説明

燃料添加剤成分を検出する方法

燃料の成分及び/又は別の燃料添加剤成分を含有する分析物である燃料添加剤成分を定性的又は定量的に検出する方法であって、前記分析物を指示薬と接触させ、かつ燃料添加剤成分と指示薬との間の相互作用によって引き起こされる、分析物中の指示薬の色の性質の変化を測定することによって、燃料添加剤成分を定性的又は定量的に検出する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にディーゼル燃料又はガソリン燃料中の、燃料添加剤成分を定性的又は定量的に検出する方法に関する。さらに、本発明の対象は、ディーゼル燃料又はガソリン燃料中の燃料添加剤成分を定性的又は定量的に検出するこの方法の使用である。
【0002】
ガソリン燃料は炭化水素混合物からなり、前記混合物は、例えば、酸素含有有機成分の添加剤並びに性質の改善のための添加剤を含有していてよい。無鉛ガソリン燃料中で使用されるそのような添加剤(Additive)は、例えば、酸化防止剤、腐食抑制剤、金属不活性化剤及び清浄剤である。前記添加剤の使用はとりわけ、腐食、インテークシステム中の堆積、内燃機関中のスラッジ形成及び弁閉塞を回避するために行われる。添加剤濃度はガソリン燃料中で通常、0.1質量%未満の範囲内である。前記添加剤はたいてい、燃料製造者によって既に添加剤パッケージの形で配量され、かつ精油所においてタンカーに充填する際に、ガソリン燃料に混合される。
【0003】
ディーゼル燃料の場合にも、品質改善のための添加剤の添加は全面的に定着している。その際に、ディーゼル燃料に、たいてい添加剤パッケージは、0.1質量%未満の全濃度で添加される。ディーゼル燃料用の最も一般に使われている添加剤は、流動性向上剤、潤滑性向上剤、着火性向上剤、清浄剤、腐食抑制剤及び消泡剤である。
【0004】
添加剤パッケージ中及び特に燃料自体中の燃料添加剤成分の分析的検出は、これまで問題があった。燃料中の前記パッケージの少ない配合量(典型的には150〜600mg/kg)に基づいて、個々の添加剤成分の濃度は数ppmに過ぎない。さらに、化学化合物の複雑なマトリックスとしての燃料は、分析を困難にする。これまで、技術水準において、燃料添加剤成分のための信頼できる検出として、独国特許出願公開(DE-A)第102 46 210号明細書(1)による本出願人の質量分光分析による分析法のみが記載されている。しかしながら、この方法は、実施技術的上及び装置上、費用がかかる。
【0005】
故に、本発明の課題は、特に"オンサイト(vor Ort)"、すなわち精油所中で又は給油所でも実施されることができる、燃料添加剤成分のためのより単純に実施されることができる検出法を提供することであった。
【0006】
意外なことに、分析物中の燃料添加剤成分と接触され、かつこれと相互作用する指示薬の、特に測光学的に容易に測定可能な色の性質の変化がこのために適した方法であることが目下見出された。
【0007】
それに応じて、燃料の成分及び/又は別の燃料添加剤成分を含有する分析物である燃料添加剤成分を定性的又は定量的に検出する方法が見出され、前記方法は、前記分析物を指示薬と接触させ、かつ燃料添加剤成分と指示薬との間の相互作用によって引き起こされる、分析物中の指示薬の色の性質の変化を測定することによって、特徴付けられている。
【0008】
本発明による方法は定性的及び定量的に使用されることができる、すなわち、本方法を用いて、特定の燃料添加剤成分が存在するかどうか、かつどのくらいの量でこれが存在するかが検出されることができる。前記検出は、特に燃料自体中で、しかしまた母体となる添加剤パッケージ中でも実施されることができる。分析物、すなわち、測定試料は、それゆえ、燃料、又は必要な場合には測定を実施するために適した不活性溶剤で希釈されることができる燃料添加剤パッケージである。
【0009】
指示薬として、燃料添加剤成分との接触及び相互作用の際にそれらの色の性質を変化させる原則的に全ての指示薬が考慮に値し、これらは、可視光線の領域で又は蛍光挙動又は化学発光挙動の領域で分類されることができる。
【0010】
好ましい一実施態様において、酸塩基指示薬(pH指示薬又は中和指示薬とも呼ばれる)が使用される。これらの指示薬の母体となる酸又は塩基は、それらのプロトリシスもしくはデプロトリシスの際に、可視領域中で通常生じる呈色変化を示す。