説明

燃料運搬車及び燃料運搬車への燃料供給方法

【課題】
1つの自動開閉制御弁で、複数の燃料室の燃料のオーバーフローを防止することができる燃料運搬車及び燃料運搬車への燃料供給方法を提供する。
【解決手段】
燃料供給設備と受入口13を連結して燃料の供給を開始する供給開始ステップと、オーバーフロー防止センサー31、32、33の内の1つが燃料室21、22、23への燃料の充填完了を検知し、自動開閉制御弁10を閉止する供給停止ステップと、燃料の充填が完了した燃料室の底弁41、42、43を閉止し、且つ燃料の充填が完了した燃料室に設置したオーバーフロー防止センサーの反応を無効化して自動開閉制御弁10を開放する復旧ステップを有し、供給停止ステップと復旧ステップを複数回繰り返し、燃料運搬車へ燃料を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクを搭載した燃料運搬車、及び燃料運搬車への燃料供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飛行場で航空機等への燃料補給を行うために、燃料タンクを搭載した燃料運搬車が使用されている。この燃料運搬車は、5000L〜10000L程度、又はそれ以上の燃料を搭載するための燃料タンクを有している。
【0003】
図9に、従来の燃料運搬車の概略を示す。燃料運搬車1Xは、外部の燃料供給設備から燃料を受入れるための受入口13と、燃料を搭載する燃料タンク2Xと、航空機等に燃料を供給する排出口14と、これらを連結する燃料配管12を有している。また、燃料運搬車1Xは、受入口13と燃料タンク2Xの底部に設置した底弁4Xの間に設置された自動開閉制御弁(例えば電磁弁等)10Xを有している。更に、燃料運搬車1Xは、燃料タンク2Xと排出口14の間に設置された燃料精製装置6等を有している。この燃料精製装置6は、燃料内の不純物を取り除くためのもので、その他にポンプや圧力制御弁等も備えている。加えて、燃料運搬車1Xは、燃料タンク2X内に設置したオーバーフロー防止センサー3Xを有している。
【0004】
次に、燃料運搬車1Xへの燃料供給方法及び排出方法について説明する。燃料運搬車1Xに燃料を供給する際には、まず、外部の燃料供給設備と受入口13を搬送ホースで連結し、燃料の供給を開始する。受入口13から供給された燃料は、自動開閉制御弁10X及び底弁4Xを介して、燃料タンク2X内に供給される。なお、この燃料タンク2Xの底側から燃料を供給する方式は、ボトムローディングと呼ばれる方式である。
【0005】
燃料タンク2X内に燃料が十分に充填されると、オーバーフロー防止センサー3Xが、その旨を検知し、自動開閉制御弁10Xへ信号線17を介して信号を送る。信号を受けた自動開閉制御弁10Xは、弁を閉止し、燃料タンク2Xへの燃料供給を停止する。その後、作業員が底弁4Xを閉止し、燃料運搬車1Xへの燃料供給は完了する。
【0006】
燃料運搬車1Xから航空機等に燃料を供給する場合には、まず、排出口14と航空機等を搬送ホースで連結する。その後、作業員が底弁4Xを開放すると、燃料は、燃料タンク2Xから燃料精製装置6を介して、航空機等へ供給される。
【0007】
燃料運搬車1Xは、オーバーフロー防止センサー3Xの設置により、燃料タンク2Xへの燃料供給時における燃料漏れ等の事故を防止することができる。また、他にも燃料漏れ等の事故を防止するために、緊急時に底弁を緊急閉止し、燃料供給設備から燃料タンクへの燃料供給を強制的に停止する方法がある(例えば特許文献1参照)。
【0008】
ここで、大震災等の災害発生時に、上記の燃料運搬車1Xで災害を受けていない地域から燃料を運搬したいという要請がある。しかし、この燃料運搬車1Xは、公道において燃料を運搬することができない。これは、消防法で燃料を運搬する車両の燃料タンクは、複数の独立した4000L以下の燃料室に分割することが定められているためである。そのため、5000L〜10000L、又はそれ以上の燃料室で構成した燃料運搬車1Xは燃料を搭載した状態で公道を走行することができない。上記の要請に応えるために、燃料運搬車1Xの燃料タンク2Xを複数の独立した燃料室に分割することが望まれているが、以下の問題点を有している。
【0009】
