説明

燃料電池に使用されるコーティング基材用アノード電極触媒

【課題】CO耐性またはメタノール電解酸化活性が向上したアノード電極触媒の提供。
【解決手段】白金およびルテニウムなどの貴金属と組合された、タングステンカーバイドおよびモリブデンカーバイドおよび/またはタングステンオキシカーバイドおよびモリブデンオキシカーバイド、またはそれらの混合物と;V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Re、Co、Ni、Cu、およびそれらの混合物からなる群より選択される金属とを含んでなる燃料電池に有用な電極触媒組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を製造する際に使用される、触媒コーティング膜またはコーティングされたガス拡散裏材などのコーティング基材用アノード電極触媒に関する。より詳細には、本発明は、CO耐性またはメタノール電解酸化活性が向上したアノード電極触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料および酸化剤を電気エネルギーに変換するデバイスである。電気化学電池は、一般に、電解質で隔てられたアノード電極およびカソード電極を含む。電気化学電池の周知の使用は、電解質としてプロトン交換膜(以下「PEM」)を使用する燃料電池用スタックにおいてである。そのような電池において、水素などの反応物または還元流体をアノード電極に供給し、酸素または空気などの酸化剤をカソード電極に供給する。水素は、アノード電極の表面で電気化学的に反応して、水素イオンおよび電子を発生する。電子は、外部負荷回路に伝わり、次に、カソード電極に戻り、一方、水素イオンは、電解質を通ってカソード電極に移動し、酸化剤および電子と反応して、水を発生し、熱エネルギーを放出する。
【0003】
最も効率的な燃料電池は、燃料として純水素を使用し、酸化剤として酸素を使用する。残念ながら、純水素の使用には、いくつかの既知の不利な点があり、特に、比較的高いコスト、および保存の配慮がある。したがって、燃料として純水素以外を使用して燃料電池を動作させる試みがなされている。
【0004】
たとえば、燃料電池供給材料として、水蒸気改質メタノールから得られた水素リッチガス混合物を使用する試みがなされている。これは、自動車用途に特に重要であるかもしれない。というのも、好都合な水素ガス源が、メタノールの水蒸気改質であることができ、メタノールを車両中で水素より容易に保存できるからである。しかし、メタノール改質油ガスが、25%もの二酸化炭素(CO2)および1%までの一酸化炭素(CO)を含有でき、純白金の触媒性能が、COの100万分の10(ppm)の存在によってさえ、著しく低減し得ることが知られている。
【0005】
したがって、改質された水素燃料の功を奏する使用は、燃料のCO含有量の減少、もしくはCO耐性アノード電極触媒の開発、または両方による。
【0006】
ポリマー電解質燃料電池(PEFC)性能へのCOの影響を回避する一方法が、(特許文献1)に記載され、いくつかの付加的な燃料処理工程(燃料を燃料電池スタックに導入する前)によってCO濃度を減少させるための、いくつかの方法が、略述されている。すべて、燃料電池システム全体のコストおよび複雑さが実質的に増すという欠点がある。
【0007】
改質油燃料混合物中のCOを除去するか、低下させるための別の方法は、(特許文献2)(「エアブリード法」)に記載されているように、空気、典型的には2体積%を、改質油水素ストリーム中に導入することによって、アノードにおいてCOをCO2に酸化させる。この方法は、効果的であるが、また、PEFCに複雑さが加わり、効率が失われる。
【0008】
さらなる方法は、PEFC中のアノード電極触媒のCO耐性を向上させる。Pt電極のCO耐性は、電極触媒を、第2の成分、好ましくはルテニウム(Ru)と合金にすることによって、向上させることができ(たとえば、(非特許文献1)、(非特許文献2)を参照のこと、0.4mg/cm2のPt充填レベルでの、炭素担体上のPt:Ruの1:1原子比合金の場合、燃料電池は80℃で動作する。当該技術(非特許文献3)において、100℃より高い温度で動作する、0.6mg/cm2のPtRuマスローディングを有するPEFCが、100ppmCOに耐性があることが示されたことがさらに知られている。しかし、この方法は、より低い温度で、特に、より少ない電極触媒の充填を用いる場合に、効果が失われる。
【0009】
低い温度におけるCO耐性に加えて、より少ない電極触媒の充填でのCO耐性電極触媒の使用が必要である。少ない貴金属電極触媒の充填は、貴金属が、典型的な貴金属ベースの電極触媒システムのコストの大部分となるので、コストにおける大きい利点をもたらす。タングステンカーバイドが、(特許文献3)に燃料電池触媒成分として言及されている。しかし、この用途において、タングステンカーバイドは、他の粒子で被覆することに加えて、単独成分として使用され、電極触媒の自動酸化(劣化)をもたらす。このシステムの電極触媒活性は、非常に低い。
【0010】
(特許文献4)は、遷移金属ベースの導電性セラミックからなる担体本体と、前記担体本体上に担持された少なくとも1つの貴金属とを含む触媒を開示している。遷移金属ベースのセラミックは、少なくとも1つの遷移金属の化合物を含み、この化合物は、カーバイド、窒化物、ホウ化物、ケイ化物、およびそれらの組合せからなる群より選択される。特定の実施形態において、セラミックは、酸化物、オキシカーバイド(oxycarbide)、またはオキシナイトライド(oxynitride)をさらに含んでもよい。貴金属は、単一金属、金属の合金を含んでもよく、1つの特に好ましい合金は、白金とモリブデンとの合金の合金を含む。また、貴金属として開示されているのは、Pt、Pd、Os、Ir、Ru、Ag、およびRhである。担体上の、酸素成分、たとえばオキシカーバイドの存在により、多くの貴金属触媒の作用を損なうCOの影響が減少する。
【0011】
同様に、導電性遷移金属窒化物、導電性遷移金属カーバイド、および導電性遷移金属ホウ化物を含む電気化学エネルギー蓄積デバイスに使用される高表面積電極が、(特許文献5)に開示されている。純物質の使用が開示されているが、それらの貴金属との複合物は開示されていない。
【0012】
有機/空気燃料電池において、アノードにおいて、メタノール、ホルムアルデヒド、またはギ酸などの有機燃料を酸化させて、二酸化炭素にし、一方、カソードにおいて、空気または酸素を還元して水にする。有機燃料を使用する燃料電池は、固定用途およびポータブル用途の両方に非常に魅力的であり、一部には、有機燃料の比エネルギーが高いからであり、たとえば、メタノールの比エネルギーは6232Wh/kgである。1つのそのような燃料電池は、有機燃料をアノードに直接供給し、燃料を酸化させる、「直接酸化」燃料電池である。したがって、有機燃料を水素リッチ燃料ガスに変えるための改質装置の必要が回避され、燃料電池システムのかなりの重量および体積節減になる。
【0013】
アノード電極触媒として通常使用される物質は、高表面積炭素上に担持された純金属または単純合金(たとえば、Pt、Pt/Ru、Pt/Ni)である。たとえば、技術の現状の炭化水素(たとえばダイレクトメタノール)燃料電池用アノード触媒は、白金(Pt)−ルテニウム(Ru)合金をベースとしている。これまで、最も知られている触媒は、Pt50/Ru50(下付きの数字は、原子比を示す)であった。(非特許文献4)、(非特許文献5)。これらの既知の触媒は、燃料電池中で触媒を効果的に機能させるのに必要なメタノール酸化をもたらさない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,245,14B1号明細書
【特許文献2】米国特許第4,910,099号明細書
【特許文献3】米国特許第3,833,423号明細書
【特許文献4】国際公開第99/42213号パンフレット
【特許文献5】米国特許第5,680,292号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】エム・イワセ(M.Iwase)およびエス・カワツ(S.Kawatsu)、電気化学協会議事録(Electrochemical Society Proceedings)、v.95−23、p.12
【非特許文献2】第1回プロトン伝導性膜燃料電池に関する国際シンポジウムの議事録(Proceedings of the First International Symposium on Proton Conducting Membrane Fuel Cells)、エス・ゴテスフェルド(S.Gottesfeld)ら、編集、電気化学協会(The Electrochemical Society)
【非特許文献3】ティー・エー・ザウォジンスキ・ジュニア(T.A.Zawodzinski,Jr)、輸送用燃料電池(Fuel Cells for Transportation)において提示された、米国エネルギー省(U.S.Department of Energy)、国立研究所(National Laboratories)、研究開発会議(R&D Meeting)、1997年7月22−23日、ワシントン市(Washington,D.C.)