酸塩基指示薬の典型的な例は、クレゾールレッド、メタニルイエロー、チモールブルー、m−クレゾールパープル、トロペオリンOO、2,6−ジニトロフェノール、ベンジルオレンジ、2,4−ジニトロフェノール、ベンゾプルプリン4B、ジメチルイエロー、コンゴーレッド、ブロモフェノールブルー、ブロモクロロフェノールブルー、メチルオレンジ、α−ナフチルレッド、ブロモクレゾールグリーン、2,5−ジニトロフェノール、混合指示薬5、メチルレッド、エチルレッド、クロロフェノールレッド、カルミン酸、アリザリンレッドS、2−ニトロフェノール、リトマス、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールレッド、4−ニトロフェノール、アリザリン、ブロモチモールブルー、ブロモキシレノールブルー、ブラジリン、ニトラジンイエロー、ヘマトキシリン、フェノールレッド、3−ニトロフェノール、ニュートラルレッド、クレゾールレッド、m−クレゾールパープル、ブリリアントイエロー、オレンジI、α−ナフトールフタレイン、チモールブルー、p−キシレノールブルー、o−クレゾールフタレイン、フェノールフタレイン、α−ナフトールベンゼイン、チモールフタレイン、ウォーターブルー、アリザリンイエロー2G、アリザリンイエローR、ナイルブルーA、α−ナフトールバイオレット、ニトロアミン、トロペオリンOOO2、トロペオリンO、イプシロンブルー(Epsilonblau)及びアシッドフクシンである。
【0011】
酸塩基指示薬の場合の呈色変化は、− このことは他の指示薬についても当てはまる − 単色又は二色であってよい。この変化はシャープかつ識別可能であるべきである。これが当てはまらない場合には、個々の適した指示薬は、混合指示薬に混合される。
【0012】
特に好ましい酸塩基指示薬として、ブロモクレゾールグリーン、α−ナフチルレッド、2,5−ジニトロフェノール、混合指示薬5又はメチルレッドが使用される。
【0013】
酸塩基指示薬は、呈色変化を生じさせるために、燃料添加剤成分中の塩基官能性を特に利用する。
【0014】
本発明による方法のために原則的に使用可能な別の指示薬は、吸着指示薬、例えばフルオレセイン又はエオシン、蛍光指示薬、例えばフルオレセイン、エオシン、ベンゾフラビン、フロキシン、クロモトロプ酸、メチルウンベリフェロン、ベンズキノリン、モリン、ナフトール類、ナフチオン酸、キニン、クマリン又はアクリジン、化学発光指示薬、例えばルシゲニン、レドックス指示薬、例えばニュートラルレッド、サフラニン又はメチレンブルー、及び金属指示薬(メタロクロミック指示薬)である。
【0015】
燃料添加剤成分の定性検出のためには、指示薬及び分析物を一緒にした際に特殊な呈色変化が、例えばブロモクレゾールグリーンの場合に、黄色(pH 3.8を下回る酸性範囲)から青色(pH 5.4を上回るアルカリ性範囲)まで、発生するかどうかが観察される。呈色変化の発生は、探される燃料添加剤成分の存在の検出である。呈色変化が、その他の影響により引き起こされていないことを保証するために、検出すべき燃料添加剤成分の試験量が添加された分析物及び/又は添加剤添加されていない(unadditivierten)燃料を含有する分析物を用いるブラインド試験が推奨される。
【0016】
燃料添加剤成分の定量検出のためには、色の強度は、分析物中の色の性質の変化が行われた後に、すなわち、呈色変化が行われた後に、測定される。このためには、好ましい一実施態様において、通常、市販の光度計の使用下での測光学的測定が適している。測定は通例、特定の分析物量に規定量の指示薬を添加し、かき混ぜ(例えば振とうによる)、かつ試料を、試料容器(キュベット)中で、特定の波長の光を用いて測るようにして実施される。ブラインド試料又は測定すべき燃料添加剤成分の異なる量で作成された校正曲線との相関での測定された吸光度は、分析物中の燃料添加剤成分の量を与える。酸塩基指示薬としてブロモクレゾールグリーンを用いて操作する場合に、例えば、620nmの波長での吸光度の測光学的測定が推奨される。
【0017】
好ましい一実施態様において、分析物として、検出すべき燃料添加剤成分に加えて場合により別の燃料添加剤成分を含有するディーゼル燃料又はガソリン燃料が使用され、すなわち、測定は、精油所から供給されかつ商業的に入手可能なディーゼル燃料又はガソリン燃料について直接実施される。
【0018】
通常、自動車における内燃機関(オットーエンジン)を運転するためのガソリン燃料は、通例70〜180℃の沸点範囲を有する石油ラフィネートである。これらは通常、アルカン、アルケン、シクロアルカン、シクロアルケン及び芳香族化合物からなる可変の組成のC5〜C12−炭化水素混合物である。ガソリン燃料は、好ましくは無鉛で使用される。
【0019】
燃料添加剤成分を検出する本発明による方法は原則的に、分析物としての燈油中で実施されることもできる。より高沸点のベンジン品質としての燈油(沸点範囲約180〜270℃)は、特に航空機分野において、使用される。
【0020】