第1に、独立した複数の燃料室を有する燃料運搬車1Xに燃料を供給する場合には、各燃料室にオーバーフロー防止センサーを設置し、且つこれらのセンサーに対応した複数の自動開閉制御弁を設置しなくてはならないが、この複数の自動開閉制御弁の設置が困難であるという問題を有している。これは、燃料運搬車が、複数の自動開閉制御弁を設置するスペースを有していないためである。
【0010】
第2に、複数の自動開閉制御弁の設置により、燃料を搬送する燃料配管の配置が複雑になり、バルブ操作等も複雑になるため、実現が困難であるという問題を有している。これは、バルブ操作等が複雑になると、操作ミス等により事故が発生する可能性があるためである。特に、航空機等に燃料を供給する場合には、現実的には燃料を供給する作業は困難となる。
【0011】
第3に、複数の自動開閉制御弁の設置により、コストがかかるという問題を有している。この自動開閉制御弁は、燃料のオーバーフローを防止するために必要な機構ではあるが、このオーバーフローを防止するためのみに、多くの費用をかけることは現実的ではなく実現が困難である。
【0012】
なお、燃料運搬車にオーバーフロー防止センサーを利用せずに、燃料を供給する方法も考えられる。例えば、燃料供給設備側で供給する燃料の容量を設定し、各燃料室に順番に供給を行う方法や、燃料タンク上部の上蓋を開放し、燃料室内の燃料の量を作業員が目視により確認する方法等である。これらの方法は、装置や人為的ミスによるオーバーフローを防止することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−309400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の独立した燃料室に分割した燃料タンクを有する燃料運搬車及び燃料運搬車への燃料供給方法において、1つの自動開閉制御弁で、複数の燃料室の燃料のオーバーフローを防止することができる燃料運搬車及び燃料運搬車への燃料供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するための本発明に係る燃料運搬車への燃料供給方法は、外部の燃料供給設備から燃料を受入れるための受入口と、前記受入口から流入する燃料の流れを制御する1つの自動開閉制御弁と、独立した複数の燃料室を有する燃料タンクと、前記燃料室にそれぞれ設置したオーバーフロー防止センサーと、前記燃料室の底部にそれぞれ設置した底弁と、少なくとも前記自動開閉制御弁と底弁を連通する燃料配管を有した燃料運搬車への燃料供給方法であって、前記燃料供給設備と前記受入口を連結して燃料の供給を開始する供給開始ステップと、前記オーバーフロー防止センサーの内の1つが燃料室への燃料の充填完了を検知し、前記自動開閉制御弁を閉止する供給停止ステップと、燃料の充填が完了した前記燃料室の前記底弁を閉止し、且つ燃料の充填が完了した前記燃料室に設置したオーバーフロー防止センサーの反応を無効化して前記自動開閉制御弁を開放する復旧ステップを有し、前記供給停止ステップと前記復旧ステップを複数回繰り返し、燃料運搬車へ燃料を供給することを特徴とする。
【0016】
この構成により、1つの自動開閉制御弁で、複数の燃料室の燃料のオーバーフローを防
止することができる燃料運搬車への燃料供給方法を提供することができる。特に、車両の大型化を行わず、複雑な配管や複雑なバルブ操作等を必要とせず、更にコストを抑制して、公道を走行することのできる燃料運搬車を提供することができる。
【0017】
上記の目的を達成するための本発明に係る燃料運搬車は、外部の燃料供給設備から燃料を受入れるための受入口と、前記受入口から流入する燃料の流れを制御する1つの自動開閉制御弁と、独立した複数の燃料室を有する燃料タンクと、前記燃料室にそれぞれ設置したオーバーフロー防止センサーと、前記燃料室の底部にそれぞれ設置した底弁と、少なくとも前記自動開閉制御弁と底弁を連通する燃料配管を有した燃料運搬車であって、前記燃料室に燃料が充填された際に、前記オーバーフロー防止センサーの反応により、前記自動開閉制御弁が閉止するように構成したことを特徴とする。この構成により、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0018】