【非特許文献4】ガスタイガー(Gasteiger)ら、ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(J Phys.Chem.)、98:617、1994年
【非特許文献5】ワタナベ(Watanabe)ら、ジャーナル・オブ・エレクトロアナリティカル・ケミストリー(J Electroanal.Chem.)、229:395、1987年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
CO含有水素リッチガス混合物の高いCO含有量に耐性があり、したがって、燃料電池スタックにこの燃料を使用する前の付加的なCO除去または減少工程の必要が最小になる燃料電池用アノード電極触媒が必要である。比較できるアノード電極触媒充填で現在のアノード電極触媒より安価になる小量の貴金属を含有する燃料電池用アノード電極触媒も必要である。ダイレクトメタノール燃料電池のメタノール酸化を向上させる改良された触媒も必要である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の態様において、本発明は、
(a)タングステンカーバイド、モリブデンカーバイド、タングステンオキシカーバイド、モリブデンオキシカーバイド、およびそれらの混合物からなる群より選択される化合物と、
(b)白金、白金とルテニウムとの混合物、または白金と酸化ルテニウムとの混合物と、
(c)V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Re、Co、Ni、Cu、およびそれらの混合物からなる群より選択される金属とを含んでなるアノード電極触媒を提供する。
【0018】
「改質装置ベースの」燃料電池システムにおいて、これらのアノード電極触媒は、高いCO耐性をもたらす。ダイレクトメタノール燃料電池システムにおいて、これらのアノード電極触媒は、メタノール酸化の活性を向上させる。
【0019】
第1の態様において、本発明は、典型的には、触媒固体担体をさらに含んでなるアノード電極触媒をさらに提供する。
【0020】
第2の態様において、本発明は、電極触媒コーティング組成物がコーティングされた基材を含むコーティング基材であって、電極触媒コーティング組成物が、
(a)タングステンカーバイド、モリブデンカーバイド、タングステンオキシカーバイド、モリブデンオキシカーバイド、およびそれらの混合物からなる群より選択される化合物と、
(b)白金、白金とルテニウムとの混合物、または白金と酸化ルテニウムとの混合物と、
(c)V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Re、Co、Ni、Cu、およびそれらの混合物からなる群より選択される金属とを含むアノード電極触媒を含んでなる、コーティング基材を提供する。
【0021】
第3の態様において、本発明は、コーティング基材を含む燃料電池であって、コーティング基材が、電極触媒コーティング組成物がコーティングされた基材を含み、電極触媒コーティング組成物が、
(a)タングステンカーバイド、モリブデンカーバイド、タングステンオキシカーバイド、モリブデンオキシカーバイド、およびそれらの混合物からなる群より選択される化合物と、
(b)白金、白金とルテニウムとの混合物、または白金と酸化ルテニウムとの混合物と、
(c)V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Re、Co、Ni、Cu、およびそれらの混合物からなる群より選択される金属とを含むアノード電極触媒を含んでなる、燃料電池を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
アノード電極触媒:
(a)タングステンカーバイド、モリブデンカーバイド、タングステンオキシカーバイド、モリブデンオキシカーバイド、およびそれらの混合物からなる群より選択される化合物と、
(b)白金、白金とルテニウムとの混合物、または白金と酸化ルテニウムとの混合物と、
(c)V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Re、Co、Ni、Cu、およびそれらの混合物からなる群より選択される金属とを含んでなるアノード電極触媒。
【0023】
混合物とは、金属が、別個の相、たとえば、結晶相、または前記金属の合金であってもよいことを意味する。酸化物とは、酸化ルテニウム水和物(hydrated ruthenium oxide)相を含む、ルテニウム酸素化学量論をすべて含んでなることを意味する。
【0024】
典型的には、成分(a)は、約5から約99.989995モル%、より典型的には、約30から約99.989995モル%の量で存在してもよく、成分(b)は、約5×10-6から約70モル%、より典型的には、5×10-6から約50モル%の量で存在してもよく、遷移金属などの付加的な金属(c)は、約0.01から約69.999995モル%、代わりに、0.01から約49.999995モル%の量で存在してもよく、モルパーセンテージは、全金属含有量に基いて計算される。記載されたモル分率はすべて、固体担体がない、内部比である。カーバイド化合物中の炭素の量は、約0.5から約2.0の原子比の炭素:(Mo+W)比で存在する。
【0025】
本発明のアノード電極触媒は、所望の比のカチオンを含有する特定の構造、または所望の比のカチオンをともに含有する構造の組合せであってもよい。したがって、アノード電極触媒は、上記配合の化合物の結晶性酸化物の混合物であってもよいし、この化合物のアモルファス相をさらに含んでもよい。
【0026】
触媒固体担体:
アノード電極触媒は、乱層構造(turbostratic)炭素または黒鉛炭素のさまざまな形態を含むが、これらに限定されない、従来の触媒固体担体を、さらに含む。典型的な担体は、カボット・コーポレイション(Cabot Corporation)のバルカン(Vulcan)(登録商標)XC72R、アクゾ・ノーブル(Akzo Noble)のケッチェン(Ketjen)(登録商標)600または300などの、乱層構造炭素または黒鉛炭素、ならびに他の導電性炭素変形例である。触媒固体担体は、成分(a)および(b)のベースを提供する。触媒固体担体は、担体を含有する電極触媒組成物中のアノード電極触媒の全モル%に基いて、1から99.9モル、より典型的には6−98モル%の量で、存在する。
【0027】
調製方法:
アノード電極触媒は、成分の所望の組合せを有する組成物をもたらす任意の方法で調製することができる。それらは、共沈、含浸、ゾル−ゲル技術、水溶液もしくは非水溶液またはサスペンション混合、凍結乾燥、スプレーロースティング(spray roasting)、噴霧乾燥、または乾燥混合を含む。所望の成分以外の成分が小量または微量、最終組成物中に存在してもよい。セラミック法、すなわち、固体技術を用いることができるが、一般に、あまり好ましくない。特定の化合物は、当業者によって理解されるように、別の方法ではなく1つの方法によって、より良好に調製される。
【0028】
アノード電極触媒は、典型的には、常圧で調製してもよいが、高圧または減圧も用いてもよい。撹拌は、必要ではないが、均質な混合物の調製を容易にし、熱伝達を容易にするために通常行われる。
【0029】
アノード電極触媒は、次の工程を用いて製造してもよい。
(i)成分(a)、または任意に、バナジウムカーバイド、ニオブカーバイド、タンタルカーバイド、バナジウムオキシカーバイド、ニオブオキシカーバイド、もしくはタンタルオキシカーバイドは、最初に、凍結乾燥、噴霧乾燥、スプレーロースティング、またはゾルゲル処理などのプロセスを用いて、硝酸塩、塩化物、オキシ水酸化物(oxyhydroxides)、またはアルコキシドなどの無機塩から、酸素含有前駆体を形成することによって、調製してもよい。酸素含有前駆体を、1:10から10:1の比で存在してもよい炭化水素/水素ガス混合物中で、加熱して、600から1200℃、より典型的には700℃から900℃の温度で、0.5から48時間の期間、対応するカーバイド相を調製する。典型的には、炭化水素は、エタンおよびメタンからなるグループから選択してもよい。
(ii)成分(b)および(c)は、適切な化学量論比の、白金、または、塩化白金、酢酸白金、硝酸白金、もしくは白金の他の無機塩、および塩化ルテニウム、酢酸ルテニウム、硝酸ルテニウム、もしくはルテニウムの他の無機塩を、ヒドラジン、次亜リン酸、ホウ水素化ナトリウム、シュウ酸塩、または他の周知の化学還元剤で、化学的に還元することによって、工程(i)から生成されたカーバイドまたはオキシカーバイド含有材料上に堆積させてもよい。代わりに、この工程を、塩化白金(H2PtCl6)を亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)と反応させて、二価(H3Pt(SO3)2OHを生成し、これを、H22などの化学酸化剤で酸化させて、コロイドまたはコロイド混合物を生成することができ、これを、先に略述した化学還元剤、およびH2ガスと反応させることによって、工程(i)の材料上に堆積させることができる酸化プロセスによって行ってもよい。Ptを加えた後、同時に、または順次に、RuCl3を加え、酸化させて、コロイド状酸化ルテニウムを生成し、H2ガスで堆積させることができる。