通常、ディーゼル燃料(中間留分燃料)は、通例100〜400℃の沸点範囲を有する石油ラフィネートである。これらは、たいてい、360℃まで又はまたこれを上回る95%点を有する留出物である。しかしまた、これらは、例えば最大345℃の95%点及び最大0.005質量%の硫黄含量又は例えば285℃の95%点及び最大0.001質量%の硫黄含量により特徴付けられている、いわゆる"超低硫黄ディーゼル(Ultra low sulphur diesel)"又は"シティーディーゼル(City diesel)"であってもよい。精製(Raffination)により入手可能な、主成分がより長鎖のパラフィンであるディーゼル燃料に加えて、石炭ガス化又はガス液化["gas to liquid" (GTL)燃料]により得ることができるそのような燃料が適している。前記のディーゼル燃料と、再生燃料、例えばバイオディーゼル又はバイオエタノールとの混合物も適している。低い硫黄含量を有する、すなわち硫黄0.05質量%未満、好ましくは0.02質量%未満、特に0.005質量%未満及び殊に0.001質量%未満の硫黄含量を有するディーゼル燃料が現在、特に興味深い。ディーゼル燃料はまた、水を例えば20質量%までの量で、例えばディーゼル−水−マイクロエマルションの形で又はいわゆる"ホワイトディーゼル"として、含有していてもよい。
【0021】
好ましい一実施態様において、本発明による方法は、清浄剤作用を有する極性の燃料添加剤成分の検出のために使用され、この成分は通常添加剤として、たいていの燃料品種中に、特にディーゼル燃料中及びガソリン燃料中、並びに特にディーゼル燃料又はガソリン燃料用の、母体となる添加剤組成物(添加剤パッケージ)中に存在する。たいてい酸−塩基相互作用の意味で指示薬と相互作用する、特に塩基官能性又は極性官能基を有する適した極性の清浄剤添加剤は、以下に説明されている。
【0022】
挙げられた添加剤組成物及び燃料は、さらに付加的に、それらとは異なる別の燃料添加剤成分、例えば解乳化剤、キャリヤー油(Traegeroele)、溶剤及び希釈剤、腐食抑制剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、帯電防止剤、カラーマーカー、流動性向上剤、潤滑性向上剤、着火性向上剤及び消泡剤を含有していてよい。適した別の燃料添加剤成分は、同様に以下に説明されている。
【0023】
A)清浄剤添加剤
清浄剤添加剤(清浄剤)として、通常、ガソリン燃料及びディーゼル燃料用の堆積防止剤が挙げられる。好ましくは、清浄剤添加剤は、85〜20 000の数平均分子量(Mn)を有する少なくとも1つの疎水性炭化水素基と、次のものから選択されている少なくとも1つの極性原子団とを有する両親媒性物質である:
(a)6個までの窒素原子を有するモノアミノ基又はポリアミノ基、その場合に少なくとも1個の窒素原子は塩基性を有する;
(b)場合によりヒドロキシル基との組合せでの、ニトロ基;
(c)モノアミノ基又はポリアミノ基との組合せでのヒドロキシル基、その場合に少なくとも1個の窒素原子は塩基性を有する;
(d)カルボキシル基又はそれらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩;
(e)スルホン酸基又はそれらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩;
(f)ヒドロキシル基、モノアミノ基又はポリアミノ基(その場合に少なくとも1個の窒素原子は塩基性を有する)又はカルバメート基が末端基となっているポリオキシ−C2〜C4−アルキレン原子団;
(g)カルボン酸エステル基;
(h)無水カルボン酸から誘導され、ヒドロキシ基及び/又はアミノ基及び/又はアミド基及び/又はイミド基を有する原子団;及び/又は
(i)置換フェノール類と、アルデヒド及びモノアミン又はポリアミンとのマンニッヒ反応により生じる原子団;
前記の清浄剤添加剤中の疎水性炭化水素基は、燃料中の十分な溶解度を配慮して、85〜20000、特に113〜10000、とりわけ300〜5000の数平均分子量(Mn)を有する。特に極性原子団(a)、(c)、(h)及び(i)との組合せでの、典型的な疎水性炭化水素基として、その都度Mn=300〜5000、特に500〜2500、とりわけ700〜2300を有するポリプロペニル基、ポリブテニル基及びポリイソブテニル基が考慮に値する。
【0024】
清浄剤添加剤の前記の基の例として、次のものを挙げることができる:
モノアミノ基又はポリアミノ基(a)を有する添加剤は、好ましくは、ポリプロペン又は常用の(すなわち主に内部の二重結合を有する)Mn=300〜5000を有するポリブテン又はポリイソブテンをベースとするポリアルケンモノアミン又はポリアルケンポリアミンである。添加剤の製造の際に、主に内部の二重結合を有する(たいていβ及びγ位に)ポリブテン又はポリイソブテンから出発する場合には、塩素化及び引き続きアミノ化によるか、又はカルボニル化合物又はカルボキシル化合物への空気又はオゾンでの二重結合の酸化及び引き続き還元的(水素化)条件下でのアミノ化による製造経路が考えられる。アミノ化のためには、ここでは、アミン、例えばアンモニア、モノアミン又はポリアミン、例えばジメチルアミノプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン又はテトラエチレンペンタミンが使用されることができる。ポリ(イソ)ブテンをベースとする相応する添加剤は特に、欧州特許(EP-B)第244 616号明細書に、ポリプロペンをベースとする相応する添加剤は特に、国際公開(WO)第94/24231号パンフレットに記載されている。