上記の燃料運搬車において、前記燃料運搬車が、前記受入口の下流側から燃料の供給圧力を取り出し前記自動開閉制御弁に供給するパイロットラインと、前記パイロットライン上に配置された複数の前記オーバーフロー防止センサーを有し、前記オーバーフロー防止センサーが、前記パイロットライン内の圧力を解放する開放ラインを有し、前記燃料室に燃料が充填された際に、前記オーバーフロー防止センサーが反応して前記開放ラインから前記パイロットライン内の圧力を開放し、前記パイロットラインからの圧力の供給を停止された前記自動開閉制御弁が閉止するように構成したことを特徴とする。
【0019】
この構成により、上記と同様の作用効果を得ることができる。また、自動開閉制御弁の開閉を、燃料の供給圧力で制御する構成により、自動開閉制御弁の制御を簡易に行うことが可能となる。更に、燃料運搬車のオーバーフロー防止機能の安定性及び安全性を向上することができる。
【0020】
上記の燃料運搬車において、前記燃料運搬車が、前記パイロットライン上に直列に配置された複数の前記オーバーフロー防止センサーと、前記オーバーフロー防止センサーをそれぞれバイパスする複数のバイパスラインと、前記バイパスラインの下流側と前記パイロットラインの合流部にそれぞれ配置した複数のパイロット弁を有するように構成してもよい。この構成により、上記と同様の作用効果を得ることができる。なお、このパイロット弁は、三方弁を採用している。
【0021】
上記の燃料運搬車において、前記燃料運搬車が、前記パイロットライン上に並列に配置された複数の前記オーバーフロー防止センサーと、前記オーバーフロー防止センサーの下流側と前記パイロットラインの合流部にそれぞれ配置した複数のパイロット弁を有するように構成してもよい。
【0022】
この構成により、バイパスライン等の設置が不要となるため、パイロットラインの配置及び経路を単純化することができ、更に本発明を採用する際の低コスト化を実現することができる。また、三方弁ではなく、2方向を連通するパイロット弁を採用することができ、パイロット弁の故障する可能性を抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る燃料運搬車及び燃料運搬車への燃料供給方法によれば、1つの自動開閉制御弁で、複数の燃料室の燃料のオーバーフローを防止することができる燃料運搬車及び燃料運搬車への燃料供給方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る実施の形態の燃料運搬車の概略を示した図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の燃料運搬車の燃料供給方法の概略を示した図である。
【図3】本発明に係る実施の形態の燃料運搬車の燃料供給方法の概略を示した図である。
【図4】本発明に係る実施の形態の燃料運搬車の燃料供給方法の概略を示した図である。
【図5】本発明に係る異なる実施の形態の燃料運搬車の概略を示した図である。
【図6】本発明に係る異なる実施の形態の燃料運搬車の燃料供給方法の概略を示した図である。
【図7】本発明に係る異なる実施の形態の燃料運搬車の燃料供給方法の概略を示した図である。
【図8】本発明に係る異なる実施の形態の燃料運搬車の燃料供給方法の概略を示した図である。
【図9】従来の燃料運搬車の概略を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施の形態の燃料運搬車について、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明に係る実施の形態の燃料運搬車1の燃料流路の概略を示す。なお、図1では、自動開閉制御弁に自圧式自動開閉制御弁を採用した場合を例に説明する。燃料運搬車1は、外部の燃料供給設備から燃料を受入れるための受入口13と、受入口から流入する燃料の流れを制御する1つの自動開閉制御弁(自圧式自動開閉制御弁)10と、独立した複数の燃料室21、22、23を有する燃料タンク2と、各燃料室21、22、23の底部に設置した底弁41、42、43(以下総称して底弁4という)と、燃料タンク2から外部に燃料を排出する排出口14と、これらを連結する燃料配管12を有している。この燃料運搬車1は、燃料タンク2と排出口14の間に設置された燃料精製装置6を有している。
【0026】