【0030】
成分(c)は、ナフィオン(Nafion)(登録商標)イオノマー溶液と混合した、成分(c)の任意の可溶性前駆体で、前の工程で生成された粉末のインクを形成する化合物に導入することもできる。次に、インクを、150から500℃、典型的には300℃の温度範囲にわたって、還元環境において加熱し、最終触媒を生成することができる。
【0031】
このアノード電極触媒は、任意に、乱層構造炭素または黒鉛炭素のさまざまな形態を含むが、これらに限定されない、従来の触媒固体担体上に担持させてもよい。
【0032】
当該技術において知られている、担持されたアノード電極触媒を調製するための、いくつかの方法を、用いることができる。一実施形態において、プロセスの工程(i)に、凍結乾燥、噴霧乾燥、スプレーロースティング、またはゾルゲル処理中に、触媒固体担体を導入してもよい。
【0033】
硝酸塩、塩化物、オキシ水酸化物などの無機塩が、水、または、急速に凍結できる他の溶媒に可溶性である場合、工程(i)の酸素含有前駆体を生成するための凍結乾燥手順を用いてもよい。これらの塩を適切な量の溶媒に溶解して、溶液または微細コロイドを形成してもよい。溶液濃度は、広く変わってもよく、使用される無機塩の溶解度によって、0.1Mから10Mであってもよい。次に、溶液を、液体窒素などの適切な媒体中に浸漬することによって、急速に冷却および凍結してもよい(<<1分)。溶液を急速に凍結すると、塩および他の成分は、よく混合したままであり、著しい程度に分離しない。凍結した固体を、凍結乾燥チャンバに移してもよい。排気によって水蒸気を除去する間、溶液を凍結状態に保ってもよい。排気回数は、除去すべき溶媒の量によって、日(複数日)から週(複数週)に変わってもよい。排気中、凍結した固体が解けるのを防止するために、冷却棚を使用してもよい。
【0034】
上記のように調製された無機塩の溶液、および任意に、触媒固体担体は、通常、水であってもよいが、水に限られないこれらの液体を霧化してスプレーにすることによって、噴霧乾燥してもよい。スプレーと、乾燥媒体、たとえば熱空気との接触が、水分蒸発をもたらす。乾燥した粒子の所望の含水量が得られるまで、スプレーの乾燥が進み、サイクロン分離などの適切な分離技術によって、生成物を回収してもよい。噴霧乾燥法の詳細な説明は、「噴霧乾燥ハンドブック」(Spray Drying Handbook)、ケイ・マスターズ(K.Masters)による第4版(ロングマン・サイエンティフィック・アンド・テクニカル(Longman Scientific and Technical)、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)、ニューヨーク州(N.Y.))1985年頃、に見出すことができる。
【0035】
スプレーロースティングも、これらの同じ溶液またはコロイドが必要であるが、一般に、工程(i)の酸素含有前駆体を生成するために、1つのプロセス工程における乾燥およびか焼(より高い温度)が必要である。
【0036】
工程(i)で説明された酸素含有前駆体は、また、ゾルゲルプロセスによって調製してもよい。この場合、タングステンまたはモリブデンは、いくつかのアルコキシドから得られたゾルゲル「マトリックス」中にあってもよい。たとえば、1以上の金属アルコキシド(たとえば、モリブデンエトキシドまたはタングステンエトキシド)を、ゲルを調製するための出発材料として使用してもよい。アノード電極触媒を調製するのに使用される無機金属アルコキシドとしては、アルコキシド基中に、1から20の炭素原子、好ましくは1から5の炭素原子を含有するいかなるアルコキシドを挙げてもよい。典型的には、これらのアルコキシドは、液体反応媒体に可溶性である。C1−C4アルコキシドが、最も典型的である。最も典型的なC1−C4アルコキシドのいくつかの例としては、タングステンエトキシドまたはモリブデンエトキシドが挙げられる。
【0037】
典型的にはタングステンおよびモリブデンからなる群より選択される、少なくとも1つのアルコキシドの非水溶液に、水を加えて、アルコキシドの加水分解および縮合反応を誘起して、ゲルを形成することができる。代わりに、触媒組成物中の他の水溶性成分(たとえば、鉄、マンガン、ニッケル、またはコバルトの硝酸塩)を、アルコキシド非水溶液に加えることができる。溶液は、水分のない環境において、好ましくは不活性条件下で、たとえば窒素ブランケットで、調製してもよい。非水溶液と水溶液との接触工程の間、加水分解を制御できるように、ゲル形成を誘起する加水分解反応を、水分のない不活性ガス環境下で行うことも、典型的である。典型的には、加える水の量は、加水分解化学量論に従って、選択される。(Mo(OEt)5)などの五価アルコキシドの場合、5:1の水:モリブデンアルコキシド比が典型的である。材料を従来どおりに、または超臨界的に乾燥させて酸素含有前駆体を生成してもよく、これは、この場合、乾燥ゲル(キセロゲル)またはエーロゲルである。担持されたアノード電極触媒を調製するための他の方法を用いることができる。成分(a)、または任意に、バナジウムカーバイド、ニオブカーバイド、タンタルカーバイド、バナジウムオキシカーバイド、ニオブオキシカーバイド、もしくはタンタルオキシカーバイドは、アルコキシド、硝酸塩、酢酸塩、塩化物、タングステン酸アンモニウムもしくはモリブデン酸アンモニウム、またはモリブデン、タングステン、ニオブ、もしくはタンタルの他の可溶性前駆体を、導電性固体担体上に堆積させることによって、調製することができる。これは、初期湿潤技術および直接含浸によって行うことができる。たとえば、最初に、炭素担体に水溶性前駆体および水を充填することができ、これを、任意に凍結することができる。(a)、または任意に、バナジウム、ニオブ、もしくはタンタルの付加的な成分を含有するアルコキシド試薬または他の水反応性前駆体をこの凍結固体に加え、ドライミリングし、室温に温めることができる。次に、より高い温度で混合物を反応させて、固体担体上に担持された、成分(a)、または任意に、バナジウムカーバイド、ニオブカーバイド、タンタルカーバイド、バナジウムオキシカーバイド、ニオブオキシカーバイド、もしくはタンタルオキシカーバイドを形成することができる。材料を、1:10から10:1の比で存在してもよい炭化水素/水素ガス混合物中で、加熱して、600から1200℃、より典型的には700℃から900℃の温度で、0.5から48時間の期間、対応するカーバイド相を調製することができる。典型的には、炭化水素は、エタンおよびメタンからなる群より選択される。その後、適切な化学量論比の、白金、または、塩化白金、酢酸白金、硝酸白金、もしくは白金の他の無機塩、および塩化ルテニウム、酢酸ルテニウム、硝酸ルテニウム、もしくはルテニウムの他の無機塩を、ヒドラジン、次亜リン酸、ホウ水素化ナトリウム、シュウ酸塩、または他の周知の化学還元剤で、化学的に還元することによって、この材料上に、成分(b)および(c)を堆積させることができる。代わりに、この工程を、塩化白金(H2PtCl6)を亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)と反応させて、二価(H3Pt(SO3)2OHを生成し、これを、H22などの化学酸化剤で酸化させて、コロイドまたはコロイド混合物を生成することができ、これを、先に略述した化学還元剤、およびH2ガスと反応させることによって、工程(i)の材料上に堆積させることができる、酸化プロセスによって、行ってもよい。Ptを加えた後、同時に、または順次に、RuCl3を加え、酸化させて、コロイド状酸化ルテニウムを生成し、H2ガスで堆積させることができる。成分(c)は、ナフィオン(Nafion)(登録商標)イオノマー(ionomer)溶液と混合した、成分cの任意の可溶性前駆体で、前の工程で生成された粉末のインクを形成する化合物に導入することもできる。次に、インクを、150から500C、好ましくは300Cの温度範囲にわたって、還元環境において加熱し、最終触媒を生成することができる。
【0038】
上に貴金属成分を後で導入してもよいカーバイド相を調製するための、いくつかの他の方法がある。これらは、高い温度における金属と元素炭素との直接反応、および固体炭素の存在下での金属酸化物の反応を含む。他の方法としては、不活性雰囲気中で分解してカーバイド相を生成してもよい、カルボニルおよび炭素含有有機金属化合物(たとえば、モリブデンカルボニルおよびタングステンカルボニル)によるカーバイドの形成が挙げられる。
【0039】
貴金属の導入前にカーバイド相を生成するための別の方法は、反応性スパッタ堆積によるカーバイドの形成を伴う。電気化学方法も、適切なカーバイドを形成するために使用してもよい。
【0040】
コーティング基材:
コーティング基材は、触媒コーティング膜またはコーティングされたガス拡散裏材を含んでもよい。
【0041】
触媒コーティング膜(CCM):
電極触媒コーティング組成物を、イオン交換ポリマー膜などの基材上に付与するCCM製造について、さまざまな技術が知られている。いくつかの既知の方法としては、噴霧、塗装、パッチコーティング、およびスクリーン印刷が挙げられる。
【0042】
電極触媒コーティング組成物:
典型的には、電極触媒コーティング組成物は、アノード電極触媒と、イオン交換ポリマーなどのバインダーと、溶媒とを含む。電極触媒コーティング組成物中に使用されるイオン交換ポリマーが、電極触媒粒子用バインダーとして役立つだけでなく、電極を膜に固定するのを助けるので、組成物中のイオン交換ポリマーが、膜中のイオン交換ポリマーと適合性があることが好ましい。最も典型的には、組成物中のイオン交換ポリマーは、膜中のイオン交換ポリマーと同じタイプである。
【0043】
本発明によって使用されるイオン交換ポリマーは、典型的には、高度にフッ素化されたイオン交換ポリマーである。「高度にフッ素化された」とは、ポリマー中の一価原子の総数の少なくとも90%が、フッ素原子であることを意味する。最も典型的には、ポリマーは、ペルフルオロ化されている(perfluorinated)。ポリマーがスルホネートイオン交換基を有することも、燃料電池での使用には典型的である。「スルホネートイオン交換基」という用語は、スルホン酸基またはスルホン酸基の塩、典型的には、アルカリ金属またはアンモニウム塩を指すことが意図されている。燃料電池のようにポリマーをプロトン交換に使用すべき用途では、ポリマーのスルホン酸形態が典型的である。電極触媒コーティング組成物中のポリマーが、使用されるときにスルホン酸形態でない場合、使用前にポリマーを酸形態に変えるために、後処理酸交換工程が必要であろう。
【0044】
典型的には、使用されるイオン交換ポリマーは、ポリマーバックボーンを含み、繰返し側鎖がバックボーンに付着し、側鎖がイオン交換基を保持する。可能なポリマーとしては、ホモポリマー、または2以上のモノマーのコポリマーが挙げられる。コポリマーは、典型的には、非官能性モノマーであり、ポリマーバックボーンに炭素原子を与える、1つのモノマーから形成される。第2のモノマーは、ポリマーバックボーンに両方の炭素原子を与え、また、カチオン交換基、またはその前駆体、たとえば、その後、加水分解してスルホネートイオン交換基にすることができるスルホニルフルオリド(−SO2F)などのスルホニルハライド基を保持する側鎖に寄与する。たとえば、第1のフッ素化ビニルモノマーと、スルホニルフルオリド基(−SO2F)を有する第2のフッ素化ビニルモノマーとのコポリマーを使用することができる。可能な第1のモノマーとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、ビニリジン(vinylidine)フルオリド、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、およびそれらの混合物が挙げられる。可能な第2のモノマーとしては、ポリマー中の所望の側鎖を与えることができるスルホネートイオン交換基または前駆体基を有する、さまざまなフッ素化ビニルエーテルが挙げられる。第1のモノマーも、スルホネートイオン交換基のイオン交換機能を妨げない側鎖を有してもよい。必要であれば、付加的なモノマーも、これらのポリマーに組入れることができる。
【0045】
典型的なポリマーは、高度にフッ素化された、最も典型的にはペルフルオロ化された、炭素バックボーンを含み、側鎖が、式−(O−CF2CFRfa−O−CF2CFR’fSO3Hで表され、ここで、RfおよびR’fは、F、Cl、または1から10の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキル基から無関係に選択され、a=0、1、または2である。典型的なポリマーとしては、たとえば、米国特許第3,282,875号明細書ならびに米国特許第4,358,545号明細書および第4,940,525号明細書に開示されたポリマーが挙げられる。1つの典型的なポリマーは、ペルフルオロカーボンバックボーンを含み、側鎖は、式−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO3Hで表される。このタイプのポリマーは、米国特許第3,282,875号明細書に開示され、テトラフルオロエチレン(TFE)およびペルフルオロ化ビニルエーテルCF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2F、ペルフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド)(PDMOF)を共重合し、その後、スルホニルフルオリド基の加水分解によってスルホネート基に変え、イオン交換して、プロトン形態としても知られている酸に変えることによって、製造することができる。米国特許第4,358,545号明細書および第4,940,525号明細書に開示されたタイプの1つの典型的なポリマーは、側鎖−O−CF2CF2SO3Hを有する。このポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)およびペルフルオロ化ビニルエーテルCF2=CF−O−CF2CF2SO2F、ペルフルオロ(3−オキサ−4−ペンテンスルホニルフルオリド)(POPF)の共重合、その後の、加水分解および酸交換によって、製造することができる。
【0046】
上記タイプのペルフルオロ化ポリマーの場合、ポリマーのイオン交換容量は、イオン交換比(「IXR」)によって表すことができる。イオン交換比は、イオン交換基に対する、ポリマーバックボーン中の炭素原子の数と定義する。ポリマーの広範囲のIXR値が可能である。しかし、典型的には、ペルフルオロ化スルホネートポリマーのIXR範囲は、通常、約7から約33である。上記タイプのペルフルオロ化ポリマーの場合、ポリマーのカチオン交換容量は、当量(EW)によって表されることが多い。この用途の目的で、当量(EW)は、NaOH1当量を中和するのに必要な酸形態のポリマーの重量と定義する。ペルフルオロカーボンバックボーンを含み、側鎖が−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2−CF2−SO3H(またはそれらの塩)である、スルホネートポリマーの場合、約7から約33のIXRに対応する当量範囲は、約700EWから約2000EWである。このポリマーのIXRの好ましい範囲は、約8から約23(750から1500EW)であり、最も好ましくは、約9から約15(800から1100EW)である。
【0047】
電極触媒コーティング組成物用の液体媒体は、このプロセスと適合性があるように選択されるものである。膜に移す前に基材上で乾燥するほど速く、組成物が乾燥できないのであれば、用いられるプロセス条件下で電極層の急速な乾燥が可能であるように、媒体の沸点が十分に低いことが有利である。可燃性成分を使用すべき場合、特に、使用中に触媒と接触するので、選択には、そのような材料と関連する、いかなるプロセスリスクも考慮に入れなければならない。媒体は、また、酸形態で強い酸性活性を有するイオン交換ポリマーの存在下で、十分に安定しなければならない。液体媒体は、典型的には、電極触媒コーティング組成物中のイオン交換ポリマーと適合性があり、膜を「濡らす」ことができなければならないので、極性である。液体媒体として水を使用することが可能であるが、組成物中のイオン交換ポリマーが、乾燥すると「合着し」、安定した電極層を形成するために加熱などの後処理工程が必要でないように、媒体を選択することが好ましい。
【0048】
非常にさまざまな極性有機液体またはそれらの混合物が、電極触媒コーティング組成物に適した液体媒体として役立つことができる。コーティングプロセスを妨げないのであれば、小量の水が媒体中に存在してもよい。いくつかの典型的な極性有機液体は、大量で膜を膨張させることができるが、本発明によって付与される電極触媒コーティング組成物の液体の量は十分に限られ、プロセス中の膨張からの悪影響は、小さいか、検出できない。イオン交換膜を膨張させることができる溶媒は、より良好な接触、および、より確実な、電極の膜への付与をもたらすことができると考えられる。さまざまなアルコールが、液体媒体としての使用に十分に適している。
【0049】
典型的な液体媒体としては、n−、イソ−、sec−、およびtert−ブチルアルコールなどの、適切なC4からC8アルキルアルコール;1、2−、および3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル,1−ブタノールなどの異性体5炭素アルコール;1−、2−、および3−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル,1−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノールなどの異性体6炭素アルコール;異性体C7アルコールおよび異性体C8アルコールが挙げられる。環状アルコールも適している。好ましいアルコールは、n−ブタノールおよびn−ヘキサノールである。最も好ましいのは、n−ヘキサノールである。
【0050】
アノード電極触媒中の液体媒体の量は、使用される媒体のタイプ、組成物の成分、使用されるコーティング装置のタイプ、所望の電極厚さ、プロセス速度などとともに変わる。使用される液体の量は、無駄を最小にして高品質電極を得るのに非常に重要な電極触媒コーティング組成物の粘度に非常に依存する。
【0051】
電極触媒コーティング組成物の取扱い特性、たとえば乾燥性能を、液体媒体の総重量に基いて、25重量%までのエチレングリコールまたはグリセリンなどの適合性添加剤を含めることによって、修正することができる。