【0025】
モノアミノ基(a)を有する好ましい別の添加剤は、平均重合度P=5〜100を有するポリイソブテンと、窒素酸化物又は窒素酸化物と酸素とからなる混合物との反応生成物の水素化生成物であり、例えばこれらは特に国際公開(WO)第97/03946号パンフレットに記載されている。
【0026】
モノアミノ基(a)を有する好ましい別の添加剤は、ポリイソブテンエポキシドから、アミンとの反応及びその後のアミノアルコールの脱水及び還元により得ることができる化合物であり、例えばこれらは特に独国特許出願公開(DE-A)第196 20 262号明細書に記載されている。
【0027】
場合によりヒドロキシル基との組合せでの、ニトロ基(b)を有する添加剤は、好ましくは、平均重合度P=5〜100又は10〜100のポリイソブテンと、窒素酸化物又は窒素酸化物と酸素とからなる混合物との反応生成物であり、例えばこれらは特に国際公開(WO)第96/03367号パンフレット及び国際公開(WO)第96/03479号パンフレットに記載されている。これらの反応生成物は、通例、純粋なニトロポリイソブテン(例えばα,β−ジニトロポリイソブテン)及び混合されたヒドロキシニトロポリイソブテン(例えばα−ニトロ−β−ヒドロキシポリイソブテン)からなる混合物である。
【0028】
モノアミノ基又はポリアミノ基との組合せでのヒドロキシル基(c)を有する添加剤は特に、Mn=300〜5000を有し、好ましくは主に末端の二重結合を有するポリイソブテンから得ることができるポリイソブテンエポキシドと、アンモニア、モノアミン又はポリアミンとの反応生成物であり、例えばこれらは特に欧州特許出願公開(EP-A)第476 485号明細書に記載されている。
【0029】
カルボキシル基又はそれらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩(d)を有する添加剤は、好ましくは、500〜20 000の全モル質量を有し、C2〜C40−オレフィンと無水マレイン酸とのコポリマーであり、それらのカルボキシル基は、完全にか又は部分的にアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩に変換されており、かつカルボキシル基の残されている残基はアルコール又はアミンと反応されている。そのような添加剤は特に、欧州特許出願公開(EP-A)第307 815号明細書から知られている。そのような添加剤は、弁座摩滅を防止するために主に使用され、かつ例えば国際公開(WO)第87/01126号パンフレットに記載されているように、常用の燃料清浄剤、例えばポリ(イソ)ブテンアミン又はポリエーテルアミンとの組合せで有利に使用されることができる。
【0030】
スルホン酸基又はそれらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩(e)を有する添加剤は好ましくは、スルホコハク酸アルキルエステルのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であり、例えばこの添加剤は特に、欧州特許出願公開(EP-A)第639 632号明細書に記載されている。そのような添加剤は、弁座摩滅を防止するために主に使用され、かつ常用の燃料清浄剤、例えばポリ(イソ)ブテンアミン又はポリエーテルアミンとの組合せで有利に使用されることができる。
【0031】
ポリオキシ−C2〜C4−アルキレン原子団(f)を有する添加剤は、好ましくはポリエーテル又はポリエーテルアミンであり、これらは、C2〜C60−アルカノール、C6〜C30−アルカンジオール、モノ−C2〜C30−アルキルアミン又はジ−C2〜C30−アルキルアミン、C1〜C30−アルキルシクロヘキサノール又はC1〜C30−アルキルフェノールと、ヒドロキシル基又はアミノ基あたり1〜30molのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドとの反応により及び、ポリエーテルアミンの場合には、引き続きアンモニア、モノアミン又はポリアミンでの還元的アミノ化により得ることができる。そのような生成物は特に、欧州特許出願公開(EP-A)第310 875号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第356 725号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第700 985号明細書及び米国特許(US-A)第4 877 416号明細書に記載されている。ポリエーテルの場合には、そのような生成物はキャリヤー油特性も満たす。このための典型的な例は、トリデカノールブトキシラート又はイソトリデカノールブトキシラート、イソノニルフェノールブトキシラート並びにポリイソブテノールブトキシラート及びポリイソブテノールプロポキシラート並びにアンモニアとの相応する反応生成物である。