また、燃料運搬車1は、各燃料室21、22、23に、それぞれオーバーフロー防止センサー(例えばフロートセンサー)31、32、33(以下総称してオーバーフロー防止センサー3という)を有している。このオーバーフロー防止センサー3は、受入口13から流入する燃料の圧力を取り出し、自圧式自動開閉制御弁10に供給するためのパイロットライン11上に直列に配置されている。また、オーバーフロー防止センサー3は、内部に2つの流路を有しており、一方はパイロットライン11内の圧力を伝達する流路であり、他方はパイロットライン11内の圧力を解放する開放ライン(図示しない)と呼ぶ流路である。
【0027】
このパイロットライン11は、オーバーフロー防止センサー3をそれぞれバイパスするバイパスライン51、52、53(以下総称してバイパスライン5という)を有し、且つバイパスライン5の下流側とパイロットライン11の合流部にそれぞれパイロット弁8を有している。
【0028】
ここで、自圧式自動開閉制御弁10とは、パイロットライン11から供給される圧力が予め定めた値を超える大きさである場合は開放状態となり、この圧力が予め定めた値以下となった場合には閉止状態となる弁のことをいう。つまり、自動開閉制御弁10は、燃料の供給圧力により開放及び閉止を自動的に制御される。
【0029】
次に、外部の燃料供給設備から燃料運搬車1への燃料供給方法について説明する。まず、外部の燃料供給設備と受入口13を連結し、燃料の供給を開始する(供給開始ステップ)。この燃料の一部は、パイロットライン11を経由して自動開閉制御弁10に圧力を伝達し、自動開閉制御弁10を開放する。自動開閉制御弁10の開放により、燃料は、燃料配管12及び第1底弁41、第2底弁42、第3底弁43を経由して、第1燃料室21、第2燃料室22、第3燃料室23にそれぞれ供給される。ここで、便宜上、開放している弁は黒く塗りつぶして示し、閉止している弁は白抜きで示している。また、矢印はパイロットライン11における燃料の流れる方向を示しており、白抜き矢印は燃料配管12における燃料の流れる方向を示している。
【0030】
図2に、第1燃料室21の充填が完了した際の状態を示す。燃料供給を開始して一定時間が経過すると、複数の燃料室のうちのいずれか(たとえば第1燃料室21)が充填される。このとき、例えばフロートセンサーで構成した第1センサー(第1オーバーフロー防止センサー)31が反応する。第1センサー31は、燃料の充填を検知すると、パイロットライン11の一部を開放ライン15に連通させ、パイロットライン11内の圧力を解放する。このパイロットライン11の圧力解放により、自動開閉制御弁10に供給される圧力は予め定めた値以下となり、自動開閉制御弁10が閉止される(供給停止ステップ)。
【0031】
次に、図3に示す様に、充填が完了した第1燃料室21の第1底弁41を閉止し、その後、パイロットライン11において第1センサー31をバイパスするために対応するパイロット弁(三方弁)8を切り替える(復旧ステップ)。このパイロット弁8の切り替えにより、パイロットライン11を流れる燃料は、第1バイパスライン51からパイロット弁8を経由して、第2センサー32に到達することができる。つまり、第1センサー31を無効化することができる。このバイパスライン51の開通により、自動開閉制御弁10は、再びパイロットライン11から予め定めた値を超える圧力を受け、開放される。このとき、燃料は、自動開閉制御弁10から、未だ充填の完了していない第2燃料室22及び第3燃料室23に供給される。
【0032】
次に、例えば第2燃料室22の充填が完了すると、第2センサー32が反応する。前述と同様、自動開閉制御弁10は、第2センサー32によるパイロットライン11の圧力解放により、閉止される(第2供給停止ステップ)。
【0033】
次に、図4に示す様に、充填が完了した第2燃料室22の第2底弁42を閉止し、その後、第2センサー32をバイパスするために対応するパイロット弁8を切り替える(第2復旧ステップ)。この切り替えにより、未だ充填が完了していない第3燃料室23への燃料供給が再開される。つまり、第2センサー32を無効化することができる。以上を繰り返し、燃料タンク2の有する全ての燃料室に燃料を充填し、燃料運搬車1への燃料供給を完了する。
【0034】
また、燃料運搬車1から航空機等へ燃料を供給する際には、底弁4及び排出口14を開放して行う。このとき、燃料運搬車1は、自動開閉制御弁10を介さず燃料を航空機等へ供給することができる。