【0052】
水/アルコール分散系中の、ナフィオン(登録商標)という商標でイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)によって販売されている、市販の、ペルフルオロ化スルホン酸ポリマーの酸形態の分散系を、出発材料として使用して、電極触媒コーティング組成物を調製してもよいことがわかっている。このイオン交換ポリマー含有分散系を、電極触媒コーティング組成物のベースとして使用すると、電極を形成するのに必要な本発明のアノード電極触媒を加えることができ、付与特性の優れたコーティング組成物をもたらすことができる。
【0053】
電極触媒コーティング組成物において、アノード電極触媒が、結果として生じる電極の重量による主成分となるように、アノード電極触媒、イオン交換ポリマー、および他の成分が存在する場合は他の成分の量を調整することが好ましい。最も好ましくは、電極中のアノード電極触媒とイオン交換ポリマーとの重量比は、約2:1から約10:1である。
【0054】
既知の電極触媒コーティング技術を利用すると、非常に厚い、たとえば20μm以上、非常に薄い、たとえば1μm以下の、本質的に任意の厚さであってもよい、非常にさまざまな付与層を製造することができる。
【0055】
基材:
触媒コーティング膜(CCM)を準備するのに使用される基材は、電極触媒コーティング組成物での使用について上述されたのと同じイオン交換ポリマーの膜であってもよい。膜は、典型的には、既知の押出またはキャスティング技術によって製造してもよく、用途によって変わってもよい厚さであってもよく、典型的には、厚さが350μm以下であってもよい。非常に薄い、すなわち、50μm以下の膜を使用するのが傾向である。ポリマーは、アルカリ金属またはアンモニウム塩形態であってもよいが、典型的には、膜中のポリマーは、後処理酸交換工程を回避するために酸形態である。適切な、酸形態のペルフルオロ化スルホン酸ポリマー膜は、イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニーによって、ナフィオン(登録商標)という商標で入手可能である。
【0056】
強化されたペルフルオロ化イオン交換ポリマー膜も、CCM製造に利用することができる。強化膜は、多孔性発泡PTFE(ePTFE)にイオン交換ポリマーを含浸させることによって、製造してもよい。ePTFEは、メリーランド州エルクトンのW.L.ゴア・アンド・アソシエーツ・インコーポレイテッド(W.L.Gore and Associates,Inc.,Elkton MD)から「ゴアテックス」(Goretex)という商品名で入手可能であり、また、ペンシルバニア州フィースタービルのテトラテック(Tetratec,Feasterville PA)から「テトラテックス」(Tetratex)という商品名で入手可能である。ペルフルオロ化スルホン酸ポリマーによるePTFEの含浸は、米国特許第5,547,551号明細書および第6,110,333号明細書に開示されている。
【0057】
代わりに、機械的特性を向上させる目的で、コストを減少させる、および/または他の理由のため、イオン交換膜は、多孔性担体であってもよい。多孔性担体は、広範囲の成分、たとえば、炭化水素、たとえば、ポリオレフィン、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、それらの物質のコポリマーなどから製造してもよい。ポリクロロトリフルオロエチレンなどのペルハロゲン化(Perhalogenated)ポリマーも使用してもよい。膜は、また、ポリベンゾイマダゾール(polybenzimadazole)ポリマーから製造してもよい。この膜は、米国特許第5,525,436号明細書、第5,716,727号明細書、第6,025,085号明細書、および第6,099,988号明細書に記載されているように、トリフルオロ酢酸(TFA)でドープしたリン酸(H3PO4)にポリベンゾイマダゾール(polybenzimadazole)を溶かした溶液をキャスティングすることによって製造してもよい。
【0058】
コーティングされたガス拡散裏材:
ガス拡散裏材は、親水性または疎水性を示すように処理された、織または不織炭素繊維から製造された紙または布などの多孔性導電性シート材料と、典型的には炭素粒子とPTFEなどのフルオロポリマーとのフィルムを含むガス拡散層とを含む。電極触媒コーティング組成物は、その上にコーティングされている。アノードまたはカソードを形成する電極触媒コーティング組成物は、触媒コーティング膜について先に説明したものと同じである。
【0059】
燃料電池:
本発明の燃料電池は、コーティング基材を含み、コーティング基材は、電極触媒コーティング組成物がコーティングされた基材を含み、電極触媒コーティング組成物は、タングステンカーバイド、モリブデンカーバイド、タングステンオキシカーバイド、モリブデンオキシカーバイド、およびそれらの混合物からなる群より選択される化合物と、白金、白金とルテニウムとの混合物、または白金と酸化ルテニウムとの混合物とを含む。コーティング基材は、触媒コーティング膜またはコーティングされたガス拡散裏材であってもよい。
【0060】
アノードおよびカソードの電極触媒は、典型的には、所望の電気化学反応を誘起する。燃料電池は、典型的には、また、各電極と電気的に接触し、反応物を電極に拡散させる多孔性導電性シート材料を含む。先に説明したように、電極触媒コーティング組成物をイオン交換膜上にコーティングして、その上にアノードまたはカソードを形成し、それにより、触媒コーティング膜を形成してもよい。代わりに、電極触媒コーティング組成物を、典型的にはガス拡散裏材として知られている多孔性導電性シート材料上にコーティングしてもよい。ガス拡散裏材は、通常、水湿潤性特性に影響を及ぼすように処理された織または不織炭素繊維基材から製造される。ガス拡散裏材基材の片面または両面を、炭素粒子とバインダー(通常PTFE)とを含有する薄い多孔性層でコーティングしてもよく、この層は、通常、「ガス拡散層」と呼ばれる。電極触媒コーティング組成物をガス拡散層上にコーティングしてもよい。
【0061】
膜とガス拡散裏材とを含み、電極触媒組成物が膜もしくはガス拡散裏材または両方にコーティングされたアセンブリは、膜電極アセンブリ(「MEA」)と呼ばれることがある。導電性材料から製造され、反応物の流動領域を与えるバイポーラセパレータプレートが、いくつかの隣接したMEAの間に配置されている。いくつかのMEAおよびバイポーラプレートをこのように組立て、燃料電池スタックを提供する。
【0062】
電極が、これらのタイプの燃料電池内で効果的に機能するために、効果的なアノード電極触媒部位を与えなければならない。効果的なアノード電極触媒部位は、いくつかの望ましい特徴があり、(1)電極触媒部位が、反応物にアクセス可能である、(2)電極触媒部位が、ガス拡散層に電気的に接続されている、(3)電極触媒部位が、燃料電池電解質にイオンによって接続されている。
【0063】
燃料および酸化剤流体ストリームの漏れまたは相互の混合(inter−mixing)を防止するために、燃料電池スタック中の反応物流体ストリーム通路をシールすることが望ましい。燃料電池スタックは、典型的には、セパレータプレートと膜との間に、エラストマーガスケットなどの、流体を通さない弾性シールを使用する。そのようなシールは、典型的には、マニホルドおよび電気化学的に活性の領域の範囲を定める。シーリングは、圧縮力を弾性ガスケットシールに加えることによって行われる。
【0064】
セパレータプレートおよびMEAの表面間のシーリングおよび電気的接触、ならびに隣接した燃料電池スタック構成要素間のシーリングを向上させるために、燃料電池スタックは圧縮されている。従来の燃料電池スタックにおいて、燃料電池スタックは、典型的には、圧縮され、かつ、1以上の金属タイロッドまたはテンション部材によって、1対のエンドプレート間に、組立てられた状態で維持されている。タイロッドは、典型的には、スタックエンドプレートに形成された穴を通って延在し、かつ、それらをスタックアセンブリ内に固定するための、関連するナットまたは他の固定手段を有する。タイロッドは、外部にあってもよく、すなわち、燃料電池プレートおよびMEAを通って延在しないが、外部タイロッドは、スタック重量および体積を著しく増加させることがある。一般に、米国特許第5,484,666号明細書に記載されているように、燃料電池プレートおよびMEAの開口部を通って、スタックエンドプレート間に延在する、1以上の内部タイロッドを使用することが好ましい。典型的には、弾性部材を、タイロッドおよびエンドプレートと協働するように利用し、2つのエンドプレートを互いの方に動かして、燃料電池スタックを圧縮する。
【0065】