【0032】
カルボン酸エステル基(g)を有する添加剤は、好ましくはモノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸と、長鎖のアルカノール又はポリオールとからなるエステル、特に100℃で2mm2/sの最小粘度を有するそのようなエステルであり、例えばこれらは特に独国特許出願公開(DE-A)第38 38 918号明細書に記載されている。モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸として、脂肪族又は芳香族の酸が使用されることができ、エステルアルコールもしくはエステルポリオールとして、例えば炭素原子6〜24個を有する長鎖の代表例がとりわけ適している。前記エステルの典型的な代表例は、イソオクタノール、イソノナノール、イソデカノール及びイソトリデカノールのアジパート、フタラート、イソフタラート、テレフタラート及びトリメリタートである。そのような生成物はキャリヤー油特性も満たす。
【0033】
ヒドロキシ基及び/又はアミノ基及び/又はアミド基及び/又はイミド基を有し、無水コハク酸から誘導される原子団(h)を有する添加剤は好ましくは、熱的経路での又は塩素化ポリイソブテンを経ての、Mn=300〜5000を有する常用又は高反応性のポリイソブテンと無水マレイン酸との反応によって得ることができるポリイソブテニルコハク酸無水物の相応する誘導体である。この場合に、脂肪族ポリアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン又はテトラエチレンペンタミンとの誘導体が特に興味深い。ヒドロキシ基及び/又はアミノ基及び/又はアミド基及び/又はイミド基を有する原子団は、例えば、カルボン酸基、酸アミド、アミド官能基に加えてさらに遊離アミン基を有するジアミン又はポリアミンの酸アミド、酸官能基及びアミド官能基を有するコハク酸誘導体、モノアミンとのカルボン酸イミド、イミド官能基に加えてさらに遊離アミン基を有するジアミン又はポリアミンとのカルボン酸イミド、及びジアミン又はポリアミンと2つのコハク酸誘導体との反応によって形成されるジイミドである。そのような燃料添加剤は特に、米国特許(US-A)第4 849 572号明細書に記載されている。
【0034】
置換フェノール類とアルデヒド及びモノアミン又はポリアミンとのマンニッヒ反応により生じる原子団(i)を有する添加剤は、好ましくは、ポリイソブテン置換されたフェノール類と、ホルムアルデヒド及びモノアミン又はポリアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン又はジメチルアミノプロピルアミンとの反応生成物である。ポリイソブテニル置換されたフェノール類は、Mn=300〜5000を有し、常用又は高反応性のポリイソブテンに由来しうる。そのような"ポリイソブテン−マンニッヒ塩基"は特に、欧州特許出願公開(EP-A)第831 141号明細書に記載されている。
【0035】
挙げられた個々の燃料添加剤のより正確な定義については、技術水準の前記の刊行物の開示に関して本明細書と明らかに関連づけられている。
【0036】
本発明による方法の場合に群(h)からの清浄剤添加剤が特に好ましい。これらは、特に、ポリイソブテニル置換されたコハク酸イミド、殊に脂肪族ポリアミンとのイミドである。そのようなポリイソブテニル置換されたコハク酸イミドは主として、ディーゼル燃料中で清浄剤作用を有する極性の燃料添加剤成分として使用される。
【0037】
B)解乳化剤
解乳化剤は、乳濁液の凝離を生じさせる物質である。これらは、相境界上で効果のあるイオノゲン物質並びに非イオノゲン物質であってよい。それに応じて、原則的に全ての表面活性物質が解乳化剤として適している。特に適した解乳化剤は、アニオン活性化合物、例えばアルキル置換されたフェノールスルホン酸及びナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩及び脂肪酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、さらに中性の化合物、例えばアルコールアルコキシラート、例えばアルコールエトキシラート、フェノールアルコキシラート、例えばt−ブチルフェノールエトキシラート又はt−ペンチルフェノールエトキシラート、脂肪酸、アルキルフェノール類、エチレンオキシド(EO)及びプロピレンオキシド(PO)の縮合生成物、例えばEO/PO−ブロックコポリマーの形でも、ポリエチレンイミン又はまたポリシロキサンから選択されている。
