成分の含有量を0〜1ppmとする脱硫手段を備えた燃料油通過経路と、
通過後の燃料油における硫黄成分の含有量を3〜10ppmとする脱硫手段を備えた燃料油通過経路を含む少なくとも2つの燃料油通過経路からなることを特徴とする燃料油の供給システム。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の燃料油の供給システムにおいて、
前記車両からの情報が、当該情報を無線通信により送信可能な遠隔操作手段により発されることを特徴とする燃料油の供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−188236(P2006−188236A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381481(P2004−381481)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】