弾性部材は、たとえば、熱または圧力により誘起された膨張および収縮、および/または変形によって引起されるスタック長の変化に対応する。すなわち、燃料電池アセンブリの厚さが減少すると、弾性部材は、膨張して、燃料電池アセンブリに対する圧縮荷重を維持する。弾性部材は、また、圧縮して、燃料電池アセンブリの厚さの増加に対応する。好ましくは、弾性部材は、動作燃料電池の予期される膨張および収縮範囲内で、実質的に均一な圧縮力を燃料電池アセンブリに与えるように選択される。弾性部材は、機械的スプリング、または液圧もしくは空気圧ピストン、またはスプリングプレート、または圧力パッド、または他の弾性圧縮デバイスもしくは機構を含んでもよい。たとえば、1以上のスプリングプレートをスタック中に層にしてもよい。弾性部材は、テンション部材と協働して、エンドプレートを互いの方に動かし、それにより、圧縮荷重を燃料電池アセンブリに加え、引張荷重をテンション部材に加える。
【実施例】
【0066】
実施例1
触媒担体Mo2Cに対するNb1重量%の合成:
1.4823gのNb(OCH73を、50.0004gのMoO3に加える。水を上記混合物に加えて、ウェットペーストを作る。このペーストをスパチュラで十分に混合する。ペーストを、乾燥オーブン内で1時間110℃で乾燥させ、真空オーブン内で110℃で一晩さらに乾燥させる。上記乾燥サンプル14.56gを、縦型石英管に入れ、500SCCM N2中、室温で、30分間、半流動化する(semifluidized)。次に、H2ガス中〜400SCCM10%エタンに切替え、1C/分で、700℃に加熱する。サンプルを、700℃で、24時間、反応させる。最終生成物を、500SCCM N2/5SCCM O2を用いて、室温で4時間不動態化する。生成物の最終重量は、約6.97gであると予期される。
【0067】
電極触媒粉末合成:
この実験では、Nb1重量%/Mo2C粉末2.37gを使用する。
【0068】
ヘキサクロロ白金酸溶液(スペクトラム(Spectrum)P1155、Pt4.61重量%)44.68gを、RuCl3.xH2O(アルドリッチ(Aldrich)20,622−9)水溶液(Ru1.92重量%、ICP元素分析によって定められる)55.587gと混合する。NH4VO3の0.05M水溶液70.13mlリットルを、0.44M Mn(NO3)水和物7.97mlおよび1M Fe(NO33溶液3.5mlとともに加える。撹拌しながら、1%Nb/Mo2Cを2.37g加える。この混合物を液体窒素中に急速に浸漬する(それにより、材料を凍結して固体にする)ことによって、混合物から水分を除去する。固体マスをバーティス・フリーズ・ドライヤ(Virtis Freeze Drier)上に置き、乾燥するまで、>72時間、排気する。最終粉末を水素中で還元し、300℃に1時間空気中に置く。
【0069】
上記電極触媒粉末0.0579g、ナフィオン(登録商標)イオノマー溶液(10.62重量%、SE10072、デュポン)0.1134g、およびH2O5.83gを、混合し、オムニ・ミキサ・ホモジェナイザ(Omni Mixer Homogenizer)で、室温で30分間ミリングする。次に、電極触媒の最終充填が約0.3mgPt/1.5cm2となるように、カーボン紙ストリップ上に、1.5cm2の領域にわたって、インクをコーティングし、サンプル1を形成する。
【0070】
アービン・インストルメンツ(Arbin Instruments)によって製造されたアービン・テスティング・システム・ステーション(Arbin Testing system station)(モデルBT2043、ソフトウェア・バージョン(Software Version)MITS’97)を使用して、電気化学半電池データを収集する。対極がPtコイルであり、SCE(標準カロメル電極)を参照電極として使用する3電極システムを使用して、1M CH3OH/0.5M H2SO4溶液中で、サイクリックボルタンメトリ(CV)を用いることによって、メタノール酸化について電極の活性を評価する。50mV/秒の走査速度で、開回路電位(Eoc)から、1.1Vに、そして−0.25Vに戻り、電位を走査する。電流が安定するまで、1.1V−−0.25V−1.1Vで、走査を繰返す。電流を幾何学的表面積について正規化する。表にされた電流は、ipt1Aであり、これは、触媒ストリップ上のPtの量(mg)に正規化された、CV走査からのピーク酸化電流である。
【0071】
この触媒の予期されたipt1A値は、>300mA/mgPtである。
【0072】
実施例2:
次の手順を用いて、ケッチェン600炭素担持触媒を調製した。
出発成分の原子比(モル%)は、次のとおりであった。
(31.6モル%Pt、31.6モル%Ru、1.1モル%Nb、10.8モル%W、8.3モル%Fe、9.4モル%Mn、7.32モル%Re)19.2モル%
80.8モル%C
【0073】
工程1:
小さいマイクロミル(micromill)(ニュージャージー州ペカノックのベル−アート・プロダクツ(Bel−Art Products,Pequanock,NJ)、#37252−0000)でダストに微粉砕されたタングステン酸アンモニウム(アルドリッチ、32,238−5)9.115gおよびケッチェンブラック(Ketjenblack)600(ケッチェンEC600 JD、アクゾ・ノーブル)15.00gを、「ワーリング」(Waring)市販ブレンダに入れた。混合物を、ドライアイスで、90分間、冷却した。ドライアイスで凍結され、マイクロミルで微粉砕された脱イオン水20.0gを、ブレンダに加え、約2−4分間、ブレンドした。結果として生じる均一な固体を、大きい結晶皿内で、ゆっくり温め、次に、約50℃で、一晩、乾燥させた。
【0074】
材料を、ワーリング市販ブレンダに戻し、ドライアイスで、90分間、冷却した。ドライアイスで凍結され、マイクロミルで微粉砕された、シクロヘキサン18.0g中1.029ニオブエトキシド(Nb(C2H5O)5、アルドリッチ、33 920−2)を、ブレンダに加えた。混合物をワーリング市販ブレンダでブレンドした。結果として生じる均一な固体を、大きい結晶皿内で、室温にゆっくり温め、室温(RT)で、48時間、乾燥させた。生成物の重量は24.61gであった。
【0075】
この材料7.17グラムを、石英フリットを備えた縦型石英管炉(28mm 外径)に充填した。100sccm He、および10Arと、45%H2と、45%CH4(メタン)とからなるガス混合物200sccmの流量で、ガスを導入した。サンプルを、このメタンおよび水素含有雰囲気中、10C/分の速度で、500℃に加熱し、1C/分の速度で、800℃に加熱し、800℃で、1時間、浸し、その後、流動He中、室温に冷却した。材料を、窒素ガスでパージし、次に、不活性雰囲気ドライボックスに移し、材料を窒素中に、移し、保存し、生成物の収率は約5.93gであった。
【0076】
フィリップス(Philips)X’PERT自動粉末回折計、モデル3040で、サンプルの粉末X線回折データを得た。サンプルを、バッチモードで、モデルPW1775多数位置サンプルチェンジャで、ランさせた。回折計に、自動可変スリット、ゼノン(zenon)比例計数管、および黒鉛モノクロメータを装備した。放射線は、CuK(アルファ)であった(45kV、40mA)。室温で、4から80度2シータ;0.03度の等価ステップサイズでの連続走査;および1ステップあたり2.0秒のカウント時間で、データを収集した。サンプルは、粉末材料の薄層としてケイ素低バックグラウンド標本ホルダ上に準備した。主結晶相は、JCPDS回折データのための国際センター(International Centre for Diffraction Data)、ペンシルバニア州スワースモア(Swarthmore PA)、19081、からの基準サンプルから定められるように、WC(カード#25−1041)およびW2C(カード#35−0726)であった。
【0077】
工程2:
ワタナベ(Watanabe)、「エム・ワタナベ(M.Watanabe)、エム・ウチダ(M.Uchida)、およびエス・モト(S.Moto)、「Pt+Ru合金クラスターの調製」(Preparation of Pt+Ru alloy clusters)、ジャーナル・オブ・エレクトロアナリティカル・ケミストリー(J.Electroanal.Chem.)、229(1987)395−406、からの手順の変更例を用いた。5リットルの撹拌プラスチック容器に、クロロ白金酸溶液(H2PtCl6から得られる水溶液中10.13重量%Ptを含有する、ミズーリ州セント・ルイスのシグマ・アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Sigma Aldrich Chemical Company,St.Louis,MO))34.55gを、水5000mlとともに加えた。NaHSO317.65gを、加え(アルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals))、10分間、溶液に撹拌した。炭酸ナトリウムを使用して、溶液のpHを5に調整した。H22(30重量%H22、ドイツ、ダルムシュタットのメルク、GaA(Merck,GaA,Darmstadt Germany))858mlを、約4分の期間にわたって加え、pHを約5に調整した。2.02重量%Ruを含有するRuCl3溶液(RuCl3から得られる、シグマ・アルドリッチ・ケミカル・カンパニー)89.77gを、H2O300mlで希釈した。工程1で準備した材料4.12gを、混合物に加え、pHが安定するまで、15分間、混合物を撹拌した。材料を、10分間、窒素下で、撹拌し、次に、一晩、室温で、約100ml/分の水素ガスでパージした。それを、濾過し、水5リットルで洗浄し、その後、空気乾燥させた。