【0038】
添加剤組成物及び燃料はさらにまた、常用の別の成分及び添加剤と組み合わされることができる。ここでは、例えば、際立った清浄剤作用を有しないキャリヤー油を挙げることができ、その際にこれらは、特にガソリン燃料中での使用の際に用いられる。しかしまた、これらは、中間留分中でも時折使用される。
【0039】
C)キャリヤー油
キャリヤー油は、たいてい、清浄剤添加剤との組合せで使用され、かつこれらと共に溶剤機能又は洗浄機能を発揮する。キャリヤー油は、通例、熱い金属表面を覆い、それによって金属表面上への不純物の形成又は堆積を防止する、高沸点で粘稠で熱安定な液体である。
【0040】
適した鉱物質キャリヤー油は、石油精製の際に生じる留分、例えばブライトストック又は例えばSN 500−2000分類からの粘度を有する基油;しかしまた芳香族炭化水素、パラフィン系炭化水素及びアルコキシアルカノールである。同様に、"水素化分解油"として知られ、かつ鉱油の精製の際に生じる留分(約360〜500℃の沸点範囲を有する減圧蒸留留分、高圧下で接触水素化されかつ異性化され、並びに脱パラフィンされた天然鉱油から得ることができる)が有用である。前記の鉱物質キャリヤー油の混合物が同様に適している。
【0041】
本発明により使用可能な合成キャリヤー油の例は、次のものから選択されている:ポリオレフィン(ポリ−α−オレフィン又はポリインターナルオレフィン)、(ポリ)エステル、(ポリ)アルコキシラート、ポリエーテル、脂肪族ポリエーテルアミン、アルキルフェノールを開始剤としたポリエーテル、アルキルフェノールを開始剤としたポリエーテルアミン及び長鎖アルカノールのカルボン酸エステル。
【0042】
適したポリオレフィンの例は、とりわけポリブテンベース又はポリイソブテンベース(水素化されているか又は水素化されていない)の、Mn=400〜1800を有するオレフィンポリマーである。
【0043】
適したポリエーテル又はポリエーテルアミンの例は、好ましくは、ポリオキシ−C2〜C4−アルキレン原子団を有する添加剤であり、これらは、C2〜C60−アルカノール、C6〜C30−アルカンジオール、モノ−C2〜C30−アルキルアミン又はジ−C2〜C30−アルキルアミン、C1〜C30−アルキルシクロヘキサノール又はC1〜C30−アルキルフェノールと、ヒドロキシル基又はアミノ基あたり1〜30molのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドとの反応により及び、ポリエーテルアミンの場合には、引き続きアンモニア、モノアミン又はポリアミンとの還元的アミノ化により得ることができる。そのような生成物は特に、欧州特許出願公開(EP-A)第310 875号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第356 725号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第700 985号明細書及び米国特許(US-A)第4 877 416号明細書に記載されている。例えば、ポリエーテルアミンとして、ポリ−C2〜C6−アルキレンオキシドアミン又はそれらの官能性誘導体が使用されることができる。このための典型的な例は、トリデカノールブトキシラート又はイソトリデカノールブトキシラート、イソノニルフェノールブトキシラート並びにポリイソブテノールブトキシラート及びポリイソブテノールプロポキシラート並びにアンモニアとの相応する反応生成物である。
【0044】
長鎖アルカノールのカルボン酸エステルの例は、特に、モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸と長鎖のアルカノール又はポリオールとからなるエステルであり、例えばこれらは特に独国特許出願公開(DE-A)第38 38 918号明細書に記載されている。モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸として、脂肪族又は芳香族の酸が使用されることができ、エステルアルコールもしくはエステルポリオールとして、例えば炭素原子6〜24個を有する長鎖の代表例がとりわけ適している。前記エステルの典型的な代表例は、イソオクタノール、イソノナノール、イソデカノール及びイソトリデカノールの、アジパート、フタラート、イソフタラート、テレフタラート及びトリメリタート、例えばジ−(n−又はイソ−トリデシル)−フタラートである。