【0035】
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、1つの自動開閉制御弁で、複数の燃料室の燃料のオーバーフローを防止することができる燃料運搬車を提供することができる。特に、車両の大型化を行わず、複雑な配管や複雑なバルブ操作等を必要とせず、更にコストを抑制して、公道を走行することのできる燃料運搬車を提供することができる。
【0036】
第2に、自動開閉制御弁の開閉を、燃料の供給圧力で制御する構成により、自動開閉制御弁の制御を簡易に行うことが可能となる。そのため、燃料運搬車のオーバーフロー防止機能の安定性及び安全性を向上することができる。
【0037】
なお、燃料タンク2に形成する燃料室の数は、上記に限られない。2つ以上であれば上
記の構成及び方法を適用し、本発明の作用効果を得ることができる。また、オーバーフロー防止センサー3は、フロートセンサーに限られない。具体的には、光学式センサー、音波式センサー、圧力感知センサー等、燃料が燃料室に充填された状態を検知できるものであればよい。
【0038】
更に、自動開閉制御弁は、オーバーフロー防止センサーからの入力により、開閉制御を行えるものであれば、前述の自圧式自動開閉制御弁に限られない。例えば、自動開閉制御弁を、電気信号により開閉する電磁弁等を採用することができる。このとき、電磁弁等は、オーバーフロー防止センサーからの電気信号により、開閉を制御するように構成することが望ましい。
【0039】
加えて、底弁の開閉制御、及びパイロットライン上に配置したパイロット弁の開閉制御は、自動制御によるもの、又は作業員の操作によるもののいずれであっても実現することができる。ここで、作業員の操作により、燃料供給の制御を行う場合には、オーバーフロー防止センサーの反応の有無、及びパイロットライン上の制御弁の開閉状態は、インジケータ等で視認できるように構成することが望ましい。
【0040】
図5に、本発明に係る異なる実施の形態の燃料運搬車1aの燃料流路の概略を示す。燃料運搬車1aは、パイロットライン11a上に並列に配置した複数のオーバーフロー防止センサー3を有し、且つオーバーフロー防止センサー3の下流側にそれぞれパイロット弁8aを有している。
【0041】
次に、燃料運搬車1aへの燃料供給方法について説明する。まず、外部の燃料供給設備と受入口13を連結し、燃料の供給を開始する(供給開始ステップ)。この燃料の一部は、パイロットライン11aを経由して自動開閉制御弁10に圧力を伝達し、自動開閉制御弁10を開放する。自動開閉制御弁10の開放により、燃料は、第1燃料室21、第2燃料室22、第3燃料室23にそれぞれ供給される。
【0042】
図6に、第2燃料室22の充填が完了した際の状態を示す。燃料供給を開始して一定時間が経過すると、複数の燃料室のうちのいずれか(たとえば第2燃料室22)が充填される。このとき、第2センサー32は、燃料の充填を検知すると、パイロットライン11aの一部を開放ライン15に連通させ、パイロットライン11a内の圧力を解放する。このパイロットライン11aの圧力解放により、自動開閉制御弁10に供給される圧力は予め定めた値以下となり、自動開閉制御弁10が閉止される(供給停止ステップ)。
【0043】
次に、図7に示す様に、充填が完了した第2燃料室22の第2底弁42を閉止し、その後、パイロットライン11aにおいて、第2センサー32への燃料の流れを止めるべく、その下流側のパイロット弁8aを閉止する(復旧ステップ)。このパイロット弁8aの閉止により、自動開閉制御弁10は、再びパイロットライン11aから予め定めた値を超える圧力を受け、開放される。つまり、第2センサー32を無効化することができる。このとき、燃料は、自動開閉制御弁10から、未だ充填の完了していない第1燃料室21及び第3燃料室23に供給される。
【0044】
次に、例えば第3燃料室23の充填が完了すると、第3センサー33が反応する。前述と同様、自動開閉制御弁10は、第3センサー33によるパイロットライン11aの圧力解放により閉止される(第2供給停止ステップ)。
【0045】
次に、図8に示す様に、充填が完了した第3燃料室23の第3底弁43を閉止し、その後、第3センサー33をバイパスするために対応するパイロット弁8aを閉止する(第2復旧ステップ)。このパイロット弁8aの閉止により、未だ充填が完了していない第1燃