【0078】
工程3:
工程2で形成された材料0.100g、11.4重量%990EWナフィオン(登録商標)溶液(SE10072、水素形態、デラウェア州ウィルミントンのデュポン(DuPont,Wilmington,DE))0.454g、およびH2O5.507gを、FeNO3 9H2Oの1M水溶液(アルドリッチ、ケミカルズ(Aldrich,Chemicals)のFeNO3 9 H2Oから調製された)49.7マイクロリットル、0.44M硝酸マンガン水溶液(アルファ(Alfa)、878488のMn(NO32から調製された)112.9マイクロリットル、および0.5M過レニウム酸水溶液(過レニウム酸、アルファ、アエサー(Alfa,Aesar)、11339から調製された)99.3マイクロリットルと混合した。この混合物を、オムニ・ミキサ・ホモジェナイザで、室温で、30分間、ミリングした。次に、最終触媒が約0.3mgPt/1.5cm2となるように、カーボン紙ストリップ上に、1.5cm2の領域にわたって、インクをコーティングした。テスト前に、電極材料を、水素中、300℃で、1時間、加熱した。
【0079】
工程4:
アービン・インストルメンツによって製造されたアービン・テスティング・システム・ステーション(モデルBT2043、ソフトウェア・バージョンMITS’97)を使用して、電気化学半電池データを収集した。対極がPtコイルであり、SCE(標準カロメル電極)を参照電極として使用する3電極システムを使用して、1M CH3OH/0.5M H2SO4溶液中で、サイクリックボルタンメトリ(CV)を用いることによって、メタノール酸化について電極の活性を評価した。50mV/秒の走査速度で、開回路電位(Eoc)から、1.1Vに、そして−0.25Vに戻り、電位を走査した。電流が安定するまで、1.1V−−0.25V−1.1Vで、走査を繰返した。
【0080】
電流を幾何学的表面積について正規化した。表にされた電流は、ipt1Aであり、これは、電極上のPtの量(mg)に正規化された、CV走査からのピーク酸化電流であった。
Ipt1=339mA/mgPt
【0081】
実施例3:
次の手順を用いて、ケッチェン600炭素担持触媒を調製した。
出発成分の(モル%)の原子比は、次のとおりであった。
(19.75モル%Pt、19.75モル%Ru、40.6モル%Mo、8.2モル%Fe、6.6モル%Mn、5.1モル%Re)5.9モル%、94.1モル%ケッチェン・カーボン(Ketjen Carbon)
【0082】
工程1:
ケッチェン・ブラック(Ketjen black)600(ケッチェンEC600 JD、テキサス州ヒューストンのアクゾ・ノーブル(Akzo Noble,Houston,Texas))15.00gおよびモリブデン酸アンモニウム(シグマ(Sigma)、A−7302)5.66グラムを、「ワーリング」市販ブレンダに入れた。水15.0gを、液体窒素中で凍結し、小さいマイクロミル(ニュージャージー州ペカノックのベル−アート・プロタクツ、#37252−0000)で微粉砕した。ケッチェン・ブラックとモリブデン酸アンモニウムとの混合物を、ドライアイスを用いて、冷却し、凍結され微粉砕された水15.0gとともに、ワーリング市販ブレンダに加え、2分間、撹拌した。結果として生じる均一な固体を、大きい結晶皿内で、ゆっくり温め、次に、約120℃で、4時間、乾燥させた。
【0083】
この材料7.27グラムを、ガラスフリットを含む縦型石英管炉(49mm 外径)に充填し、100sccm Heと、10Ar、45%H2、および45%CH4(メタン)からなるガス混合物200sccmとを含むガス混合物で、流動化した。サンプルを、10C/分の速度で、500℃に加熱し、1C/分の速度で、800℃に加熱し、800℃で、1時間、浸し、その後、流動He中、室温に冷却した。材料を窒素ガスでパージし、次に不活性雰囲気ドライボックスに移し、材料を窒素中に移し、保存し、生成物の収率は約4.66gであった。
【0084】
工程2:
ワタナベ、「エム・ワタナベ、エム・ウチダ、およびエス・モト、「Pt+Ru合金クラスターの調製」、ジャーナル・オブ・エレクトロアナリティカル・ケミストリー、229(1987)395−406、からの手順の変更例を用いた。5リットルの撹拌プラスチック容器に、クロロ白金酸水溶液(H2PtCl6から得られる10.13重量%Ptを含有する、アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company))6.51gを、水969mlとともに加えた。NaHSO33.324gを、加え(アルドリッチ・ケミカルズ)、10分間、溶液に撹拌した。炭酸ナトリウムを使用して、溶液のpHを5に調整した。H22(30重量%H22、ドイツ、ダルムシュタットのメルク、GaA)162mlを、約4分の期間にわたって加え、pHを約5に調整した。2.02重量%Ruを含有するRuCl3水溶液(RuCl3から得られる、シグマ・アルドリッチ・ケミカル・カンパニー)16.87gを、H2O56.5mlで希釈した。工程2で準備した材料4.00gを、混合物に加え、pHが安定するまで、15分間、混合物を撹拌した。材料を、10分間、窒素下で、撹拌し、次に、一晩室温で約100ml/分の水素ガスでパージした。それを濾過し、水5リットルで洗浄し、その後、空気乾燥させた。
【0085】
工程3:
工程2で形成された材料0.101g、11.4重量%990EWナフィオン溶液(SE10072、水素形態、デラウェア州ウィルミントンのデュポン)0.0.177g、およびH2O5.728gを、FeNO3 9H2Oの1M水溶液(アルドリッチ、ケミカルズのFeNO3 9 H2Oから調製された)20.0マイクロリットル、0.44M Mn(NO3)2からなる水溶液(アルファ、878488のMn(NO3)2から調製された)45.5マイクロリットル、および0.5M過レニウム酸の水溶液(過レニウム酸、アルファ、アエサー、11339から調製された)40.0マイクロリットルと混合した。この混合物を、オムニ・ミキサ・ホモジェナイザで、室温で、30分間、ミリングした。次に、最終触媒が約0.3mgPt/1.5cm2となるように、カーボン紙ストリップ上に、1.5cm2の領域にわたって、インクをコーティングした。テスト前に、電極材料を、水素中、300℃で、1時間、加熱した。
【0086】
工程4:
アービン・インストルメンツによって製造されたアービン・テスティング・システム・ステーション(モデルBT2043、ソフトウェア・バージョンMITS’97)を使用して、電気化学半電池データを収集した。対極がPtコイルであり、SCE(標準カロメル電極)を参照電極として使用する3電極システムを使用して、1M CH3OH/0.5M H2SO4溶液中で、サイクリックボルタンメトリ(CV)を用いることによって、メタノール酸化について電極の活性を評価した。50mV/秒の走査速度で、開回路電位(Eoc)から、1.1Vに、そして−0.25Vに戻り、電位を走査した。電流が安定するまで、1.1V−−0.25V−1.1Vで、走査を繰返した。
【0087】
電流を幾何学的表面積について正規化した。表にされた電流は、ipt1Aであり、これは、電極上のPtの量(mg)に正規化された、CV走査からのピーク酸化電流であった。
Ipt1=400mA/mgPt
【0088】
実施例4:
次の手順を用いて、バルカン・カーボン(Vulcan Carbon)担持触媒を調製した。
出発成分の原子比(モル%)は、次のとおりである。
(19.15モル%Pt、19.15モル%Ru、3.87モル%Nb、38.72モル%W、6.34モル%Fe、7.2モル%Mn、5.57モル%Re)6.2モル%
93.8モル%C
【0089】
小さいマイクロミル(ニュージャージー州ペカノックのベル−アート・プロタクツ、#37252−0000)でダストに微粉砕されたタングステン酸アンモニウム(アルドリッチ、32,238−5)9.118gおよびバルカン(Vuclan)XC72R(マサチューセッツ州ビラーリンカのカボット・コーポレイション(Cabot Corporation,Billerinca,MA))15.00gを、「ワーリング」市販ブレンダに入れた。混合物を、ドライアイスで、90分間、冷却した。ドライアイスで凍結され、マイクロミルで微粉砕された脱イオン水20.0gを、ブレンダに加えた。材料を、ワーリングブレンダで、2−4分間、混合した。結果として生じる均一な固体を、大きい結晶皿内で、ゆっくり温め、次に、約50℃で、一晩、乾燥させた。
【0090】
材料を、ワーリング市販ブレンダに戻し、ドライアイスで、90分間、冷却した。ドライアイスで凍結され、マイクロミルで微粉砕された、シクロヘキサン18.0g中1.028ニオブエトキシド(Nb(C25O)5、アルドリッチ、33 920−2)を、ブレンダに加えた。材料を、ワーリングブレンダで、2から4分間、混合した。結果として生じる均一な固体を、大きい結晶皿内で、室温にゆっくり温め、RTで、48時間、乾燥させた。生成物の重量は23.26gであった。
【0091】