【0045】
適した別のキャリヤー油系は、例えば、独国特許出願公開(DE-A)第38 26 608号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第41 42 241号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第43 09 074号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第452 328号明細書及び欧州特許出願公開(EP-A)第548 617号明細書に記載されており、それに関して本明細書と明らかに関連づけられている。
【0046】
特に適した合成キャリヤー油の例は、例えばプロピレンオキシド単位、n−ブチレンオキシド単位及びイソブチレンオキシド単位から選択される、約5〜35個、例えば約5〜30個のC3〜C6−アルキレンオキシド単位を有するアルコールを開始剤としたポリエーテル、又はそれらの混合物である。適した開始剤アルコールの限定されない例は、長鎖アルカノール又は長鎖アルキルで置換されたフェノール類であり、その際に長鎖アルキル基は特に、直鎖状又は分枝鎖状のC6〜C18−アルキル基を表す。好ましい例として、トリデカノール及びノニルフェノールを挙げることができる。
【0047】
適した別の合成キャリヤー油は、アルコキシル化されたアルキルフェノール類であり、例えばこれらは独国特許出願公開(DE-A)第10 102 913号明細書に記載されている。
【0048】
D)別の添加剤
常用の別の添加剤は、燃料の低温特性を改善する添加剤、例えば成核剤、流動性向上剤、パラフィン分散剤及びそれらの混合物、例えばエチレン−酢酸ビニル−コポリマー;例えば塗膜形成する傾向のある有機カルボン酸のアンモニウム塩又は非鉄金属防食の場合の複素環式芳香族化合物をベースとする、腐食抑制剤;曇り止め剤(Dehazer);消泡剤、例えば特定のシロキサン化合物;セタン価向上剤(着火性向上剤);燃焼向上剤;例えばアミン、例えばp−フェニレンジアミン、ジシクロヘキシルアミン又はこれらの誘導体又はフェノール類、例えば2,4−ジ−t−ブチルフェノール又は3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸をベースとする、酸化防止剤又は安定剤;帯電防止剤;メタロセン、例えばフェロセン;メチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニル;潤滑性向上剤、例えば特定の脂肪酸、アルケニルコハク酸エステル、ビス(ヒドロキシアルキル)脂肪アミン、ヒドロキシアセトアミド又はひまし油;並びに染料(マーカー)である。場合により、燃料のpH値を低下させるためのアミンも添加される。
【0049】
適した希釈剤及び溶剤は、例えば、芳香族及び脂肪族の炭化水素、例えばC5〜C10−アルカン、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、それらの構造異性体及び混合物;石油エーテル、芳香族化合物、例えばベンゼン、トルエン、キシレン及びソルベントナフサ;炭化水素溶剤との組合せでの炭素原子3〜8個を有するアルカノール、例えばプロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、イソブタノール等;及びアルコキシアルカノールである。適した希釈剤は、例えば、石油精製の場合に生じる留分、例えば燈油、ナフサ又はブライトストックでもある。中間留分、特にディーゼル燃料及び暖房用油(Heizoelen)の場合に、好ましくは使用される希釈剤は、ナフサ、燈油、ディーゼル燃料、芳香族炭化水素、例えばソルベントナフサヘビー、Solvesso(登録商標)又はShellsol(登録商標)並びにこれらの溶剤及び希釈剤の混合物である。
【0050】
清浄剤添加剤、例えば極性原子団(a)〜(i)を有するそのような清浄剤添加剤が、燃料中、特にディーゼル燃料又はガソリン燃料中で使用される場合には、これらは燃料に、通常10〜5000質量ppm、特に50〜1000質量ppmの量で、添加される。
【0051】
解乳化剤が使用される場合には、これらは燃料に、通常0.1〜100質量ppm、特に0.2〜10質量ppmの量で、添加される。
【0052】
挙げられたその他の成分及び添加剤は、所望の場合には、このために常用の量で添加される。
【0053】
さらに、本発明の対象は、分析物としての、燃料添加剤成分及び場合により別の燃料添加剤成分を含有するディーゼル燃料又はガソリン燃料中の、前記燃料添加剤成分を定性的又は定量的に検出するための前記方法の使用である。
【0054】