料室21への燃料供給が再開される。つまり、第3センサー33を無効化することができる。以上を繰り返し、燃料タンク2の有する全ての燃料室に燃料を充填し、燃料運搬車1aへの燃料供給を完了する。
【0046】
上記の構成により、バイパスライン等の設置が不要となるため、パイロットライン11aの配置及び経路を単純化することができる。このパイロットライン11aの単純化に伴い、本発明を採用する際の低コスト化を実現することができる。また、三方弁ではなく、2方向に連通するパイロット弁8aの採用により、弁の故障する可能性を抑制することができ、燃料運搬車1aのオーバーフロー防止機能を安定的に維持することができる。
【0047】
なお、本発明は、複数の独立した燃料室を有する燃料運搬車であれば適用することができる。つまり、燃料精製装置等は必須の構成要件ではない。
【符号の説明】
【0048】
1、1a 燃料運搬車
2 燃料タンク
3、31、32、33 オーバーフロー防止センサー(第1センサー、第2センサー、第
3センサー)
4、41、42、43 底弁(第1底弁、第2底弁、第3底弁)
5 バイパスライン
8、8a パイロット弁
10 自動開閉制御弁
11 パイロットライン
12 燃料配管
13 受入口
15 開放ライン
21、22、23 燃料室(第1燃料室、第2燃料室、第3燃料室)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の燃料供給設備から燃料を受入れるための受入口と、前記受入口から流入する燃料の流れを制御する1つの自動開閉制御弁と、独立した複数の燃料室を有する燃料タンクと、前記燃料室にそれぞれ設置したオーバーフロー防止センサーと、前記燃料室の底部にそれぞれ設置した底弁と、少なくとも前記自動開閉制御弁と底弁を連通する燃料配管を有した燃料運搬車への燃料供給方法であって、
前記燃料供給設備と前記受入口を連結して燃料の供給を開始する供給開始ステップと、
前記オーバーフロー防止センサーの内の1つが燃料室への燃料の充填完了を検知し、前記自動開閉制御弁を閉止する供給停止ステップと、
燃料の充填が完了した前記燃料室の前記底弁を閉止し、且つ燃料の充填が完了した前記燃料室に設置したオーバーフロー防止センサーの反応を無効化して前記自動開閉制御弁を開放する復旧ステップを有し、
前記供給停止ステップと前記復旧ステップを複数回繰り返し、燃料運搬車へ燃料を供給することを特徴とする燃料運搬車への燃料供給方法。
【請求項2】
外部の燃料供給設備から燃料を受入れるための受入口と、前記受入口から流入する燃料の流れを制御する1つの自動開閉制御弁と、独立した複数の燃料室を有する燃料タンクと、前記燃料室にそれぞれ設置したオーバーフロー防止センサーと、前記燃料室の底部にそれぞれ設置した底弁と、少なくとも前記自動開閉制御弁と底弁を連通する燃料配管を有した燃料運搬車であって、
前記燃料室に燃料が充填された際に、前記オーバーフロー防止センサーの反応により、前記自動開閉制御弁が閉止するように構成したことを特徴とする燃料運搬車。
【請求項3】
前記燃料運搬車が、前記受入口の下流側から燃料の供給圧力を取り出し前記自動開閉制御弁に供給するパイロットラインと、
前記パイロットライン上に配置された複数の前記オーバーフロー防止センサーを有し、
前記オーバーフロー防止センサーが、前記パイロットライン内の圧力を解放する開放ラインを有し、
前記燃料室に燃料が充填された際に、前記オーバーフロー防止センサーが反応して前記開放ラインから前記パイロットライン内の圧力を開放し、前記パイロットラインからの圧力の供給を停止された前記自動開閉制御弁が閉止するように構成したことを特徴とする請求項2に記載の燃料運搬車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−112387(P2013−112387A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261546(P2011−261546)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000187208)昭和飛行機工業株式会社 (72)
【Fターム(参考)】