この材料7.41グラムを、ガラスフリットを備えた石英管(48mm 外径)に充填し、100sccm He、および10%Arと、45%H2と、45%CH4(メタン)とからなるガス混合物200sccmで、半流動化した。サンプルを、10C/分の速度で、500℃に加熱し、1C/分の速度で、800℃に加熱し、800℃で、1時間、浸し、その後、流動He中、室温に冷却した。材料を、窒素ガスでパージし、次に、不活性雰囲気ドライボックスに移し、材料を窒素中に、移し、保存し、生成物の収率は約4.96gであった。
【0092】
工程2:
ワタナベ、「エム・ワタナベ、エム・ウチダ、およびエス・モト、「Pt+Ru合金クラスターの調製」、ジャーナル・オブ・エレクトロアナリティカル・ケミストリー、229(1987)395−406、からの手順の変更例を用いた。5リットルの撹拌プラスチック容器に、クロロ白金酸水溶液(H2PtCl6から得られる10.13重量%Ptを含有する、ミズーリ州セント・ルイスのシグマ・アルドリッチ・ケミカル・カンパニー)5.67gを、水845mlとともに加えた。NaHSO32.899gを、加え(アルドリッチ・ケミカルズ)、10分間、溶液に撹拌した。炭酸ナトリウムを使用して、溶液のpHを5に調整した。H22(30重量%H22、ドイツ、ダルムシュタットのメルク、GaA)141mlを、約4分の期間にわたって加え、pHを約5に調整した。2.02重量%Ruを含有するRuCl3水溶液(RuCl3から得られる、アルドリッチ・ケミカル・カンパニー)14.72gを、H2O49.27mlで希釈した。工程2で準備した材料4.00gを、混合物に加え、pHが安定するまで、15分間、混合物を撹拌した。材料を、10分間、窒素下で、撹拌し、次に、一晩、室温で、約100ml/分の水素ガスでパージした。それを、濾過し、水5リットルで洗浄し、その後、空気乾燥させた。
【0093】
工程3:
工程2で形成された材料0.100g、11.4重量%990EWナフィオン(登録商標)溶液(SE10072、水素形態、デュポン)0.184g、およびH2O5.727gを、1M Fe(NO33を含有する水溶液20.0マイクロリットル、0.44MMn(NO32を含有する水溶液45.4マイクロリットル、および0.5M過レニウム酸を含有する水溶液39.9マイクロリットルと混合した。この混合物を、オムニ・ミキサ・ホモジェナイザで、室温で、30分間、ミリングした。次に、最終触媒が約0.3mgPt/1.5cm2となるように、カーボン紙ストリップ上に、1.5cm2の領域にわたって、インクをコーティングした。テスト前に、電極材料を、水素中、300℃で、1時間、加熱した。
【0094】
工程4:電気化学評価
アービン・インストルメンツによって製造されたアービン・テスティング・システム・ステーション(モデルBT2043、ソフトウェア・バージョンMITS’97)を使用して、電気化学半電池データを収集した。対極がPtコイルであり、SCE(標準カロメル電極)を参照電極として使用する3電極システムを使用して、1M CH3OH/0.5M H2SO4溶液中で、サイクリックボルタンメトリ(CV)を用いることによって、メタノール酸化について電極の活性を評価した。50mV/秒の走査速度で、開回路電位(Eoc)から、1.1Vに、そして−0.25Vに戻り、電位を走査した。電流が安定するまで、1.1V−−0.25V−1.1Vで、走査を繰返した。
【0095】
電流を幾何学的表面積について正規化した。表にされた電流は、ipt1Aであり、これは、電極上のPtの量(mg)に正規化された、CV走査からのピーク酸化電流であった。
Ipt1=297mA/mgPt

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)タングステンカーバイド、モリブデンカーバイド、タングステンオキシカーバイド、モリブデンオキシカーバイド、およびそれらの混合物からなる群より選択される化合物と、
(b)白金、白金とルテニウムとの混合物、または白金と酸化ルテニウムとの混合物と、
(c)V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Re、Co、Ni、Cu、およびそれらの混合物からなる群より選択される金属とを含んでなるアノード電極触媒。
【請求項2】
触媒固体担体をさらに含んでなる、請求項1に記載のアノード電極触媒。
【請求項3】
触媒固体担体が、乱層構造炭素または黒鉛炭素である、請求項2に記載のアノード電極触媒。
【請求項4】
CO耐性が高い、請求項1に記載のアノード電極触媒。
【請求項5】
メタノール酸化が向上した、請求項1に記載のアノード電極触媒。
【請求項6】
成分(a)が、約5から約99.989995モル%の量で存在し、成分(b)が、約5×10-6から約70モル%の量で存在し、成分(c)が、約0.01から約69.999995モル%の量で存在し、前記モルパーセンテージが、全金属含有量に基いて計算される、請求項1に記載のアノード電極触媒。
【請求項7】
成分(a)が、約30から約99.989995モル%の量で存在し、成分(b)が、約5×10-6から約50モル%の量で存在し、成分(c)が、約0.01から約49.999995モル%の量で存在し、前記モルパーセンテージが、全金属含有量に基いて計算される、請求項1に記載のアノード電極触媒。
【請求項8】
電極触媒コーティング組成物がコーティングされた基材を含むコーティング基材であって、前記電極触媒コーティング組成物が、
(a)タングステンカーバイド、モリブデンカーバイド、タングステンオキシカーバイド、モリブデンオキシカーバイド、およびそれらの混合物からなる群より選択される化合物と、
(b)白金、白金とルテニウムとの混合物、または白金と酸化ルテニウムとの混合物と、
(c)V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Re、Co、Ni、Cu、およびそれらの混合物からなる群より選択される金属とを含むアノード電極触媒を含んでなる、コーティング基材。
【請求項9】
前記基材がイオン交換膜である、請求項8に記載のコーティング基材。
【請求項10】
前記イオン交換膜が、ペルフルオロ化スルホン酸ポリマーの酸形態である、請求項9に記載のコーティング基材。
【請求項11】
前記基材がガス拡散裏材である、請求項8に記載のコーティング基材。
【請求項12】
前記電極触媒コーティング組成物が、バインダーをさらに含んでなる、請求項8に記載のコーティング基材。
【請求項13】
前記バインダーがイオン交換ポリマーである、請求項12に記載のコーティング基材。
【請求項14】
前記電極触媒コーティング組成物が、溶媒をさらに含んでなる、請求項8に記載のコーティング基材。
【請求項15】
前記アノード電極触媒が、触媒固体担体をさらに含んでなる、請求項8に記載のコーティング基材。
【請求項16】
前記触媒固体担体が、前記アノード電極触媒の全モル%に基いて、約1から約99.9モルの量で存在する、請求項15に記載のコーティング基材。
【請求項17】
触媒固体担体が、乱層構造炭素または黒鉛炭素である、請求項15に記載のコーティング基材。
【請求項18】
前記アノード電極触媒が、約5から約99.989995モル%の量で存在する成分(a)と、約5×10-6から約70モル%の量で存在する成分(b)と、約0.01から約69.999995モル%の量で存在する成分(c)とを含み、前記モルパーセンテージが、全金属含有量に基いて計算される、請求項8に記載のコーティング基材。
【請求項19】
前記アノード電極触媒が、約30から約99.989995モル%の量で存在する成分(a)と、約5×10-6から約50モル%の量で存在する成分(b)と、約0.01から約49.999995モル%の量で存在する成分(c)とを含み、前記モルパーセンテージが、全金属含有量に基いて計算される、請求項18に記載のコーティング基材。
【請求項20】
コーティング基材を含む燃料電池であって、前記コーティング基材が、電極触媒コーティング組成物がコーティングされた基材を含み、前記電極触媒コーティング組成物が、
(a)タングステンカーバイド、モリブデンカーバイド、タングステンオキシカーバイド、モリブデンオキシカーバイド、およびそれらの混合物からなる群より選択される化合物と、
(b)白金、白金とルテニウムとの混合物、または白金と酸化ルテニウムとの混合物と、
(c)V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Re、Co、Ni、Cu、およびそれらの混合物からなる群より選択される金属とを含むアノード電極触媒を含んでなる、燃料電池。
【請求項21】
前記基材がイオン交換膜である、請求項20に記載の燃料電池。
【請求項22】
前記イオン交換膜が、前記ペルフルオロ化スルホン酸ポリマーの酸形態である、請求項21に記載の燃料電池。
【請求項23】
前記基材がガス拡散裏材である、請求項20に記載の燃料電池。

【公開番号】特開2011−129537(P2011−129537A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56606(P2011−56606)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【分割の表示】特願2003−581276(P2003−581276)の分割
【原出願日】平成14年9月19日(2002.9.19)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】