本発明による方法は、燃料添加剤パッケージ中又は燃料自体中の燃料添加剤成分、特に塩基性の清浄剤添加剤について単純に実施されうる検出法であり、かつ"オンサイト"でも、すなわち精油所中又は給油所で、単純な測定技術的な手段を用いて実施されることができる。前記検出法は、その場合に、それぞれの燃料品種の出所から大体において独立しており、すなわち、それぞれの燃料の組成は、燃料添加剤成分と指示薬との間の相互作用により引き起こされる、分析物中の指示薬の色の性質の変化に影響を及ぼさない。
【0055】
実施例
ディーゼル燃料中のポリイソブテニル置換されたコハク酸イミド−清浄剤添加剤の定量検出
多様な精油所及び精製留分からの市販の添加剤添加されていないディーゼル燃料の試料に、常用のディーゼル性能パッケージの形で添加された、ポリイソブテニルコハク酸無水物(ポリイソブテニル基の数平均分子量:約1000)及びテトラエチレンペンタミンからなるイミドをベースとする清浄剤添加剤の同じ量をその都度、実地に近い量で添加した。市販の光度計中で個々のディーゼル燃料試料(分析物)中の清浄剤添加剤の異なる配量割合で測定された吸光度値から、相応する校正曲線を、清浄剤添加剤0〜170質量ppm(作用物質を基準として)の範囲について作成した。測光学的測定のための指示薬として、エタノール性ブロモクレゾールグリーン溶液1.0ml(エタノール100ml中ブロモクレゾールグリーン13mg、赤橙色溶液)を、添加剤添加したディーゼル燃料10mlにつき添加した。メスフラスコ中で試料を指示薬溶液と共に激しく振とうすることによって引き起こされかつ完了され、分析物中で黄色から青色へ呈色変化した後に、測定を1mlキュベット中で620nmの波長で実施した。
【0056】
作成した校正曲線との相関から、上記で説明した測定法を用いて、別の燃料添加剤に加えて未知の量で前記の清浄剤添加剤を含有するディーゼル燃料試料は目下、この清浄剤添加剤の量を±10%の精度で定量測定されることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の成分及び/又は別の燃料添加剤成分を含有する分析物である燃料添加剤成分を定性的又は定量的に検出する方法であって、前記分析物を指示薬と接触させ、かつ燃料添加剤成分と指示薬との間の相互作用によって引き起こされる、分析物中の指示薬の色の性質の変化を測定することを特徴とする、燃料添加剤成分を定性的又は定量的に検出する方法。
【請求項2】
指示薬として酸塩基指示薬を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
酸塩基指示薬としてブロモクレゾールグリーン、α−ナフチルレッド、2,5−ジニトロフェニル、混合指示薬5又はメチルレッドを使用する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
色の強度を、分析物中の色の性質の変化が行われた後に、測光学的に測定する、請求項1から3までのいずれか1項記載の燃料添加剤成分を定量的に検出する方法。
【請求項5】
分析物として、検出すべき燃料添加剤成分に加えて、別の燃料添加剤成分を含有していてよいディーゼル燃料又はガソリン燃料を使用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
清浄剤作用を有する極性の燃料添加剤成分を検出するための、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ヒドロキシ基及び/又はアミノ基及び/又はアミド基及び/又はイミド基を有する無水コハク酸から誘導される原子団を有し、清浄剤作用を有する極性の燃料添加剤成分を検出するための、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
清浄剤作用を有する極性の燃料添加剤成分としてポリイソブテニル置換されたコハク酸イミドを検出するための、請求項7記載の方法。
【請求項9】
分析物としての、燃料添加剤成分を含有しかつ別の燃料添加剤成分を含有するか又は含有しないディーゼル燃料又はガソリン燃料中の、前記燃料添加剤成分を定性的又は定量的に検出するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法の使用。

【公表番号】特表2009−503526(P2009−503526A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524494(P2008−524494)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064745
【国際公開番号】WO2007/014903
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】